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特許7568103ハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20241008BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01F7/02 Z
G01N29/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023532301
(86)(22)【出願日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2023005666
(87)【国際公開番号】W WO2023171314
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2022036856
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西澤 佑司
(72)【発明者】
【氏名】御厨 知昭
(72)【発明者】
【氏名】波切 良治
(72)【発明者】
【氏名】寺田 一貴
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0074223(US,A1)
【文献】特開2009-284740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02
G01N 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の磁石がハルバッハ配列に配置された磁石部と、
少なくとも前記磁石部の各磁石を固定する、一つ又は複数の非磁性体である固定治具と、
前記磁石部により形成される磁場が偏った側とは異なる面側に設けられ、磁性体であるヨークと、
を備え
前記固定治具は、
柱状であり、
各磁石の全てを貫通するように配置され、両端部が自由端である、
ハルバッハ配列磁石。
【請求項2】
前記磁石部の両端にある磁石は強磁場側がそれぞれ両端側に開く動きが生じ、該両端にある磁石の貫通孔の内面と前記固定治具の外面とが係合して前記磁石部と前記固定治具とが固定される、
請求項1に記載のハルバッハ配列磁石。
【請求項3】
前記固定治具の径は各磁石の貫通孔の径よりも小さく、前記固定治具と前記貫通孔との間に隙間をもたせる、
請求項1に記載のハルバッハ配列磁石。
【請求項4】
複数個の磁石がハルバッハ配列に配置された磁石部と、
少なくとも前記磁石部の各磁石を固定する、一つ又は複数の非磁性体である固定治具と、
前記磁石部により形成される磁場が偏った側とは異なる面側に設けられ、磁性体であるヨークと、
を備え
前記固定治具は、
柱状であり、
各磁石の全てを貫通するように配置され、両端部が自由端である、
電磁超音波センサ。
【請求項5】
前記磁石部の両端にある磁石は強磁場側がそれぞれ両端側に開く動きが生じ、該両端にある磁石の貫通孔の内面と前記固定治具の外面とが係合して前記磁石部と前記固定治具とが固定される、
請求項4に記載の電磁超音波センサ。
【請求項6】
前記固定治具の径は各磁石の貫通孔の径よりも小さく、前記固定治具と前記貫通孔との間に隙間をもたせる、
請求項4に記載の電磁超音波センサ。
【請求項7】
前記ヨークの反対側である前記磁石部の強磁場側の前面に冷却水路が形成される、
請求項4に記載の電磁超音波センサ。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一つに記載の電磁超音波センサが取り付けられた欠陥計測装置。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか一つに記載の電磁超音波センサを用いた欠陥計測方法。
【請求項10】
請求項に記載の計測方法により特定の物理量を計測しながら金属材料を製造する金属材料の製造方法。
【請求項11】
請求項に記載の計測方法により特定の物理量を計測しながら金属材料の品質を管理する金属材料の品質管理方法。
【請求項12】
請求項に記載の計測装置を備え、
前記計測装置により特定の物理量を計測しながら金属材料を製造する金属材料の製造設備。
【請求項13】
請求項4~7のいずれか一つに記載の電磁超音波センサを備え、
前記電磁超音波センサにより金属材料の凝固位置を計測する凝固位置計測装置。
【請求項14】
請求項4~7のいずれか一つに記載の電磁超音波センサを備え、
前記電磁超音波センサにより金属材料の凝固位置を計測する凝固位置計測方法。
【請求項15】
請求項13に記載の凝固位置計測装置を備え、
前記凝固位置計測装置により鋳片の凝固位置を計測しつつ鋳片を製造する鋳造設備。
【請求項16】
請求項13に記載の凝固位置計測装置を備え、
前記凝固位置計測装置により凝固位置を計測しつつ金属材料を製造する金属材料の製造設備。
【請求項17】
請求項15に記載の鋳造設備を用いて鋳片を製造しながら金属材料を製造する金属材料の製造方法。
【請求項18】
