(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 39/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
F04B39/16 E
(21)【出願番号】P 2023517438
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2022017809
(87)【国際公開番号】W WO2022230678
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2021074745
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 幸治
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131706(WO,A1)
【文献】特表2013-502537(JP,A)
【文献】実開昭57-081500(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/16
F04B 45/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入孔を有する第1壁および吐出孔を有する第2壁を有するポンプ本体と、
前記ポンプ本体の前記第1壁側の外方に、前記第1壁に直交する方向に視て、前記吸入孔に重なる位置および形状からな
るフィルタ部材と、
前記フィルタ部材における少なくとも前記吸入孔に重なる部分と前記第1壁との距離が変化可能に前記フィルタ部材を前記ポンプ本体に保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、
気体が前記吐出孔から前記ポンプ本体内に排出され、前記ポンプ本体内から前記吸入孔を通じて前記ポンプ本体の外部に排出される際に、
前記フィルタ部材の前記吸入孔に重なる部分が前記第1壁から離れている状態において、前記フィルタ部材が前記吸入孔に重なる部分と前記第1壁との間に生じる空間を前記フィルタ部材の外縁または前記保持部材よりも外側に連通する形状である、
ポンプ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、複数の個別保持部材を備え、
前記複数の個別保持部材は、互いに離間し、前記第1壁に直交する方向に視て前記吸入孔を囲む位置に配置される、
請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記第1壁に直交する方向に視て、前記フィルタ部材は、前記第1壁よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記フィルタ部材は、
前記第1壁に平行な主面を有する板状であり、
前記主面の形状が変化する可撓性を有する、
請求項1
または請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記フィルタ部材を前記第1壁に接着する接着部材である、
請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記保持部材は、前記フィルタ部材の全体を前記第1壁に直交する方向に移動可能に保持する、
請求項1
または請求項2に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を搬送するポンプ本体および気体を濾過するフィルタを備えるポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電ポンプが内蔵されたポンプ本体を備える冷却装置が記載されている。ポンプ本体は、気体を導入するための通路が形成される。通路は、気体を外部から導入する導入孔に連通する。また、通路の一部は、気体を外部に吐出する吐出口に連通する。圧電ポンプは、導入孔および通路を介して外部から気体を導入し、吐出口から気体を吐出する。
【0003】
フィルタは、導入孔を塞ぐように設けられている。フィルタは、導入孔からの気体の導入時に、液体の通過を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導入孔と吐出口との間で双方向に気体を搬送する必要が生じることがある。例えば、吐出口にカフを設置した場合、カフに気体を入れる際には、導入孔から吐出口に気体を搬送する。一方、カフから空気を抜く際には、吐出口から導入孔に気体を搬送する。
【0006】
この場合、双方向の気体搬送において、フィルタによる圧力損失が生じる。特に、吐出口から導入孔に気体を搬送する場合、フィルタとしての機能(濾過機能)は、必須ではなく、不要な圧力損失が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、フィルタの濾過機能が必要無い場合における圧力損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポンプ装置は、ポンプ本体、フィルタ部材、および、保持部材を備える。ポンプ本体は、吸入孔を有する第1壁および吐出孔を有する第2壁を有する。フィルタ部材は、ポンプ本体の第1壁側の外方に、第1壁に直交する方向に視て、吸入孔に重なる位置および形状からなる。保持部材は、フィルタ部材における少なくとも吸入孔に重なる部分と第1壁との距離が変化可能にフィルタ部材をポンプ本体に保持する。保持部材は、フィルタ部材の吸入孔に重なる部分が第1壁から離れている状態において、フィルタ部材が吸入孔に重なる部分と第1壁との間に生じる空間をフィルタ部材の外縁または保持部材よりも外側に連通する形状である。
