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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】走行車及び走行車システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241008BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023518628
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011558
(87)【国際公開番号】W WO2022234723
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2021079171
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山上 盛司
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-202497(JP,A)
【文献】特開2016-012229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた走行経路に沿って走行する走行車であって、
点灯状態が切り替え可能に設けられている表示器と、
自己の走行車の前方に位置する前方走行車に設けられている前記表示器が撮像画像に含まれるように、前記前方走行車を撮像する撮像部と、
前記撮像画像に含まれる前記表示器の点灯状態の判定結果に基づいて、自己の走行を制御する制御部と、を備え、
前記表示器は、
自己の走行車の状態を報知するために設けられる第一表示器と、
前記撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の前記表示器の画像を含ませるために設けられる第二表示器と、を有しており、
前記第一表示器は、複数設けられており、
前記第二表示器は、前記第一表示器と同数、かつ前記第一表示器のそれぞれに対応して設けられると共に、対応する前記第一表示器と反対の点灯状態となるように前記制御部によって点灯状態が切り替えられる、走行車。
【請求項2】
前記制御部は、前記撮像画像において点灯状態の前記表示器に対応する部分の輝度値と、消灯状態の前記表示器に対応する部分の輝度値とに基づいて、前記表示器の点灯状態を判定する、請求項1記載の走行車。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像画像において一つの前記表示器に対応する部分に複数の測定ポイントを設け、前記複数の測定ポイントのそれぞれにおいて検出される複数の輝度値に基づいて、前記一つの表示器に対応する部分の輝度値を算出する、請求項2記載の走行車。
【請求項4】
請求項1~の何れか一項記載の複数の走行車と、
複数の前記走行車が予め定められた方向に走行する軌道と、
前記走行車に搬送指令を割り付ける走行車コントローラと、を備える、走行車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、走行車及び走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、無人搬送車の走行制御システムが開示されている。具体的には、特許文献1の各無人搬送車には、複数の表示器(表示ランプ)が設けられている。無人搬送車は、他の無人搬送車の表示器の点灯パターンに基づいて他の無人搬送車の走行情報と、他の無人搬送車までの距離情報と、を判断し、当該走行情報及び距離情報に基づいて無人搬送車の走行を制御する。表示器の点灯(消灯)状態は、カメラによって撮像された画像の中の表示器部分の輝度に基づいて判断されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-296208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、照明の照度が高い環境又は部分的に太陽光等が入射するような工場等においては、照明光又は太陽光が表示器を強く照らすことがあり、上記従来の表示器の判定方法では、表示器の点灯状態を適切に判定できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、外乱光等の影響がある環境下においても、表示器の点灯状態を正確に判定することができる、走行車及び走行車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る走行車は、予め定められた走行経路に沿って走行する走行車であって、点灯(消灯)状態が切り替え可能に設けられている表示器と、自己の走行車の前方に位置する前方走行車に設けられている表示器が撮像画像に含まれるように、前方走行車を撮像する撮像部と、撮像画像に含まれる表示器の点灯状態の判定結果に基づいて、自己の走行車の走行を制御する制御部と、を備え、表示器は、自己の走行車の状態を報知するために設けられる第一表示器と、撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の表示器を含ませるために設けられる第二表示器と、を有している。
【0007】
この構成の走行車では、自己の走行車の状態を報知するために設けられる第一表示器に加え、自己の走行車の後方に位置する後方走行車が撮像する撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の表示器の画像を含ませるために設けられる第二表示器が設けられている。これにより、撮像部によって撮像される撮像画像の中には、必ず点灯状態の表示器の画像と消灯状態の表示器の画像との両方が含まれるようになるので、点灯状態及び消灯状態の判定は、これら点灯状態の表示器の画像及び消灯状態の表示器の画像の両方に基づいて行うことが可能となる。この結果、外乱光等の影響を受けた撮像画像が取得された場合であっても、外乱光等の影響を受けた状態の点灯状態の表示器の画像及び消灯状態の表示器の画像の両方を判定基準として点灯状態を判定することができるので、表示器の点灯状態を正確に判定できる。すなわち、外乱光等の影響がある環境下においても、表示器の点灯状態を正確に判定することができる。
【0008】
本発明の一側面に係る走行車では、制御部は、撮像画像において点灯状態の表示器に対応する部分の輝度値と、消灯状態の表示器に対応する部分の輝度値とに基づいて、表示器の点灯状態を判定してもよい。この構成では、撮像画像ごとに点灯状態の輝度値と消灯状態の輝度値との両方が取得され、撮像画像ごとに点灯状態を判定するための基準が切り替えられるので、外乱光等の影響がある環境下においても、表示器の点灯状態を正確に判定することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る走行車では、制御部は、撮像画像において一つの表示器に対応する部分に複数の測定ポイントを設け、複数の測定ポイントのそれぞれにおいて検出される複数の輝度値に基づいて、一つの表示器に対応する部分の輝度値を算出してもよい。この構成では、一つの表示器の中で外乱光の影響の度合いが異なるような場合であっても、表示器における点灯状態を正確に判定することができる。
【0010】
本発明の一側面に係る走行車では、第一表示器は、複数設けられており、第二表示器は、一つだけ設けられると共に、予め設定された一つの第一表示器と反対の点灯状態となるように制御部によって点灯状態が切り替えられてもよい。この構成では、表示器を設けることができるスペースが限られる中で、必要最小限の構成で、外乱光等の影響がある環境下においても、表示器の点灯状態を正確に判定することができる。
