(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20241008BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241008BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F17/00 C
H01F27/25
(21)【出願番号】P 2023502202
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003072
(87)【国際公開番号】W WO2022181186
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021030988
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敢
(72)【発明者】
【氏名】辻 博美
(72)【発明者】
【氏名】小田原 充
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-347124(JP,A)
【文献】特開2016-122836(JP,A)
【文献】特開昭62-76509(JP,A)
【文献】特開2019-129253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 27/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を含んでいる素体と、
前記素体の内部で、前記磁性薄帯の主面に沿って延びているインダクタ配線と、を備え、
前記インダクタ配線は、屈曲又は湾曲して延びる部分を少なくとも1箇所備え、
前記インダクタ配線の延びる軸を中心軸とし、前記中心軸に直交する断面視で前記主面に沿う軸を第1軸とし、前記断面視で前記主面に直交する軸を第2軸としたとき、
複数の前記磁性薄帯は、前記第2軸に直交する第3軸に沿って複数並んでいるとともに、前記第2軸に直交し且つ前記第3軸に交差する第4軸に沿って複数並んでおり、
前記素体は、前記第3軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の隙間、及び前記第4軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の隙間を埋めている、非磁性材からなる非磁性部を、さらに有し、
前記第2軸に沿う方向から視たとき、前記インダクタ配線の第1端から第2端までの全範囲で、前記インダクタ配線の前記第1軸に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、前記非磁性部が存在する
インダクタ部品。
【請求項2】
複数の前記磁性薄帯は、前記第2軸に沿って積層されている
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記各磁性薄帯の前記第2軸に沿う方向の寸法は、複数の前記磁性薄帯の前記第2軸に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記素体は、前記第2軸に沿って隣り合う前記磁性薄帯の間に位置している、非磁性材からなる複数の非磁性層を、さらに有する
請求項2又は請求項3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記各非磁性層の前記第2軸に沿う方向の寸法は、複数の前記非磁性層の前記第2軸に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記第2軸に直交する方向から視たときに、前記各磁性薄帯は、多角形状である
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記第2軸に直交する方向から視たときに、前記各磁性薄帯は、四角形状である
請求項6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記インダクタ配線を第1インダクタ配線としたとき、
前記第1インダクタ配線とは前記第2軸に沿う方向の位置が異なる第2インダクタ配線と、
前記第1インダクタ配線及び前記第2インダクタ配線を前記第2軸に沿う方向に接続するビアと、をさらに備える
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記第1インダクタ配線及び前記第2インダクタ配線による合計ターン数は、1ターン以上である
請求項8に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記第3軸に沿って複数並んでいる前記磁性薄帯の列において、前記各磁性薄帯の前記第3軸に沿う方向の寸法は、当該列におけるすべての前記磁性薄帯の前記第3軸に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項1~9のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記第4軸に沿って複数並んでいる前記磁性薄帯の列において、前記各磁性薄帯の前記第4軸に沿う方向の寸法は、当該列におけるすべての前記磁性薄帯の前記第4軸に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項1~10のいずれか1項に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインダクタ部品は、素体と、素体の内部で延びているインダクタ配線と、を備えている。素体は、無機フィラー及び樹脂からなっている。例えば、磁性コンポジット体については、無機フィラーの材質は、磁性材である。また、無機フィラーの平均粒径は、5μm以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインダクタ部品は、素体における無機フィラーの充填率を高めることによって、インダクタ部品の各種特性の向上が図られる。しかしながら、特許文献1に記載のインダクタ部品は、素体中において無機フィラーの粒子がランダムに分散した構造を前提としており、素体における磁性材の他の構造については何ら検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を含んでいる素体と、前記素体の内部で、前記磁性薄帯の主面に沿って延びているインダクタ配線と、を備え、前記インダクタ配線は、屈曲又は湾曲して延びる部分を少なくとも1箇所備え、前記インダクタ配線の延びる軸を中心軸とし、前記中心軸に直交する断面視で前記主面に沿う軸を第1軸とし、前記断面視で前記主面に直交する軸を第2軸としたとき、複数の前記磁性薄帯は、前記第2軸に直交する第3軸に沿って複数並んでいるとともに、前記第2軸に直交し且つ前記第3軸に交差する第4軸に沿って複数並んでおり、前記素体は、前記第3軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の隙間、及び前記第4軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の隙間を埋めている、非磁性材からなる非磁性部を、さらに有し、前記第2軸に沿う方向から視たとき、前記インダクタ配線の第1端から第2端までの全範囲で、前記インダクタ配線の前記第1軸に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、前記非磁性部が存在するインダクタ部品である。
【発明の効果】
【0006】
上記のような構造のインダクタ部品において、第2軸に沿う方向から視たとき、インダクタ配線の第1端から第2端までの全範囲で、インダクタ配線の第1軸に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部が存在している。これにより、インダクタ部品としての特性が向上する。
【0007】
なお、インダクタ配線の第1端、第2端とは、インダクタ配線の延びる方向の両端のことを指す。また、インダクタ配線の第1端から第2端までの全範囲とは、実質的に全範囲であればよく、第1端から第2端までの範囲のうち、わずかな範囲や特性にあまり寄与しない範囲、本質的でない範囲などで、インダクタ配線の第1軸に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部が存在しない部分があってもよい。
【0008】
さらに、「沿う」とは、直接接触しておらず、離れた位置にある場合も含む。例えば、「第1軸に沿う」とは、第1軸に直接接触して第1軸に沿うものだけでなく、第1軸に直接接触しておらず離れた位置で第1軸に沿うものも含む。また、「沿う」とは、実質的に平行関係にあればよく、製造誤差等によって、僅かに傾いているものも含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のインダクタ部品の分解斜視図。
【
図2】第1実施形態のインダクタ部品の第1部分の平面図。
【
図3】
図2における3-3線に沿うインダクタ部品の断面図。
【
図23】第3実施形態のインダクタ部品の透過側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、インダクタ部品の第1実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。さらに、複数の部材のうち、一部の部材のみに符号を付している場合がある。
【0011】
(全体構成)
図1に示すように、インダクタ部品10は、素体20と、インダクタ配線30と、を備えている。素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70を有している。
【0012】
磁性薄帯40は、平板状である。複数の磁性薄帯40は、磁性薄帯40の主面MFと直交する方向に積層されている。なお、平板状とは、主面MFを有する薄い形状のことであるが、厚みの薄い直方体に限られず、稜線や角が曲面状であってもよく、主面MFに微小な凹凸があったり、内部に空孔があったりしてもよい。
【0013】
インダクタ配線30は、素体20の内部で主面MFに沿って直線状に延びている。なお、インダクタ配線30の延びる軸を中心軸CAとする。本実施形態では、中心軸CAの延びる向きは、四角形状の主面MFのいずれかの辺の延びる向きと一致する。
【0014】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、主面MFに沿う軸を第1軸AX1とし、主面MFに直交する軸を第2軸AX2とする。さらに、第2軸AX2に直交する軸を第3軸AX3とし、第2軸AX2に直交し且つ第3軸AX3に交差する軸を第4軸AX4とする。ここで、第2軸AX2を座標軸Zとし、座標軸Zに直交する1つの軸を、座標軸Xとする。
図3に示す断面では、座標軸Xは第1軸AX1と平行である。そして、座標軸Xに直交するとともに座標軸Zに直交する軸を、座標軸Yとする。
図3に示す断面では、座標軸Yは中心軸CAと平行である。また、本実施形態において、座標軸Xは、第3軸AX3と平行である。さらに、本実施形態において、座標軸Yは、第4軸AX4と平行である。
【0015】
さらに、座標軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、座標軸Xに沿う方向の他方を第1負方向X2とする。また、座標軸Yに沿う方向の一方を第2正方向Y1とし、座標軸Yに沿う方向の他方を第2負方向Y2とする。さらに、座標軸Zに沿う方向の一方を第3正方向Z1とし、座標軸Zに沿う方向の他方を第3負方向Z2とする。
【0016】
図1に示すように、インダクタ部品10は、座標軸Zに沿って順に積層された、第1部分P1と、第2部分P2と、第3部分P3と、で構成されている。3つの部分P1~P3のうち、座標軸Zに沿う第3負方向Z2の端には、第1部分P1が位置している。
【0017】
図2に示すように、第1部分P1は、座標軸Zに沿う方向から視たときに正方形状である。座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1は、座標軸Xと平行に延びる辺及び座標軸Yと平行に延びる辺を有している。第1部分P1は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、2つの非磁性膜70と、を有する。
【0018】
図3に示すように、中心軸CAに直交するとともに、座標軸Xに沿う方向の断面において、第1部分P1の各磁性薄帯40は、座標軸Zに沿う方向に積層されている。
図2に示すように、第1部分P1の各磁性薄帯40は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、正方形状である。座標軸Zに沿う方向から視たときに各磁性薄帯40の各辺は、座標軸X及び座標軸Yと平行である。また、複数の磁性薄帯40の座標軸Xに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。さらに、複数の磁性薄帯40の座標軸Yに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。複数の磁性薄帯40の座標軸Zに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。
【0019】
磁性薄帯40は、座標軸Zに沿う同一の位置において、座標軸Xに沿う方向に、間隔をあけて3個並んでいる。また、磁性薄帯40は、座標軸Zに沿う同一の位置において、座標軸Yに沿う方向に、間隔をあけて3個並んでいる。
【0020】
