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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】対象物の情報を取得する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/71 20060101AFI20241008BHJP
   G01N 21/13 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N21/71
G01N21/13
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023205362
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2023-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】真弓 敦
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】玉蟲 文彦
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-084353(JP,U)
【文献】実開昭55-113947(JP,U)
【文献】特開2021-173552(JP,A)
【文献】特開2013-064603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00- G01N 21/958
G01N 1/00- G01N 1/44
G01N 23/00- G01N 23/2276
G01N 33/48- G01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を囲む本体壁部及び本体底部と前記対象物を露出させる開口部とを含む容器本体と、前記容器本体に前記対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び前記容器本体に収容された前記対象物に接する蓋肩部を含む蓋部材と、前記本体壁部及び前記本体底部に囲まれた領域に配置されると共に前記対象物が配置されて前記蓋部材に向けて前記対象物を押圧する力を発生する押圧部材と、を有する容器部材と、
を備え、前記容器部材に前記蓋部材が取り付けたとき、前記本体底部において前記容器本体の外側を向く底部裏面から前記蓋肩部において前記対象物に接する肩部裏面までの距離を容器高さとする容器に、対象物を収容した複数の収容済容器を準備する工程と、
前記収容済容器が載置される容器載置面を有し、前記容器載置面からの距離によって定義可能な焦点を有し、前記収容済容器に収容された状態で前記焦点に位置する前記対象物に関する情報を得る情報取得装置において、前記容器載置面から前記焦点までの焦点高さが前記容器高さと等しくなるように、前記容器載置面から所定距離だけ離間した位置に前記焦点を合わせる工程と、
前記焦点を合わせる工程を実施した後に、前記容器載置面に前記収容済容器を配置する工程と、
前記容器載置面に配置された前記収容済容器に収容されている前記対象物に関する情報を得る工程と、
前記収容済容器を前記容器載置面から取り外す工程と、を有
前記焦点を合わせる工程を実施した後に、前記収容済容器を配置する工程と前記対象物に関する情報を得る工程と、前記容器載置面から取り外す工程とを、前記収容済容器を取り替えながら繰り返す、対象物の情報を取得する方法。
【請求項2】
前記収容済容器を準備する工程は、
成形された前記対象物を得る工程と、
前記容器部材を準備する工程と、
前記押圧部材に前記成形された前記対象物を載置する工程と、
前記蓋部材を取り付ける工程と、を含む、請求項に記載の対象物の情報を取得する方法。
【請求項3】
前記収容済容器を準備する工程は、
前記容器部材を準備する工程と、
前記押圧部材に成形されていない前記対象物を載置する工程と、
前記蓋部材と、前記蓋窓部に設けられた蓋貫通穴を塞ぐように前記蓋窓部に対して着脱可能にはめ込まれる栓部材と、を有する蓋ユニットを固定する工程と、を含む、請求項に記載の対象物の情報を取得する方法。
【請求項4】
前記対象物に関する情報を得る工程の前に、前記蓋部材の前記蓋貫通穴から前記栓部材を取り外す工程をさらに有する、請求項に記載の対象物の情報を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌や肥料などの分析装置として、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy)又は蛍光X線分析法(XRF法(X-ray Fluorescence))、等を用いた装置が知られている。例えば、非特許文献1、2は、LIBS法を用いた分析装置を開示する。非特許文献3は蛍光X線分析法を用いた装置を開示する。これらの分析装置は、土壌又は肥料に含まれる有害物質の濃度管理をするために用いられる。これらの装置は、分析の対象となる試料にレーザー光又はX線などを照射したときに発生する元素固有の波長の蛍光を検出することによって、試料の分析を行う。
【0003】
従来、重金属といった土壌の有害物質の濃度を知る装置として、特許文献1に記載の重金属分析装置が知られている。特許文献1に記載された技術によれば、測定試料の準備に複数の工程を有するので、分析に手間と時間を要していた。一方、非特許文献1~3が開示する分析装置は、一度の分析で複数の計測結果を得ることができる。従って、非特許文献1~3が開示する分析装置は、上述の従来の分析方法に比べて簡易かつ迅速に分析を行うことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-64603号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】毎田充宏、濱田智広、桑子彰、“レーザブレークダウン分光法による堆肥分析装置”、技術論文誌「東芝レビュー」、日本、株式会社東芝、2005年、Vol. 60、No. 11、p.45―48。
【文献】石橋高ほか、“月・惑星着陸探査用元素分析装置:レーザー誘起絶縁破壊分光装置(LIBS)”、日本惑星学会誌、日本、日本惑星科学学会、2012年、Vol. 21、No. 3、p.260―266。
【文献】山崎慎一ほか、“偏光式エネルギー分散型蛍光X 線分析法による土壌および底質中の微量元素の同時分析”、学会誌「分析化学」、日本分析化学会、2011年、Vol. 60、No. 4、p.315―323。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1が開示するLIBS法による分析装置では、試料移動ステージの上に分析セルが設置される。分析セルには、試料が収容されている。LIBS法による分析装置は、分析セルに収容された試料にレーザー光を当てた際に発生するプラズマ発光の光を、レンズ及びミラー等の光学系により分光器に集光する。従って、試料を分析するときには、レンズの焦点を試料の計測対象面に合わせる必要がある。
【0007】
しかし、試料の大きさは、試料ごとに異なる。大きさが異なると、試料移動ステージに試料を配置するごとにレンズの焦点位置を計測対象面に調整する作業が発生する。そのため、大量の試料を迅速に分析することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、迅速に対象物の分析を行うことができる、対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る対象物情報取得システムは、対象物を収容する容器と、容器が載置される容器載置面を有し、容器載置面からの距離によって定義可能な焦点を有し、容器に収容された状態で焦点に位置する対象物に関する情報を得る情報取得装置と、を備え、容器は、対象物を囲む本体壁部及び本体底部と対象物を露出させる本体開口部とを含む容器本体と、対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び容器本体に収容された対象物に接する蓋肩部を含み、容器本体に取り付けられる蓋部材と、本体壁部及び本体底部に囲まれた領域に配置されると共に対象物が載置されて蓋部材に向けて対象物を押圧する力を発生する押圧部材と、を有し、本体底部から蓋肩部までの距離は、容器載置面から焦点までの距離に等しい。
【0010】
