(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】対向二軸型旋盤
(51)【国際特許分類】
B23B 3/30 20060101AFI20241008BHJP
B23B 3/16 20060101ALI20241008BHJP
B23Q 1/76 20060101ALI20241008BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B23B3/30
B23B3/16 A
B23Q1/76 R
B23B23/00 A
(21)【出願番号】P 2023531391
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008189
(87)【国際公開番号】W WO2023276270
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021110314
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆裕
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-107194(JP,A)
【文献】特開平05-042401(JP,A)
【文献】特開2003-285203(JP,A)
【文献】特開2014-083633(JP,A)
【文献】特開2012-011535(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00999002(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 3/30
B23B 3/16
B23Q 1/76
B23B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面を有するベッドと、
前記設置面に設置された第1主軸と、
前記設置面に固定され、第1方向において前記第1主軸と対向するよう配置された第2主軸と、
前記第1方向と直交しかつ前記設置面に沿う第2方向に、前記第2主軸と並んで配置され、前記設置面に前記第2主軸から独立した状態で固定されたテイルストックと、
前記テイルストックの軸線方向の先に設けられ、前記第1主軸と前記テイルストックとに両端を保持されたワークの中間部を保持する保持装置と、
を備え、
前記第1主軸は、前記第2方向に移動することにより、前記第2主軸と互いの軸線が揃う第1位置と、前記テイルストックと互いの軸線が揃う第2位置と、の間で移動可能である、
対向二軸型旋盤。
【請求項2】
前記保持装置
は、前記第1主軸のみにより保持されたワークの先端部を
保持可能となっている、請求項1に記載の対向二軸型旋盤。
【請求項3】
前記テイルストックは、前記第2主軸よりも、作業者が作業を行う作業領域に近い側に配置されている、請求項1又は2に記載の対向二軸型旋盤。
【請求項4】
前記ベッドと外部とを隔てるハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記作業領域に位置する作業者が作業を行う際に開けられる扉と、をさらに備える、請求項3に記載の対向二軸型旋盤。
【請求項5】
前記ベッドの前記設置面は水平に対して傾斜しており、
前記作業領域は、傾斜した前記設置面の下側に近い側に存在する、請求項3又は4に記載の対向二軸型旋盤。
【請求項6】
前記テイルストックは前記
第2主軸の上側に配置されている、請求項1又は2に記載の対向二軸型旋盤。
【請求項7】
前記第1主軸が前記第2位置に位置するときに、前記第1主軸と前記テイルストックとにより支持された第1ワークに対して切削加工を行うための第1刃物台と、
前記第1主軸が前記第2位置に位置するときに、前記第1刃物台による前記第1ワークの切削加工と並行して、前記第2主軸に把持された第2ワークに対して切削加工を行うための第2刃物台と、
をさらに備える、請求項1~6のいずれかに記載の対向二軸型旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向二軸型旋盤に関し、特に、テイルストックを有する対向二軸型旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