請求項15に記載の鋳造設備を用いて鋳片を製造しながら金属材料の品質を管理する金属材料の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁超音波は、昨今非破壊計測において様々利用されている。対象に対して完全非接触で超音波を送受信可能という特徴から、材質計測や内部・表面の傷検査に利用されている。水等の接触媒質を利用しないため、測定対象が高温下での計測、温度制御下での材質計測、あるいは移動する対象への適用など、広いニーズがある。特に高温かつ製造ライン内を移動する対象にも適用可能なため、インライン計測に適用される。具体的には、連続鋳造における凝固状態把握、内部探傷および割れなどの表面欠陥探傷などに利用される。
【0003】
一方で、電磁超音波には、従来の超音波探触子に比べて感度が低いという課題があった。通常の超音波に対し、2桁程度感度が低く、信号強度の確保が大きな課題となっている。その対策として、磁石配列に工夫を施した例がいくつか報告されている。例えば、特許文献1,2には、いわゆるハルバッハ配列といわれる、主磁極と補助磁極を直交するように配置させ、片側(測定対象側)に磁場を集中させ、磁場強度を向上させる技術が開示されている。電磁超音波における感度は磁場強度に比例するので、高感度化させることができる技術である。従来、ハルバッハ配列を持つ磁石は、リニアモーターや加速器など、強磁場を用いる分野において利用されていたが、センサの小型化、磁場強化のため、電磁超音波の分野においても利用され始めている。
【0004】
電磁超音波センサは、測定対象に近づけると感度が向上するが、高温の対象や移動する対象に対しては近づけるのにも限界があった。実用的には5mm程度まで接近させて計測を行うが、感度向上の要望は大きく、ハルバッハ配列のように磁場を強くする方法を用いることは大きな効果をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-161454号公報
【文献】特開2015-040746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したハルバッハ配列に配置された磁石(ハルバッハ配列磁石とも呼ぶ)を、金属材料を製造する過程など、対象が高温な状態での計測に利用する場合、磁石を確実に固定する必要がある。しかしながら、特許文献1,2はいずれも、ハルバッハ配列磁石を金属材料が高温である条件下で利用することを想定していない。繰り返される熱負荷により各磁石の膨張および/または収縮が発生し、列状に配されかつ接着された各磁石の位置がずれるため、ハルバッハ配列磁石の信頼性及び寿命を確保することが困難であった。このことは、水冷環境下においても同様である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、例えば、金属材料を製造する過程で繰り返し発生する熱負荷(以下、繰り返される熱負荷とも呼ぶ)にあっても、あるいは水冷環境下であっても、配列される各磁石の固定を可能とし、信頼性とセンサ寿命を確保ことができるハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るハルバッハ配列磁石は、複数個の磁石がハルバッハ配列に配置された磁石部と、少なくとも前記磁石部の各磁石を固定する、一つ又は複数の非磁性体である固定治具と、前記磁石部により形成される磁場が偏った側とは異なる面側に設けられ、磁性体であるヨークとを備える。
【0009】
(2)また、本発明に係る上記(1)のハルバッハ配列磁石であって、前記固定治具は、柱状であり、各磁石の全てを貫通するように配置されている。
【0010】
(3)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電磁超音波センサは、複数個の磁石がハルバッハ配列に配置された磁石部と、少なくとも前記磁石部の各磁石を固定する、一つ又は複数の非磁性体である固定治具と、前記磁石部により形成される磁場が偏った側とは異なる面側に設けられ、磁性体であるヨークとを備える。
【0011】
(4)また、本発明に係る上記(3)の電磁超音波センサであって、前記固定治具は、柱状であり、各磁石の全てを貫通するように配置されている。
【0012】
(5)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る欠陥計測装置は、上記(3)または(4)の電磁超音波センサが取り付けられている。
【0013】
(6)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る欠陥計測方法は、上記(3)または(4)の電磁超音波センサを用いて欠陥検出を行う。
【0014】
(7)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る金属材料の製造方法は、上記(6)の計測方法により特定の物理量を計測しながら金属材料を製造する。
【0015】
(8)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る金属材料の品質管理方法は、上記(6)の計測方法により特定の物理量を計測しながら金属材料の品質を管理する。
【0016】
(9)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る金属材料の製造設備は、上記(5)の計測装置により特定の物理量を計測しながら金属材料を製造する。