一形態である対象物情報取得システムでは、容器本体の本体底部から肩部までの距離は、容器載置面から情報取得装置の焦点までの距離に等しい。また、肩部は対象物に接している。これにより、対象物を収容した容器を容器載置面に配置した時点で、対象物に情報取得装置の焦点が合っている状態にすることができる。つまり、対象物を収容した容器を容器載置面に配置した後に、情報取得装置の焦点の位置合わせを行う必要がない。その結果、対象物を収容した容器を容器載置面に配置するだけで、情報の取得を開始することが可能であるから、対象物に関する情報を迅速に取得することができる。
【0011】
上記対象物情報取得システムでは、蓋窓部は、容器本体に収容した対象物を露出させる蓋貫通穴を含んでもよい。この場合、窓部が、対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させることができる。
【0012】
上記対象物情報取得システムでは、蓋窓部は、容器本体に収容した対象物を露出させる蓋貫通穴と、対象物に照射される電磁波又は対象物から放射される電磁波を透過可能な透明部材と、を含んでもよい。この場合、窓部が、対象物に照射される電磁波又は対象物から放射される電磁波を効果的に透過することができる。また、対象物を収容した容器の輸送時に、窓部からの対象物の飛び出しを抑制することができる。
【0013】
上記対象物情報取得システムでは、蓋窓部は、容器本体に収容した対象物を露出させる蓋貫通穴を含み、容器は、蓋窓部の蓋貫通穴に対して着脱可能にはめ込まれる栓部材をさらに有し、栓部材は、容器本体に蓋部材を取り付けるときには、蓋窓部の蓋貫通穴にはめ込まれており、情報取得装置によって対象物に関する情報を得るときには、蓋窓部の蓋貫通穴から取り外されていてもよい。
【0014】
この場合、例えば、対象物を収容した容器の輸送時に、栓部材を窓部にはめ込むことで、対象物の飛び出しを抑制することができる。また、栓部材は、情報取得装置によって対象物に関する情報を得るときには窓部から取り外されているので、対象物を露出させることができる。これにより、窓部は、情報取得装置によって対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させることができる。
【0015】
上記対象物情報取得システムの押圧部材の弾性率は、対象物の弾性率よりも低くてもよい。この場合、対象物を容器に収容した際に、押圧部材が対象物を押圧する力を抑制することができるので、対象物に過大な力が作用することを防ぐことができる。
【0016】
上記対象物情報取得システムの情報取得装置は、焦点に位置する対象物に向けて照射電磁波を与え、与えられた照射電磁波に起因して対象物から戻る戻り電磁波に基づいて、対象物に関する情報として対象物の成分を得てもよい。情報取得装置は、焦点に位置する対象物に向けて照射電磁波を与え、与えられた照射電磁波に起因して対象物から戻る戻り電磁波に基づいて、対象物に関する情報として対象物の成分を得る。この構成によれば、対象物に関する情報を好適に取得することができる。
【0017】
本発明の別形態である対象物の情報を取得する方法は、対象物を収容した収容済容器を準備する工程と、収容済容器が載置される容器載置面を有し、容器載置面からの距離によって定義可能な焦点を有し、収容済容器に収容された状態で焦点に位置する対象物に関する情報を得る情報取得装置において、容器載置面から所定距離だけ離間した位置に焦点を合わせる工程と、容器載置面に収容済容器を配置する工程と、容器載置面に配置された収容済容器に収容されている対象物に関する情報を得る工程と、を有する。
【0018】
この方法によれば、収容済容器を配置する工程の後に、情報取得装置の焦点を合わせる工程を実施する必要がない。その結果、対象物を収容した容器を容器載置面に配置するだけで、情報の取得を開始することが可能であるから、対象物に関する情報を迅速に取得することができる。
【0019】
上記対象物の情報を取得する方法の収容済容器を準備する工程では、複数の収容済容器を準備し、対象物に関する情報を得る工程の後に、収容済容器を容器載置面から取り外す工程をさらに有し、焦点を合わせる工程を実施した後に、収容済容器を配置する工程と対象物に関する情報を得る工程と容器載置面から取り外す工程とを、収容済容器を取り替えながら繰り返してもよい。
【0020】
これらの工程によれば、収容済容器を容器載置面へ配置するごとに焦点を合わせる工程を実施しない。従って、複数の収容済容器について迅速に対象物に関する情報を得ることができる。
【0021】
上記対象物の情報を取得する方法の収容済容器を準備する工程は、成形された対象物を得る工程と、対象物を囲む本体壁部及び本体底部と対象物を露出させる開口部とを含む容器本体と、本体壁部及び本体底部に囲まれた領域に配置されると共に対象物が配置される押圧部材と、を有する容器部材を準備する工程と、押圧部材に成形された対象物を載置する工程と、容器部材に対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び容器本体に収容された対象物に接する蓋肩部を含む蓋部材を取り付ける工程と、を含んでもよい。
【0022】
これらの工程によっても、対象物に関する情報を迅速に取得することができる。
【0023】
上記対象物の情報を取得する方法の収容済容器を準備する工程は、対象物を囲む本体壁部及び本体底部と対象物を露出させる開口部とを含む容器本体と、本体壁部及び本体底部に囲まれた領域に配置されると共に対象物が配置される押圧部材と、を有する容器部材を準備する工程と、押圧部材に成形されていない対象物を載置する工程と、成形されていない対象物が載置された容器部材に、対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び容器本体に収容された対象物に接する蓋肩部を含む蓋部材と、蓋窓部に設けられた蓋貫通穴を塞ぐように蓋窓部に対して着脱可能にはめ込まれる栓部材と、を有する蓋ユニットを固定する工程と、を含んでもよい。
【0024】
これらの工程によれば、成形された対象物を移し替える作業を要しない。従って、成形された対象物の形状を維持することができる。
【0025】
上記対象物の情報を取得する方法は、対象物に関する情報を得る工程の前に、蓋部材の蓋貫通穴から栓部材を取り外す工程をさらに有してもよい。この場合、蓋ユニットを固定する工程で成形された対象物に関する情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、迅速に対象物に関する情報を取得することができる、対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1実施形態に係る対象物情報取得システムの構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る収容済容器の断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る対象物の情報を取得する方法の主要な工程を示すフローチャートである。
図4図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、第1実施形態に係る対象物の情報を取得する方法を説明するための工程図である。
図5図5は、第2実施形態に係る収容済容器の断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る対象物の情報を取得する方法の主要な工程を示すフローチャートである。
図7図7(a)、図7(b)、図7(c)及び図7(d)は、第2実施形態に係る対象物の情報を取得する方法を説明するための工程図である。
図8図8は、変形例に係る収容済容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一形態である対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。まず、本発明の対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法に至る背景を述べ、その後に一形態である対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法について詳細に述べる。
【0029】
農作物全般の生産性を向上させる技術が検討されている。農作物は、成長の過程でリン、窒素、カリウムなどの様々な元素を必要とする。これらの養分となる必要元素は、成長の過程において、不足することなくかつ過剰でもない程度に土壌を介して与え続ける必要がある。
【0030】