【0011】
本発明の一側面に係る走行車では、第一表示器は、複数設けられており、第二表示器は、第一表示器と同数、かつ第一表示器のそれぞれに対応して設けられると共に、対応する第一表示器と反対の点灯状態となるように制御部によって点灯状態が切り替えられてもよい。この構成では、複数の表示器ごとに外乱光の影響の度合いが異なるような場合であっても、表示器における点灯状態を正確に判定することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る走行車では、第二表示器は、少なくとも撮像部による撮像時に、点灯状態及び消灯状態となる一対の表示器から構成されていてもよい。この構成では、第一表示器の点灯状態に合わせて第二表示器の点灯状態を切り替えなくとも、点灯状態及び消灯状態の表示器が撮像された撮像画像を得ることができる。これにより、複雑な制御を実行しなくても、表示器における点灯状態を正確に判定することができる。
【0013】
本発明の一側面に係る走行車システムでは、上記の複数の走行車と、複数の走行車が予め定められた方向に走行する軌道と、走行車に搬送指令を割り付ける走行車コントローラと、を備える。この走行車システムに配備される走行車は、外乱光等の影響がある環境下においても、表示器の点灯状態を正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、外乱光等の影響がある環境下においても、表示器の点灯状態を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一実施形態に係る走行車システムを示す概略構成図である。
図2図2は、一実施形態に係る走行車を側方から見た側面図である。
図3図3は、図1の走行車の本体部を走行方向後方から見た後面図である。
図4図4(A)は、小マーカの配色パターンの一例であり、図4(B)は、大マーカの配色パターンの一例である。
図5図5は、走行車システムの機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、矩形領域における輝度値の算出方法を説明する図である。
図7図7は、走行車システムにおける前方走行車及び後方走行車の一連の動作を示すフローチャートである。
図8図8は、走行車システムにおいて後方走行車が点灯パターンを取得する流れを示すフローチャートである。
図9図9(A)は、外乱光が走行車のインジケータに入射するケースの一例であり、図9(B)は、撮像画像ごとに外乱光の影響の度合いが異なることを示すケースの一例である。
図10図10(A)は、一矩形領域の点灯状態を一つの測定ポイントによる輝度値から算出することを説明する図であり、図10(B)は、一矩形領域の点灯状態を複数の測定ポイントによる輝度値から算出することを説明する図である。
図11図11は、変形例に係る走行車の本体部を走行方向後方から見た後面図である。
図12図12は、変形例に係る走行車システムにおいて後方走行車が点灯パターンを取得する流れを示すフローチャートである。
図13図13(A)は、カーブ区間を走行する前方走行車を撮像する後方走行車を示した図であり、図13(B)は、撮像画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一側面の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
主に、図1図10を用いて一実施形態の走行車システム1について説明する。図1に示されるように、走行車システム1は、軌道(予め定められた走行経路)4に沿って移動可能な天井走行車6を用いて、物品10(図2参照)を搬送するシステムである。物品10には、例えば、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納するレチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。ここでは、例えば、天井走行車6(以下、単に「走行車6」と称する。)が、工場の天井等に敷設された一方通行の軌道4に沿って走行する走行車システム1を例に挙げて説明する。図1に示されるように、走行車システム1は、軌道4、複数の載置部9、及び複数の走行車6を備える。
【0018】
図2に示されるように、軌道4は、例えば、作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。軌道4は、例えば天井から吊り下げられている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、載置部9は、軌道4に沿って配置され、走行車6との間で物品10の受け渡し可能な位置に設けられている。載置部9には、バッファ及び受渡ポートが含まれる。バッファは、物品10が一時的に載置される載置部である。バッファは、例えば、目的とする受渡ポートに他の物品10が載置されている等の理由により、走行車6が搬送している物品10をその受渡ポートに移載できない場合に、物品10が仮置きされる載置部である。受渡ポートは、例えば洗浄装置、成膜装置、リソグラフィ装置、エッチング装置、熱処理装置、平坦化装置をはじめとする半導体の処理装置(図示せず)に対して物品10の受渡を行うための載置部である。なお、処理装置は、特に限定されず、種々の装置であってもよい。
【0020】
例えば、載置部9は、軌道4の側方に配置されている。この場合、走行車6は、横送り部24で昇降駆動部28等を横送りし、昇降部30を昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。なお、図示はしないが載置部9は、軌道4の直下に配置されてもよい。この場合、走行車6は、昇降部30を昇降させることにより、載置部9との間で物品10を受け渡しする。
【0021】
走行車6は、軌道4に沿って走行し、物品10を搬送する。走行車6は、物品10を移載可能に構成されている。走行車6は、天井走行式無人搬送車である。走行車システム1が備える走行車6の台数は、特に限定されず、複数である。図2及び図3に示されるように、走行車6は、走行部18と、本体部7と、撮像部8と、マーカ(marker)70と、インジケータ(表示器)80と、制御部50と、を有する。
【0022】
走行部18は、モータ等を含んで構成され、走行車6を軌道4に沿って走行させる。本体部7は、本体フレーム22と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降部30と、本体カバー33と、を有する。
【0023】
本体フレーム22は、横送り部24、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降部30を支持する。横送り部24は、θドライブ26、昇降駆動部28及び昇降部30を一括して、軌道4の走行方向と直角な方向に横送りする。θドライブ26は、昇降駆動部28及び昇降部30の少なくとも何れかを水平面内で所定の角度範囲内で回動させる。昇降駆動部28は、昇降部30をワイヤ、ロープ及びベルト等の吊持材の巻取り及び繰出しによって昇降させる。昇降部30には、チャックが設けられており、物品10の把持又は解放が自在とされている。
【0024】
