(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
B62D 65/18 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B62D65/18 Z
(21)【出願番号】P 2023218819
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2023197144の分割
【原出願日】2023-11-21
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波田野 恭祥
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恭裕
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100179(JP,A)
【文献】特開2017-191351(JP,A)
【文献】特開2022-148651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の外形のうち
の一部の領域である対象領域であって、予め定められた複数の工程で部品が組み付けられない領域を有し
前記複数の工程に共通の対象領域の点群を含む3次元点群データ
を、
前記複数の工程においてそれぞれ取得する点群データ取得部と、
前記複数の工程において、取得された前記3次元点群データ
のうちの前記対象領域の点群と、前記対象領域に対応する点群を含む参照用点群データと、を比較することによって、前記移動体の位置と向きとの少なくとも一方を取得する位置情報取得部と、を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記対象領域は、前記移動体としての車両の外形のうち、予め定められた基準高さ以下の領域であり、
第1工程における前記基準高さは、前記第1工程の後工程である第2工程における前記基準高さより高い、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記3次元点群データは、前記対象領域の点群データである、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記3次元点群データは、測距装置によって測定された測定点群データの一部が除外された点群データである、装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置であって、
前記参照用点群データは、前記対象領域に対応する点群データである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の製造工程において、自律的に又は遠隔制御によって車両を走行させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のような移動体を自律制御又は遠隔制御によって移動させるために、測距装置により測定された3次元点群データと参照用点群データとの比較に基づいて、移動体の位置や向きを取得する技術が知られている。ところで、移動体の製造工程において移動体に部品が組み付けられると、移動体の外形が変化し得る。こうした移動体の外形の変化によらず、3次元点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
本開示の一形態によれば、装置が提供される。この装置は、移動体の外形のうちの一部の領域である対象領域であって、予め定められた複数の工程で部品が組み付けられない領域を有し前記複数の工程に共通の対象領域の点群を含む3次元点群データを、前記複数の工程においてそれぞれ取得する点群データ取得部と、前記複数の工程において、取得された前記3次元点群データのうちの前記対象領域の点群と、前記対象領域に対応する点群を含む参照用点群データと、を比較することによって、前記移動体の位置と向きとの少なくとも一方を取得する位置情報取得部と、を備える。
本開示は、以下の形態としても実現できる。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、装置が提供される。この装置は、移動体の外形のうち、予め定められた複数の工程で部品が組み付けられない領域を有する対象領域の点群を含む3次元点群データ、を取得する点群データ取得部と、取得された前記3次元点群データと、前記対象領域に対応する点群を含む参照用点群データと、を比較することによって、前記移動体の位置と向きとの少なくとも一方を取得する位置情報取得部と、を備える。
この形態によれば、部品が組み付けられない領域を有する対象領域に応じて3次元点群データと参照用点群データとの比較を実行できるので、移動体への部品の組み付けに伴って移動体の外形が変化する場合であっても、3次元点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行できる。
(2)上記形態では、前記対象領域は、前記移動体としての車両の外形のうち、予め定められた基準高さ以下の領域であり、第1工程における前記基準高さは、前記第1工程の後工程である第2工程における前記基準高さより高くてもよい。この形態によれば、移動体として車両への部品の組み付けに応じて基準高さを低くすることができ、3次元点群データと参照用点群データとの比較をより適切に実行できる。
(3)上記形態では、前記3次元点群データは、前記対象領域の点群データであてあってもよい。この形態によれば、3次元点群データとして対象領域の点群データを用いることで、3次元点群データと参照用点群データとの比較をより適切に実行できる。
(4)上記形態では、前記3次元点群データは、測距装置によって測定された測定点群データの一部が除外された点群データであってもよい。この形態によれば、測定点群データが対象領域外の領域の点群を含む場合であっても、対象領域の点群データを参照用点群データとの比較に用いることでき、より適切に比較を実行できる。
(5)上記形態では、前記参照用点群データは、前記対象領域に対応する点群データであってもよい。この形態によれば、参照用点群データとして対象領域に対応する点群データを用いることで、3次元点群データと参照用点群データとの比較をより適切に実行できる。
本開示は、上述した装置としての形態以外にも、例えば、システムや、サーバや、移動体や、制御方法や、制御方法を実現するためのプログラムや、プログラムが記録された一時的でない記録媒体や、プログラム製品などの形態で実現することができる。なお、当該プログラム製品は、例えば、プログラムが記録された記録媒体として提供されてもよいし、ネットワークを介して配信可能なプログラム製品として提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態におけるシステムの構成を示す概念図。
【
図2】第1実施形態におけるシステムの構成を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態における対象領域を説明する図。
【
図4】第1実施形態における車両の走行制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図5】指令生成処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態におけるマッチングの例を説明する図。
【
図7】第2実施形態におけるマッチングの例を説明する図。
【
図8】第3実施形態におけるマッチングの例を説明する図。
【
図9】第4実施形態におけるマッチングの例を説明する図。
【
図10】第5実施形態における対象領域を説明する図。
【
図11】第6実施形態におけるシステムの構成を示すブロック図。
【