磁性薄帯40は、磁性材からなっている。磁性材は、例えば、Fe元素、Ni元素、Co元素、Cr元素、Cu元素、Al元素、Si元素、B元素、P元素等を含む金属磁性材である。本実施形態では、磁性材は、Fe元素及びSi元素を含んでいる金属磁性材である。
【0021】
図3に示すように、非磁性層50は、座標軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の間に位置している。非磁性層50は、座標軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の隙間をすべて埋めている。非磁性層50は、非磁性材からなっている。非磁性材は、例えば、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂である。なお、
図3では、非磁性層50を線で図示している。
【0022】
非磁性層50の座標軸Zに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。また、各非磁性層50の座標軸Zに沿う方向の寸法は、各磁性薄帯40の座標軸Zに沿う方向の寸法よりも小さい。
【0023】
図2に示すように、非磁性部60は、座標軸Zに沿う同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間に位置している。非磁性部60は、座標軸Zに沿う方向の同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の隙間をすべて埋めている。すなわち、非磁性部60は、第3軸AX3に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40の隙間、及び第4軸AX4に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40の隙間を埋めている。上述したとおり、座標軸Zに沿う同一の位置において、磁性薄帯40は、座標軸Xに沿う方向に3つ、座標軸Yに沿う方向に3つ、合計9つ存在するので、非磁性部60は、12個存在している。非磁性部60は、非磁性材からなっている。本実施形態では、非磁性部60の材質は、非磁性層50と同一の材質である。
【0024】
ここで、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1を構成する各磁性薄帯40のうち、最も第1負方向X2且つ最も第2負方向Y2に位置する磁性薄帯40を、磁性薄帯40Aとする。そして、磁性薄帯40Aの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Bとする。さらに、磁性薄帯40Bの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Cとする。
【0025】
また、磁性薄帯40Aの第2正方向Y1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Dとする。そして、磁性薄帯40Dの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Eとする。さらに、磁性薄帯40Eの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Fとする。
【0026】
また、磁性薄帯40Dの第2正方向Y1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Gとする。そして、磁性薄帯40Gの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Hとする。さらに、磁性薄帯40Hの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯40を、磁性薄帯40Iとする。
【0027】
非磁性膜70は、第1部分P1において、座標軸Xに沿う第1正方向X1の端、及び第1正方向X1とは反対方向である第1負方向X2の端に位置している。非磁性膜70は、磁性薄帯40における座標軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。また、非磁性膜70は、非磁性層50における座標軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。さらに、非磁性膜70は、非磁性部60における座標軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。そのため、第1部分P1における座標軸Xに沿う第1正方向X1の端面は、すべて非磁性膜70で構成されている。同様に、第1部分P1における座標軸Xに沿う第1負方向X2の端面は、すべて非磁性膜70で構成されている。非磁性膜70は、非磁性材からなっている。本実施形態では、非磁性膜70の材質は、非磁性層50と同一の材質である。
【0028】
図1に示すように、第1部分P1から視て、座標軸Zに沿う第3負方向Z2とは反対方向である第3正方向Z1には、第2部分P2が位置している。第2部分P2は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1と同じ正方形状である。
【0029】
第2部分P2は、インダクタ配線30と、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、で構成されている。
図2に示すように、インダクタ配線30は、第1直線部32と、第2直線部33と、第3直線部34と、を備えている。第1直線部32は、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。なお、
図2では、第1部分P1上でのインダクタ配線30の位置を仮想的に点線で図示している。
【0030】
第1直線部32の第2負方向Y2の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20から露出している。第1直線部32の第1負方向X2の側面は、第1部分P1の磁性薄帯40Aの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に位置している。また、第1直線部32の第1正方向X1の側面は、磁性薄帯40Bの第1負方向X2の端と第1正方向X1の端との間に位置している。第1直線部32は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40Aと磁性薄帯40Bとの隙間を埋める非磁性部60及び磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの隙間を埋める非磁性部60に沿って延びている。第1直線部32の第2正方向Y1の端面は、磁性薄帯40Dの第2正方向Y1の端と第2負方向Y2の端との間に位置している。
【0031】
第2直線部33は、第1直線部32の第2正方向Y1の端面に接続している。第2直線部33は、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Xに沿う方向に直線状に延びている。したがって、インダクタ配線30は、第1直線部32と第2直線部33との境界部分において90度屈曲している。
【0032】
第2直線部33の第1負方向X2の端面は、第1直線部32の第1負方向X2の側面と面一である。第2直線部33の第2負方向Y2の側面は、第1直線部32の第2正方向Y1の端面と面一である。すなわち、第2直線部33の第2正方向Y1の側面は、第1部分P1の磁性薄帯40Hの第2負方向Y2の端と第2正方向Y1の端との間に位置している。第2直線部33の第2負方向Y2の側面は、磁性薄帯40Eの第2負方向Y2の端と第2正方向Y1の端との間に位置している。第2直線部33は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40Eと磁性薄帯40Hとの隙間を埋める非磁性部60に沿って延びている。第2直線部33の第1正方向X1の端面は、磁性薄帯40Fの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に位置している。
【0033】
第3直線部34は、第2直線部33の第2正方向Y1の側面に接続している。第3直線部34は、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。したがって、インダクタ配線30は、第2直線部33と第3直線部34との境界部分において90度屈曲している。
【0034】
第3直線部34の第1正方向X1の側面は、第2直線部33の第1正方向X1の端面と面一である。第3直線部34の第1負方向X2の側面は、第1部分P1の磁性薄帯40Hの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に位置している。第3直線部34は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40Hと磁性薄帯40Iとの隙間を埋める非磁性部60に沿って延びている。第3直線部34の第2正方向Y1の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20の外部に露出している。
【0035】
上述のとおり、インダクタ配線30は、全体として、一方に1回90度屈曲しており、他方に1回90度屈曲している。すなわち、インダクタ配線30の中心軸CAは、座標軸Yに沿う方向に延びる部分を2箇所、座標軸Xに沿う方向に延びる部分を1箇所有している。
【0036】
インダクタ配線30の材質は、導電性材料である。導電性材料は、例えば、Cu、Ag、Au、Al、又はこれらの合金である。本実施形態では、インダクタ配線30の材質は、Cuである。
【0037】
第2部分P2において、インダクタ配線30でない部分は、第1部分P1と同様に、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、で構成されている。
【0038】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、第2部分P2の各磁性薄帯40は、座標軸Zに沿う方向に積層されている。複数の磁性薄帯40の座標軸Zに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。第2部分P2の各磁性薄帯40は、座標軸Xに沿って3つ並んでいる。また、第2部分P2の各磁性薄帯40は、座標軸Xに沿って3つ並んでいる。第2部分P2の各磁性薄帯40は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1と同様に並んだ各磁性薄帯40のうち、インダクタ配線30に相当する部分を切り取ったような形状になっている。
【0039】
上述した第1部分P1と同様に、第2部分P2の非磁性層50は、座標軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の間に位置している。すなわち、
図3に示すように、磁性薄帯40及び非磁性層50は、第1部分P1と同様に、座標軸Zに沿う方向に交互に積層されている。また、座標軸Zに沿う方向から視たときに、各非磁性層50は、隣り合っている磁性薄帯40の形状と同じ形状である。
【0040】
第2部分P2の非磁性部60は、座標軸Zに沿う同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間に位置している。非磁性部60は、座標軸Zに沿う方向の同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間の空間を全て埋めている。第2部分P2の非磁性部60の位置は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1の非磁性部60と連続している。なお、第2部分P2において、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間には非磁性部60は存在していない。
【0041】
非磁性膜70は、第2部分P2において、座標軸Xに沿う第1正方向X1の端、及び第1負方向X2の端に位置している。第2部分P2の非磁性膜70は、第1部分P1の非磁性膜70と連続している。そして、座標軸Zに沿う方向から視たときに、インダクタ配線30と、9つの磁性薄帯40と、8つの非磁性部60と、2つの非磁性膜70と、によって、正方形状になっている。
【0042】
第2部分P2の第3正方向Z1には、第3部分P3が位置している。第3部分P3は、座標軸Zから視たときに、第1部分P1と同じ正方形状である。第3部分P3は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70とで構成されている。本実施形態では、第3部分P3は、第2部分P2を挟んで第1部分P1と対称的な構造であるため、詳細な説明は省略する。このようにして、素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の非磁性層50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、を含んでいる。
【0043】
(インダクタ配線と非磁性部との位置関係について)