【0009】
この構成では、吸入孔から気体(流体)を吸入するとき、フィルタ部材は、吸入孔に重なり、吸入孔を塞ぐ。これにより、気体は、フィルタ部材を通じて吸入孔に吸入される。吸入孔から気体(流体)を排出するとき、フィルタ部材は、吸入孔から離れる。これにより、吸入孔から排出された気体(流体)は、フィルタ部材を通じて外部に排出されるとともに、第1壁とフィルタ部材との間を通じて、フィルタ部材の外縁から外部へ排出される。このように、吸入孔から気体(流体)が排出されるときには、気体が排出される流路が増加し、圧力損失は低減する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、フィルタの濾過機能が必要無い場合における圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るポンプ装置の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るポンプ装置の構成を示す概略的な側面断面図である。
【
図3】
図3は、気体の吸入時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す図である。
【
図4】
図4(A)は、気体の排出時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す側面図であり、
図4(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係るポンプ装置の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、気体の排出時のフィルタ部材側の面を視た平面図である。
【
図7】
図7は、第
3の実施形態に係るポンプ装置の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、気体の吸入時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す図である。
【
図9】
図9(A)は、気体の排出時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す側面図であり、
図9(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。
【
図10】
図10(A)は、第4の実施形態に係るポンプ装置の構成を示す概略的な側面断面図であり、
図10(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。
【
図11】
図11は、気体の吸入時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す図である。
【
図12】
図12(A)は、気体の排出時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す側面図であり、
図12(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るポンプ装置について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係るポンプ装置の分解斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係るポンプ装置の構成を示す概略的な側面断面図である。本実施形態を含む各実施形態において、各図では、アクチュエータおよび流体制御装置の構成を分かり易くするため、それぞれの構成要素の形状を部分的または全体として誇張して記載している。
【0013】
図1、
図2に示すように、ポンプ装置10は、ポンプ本体11、フィルタ部材70、複数の接着部材700を備える。
【0014】
ポンプ本体11は、平板部材20、圧電素子30、平板部材40、側壁部材50、および、蓋部材60を備える。
【0015】
平板部材20は、金属板等からなり、主平板21、枠体22、および、複数の連結部材23を備える。主平板21、枠体22、および、複数の連結部材23は、例えば、1枚の平板を用いて、一体に形成されている。
【0016】
主平板21は、平面視して円形である。枠体22は、主平板21を囲むように配置される。複数の連結部材23は、梁形状であり、主平板21と枠体22との間に配置される。複数の連結部材23は、枠体22に対して主平板21を振動可能に支持する。
【0017】