農作物が必要とする成分には、上記の主要な成分の他に例えばニッケルなどの重金属類も含む。重金属類の例示としては、ヒ素、カドミウム、水銀、クロム、鉛が挙げられる。これらの重金属類は、農作物の生育にとってごく少量あればよい。あるいは、これらの重金属類は、農作物の生育にとってほぼ不要である。これらの重金属類を過剰に含む土壌で農作物を生育する場合には、農作物の成長そのものに影響を及ぼす可能性がある。さらに、土壌が含む重金属類は、農作物を介して人体に移行する可能性も考えられる。
【0031】
そこで、肥料などの形態で農作物の養分を供給する場合、特に人体に対して影響を与えない量の元素群を供給する必要がある。国内では、この元素群の供給量の上限をコントロールするために、肥料等の許容可能な濃度の上限が法令で定められている。例えば、肥料取締法では、ヒ素、カドミウム、水銀、ニッケルなどについて許容可能な規制値が設定されている。この規制値を遵守するため、肥料を生産・供給する事業者は、出荷する肥料中の有害物質を濃度管理しておくことが重要である。
【0032】
濃度管理手法としては、例えば、以下のような手法が例示できる。
・対象元素毎に、各元素に特異的に反応して発色する試薬を用い、その発色の度合いを吸光光度法で定量して元素量に換算する。
・肥料となる試料を酸分解した後に原子吸光光度法で各種元素を定量的に分析する。
・上記同様に酸分解した後、ICP発光分光法で各種元素を定量的に分析する。
【0033】
また、従来は、施肥量の決定は、農家の経験値に頼っていた。つまり、土壌中の肥料成分(窒素、リン、炭素など)を計測した上での施肥量を決定するといったプロセスはほとんど存在しなかった。
【0034】
さらに、現状では、重金属分析も同様の状況であり、有害物質である重金属(Pbなど)の測定を高頻度で計測しているわけではない。また、従来は、各種有害物質の存在を正確かつ多点でモニタリングし難いことから、埋立処分やセメント原料に混ぜるなど、材料としての再利用及び再資源化が困難であった。
【0035】
肥料のうち、化学肥料は、肥料用の原料の品質がある程度一定であり、主に化学的な製造工程で合成できるので肥料としての最終製品の品質が比較的安定している。従って、化学肥料は、肥料としての製品の品質も安定することから、上述したような肥料の元素濃度の確認頻度も少なくて済み、かつ想定外の分析結果も出にくく、生産管理が比較的容易である。
【0036】
一方で、肥料の原料として各種農業残渣や食物残渣を用いる場合には、これらの原料の品質が一定になりにくいことから、上記のような分析を高頻度で実施する必要がある。また、有機汚泥などの産業廃棄物や下水汚泥を利用して肥料に加工する場合も同様に上記のような分析を高頻度で実施する必要がある。
【0037】
さらに、上記のような分析では、分析の過程で酸分解や化学的な反応を利用していることから、分析開始から定量結果が判明するまでに一定の時間が経過している。この場合に、万一、前もって設定された重金属濃度の上限値を超えてしまったとしても、すでに同製品は出荷され、農業用途に供されてしまっていれば、製品や農地からの同肥料の回収は容易でない。これは、燃焼灰においても同様の事情である。あるいは、上記分析の結果を待ってから出荷する場合は、出荷待ちの肥料をいったん倉庫などで保管する必要があり、倉庫の費用や、保管中の品質維持などの設備費用が必要となる。
【0038】
<第1実施形態>
<対象物情報取得システム>
図1に示す対象物情報取得システムは、一例として上記農業分野における土壌分析及び重金属分析に適用できるものである。対象物情報取得システムは、評価対象物に関する情報を得る。評価対象物は、例えば、土壌、肥料又は燃焼灰等の成形されたサンプルである。土壌の分析は、頻度の高い定量分析が進んでいないという背景を有する。また、分析の対象となる土壌を採取する農地も広いため、潜在的な分析のニーズが期待されている。そして、評価対象物に関する情報とは、例えば、サンプルを構成する成分の種類及び成分の割合などである。本実施形態では、評価対象物として土壌を例示すると共に、評価対象物に関する情報として当該土壌に含まれる成分の種類と、種類ごとの含有率を例示する。このように、土壌の成分分析を行うものとして、レーザブレークダウン分光法(LIBS法)を用いた成分分析システムが例示できる。レーザブレークダウン分光法は、レーザー光を用いる方法であるから、万一の誤操作が生じた場合であっても、オペレータに与える影響を軽微にすることができる。レーザー光は、人体への影響が軽微だからである。以下、対象物情報取得システムの一例として成分分析システム1を例示しながら、本実施形態に係る対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法について説明する。
【0039】
成分分析システム1は、対象物に直接レーザー光を照射したときに発生するプラズマの波長の光を分光器で分光し、分光された波長ごとの光強度を分析することで、評価対象物である土壌の成分を分析する。成分分析システム1は、容器2と、成分分析装置3(情報取得装置)と、を備える。容器2は、土壌サンプル4を収容する。成分分析装置3は、容器2に収容された土壌サンプル4を構成する成分の種類とそれぞれの成分の含有率とを得る。以下の説明において、土壌サンプル4に関するこれらの情報を、「土壌サンプル4の成分情報」又は単に「成分情報」と称する。成分分析装置3は、これらの成分情報をパルスレーザー光L1の照射に応じて土壌サンプル4から発生するプラズマに起因する蛍光L2を用いて取得する。以下では、まず成分分析装置3及び土壌サンプル4を説明した後に、容器2の構成を説明する。
【0040】
<対象物:土壌サンプル4>
土壌サンプル4は、容器2に収容される前に、成形処理が施されて固化したものである。ここでいう「固化」とは、土壌サンプル4が自立的に形状を維持できる状態と定義してよい。また、「固化したサンプル」とは、圧縮や凍結などによって成形されたものとして定義してよい。成形のための処理には、押圧、圧縮、切削又は凍結等の処理を含めてよい。前処理済みの土壌サンプル4は、サンプル主面4aと、サンプル主面4aとは反対側のサンプル裏面4rと、を有する。
【0041】
<成分分析装置3>
成分分析装置3は、肥料や土壌、燃焼灰またはそれに準ずる材料中の窒素、リン、炭素などの支配的成分を定量あるいは半定量する。また、成分分析装置3は、植物や人体に影響を及ぼす重金属類群その他の含有物の微量な成分を、定量あるいは半定量する。さらに、成分分析装置3は、その分析値群を理解しやすい図に加工する機能と分析結果をオペレータに提示する機能とを有してもよい。
【0042】
成分分析装置3は、ヒ素、カドミウム、水銀、ニッケル、クロム、鉛、リン、窒素、炭素の9項目について、それぞれの元素に対応する波長の光を対象物に照射し、その応答強度を測定する。そして、成分分析装置3は、応答強度とあらかじめ設定した参照値と比較することにより、各元素の含有量を数値化する。なお、成分分析装置3は、例えばある元素に対して複数の波長を用いてもよい。成分分析装置3は、その複数の波長に対して重回帰させるなど特殊な処理を施してもよい。
【0043】
成分分析装置3は、上記で算出した元素の含有量のデータ、および各データに対して法令で定められた閾値を併記して、あらかじめ指定したフォーマットに入力する。なお、閾値は、独自に設定したものであってもよい。成分分析装置3は、この入力をあらかじめ作成したプログラムに従って自動処理する。
【0044】
成分分析装置3は、上記結果をインターネット上の情報格納域にアップロードする。さらに、成分分析装置3は、分析情報を必要とするユーザに対して、電子メールやSMSなどの速達性のある手段を用いて自動発信する。分析情報を必要とするユーザは、少なくとも肥料生産者、肥料の使用者のどちらかを含む。また、分析情報は、重金属元素の量があらかじめ設定した閾値に対して大きいか否か、また植物に有用なリンや窒素の量が設定した閾値に対して小さいか否か、といった判定情報を含んでよい。また、分析情報は、重金属元素の量やリンや窒素の量が実際に閾値を超えたか否かという判定情報だけでなく、実際に閾値を超えてはいないが超える可能性があることを示す情報を含んでもよい。なお、ここで設定する閾値については、成分分析装置3の繰り返し誤差や測定誤差なども考慮した上で、当該試料が最終的に遵守すべき各種法令上の閾値と照らし合わせて、不適合となるような状況が確率論上発生しないよう、十分に安全側に設定する。
【0045】
実施形態の成分分析装置3は、レーザブレークダウン分光装置である。レーザブレークダウン分光装置を採用すれば、重金属等の各種元素の定量について、前処理が不要あるいは極めて簡易にすることができる。さらに、レーザブレークダウン分光装置を採用すれば、複数の対象物を一回の測定作業によって定量分析することができる。レーザブレークダウン分光装置は、パルスレーザー光L1をサンプルに照射する。パルスレーザーを受けたサンプルは、プラズマを発生する。このプラズマに起因して発生する蛍光L2の波長を分析することにより、サンプルに含まれる元素を特定できる。