図12】第6実施形態における車両の走行制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態におけるシステム50の構成を示す概念図である。システム50は、1以上の車両100と、サーバ200と、1以上の測距装置300とを備える。第1実施形態におけるサーバ200は、本開示における「装置」に相当する。
【0009】
本開示において、「移動体」は、移動し得る物体を意味し、例えば、車両や電動垂直離着陸機(いわゆる空飛ぶ自動車)である。車両は、車輪によって走行する車両であっても無限軌道によって走行する車両であってもよく、例えば、乗用車、トラック、バス、二輪車、四輪車、戦車、工事用車両などである。車両は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ガソリン自動車、ハイブリッド自動車、ならびに燃料電池自動車を含む。移動体が車両以外である場合には、本開示における「車両」「車」との表現を、適宜に「移動体」に置き換えることができ、「走行」との表現を、適宜に「移動」に置き換えることができる。
【0010】
車両100は、無人運転により走行可能に構成されている。「無人運転」とは、搭乗者の走行操作によらない運転を意味する。走行操作とは、車両100の「走る」、「曲がる」、「止まる」の少なくともいずれかに関する操作を意味する。無人運転は、車両100の外部に位置する装置を用いた自動または手動の遠隔制御によって、あるいは、車両100の自律制御によって実現される。無人運転によって走行している車両100には、走行操作を行わない搭乗者が搭乗していてもよい。走行操作を行わない搭乗者には、例えば、単に車両100の座席に着座している人や、組み付け、検査、スイッチ類の操作といった走行操作とは異なる作業を車両100に乗りながら行っている人が含まれる。なお、搭乗者の走行操作による運転は、「有人運転」と呼ばれることがある。
【0011】
本開示において、「遠隔制御」は、車両100の外部から車両100の動作の全てが完全に決定される「完全遠隔制御」と、車両100の外部から車両100の動作の一部が決定される「部分遠隔制御」とを含む。また、「自律制御」は、車両100の外部の装置から一切の情報を受信することなく車両100が自身の動作を自律的に制御する「完全自律制御」と、車両100の外部の装置から受信した情報を用いて車両100が自身の動作を自律的に制御する「部分自律制御」とを含む。
【0012】
車両100は、無人運転により移動可能な構成を備えていればよく、例えば、以下に述べる構成を備えるプラットフォームの形態であってもよい。具体的には、車両100は、無人運転により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮するために、少なくとも、後述する車両制御装置と、アクチュエータ群とを備えていればよい。無人運転のために車両100の外部の装置から情報を取得する場合に、車両100は、さらに、通信装置を備えていればよい。すなわち、無人運転により移動可能な車両100は、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、バンパやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、ボディシェルが装着されていなくてもよい。この場合、車両100が工場FCから出荷されるまでの間に、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよいし、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されていない状態で、車両100が工場FCから出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよい。各部品は、車両100の上側、下側、前側、後側、右側あるいは左側といった任意の方向から装着されてよく、それぞれ同じ方向から装着されてもよいし、それぞれ異なる方向から装着されてもよい。
【0013】
本実施形態では、システム50は、車両100を製造する工場FCにおいて用いられる。工場FCの基準座標系は、グローバル座標系GCであり、工場FC内の任意の位置は、グローバル座標系GCにおけるX,Y,Zの座標で表現することができる。工場FCは、第1場所PL1と、第2場所PL2と、第3場所PL3とを備えている。第1場所PL1と第2場所PL2と第3場所PL3とは、車両100が走行可能な走路TRによって接続されている。走路TRは、第1場所PL1と第2場所PL2とを接続する第1走路TR1、および、第2場所PL2と第3場所PL3とを接続する第2走路TR2を有している。工場FCには、走路TRに沿って、複数の測距装置300が設置されている。工場FCにおける各測距装置300の位置は、予め調整されている。車両100は、無人運転によって、第1場所PL1から第3場所PL3へと、各走路TRおよび第2場所PL2を通って移動する。本実施形態では、第1場所PL1から第3場所PL3へと移動する期間において、車両100は、プラットフォームの形態である。
【0014】
第1場所PL1、第1走路TR1、第2場所PL2、第2走路TR2、第3場所PL3では、車両100に関して、それぞれ異なる工程が実施される。第1場所PL1では、車両100をプラットフォームの形態まで組み立てるためのプラットフォーム組み立て工程が実施される。第1走路TR1では、無人運転によって車両100を第2場所PL2まで移動させる第1移動工程が実施される。第2場所PL2では、車両100に対して新たに部品の組み付けを行う組み付け工程が実施される。第2走路TR2では、無人運転によって車両100を第3場所PL3まで移動させる第2移動工程が実施される。第3場所PL3では、車両100を検査する検査工程が実施される。なお、第1移動工程や第2移動工程は、車両100の無人運転によって車両100を搬送する工程であるとも言える。また、上記の各工程は、工場FCにおける車両100の製造工程に含まれる。
【0015】
図2は、システム50の構成を示すブロック図である。車両100は、車両100の各部を制御するための車両制御装置110と、車両制御装置110の制御下で駆動する1以上のアクチュエータを含むアクチュエータ群120と、サーバ200等の外部の装置と無線通信によって通信するための通信装置130とを備えている。アクチュエータ群120には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータといった、車両100の走行に関するアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する駆動輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。
【0016】
車両制御装置110は、プロセッサ111と、メモリ112と、入出力インタフェイス113と、内部バス114とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ111、メモリ112、および、入出力インタフェイス113は、内部バス114を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェイス113には、アクチュエータ群120、および、通信装置130が接続されている。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムPG1を実行することにより、車両制御部115としての機能を含む種々の機能を実現する。
【0017】