図2に示すように、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う第1端は、第1直線部32の第2負方向Y2の端である。また、インダクタ配線30の第1端とは反対側の第2端は、第3直線部34の第2正方向Y1の端である。そして、インダクタ配線30の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Aと磁性薄帯40Bとの間に位置する非磁性部60と、磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの間に位置する非磁性部60と、が存在している。また、インダクタ配線30の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Eと磁性薄帯40Hとの間に位置する非磁性部60と、磁性薄帯40Fと磁性薄帯40Iとの間に位置する非磁性部60と、が存在している。さらに、インダクタ配線30の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Hと磁性薄帯40Iとの間に位置する非磁性部60が存在している。よって、第2軸AX2、すなわち座標軸Zに沿う方向から視たとき、中心軸CAに沿うインダクタ配線30の第1端から第2端までの全範囲で、インダクタ配線30の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部60が存在する。換言すると、座標軸Zに沿う方向から視たとき、インダクタ配線30の第1端から第2端まで、途切れることなく非磁性部60が延びている。
【0044】
さらに、本実施形態においては、座標軸Zに沿う方向から視たときに、インダクタ配線30の中心軸CAが、非磁性部60上を通っている。つまり、中心軸CAに直交する断面視で、第1軸AX1に沿う方向において、中心軸CAの位置は、非磁性部60の位置と同一である。
【0045】
(シミュレーション結果について)
次に、インダクタ部品10について得られる特性を、比較例1及び参考例1~参考例6のインダクタ部品と比較したシミュレーション結果について説明する。シミュレーションには、ムラタソフトウェア株式会社のFemtet(登録商標)を用いた。
【0046】
先ず、シミュレーションの条件について説明する。
使用したソフトは、ムラタソフトウェア製のFemtet2019である。ソルバは、静磁場解析である。モデルは、3次元である。標準メッシュサイズは、0.25mmである。インダクタ配線30の材質は、銅である。
【0047】
次に、シミュレーションに使用する実施例1のインダクタ部品10のモデルの寸法や位置についての条件について説明する。なお、モデルの形状は、上述した第1実施形態におけるインダクタ部品10を実施例1としている。
【0048】
インダクタ配線30の第1軸AX1に沿う方向の寸法は、0.5mmである。インダクタ配線30の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.1mmである。インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の寸法は、4.42mmである。
【0049】
磁性薄帯40の座標軸Xに沿う方向の寸法は、990μmである。磁性薄帯40の座標軸Yに沿う方向の寸法は、990μmである。磁性薄帯40の座標軸Zに沿う方向の寸法は、20μmである。なお、インダクタ配線30が配置される箇所については、インダクタ配線30を優先とし、磁性薄帯40の一部が欠けるように構成されている。
【0050】
非磁性層50の座標軸Xに沿う方向の寸法は、20μmである。非磁性層50の座標軸Yに沿う方向の寸法は、20μmである。非磁性層50の座標軸Zに沿う方向の寸法は、2.0μmである。なお、インダクタ配線30が配置される箇所については、インダクタ配線30を優先とし、非磁性層50の一部が欠けるように構成されている。
【0051】
磁性薄帯40の座標軸Zに沿う方向に積層する数は、41個である。磁性薄帯40の座標軸Xに沿う方向に並ぶ数は、3個である。磁性薄帯40の座標軸Yに沿う方向に並ぶ数は、3個である。
【0052】
インダクタ部品10の座標軸Xに沿う方向の寸法は、3030μmである。シミュレーションにおいては、素体20は、非磁性膜70と同じ非磁性材の膜を、中心軸CAに沿う方向の両端に有している。当該膜の中心軸CAに沿う方向の寸法は、10μmである。そのため、素体20の座標軸Yに沿う方向の寸法は、3030μmである。インダクタ部品10の座標軸Zに沿う方向の寸法は、902μmである。なお、このシミュレーションにおいては、素体20の第2正方向Y1の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出し、素体20の第2負方向Y2の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出した状態で、シミュレーションが行われる。
【0053】
シミュレーションにおいて、磁性薄帯40の比透磁率μrは、7000とし、飽和磁束密度Bsは、1.3Tである。非磁性層50、非磁性部60及び非磁性膜70の非磁性材の比透磁率μrは、1とした。
【0054】
配線抵抗Rdcの単位はmΩであり、配線断面積に比例するとした。絶対値の基準は、別途電磁場解析シミュレーションにより求めた1.0mm×0.1mmの配線断面において、0.43Ωである。
【0055】
そして、実施例1では、磁性体は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属磁性薄帯である。磁性体BH曲線は、B=Bs×tanh(μ0×μr×H/Bs)を満たすものを使用した。なお、磁性体BH曲線は、真空の透磁率以下にならないように、比透磁率μrが1以上の部分を使用し、さらにFemtet2019の機能を使って、真空の透磁率へ外挿した。
【0056】
一方で、
図5に示すように、比較例1のインダクタ部品610は、素体620が、磁性材と非磁性材とのコンポジット材である。シミュレーションには、素体620は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属粒子と樹脂のメタルコンポジット材とした。素体620の比透磁率μrは、24であり、金属磁性体充填率は70%、飽和磁束密度Bsは、0.91Tである。他の条件は、実施例1のインダクタ部品10と同様である。
【0057】
次に、参考例1~参考例6について説明する。
図6に示すように、参考例1のインダクタ部品710は、実施例1のインダクタ部品10と比べて、インダクタ配線30の形状と、磁性薄帯40の数とが、主に異なる。
【0058】
インダクタ部品710において、磁性薄帯740は、座標軸Xの延びる方向に2個並んでいる。また、磁性薄帯740は、座標軸Yの延びる方向に2個並んでいる。座標軸Zに沿う方向から視たときに、最も第1負方向X2且つ最も第2負方向Y2に位置する磁性薄帯740を、磁性薄帯740Aとする。そして、磁性薄帯740Aの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯740を、磁性薄帯740Bとする。また、磁性薄帯740Aの第2正方向Y1に隣り合う磁性薄帯740を、磁性薄帯740Dとする。そして、磁性薄帯740Dの第1正方向X1に隣り合う磁性薄帯740を、磁性薄帯740Eとする。そして、隣り合う磁性薄帯740の間を、非磁性部760が全て埋めている。
【0059】
インダクタ配線730は、第1直線部732と、曲線部733と、第2直線部734と、で構成されている。
第1直線部732は、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。第1直線部732の第1軸AX1、すなわち座標軸Xに沿う方向の寸法は、0.5mmであり、磁性薄帯40の約半分である。第1直線部732の座標軸Yに沿う方向の寸法は、1.0mmである。第1直線部732の中心軸CAは、磁性薄帯740Aの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に配置されている。
【0060】
座標軸Zから視たときに、第1直線部732の第2負方向Y2の端は、磁性薄帯740Aの第2負方向Y2の端と一致している。すなわち、第1直線部732の第2負方向Y2の端は、素体720の外面に露出している。
【0061】
曲線部733の中心軸CAに沿う方向の第1端は、第1直線部732の第2正方向Y1の端に接続している。曲線部733は、螺旋状に、1ターン巻き回されている。すなわち、
図7に示すように、曲線部733は、第3正方向Z1に進みながら、座標軸Zから視たときに、1周巻き回されている。そのため、
図6に示すように、座標軸Zから視たときに、曲線部733の中心軸CAに沿う方向の第1端と第2端とは、位置が一致している。一方で、曲線部733の中心軸CAに沿う方向の第1端と第2端とは、座標軸Zに沿う方向の位置が異なっている。
【0062】
第2直線部734は、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。第2直線部734の第2負方向Y2の端は、曲線部733の中心軸CAに沿う方向の第2端に接続している。第2直線部734の第2正方向Y1の端は、磁性薄帯740Dの第2正方向Y1の端と一致している。すなわち、第2直線部734の第2正方向Y1の端は、素体720の外面に露出している。
【0063】
このように、インダクタ配線730は、中心軸CAが、直線状に延びる部分と、螺旋状に延びる部分とを有している。しかしながら、座標軸Zに沿う方向から視たときに、中心軸CAに沿うインダクタ配線730の第1端から第2端までのほとんどの範囲で、インダクタ配線730の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部760は存在していない。
【0064】
次に、参考例2のインダクタ部品について説明する。参考例2のインダクタ部品は、参考例1のインダクタ部品710と比べて、素体720が、すべて磁性材と非磁性材とのコンポジット材である点が異なる。
【0065】
次に、シミュレーションに使用する参考例1のインダクタ部品710のモデルの寸法や位置についての条件について説明する。
インダクタ配線730の第1軸AX1に沿う方向の寸法は、0.5mmである。インダクタ配線730の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.1mmである。インダクタ配線730の中心軸CAに沿う方向の寸法は、5.16mmである。
【0066】
磁性薄帯740の座標軸Xに沿う方向の寸法は、990μmである。磁性薄帯740の座標軸Yに沿う方向の寸法は、990μmである。磁性薄帯740の座標軸Zに沿う方向の寸法は、20μmである。
【0067】
非磁性層750の座標軸Xに沿う方向の寸法は、20μmである。非磁性層750の座標軸Yに沿う方向の寸法は、20μmである。非磁性層750の座標軸Zに沿う方向の寸法は、2.0μmである。なお、インダクタ配線730が配置される箇所については、インダクタ配線730を優先とし、非磁性層750の一部が欠けるように構成されている。
【0068】
磁性薄帯740の座標軸Zに沿う方向に積層する数は、41個である。磁性薄帯740の座標軸Xに沿う方向に並ぶ数は、2個である。磁性薄帯740の座標軸Yに沿う方向に並ぶ数は、2個である。
【0069】
インダクタ部品710の座標軸Xに沿う方向の寸法は、2020μmである。シミュレーションにおいては、素体20は、非磁性膜70と同じ非磁性材の膜を、中心軸CAに沿う方向の両端に有している。当該膜の中心軸CAに沿う方向の寸法は、10μmである。そのため、素体720の座標軸Yに沿う方向の寸法は、2020μmである。インダクタ部品710の座標軸Zに沿う方向の寸法は、902μmである。なお、このシミュレーションにおいては、素体20の第2正方向Y1の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出し、素体20の第2負方向Y2の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出した状態で、シミュレーションが行われる。
【0070】
シミュレーションにおいて、磁性薄帯740の比透磁率μrは、7000とし、飽和磁束密度Bsは、1.3Tである。非磁性層750、非磁性部760及び非磁性膜770の非磁性材の比透磁率μrは、1とした。
【0071】
配線抵抗Rdcの単位はmΩであり、配線断面積に比例するとした。絶対値の基準は、別途電磁場解析シミュレーションにより求めた1.0mm×0.1mmの配線断面において、0.43Ωである。
【0072】
そして、参考例1では、磁性体は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属磁性薄帯である。磁性体BH曲線は、B=Bs×tanh(μ0×μr×H/Bs)を満たすものを使用した。なお、磁性体BH曲線は、真空の透磁率以下にならないように、比透磁率μrが1以上の部分を使用し、さらにFemtet2019の機能を使って、真空の透磁率へ外挿した。
【0073】
一方で、参考例2について、シミュレーションには、素体720は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属粒子と樹脂のメタルコンポジット材とした。素体720の比透磁率μrは、24であり、金属磁性体充填率は70%、飽和磁束密度Bsは、0.91Tである。他の条件は、参考例1のインダクタ部品710と同様である。
【0074】
次に、参考例3のインダクタ部品810について説明する。
図8に示すように、参考例3のインダクタ部品810は、参考例1のインダクタ部品710と比べて、インダクタ配線730の形状が異なる。
【0075】
インダクタ部品810のインダクタ配線830は、第1直線部832と、曲線部833と、第2直線部834と、で構成されている。