【0046】
さらに、レーザブレークダウン分光装置は、対象物に対して直接、レーザーやX線といった光線を照射する。そして、その光線が対象物上でエネルギーのやりとりをして戻ってくる際の応答を数値として提示する。従って、レーザブレークダウン分光装置を用いた分析は極めて短時間で終了する。さらに、レーザブレークダウン分光装置を用いた分析では、照射する光線の性質を変化させることにより、その光線に特異的に応答する元素の存在とその量を半定量的に検出することができる。
【0047】
成分分析装置3は、ステージ31と、光源32と、光学系33と、光検出器34と、コンピュータ35と、を備える。成分分析装置3は、土壌サンプル4に向けてパルスレーザー光L1(照射電磁波)を照射する。そして、パルスレーザー光L1が照射された土壌サンプル4は、含まれる元素に応じたプラズマを発生し、このプラズマに起因して蛍光L2(電磁波)が発生する。成分分析装置3は、この蛍光L2に基づいて、土壌サンプル4の成分情報を得る。
【0048】
ステージ31は、土壌サンプル4を収容した容器2を載置するための容器載置面31aを有している。収容済容器2Sは、ステージ31の容器載置面31aに配置される。
【0049】
光源32は、容器2に収容された土壌サンプル4に照射するためのパルスレーザー光L1を出射する。光源32は、土壌サンプル4を収容した容器2と向かい合うように配置されている。
【0050】
光学系33は、レンズ331と、ミラー332と、を有する。レンズ331は、光源32と土壌サンプル4を収容した容器2との間に配置されている。レンズ331は土壌サンプル4を収容した容器2と向かい合うように配置されている。レンズ331は、容器載置面31aからの距離によって定義可能な焦点Fを有する。具体的には、レンズ331の焦点Fは、レンズ331と容器載置面31aとの間に位置しており、容器載置面31aから焦点高さH1の位置にある。ミラー332は、光源32とレンズ331との間に配置されている。ミラー332は、パルスレーザー光L1が通過するためのミラー開口部332hを有する。ミラー332は、プラズマに起因する蛍光L2を光検出器34に導く。
【0051】
光源32から出射されたパルスレーザー光L1は、ミラー開口部332hを通過した後に、レンズ331を通過する。そして、パルスレーザー光L1は、土壌サンプル4のサンプル主面4aに到達する。また、蛍光L2は、レンズ331及びミラー332をこの順に通過することで、光検出器34に到達する。
【0052】
光検出器34は、蛍光L2を所定の波長ごとに分光する。そして、波長ごとの光強度を得る。光検出器34は、波長と波長に対応する光強度とをコンピュータ35に送る。
【0053】
コンピュータ35は、光検出器34から送られた波長と波長に対応する光強度を用いて成分情報を得る。コンピュータ35は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、及び通信デバイス等を含でもよい。コンピュータ35は、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。
【0054】
<容器2>
次に、図2を参照して、容器2の構成について説明する。容器2は、少量の土壌サンプル4を格納するためのものであり、例えば、ごく少量(10cc程度)の土壌サンプル4を収容可能であってもよい。また、容器2は、小型且つ安価なものである。容器2は、プラスチックなど、軽い材料で構成されている。容器2は、少なくとも国内で郵送あるいは宅配便のような形態において、常温で運搬できる。容器2は、土壌サンプル4を分析に供する際、土壌サンプル4の分析対象面(サンプル主面4a)を維持できるような工夫が成されている。なお、容器2は、あらかじめ肥料を生産すると共に出荷する工場の現場に準備しておいてもよい。
【0055】
以下の説明において、土壌サンプル4を収容した容器2を収容済容器2Sと称する。また、土壌サンプル4を収容していないものを単に容器2と称する。
【0056】
容器2は、容器本体21と、蓋部材22と、押圧部材23と、を有する。容器本体21は、押圧部材23及び土壌サンプル4を収容するための領域Rを形成する。容器本体21は、土壌サンプル4を入れるための開口を有している。蓋部材22は、容器本体21に土壌サンプル4を入れた後に、当該開口を塞ぐ。
【0057】
容器本体21は、本体壁部211と、本体底部212と、容器連結爪部213と、を有する。
【0058】
本体壁部211は、例えば、筒状に延在している。本体壁部211の一方側の壁部上端211tは本体開口部21aを形成する。本体開口部21aは、土壌サンプル4を容器本体21から露出させる。すなわち、土壌サンプル4は、容器本体21の本体開口部21aから露出している。他方側の壁部下端211bには、本体底部212が形成されている。本体壁部211及び本体底部212によって囲まれた領域Rには、押圧部材23及び土壌サンプル4が収容される。すなわち、本体壁部211及び本体底部212は、押圧部材23及び土壌サンプル4を囲んでいる。以下、本体底部212が本体開口部21aに対して位置する側を下側とし、反対側を上側とする。
【0059】
本体底部212は、内側を向く底部主面212aと、外側を向く底部裏面212rとを有する。底部主面212aは、押圧部材23に接触する。底部裏面212rは、容器2がステージ31に配置されたときに、ステージ31の容器載置面31aと接触する。
【0060】
容器連結爪部213は、壁部上端211tに形成されている。容器連結爪部213は、本体壁部211の外側の壁部外面211cに形成されている。容器連結爪部213は、壁部外面211cから外側に向かって突出する。容器連結爪部213は、例えば、本体壁部211の周方向に沿って壁部外面211c上に延在している。容器連結爪部213には、蓋部材22の一部がかみ合う。
【0061】
蓋部材22は、蓋壁部221と、蓋窓部222と、蓋肩部223と、蓋連結爪部224と、を有する。
【0062】
蓋部材22は、壁部上端211tに取り付けられる。蓋壁部221は、例えば、筒状に延在している。蓋壁部221の上側の蓋上端221t側には、蓋肩部223及び蓋窓部222が配置されている。蓋壁部221の下側の蓋下端221bには、蓋連結爪部224が形成されている。蓋壁部221は、本体壁部211の外側に位置する。
【0063】
蓋肩部223の形状は、容器本体21を平面視した形状に対応する。蓋肩部223は、外側に位置する肩部外縁223gと、内側に位置する肩部内縁223uと、を含む。さらに、蓋肩部223は、肩部主面223aと、肩部裏面223rと、を含む。蓋肩部223は、肩部外縁223gにて、蓋上端221tと接続される。蓋肩部223の肩部裏面223rは、土壌サンプル4のサンプル主面4aに接している。
【0064】
ここで、本体底部212から蓋肩部223までの距離を容器高さH2として定義する。この容器高さH2は、成分分析装置3の焦点Fの位置に対応する。この焦点Fの位置は、ステージ31の容器載置面31aからレンズ331の焦点Fまでの焦点高さH1(図1参照)として定義してよい。そして、容器高さH2は、焦点高さH1と等しい。より具体的には、本体底部212の底部裏面212rから蓋肩部223の肩部裏面223rまでの容器高さH2は、ステージ31の容器載置面31aからレンズ331の焦点Fまでの焦点高さH1と等しい。これにより、サンプル主面4aをレンズ331の焦点Fに配置することができる。
【0065】
なお、本実施形態で言う「等しい」とは、容器高さH2と焦点高さH1の値が厳密に一致することに限定されない。本実施形態で言う「等しい」とは、収容済容器2Sを容器載置面31aに配置した後に、焦点Fの調整を要することなく直ちに成分分析を開始することが可能である高さの関係を、容器高さH2と焦点高さH1とが等しいと定義する。
【0066】
蓋窓部222は、蓋肩部223の肩部内縁223uから起立する。蓋窓部222の両端部は、開口している。すなわち、蓋窓部222は土壌サンプル4を露出させる蓋貫通穴22hを含む。蓋貫通穴22hは、土壌サンプル4に関する情報を得るための電磁波を通過させる。具体的には、蓋貫通穴22hは、パルスレーザー光L1及び蛍光L2を通過させる。
【0067】
蓋連結爪部224は、蓋壁部221の内側の蓋壁内面221uに、蓋壁部221の内側に向かって突出する。蓋連結爪部224は、例えば、蓋壁部221の周方向に沿って蓋壁内面221u上に延在している。蓋連結爪部224は、容器本体21の容器連結爪部213にかみ合う。
【0068】