車両制御部115は、アクチュエータ群120を制御することで、車両100を走行させる。車両制御部115は、サーバ200から受信した走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。走行制御信号は、車両100を走行させるための制御信号である。本実施形態では、走行制御信号は、車両100の加速度および操舵角をパラメータとして含んでいる。他の実施形態では、走行制御信号は、車両100の加速度に代えて、あるいは、これに加えて、車両100の速度をパラメータとして含んでいてもよい。
【0018】
測距装置300は、車両100の外部に位置するセンサである外部センサに相当する。測距装置300は、車両100を測定し、検出結果として3次元点群データを出力する。測距装置300としては、カメラやLiDAR(Light Detection And Ranging)を使用できる。特に、LiDARは、高精度の3次元点群データが得られる点で好ましい。本実施形態における測距装置300は、LiDARによって構成されている。本実施形態では、個々の測距装置300の位置は固定されており、グローバル座標系GCと個々の測距装置300の装置座標系との相対関係は既知である。グローバル座標系GCの座標値と個々の測距装置300の装置座標系の座標値とを相互に変換するための座標変換行列は、サーバ200内に予め格納されている。測距装置300は、通信装置(図示せず)を備えており、有線通信あるいは無線通信によりサーバ200等の他の装置と通信することができる。以下では、測距装置300によって測定される3次元点群データのことを、測定点群データともいう。
【0019】
サーバ200は、プロセッサ201と、メモリ202と、入出力インタフェイス203と、内部バス204とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ201、メモリ202、および、入出力インタフェイス203は、内部バス204を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェイス203には、サーバ200の外部の各種装置と通信するための通信装置205が接続されている。通信装置205は、無線通信によって車両100と通信することができ、有線通信あるいは無線通信によって各測距装置300と通信することができる。メモリ202には、プログラムPG2、参照経路RR、テンプレート点群データTP、および、領域データベースDBを含む種々の情報が格納されている。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムPG2を実行することにより、後述する車両100の走行制御を実行する機能や、点群データ取得部215、工程情報取得部220、領域決定部225、位置情報取得部250、および、指令生成部260としての機能を含む種々の機能を実現する。
【0020】
点群データ取得部215は、対象点群データを取得する。対象点群データは、測定点群データに基づく3次元点群データであり、後述するように、位置情報取得部250によって参照用点群データと比較される。参照用点群データは、予め準備されたテンプレート点群データTPに基づく3次元点群データであり、位置情報取得部250によって対象点群データと比較される。
【0021】
テンプレート点群データTPは、例えば、車両100の外観形状を表す3次元CADデータに基づいて生成されてもよいし、測距装置によって車両100が予め測定されることによって生成されてもよい。また、テンプレート点群データTPは、例えば、車種や型式に応じて準備されると好ましい。こうすれば、車両100の車種や型式に応じた参照用点群データを対象点群データとの比較に使用できる。また、他の実施形態では、テンプレート点群データTPは、例えば、サーバ200の外部のコンピュータや記録媒体等に格納されていてもよい。
【0022】
対象点群データは、対象領域の点群を少なくとも含む。参照用点群データは、対象領域に対応する点群を少なくとも含む。対象領域は、非組み付け領域を少なくとも有する領域である。本実施形態における対象領域は、非組み付け領域のみを有する。非組み付け領域は、車両100の外形のうち、予め定められた複数の工程を含む対象工程において、車両100への部品の組み付けが行われない領域である。本実施形態における非組み付け領域は、プラットフォーム組み立て工程から検査工程までの間に、すなわち、
図1に示した第1場所PL1から第3場所PL3まで車両100が移動する期間に、車両100への部品の組み付けが行われない領域である。
【0023】
他の実施形態では、対象領域は、非組み付け領域とは異なる領域を含んでいてもよい。ただし、対象領域に占める非組み付け領域の面積の割合は、50%以上であると好ましく、70%以上であるとより好ましく、90%以上であると更に好ましい。
【0024】
以下では、車両100の外形のうち、非組み付け領域とは異なる領域のことを組み付け領域ともいう。組み付け領域における車両100の外形は、車両100のへの部品の組み付けによって、非組み付け領域における車両100の外形に比較して大きく変化する。より具体的には、通常、非組み付け領域における車両100の外形は、ほとんどあるいは全く変化しないのに対し、組み付け領域における車両100の外形は、組み付けられる部品の形状に応じて変化する。
【0025】
図3は、本実施形態における対象領域を説明する図である。
図3には、第1走路TR1を走行する車両100aと、第2走路TR2を走行する車両100bとが示されている。
図3では、対象領域にハッチングが付されている。車両100bは、部品PTが組み付けられた車両100aに相当する。部品PTは、組み付け工程APにおいて車両100の組み付け領域に組み付けられる。車両100aに対しては、第1移動工程MP1が実施される。車両100bに対しては、第2移動工程MP2が実施される。第1移動工程MP1を第1工程としたとき、組み付け工程APや第2移動工程MP2は、第1工程の後工程である第2工程に相当する。
【0026】
本実施形態における対象領域は、車両100の外形のうち予め定められた基準高さ以下の領域として定義されている。本開示において、基準高さは、車両100が水平面に接地した状態における、車両100の水平面に対する接地位置からの高さとして定義される。また、基準高さは、車両100が水平面に接地した状態における接地面からの高さに相当する。
図3に示すように、第1移動工程MP1における第1基準高さhs1は、第2移動工程MP2における第2基準高さhs2よりも高い。
図3において、第1移動工程MP1における対象領域は、車両100aの外形のうち、第1基準高さhs1の位置p1よりも下方に位置する領域である。第2移動工程MP2における対象領域は、車両100bの外形のうち、第2基準高さhs2の位置p2よりも下方に位置する領域である。
【0027】
基準高さは、車両100に対する部品の組み付けによる車両100の車体の沈み込み量に応じて定められると好ましい。例えば、
図3には、組み付け工程APにおいて車両100に部品PTが組み付けられることによって、車両100の車体が鉛直方向において沈み込み量sa1分、沈み込む様子が示されている。第2基準高さhs2は、例えば、第1基準高さhs1と沈み込み量sa1とに基づいて決定されてもよい。また、沈み込み量sa1は、例えば、実験結果やシミュレーション結果に基づいて算出されてもよい。
【0028】
本実施形態のように、対象領域が基準高さ以下の領域として定義される場合、対象領域は、車両100の外形のうち、高さ方向において接地位置から基準高さの位置までの全領域を含んでいてもよいし、高さ方向において一部の領域のみを含んでいてもよい。例えば、対象領域は、基準高さ以下、かつ、予め定められた0より大きい高さ以上の領域として定められてもよい。このように対象領域が定められることで、路面による影響が対象点群データに及ぶことを抑制でき、対象点群データと参照用点群データとの比較をより適切に実行できる。また、対象領域には、車両100のうち、より特徴量100の多い部分の外形の少なくとも一部が含まれていると好ましい。特徴量は、例えば、エッジ量である。特徴量の多い部分は、例えば、タイヤや、ホイールや、バンパや、フレームである。このように、より特徴の多い部分の外形が対象領域に含まれることで、対象点群データと参照用点群データとの比較をより適切に実行できる。