対向二軸型旋盤は、対向する一対の主軸を有する旋盤である。対向二軸型旋盤は、さらに、シャフトワークを加工する際にシャフトワークの一端を支えるためのテイルストックを有しているものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の旋盤では、テイルストックは、片側の主軸と共通のクロススライドに装着されている。これにより、クロススライドをX軸方向に移動させることで、主軸とテイルストックの位置が変更される。
【0005】
このように主軸とテイルストックが同じクロススライドに取り付けされているので、テイルストックを使用した状態でワークを加工した場合、加工負荷がワークに影響(変位・振動)し、加工精度が低下するおそれがある。例えば、クロススライドに装着された主軸が第1ワークを保持しており、他の主軸とテイルストックが第2ワークを保持している場合に両ワークが同時に加工されると、第1ワークに作用する加工負荷によって、第1主軸テイルストックが変位してしまい、それが第2ワークを変位させてしまう。
【0006】
本発明の目的は、テイルストックを有する対向二軸型旋盤において、テイルストックの安定性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る対向二軸型旋盤は、ベッドと、第1主軸と、第2主軸と、テイルストックと、を備えている。
ベッドは、設置面を有する。
第1主軸は、設置面に設置されている。
第2主軸は、設置面に固定され、第1方向において第1主軸と対向するよう配置される。
テイルストックは、第1方向と直交しかつ設置面に沿う第2方向に第2主軸と並んで配置され、前記設置面に第2主軸から独立した状態で固定されている。
テイルストックが「第2主軸から独立した状態で設置面に固定されている」とは、テイルストックと第2主軸がそれぞれ別に設置面に固定されている(共通のスライドベース等を介して設置面に固定されているわけではない)ことを意味する。
上記の旋盤において、第1主軸は、第2方向に移動することにより、第2主軸と互いの軸線が揃う第1位置と、テイルストックと互いの軸線が揃う第2位置と、の間で移動可能である。
【0009】
この旋盤では、第1主軸は、第1位置において、第2主軸との間でワークを受け渡しする。さらに、第1主軸は、第2位置において、テイルストックとの間でワークを保持する。テイルストックは、第2主軸と第2方向に並んで配置されているが、第2主軸から独立した状態で設置面に固定されているので、テイルストックが安定する。したがって、テイルストックを使用した状態でワークを加工した場合、加工精度が低下しにくい。
【0010】
旋盤は、保持装置をさらに備えていてもよい。保持装置は、テイルストックの軸線方向の先に設けられ、第1主軸とテイルストックとに両端を保持されたワークの中間部、又は、第1主軸のみにより保持されたワークの先端部を保持する。この旋盤では、長尺のワークを第1主軸で保持する場合に、ワークが自重や加工時の負荷で傾くことが防止される。
【0011】
テイルストックは、第2主軸によりも、作業者が作業を行う作業領域に近い側に配置されていてもよい。この旋盤では、作業者が作業領域において作業をしているときに、例えば作業者から離れた側にある刃物台が、第1主軸及びテイルストックに保持されたワークを加工可能な位置まで移動可能に設定されると、作業者から離れた側にある刃物台のツールを交換しやすくなる。
【0012】
旋盤は、ハウジングと、扉と、をさらに備えてもよい。ハウジングは、ベッドと外部とを隔てる。扉は、ハウジングに設けられ、作業領域に位置する作業者が旋盤に関する作業を行う際に開けられる。この旋盤では、対向二軸型旋盤と外部とを隔てつつ、作業領域にて作業者が対向二軸型旋盤に関する作業を行うことができる。
【0013】
ベッドの設置面は水平に対して傾斜していてもよい。この場合、作業領域は、傾斜した設置面の下側に近い側に存在していてもよい。この旋盤では、例えば、作業者から離れた側にある刃物台のツールの位置が、作業者の目線に近い位置となる。この結果、作業者は、刃物台のツールを交換しやすくなる。
【0014】
テイルストックは第1主軸の上側に配置されていてもよい。この旋盤では、第1主軸が保持するワークが加工されるときに、切粉がテイルストックに降りかかって堆積することがない。
【0015】