本体カバー33は、走行車6の前後にそれぞれに設けられている。本体カバー33は、図示しない爪等を出没させて、搬送中に物品10が落下することを防止する。本体カバー33は、走行車6の走行方向の前側に設けられる前面カバー34及び後側に設けられる後面カバー35を有している。前面カバー34は、上方から見たとき平面視において、略等脚台形状に形成されており、主に、外側(前方)を向く前面34aと、昇降部30が設けられた内側(後方)を向く後面34bと、を有している。後面カバー35は、主に、上方から見たとき平面視において、略等脚台形状に形成されており、外側(後方)を向く後面35aと、昇降部30が設けられた内側(前方)を向く前面35bと、を有している。
【0025】
撮像部8は、撮像範囲が自己の走行車6の前方となるように本体部7の前面カバー34の前面34aに設けられている。撮像部8は、レンズ及び当該レンズから入ってきた光を電気信号に変換する撮像素子等を含む装置である。撮像部8は、自己の走行車6の前方に位置する走行車6である前方走行車6Aに設けられているマーカ70及びインジケータ(表示器)80が撮像画像に含まれるように、前方走行車6Aを撮像する。撮像部8によって取得された撮像画像は、後段にて詳述される制御部50によって取得される。
【0026】
図3に示されるように、マーカ70は、自己の走行車6の後方に位置する走行車6である後方走行車6Bから視認可能となるように、後面カバー35の後面35aに設けられている。マーカ70は、図4(A)に示されるような白と黒とからなる第一配色パターンP1を有する小マーカ71と、図4(B)に示されるような白と黒とからなる第二配色パターンP2を有する大マーカ73とを有している。マーカ70は、例えばARマーカである。大マーカ73は、小マーカ71よりも面積が大きい。小マーカ71は、大マーカ73が構成されている領域の内部に配置されている。小マーカ71を構成する領域の中心(重心)位置と、大マーカ73を構成する領域の中心(重心)位置とは、一致していてもよい。
【0027】
大マーカ73は、自己の走行車6から所定距離(例えば、0.5m)未満に位置する後方走行車6Bに備わる撮像部8の撮像範囲に全体が収まらないサイズに形成されている。小マーカ71は、自己の走行車6からの距離が所定距離(例えば、0.5m)未満であっても後方走行車6Bに備わる撮像部8の撮像範囲に全体が収まるサイズに形成されている。
【0028】
なお、ここでいう、「撮像範囲に小マーカ71の全体が収まる」には、後段にて詳述するパターン認識部51によって抽出(認識)されるサイズに撮像される場合だけでなく、パターン認識部51によって抽出(認識)されないようなサイズに撮像される場合も含まれる。すなわち、撮像範囲に小マーカ71が設置されていた領域が含まれていればよく、焦点の一致の有無も問わないものとする。更に、ここでいう「距離が上記所定距離未満であっても」には、前後の走行車6,6同士が互いに接近可能な距離が下限値となり得る場合がある。
【0029】
小マーカ71及び大マーカ73は、後面カバー35に直接描かれていてもよいし、小マーカ71及び大マーカ73が描かれたプレート等が後面カバー35に固定されてもよい。また、後面カバー35に設けられる液晶ディスプレイ等の表示部に小マーカ71及び大マーカ73の画像が表示されてもよい。
【0030】
図3に示されるように、インジケータ80は、点灯(消灯)状態が切り替え可能に設けられている複数の矩形領域(表示器)を含んで構成されている。本実施形態の矩形領域は、一方向(横方向)に長く形成されている。各矩形領域の光源は、LED電球、ハロゲン電球、蛍光灯、又は白熱電球等である。各領域における点灯制御は、制御部50によって行われる。本実施形態のインジケータ80は、一対の矩形領域からなる第一インジケータ対81、第二インジケータ対82、第三インジケータ対83、第四インジケータ対84及び第五インジケータ対85を備えている。
【0031】
第一インジケータ対81~第五インジケータ対85のそれぞれの一方の矩形領域は、自己の走行車6の状態(例えば、走行状態であり、加速状態又は減速状態)を報知するための状態報知部(第一表示器)として機能する。以後、第一インジケータ対81、第二インジケータ対82、第三インジケータ対83、第四インジケータ対84及び第五インジケータ対85のそれぞれにおける一方の矩形領域を、第一インジケータ81A、第一インジケータ82A、第一インジケータ83A、第一インジケータ84A及び第一インジケータ85Aと称する。
【0032】
第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aは、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aが設けられた走行車6の状態に合わせて点灯パターンを切り替える。具体的には、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aは、五つの矩形領域において点灯状態の矩形領域と消灯状態の矩形領域とを組み合わせる(以後、単に「点灯の組み合わせ」と称する。)ことによって、点灯パターンを切り替える。点灯パターンの切り替えは、制御部50によって行われる。
【0033】
第一インジケータ85Aは、パリティとして用いられる。すなわち、第一インジケータ85Aは、四つの第一インジケータ81A,82A,83A,84Aの点灯の組み合わせが、制御部50によって意図された点灯パターンであることを担保するために用いられる。
【0034】
第一インジケータ対81~第五インジケータ対85のそれぞれの他方の矩形領域は、撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の上記矩形領域の画像を含ませるための判定基準インジケータ(第二表示器)として機能する。以後、第一インジケータ対81、第二インジケータ対82、第三インジケータ対83、第四インジケータ対84及び第五インジケータ対85のそれぞれにおける他方の矩形領域を、第二インジケータ81B、第二インジケータ82B、第二インジケータ83B、第二インジケータ84B及び第二インジケータ85Bと称する。
【0035】
第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bは、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aと同数、かつ第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aのそれぞれに対応して設けられており、対応する第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aと反対の点灯状態となるように制御部50によって点灯状態が切り替えられる。
【0036】
第一インジケータ対81において、対として設けられる第一インジケータ81A及び第二インジケータ81Bとの間には、後面カバー35の後面35aから板状に突出する突出部が設けられてもよい。このような突出部を設ければ、第一インジケータ81A及び第二インジケータ81Bの一方から出射される光が、第一インジケータ81A及び第二インジケータ81Bの他方に影響を及ぼす(外乱光となる)ことを防止できる。第二インジケータ対82~第五インジケータ対85を構成する第一インジケータ82A,83A,84A,85A及び第二インジケータ82B,83B,84B,85Bについても同様に、上述した突出部を設けてもよい。また、同様の突出部は、例えば、第一インジケータ対81と第二インジケータ対82との間等、隣り合うインジケータ対の間に設けられてもよい。
【0037】