押圧部材23は、上述の通り、本体壁部211及び本体底部212によって囲まれた領域Rに配置されている。押圧部材23は、押圧主面23aと、押圧裏面23rと、を含む。押圧部材23は、本体底部212の底部主面212aに配置されており、底部主面212aに接する。押圧部材23の上側の押圧主面23aには、土壌サンプル4が配置される。
【0069】
このような容器2によれば、サンプルを短時間で準備することができる。さらに、このような容器2によれば、成分分析装置3にサンプルを設置し、サンプルを分析し、その後に分析情報を肥料生産者あるいは肥料消費者といったユーザに可能な限り短時間で提供することができる。
【0070】
<第1実施形態の成分分析システムの作用効果>
成分分析システム1は、土壌サンプル4を収容する容器2と、容器2が載置される容器載置面31aを有し、容器載置面31aからの焦点高さH1によって定義可能な焦点Fを有し、容器2に収容された状態で焦点Fに位置する土壌サンプル4の成分情報を得る成分分析装置3と、を備える。容器2は、土壌サンプル4を囲む本体壁部211及び本体底部212と土壌サンプル4を露出させる本体開口部21aとを含む容器本体21と、土壌サンプル4の成分情報を得るためのパルスレーザー光L1及び蛍光L2を通過させる蓋窓部222及び容器本体21に収容された土壌サンプル4に接する蓋肩部223を含み、容器本体21に取り付けられる蓋部材22と、本体壁部211及び本体底部212に囲まれた領域Rに配置されると共に土壌サンプル4が配置されて蓋部材22に向けて土壌サンプル4を押圧する力を発生する押圧部材23と、を有する。本体底部212から蓋肩部223までの容器高さH2は、容器載置面31aから焦点Fまでの焦点高さH1に等しい。
【0071】
容器本体21の本体底部212から蓋肩部223までの容器高さH2は、容器載置面31aから成分分析装置3の焦点高さH1までの距離に等しい。また、蓋肩部223は土壌サンプル4に接している。これにより、土壌サンプル4を収容した収容済容器2Sを容器載置面31aに配置した時点で、土壌サンプル4に成分分析装置3の焦点Fが合っている状態にすることができる。つまり、収容済容器2Sを容器載置面31aに配置した後に、成分分析装置3の焦点Fを土壌サンプル4のサンプル主面4aに合わせる必要がない。その結果、収容済容器2Sを容器載置面31aに配置するだけで、成分情報の取得を開始することが可能であるから、土壌サンプル4の成分情報を迅速に取得することができる。
【0072】
また、成分分析システム1によれば、複数の前処理が不要であり、かつ分析そのものも短時間で達成できる。
【0073】
蓋窓部222は、容器本体21に収容した土壌サンプル4を露出させる蓋貫通穴22hを含む。この場合、蓋貫通穴22hは、土壌サンプル4の成分情報を得るためのパルスレーザー光L1及び蛍光L2を通過させることができる。
【0074】
押圧部材23の弾性率は、土壌サンプル4の弾性率よりも低い。この場合、土壌サンプル4を容器2に収容した際に、押圧部材23が土壌サンプル4を押圧する力を抑制することができるので、土壌サンプル4に過大な力が作用することを防ぐことができる。
【0075】
成分分析装置3は、焦点Fに位置する土壌サンプル4に向けてパルスレーザー光L1を与え、与えられたパルスレーザー光L1に起因して生じるプラズマに応じた蛍光L2に基づいて、土壌サンプル4の成分情報として土壌サンプル4の成分を得る。この構成によれば、土壌サンプル4の成分情報を取得することができる。
【0076】
<土壌サンプル4の成分情報を取得する方法>
次に、土壌サンプル4の成分情報を取得する方法を説明する。図3は、土壌サンプル4の成分情報を取得する方法の主要な工程を示すフローチャートである。図4は、図3の工程を説明するための工程図である。
【0077】
成分情報を取得する方法では、収容済容器2Sを準備する工程S1と、土壌サンプル4(対象物)を分析する工程S2と、を有する。工程S2を実施する主体は、工程S1を実施する主体と同じであってもよい。また、工程S2を実施する主体は、工程S1を実施する主体と異なってもよい。
【0078】
工程S1は、工程S11からS19を有する。まず、成形されていない土壌サンプル4を準備する(工程S11)。次に、土壌サンプル4を成形するための型枠を準備する(工程S12)。型枠として、例えば、錠剤成形器を用いてもよい。続いて、型枠に成形されていない土壌サンプル4を収める(工程S13)。例えば、型枠に収める土壌は、10g程度であってもよい。
【0079】
次に型枠に収容された土壌サンプル4を押圧する(工程S14)。これにより、土壌サンプル4が成形される。この工程S14では、土壌サンプル4の種類によらず、ある決められた条件に従って、土壌サンプル4を成形する。このように異なる種類のサンプルを同一の成形条件によって成形すると、成形された土壌サンプル4の形状(高さ)がサンプルごとに相違することがあり得る。本実施形態の成分情報を取得する方法では、サンプルごとに高さが異なっていても、サンプルごとに成分分析装置3の焦点Fを合わせる作業を要しない。
【0080】
次に、型枠から成形された土壌サンプル4を取り出す(工程S15)。次に、空の容器本体21を準備する(工程S16)。次に、図4に示すように、空の容器本体21に押圧部材23を入れる(工程S17、図4(a)参照)。なお、容器本体21に押圧部材23が配置済みのもの(容器部材26、図4(a)参照)を準備することとしてもよい。次に、押圧主面23aの上に成形された土壌サンプル4を配置する(工程S18、図4(b)参照)。
【0081】
ここで、容器本体21に押圧部材23及び土壌サンプル4を配置したとき、土壌サンプル4のサンプル主面4aは、容器本体21の壁部上端211tから突出する。さらに、底部裏面212rからサンプル主面4aまでの合計高さH3(図4(b)参照)は、前述した容器高さH2よりも高い。
【0082】
次に、容器本体21に蓋部材22を取り付ける(工程S19、図4(c)参照)。押圧部材23の弾性率は、土壌サンプル4の弾性率よりも低いので、蓋部材22を容器本体21に取り付けたとき、押圧部材23は、合計高さH3と容器高さH2との差分だけ圧縮される。その結果、押圧部材23は、土壌サンプル4を蓋部材22に向けて押圧する押圧力を発生する。この押圧力によって、土壌サンプル4のサンプル主面4aは、蓋肩部223の肩部裏面223rに接触する。
【0083】
上述の工程S1を実施した結果、収容済容器2Sを得ることができる。
【0084】
次に、評価対象物を分析する工程S2を行う。工程S2は、工程S21~S25を有する。
【0085】
まず、収容済容器2Sを準備する(工程S21)。例えば、工程S2の分析作業を実施するオペレータが収容済容器2Sを作成する場合には、この工程S21における収容済容器2Sの準備とは、前述の工程S1をオペレータが実施することであってもよい。一方、工程S2の分析作業を実施するオペレータとは別の作業者が収容済容器2Sを作成する場合には、この工程S21における収容済容器2Sの準備とは、収容済容器2Sを作成した作業者から、手渡しや輸送などによって工程S2の分析作業を実施するオペレータが受け取ることであってもよい。
【0086】
さらに、工程S21で準備する収容済容器2Sの数は、一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0087】
次に、成分分析装置3を準備する(工程S22)。次に容器載置面31aから所定の焦点高さH1だけ離間した位置にレンズ331の焦点Fを合わせる(工程S23)。具体的には、容器載置面31aから焦点高さH1の位置にレンズ331の焦点Fを合わせる。焦点Fの位置を調整する動作は、成分分析装置3を扱うオペレータによって手動で実施されてもよいし、コンピュータ35がレンズ331を駆動するレンズ駆動部333に制御信号を与えることによって自動的に実施されてもよい。
【0088】
次に、オペレータは、ステージ31の容器載置面31aに収容済容器2Sを配置する(工程S24)。オペレータは、収容済容器2Sの蓋貫通穴22hの内側に焦点Fが位置するように配置する。次に、オペレータは、土壌サンプル4の成分分析を実行する(工程S25)。この工程S25を実施した結果、土壌サンプル4の成分情報を得ることができる。
【0089】
より詳細には、コンピュータ35は、成分情報を得るためのプログラムを実行する。プログラムは、例えば、元素Aという物質があった場合、元素Aを主成分とする模擬サンプルに対して高感度で応答する照射光の波長をあらかじめ指定するものである。濃度に変換するプログラムを読み込んだコンピュータ35は、光源32に対してその波長を照射するように制御する。そして、コンピュータ35は、光検出器34から得た生データを、プログラムに記述された処理に従って重金属の濃度データに変換する。また、プログラムは、元素Aの濃度が既知である標準試料に対する応答強度を情報として保持している。そして、プログラムを実行するコンピュータ35は、実際の試料の応答強度との比例計算をすることで、土壌サンプル4における元素Aの濃度を決定してもよい。