【0029】
図2に説明を戻す。工程情報取得部220は、車両100の工程情報を取得する。工程情報は、車両100について実施される工程を特定可能な情報である。工程情報としては、例えば、車両100がどの工程に居るかを表す情報を用いてもよいし、車両100の位置情報を用いてもよい。車両100がどの工程に居るかを表す情報は、例えば、各工程の進捗状況を記録したログデータや作業工程に基づいて取得される。こうしたログデータや作業工程は、例えば、メモリ202に記憶されていてもよいし、サーバ200や車両100の外部のコンピュータや記録媒体に記憶されていてもよい。また、本実施形態のように、工場FCにおける測距装置300の設置位置が予め定められている場合、工程情報として、例えば、車両100の測定を担当した測距装置300の識別情報や、その測距装置300の設置位置を表す情報を使用してもよい。
【0030】
領域決定部225は、対象領域を決定する。本実施形態における領域決定部225は、工程情報取得部220によって取得される工程情報を用いて対象領域を決定する。具体的には、領域決定部225は、工程情報に基づいて領域データベースDBを参照することによって、対象領域を決定する。領域データベースDBには、複数の工程データと、複数の領域データとが関連付けて記憶されている。工程データは、車両100に対して実施される工程を表すデータである。領域データは、対象領域を表すデータである。領域データは、例えば、測定点群データやテンプレート点群データTPといった点群データにおける領域を指定する座標として表現される。本実施形態における領域データは、測定点群データやテンプレート点群データTPにおける基準高さを指定する座標として表現される。
【0031】
位置情報取得部250は、測定点群データに基づく対象点群データと、テンプレート点群データTPに基づく参照用点群データとを比較することによって、車両100の位置情報を取得する。このように取得される位置情報は、車両100の位置と向きとの少なくとも一方を含む。具体的には、位置情報取得部250は、対象点群データと参照用点群データとのテンプレートマッチングを実行することによって、後述する車両位置情報を取得する。以下では、対象点群データと参照用点群データとのテンプレートマッチングのことを、単にマッチングともいう。マッチングのアルゴリズムとしては、ICP(Iterative Closest Point)、NDT(Normal Distributions Transform)等の種々のアルゴリズムを使用できる。
【0032】
後述するように、本実施形態におけるマッチングでは、対象点群データとして、対象領域の点群データが用いられる。「対象領域の点群データ」は、対象領域の点群を含み、車両100の外形のうち対象領域外の点群を含まない。また、本実施形態におけるマッチングでは、参照用点群データとして、対象領域に対応する点群データが用いられる。「対象領域に対応する点群データ」は、対象領域に対応する点群を含み、車両100の外形のうち対象領域外の領域に対応する点群を含まない。なお、本実施形態における測定点群データは、対象領域の点群と、車両100の外形のうち対象領域外の領域の点群とを含む。また、本実施形態におけるテンプレート点群データTPは、対象領域に対応する点群と、車両100の外形のうち対象領域外の領域に対応する点群とを含む。
【0033】
指令生成部260は、取得された車両位置情報を用いて、無人運転によって車両100を走行させるための制御指令を生成し車両100に送信する。具体的には、本実施形態における制御指令は、上記の走行制御信号である。なお、無人運転によって車両100を走行させるための制御指令は、走行制御信号と、走行制御信号を生成するための生成情報との少なくとも一方を含んでいればよい。したがって、他の実施形態では、制御指令は、走行制御信号に代えて、あるいは、これに加えて、生成情報を含んでいてもよい。生成情報としては、例えば、車両位置情報や、後述する経路や目標位置を用いることができる。
【0034】
図4は、第1実施形態における車両100の走行制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
ステップS1にて、サーバ200のプロセッサ201は、外部センサである測距装置300から出力される検出結果を用いて、車両位置情報を取得する。車両位置情報は、走行制御信号を生成する基礎となる位置情報である。本実施形態では、車両位置情報には、工場FCのグローバル座標系GCにおける車両100の位置および向きが含まれている。具体的には、ステップS1にて、プロセッサ201は、対象点群データと、参照用点群データとを用いて、車両位置情報を取得する。
【0036】
ステップS2にて、サーバ200のプロセッサ201は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する。本実施形態では、目標位置は、グローバル座標系GCにおけるX,Y,Zの座標で表される。サーバ200のメモリ202には、車両100が走行すべき経路である参照経路RRが予め記憶されている。経路は、出発地を示すノード、通過点を示すノード、目的地を示すノード、および、各ノードを結ぶリンクで表されている。プロセッサ201は、車両位置情報と参照経路RRとを用いて、次に車両100が向かうべき目標位置を決定する。プロセッサ201は、車両100の現在地よりも先の参照経路RR上に目標位置を決定する。
【0037】
ステップS3にて、サーバ200のプロセッサ201は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する。プロセッサ201は、車両100から走行速度を取得し、取得した走行速度と目標速度とを比較する。プロセッサ201は、全体として、走行速度が目標速度よりも低い場合には、車両100が加速するように加速度を決定し、走行速度が目標速度よりも高い場合には、車両100が減速するように加速度を決定する。また、プロセッサ201は、車両100が参照経路RR上に位置している場合には、車両100が参照経路RR上から逸脱しないように操舵角および加速度を決定し、車両100が参照経路RR上に位置していない場合、換言すれば、車両100が参照経路RR上から逸脱している場合には、車両100が参照経路RR上に復帰するように操舵角および加速度を決定する。
【0038】
ステップS4にて、サーバ200のプロセッサ201は、生成した走行制御信号を車両100に対して送信する。プロセッサ201は、所定の周期で、車両位置情報の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、走行制御信号の送信などを繰り返す。
【0039】
なお、本実施形態におけるステップS1からステップS4では、具体的には、後述する指令生成処理が実行される。
【0040】
ステップS5にて、車両100のプロセッサ111は、サーバ200から送信される走行制御信号を受信する。ステップS6にて、車両100のプロセッサ111は、受信した走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御することにより、走行制御信号に表されている加速度および操舵角で車両100を走行させる。プロセッサ111は、所定の周期で、走行制御信号の受信、および、アクチュエータ群120の制御を繰り返す。本実施形態におけるシステム50によれば、車両100を遠隔制御により走行させることができ、クレーンやコンベア等の搬送設備を用いずに車両100を移動させることができる。
【0041】