図5に示される制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。制御部50は、走行車6における各種動作を制御する。具体的には、制御部50は、走行部18と、横送り部24と、θドライブ26と、昇降駆動部28と、昇降部30と、撮像部8と、を制御する。制御部50は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。制御部50は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。制御部50では、CPU、RAM及びROM等のハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとが協働することによって、下記に詳述するパターン認識部51と、車間距離判定部53と、インジケータ制御部55と、点灯状態判定部57と、走行制御部59と、が形成される。制御部50は、軌道4の通信線(フィーダー線)等を利用して、走行車コントローラ60と通信を行う。
【0038】
パターン認識部51は、撮像部8によって取得された撮像画像からマーカ70の認識(抽出)を試みる。パターン認識部51は、小マーカ71の全体が撮像部8の撮像範囲に含まれ、大マーカ73の全体が撮像範囲に含まれない撮像画像に基づいて小マーカ71を認識すると共に、小マーカ71及び大マーカ73の全体が撮像範囲に含まれる撮像画像に基づいて大マーカ73を認識する。より詳細には、パターン認識部51は、撮像画像において、図4(A)に示される第一配色パターンP1を認識することで小マーカ71を認識する。また、パターン認識部51は、撮像画像において、図4(B)に示される第二配色パターンP2を認識することで大マーカ73を認識する。
【0039】
図5に戻り、車間距離判定部53は、パターン認識部51による小マーカ71及び/又は大マーカ73の認識に基づいて、前方走行車6Aの存在の有無を判定する。車間距離判定部53は、小マーカ71の全体及び大マーカ73の全体の少なくとも一方が撮像画像の中から抽出されたとき、前方走行車6Aが存在すると判定する。本実施形態の車間距離判定部53は、パターン認識部51によって小マーカ71が認識されたとき、大マーカ73が認識されたときと比べて、自己の走行車6から前方走行車6Aまでの距離が近いと判定する。より詳細には、車間距離判定部53は、パターン認識部51によって小マーカ71が認識されたとき、自己の走行車6から前方走行車6Aまでの距離が0.5m未満であると判定し、大マーカ73が認識されたとき、自己の走行車6から前方走行車6Aまでの距離が0.5m以上であると判定する。
【0040】
インジケータ制御部55は、自己の走行車6の状態に合わせてインジケータ80の点灯パターンを切り替える。具体的には、インジケータ制御部55は、例えば、走行車コントローラ60から指令を受け取ることによって、又はパターン認識部51によって前方走行車6Aとの距離を判定することによって、自己の走行車6の状態が加速状態若しくは減速状態になる(又は、加速状態若しくは減速状態になった)ことを取得すると、取得された走行状態に対応する点灯パターンとなるように第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯を制御する。すなわち、インジケータ制御部55は、走行車6に設けられている第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯パターンを切り替えることによって、後方走行車6Bに自己の走行車6の状態を伝達する。
【0041】
インジケータ制御部55は、走行車6の状態に基づく第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯パターン、すなわち、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aのそれぞれの点灯状態に対して、対応する第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bが反対の点灯状態となるように、第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bのそれぞれの点灯を制御する。インジケータ制御部55は、例えば、第一インジケータ81Aが点灯状態にあるときは、第二インジケータ81Bが消灯状態となるように点灯制御し、第一インジケータ81Aが消灯状態にあるときは、第二インジケータ81Bが点灯状態となるように点灯制御する。
【0042】
インジケータ制御部55は、第一インジケータ81A,82A,83A,84Aによる点灯パターンごとに点灯状態が定められたルールにしたがって、第一インジケータ85Aの点灯状態を制御する。
【0043】
点灯状態判定部57は、撮像部8によって撮像された撮像画像から小マーカ71及び/又は大マーカ73を検出し、撮像部8に対する小マーカ71及び/又は大マーカ73の相対的な位置・姿勢を特定する。なお、上記の相対的な位置・姿勢は、公知のARマーカの処理手順により特定することができる。点灯状態判定部57は、上記の相対的な位置・姿勢に基づいて、撮像部8に対する各インジケータの相対的な位置・姿勢を特定し、撮像画像中のインジケータの位置(領域)を特定する。
【0044】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ対81~第五インジケータ対85のそれぞれの第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aにおける点灯状態を判定する。ここで、第一インジケータ対81の第一インジケータ81Aにおける点灯状態を判定する方法について説明する。点灯状態判定部57は、撮像画像において第一インジケータ81Aに対応する部分の輝度値LV11と、第二インジケータ81Bに対応する部分の輝度値LV12とを検出する。
【0045】
点灯状態判定部57は、図6に示されるように、撮像画像において第一インジケータ81Aに対応する部分に複数(例えば9つ)の測定ポイントMP11,MP12,・・・,MP1n,・・・,MP19を設け、複数の測定ポイントのそれぞれにおいて検出される複数の輝度値の平均値を、第一インジケータ81Aにおける輝度値LV11とする。点灯状態判定部57は、撮像画像において第二インジケータ81Bに対応する部分に複数(例えば9つ)の測定ポイントMP21,MP22,・・・,MP2n,・・・,MP29を設け、複数の測定ポイントのそれぞれにおいて検出される複数の輝度値の平均値を、第二インジケータ81Bにおける輝度値LV12とする。
【0046】
点灯状態判定部57は、輝度値LV11>輝度値LV12であることを確認すると、第一インジケータ81Aが点灯状態にあると判定する。点灯状態判定部57は、輝度値LV11<輝度値LV12であることを確認すると、第一インジケータ81Aが消灯状態にあると判定する。
【0047】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ81Aの点灯状態の判定方法と同様の方法で、第一インジケータ82A,83A,84A,85Aのそれぞれにおける点灯状態を判定する。点灯状態判定部57は、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aのそれぞれにおける点灯状態に基づいて、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯パターンを特定する。なお、点灯状態判定部57は、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aのそれぞれにおける点灯状態に基づいて撮像画像を二値化し、二値化された画像に基づいて点灯パターンを特定してもよい。点灯状態判定部57は、特定された点灯パターンに基づいて、前方走行車6Aがどのような状態にあるのかを判定する。第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯パターンと前方走行車6Aの状態とは、図示しない記憶部等に関連付けて記憶されている。