【0090】
なお、コンピュータ35は、取得した分析情報をあらかじめ定められた出力先に出力することとしてもよい。例えば、コンピュータ35は、分析情報をあらかじめ指定した結果フォーマットに入力した後に、分析情報を必要としている対象者に電子メールなどで発信してもよい。また、コンピュータ35は、あらかじめ指定されたインターネット上の情報格納域にアップロードしてもよい。
【0091】
さらに、コンピュータ35は、分析情報を用いた高度な判定結果をインターネット上に指定された情報保存域にアップロードしてもよい。分析情報を用いた高度な判定結果とは、例えば、分析情報に含まれる半定量データがあらかじめ定めた閾値を超えているか否かを判定した結果であってもよい。分析情報を用いた高度な判定結果の具体例としては、ヒ素、カドミウム、水銀、ニッケル、クロム、鉛、窒素、リン、炭素の9項目に関して、分析情報に含まれるこれらの濃度情報が、閾値を超えたか否かであってもよい。コンピュータ35が上述の処理を自動的に実行することにより、省力化と迅速化を図ることができる。
【0092】
次に、オペレータは、容器載置面31aから収容済容器2Sを取り外す(工程S26)。工程S26を実施することにより、一つの収容済容器2Sに対する分析作業が完了する。
【0093】
工程S21で準備した収容済容器2Sの数が複数であった場合には、2個目の収容済容器2Sについて分析作業を行う。この場合には、まず、容器載置面31aに収容済容器2Sを配置する(工程S24)。そして、工程S24~工程S26の工程を、全ての収容済容器2Sの分析が完了するまで繰り返し行う。
【0094】
上記の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法は、変色、発色又は発光を伴う化学反応を生じさせるような前処理を必要とすることなく、成分情報を得ることができる。さらに、上記の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法によれば、分析そのものはレーザー光の照射、及び、照射に起因する応答の検出だけで完了するので、ごく短時間で分析結果を得ることができる。
【0095】
なお、上記の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法では、肥料出荷を準備している工場に対して分析情報を報告してもよい。さらに、肥料を入手済みであり且ついまだ施肥していない肥料のユーザに対して電信手段を用いて分析情報を報告してもよい。
【0096】
<土壌サンプル4の成分情報を取得する方法の作用効果>
第1実施形態の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法は、土壌サンプル4を収容した収容済容器2Sを準備する工程S1と、収容済容器2Sが載置される容器載置面31aを有し、容器載置面31aからの距離によって定義可能な焦点Fを有し、収容済容器2Sに収容された状態で焦点Fに位置する土壌サンプル4に関する情報を得る成分分析装置3において、容器載置面31aから所定距離だけ離間した位置に焦点Fを合わせる工程S23と、容器載置面31aに収容済容器2Sを配置する工程S24と、容器載置面31aに配置された収容済容器2Sに収容されている土壌サンプル4に関する情報を得る工程S25と、を有する。
【0097】
上記の方法によれば、容器載置面31aから焦点高さH1だけ離れた位置に成分分析装置3の焦点Fを合わせる工程S23が、収容済容器2Sを配置する工程S24の前にあるため、迅速に土壌サンプル4の分析を行うことができる。すなわち、成分分析装置3の焦点Fを合わせる工程S23が、収容済容器2Sを配置する工程S24の後にないため、迅速に土壌サンプル4に関する情報を取得することができる。
【0098】
要するに、第1実施形態の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法は、対象物である土壌サンプル4をあらかじめ行う成形処理により、少なくとも1つの平面を有するものとする。少なくとも1つの平面は、分析対象面となる。あらかじめ行う成形処理は、圧縮成形や切削などを含んでよい。例えば、第1実施形態のように対象物が土壌などの細かい粒である場合には、あらかじめ行う成形処理により、固化したサンプルとすることができる。サンプルの形状は、円柱でもよいし、六面体でもよい。
【0099】
上記の方法によれば、肥料が工場で製造完了してから実際に施肥するまでの短い時間でも、分析情報を得ることができる。さらに、成分分析システム1として構成することによって、煩雑な手作業が減るので人件費のコストダウンに貢献できる。
【0100】
第1実施形態の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法は、土壌サンプル4に関する情報を得る工程S25の後に、土壌サンプル4を収容した収容済容器2Sを容器載置面31aから取り外す工程S26をさらに有する。さらに、この方法は、焦点Fを合わせる工程S23を実施した後に、当該収容済容器2Sを配置する工程S24と土壌サンプル4に関する情報を得る工程S25と容器載置面31aから取り外す工程S26とを、土壌サンプル4を収容した収容済容器2Sを取り替えながら繰り返す。
【0101】
成分分析装置3の焦点Fを合わせる工程S23が、収容済容器2Sを配置する工程S24の後にないため、収容済容器2Sを取り換える度に成分分析装置3の焦点Fを合わせる必要がない。よって、迅速に対象物に関する情報を取得することができる。
【0102】
収容済容器を準備する工程S1は、成形された土壌サンプル4を得る工程S15と、土壌サンプル4を囲む本体壁部211及び本体底部212と土壌サンプル4を露出させる本体開口部21aとを含む容器本体21と、本体壁部211及び本体底部212に囲まれた領域Rに配置されると共に土壌サンプル4が配置される押圧部材23と、を有する容器部材を準備する工程S16と、押圧部材23の上に成形された土壌サンプル4を配置する工程S18と、容器部材に、土壌サンプル4に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部222及び容器本体21に収容された土壌サンプル4に接する蓋肩部223を含む蓋部材22を取り付ける工程S19と、を含んでいる。これにより、収容済容器2Sを得ることができる。
【0103】
<第2実施形態>
第2実施形態の成分分析システム1Aは、第1実施形態の成分分析システム1に対して、容器2Aが栓部材24をさらに有している点で相違している。
【0104】
図5に示すように、容器2Aは、第1実施形態の容器2の構成に加えて栓部材24をさらに有する。栓部材24は、蓋部材22の蓋貫通穴22hに対して着脱可能にはめ込まれる。栓部材24は、蓋部材22を容器本体21に取り付けるときには、蓋貫通穴22hにはめ込まれている。また、栓部材24は、成分分析装置3によって土壌サンプル4に関する情報を得るときには、蓋貫通穴22hから取り外されている。以下、蓋窓部222にはめ込まれている状態の栓部材24について説明する。
【0105】
栓部材24は、取手部241と、接続部242と、を有する。取手部241は、柱状に形成されている。取手部241は、蓋窓部222と向かい合うように配置されている。取手部241の外側の取手側面241aは、蓋窓部222の外側に位置している。すなわち、取手部241は、蓋窓部222よりも大きく形成されている。
【0106】
接続部242は、取手部241の下側の取手裏面241rから、下側に向かって延在している。接続部242は、蓋貫通穴22hにはめ込まれている。具体的には、接続部242の外側の接続側面242aは、蓋貫通穴22hの内周面と接触している。これにより、蓋部材22を容器本体21に取り付けたときに、土壌サンプル4が蓋貫通穴22hから容器2Aの外に飛び出すことを抑制することができる。
【0107】
<第2実施形態の成分分析システムの作用効果>
容器2は、蓋貫通穴22hに対して着脱可能に取り付けられる栓部材24をさらに有する。栓部材24は、容器本体21に蓋部材22を取り付けるときには、蓋貫通穴22hにはめ込まれている。栓部材24は、成分分析装置3によって土壌サンプル4の成分情報を得るときには、蓋貫通穴22hから取り外されている。
【0108】