旋盤は、第1刃物台と、第2刃物台と、をさらに備えてもよい。第1刃物台は、第1主軸が第2位置に位置するときに、第1主軸とテイルストックとにより支持された第1ワークに対して切削加工を行うために用いられる。第2刃物台は、第1主軸が第2位置に位置するときに、第1刃物台による第1ワークの切削加工と並行して、第2主軸に把持された第2ワークに対して切削加工を行うために用いられる。この旋盤では、第1主軸とテイルストックとにより支持された第1ワークと、第2主軸に把持された第2ワークと、を同時に切削加工できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る対向二軸型旋盤では、テイルストックの安定性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の対向二軸型旋盤の概略斜視図。
【
図3】第1主軸ユニット、テイルストックユニット、及び振れ止め装置を示す概略斜視図。
【
図6】第2実施形態の対向二軸型旋盤の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態
(1)対向二軸型旋盤の基本構成
図1及び
図2を用いて、対向二軸型旋盤1(以下、「旋盤1」という)を説明する。
図1は、第1実施形態の対向二軸型旋盤の概略斜視図である。
図2は、対向二軸型旋盤の側面図である。旋盤1は、対向する一対の主軸を有しており(後述)、1台でワークの表裏を加工できる。旋盤1は、傾斜付き縦型旋盤である。なお、旋盤1へのワークの脱着はローダ、ロボットハンド、バーフィーダーなどのワークを保持して搬送できるワークの搬送装置(図示せず)によって行われる。
【0019】
旋盤1は、ベッド3を有している。ベッド3は、旋盤の本体を構成し、設置面3aを有している。設置面3aは、下部が手前側に位置し上部が奥側に位置する傾斜面である。なお、設置面3aにおいて、設置面3aに平行で斜め上下方向に延びる方向がX軸方向であり、左右方向がY軸方向である。
【0020】
旋盤1は、ベッド3に搭載される装置として、主に、第1主軸ユニット5と、第2主軸ユニット7と、テイルストックユニット9と、第1タレット11と、第2タレット13とを有している。
【0021】
旋盤1は、ハウジング15を有する。ハウジング15は、ベッド3(旋盤1)を内部に収納して、ベッド3と外部とを隔てる。ハウジング15には、ベッド3の設置面3a側に開口が設けられる。この開口には、扉17が設けられる。ベッド3の設置面3aの手前側から所定の距離だけ離れた位置までの空間は、作業領域19である。つまり、作業領域19は、傾斜した設置面3aの下部(手前側)に近い側に存在する。
【0022】
作業領域19は、作業者が旋盤1に関する各種作業を行うための領域である。作業領域19に位置する作業者は、扉17を開けてハウジング15の内部にアクセスし、旋盤1に関する各種作業を行うことができる。
【0023】
(2)第1主軸ユニット及び第2主軸ユニット
第1主軸ユニット5は、第1ワークW1(長尺のワークの一例)の一端を把持して支持する装置である。第1主軸ユニット5は、設置面3aの図左側に配置されており、第2主軸ユニット7とZ軸方向(第1方向の一例)に離れて対向している。第1主軸ユニット5は、第1主軸ユニット本体21を有している。第1主軸ユニット本体21は、ベッド3上に固定された第1主軸台23と、第1主軸台23に回転自在に設置された第1主軸チャック25とを有している。第1主軸チャック25は、第1ワークW1の一端面を当接する着座面を有し、そこに当接した第1ワークW1を複数のチャック爪で把持する。チャック爪は円周方向に並んで配置されている。
【0024】
第1主軸ユニット5は、第1主軸台23の後方に設置され第1主軸チャック25を回転駆動する第1モータ27と、第1主軸台23の後方に設置され第1主軸チャック25を開閉駆動する第1チャックシリンダ(符号なし)とを有する。
【0025】
第1主軸ユニット5は、スライドベース81に搭載されている。第1主軸ユニット5は、スライドベース81上のガイド83に沿ってX軸方向(第2方向の一例)に移動可能である。これにより、第1主軸ユニット5は、第2主軸ユニット7とZ軸方向に間を空けて対向する第1位置と、テイルストックユニット9とZ軸方向に間を空けて対向する第2位置との間で移動することができる。
【0026】