図5は、本実施形態における指令生成処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5の指令生成処理は、サーバ200のプロセッサ201によって、例えば、所定の時間間隔で実行される。
【0042】
ステップS105にて、点群データ取得部215は、対象車両100の測定を担当する測距装置300から測定点群データを取得する。対象車両100は、無人運転による走行制御の対象となる車両100である。ステップS110にて、点群データ取得部215は、メモリ202に格納されたテンプレート点群データTPを取得する。他の実施形態では、点群データ取得部215は、ステップS110において、例えば、外部のコンピュータや記録媒体からテンプレート点群データTPを取得してもよい。
【0043】
ステップS115にて、工程情報取得部220は、対象車両100の工程情報を取得する。ステップS120にて、領域決定部225は、工程情報と領域データベースDBとを用いて、対象領域を決定する。
【0044】
ステップS125にて、位置情報取得部250は、ステップS120で決定された対象領域に基づいて、ステップS105で取得された測定点群データの一部を除外することによって、対象点群データとして、対象領域の点群データである第1点群データを取得する。第1点群データは、測定点群データのうち、対象領域の点群を含み、対象領域外の領域の点群を含まない点群データに相当する。具体的には、点群データ取得部215は、ステップS125において、例えば、決定された対象領域に基づいて、測定点群データから対象領域の点群を抽出することや、測定点群データから対象領域外の領域の点群を削除することによって、第1点群データを取得する。こうした点群の抽出や削除には、領域データベースDBにおける領域データが使用されてもよい。
【0045】
ステップS130にて、位置情報取得部250は、ステップS115で決定された対象領域に基づいて、ステップS110で取得されたテンプレート点群データTPの一部を除外することによって、参照用点群データとして、対象領域に対応する第2点群データを取得する。第2点群データは、テンプレート点群データTPのうち、対象領域に対応する点群を含み、対象領域外の領域に対応する点群を含まない点群データに相当する。点群データ取得部215は、ステップS130において、例えば、ステップS125と略同様に、決定された対象領域に基づいて、テンプレート点群データTPから対象領域に対応する点群を抽出することや、テンプレート点群データTPから対象領域外の領域の点群を削除することによって、第2点群データを取得する。
【0046】
ステップS135にて、位置情報取得部250は、対象点群データと参照用点群データとのマッチングを実行することによって、対象車両100の車両位置情報を取得する。具体的には、本実施形態におけるステップS135では、位置情報取得部250は、ステップS125で取得された第1点群データと、ステップS130で取得された第2点群データとのマッチングを実行することによって、対象車両100の車両位置情報を取得する。
【0047】
図6は、本実施形態におけるマッチングの例を説明する図である。具体的には、
図6は、第2移動工程MP2において実行されるマッチングの例を示している。
図6には、第2移動工程MP2において測定された測定点群データSD2から点群の一部が除外されることで、対象点群データとしての第1点群データD1が生成される様子が示されている。また、
図6には、テンプレート点群データTPから点群の一部が除外されることで、参照用点群データとしての第2点群データD2が生成される様子が示されている。
図6の例では、ステップS135において、第1点群データD1と第2点群データD2とのマッチングが実行されることによって、対象車両100の車両位置情報が取得される。
【0048】
ステップS140にて、指令生成部260は、ステップS135で取得された車両位置情報を用いて、制御指令としての走行制御信号を生成し、車両100に対して送信する。車両制御部115は、受信した制御指令を用いてアクチュエータ群120を制御することで、車両100を走行させる。
【0049】
以上で説明した本実施形態におけるサーバ200によれば、非組み付け領域を有する対象領域の点群を含む対象点群データと、対象領域に対応する点群を含む参照用点群データとが比較されることによって、車両位置情報が取得される。したがって、対象領域に応じたマッチングを実行できるので、車両100への部品の組み付けに伴って車両100の外形が変化する場合であっても、対象点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行でき、車両位置情報を適切に取得できる。
【0050】
また、本実施形態では、対象領域は、車両100の外形のうち基準高さ以下の領域であり、第1移動工程MP1における第1基準高さhs1は、第2移動工程MP2における第2基準高さhs2よりも高い。この形態によれば、組み付け工程APによる車両100への部品の組み付けに伴う車両100の車体の沈み込みに応じて、第2基準高さhs2を第1基準高さhs1よりも低くすることができる。したがって、より適切にマッチングを実行できる。
【0051】
また、本実施形態では、対象点群データとして、対象領域の点群データである第1点群データが使用される。したがって、対象領域外の領域の点群を含む対象点群データをマッチングに使用する場合と比較して、より適切にマッチングを実行できる。
【0052】
また、本実施形態では、第1点群データは、測距装置300によって測定された測定点群データの一部が除外された点群データである。したがって、測定点群データが対象領域外の領域の点群を含む場合であっても、対象領域の点群データを対象点群データとしてマッチングに使用でき、より適切にマッチングを実行できる。
【0053】
なお、他の実施形態において、測定点群データの一部が除外された点群データを対象点群データとして用いる場合、対象点群データは、車両100の外形のうち対象領域外の領域の点群を含んでいてもよい。この場合、測定点群データのうち、対象領域外の領域の点群の一部が除外されることで、対象点群データが取得されると好ましい。こうすれば、例えば、測定点群データをそのまま対象点群データとしてマッチングに使用する場合と比較して、より適切にマッチングを実行できる。
【0054】
また、本実施形態では、参照用点群データとして、対象領域に対応する点群データである第2点群データが使用される。したがって、対象領域外の領域に対応する点群を含む参照用点群データをマッチングに使用する場合と比較して、より適切にマッチングを実行できる。特に、本実施形態では、マッチングにおいて第1点群データと第2点群データとが比較されるので、更に適切にマッチングを実行できる。
【0055】
また、本実施形態では、第2点群データは、テンプレート点群データTPの一部が除外された点群データである。したがって、テンプレート点群データTPが対象領域外の領域に対応する点群を含む場合であっても、対象領域に対応する点群データを参照用点群データとしてマッチングに使用でき、より適切にマッチングを実行できる。また、本実施形態では、対象領域に対応するテンプレート点群データを予め準備する手間を削減しつつ、対象領域に対応する点群データを参照用点群データとして使用できる。
【0056】
なお、他の実施形態において、テンプレート点群データTPの一部が除外された点群データを参照用点群データとして用いる場合、参照用点群データは、車両100の外形のうち対象領域外の領域に対応する点群を含んでいてもよい。この場合、テンプレート点群データTPのうち、対象領域外の領域に対応する点群の一部が除外されることで、参照用点群データが取得されると好ましい。こうすれば、例えば、テンプレート点群データTPをそのまま参照用点群データとしてマッチングに使用する場合と比較して、より適切にマッチングを実行できる。