例えば、土壌サンプル4を収容した容器2の輸送時に、栓部材24を蓋窓部222にはめ込むことで、土壌サンプル4の飛び出しを抑制することができる。また、栓部材24は、成分分析装置3によって土壌サンプル4の成分情報を得るときには蓋貫通穴22hから取り外されているので、土壌サンプル4を露出させることができる。これにより、蓋貫通穴22hは、成分分析装置3によって土壌サンプル4の成分情報を得るためのパルスレーザー光L1又は蛍光L2を通過させることができる。
【0109】
要するに、第2実施形態では、蓋部材22及び栓部材24を含む蓋ユニット25によって、圧縮成形を行う。第2実施形態でも第1実施形態で例示したものと同様の分析を行うことができる。さらに、第2実施形態の容器2Aは、蓋貫通穴22hからの土壌サンプル4の飛び出しや、臭気、放射性物質の飛散を防止することができる。その結果、土壌サンプル4を収容した容器2の輸送時にこれらの飛び出しや飛散に関する対策を簡易にすることができる。そのうえ、第2実施形態の容器2Aによれば、スラリーなどの流動性のあるサンプルも測定することができる。
【0110】
次に、第2実施形態の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法を説明する。土壌サンプル4の成分情報を取得する方法は、上述した容器2Aを用いた分析方法である。図6は、土壌サンプル4の成分情報を取得する方法の主要な工程を示すフローチャートである。図7は、図6に示すいくつかの工程を説明するための図である。
【0111】
第2実施形態の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法では、土壌サンプル4を収容した容器2Aを準備する工程(工程S3)と、土壌サンプル4を分析する工程(工程S4)と、を有する。第1実施形態と同様に、工程S4を実施する主体は、工程S3を実施する主体と同じであってもよい。また、工程S4を実施する主体は、工程S3を実施する主体と異なってもよい。
【0112】
工程S3は、図6に示すように、工程S31からS36を有する。まず、成形されていない土壌サンプル4を準備する(工程S31)。次に、空の容器本体21を準備する(工程S32)。次に、空の容器本体21に押圧部材23を入れる(工程S33、図7(a)参照)。工程S32、S33を実施することにより、容器本体21と押圧部材23とを含む容器部材26を得ることができる。次に、容器本体21内の押圧部材23の上に成形されていない土壌サンプル4を置く(工程S34、図7(b)参照)。次に、蓋部材22と栓部材24とを有する蓋ユニット25を準備する(工程S35)。次に、成形されていない土壌サンプル4が収容された容器本体21に蓋ユニット25を取り付ける(工程S36)。工程S36では、成形されていない土壌サンプル4を容器本体21内に押し込むようにして、蓋ユニット25を、容器本体21に取り付ける(工程S36、図7(c)参照)。これにより、押圧部材23が土壌サンプル4を加圧し、成形された土壌サンプル4が得られる。その結果、土壌サンプル4を収容した容器2Aである収容済容器2ASを得ることができる。
【0113】
次に、成形された土壌サンプル4を分析する工程(工程S4)を行う。工程S4は、工程S41~S47を有する。
【0114】
まず、オペレータは、収容済容器2ASを準備する(工程S41)。次に、オペレータは、成分分析装置3を準備する(工程S42)。次に、オペレータは、容器載置面31aから焦点高さH1だけ離間した位置に焦点Fを合わせる(工程S43)。次に、オペレータは、蓋部材22から栓部材24を取り外す(工程S44、図7(d)参照)。次に、オペレータは、容器載置面31aに収容済容器2ASを配置する(工程S45)。次に、土壌サンプル4の成分分析を行う(工程S46)。次に、容器載置面31aから収容済容器2ASを取り外す(工程S47)。容器が複数ある場合は、工程S47の後に工程S44に戻り、工程S44~工程S47の工程を、全ての収容済容器2ASの分析が完了するまで繰り返し行う。
【0115】
<第2実施形態の土壌サンプル4の成分情報を取得する方法の作用効果>
第2実施形態の収容済容器2ASを準備する工程S3は、土壌サンプル4を囲む本体壁部211及び本体底部212と土壌サンプル4を露出させる本体開口部21aとを含む容器本体21と、本体壁部211及び本体底部212に囲まれた領域Rに配置されると共に土壌サンプル4が配置される押圧部材23と、を有する容器部材26を準備する工程S32、S33と、容器部材26に成形されていない土壌サンプル4を配置する工程S34と、成形されていない土壌サンプル4が配置された容器部材26に、土壌サンプル4の成分情報を得るためのパルスレーザー光L1及び蛍光L2を通過させる蓋窓部222及び容器本体21に収容された土壌サンプル4に接する蓋肩部223を含む蓋部材22と、蓋窓部222を塞ぐように蓋窓部222に対して着脱可能に取り付けられる栓部材24と、を有する蓋ユニットを取り付ける工程S36と、を含む。これにより、蓋ユニット25を含む収容済容器2ASを得ることができる。
【0116】
<変形例1>
本発明の対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0117】
図8に示す変形例に係る容器2Bでは、第1実施形態の容器2に対して、蓋部材22が透明部材であるガラス板28を更に有している点で、相違している。ガラス板28は、蓋窓部222と容器本体21との間に配置されている。ガラス板28は、土壌サンプル4に照射されるパルスレーザー光L1を透過可能である。また、ガラス板28は、土壌サンプル4から放射されるプラズマに起因する蛍光L2も透過可能である。
【0118】
なお、透明部材の材料は、分析に用いる光の波長に応じて適宜選択してよい。例えば、波長が紫外線までである場合には、透明部材の材料として、石英、サファイア、フッ化カルシウム等を選択することができる。また、透明材料として、ガラスやアクリルを選択することもできる。
【0119】
ガラス板28は、蓋壁部221の内側に配置されている。ガラス板28は、蓋窓部222よりも大きく形成されており、蓋貫通穴22hを覆っている。すなわち、蓋貫通穴22hは、ガラス板28によって物理的に塞がれている。ガラス板28の上側のガラス板主面28aは、蓋肩部223の肩部裏面223rに接している。ガラス板28のガラス板裏面28rは、土壌サンプル4のサンプル主面4aと接している。
【0120】
変形例に係る容器2Bでは、ガラス板28が土壌サンプル4に照射されるパルスレーザー光L1及び土壌サンプル4から放射されるプラズマに起因する蛍光L2を透過することができる。また、蓋窓部222がガラス板28によって塞がれている。これにより、評価対象物を収容した容器2Bの輸送時に、蓋貫通穴22hからの土壌サンプル4の飛び出しを抑制することができる。
【0121】
変形例1の容器2Bであっても、第1実施形態と同様の分析に供することができる。さらに、変形例1の容器2Bによれば、蓋貫通穴22hからの土壌サンプル4の飛び出しや、臭気、放射性物質の飛散を防止することができる。その結果、対象物を収容した容器2Bの輸送時にこれらの飛び出しや飛散に関する対策を簡易にすることができる。そのうえ、変形例の容器2Bは、スラリーなどの流動性のあるサンプルも測定することができる。
【0122】
<その他の変形例>
対象物情報取得システムは、レーザブレークダウン分光装置を用いたシステムに限られず、蛍光X線分析装置(XRF)を用いたシステムでもよい。蛍光X線分析装置は、サンプルにX線を照射して発生する固有の蛍光X線の波長やエネルギーを測定する。蛍光X線分析装置は、これらの測定結果を利用してサンプルを構成する元素を同定する組成分析を行う。さらに、蛍光X線分析装置は、これらの測定結果を利用してサンプルを構成する元素の含有量を定量分析する。
【0123】
対象物情報取得システムは、走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いたシステムでもよい。走査型電子顕微鏡装置は、電子線を収束させた電子ビームを測定サンプルに照射する。走査型電子顕微鏡装置は、電子ビームが照射された測定サンプルから放射される二次電子や反射電子(後方散乱電子)、透過電子、X線、カソードルミネッセンス(蛍光)、内部起電力等を検出することにより、測定サンプルに関する情報を得る。走査型電子顕微鏡は、収束コイルを含む。収束コイルは、電子線を焦点Fに収束させるための機能を奏するから、第1実施形態の成分分析装置3が備えるレンズ331と機能面で一致する。
【0124】
対象物に関する情報が、目視観察によって得られる情報又はカメラ等による画像情報であるとき、対象物情報取得システムは、光学顕微鏡を用いたシステムでもよい。光学顕微鏡を備えるシステムは、対象物に対して光源装置から照明光を与えてもよい。また、周囲の自然光により観察や撮像が可能である場合には、光源装置を省略してもよい。