第1主軸ユニット5が第1位置にあるとき、第1主軸ユニット5の中心軸線は、第2主軸ユニット7の中心軸線と一致する。一方、第1主軸ユニット5が第2位置にあるときには、第1主軸ユニット5の中心軸線は、テイルストック43の中心軸線と一致する。なお、第1主軸ユニット5の中心軸線は、第1主軸チャック25の中心からZ方向に延びる軸線であり、第2主軸ユニット7の中心軸線は、第2主軸チャック35の中心からZ方向に延びる軸線である。テイルストック43の中心軸線は、テイルストック43の先端からZ方向に延びる軸線である。
【0027】
スライドベース81は、設置面3aにおいて、ガイド85に沿ってZ軸方向に移動できる。スライドベース81をX軸又はZ軸方向に駆動する機構は公知の技術であり、例えば、モータ及び送りねじ機構からなる。
【0028】
第2主軸ユニット7は、第2ワークW2(比較的短いワークの一例)の一端を把持して支持する装置である。第2主軸ユニット7は、設置面3aの図右側に配置されている。第2主軸ユニット7は、第2主軸ユニット本体31を有している。第2主軸ユニット本体31は、ベッド3上に固定された第2主軸台33と、第2主軸台33に回転自在に設置された第2主軸チャック35を有している。第2主軸チャック35は、第2ワークW2の一端面を当接する着座面を有し、そこに当接した第2ワークW2を複数のチャック爪で把持する。チャック爪は円周方向に並んで配置されている。
【0029】
第2主軸ユニット7は、第2主軸台33の後方に設置され第2主軸チャック35を回転駆動する第2モータ37と、第2主軸台33の後方に設置され第2主軸チャック35を開閉駆動する第1チャックシリンダ(符号なし)とを有する。
【0030】
(3)テイルストックユニット
テイルストックユニット9は、比較的長いワーク(すなわち、第1ワークW1)を加工する場合に、第1主軸ユニット5の第1主軸チャック25で第1ワークW1の一端を把持すると共に、第1ワークW1の他端をテイルストックユニット9の心押軸53(
図3)で回転自在に支持することにより、支持剛性を高めて心出し精度を上げる装置である。
【0031】
テイルストックユニット9は、第2主軸ユニット7とX軸方向に並んで配置され、第2主軸ユニット7から独立した状態で設置面3aに固定されている。テイルストックユニット9は、公知の技術であり、ベッド3上に固定される基台41と、テイルストック43とを有している。基台41は、ガイド45を介して、設置面3aに対してZ軸方向に位置調整ができる。テイルストック43は、テイルストック本体51(
図3)と、テイルストック本体51に回転自在に支持され第1主軸チャック25に対向して進退自在な心押軸53を有している。
【0032】
旋盤1は、振れ止め装置91(保持装置の一例)をさらに備えている。
図3を用いて、振れ止め装置91を説明する。
図3は、第1主軸ユニット、テイルストックユニット、及び振れ止め装置を示す概略斜視図である。
【0033】
振れ止め装置91は、テイルストックユニット9の軸線方向の先に設けられ、第1主軸ユニット5に保持された第1ワークW1を保持する。
図3に示すように、第1主軸ユニット5とテイルストックユニット9とにより第1ワークW1の両端が保持されている場合、振れ止め装置91は、第1ワークW1の中間部を保持する。一方、第1主軸ユニット5のみにより第1ワークW1の一端側が保持されている場合、振れ止め装置91は、当該第1ワークW1の他端側の先端部を保持する。
【0034】
振れ止め装置91は、上方に開いた一対のアーム93を有しており、アーム93が第1ワークW1を挟んで保持する。アーム93及びそれを駆動する機構は公知である。このようにして、第1ワークW1を第1主軸ユニット5で保持する場合に、第1ワークW1が自重や加工時の負荷で傾くことが防止される。
【0035】
(4)第1タレット及び第2タレット
第1タレット11及び第2タレット13(刃物台ユニットの一例)は、ワークに切削加工を行う。第1タレット11及び第2タレット13は、ベッド3の設置面3aにおいて上下に分かれて設置されている。
【0036】
第1タレット11は、下側のタレットであり、第1刃物台61と第1送り台63を有する。第1刃物台61は、正面形状が多角形のドラム状をしたタレット刃物台からなり、各角間の周面部分からなる各工具ステーションに、工具(図示せず)がそれぞれ取付けられる。第1タレット11は、第1X軸ベース65に搭載されている。第1タレット11は、第1X軸ベース65上の第1ガイド67に沿ってX軸方向に移動可能である。第1X軸ベース65は、設置面3aにおいて、ガイド85に沿ってZ軸方向に移動できる。
【0037】
上記の構造によって、第1タレット11は、第1主軸ユニット5に保持された第1ワークW1の位置まで移動可能である。