【0057】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態におけるマッチングの例を説明する図である。
図7は、
図6と略同様に、第2移動工程MP2におけるマッチングの例を示している。第2実施形態では、第1実施形態とは違って、マッチングにおいて、参照用点群データとして、第2点群データD2ではなく、対象領域外の領域に対応する点群を含むテンプレート点群データTPがそのまま使用される。具体的には、
図7に示すように、マッチングにおいて、第1点群データD1とテンプレート点群データTPとが比較される。第2実施形態では、
図5に示したステップのうち、ステップS130が省略されてもよい。第2実施形態におけるシステム50やサーバ200の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0058】
以上で説明した第2実施形態におけるサーバ200によっても、対象領域に応じたマッチングを実行できるので、車両100への部品の組み付けに伴って車両100の外形が変化する場合であっても、対象点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行でき、車両位置情報を適切に取得できる。特に、本実施形態では、マッチングにおいて、参照用点群データとして、第2点群データD2ではなくテンプレート点群データTPをそのまま使用するので、より簡易にマッチングを実行できる。
【0059】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態におけるマッチングの例を説明する図である。
図8は、
図6と略同様に、第2移動工程MP2において実行されるマッチングの例を示している。第3実施形態では、第1実施形態とは違って、マッチングにおいて、対象点群データとして、第1点群データD1ではなく、対象領域外の領域の点群を含む測定点群データSD2がそのまま使用される。具体的には、
図8に示すように、マッチングにおいて、測定点群データSD2と第2点群データD2とが比較される。第3実施形態では、
図5に示したステップのうち、ステップS125が省略されてもよい。第3実施形態におけるシステム50やサーバ200の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0060】
以上で説明した第3実施形態におけるサーバ200によっても、対象領域に応じたマッチングを実行できるので、車両100への部品の組み付けに伴って車両100の外形が変化する場合であっても、対象点群データと参照用点群データとを適切に比較でき、車両位置情報を適切に取得できる。特に、本実施形態では、マッチングにおいて、対象点群データとして第1点群データD1ではなく測定点群データをそのまま使用するので、より簡易にマッチングを実行できる。
【0061】
D.第4実施形態:
図9は、第4実施形態におけるマッチングの例を説明する図である。
図9は、
図6と略同様に、第2移動工程MP2において実行されるマッチングの例を示している。第4実施形態では、第1実施形態とは違って、マッチングにおいて、対象点群データとして測定点群データSD2bが使用される。具体的には、
図8に示すように、マッチングにおいて、測定点群データSD2bと第2点群データD2とが比較される。第4実施形態におけるシステム50やサーバ200の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0062】
測定点群データSD2bは、第1実施形態における測定点群データSD2とは異なり、対象領域の点群データである。本実施形態では、各測距装置300は、工場FCにおいて、対象領域の点群のみを含む測定点群データを測定できるように配置される。具体的には、本実施形態における各測距装置300は、例えば、第1実施形態における場合と比較して、より下方の位置や、より走路TRに近い位置に配置される。第4実施形態では、
図5に示したステップのうち、ステップS125が省略されてもよい。
【0063】
以上で説明した第4実施形態におけるサーバ200によっても、対象領域に応じたマッチングを実行できるので、車両100への部品の組み付けに伴って車両100の外形が変化する場合であっても、対象点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行でき、車両位置情報を適切に取得できる。特に、本実施形態では、マッチングにおいて、対象領域の点群データである測定点群データSD2bを対象点群データとして用いることができる。したがって、より簡易かつ、より適切にマッチングを実行できる。
【0064】
なお、他の実施形態では、マッチングにおいて、測定点群データSD2bとテンプレート点群データTPとが比較されてもよい。この形態では、
図5に示したステップのうち、ステップS125に加えて、ステップS115やステップS120やステップS130が省略されてもよい。また、この形態では、システム50は、工程情報取得部220や領域決定部225を備えていなくてもよい。
【0065】
E.第5実施形態:
図10は、第5実施形態における対象領域を説明する図である。本実施形態では、対象領域として、第1対象工程OP1に関する第1対象領域OA1と、第2対象工程OP2に関する第2対象領域OA2とが用いられる。
図10において、第1対象領域OA1および第2対象領域OA2は、それぞれ、破線およびハッチングによって示されている。第5実施形態におけるシステム50やサーバ200の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0066】
第1対象工程OP1は、移動工程MPa,MPbと、組み付け工程APa,APbとを含む。第2対象工程OP2は、移動工程MPc,MPdと、組み付け工程APcとを含む。
図10に示すように、車両100の製造工程において、各工程は、移動工程MPa、組み付け工程APa、移動工程MPb、組み付け工程APb、移動工程MPc、組み付け工程APc、移動工程MPdの順に実施される。移動工程MPaは、車両100cを無人運転によって移動させる工程である。組み付け工程APaは、車両100cに対して部品PT1を組み付ける工程である。移動工程MPbは、車両100dを無人運転によって移動させる工程である。車両100dは、部品PT1が組み付けられた車両100cに相当する。組み付け工程APbは、車両100dに対して部品PT2を組み付ける工程である。移動工程MPcは、車両100eを無人運転によって移動させる工程である。車両100eは、部品PT2が組み付けられた車両100dに相当する。移動工程MPdは、車両100fを無人運転によって移動させる工程である。車両100fは、部品PT3が組み付けられた車両100eに相当する。
【0067】
第1対象工程OP1に含まれる移動工程MPaや移動工程MPbや組み付け工程APaや組み付け工程APbでは、第1対象領域OA1の点群を含む対象点群データと、第1対象領域OA1に対応する点群を含む参照用点群データとのマッチングが実行される。また、第2対象工程OP2に含まれる移動工程MPcや移動工程MPdや組み付け工程APcでは、第2対象領域OA2の点群を含む対象点群データと、第2対象領域OA2に対応する点群を含む参照用点群データとのマッチングが実行される。本実施形態では、第1対象領域OA1は、第1対象工程OP1における非組み付け領域のみを含む。第2対象領域OA2は、第2対象工程OP2における非組み付け領域のみを含む。また、本実施形態における第2対象領域OA2は、第1対象領域OA1よりも大きい領域である。具体的には、第2対象領域OA2は、第1対象領域OA1と同じ領域に加え、組み付け工程APbによって組み付けられた部品PT2の外形の一部を含む。このように、工場FCにおいて、複数の対象領域が用いられてもよい。