圧電素子30は、平面視した形状が円形である。圧電素子30は、圧電体、および、駆動用導体を備える。圧電素子30は、主平板21の一方主面に配置される。この際、圧電素子30の中心と主平板21の中心とは一致する。なお、ここでの一致とは、製造誤差の範囲内において、互いの中心位置がずれている範囲内も含む。
【0018】
圧電素子30は、駆動電圧が印加されることによって歪む。主平板21は、圧電素子30の歪みによる応力によって振動する。
【0019】
平板部材40は、金属板等からなる。平板部材40は、平板部材20における他方主面側に配置される。平板部材40と平板部材20とは、互いの主面同士が対向するように配置される。平板部材40は、平板部材20の他方主面から離間して配置される。平板部材40には、平板部材40を厚み方向に貫通する貫通孔400が形成されている。
【0020】
側壁部材50は、中空500を有する環状であり、平板部材20と平板部材40との間に配置される。側壁部材50は、平板部材20の枠体22と平板部材40とに接続する。
【0021】
蓋部材60は、第1部分61と第2部分62とを備える。蓋部材60は、例えば、金属からなる。第1部分61は、平板である。第2部分62は、第1部分61の外縁に沿って、第1部分61の主面から直交する方向に立設する枠体である。第1部分61には、複数の貫通孔600が形成されている。
【0022】
蓋部材60は、第1部分61が平板部材20に対向し、第2部分62が立設する側が平板部材20側となるように配置される。第2部分62の先端部(第1部分61に接続する側と反対側の端部)は、平板部材20の枠体22に接続する。
【0023】
このような構成において、上述のように主平板21が振動すると、気体は、複数の貫通孔600を通じてポンプ本体11内に吸入され、貫通孔400を通じて外部に吐出される。これにより、ポンプ本体11は、気体を搬送するポンプとして機能する。したがって、複数の貫通孔600が、本発明の「吸入孔」に対応し、貫通孔400が、本発明の「吐出孔」に対応する。そして、蓋部材60の第1部分61が、本発明の「第1壁」に対応し、平板部材40が、本発明の「第2壁」に対応する。
【0024】
フィルタ部材70は、可撓性を有する板である。すなわち、フィルタ部材70の形状は、気体の通過等によって変化する。フィルタ部材70は、ポンプ装置10で搬送する気体を通過し、その他の不要物(例えば、気体よりも粒径の大きな塵等)を遮断する。例えば、フィルタ部材70は、複数の貫通孔600の開口径よりも小さな径の孔が多数設けられた平板である。また、フィルタ部材70は、防水フィルタやHEPAフィルタ等であってもよい。
【0025】
フィルタ部材70を平面視した形状(気体の通過等の外部からの圧力がかからない状態での形状)は、ポンプ本体11を平面視した形状(蓋部材60の第1部分61の平板面を平面視した形状)と略同じである。
【0026】
フィルタ部材70は、蓋部材60の第1部分61の外主面102に対向するように配置される。
【0027】
複数の接着部材700は、第1部分61を平面視して、複数の貫通孔600と異なる位置(重ならない位置)に配置される。複数の接着部材700の高さ方向の一方端は、第1部分61の外主面102に接着し、他方端は、フィルタ部材70に接着する。すなわち、複数の接着部材700は、フィルタ部材70における平面視において複数の貫通孔600に重ならない複数箇所を、第1部分61に接着して固定する。この際、複数の接着部材700の高さおよび配置位置は、気体が複数の貫通孔600を通じてポンプ本体11内に吸入される際に気体によってフィルタ部材70が変形した時に、フィルタ部材70が複数の貫通孔600を塞ぐように設定される。この際、気体の吸入時の流量、および、フィルタ部材70の可撓性の度合い(弾性率等)を考慮する。複数の接着部材700のそれぞれが、本発明の「個別保持部材」に対応する。
【0028】
(吸入時)
図3は、気体の吸入時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す図である。なお、
図3では、ポンプ本体11の内部の具体的な構造の図示は省略している(
図2参照)。
図3において、太線の矢印が、気体の流れを示す。
【0029】
図3および後述の
図4に示すように、ポンプ装置10の利用態様の一例として、ポンプ本体11の外主面101には、カフ91が取り付けられている。
【0030】
この場合、
図3に示すように、貫通孔600を通じて気体をポンプ本体11内に吸入し、貫通孔400を通じて気体をカフ91に吐出する。気体は、フィルタ部材70側から貫通孔600に流入する。この際、気体は、フィルタ部材70を通過して貫通孔600に流入する。
【0031】
この気体の通過時に、フィルタ部材70は、ポンプ本体11側に向かう応力を受ける。フィルタ部材70は可撓性を有するので、フィルタ部材70は、この応力によって湾曲する。そして、フィルタ部材70は、貫通孔600を含む所定領域において、ポンプ本体11(蓋部材60の第1部分61)に当接する。
【0032】
これにより、貫通孔600は、フィルタ部材70によって塞がれる。したがって、ポンプ本体11内には、フィルタ部材70によって濾過された気体のみが吸入される。この結果、カフ91にも、濾過された気体のみが吐出される。
【0033】
(排出時)