【0038】
第2タレット13は、上側のタレットであり、第2刃物台71と第2送り台73を有する。第2刃物台71は、正面形状が多角形のドラム状をしたタレット刃物台からなり、各角間の周面部分からなる各工具ステーションに、工具(図示せず)がそれぞれ取付けられる。第2タレット13は、第2X軸ベース75に搭載されている。第2タレット13は、第2X軸ベース75上の第2ガイド77に沿ってX軸方向に移動可能である。第2X軸ベース75は、設置面3aにおいて、第3ガイド79に沿ってZ軸方向に移動できる。
【0039】
第1タレット11に仮置き台を設置して、そこにワークを載せて第1主軸ユニット5にワークを提供できる。
【0040】
この実施形態では、テイルストックユニット9は、第2主軸ユニット7によりも、作業領域19に近い側に配置されている(具体的には、傾斜した設置面3aの下側に配置されている)。また、前述のように、第1タレット11が、第1主軸ユニット5に保持された第1ワークW1の位置まで移動可能である。さらに、第1タレット11が、作業領域19に近い位置まで移動可能となっている。このため、旋盤1では、作業者が第1タレット11の工具を交換しやすい。
【0041】
(5)2つのワークの同時加工の例
上述のように第1タレット11及び第2タレット13は、上下方向両側にそれぞれ設けられているので、2つのワークを同時に切削加工できる。
図4を用いて、2つのワークの同時加工の例を示す。
図4は、対向二軸型旋盤の加工状態を示す模式図である。
【0042】
第1主軸ユニット5とテイルストックユニット9が第1ワークW1を支持しており、第1タレット11の第1刃物台61に取り付けられた工具により第1ワークW1が切削加工されている。すなわち、第1刃物台61は、第1主軸ユニット5が第2位置に位置するときに、第1主軸ユニット5とテイルストックユニット9とにより支持された第1ワークW1に対して切削加工を行うために用いられる。
【0043】
一方、第2主軸ユニット7が第2ワークW2を把持しており、第2タレット13の第2刃物台71に取り付けられた工具により第2ワークW2が切削加工されている。すなわち、第2刃物台71は、第1主軸ユニット5が第2位置に位置するときに、第1刃物台61に取り付けられた工具による第1ワークW1の切削加工と並行して、第2主軸ユニット7に把持された第2ワークW2に対して切削加工を行うために用いられる。
【0044】
テイルストックユニット9は、第2主軸ユニット7とX軸方向に並んで配置されているが、第2主軸ユニット7から独立した状態で設置面3aに固定されているので、テイルストックユニット9が安定し、そのため加工精度が低下しにくい。上記のように第1ワークW1が第1主軸ユニット5によって保持されているとき、第1ワークW1が振れ止め装置91によって保持されている。したがって、第1ワークW1が安定する。
【0045】
(6)第1主軸ユニットと第2主軸ユニット間でのワーク受け渡し動作
図5を用いて、第1主軸ユニット5と第2主軸ユニット7との間でのワークWの受け渡し動作を説明する。
図5は、対向二軸型旋盤の加工状態を示す模式図である。
【0046】
最初に、第1主軸ユニット5がX軸方向に移動することで第2主軸ユニット7と対向し、次に第2主軸ユニット7との間でワークWを受け渡す。このように、第1主軸ユニット5がX軸方向に移動して振れ止め装置91の軸線上から外れる構造であるので、上記動作時に振れ止め装置91が第1主軸ユニット5及び第2主軸ユニット7に干渉しない。
【0047】
(7)第1主軸ユニットとテイルストックとの間でのワーク保持動作
最初に、ワークの搬送装置(図示せず)が第1ワークW1の中間部を把持した状態で、第1ワークW1を第1主軸ユニット5とテイルストックユニット9の心押軸53との間に搬入する。
【0048】
次に、ワークの搬送装置による第1ワークW1の把持を緩めて第1ワークW1を軸方向に移動自在した状態で、テイルストックユニット9の心押軸53が第1主軸ユニット5側へ移動する。この移動により、心押軸53で第1ワークW1を第1主軸ユニット5による把持位置まで押し込む。
【0049】
押し込みが完了すると、第1主軸ユニット5の第1主軸チャック25により第1ワークW1を把持する。このように、第1ワークW1を第1主軸ユニット5とテイルストックユニット9とで支持した状態で、第1ワークW1を第1タレット11に取り付けられた工具によって加工する。ここでの加工は、例えば、切削加工である。