第1直線部832は、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。第1直線部832の第1軸AX1、すなわち座標軸Xに沿う方向の寸法は、0.5mmであり、磁性薄帯740の約半分である。第1直線部832の座標軸Yに沿う方向の寸法は、1.0mmである。第1直線部832の中心軸CAは、磁性薄帯740Aの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に配置されている。
【0076】
座標軸Zから視たときに、第1直線部832の中心軸CAに沿う方向の第1端、すなわち第2負方向Y2の端は、磁性薄帯740Aの第2負方向Y2の端と一致している。そのため、第1直線部832の第2負方向Y2の端は、素体720の外面に露出している。
【0077】
曲線部833の中心軸CAに沿う方向における第1端は、第1直線部832の中心軸CAに沿う方向の第2端、すなわち第2正方向Y1の端に接続している。曲線部833は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、180度巻き回されている。すなわち、曲線部833は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第2正方向Y1に凸のC字状である。また、曲線部833は、第1直線部832と座標軸Zに沿う方向における位置が同じ位置で、延びている。曲線部833の中心軸CAに沿う方向における第2端は、インダクタ部品810において、座標軸Xに沿う方向の中央よりも第1正方向X1に位置している。
【0078】
第2直線部834は、座標軸Yに沿う方向に延びる直線状である。第2直線部834の中心軸CAの第1端、すなわち第2正方向Y1の端は、曲線部833の中心軸CAに沿う方向の第2端に接続している。そして、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第2直線部834の中心軸CAに沿う方向の第2端、すなわち第2負方向Y2の端は、磁性薄帯740Bの第2負方向Y2の端と一致している。
【0079】
このように、インダクタ配線830は、中心軸CAが、直線状に延びる部分と、曲線状に延びる部分とを有している。しかしながら、座標軸Zに沿う方向から視たときに、中心軸CAに沿うインダクタ配線830の第1端から第2端までのほとんどの範囲で、インダクタ配線830の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部760は存在していない。
【0080】
次に、参考例4のインダクタ部品について説明する。参考例4のインダクタ部品は、参考例3のインダクタ部品810と比べて、素体720が、すべて磁性材と非磁性材のコンポジット材である点が異なる。
【0081】
次に、シミュレーションに使用する参考例3のインダクタ部品810のモデルの寸法や位置についての条件について説明する。
インダクタ配線830の第1軸AX1に沿う方向の寸法は、0.5mmである。インダクタ配線830の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.1mmである。インダクタ配線830の中心軸CAに沿う方向の寸法は、3.59mmである。
【0082】
他の寸法は、参考例1のインダクタ部品710と同様である。なお、このシミュレーションにおいては、素体20の第2負方向Y2の端面からインダクタ配線30の両端部が190μmずつ突出した状態で、シミュレーションが行われる。
【0083】
一方で、参考例4について、シミュレーションには、素体720は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属粒子と樹脂のメタルコンポジット材とした。素体720の比透磁率μrは、24であり、金属磁性体充填率は70%、飽和磁束密度Bsは、0.91Tである。他の条件は、参考例3のインダクタ部品810と同様である。
【0084】
次に、参考例5のインダクタ部品910について説明する。
図9に示すように、参考例5のインダクタ部品910は、参考例1のインダクタ部品710と比べて、インダクタ配線730の形状が異なる。
【0085】
インダクタ部品910において、インダクタ配線930は、第1直線部932と、第2直線部933と、第3直線部934と、を有している。
第1直線部932は、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。第1直線部932の第1軸AX1、すなわち座標軸Xに沿う方向の寸法は、0.5mmであり、磁性薄帯740の約半分である。第1直線部932の中心軸CAは、磁性薄帯740Aの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に配置されている。
【0086】
第2直線部933及び第3直線部934は、実施例1のインダクタ部品10における第2直線部33及び第3直線部34と同様に延びている。第3直線部934は、磁性薄帯740Eの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に位置している。
【0087】
このように、インダクタ配線930は、中心軸CAが、直線状に延びる3つの部分を有している。しかしながら、中心軸CAに沿う第1直線部932の第1端から第2端までの範囲で、第1直線部932の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部760は存在していない。また、中心軸CAに沿う第3直線部934の第1端から第2端までの範囲で、第3直線部934の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部760は存在していない。そのため、座標軸Zに沿う方向から視たときに、中心軸CAに沿うインダクタ配線930の第1端から第2端までの範囲の一部で、インダクタ配線930の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部760は存在していない。
【0088】
次に、参考例6のインダクタ部品について説明する。参考例6のインダクタ部品は、参考例5のインダクタ部品910と比べて、素体720が、すべて磁性材と非磁性材のコンポジット材である点が異なる。
【0089】
次に、シミュレーションに使用する参考例5のインダクタ部品910のモデルの寸法や位置についての条件について説明する。
インダクタ配線930の第1軸AX1に沿う方向の寸法は、0.5mmである。インダクタ配線830の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.1mmである。インダクタ配線830の中心軸CAに沿う方向の寸法は、3.03mmである。
【0090】
他の寸法は、参考例1のインダクタ部品710と同様である。
一方で、参考例6について、シミュレーションには、素体720は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属粒子と樹脂のメタルコンポジット材とした。素体720の比透磁率μrは、24であり、金属磁性体充填率は70%、飽和磁束密度Bsは、0.91Tである。他の条件は、参考例1のインダクタ部品710と同様である。
【0091】
次に、シミュレーションによって算出する特性指標について説明する。
インダクタンスLの単位はnHであり、直流重畳特性Isatの単位はAである、直流重畳特性Isatは、電流値Idcが0.001AにおけるインダクタンスLである初期インダクタンスLinに対してインダクタンスLが20%低下する時の電流値Idcである。
【0092】
図4に示すように、実施例1、比較例1及び参考例1~参考例6について、初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatが算出された。ここで、素体の構成のみが異なるモデルについて、特性指標を比べてみる。まず、実施例1と比較例1とを比べると、実施例1の初期インダクタンスLinは、比較例1の初期インダクタンスLinに対して、20%以上大きい値である。また、実施例1の直流重畳特性Isatは、比較例1の直流重畳特性Isatに対して、20%以上大きい値である。
【0093】
参考例1と参考例2とを比べると、参考例1の初期インダクタンスLinは、参考例2の初期インダクタンスLinに対して、2倍以上大きい値である。一方で、参考例1の直流重畳特性Isatは、参考例2の直流重畳特性Isatよりも小さい値である。
【0094】
参考例3と参考例4とを比べると、参考例3の初期インダクタンスLinは、参考例4の初期インダクタンスLinに対して、2倍以上大きい値である。一方で、参考例3の直流重畳特性Isatは、参考例4の直流重畳特性Isatよりも小さい値である。
【0095】
参考例5と参考例6とを比べると、参考例5の初期インダクタンスLinは、参考例6の初期インダクタンスLinに対して、2倍以上大きい値である。一方で、参考例5の直流重畳特性Isatは、参考例6の直流重畳特性Isatよりも小さい値である。
【0096】
参考例1~参考例6では、座標軸Zに沿う方向から視たときに、中心軸CAに沿うインダクタ配線の第1端から第2端までの全範囲で、インダクタ配線の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部760が存在しているわけではない。これらの場合には、素体の構成を、メタルコンポジットではなく磁性薄帯740と非磁性層750との積層構造とすることで、初期インダクタンスLinを向上させることができる一方で、直流重畳特性Isatは低下してしまう。
【0097】
一方で、実施例1及び比較例1では、座標軸Zに沿う方向から視たとき、中心軸CAに沿うインダクタ配線30の第1端から第2端までの全範囲で、インダクタ配線30の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部60が存在している。換言すると、非磁性部60は、座標軸Zに沿う方向からの平面視で、中心軸CAに沿うインダクタ配線30の第1端から第2端まで、インダクタ配線30の存在範囲から逸脱することなく連続して存在している。この場合、素体の構成を、比較例1のようにメタルコンポジットではなく、磁性薄帯40と非磁性層50との積層構造とすることで、初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatのいずれをも向上させることができる。
【0098】
(第1実施形態の効果について)
次に、上記第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態のインダクタ部品10によれば、素体20は、座標軸Zに沿って積層された複数の磁性薄帯40を含んでいる。また、インダクタ配線30は、磁性薄帯40の主面MFに沿って延びている。インダクタ配線30は、屈曲して延びる部分を2箇所備えている。複数の磁性薄帯40は、座標軸X、すなわち第3軸AX3に沿って複数並んでいる。また、複数の磁性薄帯40は、座標軸Y、すなわち第4軸AX4に沿って複数並んでいる。非磁性材からなる非磁性部60は、第3軸AX3に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40の隙間、及び第4軸AX4に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40の隙間を埋めている。
【0099】
ここで、インダクタ部品10では、座標軸Zに沿う方向から視たとき、中心軸CAに沿うインダクタ配線30の第1端から第2端までの全範囲で、インダクタ配線30の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部60が存在している。そのため、
図4にシミュレーション結果として示したように、素体20がすべてメタルコンポジット材である場合と比べて、初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatのいずれをも向上させることができる。
【0100】
(1-2)上記第1実施形態のインダクタ部品10によれば、複数の磁性薄帯40は、第2軸AX2に沿って積層されている。そのため、インダクタ部品10は、座標軸Zに沿って積層されるという磁性薄帯40の3次元に規則的な構造を有する。これにより、インダクタ部品10の特性をさらに向上させることができる。
【0101】
(1-3)上記第1実施形態によれば、複数の磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、すべて等しい。そのため、各磁性薄帯40内での磁束密度が均一化し、特定の箇所において磁束が集中して飽和しにくい。その結果、素体20全体で見た場合の磁束密度が向上する。
【0102】
(1-4)上記第1実施形態によれば、非磁性材からなる非磁性層50は、第2軸AX2に沿って隣り合う磁性薄帯40の間に位置している。そのため、第2軸AX2に沿う方向に磁性薄帯40と非磁性層50との規則的な構造を実現しやすい。
【0103】
(1-5)上記第1実施形態によれば、複数の非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、すべて等しい。そのため、第2軸AX2に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40間で生じる磁束の乱れを均一化できる。
【0104】
(1-7)上記第1実施形態によれば、複数の磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法は、すべて等しい。そのため、複数の磁性薄帯40を第3軸AX3に沿う方向に、規則的に並べやすい。