気体の排出は、例えば、ポンプ本体11の駆動を停止することによって実現される。この場合、カフ91の内部がポンプ本体11および外部よりも高圧になるため、カフ91からポンプ本体11に気体が排出される。なお、ポンプ本体11における気体の搬送方向を逆転できる場合は、貫通孔400から貫通孔600に気体が搬送されるように、ポンプ本体11を駆動してもよい。
【0034】
図4(A)は、気体の排出時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す側面図であり、
図4(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。なお、
図4(A)では、ポンプ本体11の内部の具体的な構造の図示は省略している(
図2参照)。
図4(A)、
図4(B)において、太線の矢印が、気体の流れを示す。
【0035】
図4(A)、
図4(B)に示すように、貫通孔400を通じて気体をカフ91からポンプ本体11内に排出し、さらに、貫通孔600を通じて気体をポンプ本体11内から外部に排出する場合、気体は、貫通孔600を通じて、ポンプ本体11の外部のフィルタ部材70に向かって排出される。フィルタ部材70は、排出された気体から受ける応力によって、
図4(B)に示すように、ポンプ本体11の第1部分61の外主面102から離間する。
【0036】
フィルタ部材70は、気体に対して通気性を有するので、
図4(A)に示すように、貫通孔600を通じて排出された気体の一部は、フィルタ部材70を通過して、外部に排出される。
【0037】
さらに、上述のように、フィルタ部材70は、複数の接着部材700によって、第1部分61に対して部分的に接着されている。したがって、フィルタ部材70が貫通孔600から離間している状態において、平面視してフィルタ部材70と貫通孔600とが重なる空間は、フィルタ部材70の外縁におけるフィルタ部材70と第1部分61との間の開口に連通する。
【0038】
これにより、貫通孔600を通じて排出された気体の一部は、
図4(A)、
図4(B)に示すように、フィルタ部材70と第1部分61の外主面102との間にできた空間を通って、フィルタ部材70の外縁の開口から外部に排出される。
【0039】
このように、気体の排出時には、フィルタ部材70を通過して気体が排出される流路と、フィルタ部材70と第1部分61との間を通じてフィルタ部材70の外縁の開口から気体が排出される流路とが、確保される。これにより、気体の排出時の圧力損失は、低減される。
【0040】
以上のように、本実施形態の構成を用いることによって、気体の吸入時には、フィルタ部材70による濾過機能をより確実に実現し、気体の排出時には、圧力損失を低減し、急速排出を実現できる。
【0041】
そして、この構成を採用することによって、例えば、カフ91に塵等が入ることを抑制し、且つ、カフ91からの気体の急速排出が可能になる。この際、他部品である急速排気バルブ等を設けなくてもよく、ポンプ装置10を小型、低背に実現できる。
【0042】
また、この構成では、気体の排出時、貫通孔600を通じて排出された気体は、蓋部材60の第1部分61の表面に沿って流れる。これにより、気体がポンプ本体11の熱を吸収しやすく、ポンプ装置10の放熱性は向上する。さらに、フィルタ部材70が金属等の熱伝導率が高い材料からなる場合、フィルタ部材70による放熱も実現できる。これにより、ポンプ装置10の放熱性はさらに向上する。
【0043】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るポンプ装置について、図を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態に係るポンプ装置の分解斜視図である。
【0044】
図5に示すように、第2の実施形態に係るポンプ装置10Aは、第1の実施形態に係るポンプ装置10に対して、ポンプ本体11Aを備える点、複数の接着部材700の配置において異なる。ポンプ装置10Aの他の構成は、ポンプ装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0045】
ポンプ装置10Aは、ポンプ本体11Aを備える。ポンプ本体11Aは、蓋部材60Aを備える。蓋部材60Aでは、第1部分61の略中央に貫通孔600が形成されている。
【0046】
フィルタ部材70Aは、外縁に沿った各角部付近において、複数の接着部材700によって、蓋部材60Aの第1部分61に接着される。言い換えれば、複数の接着部材700は、平面視において、貫通孔600を囲むように、且つ、複数の接着部材700が重ならないように配置される。
【0047】
(吸入時)
吸入時は、第1の実施形態と略同じ動作となるが、貫通孔600が囲まれていることによって、フィルタ部材70Aの貫通孔600に重なる部分の周方向の位置による変形の差は小さくできる。これにより、気体の吸入時に、フィルタ部材70Aによって貫通孔600をより確実に塞ぐことができる。
【0048】
(排出時)
図6は、気体の排出時のフィルタ部材側の面を視た平面図である。排出時も、第1の実施形態と略同じ動作となるが、吸入時と同様に、貫通孔600が囲まれていることによって、フィルタ部材70Aの貫通孔600に重なる部分の周方向の位置による変形の差は小さくできる。