【0050】
2.第2実施形態
第1実施形態では第2主軸ユニットはテイルストックの上側に配置されていたが、両者の位置は入れ替えてもよい。
図6を用いて、そのような実施例を第2実施形態として説明する。
図6は、第2実施形態の対向二軸型旋盤の概略斜視図である。なお、第2実施形態の基本構成及び基本動作は第1実施形態と同じである。
【0051】
第2主軸ユニット7Aは、設置面3Aaにおいて、テイルストックユニット9Aの下側に配置されている。言い換えると、テイルストックユニット9Aは第2主軸ユニット7Aの上側に配置されている。したがって、旋盤1Aでは、第2主軸ユニット7Aが保持する第2ワークW2が切削加工されるときに、切粉がテイルストックユニット9Aに降りかかって堆積することがない。なお、上述の変更に伴って、第1主軸ユニット5A、第1タレット11A、第2タレット13Aの位置も第1実施形態とは異なる。
【0052】
また、この実施形態では、第2タレット13AのZ軸方向の移動範囲は、第1主軸ユニット5Aに保持された第1ワークW1を加工可能な位置まで延びている。また、第2主軸ユニット7Aが、設置面3Aaにおいて、テイルストックユニット9Aの下側に配置されている。したがって、第2タレット13Aに仮置き台を設置して、そこにワークを載せて、第1主軸ユニット5Aと第2主軸ユニット7Aの両方にワークを提供できる。
【0053】
3.実施形態の共通事項
上記第1~第2実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
対向二軸型旋盤(例えば、対向二軸型旋盤1、1A)は、ベッドと、第1主軸と、テイルストックと、第2主軸とを備えている。
ベッド(例えば、ベッド3、3A)は、設置面(例えば、設置面3a)を有する。
第1主軸(例えば、第1主軸ユニット5、5A)は、設置面に設置されている。
第2主軸(例えば、第2主軸ユニット7、7A)は、設置面に固定され、第1方向(例えば、Z軸方向)において第1主軸と対向するよう配置される。
テイルストック(例えば、テイルストックユニット9、9A)は、第1方向と直交しかつ設置面に沿う第2方向(例えば、X軸方向)に、第2主軸と並んで配置され、設置面に第2主軸から独立した状態で固定されている。
上記の旋盤において、第1主軸は、第2方向に移動することにより、第2主軸と互いの軸線が揃う第1位置と、テイルストックと互いの軸線が揃う第2位置と、の間で移動可能である。
【0054】
この旋盤では、第1主軸は、第1位置において、第2主軸との間でワークを受け渡しする。さらに、第1主軸は、第2位置において、テイルストックとの間でワークを保持する。テイルストックは、第2主軸と第1方向に並んで配置されているが、第2主軸から独立した状態で設置に固定されているので、テイルストックが安定する。したがって、テイルストックを使用した状態でワークを加工した場合、加工精度が低下しにくい。
【0055】
4.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
旋盤は、正面旋盤、横型旋盤でもよい。
振れ止め装置は省略されてもよい。
タレットの数は3以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、テイルストックを有する対向二軸型旋盤に広く適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 :対向二軸型旋盤
3 :ベッド
3a :設置面
5 :第1主軸ユニット
7 :第2主軸ユニット
9 :テイルストックユニット
11 :第1タレット
13 :第2タレット
15 :ハウジング
17 :扉
19 :作業領域
21 :第1主軸ユニット本体
23 :第1主軸台
25 :第1主軸チャック
27 :第1モータ
31 :第2主軸ユニット本体
33 :第2主軸台
35 :第2主軸チャック
37 :第2モータ
41 :基台
43 :テイルストック
45 :ガイド
51 :テイルストック本体
53 :心押軸
61 :第1刃物台
63 :第1送り台
65 :第1X軸ベース
67 :第1ガイド
71 :第2刃物台
73 :第2送り台
75 :第2X軸ベース
77 :第2ガイド
79 :第3ガイド
81 :スライドベース
83 :ガイド
85 :ガイド
91 :振れ止め装置
93 :アーム
W :ワーク
W1 :第1ワーク
W2 :第2ワーク