【0105】
(1-8)上記第1実施形態によれば、複数の磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法は、すべて等しい。そのため、複数の磁性薄帯40を第4軸AX4に沿う方向に、規則的に並べやすい。
【0106】
(1-9)上記第1実施形態によれば、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40の形状は、長方形状、すなわち四角形状である。そのため、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40を規則的に並べやすい。その結果、座標軸Zに沿う方向から視たときに、非磁性部60を線状とさせやすい。非磁性部60が線状であると、インダクタ配線30の配線箇所や寸法の設計自由度が高まる。
【0107】
<第2実施形態について>
(インダクタ部品)
第2実施形態におけるインダクタ部品110は、第1実施形態におけるインダクタ部品10と比べて、素体120における磁性薄帯40、非磁性層50、非磁性部60及び非磁性膜70が焼結体である点と、第2部分P2の構成とが主に異なる。以下では、第1実施形態におけるインダクタ部品10と比べて、主に異なる点を説明する。
【0108】
磁性薄帯40は、焼結体の磁性材からなる平板状である。磁性薄帯40は、Fe、Ni、Fe元素及びSi元素を含む合金、Fe元素及びNi元素を含む合金、Fe元素及びCo元素を含む合金のうち、少なくとも1種類を含んでいる。本実施形態では、磁性薄帯40は、Fe元素及びNi元素を含む合金を含んでいる金属磁性材である。なお、Feは、金属鉄であり、Niは、金属ニッケルである。
【0109】
非磁性層50は、焼結体の非磁性材からなっている。非磁性材は、例えば、アルミナ、シリカ、結晶化ガラス、非晶質ガラスである。また、非磁性部60及び非磁性膜70は、焼結体の非磁性材からなっている。
【0110】
図10に示すように、第2部分P2は、インダクタ配線30と、2つのコンポジット部80で構成されている。コンポジット部80は、磁性材からなる粉体状の磁性粒子81と、非磁性材からなる非磁性母材82と、からなる。磁性粒子81は、例えば、Fe元素、Ni元素、Co元素、Cr元素、Cu元素、Al元素、Si元素、B元素、P元素等を含む金属磁性粒子である。本実施形態では、磁性粒子81は、Fe元素、Si元素及びCr元素を含む合金の金属粒子である。非磁性母材82は、例えば、ガラスやアルミナ等の向き焼結体である。
【0111】
コンポジット部80は、第1実施形態のインダクタ部品10における磁性薄帯40、非磁性層50及び非磁性部60である部分を占めている。そのため、第2部分P2において、コンポジット部80は、インダクタ配線30を挟んで2つ配置されている。
【0112】
(インダクタ部品の製造方法)
次に、インダクタ部品110の製造方法を説明する。
図11に示すように、インダクタ部品110の製造方法は、第1シート準備工程S11と、第2シート準備工程S12と、積層工程S13と、圧着工程S14と、個片化工程S15と、焼結工程S16と、被膜処理工程S17と、を備えている。
【0113】
先ず、第1シート準備工程S11を行う。第1シート210は、焼結前非磁性層211と、磁性材である金属磁性粉末212Mを含む磁性層212と、を有している。
図12に示すように、第1シート210を製造するにあたっては、先ず、第1基材91としてPETからなるフィルムを準備する。第1基材91は、PETやアルミナ、フェライトの基板のように部品の完成時には除去されてしまうものであってもよいし、ガラスの焼結前非磁性層211のように残るものであってもよい。なお、以下の説明では、第1基材91の2つの主面が座標軸Zに直交するように配置されているものとし、且つ中心軸CAに直交する断面を示して説明する。また、
図12~
図20においては、理解しやすさのため、寸法の比率を、
図10とは、大きく変更して図示している。
【0114】
第1基材91の座標軸Zに沿う第3正方向Z1を向く主面に、非磁性且つ絶縁性の非磁性材からなる非磁性ペーストを塗布してシート状に成形する。これにより、焼結前非磁性層211を形成する。焼結前非磁性層211は、例えば、アルミナ、シリカ、結晶化ガラス、非晶質ガラス等を含んでいる非磁性材からなっている。
【0115】
次に、
図13に示すように、焼結前非磁性層211の座標軸Zに沿う第3正方向Z1を向く面に、磁性材である金属磁性粉末212Mを含む金属磁性ペーストを塗布する。金属磁性粉末212Mは、本実施形態では、Fe元素及びNi元素を含むFeNi合金である。これにより、磁性層212を形成する。磁性層212は、樹脂92に、金属磁性粉末212Mが含まれている金属磁性ペーストからなっている。
【0116】
次に、
図14に示すように、レーザ加工により、磁性層212に溝212Hを形成する。溝212Hは、磁性層212を貫通している。座標軸Zに沿う方向から視たときに、溝212Hからは、焼結前非磁性層211の一部が、座標軸Zに沿う第3正方向Z1に露出している。溝212Hは、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第3軸AX3及び第4軸AX4に沿う方向に、磁性層212を分割している。
【0117】
次に、
図15に示すように、印刷等により、磁性層212に形成された溝212Hを、非磁性且つ絶縁性の材料からなる非磁性ペーストで充填する。これにより、溝内非磁性部213を形成する。また、これと同時に、磁性層212を第3軸AX3に沿う方向及び第4軸AX4に沿う方向に分割した複数の分割磁性層212Dを形成する。さらに、分割磁性層212Dをシート状に形成することにより、第1シート210が準備される。なお、第1シート210は、製造しようとするインダクタ部品10の磁性薄帯40の積層数と同数準備する。
【0118】
次に、第2シート準備工程S12を行う。第2シート220は、配線パターン221と、ネガパターン222と、を有している。先ず、第2シート220を製造するにあたっては、
図16に示すように、第2基材93を準備する。第2基材93は、PETやアルミナ、フェライトの基板のように部品の完成時には除去されてしまうものであってもよいし、ガラスの焼結前非磁性層211のように残るものであってもよい。なお、以下の説明では、第2基材93の2つの主面が座標軸Zに直交するように配置されているものとする。
【0119】
第2基材93の座標軸Zに沿う第3正方向Z1を向く主面に、非磁性且つ絶縁性の非磁性材からなる非磁性ペーストを塗布してシート状に成形する。これにより、焼結前非磁性層211を形成する。
【0120】
次に、焼結前非磁性層211の座標軸Zに沿う第3正方向Z1を向く主面に、印刷等により、部分的に導電ペーストを塗布する。これにより、配線パターン221を形成する。配線パターン221は、導電材料である。例えば、AgやCuの導電ペーストからなっている。
【0121】
なお、配線パターン221を形成する方法は、スクリーン印刷法等の印刷以外にも、感光性材料を用いたフォトリソグラフィ法、セミアディティブ等のめっき系工法、別シートに形成された配線パターンを転写する転写法等であってもよい。また、めっき系工法や転写法の場合には、導電ペーストではなく、樹脂を含まない金属膜を配線パターン221の材料として用いればよい。
【0122】
次に、
図17に示すように、焼結前非磁性層211の座標軸Zに沿う第3正方向Z1を向く主面のうち、配線パターン221が塗布されていない部分に、印刷等により、ネガペーストを充填塗布する。これにより、ネガパターン222を形成する。ネガパターン222は、図示は省略するが、磁性粒子81と、非磁性母材82の原料である非磁性粉末と、を含んでいる。これにより、第2シート220を準備する。本実施形態では、焼結前非磁性層211が、配線パターン221及びネガパターン222を形成するためのシート状の基材となっている。
【0123】
次に、準備した第1シート210及び第2シート220を積層する積層工程S13を行う。
図18に示すように、先ず、第1シート210から、第1基材91を剥離し、シートの上下方向はそのままに、図示を省略する所定の治具台に載置する。そして、第2シート220における配線パターン221及びネガパターン222の焼結前非磁性層211が塗布されている面とは反対方向を向く面に、第1シート210における焼結前非磁性層211の磁性層212が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。これにより、第2シート220の座標軸Zに沿う第3正方向Z1に、第1シート210が積層される。
【0124】
同様に、別の第1シート210から第1基材91を剥離する。そして、第2シート220に積層された第1シート210の第2シート220と接着している面とは反対方向を向く面に、別の第1シート210における焼結前非磁性層211の磁性層212が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。なお、図示は省略するが、インダクタ部品10の第3部分P3に積層される磁性薄帯40の枚数だけ、第1シート210を積層させる。
【0125】
次に、第2シート220から、第2基材93を剥離する。そして、第2シート220における焼結前非磁性層211の配線パターン221が塗布されている面とは反対方向を向く面に、第1シート210における磁性層212の焼結前非磁性層211が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。そして、第1シート210から、第1基材91を剥離する。
【0126】
同様に、第2シート220に積層された第1シート210における焼結前非磁性層211の磁性層212が塗布されている面とは反対方向を向く面に、別の第1シート210における磁性層212の焼結前非磁性層211が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。なお、図示は省略するが、インダクタ部品10の第1部分P1に積層される磁性薄帯40の枚数だけ、第1シート210を積層させる。このように、第2シート220の両主面に第1シート210を繰り返し積層させる。すなわち、積層体200を形成する際に、分割磁性層212Dを複数積層させる。
【0127】
次に、圧着工程S14を行う。上記の積層工程S13によって積層された第1シート210及び第2シート220を、WIP等のプレスを行い圧着する。これによって、積層体200を形成する。
【0128】
次に、個片化工程S15を行う。
図19に示すように、例えば、積層体200を、所定の破断線DLにてダイシングすることにより個片化する。これにより、積層体200を個片化した個片部201を形成する。個片部201は、配線パターン221及び分割磁性層212Dによって構成されている。複数個の個片部201は、積層体200において、第3軸AX3に沿う方向及び第4軸AX4に沿う方向に並ぶように、行列状に配置されている。なお、本実施形態では、個片部201は、1つの配線パターン221を有している。
【0129】
次に、焼結工程S16を行う。
図20に示すように、個片化工程S15において個片化された積層体200の個片部201を、所定時間だけ焼成することにより、焼結させる。これにより、配線パターン221は、焼結体のインダクタ配線30になる。ネガパターン222は、焼結体のコンポジット部80になる。焼結前非磁性層211は、焼結体の非磁性層50になる。溝内非磁性部213は、焼結体の非磁性部60になる。そして、磁性層212の金属磁性粉末212Mは、磁性材からなる焼結体の金属磁性体になる。一方で、積層体200の個片部201に含まれる樹脂は、加熱されることにより気化する。
【0130】
次に、被膜処理工程S17を行う。個片化工程S15においてダイシングした破断線DLを含む面を、非磁性の絶縁体である非磁性膜70で覆う。その結果、個片部201は、インダクタ部品110となる。なお、焼結工程S16によって、インダクタ部品110の体積は、個片部201の体積と比べて、小さくなる。
【0131】
(第2実施形態の作用について)
上記第2実施形態のインダクタ部品110によれば、焼結工程S16によって、磁性層212の金属磁性粉末212Mは、磁性材からなる焼結体になる。
【0132】
(第2実施形態の効果について)
上記第2実施形態では、上述した第1実施形態における第2部分P2のうちの磁性薄帯40及び非磁性層50の構成を、コンポジット部80とした点で主に異なる。また、第1部分P1及び第3部分P3における素体120における各構成の材質が、焼結体の材料である点は異なるものの、磁性薄帯40が磁性材であり、非磁性層50、非磁性部60及び非磁性膜70が非磁性材である点については第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態におけるインダクタ部品110は、第1実施形態におけるインダクタ部品10のシミュレーション結果と同様の傾向が得られる。そのため、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態における(1-1)~(1-9)の効果を奏する。それに加えて、第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0133】
(2-1)第2実施形態によれば、磁性薄帯40は、焼結体である。磁性薄帯40として焼結体を採用することで、焼結の過程で磁性薄帯40の歪みを緩和することができる。その結果、磁性薄帯40の透磁率や保磁力といった磁気的な特性が、製造過程で低下することを抑制できる。
【0134】