【0049】
これにより、貫通孔600から排出され、フィルタ部材70Aと蓋部材60Aの第1部分61との間を流れる気体は、複数の接着部材700を存在する方向を除き、フィルタ部材70Aの全方向に略均一に流れ、外縁の開口から外部に排出される。したがって、例えば、蓋部材60Aの第1部分61の略全面を略均一に放熱できる。
【0050】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係るポンプ装置について、図を参照して説明する。
図7は、第
3の実施形態に係るポンプ装置の分解斜視図である。
【0051】
図7に示すように、第3の実施形態に係るポンプ装置10Bは、第2の実施形態に係るポンプ装置10Aに対して、フィルタ部材70B、接着部材700Bにおいて異なる。ポンプ装置10Bの他の構成は、ポンプ装置10Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、ポンプ装置10Bのポンプ本体11Bおよび蓋部材60Bは、ポンプ装置10Aのポンプ本体11Aおよび蓋部材60Aと同じである。
【0052】
フィルタ部材70Bの平面視した外形形状は、蓋部材60Bの第1部分61を平面視した外形形状よりも小さい。
【0053】
フィルタ部材70Bは、平面視において、貫通孔600に重なるように配置される。より具体的には、フィルタ部材70Bは、フィルタ部材70Bを平面視した中心が貫通孔600に重なるように配置される。
【0054】
複数の接着部材700Bは、帯状である。複数の接着部材700Bは、フィルタ部材70Bの対向する二辺にそれぞれ沿って配置される。この際、複数の接着部材700Bは互いに離間している。
【0055】
複数の接着部材700Bは、貫通孔600に重ならず、平面視において貫通孔600を間に配置するように、蓋部材60Bの第1部分61に接着する。
【0056】
(吸入時)
図8は、気体の吸入時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す図である。なお、
図8では、ポンプ本体11Bの内部の具体的な構造の図示は省略している(
図7参照)。
図8において、太線の矢印が、気体の流れを示す。
【0057】
図8に示すように、吸入時は、第1の実施形態と略同じ動作となる。ここで、ポンプ装置10Bでは、ポンプ本体11Bの外主面102(蓋部材60Bの第1部分61の外主面102)に沿った一方向おいて貫通孔600を挟むように複数の接着部材700Bが配置されている。これにより、吸入の開始時で、フィルタ部材70Bが第1部分61に当接する前のときに、フィルタ部材70Bを通過せずに、この一方向の両側から気体が吸入されることを抑制できる。すなわち、ポンプ装置10Bは、吸入動作の初期時(濾過の過渡時)での塵の吸入を抑制できる。
【0058】
(排出時)
図9(A)は、気体の排出時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す側面図であり、
図9(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。なお、
図9(A)では、ポンプ本体11Bの内部の具体的な構造の図示は省略している(
図7参照)。
図9(A)、
図9(B)において、太線の矢印が、気体の流れを示す。
【0059】
図9(A)、
図9(B)に示すように、排出時も、第1の実施形態と略同じ動作となるが、フィルタ部材70Bの外形形状が蓋部材60Bの第1部分61の外形形状よりも小さいことにより、貫通孔600からフィルタ部材70Bの外縁の開口までの距離は短くなる。
【0060】
これにより、貫通孔600からフィルタ部材70Bの外縁の開口に流れる流路の圧力損失は、さらに小さくなる。したがって、ポンプ装置10Bは、気体の排出時の圧力損失をさらに低減できる。
【0061】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係るポンプ装置について、図を参照して説明する。
図10(A)は、第4の実施形態に係るポンプ装置の構成を示す概略的な側面断面図であり、
図10(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。
【0062】
図10(A)、
図10(B)に示すように、第4の実施形態に係るポンプ装置10Cは、ポンプ本体11Cの構成、接着部材とは異なる剛体からなり物理的にポンプ本体11Cを保持する保持部材710を備える点で、第1の実施形態に係るポンプ装置10と異なる。ポンプ装置10Cの他の構成は、ポンプ装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0063】
ポンプ装置10Cは、ポンプ本体11C、および、フィルタ部材70C、保持部材710を備える。ポンプ本体11Cは、蓋部材60Cを備え、蓋部材60Cは、ノズル63を備える。ノズル63は、第1部分61の外主面102の一部が突出することによって形成される。貫通孔600Cは、ノズル63および第1部分61を貫通する。
【0064】