【0068】
本実施形態では、第1実施形態から第4実施形態で説明した各態様のマッチングを実行することができる。なお、他の実施形態では、第2対象領域OA2は、第1対象領域OA1と同じ領域を含んでいなくてもよいし、第1対象領域OA1と同じ領域の一部のみを含んでいてもよい。また、他の実施形態では、第2対象領域OA2の大きさは、第1対象領域OA1の大きさと同じであってもよいし、第1対象領域OA1の大きさより小さくてもよい。また、工場FCにおいて、3以上の対象領域が用いられてもよい。
【0069】
以上で説明した本実施形態におけるサーバ200によっても、対象領域に応じたマッチングを実行できるので、車両100への部品の組み付けに伴って車両100の外形が変化する場合であっても、対象点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行でき、車両位置情報を適切に取得できる。特に、本実施形態では、工場FCにおいて複数の対象領域が用いられる。この形態によれば、車両100の製造工程の進度に応じて、具体的には、車両100に対して部品が組み付けられていくのに応じて、対象領域を変更することができる。この場合、例えば、車両100に対して特徴量の多い部品を組み付ける工程が実施された後に、その部品の外形の少なくとも一部を含む領域を対象領域として用いてマッチングを実行することで、より適切にマッチングが実行される可能性を高めることができる。この場合、例えば、バンパを組み付ける工程やフレームを組み付ける工程の後の対象工程において、組み付けられたバンパやフレームの外形の少なくとも一部を含む領域を対象領域として用いてマッチングを実行することで、より適切にマッチングが実行される可能性を高めることができる。このように、車両100の製造工程の進度に応じて対象領域を変更することで、各工程においてマッチングをより適切に実行できる。
【0070】
F.第6実施形態:
図11は、第6実施形態におけるシステム50vの構成を示すブロック図である。本実施形態におけるシステム50vは、第1実施形態とは違って、サーバ200を備えていない。また、本実施形態における車両は、車両の自律制御によって走行可能である。なお、本実施形態における車両の装置構成は、第1実施形態における車両100と同じであるため、便宜上、本実施形態における車両を車両100とも表記する。第6実施形態におけるシステム50vや車両100の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0071】
本実施形態では、車両100の通信装置130は、測距装置300と通信することができる。車両制御装置110のプロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムPG2を実行することにより、車両制御部115v、点群データ取得部215、工程情報取得部220、領域決定部225、および、位置情報取得部250として機能する。車両制御部115vは、車両100によって生成された走行制御信号を用いてアクチュエータ群120を制御することで、車両100を自律制御によって走行させることが可能である。メモリ112には、プログラムPG1に加え、参照経路RR、テンプレート点群データTP、および、領域データベースDBが格納されている。第6実施形態における車両制御装置110は、本開示における「装置」に相当する。
【0072】
図12は、第6実施形態における車両100の走行制御の処理手順を示すフローチャートである。S901にて、車両100のプロセッサ111は、外部センサである測距装置300から出力される検出結果を用いて車両位置情報を取得する。S902にて、プロセッサ111は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定する。S903にて、プロセッサ111は、決定した目標位置に向かって車両100を走行させるための走行制御信号を生成する。S904にて、プロセッサ111は、生成した走行制御信号を用いて車両100のアクチュエータを制御することにより、走行制御信号に表されているパラメータに従って車両100を走行させる。プロセッサ111は、所定の周期で、車両位置情報の取得、目標位置の決定、走行制御信号の生成、および、アクチュエータの制御を繰り返す。本実施形態におけるシステム50vによれば、サーバ200により車両100を遠隔制御しなくても、車両100の自律制御によって車両100を走行させることができる。
【0073】
本実施形態におけるステップS901からS904では、
図5と同様の指令生成処理が実行される。この指令生成処理は、車両制御装置110のプロセッサ111によって、例えば、所定の時間間隔で実行される。本実施形態では、対象車両は、自車両を意味する。
【0074】
本実施形態では、
図5における各ステップは、プロセッサ111によって実行される。本実施形態におけるステップS140では、車両100の指令生成部260は、ステップS135で取得された車両位置情報を用いて、制御指令としての走行制御信号を生成し出力する。車両制御部115vは、このように車両100によって生成された制御指令を用いてアクチュエータ群120を制御することで、車両100を走行させる。
【0075】
以上で説明した本実施形態における車両制御装置110によっても、対象領域に応じたマッチングを実行できるので、車両100への部品の組み付けに伴って車両100の外形が変化する場合であっても、対象点群データと参照用点群データとを適切に比較でき、車両位置情報を適切に取得できる。
【0076】
なお、本実施形態と同様に車両100が自律制御によって走行する形態において、例えば、第2実施形態から第6実施形態と同様にマッチングが実行されてもよい。また、車両100が自律制御によって走行する形態において、マッチングで測定点群データSD2bとテンプレート点群データTPとが比較されてもよい。この場合、
図5に示したステップのうち、ステップS115やステップS120やステップS125やステップS130が省略されてもよい。また、この場合、車両100は、工程情報取得部220や領域決定部225を備えていなくてもよい。また、車両100が自律制御によって走行する形態において、例えば、システム50にサーバ200が備えられていてもよい。
【0077】
G.他の実施形態:
(G1)上記各実施形態では、位置情報取得部250によって取得される位置情報は、車両100の位置と向きとを含んでいるが、車両100の位置と向きとのいずれかのみを含んでいてもよい。
【0078】
(G2)上記各実施形態では、対象領域に対応する点群データとしてのテンプレート点群データが予め準備され、準備されたテンプレート点群データが参照用点群データとして使用されてもよい。こうすれば、第2点群データを参照用点群データとして使用する形態と同様に、対象領域外の領域に対応する点群を含む参照用点群データをマッチングに使用する場合と比較して、より適切にマッチングを実行できる。なお、この場合には、
図5のステップS130が省略されてもよい。
【0079】
(G3)上記各実施形態では、システム50において、点群データ取得部215、工程情報取得部220、領域決定部225、位置情報取得部250、および、指令生成部260等の各種機能部は、車両100に備えられてもよい。この場合、第6実施形態で説明したように、点群データ取得部215、工程情報取得部220、領域決定部225、位置情報取得部250、および、指令生成部260の全てが車両100に備えられていてもよいし、これらの機能部の一部が車両100に備えられていてもよい。また、システム50では、これらの機能部の一部や全部が、サーバ200および車両100の外部の装置に備えられていてもよい。
【0080】