【0048】
走行制御部59は、例えば、パターン認識部51によって大マーカ73が認識されたとき、通常の移動速度よりも遅い速度にて走行するように走行部18を制御する。また、走行制御部59は、パターン認識部51によって小マーカ71が認識されたとき、完全に停止するように走行部18を制御する。この制御は一例であり、パターン認識部51によって小マーカ71及び大マーカ73が区別して認識されたときの制御は上記制御に限定されるものではない。
【0049】
走行制御部59は、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯状態の判定結果に基づいて、自己の走行車6の走行を制御する。より詳細には、走行制御部59は、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯パターンから特定される前方走行車6Aの状態に基づいて、自己の走行車6の走行を制御する。走行制御部59は、前方走行車6Aの状態が、例えば減速状態であることを特定すると、自己の走行車6が減速するように走行部18を制御する。走行制御部59は、前方走行車6Aの状態が、例えば加速状態であることを特定すると、自己の走行車6が加速するように走行部18を制御する。
【0050】
図1に示される走行車コントローラ60は、CPU、ROM及びRAM等からなる電子制御ユニットである。走行車コントローラ60は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。走行車コントローラ60は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。走行車コントローラ60は、走行車6に物品10を搬送させる搬送指令を送信する。
【0051】
前方走行車6Aが、例えば、走行車コントローラ60から搬送指令を受信等して前方に加速する場合について、主に図7及び図8を用いて、前方走行車6A及び後方走行車6Bの動作を説明する。前方走行車6Aが前方に加速する場合、自己の走行車6の状態が加速状態にあることを第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aを用いて後方走行車6Bに報知する。図7に示されるように、具体的には、前方走行車6Aのインジケータ制御部55は、自己の走行車6の状態が加速状態であることを示す点灯パターンとなるように第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aを点灯制御する(ステップS1)。
【0052】
後方走行車6Bは、撮像部8によって前方走行車6Aの後面に設けられているマーカ70及びインジケータ80を撮像する。後方走行車6Bの点灯状態判定部57は、撮像部8によって撮像された撮像画像から小マーカ71及び/又は大マーカ73を検出する(ステップS2)。点灯状態判定部57は、撮像部8に対する小マーカ71及び/又は大マーカ73の相対的な位置・姿勢を特定する。点灯状態判定部57は、上記の相対的な位置・姿勢に基づいて、撮像部8に対する各インジケータの相対的な位置・姿勢を特定し(ステップS3)、撮像画像中のインジケータの位置(領域)を特定する(ステップS4)。
【0053】
点灯状態判定部57は、撮像画像中の第一インジケータ対81~第五インジケータ対85のそれぞれの第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aに対応する部分の輝度値を特定する(ステップS5)。点灯状態判定部57は、図6に示されるように、撮像画像において第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aのそれぞれに対応する部分の複数の輝度値の平均値を、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aにおけるそれぞれの輝度値とする。点灯状態判定部57は、撮像画像において第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bのそれぞれに対応する部分の複数の輝度値の平均値を、第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bにおけるそれぞれの輝度値とする。
【0054】
点灯状態判定部57は、撮像画像において第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aに対応する部分のそれぞれの輝度値から前方走行車6Aの状態を取得する(ステップS6)。以下、ステップS6について詳細に説明する。
【0055】
図8に示されるように、点灯状態判定部57は、第一インジケータ対81の第一インジケータ81Aの点灯状態を判定する(ステップS61)。点灯状態判定部57は、ステップS5(図7参照)において特定された第一インジケータ81Aの輝度値LV11と第二インジケータ81Bの輝度値LV12とを比較する(ステップS62)。点灯状態判定部57は、輝度値LV11>輝度値LV12であることを確認すると(ステップS62:YES)、第一インジケータ81Aが点灯状態にあると判定する(ステップS63)。点灯状態判定部57は、輝度値LV11<輝度値LV12であることを確認すると(ステップS62:NO)、第一インジケータ81Aが消灯状態にあると判定する(ステップS64)。
【0056】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ対81~第五インジケータ対85の全ての第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯状態を確認したか否かを判定する(ステップS65)。点灯状態判定部57は、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85A全ての点灯状態を確認していなければステップS61で入力したnをインクリメントして(ステップS67)、ステップS62~ステップS65の工程を繰り返す。すなわち、点灯状態判定部57は、第二インジケータ対82の第一インジケータ82A、第三インジケータ対83の第一インジケータ83A、第四インジケータ対84の第一インジケータ84A、第五インジケータ対85の第一インジケータ85Aについて、点灯状態を判定する。
【0057】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ対81~第五インジケータ対85の全ての第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯状態を確認すると(ステップS65:YES)、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯状態に基づいて、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aの点灯パターンを特定する。点灯状態判定部57は、特定された点灯パターンに関連付けて記憶されている状態(例えば、加速状態)を取得する(ステップS66)。