保持部材710は、枠体711と平板712とを備える。
【0065】
枠体711は、ポンプ本体11Cの側面に固定される。枠体711は、平面視において、平板部材40の貫通孔400に重なっていない。枠体711は、平面視において蓋部材60Cの第1部分61およびノズル63に重なっていない。
【0066】
平板712は、開口部7120を有する。開口部7120の外形は、ノズル63の外形よりも大きく、フィルタ部材70Cの外形よりも小さい。平板712は、ポンプ本体11Cにおける蓋部材60Cの第1部分61側の外方に配置される。平板712は、外縁部において枠体711に接続する。この際、平板712は、
図10(B)に示すように、外縁の全周を枠体711で接続するのではなく、部分的に枠体711に接続していない開口部713を有する。
【0067】
フィルタ部材70Cの外形は、第1部分61を平面視した外形よりも小さい。フィルタ部材70Cは、平板712と第1部分61との間に配置される。この際、フィルタ部材70Cは、気体が吸入、排出されていない状態において、ノズル63に当接しない位置に配置される。
【0068】
(吸入時)
図11は、気体の吸入時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す図である。なお、
図11では、ポンプ本体11Cの内部の具体的な構造の図示は省略している(
図10(A)参照)。
図11において、太線の矢印が、気体の流れを示す。
【0069】
図11に示すように、吸入時は、開口部7120およびフィルタ部材70Cを通じて、気体は、貫通孔600Cに吸入される。この際、フィルタ部材70Cは、気体からの応力を受けて、平板712に当接する位置からノズル63に当接する位置に移動する。この後、フィルタ部材70Cは、気体の流れによってノズル63の当接した状態で維持される。これにより、気体の吸入時には、貫通孔600Cがフィルタ部材70Cによって覆われる。
【0070】
(排出時)
図12(A)は、気体の排出時のフィルタ部材等の状態を概略的に示す側面図であり、
図12(B)は、フィルタ部材側の面を視た平面図である。なお、
図12(A)では、ポンプ本体11Cの内部の具体的な構造の図示は省略している(
図10(A)参照)。
図12(A)、
図12(B)において、太線の矢印が、気体の流れを示す。
【0071】
図12(A)、
図12(B)に示すように、排出時は、気体は、貫通孔600Cを通じて、ポンプ本体11Cの外部のフィルタ部材70Cに向かって排出される。フィルタ部材70Cは、排出された気体から受ける応力によって、ノズル63から離間し、平板712に当接して保持される。
【0072】
フィルタ部材70Cは、気体に対して通気性を有するので、
図12(A)に示すように、貫通孔600Cを通じて排出された気体の一部は、フィルタ部材70Cを通過し、開口部7120を通じて、外部に排出される。
【0073】
さらに、上述のように、枠体711および平板712からなる保持部材710は、側方等に開放する開口部713を有する。
【0074】
これにより、貫通孔600
Cを通じて排出された気体の一部は、
図12(B)に示すように、フィルタ部材70Cとノズル63および第1部分61の外主面102との間にできた空間を通って、開口部713から外部に排出される。
【0075】
このように、気体の排出時には、フィルタ部材70Cを通過し開口部7120を通じて気体が排出される流路と、保持部材710の開口部713から気体が排出される流路とが、確保される。これにより、気体の排出時の圧力損失は、低減される。
【0076】
したがって、ポンプ装置10Cは、ポンプ装置10と同様に、気体の吸入時には、フィルタ部材70Cによる濾過機能をより確実に実現し、気体の排出時には、圧力損失を低減し、急速排出を実現できる。
【0077】
また、ポンプ装置10Cの構成では、フィルタ部材70Cをポンプ本体11Cに接着させる必要がなくなる。これにより、ポンプ本体11Cで発生した熱がフィルタ部材70Cに伝わりにくくなり、フィルタ部材70Cの熱変形、この熱変形によるフィルタ部材70Cの孔の位置のズレが生じにくくなる。
【0078】
なお、上述の説明では、気体を搬送する態様を示した。しかしながら、気体に限らず他の流体に対しても上述の構成を適用できる。
【0079】
また、圧電素子は、平面視した形状が円形に限らず、多角形等であってもよい。
【0080】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組合せ可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0081】
10、10A、10B、10C:ポンプ装置
11、11A、11B、11C:ポンプ本体
20:平板部材
21:主平板
22:枠体
23:連結部材
30:圧電素子
40:平板部材
50:側壁部材
60、60A、60B、60C:蓋部材
61:第1部分
62:第2部分
63:ノズル
70、70A、70B、70C:フィルタ部材
91:カフ
101、102:外主面
400:貫通孔
500:中空
600、600C:貫通孔
700、700B:接着部材
710:保持部材
711:枠体
712:平板
713、7120:開口部