(G4)上記第1実施形態では、サーバ200により車両位置情報の取得から走行制御信号の生成までの処理が実行される。これに対して、車両100により車両位置情報の取得から走行制御信号の生成までの処理の少なくとも一部が実行されてもよい。例えば、以下の(1)から(3)の形態であってもよい。
【0081】
(1)サーバ200は、車両位置情報を取得し、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、取得した車両位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成してもよい。サーバ200は、現在地と目的地との間の目標位置までの経路を生成してもよいし、目的地までの経路を生成してもよい。サーバ200は、生成した経路を車両100に対して送信してもよい。車両100は、サーバ200から受信した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いて車両100のアクチュエータを制御してもよい。
【0082】
(2)サーバ200は、車両位置情報を取得し、取得した車両位置情報を車両100に対して送信してもよい。車両100は、車両100が次に向かうべき目標位置を決定し、受信した車両位置情報に表されている車両100の現在地から目標位置までの経路を生成し、生成した経路上を車両100が走行するように走行制御信号を生成し、生成した走行制御信号を用いて車両100のアクチュエータを制御してもよい。
【0083】
(3)上記(1),(2)の形態において、車両100に内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。内部センサは、車両100に搭載されたセンサである。具体的には、内部センサには、例えば、カメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ、GPSセンサ、加速度センサ、ジャイロセンサなどが含まれ得る。例えば、上記(1)の形態において、サーバ200は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(1)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。上記(2)の形態において、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0084】
(G5)上記第6実施形態において、車両100に内部センサが搭載されており、経路の生成と走行制御信号の生成との少なくとも一方に、内部センサから出力される検出結果が用いられてもよい。例えば、車両100は、内部センサの検出結果を取得し、経路を生成する際に内部センサの検出結果を経路に反映してもよい。車両100は、内部センサの検出結果を取得し、走行制御信号を生成する際に内部センサの検出結果を走行制御信号に反映してもよい。
【0085】
(G6)上記第1実施形態では、サーバ200は、車両100に対して送信する走行制御信号を自動で生成している。これに対して、サーバ200は、車両100の外部に位置している外部オペレータの操作に従って、車両100に対して送信する走行制御信号を生成してもよい。例えば、外部センサから出力される撮像画像を表示するディスプレイ、車両100を遠隔操作するためのステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、および、有線通信あるいは無線通信によりサーバ200と通信するための通信装置を備える操縦装置を外部オペレータが操作し、サーバ200は、操縦装置に加えられた操作に応じた走行制御信号を生成してもよい。以下では、こうした制御による車両100の運転を、「遠隔手動運転」ともいう。遠隔手動運転が実行される形態では、例えば、操縦装置に含まれるディスプレイに、位置情報取得部250によって取得された車両位置情報が表示されてもよい。この場合、車両位置情報は、ディスプレイにおいて、例えば、文字や記号によって表されてもよいし、地図上に表されてもよい。
【0086】
(G7)車両100は、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。モジュールは、車両100の部位や機能に応じて纏められた複数の部品によって構成されるユニットを意味する。例えば、車両100のプラットフォームは、プラットフォームの前部を構成する前方モジュールと、プラットフォームの中央部を構成する中央モジュールと、プラットフォームの後部を構成する後方モジュールとを組み合わせることで製造されてもよい。なお、プラットフォームを構成するモジュールの数は、3つに限られず、2つ以下や4つ以上であってもよい。また、プラットフォームを構成する部品に加えて、あるいは、これに代えて、車両100のうちプラットフォームとは異なる部分を構成する部品がモジュール化されてもよい。また、各種モジュールは、バンパやグリルといった任意の外装部品や、シートやコンソールといった任意の内装部品を含んでいてもよい。また、車両100に限らず、任意の態様の移動体が、複数のモジュールを組み合わせることによって製造されてもよい。こうしたモジュールは、例えば、複数の部品を溶接や固定具等によって接合することで製造されてもよいし、モジュールを構成する部品の少なくとも一部を鋳造によって一の部品として一体的に成型することで製造されてもよい。一の部品、特に比較的大型の部品を一体的に成型する成型手法は、ギガキャストやメガキャストとも呼ばれる。例えば、上記の前方モジュールや中央モジュールや後方モジュールは、ギガキャストを用いて製造されてもよい。
【0087】
(G8)無人運転による車両100の走行を利用して車両100を搬送させることを「自走搬送」とも呼ぶ。また、自走搬送を実現するための構成を、「車両遠隔制御自律走行搬送システム」とも呼ぶ。また、自走搬送を利用して車両100を生産する生産方式のことを「自走生産」とも呼ぶ。自走生産では、例えば、車両100を製造する工場において、車両100の搬送の少なくとも一部が、自走搬送によって実現される。
【0088】
(G9)上記各実施形態において、ソフトウェア的に実現される機能及び処理の一部又は全部は、ハードウェア的に実現されてもよい。また、ハードウェア的に実現される機能及び処理の一部又は全部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。上記各実施形態における各種機能を実現するためのハードウェアとしては、例えば、集積回路やディスクリート回路といった各種回路を用いてもよい。
【0089】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
50,50v…システム、100,100a,100b,100c,100d,100e,100f…車両、110…車両制御装置、111…プロセッサ、112…メモリ、113…入出力インタフェイス、114…内部バス、115,115v…車両制御部、120…アクチュエータ群、130…通信装置、200…サーバ、201…プロセッサ、202…メモリ、203…入出力インタフェイス、204…内部バス、205…通信装置、215…点群データ取得部、220…工程情報取得部、225…領域決定部、250…位置情報取得部、260…指令生成部、300…測距装置
【要約】
【課題】移動体への部品の組み付けに起因する移動体の外形の変化によらず、3次元点群データと参照用点群データとの比較を適切に実行できる技術を提供する。
【解決手段】装置は、移動体の外形のうち予め定められた複数の工程で部品の組み付けが行われない領域を有する対象領域の点群を含む3次元点群データを取得する点群データ取得部と、取得された3次元点群データと、対象領域に対応する点群を含む参照用点群データと、を比較することによって、移動体の位置と向きとの少なくとも一方を取得する位置情報取得部と、を備える。
【選択図】
図2