【0125】
対象物情報取得システムは、さらなる省力化及び迅速化を図るため、収容済容器2Sを自動的にステージ31に配置するためのロボットアームを備えてもよい。ロボットアームを備える成分分析システムによれば、まず、コンピュータ35は、ロボットアームを制御することによって、ステージ31に収容済容器2Sを配置する。次に、コンピュータ35は、光源32、光検出器34及びレンズ駆動部333を制御することにより、自動的に成分情報を得るための生データを得る。次に、コンピュータ35は、取得した生データを各種元素の濃度に変換すると共にステージ31から収容済容器2Sを取り除く。さらに、コンピュータ35は、あらかじめ定められた電子媒体に各種元素の濃度を含む成分情報を記録してもよいし、成分情報をインターネット上のあらかじめ指定された記録域にアップロードしてもよい。そして、コンピュータ35は、あらかじめ登録された情報提供先に対して、電子メール等の手段よって成分情報のアップロードが完了したことを知らせてもよい。これらの一連の動作をコンピュータ35が自動的に実行することにより、さらなる省力化及び時間短縮化を図ることができる。
【0126】
[付記]
対象物情報取得システム及び対象物の情報を取得する方法は、以下の構成を含む。
【0127】
本開示は、[1]「対象物を収容する容器と、
前記容器が載置される容器載置面を有し、前記容器載置面からの距離によって定義可能な焦点を有し、前記容器に収容された状態で前記焦点に位置する前記対象物に関する情報を得る情報取得装置と、を備え、
前記容器は、
前記対象物を囲む本体壁部及び本体底部と前記対象物を露出させる本体開口部とを含む容器本体と、
前記対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び前記容器本体に収容された前記対象物に接する蓋肩部を含み、前記容器本体に取り付けられる蓋部材と、
前記本体壁部及び前記本体底部に囲まれた領域に配置されると共に前記対象物が載置されて前記蓋部材に向けて前記対象物を押圧する力を発生する押圧部材と、を有し、
前記本体底部から前記蓋肩部までの距離は、前記容器載置面から前記焦点までの距離に等しい、対象物情報取得システム。」である。
【0128】
本開示は、[2]「前記蓋窓部は、前記容器本体に収容した前記対象物を露出させる蓋貫通穴を含む、上記[1]に記載の対象物情報取得システム。」である。
【0129】
本開示は、[3]「前記蓋窓部は、前記容器本体に収容した前記対象物を露出させる蓋貫通穴と、前記対象物に照射される電磁波又は前記対象物から放射される電磁波を透過可能な透明部材と、を含む、上記[1]に記載の対象物情報取得システム。」である。
【0130】
本開示は、[4]「前記蓋窓部は、前記容器本体に収容した前記対象物を露出させる蓋貫通穴を含み、
前記容器は、前記蓋窓部の前記蓋貫通穴に対して着脱可能にはめ込まれる栓部材をさらに有し、
前記栓部材は、
前記容器本体に前記蓋部材を取り付けるときには、前記蓋窓部の前記蓋貫通穴にはめ込まれており、
前記情報取得装置によって前記対象物に関する情報を得るときには、前記蓋窓部の前記蓋貫通穴から取り外されている、上記[1]又は[2]に記載の対象物情報取得システム。
」である。
【0131】
本開示は、[5]「前記押圧部材の弾性率は、前記対象物の弾性率よりも低い、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の対象物情報取得システム。」である。
【0132】
本開示は、[6]「前記情報取得装置は、前記焦点に位置する前記対象物に向けて照射電磁波を与え、与えられた前記照射電磁波に起因して前記対象物から戻る戻り電磁波に基づいて、前記対象物に関する情報として前記対象物の成分を得る、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の対象物情報取得システム。」である。
【0133】
本開示は、[7]「対象物を収容した収容済容器を準備する工程と、
前記収容済容器が載置される容器載置面を有し、前記容器載置面からの距離によって定義可能な焦点を有し、前記収容済容器に収容された状態で前記焦点に位置する前記対象物に関する情報を得る情報取得装置において、前記容器載置面から所定距離だけ離間した位置に前記焦点を合わせる工程と、
前記容器載置面に前記収容済容器を配置する工程と、
前記容器載置面に配置された前記収容済容器に収容されている前記対象物に関する情報を得る工程と、を有する、対象物の情報を取得する方法。」である。
【0134】
本開示は、[8]「前記収容済容器を準備する工程では、複数の前記収容済容器を準備し、
前記対象物に関する情報を得る工程の後に、前記収容済容器を前記容器載置面から取り外す工程をさらに有し、
前記焦点を合わせる工程を実施した後に、前記収容済容器を配置する工程と前記対象物に関する情報を得る工程と前記容器載置面から取り外す工程とを、前記収容済容器を取り替えながら繰り返す、上記[7]に記載の対象物の情報を取得する方法。」である。
【0135】
本開示は、[9]「前記収容済容器を準備する工程は、
成形された前記対象物を得る工程と、
前記対象物を囲む本体壁部及び本体底部と前記対象物を露出させる開口部とを含む容器本体と、前記本体壁部及び前記本体底部に囲まれた領域に配置されると共に前記対象物が配置される押圧部材と、を有する容器部材を準備する工程と、
前記押圧部材に前記成形された前記対象物を載置する工程と、
前記容器部材に前記対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び前記容器本体に収容された前記対象物に接する蓋肩部を含む蓋部材を取り付ける工程と、を含む、上記[7]に記載の対象物の情報を取得する方法。」である。
【0136】
本開示は、[10]「前記収容済容器を準備する工程は、
前記対象物を囲む本体壁部及び本体底部と前記対象物を露出させる開口部とを含む容器本体と、前記本体壁部及び前記本体底部に囲まれた領域に配置されると共に前記対象物が配置される押圧部材と、を有する容器部材を準備する工程と、
前記押圧部材に成形されていない前記対象物を載置する工程と、
前記成形されていない前記対象物が載置された前記容器部材に、前記対象物に関する情報を得るための電磁波又は電子を通過させる蓋窓部及び前記容器本体に収容された前記対象物に接する蓋肩部を含む蓋部材と、前記蓋窓部に設けられた蓋貫通穴を塞ぐように前記蓋窓部に対して着脱可能にはめ込まれる栓部材と、を有する蓋ユニットを固定する工程と、を含む、上記[7]に記載の対象物の情報を取得する方法。」である。
【0137】
本開示は、[11]「前記対象物に関する情報を得る工程の前に、前記蓋部材の前記蓋貫通穴から前記栓部材を取り外す工程をさらに有する、上記[10]に記載の対象物の情報を取得する方法。」である。
【符号の説明】
【0138】
1,1A 成分分析システム
2,2A,2B 容器
2S,2AS 収容済容器
21 容器本体
211 本体壁部
212 本体底部
21a 本体開口部
213 容器連結爪部
22 蓋部材
222 蓋窓部
223 蓋肩部
224 蓋連結爪部
23 押圧部材
24 栓部材
25 蓋ユニット
26 容器部材
28 ガラス板(透明部材)
3 成分分析装置(情報取得装置)
31 ステージ
31a 容器載置面
32 光源
33 光学系
331 レンズ
332 ミラー
333 レンズ駆動部
34 光検出器
35 コンピュータ
4 土壌サンプル(対象物)
F 焦点
H1 焦点高さ
H2 容器高さ
H3 合計高さ
L1 パルスレーザー光(照射電磁波)
L2 蛍光(戻り電磁波)
R 領域
【要約】
【課題】迅速に対象物の分析を行う。
【解決手段】成分分析システム1は、土壌サンプル4を収容するための容器2と、容器載置面31aからの焦点高さH1によって定義可能な焦点Fを有する成分分析装置3と、を備える。容器2は、土壌サンプル4を収容する容器本体21と、土壌サンプル4に関する情報を得るためのパルスレーザー光L1及び蛍光L2を通過させる蓋窓部222及び容器本体21に収容された土壌サンプル4に接する蓋肩部223を含み、容器本体21に取り付けられる蓋部材22と、容器本体21の内側に配置されると共に蓋部材22に向けて土壌サンプル4を押圧する力を発生する押圧部材23と、を有する。本体底部212から蓋肩部223までの容器高さH2は、容器載置面31aから焦点Fまでの焦点高さH1に等しい。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8