そのため、磁歪定数が大きいが、飽和磁束密度Bsの高い結晶性金属磁性粒子を採用でき、素体20全体として、高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。その結果、特性指標である初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatのいずれも、素体20全体が粉体状の金属磁性粒子と有機樹脂とのメタルコンポジット材である場合と比べて、大きくなる。したがって、第2実施形態によれば、インダクタ部品10の特性向上を図ることができる。
【0135】
(2-2)上記第2実施形態によれば、焼結体である磁性薄帯40は、Fe元素及びNi元素を含む合金を有している。Fe元素及びNi元素を含む合金は、透磁率μを高く得ることができる。そのため、特性指標である初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatを大きく得ることができる。
【0136】
(2-3)上記第2実施形態では、磁性薄帯40の磁性材は、Fe元素及びCo元素からなるパーメンジュールである。このような結晶性金属磁性材は、金属磁性材の中で、飽和磁束密度Bsが極めて大きい。そのため、直流重畳特性Isatの観点からは、高い電流値Idcで使用されるパワーインダクタ等における素体20の材料として好適である。
【0137】
しかしながら、Fe元素及びCo元素からなるパーメンジュール等の結晶性金属磁性材料は、磁歪定数が非常に大きい。すなわち、結晶性金属磁性材料は、磁界が発生したときの寸法の変化量が大きい材料である。そして、素体20を形成する際に、圧力を加えるなどした際に、応力により結晶性金属磁性材料の歪みが残存しやすい。このような加工時の歪みが残った状態であると、透磁率μが低下したり、磁化されていない状態に戻すための保磁力が大きく必要になったりする。
【0138】
ここで、上記第2実施形態では、焼結工程S16において、加工により発生した残留歪みを緩和することができる。このように、歪みを緩和することによって回復する特性が大きくなり得るため、結晶性の金属磁性材は、焼結体を採用することによる効果が大きく発揮される。
【0139】
(2-4)上記第2実施形態によれば、第2部分P2におけるインダクタ配線30ではない部分は、コンポジット部80で構成されている。そして、コンポジット部80では、磁性粒子81がランダムに分散されている。そのため、第2軸AX2に沿う方向に発生する磁束が、第2部分P2の磁性材に侵入したときに、コンポジット部80において発生する渦電流が小さくなる。
【0140】
(2-5)仮に、1つのインダクタ部品10において、焼結後の磁性薄帯40を1つずつ積層させるとすると、手間がかかる。上記第2実施形態によれば、個片部201を複数有する積層体200を形成している。そして、積層体200を個片化することで個片部201を形成している。その後、個片部201を焼結してインダクタ部品10を製造している。そのため、複数の磁性薄帯40を積層した個片部201を効率よく製造することができる。
【0141】
(2-6)上記第2実施形態によれば、分割磁性層212Dを、シート状に形成することにより第1シート210を準備している。また、シート状の基材として焼結前非磁性層211上に配線パターン221を形成することにより、第2シート220を準備している。そして、第1シート210及び第2シート220を圧着することにより積層体200を形成している。そのため、積層体200を形成するうえで、2種類のシートを準備する工程と、積層する工程と、圧着する工程と、で積層体200を形成できる。
【0142】
(2-7)上記第2実施形態によれば、配線パターン221上に、分割磁性層212Dを形成することにより積層体200を形成している。配線パターン221を基準として、分割磁性層212Dの位置を調整することができる。
【0143】
(2-8)上記第2実施形態によれば、第2シート220を準備するうえで、シート状の基材として焼結前非磁性層211上のうち、配線パターン221が形成されない部分に、ネガパターン222を形成する。そのため、インダクタ部品110におけるコンポジット部80の位置を調整しやすい。
【0144】
(2-9)上記第2実施形態によれば、積層体200を形成する際、分割磁性層212Dを複数積層する。そのため、インダクタ部品110における積層方向に積層される複数の磁性薄帯40の数を調整しやすい。
【0145】
<第3実施形態>
第3実施形態におけるインダクタ部品310は、第1実施形態におけるインダクタ部品10と比べて、インダクタ配線30の形状が異なる。以下では、第1実施形態におけるインダクタ部品10と比べて、異なる点を説明する。
【0146】
図21に示すように、インダクタ部品310は、第1インダクタ配線331と、第2インダクタ配線332と、を備えている。第1インダクタ配線331は、座標軸Zに直交する平面上を延びている。また、第2インダクタ配線332は、座標軸Zに沿う方向において第1インダクタ配線331とは異なる位置で座標軸Zに直交する平面上を延びている。また、
図22に示すように、インダクタ部品310は、第1インダクタ配線331と第2インダクタ配線332とを接続するビア333を備えている。
【0147】
図21に示すように、第1インダクタ配線331は、第1直線部331Aと、第2直線部331Bと、第3直線部331Cと、で構成されている。第1直線部331Aは、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。
【0148】
第1直線部331Aの第2負方向Y2の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20から露出している。第1直線部331Aの第1負方向X2の側面は、磁性薄帯40Aの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に位置している。また、第1直線部331Aの第1正方向X1の側面は、磁性薄帯40Bの第1負方向X2の端と第1正方向X1の端との間に位置している。第1直線部331Aは、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40Aと磁性薄帯40Bとの隙間を埋める非磁性部60及び磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの隙間を埋める非磁性部60に沿って延びている。第1直線部331Aの第2正方向Y1の端面は、磁性薄帯40Dの第2正方向Y1の端よりも第2負方向Y2に位置している。
【0149】
第2直線部331Bは、第1直線部331Aの第2正方向Y1の端面に接続している。第2直線部331Bは、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Xに沿う方向に直線状に延びている。
【0150】
第2直線部331Bの第1負方向X2の端面は、第1直線部331Aの第1負方向X2の側面と面一である。第2直線部331Bの第2負方向Y2の側面は、磁性薄帯40Eの第2正方向Y1の端と第2負方向Y2の端との間に位置している。第2直線部331Bの第2正方向Y1の側面は、磁性薄帯40Hの第2負方向Y2の端と第2正方向Y1の端との間に位置している。第2直線部331Bは、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40Eと磁性薄帯40Hとの隙間を埋める非磁性部60に沿って延びている。第2直線部331Bの第1正方向X1の端面は、磁性薄帯40Fの第2負方向Y2の端と第2正方向Y1の端との間に位置している。
【0151】
第3直線部331Cは、第2直線部331Bの第2負方向Y2の側面に接続している。第3直線部331Cは、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Yに沿う方向に直線状に延びている。
【0152】
第3直線部331Cの第1正方向X1の側面は、第2直線部331Bの第1正方向X1の端面と面一である。第3直線部331Cの第1負方向X2の側面は、磁性薄帯40Eの第1正方向X1の端と第1負方向X2の端との間に位置している。第3直線部34は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、磁性薄帯40Eと磁性薄帯40Fとの隙間を埋める非磁性部60に沿って延びている。第3直線部34の第2負方向Y2の端面は、磁性薄帯40Bの第2負方向Y2の端と第2正方向Y1の端との間に位置している。すなわち、第3直線部34の第2正方向Y1の端面は、素体20の外部に露出していない。
【0153】
図22に示すように、ビア333は、第3直線部331Cの第2負方向Y2の端部に接続している。ビア333は、第3直線部331Cの第3正方向Z1に接続している。ビア333は、直方体状であり、座標軸Zに沿う方向から視たときに、正方形状である。座標軸Zに沿う方向から視たときに、ビア333の第2負方向Y2の端面は、第3直線部331Cの第2負方向Y2の端面と一致している。座標軸Zに沿う方向から視たときに、ビア333の第1正方向X1の端面は、第3直線部331Cの第1正方向X1の側面と一致している。
【0154】
第2インダクタ配線332は、第4直線部332Aと、第5直線部332Bと、を有している。第4直線部332Aは、ビア333の第3正方向Z1の端面に接続している。第4直線部332Aは、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Xに沿う方向に直線状に延びている。座標軸Zに沿う方向から視て、第4直線部332Aの第1正方向X1の端面は、ビア333の第1正方向X1の端面と一致している。第4直線部332Aの第2負方向Y2の側面は、ビア333の第2負方向Y2の端面と一致している。第4直線部332Aの第2正方向Y1の側面は、ビア333の第2正方向Y1の端面と一致している。座標軸Zに沿う方向から視て、第4直線部332Aの第1負方向X2の端面は、第1直線部331Aの第1負方向X2の側面と一致している。第4直線部332Aと第1直線部331Aとは、座標軸Zに沿う方向に離れており、接触していない。
【0155】
第5直線部332Bは、第4直線部332Aの第2正方向Y1の側面に接続している。第5直線部332Bは、座標軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、座標軸Zに沿う方向に直線状に延びている。第5直線部332Bの第1負方向X2の側面は、第1直線部331Aの第1負方向X2の側面と一致している。第5直線部332Bの第1正方向X1の側面は、第1直線部331Aの第1正方向X1の側面と一致している。第5直線部332Bの第2正方向Y1の端面は、素体20の外部に露出している。
【0156】
ここで、
図22に示すように、第1インダクタ配線331の中心軸を第1中心軸CA1とし、第2インダクタ配線332の中心軸を第2中心軸CA2とする。
図21に示すように、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1インダクタ配線331の第1中心軸CA1と第2インダクタ配線332の第2中心軸CA2をつなげる軸を仮想中心軸CAVとする。この場合、仮想中心軸CAVは、1.0ターン巻き回されている。そのため、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1インダクタ配線331及び第2インダクタ配線332による合計ターン数は、1.0ターンである。
【0157】
ここで、第1インダクタ配線331及び第2インダクタ配線332による合計ターン数は、仮想ベクトルに基づいて定められる。仮想ベクトルの始点は、座標軸Zに沿う方向から視たときに、各インダクタ配線の中心軸上に配置されている。そして、仮想ベクトルは、座標軸Zから視たときに仮想中心軸CAVに接している。仮想ベクトルの始点を仮想中心軸CAVの一方の端に配置した状態から、始点を仮想中心軸CAVの他方の端まで移動させたときに、仮想ベクトルの向きが回転した角度が「360°」のときに、ターン数は「1.0ターン」として定められている。したがって、例えば「180°」巻回されると、ターン数は「0.5ターン」となる。
【0158】
(インダクタ配線と非磁性部との位置関係について)
図21に示すように、第1インダクタ配線331の第1端は、第1直線部331Aの座標軸Yに沿う第2負方向Y2の端である。また、第2軸AX2、すなわち座標軸Zに沿う方向から視たとき、第1中心軸CA1に沿う第1インダクタ配線331の第1端とは反対側の第2端は、第3直線部331Cの座標軸Yに沿う第2正方向Y1の端である。そして、第1インダクタ配線331の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Aと磁性薄帯40Bとの間に位置する非磁性部60と、磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの間に位置する非磁性部60と、が存在している。また、第1インダクタ配線331の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Eと磁性薄帯40Hとの間に位置する非磁性部60と、磁性薄帯40Fと磁性薄帯40Iとの間に位置する非磁性部60と、が存在している。さらに、第1インダクタ配線331の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの間に位置する非磁性部60が存在している。よって、第2軸AX2、すなわち座標軸Zに沿う方向から視たとき、第1中心軸CA1に沿う第1インダクタ配線331の第1端から第2端までの全範囲で、第1インダクタ配線331の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部60が存在する。換言すると、座標軸Zに沿う方向から視たとき、第1インダクタ配線331の第1端から第2端まで、途切れることなく非磁性部60が延びている。