【0017】
(10)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る凝固位置計測装置は、上記(3)または(4)の電磁超音波センサを備え、前記電磁超音波センサにより金属材料の凝固位置を計測する。
【0018】
(11)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る凝固位置計測方法は、上記(3)または(4)の電磁超音波センサを備え、前記電磁超音波センサにより金属材料の凝固位置を計測する。
【0019】
(12)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋳造設備は、上記(10)の凝固位置計測装置を備え、前記凝固位置計測装置により鋳片の凝固位置を計測しつつ鋳片を製造する。
【0020】
(13)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る属材料の製造設備は、上記(10)の凝固位置計測装置を備え、前記凝固位置計測装置により凝固位置を計測しつつ金属材料を製造する。
【0021】
(14)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る金属材料の製造方法は、上記(12)の鋳造設備を用いて鋳片を製造しながら金属材料を製造する。
【0022】
(15)上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る金属材料の品質管理方法は、上記(12)の鋳造設備を用いて鋳片を製造しながら金属材料の品質を管理する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備によれば、接着剤や枠を用いずとも、固定治具及びヨークとの協働によってハルバッハ配列磁石を固定することができるため、繰り返される熱負荷にあっても、あるいは水冷環境下であっても、配列される各磁石の固定を可能とし、信頼性とセンサ寿命を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、ハルバッハ配列磁石を用いた電磁超音波センサと従来配列磁石を用いた電磁超音波センサとを比較した図である。
図2図2は、ハルバッハ配列の各磁石の安定状態を示す図である。
図3図3は、実装状態の電磁超音波センサの構成を示す断面図である。
図4図4は、ハルバッハ配列を構成する各磁石の膨張・収縮方向を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るハルバッハ配列磁石の構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るハルバッハ配列磁石の変形例の構成を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るハルバッハ配列磁石の変形例の構成を示す図である。
図8図8は、貫通ピンの有無のハルバッハ配列磁石及び従来配列磁石の3パターンについて、静磁場シミュレーションを行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態に係るハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0026】
<ハルバッハ配列磁石の特徴>
図1は、ハルバッハ配列された磁石10(以降、ハルバッハ配列磁石10と呼ぶ)を用いた電磁超音波センサ1と従来配列磁石110を用いた電磁超音波センサ100とを比較した図である。図1(a)に示すように、磁石部であるハルバッハ配列磁石10は、主磁石2の間に磁場方向を主磁石2に直交するように向けた補助磁石3が配置される。したがって、ハルバッハ配列磁石10を制作する場合、磁場が反発する位置で磁石を組み立てる必要がある。図1(a)は、ハルバッハ配列磁石10に縦波コイル11と横波コイル12とを配置した電磁超音波センサ1を示す。図1(b)は、図1(a)に示したハルバッハ配列磁石10が生成する磁場分布の例を示している(但し、図1(b)では、ヨーク4を省略して描いている)。また、図1(c)は、補助磁石3が取り除かれた従来配列磁石110に縦波コイル11と横波コイル12とを配置した電磁超音波センサ100を示す。図1(d)は、図1(b)に示した従来配列磁石110が生成する磁場分布の例を示している。図1(b)及び図1(d)から明らかなように、ハルバッハ配列磁石10は、縦波コイル11及び横波コイル12が配置される側に大きく偏った磁場を形成している。このため、ハルバッハ配列磁石10を用いた電磁超音波センサ1は大きな感度を得ることができる。
【0027】
ヨーク4は、主磁石2と補助磁石3を結ぶように、ハルバッハ配列磁石10により上記の大きく偏った磁場が形成される側(本明細書では強磁場側と呼ぶ)とは反対側の面に取り付ける。ヨーク4をこの位置に配置することにより、各磁石2,3の磁場が外部に漏れだすことなく、強磁場側へ磁束を効率的にかつより集中させやすくなり、強磁場側の磁場が見かけ上強化される。ヨーク4の材質は適宜選定すればよいが、透磁率の高い軟鉄などの磁性体が用いられる。また、水冷ジャケットや取付け治具、センサホルダーとの取付けのため、ヨーク4に適宜ネジ加工等を行い、取付ベースとしての機能を兼ねてもよい。