【0058】
図7に戻り、後方走行車6Bの走行制御部59は、点灯状態判定部57によって取得された前方走行車6Aの走行状態に基づいて、後方走行車6Bの走行部18を制御する(ステップS7)。例えば、走行制御部59は、点灯状態判定部57によって取得された前方走行車6Aの走行状態が加速状態であるときには、前方走行車6Aに追随して加速状態となるように走行部18を制御する。これにより、後方走行車6Bは、前方走行車6Aをスムーズに追随できる。前方走行車6Aの状態に対する後方走行車6Bの制御の内容は、図示しない記憶部等に関連付けて記憶されている(ステップS8)。
【0059】
走行制御部59は、点灯状態判定部57によって取得された前方走行車6Aの状態を走行車コントローラ60に送信する。
【0060】
次に、上記一実施形態の走行車6及び走行車システム1の作用効果について説明する。照明の照度が高い環境又は部分的に太陽光等が入射するような工場等では、例えば、図9(A)に示されるように、走行車6が所定の範囲に位置すると、照明光又は太陽光等の外乱光LSが矩形領域を照射することがある。このような場合、撮像画像において外乱光LSが入射しない状態の矩形領域の輝度値に基づいて算出される閾値を用いて点灯状態を判定する従来の判定方法では、閾値に外乱光LSの影響が考慮されていないため、矩形領域の点灯状態を適切に判定できないことがある。また、図9(B)に示されるように、外乱光LSの光源位置は同じであっても、例えば外乱光LSを遮蔽する壁SH等が存在すると、インジケータ80に対する外乱光LSの入射状況が時間の経過に伴い変化する。すなわち、撮像画像によって外乱光LSがインジケータ80に作用する場合と作用しない場合とがあるため、仮に、外乱光LSを考慮して閾値を設定したとしても、外乱光LSの影響を完全に排除することはできない。
【0061】
そこで、上記一実施形態の走行車6及び走行車システム1では、図3に示されるように、自己の走行車6の状態を報知するために設けられる矩形領域(第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85A)に加え、後方走行車6Bが撮像する撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の矩形領域の画像を含ませるために設けられる矩形領域(第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85B)が設けられている。これにより、撮像部8によって撮像される撮像画像の中には、必ず点灯状態の矩形領域の画像と消灯状態の矩形領域の画像との両方が含まれるようになるので、点灯状態及び消灯状態の判定は、これら点灯状態の矩形領域の画像及び消灯状態の矩形領域の画像の両方に基づいて行うことが可能となる。この結果、外乱光LS等の影響を受けた撮像画像が取得された場合であっても、外乱光LS等の影響を受けた状態の点灯状態の矩形領域の画像及び消灯状態の矩形領域の画像の両方を判定基準として点灯状態を判定することができるので、矩形領域の点灯状態を正確に判定できる。すなわち、外乱光等の影響がある環境下においても、矩形領域(第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85A)の点灯状態を正確に判定することができる。
【0062】
上記一実施形態の走行車6及び走行車システム1では、制御部50は、撮像画像において点灯状態の矩形領域に対応する部分の輝度値と、消灯状態の矩形領域に対応する部分の輝度値とに基づいて、矩形領域(第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85A)の点灯状態を判定している。これにより、撮像画像ごとに点灯状態の輝度値と消灯状態の輝度値が取得され、撮像画像ごとに点灯状態を判定するための基準が切り替えられるので、外乱光LS等の影響がある環境下においても、矩形領域(第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85A)の点灯状態を正確に判定することができる。
【0063】
例えば、図10(A)に示されるように、走行車6が所定の範囲に位置すると、照明光又は太陽光等の外乱光LSが、一つのインジケータ対(例えば、第一インジケータ対81)の一部を照射することがある。第一インジケータ81Aの点灯状態を一つの測定ポイントMP1による輝度値に基づいて判定している場合、当該測定ポイントMP1が外乱光LSの影響を受けると、第一インジケータ81Aにおける矩形領域の点灯状態を正確に判定できない場合がある。第二インジケータ81Bに対応する矩形領域についても同様に、測定ポイントMP2が外乱光LSの影響を受けている場合、当該矩形領域の点灯状態を正確に判定できない場合がある。
【0064】
そこで、上記一実施形態の走行車6及び走行車システム1では、図10(B)に示されるように、制御部50は、撮像画像において一つの矩形領域(例えば、第一インジケータ81A)に対応する部分に複数の測定ポイントMP11,MP12,・・・,MP1n,・・・,MP19を設け、複数の測定ポイントMP11,MP12,・・・,MP1n,・・・,MP19のそれぞれにおいて検出される複数の輝度値に基づいて、一つの矩形領域に対応する部分の輝度値を算出している。第二インジケータ81Bについても同様である。これにより、矩形領域の一部が外乱光LSに照射されることがあったとしても、当該矩形領域の点灯状態の判定に際し、外乱光LSに照射されている部分の影響を小さくすることができる。すなわち、一つの矩形領域の中で外乱光LSの影響の度合いが異なるような場合であっても、矩形領域における点灯状態を正確に判定することができる。
【0065】
例えば、走行車6が所定の範囲に位置すると、照明光又は太陽光等の外乱光LSが、複数のインジケータの中の一部(例えば、第一インジケータ)のみを照射することがある。そして、外乱光LSの影響を受けたインジケータが点灯状態を判定する際の判定基準となる場合、インジケータ80全体の点灯状態を正確に判定できない場合がある。
【0066】
そこで、上記一実施形態の走行車6及び走行車システム1では、自己の走行車6の状態を報知する複数の第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aと、第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aと同数、かつ第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aのそれぞれに対応するように、第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bが設けられている。この構成では、複数の矩形領域ごとに外乱光LSの影響の度合いが異なるような場合であっても、矩形領域における点灯状態を正確に判定することができる。
【0067】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
(変形例1)