【0159】
同様に、第2中心軸CA2に沿う第2インダクタ配線332の第1端は、第4直線部332Aの第1正方向X1の端である。また、第2軸AX2、すなわち座標軸Zに沿う方向から視たとき、第2中心軸CA2に沿う第2インダクタ配線332の第1端とは反対側の第2端は、第5直線部332Bの座標軸Yに沿う第2正方向Y1の端である。そして、第2インダクタ配線332の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Bと磁性薄帯40Eとの間に位置する非磁性部60が存在している。また、第2インダクタ配線332の第1端から第2端までの範囲内に、磁性薄帯40Dと磁性薄帯40Eとの間に位置する非磁性部60と、磁性薄帯40Gと磁性薄帯40Hとの間に位置する非磁性部60と、が存在している。よって、第2軸AX2、すなわち座標軸Zに沿う方向から視たとき、第2中心軸CA2に沿う第2インダクタ配線332の第1端から第2端までの全範囲で、第2インダクタ配線332の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部60が存在する。換言すると、座標軸Zに沿う方向から視たとき、第2インダクタ配線332の第1端から第2端まで、途切れることなく非磁性部60が延びている。
【0160】
(シミュレーションについて)
上述した第1実施形態におけるシミュレーションと同様に、実施例2として第3実施形態におけるインダクタ部品310について、シミュレーションを行った。特に第3実施形態のインダクタ部品310において、異なる条件を説明する。
【0161】
第1インダクタ配線331の第1中心軸CA1に沿う方向の寸法と、第2インダクタ配線332の第2中心軸CA2に沿う方向の寸法との合計値は、7.00mmである。
第1インダクタ配線331の第1軸AX1に沿う方向の寸法は、0.5mmである。第1インダクタ配線331の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.1mmである。第2インダクタ配線332の第1軸AX1に沿う方向の寸法は、0.5mmである。第2インダクタ配線332の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.1mmである。ビア333の座標軸Zに沿う方向の寸法は、0.03mmである。
【0162】
一方で、比較例2のインダクタ部品は、実施例2と比べて、素体320が、磁性材と非磁性材とのコンポジット材である。シミュレーションには、素体320は、Fe元素、Si元素、Cr元素及びB元素からなるアモルファス金属粒子と樹脂のメタルコンポジット材とした。素体320の比透磁率μrは、24であり、金属磁性体充填率は70%、飽和磁束密度Bsは、0.91Tである。他の条件は、実施例2のインダクタ部品310と同様である。
【0163】
図23に示すように、実施例2及び比較例2について、初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatが算出された。実施例2と比較例2とを比べると、実施例2の初期インダクタンスLinは、比較例2の初期インダクタンスLinに対して、10%以上大きい値である。また、実施例2の直流重畳特性Isatは、比較例2の直流重畳特性Isatに対して、10%以上大きい値である。
【0164】
このように、第3実施形態におけるインダクタ部品310においても、第1実施形態におけるインダクタ部品10と同様に、比較例2と比べて、初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatのいずれも大きい。
【0165】
(第3実施形態の効果について)
第3実施形態によれば、上述した第1実施形態における(1-1)~(1-9)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0166】
(3-1)上記第3実施形態によれば、第1インダクタ配線331と、第1インダクタ配線331とは第2軸AX2に沿う方向の位置が異なる第2インダクタ配線332と、ビア333と、を備えている。そのため、第2軸AX2に沿う方向の位置が異なる複数のインダクタ配線を備えているため、インダクタ配線の配線長を長くしやすい。
【0167】
(3-2)上記第3実施形態によれば、座標軸Zに沿う方向から視たときに、第1インダクタ配線331及び第2インダクタ配線332による合計ターン数は、1.0ターンである。そのため、初期インダクタンスLinを大きく得ることができる。
【0168】
<その他の実施形態>
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0169】
・上記各実施形態において、素体20の形状は、上記各実施形態の例に限られない。例えば、第2軸AX2に沿う方向から視たときに、素体20の形状は、長方形状であってもよいし、四角形以外の多角形であってもよい。さらに例えば、座標軸Zに沿う方向から視たときに、素体20の形状は、楕円等の円状であってもよい。また、素体20の形状は、座標軸Xと座標軸Yの寸法が異なる直方体や、立方体、多角柱、円柱等であってもよい。
【0170】
・上記第1実施形態において、インダクタ配線30とは、電流が流れた場合に素体20に磁束を発生させることによって、インダクタ部品10にインダクタンスLを付与できるものであれば、形状は適宜に変更できる。この点、他の実施形態においても同様である。
【0171】
また例えば、
図24に示す変更例のインダクタ部品410では、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線430は、楕円状である。そして、インダクタ配線430に外接するとともに、座標軸Xに沿う第1辺及び座標軸Zに沿う第2辺を有する面積が最小の仮想長方形VR2を描く。このとき、仮想長方形VR2の第1辺は、仮想長方形VR2の第2辺よりも長い。このように、仮想長方形VR2の長辺が座標軸Xと平行であると、磁束のより集中する配線断面の座標軸Xに沿う方向の端部には、磁性薄帯40の反磁界の小さい領域が対応するため、より好ましい。
【0172】
また、上記第1実施形態において、中心軸CAに直交する断面におけるインダクタ配線30の形状は、座標軸Zに沿う第2辺が、座標軸Xに沿う第1辺よりも長くてもよい。この場合であっても、インダクタ配線30の第1正方向X1の端には、磁束が集中する。そのため、このように、磁束のより集中する配線断面の端には、磁性薄帯40の反磁界の小さい領域が対応するため、より好ましい。
【0173】
さらに、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の形状は、1つ以上の突出部分を含む場合等、線対称や回転対称等の対称性を有しない形状であってもよい。このように、中心軸CAに直交する断面において、対称性が崩れていると、磁束が他よりも集中する箇所が発生する。そして、突出部分等のように磁束が他よりも集中する箇所がインダクタ配線30の第1正方向X1の端となるように、磁性薄帯40の位置関係を定めることが好ましい。
【0174】
また、例えば、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の形状は、正方形状であってもよいし、真円状であってもよい。この場合、中心軸CAに直交する断面において描く仮想長方形VRは正方形となり、仮想長方形VRの第1辺は、仮想長方形VRの第2辺より長くなくてもよい。
【0175】
・上記各実施形態において、インダクタ配線の形状は、上記各実施形態の例に限られない。例えば、
図25に示す変更例のインダクタ部品510Xのように、全体として湾曲しているインダクタ配線530Xの形状であってもよい。また例えば、
図26に示す変更例のインダクタ部品510Yように、2回湾曲しているインダクタ配線530Yの形状であってもよい。また例えば、
図27に示す変更例のインダクタ部品510Zのように、ミアンダ形状のインダクタ配線530Zであってもよい。なお、ミアンダ形状は、湾曲している部分が連続するものに限られず、異なる方向を向く直線状部分が連続するものであってもよい。
【0176】
さらに、
図25~
図27に示す変更例のように、インダクタ配線は、直線状部分を有するものに限られない。インダクタ配線は、複数の直線部が接続されることによって、屈曲している箇所を備えない場合には、少なくとも、湾曲している箇所を備えていればよい。
【0177】
・上記各実施形態において、インダクタ配線の寸法は、上記各実施形態の例に限られない。例えば、上述したシミュレーションのように、インダクタ配線の両端が素体から突出していてもよい。
【0178】
・上記各実施形態において、インダクタ配線の材質は、導電性材料であれば、上記各実施形態の例に限られない。例えば、インダクタ配線の材質は、導電性の樹脂であってもよい。
【0179】
・上記各実施形態において、第2軸AX2に沿う方向から視たときに、磁性薄帯40の形状は四角形状に限らない。例えば、磁性薄帯40の形状は、四角形以外の多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。
【0180】
・上記各実施形態において、座標軸Zから視たときに、素体20の一辺と第3軸AX3とが一致していなくてもよい。また、座標軸Zから視たときに、素体20の一辺と第4軸AX4とが一致していなくてもよい。さらに、第3軸AX3は、座標軸Xと平行でなくてもよい。また、第4軸AX4は、座標軸Yと平行でなくてもよい。例えば、第2軸AX2に沿う方向から視たときに、磁性薄帯40の形状が、六角形状であるとする。この場合、第2軸AX2に沿う方向から視たときに、磁性薄帯40は、第2軸AX2に直交する第3軸AX3に沿う方向に並ぶとともに、第2軸AX2に直交するとともに、第3軸AX3に交差する第4軸AX4に沿う方向に並ぶ。この場合、第4軸AX4は、第3軸AX3に対して60度傾いている。このように、第3軸AX3と第4軸AX4とは、第2軸AX2に直交するとともに、第4軸AX4は第3軸AX3に交差していればよい。
【0181】
・上記各実施形態において、インダクタ配線が素体20から露出している部分には、外部電極が接続されていてもよい。例えば、第1実施形態において、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の両端面、及び素体20の中心軸CAに沿う方向の両端面に、塗布、印刷、めっき等によって、外部電極を形成してもよい。
【0182】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40と非磁性層50とが積層される方向は、製造上の誤差等により、中心軸CA及び第1軸AX1に対して直交しないこともある。上記実施形態において、磁性薄帯40等が「第2軸AX2に沿う方向に積層されている」というのは、このような製造上の誤差などを許容するものである。
【0183】
・上記各実施形態において、複数の磁性薄帯40は、第3軸AX3に沿う方向及び第4軸AX4に沿う方向に並んでいれば、第2軸AX2に沿う方向に積層されていなくてもよい。この場合、例えば、インダクタ配線30の第2軸AX2に沿う方向を向く面の一方にのみ位置していればよい。また例えば、第2軸AX2に沿う方向に積層されている場合であっても、第1実施形態において、第3部分P3を省略し、インダクタ配線30の第2軸AX2に沿う方向の一方にのみ配置されていてもよい。
【0184】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40の材質は、磁性材であれば、上記実施形態の例に限られない。例えば、Feであってもよいし、Niであってもよい。また、Fe元素及びCo元素を含む合金であってもよい。さらに、Fe元素、Ni元素、Co元素、Cr元素、Cu元素、Al元素、Si元素、B元素、P元素のうち、少なくとも2つ以上を含む合金であってもよい。さらに、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Al、Si、B、Pのうち、少なくとも2つ以上を含む混合物であってもよい。透磁率μが大きい磁性材であると、インダクタ部品の初期インダクタンスLinの向上を図るうえで、好適である。
【0185】
・上記各実施形態において、非磁性層50の材質は、非磁性材であれば、上記実施形態の例に限られない。非磁性層50は、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂以外の樹脂であってもよいし、アルミナ、シリカ、ガラス等の非磁性セラミックスやこれらを含む非磁性無機物であってもよいし、空隙であってもよく、さらにこれらの混合物であってもよい。この点、非磁性部60及び非磁性膜70についても同様である。また、非磁性層50、非磁性部60及び非磁性膜70の材質は、非磁性材であれば、互いに異なっていてもよいし、部分的に異なっていてもよい。これらの場合、焼結工程S16の後に、個片部201の外面を樹脂でコーティングしたり、外側から空間を樹脂で充填したりすることで実現できる。なお、第2実施形態において説明した製造方法のように、非磁性層50等を焼結体で形成する場合には、非磁性ペーストとしては、アルミナ、シリカ、結晶化ガラス、非晶質ガラス等、焼結させることのできる材料が好適である。
【0186】
・上記実施形態において、非磁性層50、非磁性部60、非磁性膜70は一体化していてもよいし、別の部材であってもよい。例えば、非磁性層50は、中空であってもよいし、磁性薄帯40の表面が酸化した酸化膜が絶縁体となって構成されていてもよい。
【0187】
・上記実施形態において、非磁性層50を省いてもよい。この場合、第2軸AX2に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40同士が直接接触していてもよい。
・上記実施形態において、非磁性部60が、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間に存在していてもよい。この場合、非磁性部60によって、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間の絶縁性を確保できる。
【0188】
なお、「複数の磁性薄帯40が積層された」及び「複数の磁性薄帯40が並ぶ」とは、具体的には、隣接する磁性薄帯40同士が完全に又は部分的に絶縁されている場合や微視的に物理的な境界が存在する場合を指す。例えば、磁性薄帯40同士が焼結されて完全に一体化されている状態等は含まない。
【0189】
・上記実施形態において、第1部分P1及び第3部分P3の少なくとも一方に磁性薄帯40が存在するのであれば、磁性薄帯40、非磁性層50及び非磁性部60の構成は、変更できる。例えば、第2部分P2のうちのインダクタ配線30を除く部分全てを磁性薄帯40で構成してもよいし非磁性層50で構成してもよい。また、第2部分P2のうちのインダクタ配線30を除く部分全てを磁性薄帯40で構成する場合、その磁性薄帯40は粉体状の磁性材と非磁性材とのコンポジット材であってもよい。このようなコンポジット材としては、Fe、Si、Cr及びBからなるアモルファス金属粒子と樹脂とのメタルコンポジット材や、ガラスとフェライトとのコンポジット材等が挙げられる。
【0190】
・上記各実施形態において、複数の磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、異なっていてもよい。磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法が小さい場合、製造方法によっては20%程度の製造誤差が生じることもあり得る。したがって、磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、複数の磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下であれば、ほぼ等しいとみなせる。なお、各磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて1000倍から10000倍までの間の倍率に拡大した1枚の画像のうち、第2軸AX2に沿う方向の最小の寸法とする。また、複数の磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて5つの磁性薄帯40がおさまる1枚の画像で測定した1つの磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法の平均値である。
【0191】
・複数の磁性薄帯40の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、互いに同一でなくてもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・上記各実施形態において、複数の非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、異なっていてもよい。非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法が小さい場合、製造方法によっては20%程度の製造誤差が生じることもあり得る。したがって、非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、複数の非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下であれば、ほぼ等しいとみなせる。なお、各非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて1000倍から10000倍までの間の倍率に拡大した1枚の画像のうち、第2軸AX2に沿う方向の最小の寸法とする。また、複数の非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて5つの非磁性層50がおさまる1枚の画像で測定した1つの非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法の平均値である。
【0192】
・複数の非磁性層50の第2軸AX2に沿う方向の寸法は、互いに同一でなくてもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・上記各実施形態において、複数の磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法は、異なっていてもよい。磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法が小さい場合、製造方法によっては20%程度の製造誤差が生じることもあり得る。したがって、第3軸AX3に沿って複数並んでいる磁性薄帯40の列において、磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法は、当該列におけるすべての磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下であれば、ほぼ等しいとみなせる。なお、各磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて、電子顕微鏡にて100倍から10000倍までの間の倍率に拡大した1枚の画像のうち、第3軸AX3に沿う方向の最大の寸法とする。また、複数の磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて第3軸AX3に沿う方向に並んでいるすべての磁性薄帯40がおさまる1枚の画像で測定した1つの磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法の平均値である。
【0193】
・複数の磁性薄帯40の第3軸AX3に沿う方向の寸法は、互いに同一でなくてもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・上記各実施形態において、複数の磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法は、異なっていてもよい。磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法が小さい場合、製造方法によっては20%程度の製造誤差が生じることもあり得る。したがって、第4軸AX4に沿って複数並んでいる磁性薄帯40の列において、磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法は、当該列におけるすべての磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下であれば、ほぼ等しいとみなせる。なお、各磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて、電子顕微鏡にて100倍から10000倍までの間の倍率に拡大した1枚の画像のうち、第4軸AX4に沿う方向の最大の寸法とする。また、複数の磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて第4軸AX4に沿う方向に並んでいるすべての磁性薄帯40がおさまる1枚の画像で測定した1つの磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法の平均値である。
【0194】
・複数の磁性薄帯40の第4軸AX4に沿う方向の寸法は、互いに同一でなくてもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・上記各実施形態において、非磁性部60の数や位置は、上記各実施形態の例に限られない。第1軸AX1に沿う方向や中心軸CAに沿う方向における磁性薄帯40の数や位置に併せて、非磁性部60の数や位置を変更すればよい。また、非磁性部60の大きさも、第2軸AX2に沿う方向における同一の位置における磁性薄帯40の間隔に併せて、適宜変更すればよい。
【0195】
・上記各実施形態において、非磁性部60の数や位置は、上記各実施形態の例に限られない。第3軸AX3に沿う方向や第4軸AX4に沿う方向における磁性薄帯40の数や位置に併せて、非磁性部60の数や位置を変更すればよい。また、非磁性部60の大きさも、第2軸AX2に沿う方向における同一の位置における磁性薄帯40の間隔に併せて、適宜変更すればよい。少なくとも、第2軸AX2に沿う方向から視たとき、中心軸CAに沿うインダクタ配線の第1端から第2端までの全範囲で、インダクタ配線の第1軸AX1に沿う正方向の端から負方向の端までの範囲内に、非磁性部60が存在していればよい。
【0196】
・上記各実施形態において、非磁性膜70は省略してもよい。非磁性膜70を省略する場合には、第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法において、被膜処理工程S17を省けばよい。また、被膜処理工程S17は、積層体200の個片部201の外面全体に非磁性膜70を塗布して、インダクタ配線30を露出させるように部分的に削ることで、非磁性膜70を形成してもよい。
【0197】
・上記第2実施形態において、コンポジット部80の構成は、上記第2実施形態の例に限られない。例えば、非磁性母材82は、アルミナや、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの絶縁性の熱可塑性樹脂であってもよい。なお、コンポジット部80は、第1部分P1及び第3部分P3の各磁性薄帯40のような積層構造ではなく、一体的な成形体であってもよい。このようなコンポジット部80を製造する上では、例えば、焼結工程S16の後であって、被膜処理工程S17の前に、コンポジット部80を構成する範囲に樹脂を充填すればよい。
【0198】
・上記第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法では、複数のシートをそれぞれ形成した後に、積層及び圧着するシート積層工法を例示したが、これに限られない。例えば、複数のシートを順次形成及び積層していく印刷積層工法であってもよい。この場合、配線パターン221上に、分割磁性層212Dを形成することにより、配線パターン221の上方に、分割磁性層212Dが配置される。
【0199】
・上記第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法において、第2シート220は、ネガパターン222に代えて、磁性層212又は焼結前非磁性層211を備えていてもよいし、磁性層212及び焼結前非磁性層211を備えていてもよい。ネガパターン222に代えて、磁性層212、焼結前非磁性層211及び溝内非磁性部213を備えている場合、第1実施形態におけるインダクタ部品10を製造できる。また、ネガパターン222は、磁性材又は非磁性材の少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0200】
・上記第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法において、個片化工程S15は省いてもよい。個片部201を1つ分だけ第1シート210及び第2シート220を準備した場合には、個片化工程S15を省けばよい。
【0201】
・上記第2実施形態において説明したインダクタ部品110の製造方法において、第1部分P1又は第3部分P3に相当する部分は、複数の磁性薄帯40と、非磁性層50とを有している。ここで、第2シート220を省くと、複数の第1シート210を積層した積層シートが構成される。この積層シートを焼結すると、磁性薄帯40が焼結体である磁性シートを製造できる。この磁性シートにおいては、複数の磁性薄帯40が、第2軸AX2に積層されている。また、磁性薄帯40は、第2軸AX2に沿う同一の位置において、第3軸AX3に沿う方向に3個並んでいる。さらに、磁性薄帯40は、第2軸AX2に沿う同一の位置において、第4軸AX4に沿う方向に3個並んでいる。
【0202】
・上記第3実施形態において、複数のインダクタ配線による合計ターン数は、1.0ターン未満であってもよいし、1.0ターンを超えていてもよい。例えば、座標軸Zに沿う方向において互いに異なる位置に3つ以上のインダクタ配線が存在していれば、複数のインダクタ配線による合計ターン数を2.0以上とすることも可能である。また、1つのインダクタ配線単独で、ターン数が1.0以上であってもよい。
【符号の説明】
【0203】
10,110,310,410,510X,510Y,510Z,610,710,810,910…インダクタ部品
20,120,320,620,720…素体
30,430,530X,530Y,530Z,730,830,930…インダクタ配線
331…第1インダクタ配線
332…第2インダクタ配線
333…ビア
40,740…磁性薄帯
50,750…非磁性層
60,760…非磁性部
70,770…非磁性膜
AX1…第1軸
AX2…第2軸
AX3…第3軸
AX4…第4軸
CA…中心軸
CAV…仮想中心軸
VR,VR2…仮想長方形
X…座標軸
Y…座標軸
Z…座標軸