上記実施形態の走行車6及び走行車システム1では、自己の走行車6の状態を報知する複数の第一インジケータ81A,82A,83A,84A,85Aに対して、対となる第二インジケータ81B,82B,83B,84B,85Bが設けられている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、図11に示されるように、走行車6は、自己の走行車6の状態を報知する複数の第一インジケータ(第一表示器)181,182,183,184,185と、撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の上記矩形領域の画像を含ませるために設けられる、一つの第二インジケータ186と、を備えていてもよい。すなわち、変形例1に係る走行車6は、上述した状態報知部として機能する複数の第一インジケータ181,182,183,184,185と、上述した判定基準インジケータとして機能する一つの第二インジケータ(第二表示器)186と、を備えている。
【0069】
複数の第一インジケータ181,182,183,184,185は、第一インジケータ181,182,183,184,185が設けられた走行車6の状態に合わせて点灯パターンが切り替えられる。具体的には、第一インジケータ181,182,183,184,185は、五つの矩形領域における点灯の組み合わせによって、点灯パターンを切り替える。点灯パターンの切り替えは、制御部50によって行われる。
【0070】
第一インジケータ185は、パリティとして用いられる。すなわち、第一インジケータ185は、四つの第一インジケータ181,182,183,184の点灯の組み合わせが、制御部50によって意図された点灯パターンであることを担保するために用いられる。
【0071】
第二インジケータ186は、第一インジケータ181,182,183,184,185のいずれか一つと反対の点灯状態となるように制御部50によって点灯状態が切り替えられる。本変形例1においては、パリティとして機能する第一インジケータ185と反対の点灯状態となるように制御部50によって点灯状態が切り替えられる。
【0072】
第一インジケータ181と第一インジケータ182との間には、後面カバー35の後面35aから板状に突出する突出部が設けられてもよい。このような突出部を設ければ、第一インジケータ181及び第一インジケータ182の一方から出射される光が、第一インジケータ181及び第一インジケータ182の他方に影響を及ぼすことを防止できる。同様に、第一インジケータ182と第一インジケータ183との間、第一インジケータ184と第一インジケータ185との間、第一インジケータ185と第二インジケータ186との間、第一インジケータ181と第一インジケータ184との間、第一インジケータ182と第一インジケータ185との間、第一インジケータ183と第二インジケータ186との間にも、突出部が設けられてもよい。この場合も、同様の効果を得ることができる。
【0073】
次に、前方走行車6Aが、例えば、走行車コントローラ60から搬送指令を受信等して前方に加速する場合の前方走行車6A及び後方走行車6Bの動作を、主に図7及び図12を用いて説明する。前方走行車6Aが前方に加速する場合、前方走行車6Aは自己の状態が加速状態にあることを第一インジケータ181,182,183,184,185を用いて後方走行車6Bに報知する。図7に示されるように、具体的には、前方走行車6Aのインジケータ制御部55は、自己の走行車6の状態が加速状態であることを示す点灯パターンとなるように第一インジケータ181,182,183,184,185を点灯制御する(ステップS1)。以下、ステップS2~ステップS5までの工程は、上記実施形態と同じなので説明を省略する。以下、変形例1に係る走行車6及び走行車システム1における第一インジケータ181,182,183,184,185及び第二インジケータ186の点灯状態を判定する方法について説明する。
【0074】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ181の点灯状態を判定する(ステップS161)。点灯状態判定部57は、ステップS5(図7参照)において特定された第一インジケータ185(図12ではパリティ用インジケータと称する。)の輝度値LVPと、第二インジケータ186(図12では正規化用インジケータと称する。)の輝度値LVNと、を比較する(ステップS162)。点灯状態判定部57は、輝度値LVP>輝度値LVNであることを確認すると(ステップS162:YES)、すなわち、第一インジケータ185が点灯状態にあり、第二インジケータ186が消灯状態にあるときに、第一インジケータ181,182,183,184,185の点灯状態を判定するための閾値Aを算出する。
【0075】
閾値Aは、下記の式に基づいて算出される。
閾値A=(輝度値LVP-輝度値LVN)/2+第一インジケータ185の消灯時の輝度値+α
(αは、閾値調整用パラメータであり、各インジケータの輝度個体差等の条件により適宜調整される。本変形例1では、α=0が設定される。)
【0076】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ181の輝度値LV11と閾値Aとを比較する(ステップS163)。点灯状態判定部57は、輝度値LV11>閾値Aであることを確認すると(ステップS163:YES)、第一インジケータ181が点灯状態にあると判定する(ステップS164)。点灯状態判定部57は、輝度値LV11>閾値Aでないことを確認すると(ステップS163:NO)、第一インジケータ181が消灯状態にあると判定する(ステップS165)。
【0077】
また、点灯状態判定部57は、輝度値LVP<輝度値LVNであることを確認すると(ステップS162:NO)、すなわち、第一インジケータ185が消灯状態にあり、第二インジケータ186が点灯状態にあるときに、第一インジケータ181,182,183,184,185の点灯状態を判定するための閾値Bを算出する。
【0078】
閾値Bは、下記の式に基づいて算出される。
閾値B=(輝度値LVN-輝度値LVP)/2+第二インジケータ186の消灯時の輝度値+α
(αは、閾値調整用パラメータであり、閾値Aと同様に、各インジケータの輝度個体差等の条件により適宜調整される。本変形例1では、α=0が設定される。)
【0079】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ181の輝度値LV11と閾値Bとを比較する(ステップS166)。点灯状態判定部57は、輝度値LV11>閾値Bであることを確認すると(ステップS166:YES)、第一インジケータ181が点灯状態にあると判定する(ステップS167)。点灯状態判定部57は、輝度値LV11>閾値Bでないことを確認すると(ステップS166:NO)、第一インジケータ181が消灯状態にあると判定する(ステップS168)。
【0080】
点灯状態判定部57は、正規化用インジケータとしての第二インジケータ186を除く、第一インジケータ181,182,183,184,185の全ての点灯状態を確認したか否かを判定する(ステップS169)。点灯状態判定部57は、第一インジケータ181,182,183,184,185全ての点灯状態を確認していなければステップS161で入力したnをインクリメントして(ステップS171)、ステップS162~ステップS169の工程を繰り返す。すなわち、点灯状態判定部57は、第一インジケータ182,183,184,185について、点灯状態を判定する。
【0081】
点灯状態判定部57は、第一インジケータ181,182,183,184,185の全ての点灯状態を確認すると(ステップS169:YES)、第一インジケータ181,182,183,184,185の点灯状態に基づいて、第一インジケータ181,182,183,184,185の点灯パターンを特定する。点灯状態判定部57は、特定された点灯パターンに関連付けて記憶されている状態(例えば、加速状態)を取得する。
【0082】
変形例1の走行車6及び走行車システム1では、図11に示されるように、自己の走行車6の状態を報知するために設けられる矩形領域(第一インジケータ181,182,183,184,185)に加え、後方走行車6Bが撮像する撮像画像の中に点灯状態及び消灯状態の両方の矩形領域の画像を含ませるために設けられる矩形領域(第二インジケータ186)が設けられている。これにより、撮像部8によって撮像される撮像画像の中には、必ず点灯状態の矩形領域の画像と消灯状態の矩形領域の画像との両方が含まれるようになるので、点灯状態及び消灯状態の判定は、これら点灯状態の矩形領域の画像及び消灯状態の矩形領域の画像の両方に基づいて行うことが可能となる。この結果、外乱光LS等の影響を受けた撮像画像が取得された場合であっても、外乱光LS等の影響を受けた状態の点灯状態の矩形領域の画像及び消灯状態の矩形領域の画像の両方を判定基準として点灯状態を判定することができるので、矩形領域の点灯状態を正確に判定できる。すなわち、外乱光等の影響がある環境下においても、矩形領域(第一インジケータ181,182,183,184,185)の点灯状態を正確に判定することができる。
【0083】
変形例1の走行車6及び走行車システム1では、後面カバー35の後面35aにおいては、矩形領域を設けることができるスペースが限られる中で、必要最小限の構成(すなわち、一つの第二インジケータ186)で、外乱光LS等の影響がある環境下においても、第一インジケータ181,182,183,184,185の点灯状態を正確に判定することができる。
【0084】
(変形例2)
変形例2に係る走行車システム1及び走行車6は、状態報知部として機能する複数の第一インジケータ181,182,183,184,185と、判定基準インジケータとして機能する一つの第二インジケータ186と、を備える変形例1の構成に代えて、図示はしないが状態報知部として機能する複数の矩形領域からなる第一インジケータと、判定基準インジケータとして機能する二つの矩形領域からなる第二インジケータと、を備える構成であってもよい。変形例2の判定基準インジケータが、変形例1と異なるのは、走行車システム1の稼働時(走行車6の電源投入時)に、一方の矩形領域は常時点灯状態にあり、他方の矩形領域は常時消灯状態にある点である。
【0085】
このような変形例2に係る構成では、外乱光LS等の影響を受けた撮像画像が取得された場合であっても、外乱光LS等の影響を受けた状態の点灯状態の矩形領域の画像及び消灯状態の矩形領域の画像を判定基準として点灯状態を判定することができるので、矩形領域の点灯状態を正確に判定できる。すなわち、外乱光等の影響がある環境下においても、矩形領域(第一インジケータ)の点灯状態を正確に判定することができる。
【0086】
(その他の変形例)
上記実施形態及び変形例では、撮像部8によって撮像された撮像画像をそのまま利用して点灯状態を判定する例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、図13(A)に示されるように、前方走行車6Aがカーブ区間を通過しているときに後方走行車6Bの撮像部8によって撮像される撮像画像は、図13(B)の左右方向に短いサイズWとなってしまう。このような撮像画像では、上述したような左右方向に複数の測定ポイントを設定することはできない。そこで、点灯状態判定部57は、左右方向に拡大加工した撮像画像を用いて、点灯状態を判定してもよい。
【0087】
上記実施形態及び変形例では、図6に示されるように、一つの矩形領域の点灯状態を複数の測定ポイントにおける輝度値に基づいて判定する例を挙げて説明したが、一つの矩形領域の点灯状態を一つの測定ポイントにおける輝度値に基づいて判定してもよい。
【0088】
上記一実施形態及び変形例の走行車6及び走行車システム1では、レンズ及び当該レンズから入ってきた光を電気信号に変換する撮像素子等を含む撮像部8であって、対象物との距離を計測する機能を有さない撮像部8を備える例を挙げて説明したが、これに限定されない。撮像部8は、ステレオカメラ、TOFカメラ等の、距離計測機能を有する撮像装置を適用してもよい。
【0089】
上記実施形態及び変形例では、小マーカ71及び大マーカ73が、複数色の図形からなる表示パターン(例えばARマーカ)として形成される例を挙げて説明したが、例えば、二次元コードであってもよい。二次元コードの例にはQRコード(登録商標)等が含まれる。また、上記実施形態及び変形例では、小マーカ71の表示パターンと大マーカ73の表示パターンとが互いに異なっている例を挙げて説明したが、互いに表示パターンが同じであってもよい。
【0090】
上記実施形態及び変形例では、後面カバー35の後面35aに小マーカ71及び大マーカ73が配置されている例を挙げて説明したが、これらは配置されていなくてもよい。
【0091】
上記実施形態及び変形例では、走行車6を制御する制御部50が個々の走行車6の本体部7に設けられている例を挙げて説明したが、本体部7から分離され、有線又は無線によって通信可能な位置(例えば、走行車コントローラ60)に配置されてもよい。このような場合、制御部50は、複数の走行車6ごとに設けられるのではなく、複数の走行車6を一括して制御できるように構成されてもよい。
【0092】
上記実施形態及び変形例では、走行車の一例として天井走行車を挙げて説明したが、走行車のその他の例には、地上もしくは架台に配設された軌道、又はレーンマーカが設置された走行路を走行する、無人走行車及びスタッカークレーン等が含まれる。
【0093】
上記実施形態及び変形例では、インジケータ80が後面カバー35の後面35aに設けられている例を挙げて説明したが、後方走行車6Bから視認できる位置であればインジケータ80の設置位置は限定されない。
【0094】
上記実施形態及び変形例では、自己の走行車6の状態に合わせて点灯パターンを切り替える矩形領域として、光源をON・OFFすることによって点灯状態を切り替える構成(インジケータ)を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、後面カバー35の後面35aに液晶表示画面を設け、上述したような矩形領域を表示すると共に、自己の走行車6の状態に合わせて、各矩形領域の色、明度、濃度、模様等を変えてもよい。
【0095】
上記実施形態及び変形例では、複数の矩形領域のインジケータ80が構成されている例を挙げて説明したが、円形領域、楕円形領域、若しくは菱形領域、又はこれらの組合せによってインジケータ80が構成されてもよい。
【0096】
上記実施形態及び変形例では、後方走行車6Bに報知する自己の走行車6の状態が加速状態である例を挙げて説明したが、自己の走行車6の状態は、例えば、減速状態であってもよいし、自己の走行車6の現在位置であってもよいし、物品10を搬送中であるか否か等の情報であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…走行車システム、4…軌道、6…天井走行車(走行車)、6A…前方走行車(走行車)、6B…後方走行車(走行車)、8…撮像部、50…制御部、51…パターン認識部、53…車間距離判定部、55…インジケータ制御部、57…点灯状態判定部、59…走行制御部、80…インジケータ、81A,82A,83A,84A,85A…第一インジケータ(第一表示器)、81B,82B,83B,84B,85B…第二インジケータ(第二表示器)、181,182,183,184,185…第一インジケータ(第一表示器)、186…第二インジケータ(第二表示器)。
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