【0028】
ここで、図1(a)では、主磁石2のS極と補助磁石3のS極、また、主磁石2のN極と補助磁石3のN極が近接している場所がある。実際にハルバッハ配列磁石10を組み立てるとき、自然な吸着による安定状態は、図2に示すように、N極とS極とが近接した状態となり、補助磁石3が主磁石2に対して配列の直交方向にずれた配置となる。
【0029】
したがって、ハルバッハ配列磁石10を組み立てる場合、この安定状態から、適切な治具、例えば組み立て枠と万力・クランプ等を用いて、ハルバッハ配列の適切な状態に締め込むとともに、接着剤等で固定・保持させ、ハルバッハ配列磁石10を組み立てる。このハルバッハ配列磁石10は、接着剤や枠等による固定がなければ、当然安定状態に戻り、主磁石2と補助磁石3とがズレた状態となってしまう。
【0030】
そこで、ハルバッハ配列磁石10の固定には、通常、接着剤による固定またはフレームによる固定が行われる。フレームによる固定は、モーターなどに利用されるが、電磁超音波センサにおいては、フレームを利用することは困難である。これは、磁石とコイルとをともに測定対象からできるだけ近くに設置する必要があるからであり、また、コイル近傍に導電体があると、その部分に渦電流が生じ、感度に影響するからである。
【0031】
モーターに適用する場合、透磁率の高い金属製のフレーム、例えば軟鉄や積層電磁鋼板を利用することができるので十分な強度を備えることができるし、縦波コイル11や横波コイル12がないため、送受信の渦電流およびその乱れを考慮する必要がない。電磁超音波センサにおいては、導電体があると、送信時その導電体に渦電流を生じ、感度が低下するなどの悪影響が生じるため、金属製のフレームは利用できない。セラミックスなども想定されるが、現実的な強度を得るためには厚みが必要であり、磁場の広がりにより磁場強度が下がり、感度が低下する。このため、電磁超音波センサにおいては、接着剤による固定が多用される。
【0032】
しかし、このハルバッハ配列磁石10を測定対象が高温の状態(例えば、金属材料、特に鋼材、における鋳造工程や熱間圧延工程など)での計測に利用する場合、熱対策を行うことが好ましい。電磁超音波センサの感度を確保するためには、電磁超音波センサと測定対象との間の距離(リフトオフ)をできるだけ小さくする。そのためには測定対象に面する領域を確実に冷却する。もし、高温状態で使用かつ冷却を行わない場合は、コイルの損傷、や磁石の減磁などが生じる可能性が高い。ネオジム磁石は入手容易な磁石の中でも特に強力な磁力を有するが、80℃~150℃程度以上で磁性が低下する。以上のことから高温の対象に近接させて測定する場合、冷却は、空冷または水冷が行うことが特に好ましい。特に、測定対象が数百度となるような高温下での計測においては、センサジャケットに格納し、かつ、隙間に水を流すという形で冷却することがより好ましい。
【0033】
図3は、実装状態の電磁超音波センサの構成を示す断面図である。図3に示すように、ハルバッハ磁石、電流パルスが印加されるコイル、前面の通水路/スペーサー、センサジャケット、測定対象5の順に配置されることになる。コイルは、エナメル線を巻いたものや、フレキシブルプリント基板などが用いられる。
【0034】
特に、高温下で利用する場合、水冷などの冷却がなされるとはいえ、電磁超音波センサと測定対象5の距離をできるだけ小さくするため、流路も狭くなる傾向にある。具体例として、測定対象5から5mm、水冷ジャケットとして0.2mmのSUS製カバー、冷却水路として1mmの流路を確保して水冷するといった構造を取る。測定対象5の温度にもよるが、輻射熱や伝熱により、電磁超音波センサの温度は80℃や100℃程度までは上昇することがある。さらに、測定中に熱を受け、非測定時に冷却されることが繰り返されるため、繰り返し熱負荷を受ける。
【0035】
ネオジム磁石は、比較的安価であり、かつ磁束密度も高いため、電磁超音波センサ用の磁石として広く利用されている。ところで、ネオジム磁石には熱膨張の異方性があり、磁極方向には正の熱膨張係数、磁極方向と直交する方向には負の熱膨張係数を有する。したがって、加熱されると、図4に模式的に示す方向に膨張または収縮が生じる。主磁石2は磁極方向(図上、上下方向)に熱膨張するが、補助磁石3は、磁極の向きが横方向のため、左磁極方向(図上、左右方向)に伸び、磁極と直交方向(図上、上下方向)には収縮する。このため、磁石の界面には剪断力が生じる。磁石の固定のための接着剤を用いた場合、その接着部分に剪断力が生じ、接着剤の剥離に至る。ついには接着が外れ、磁石が安定領域に戻ろうとして、押し出されてくる。
【0036】
また、ハルバッハ配列の組み立てと接着には、公知のものを使用目的に合わせて適宜選択する。例えば、シアノアクリレートを主成分とするいわゆる瞬間接着剤などは、ハルバッハ配列への衝撃を考慮して利用する。エポキシ系の接着剤は、強力な接着力を有し、硬化後にも若干の柔軟性を有するため、ハルバッハ配列の磁石の接着には最も好適である。
【0037】
このように、好適な特性を有するエポキシ系接着剤であるが、若干の吸水性を持ち、長時間水中に放置すると吸水により接着剤が膨張し剥離することがある。また、膨張による機械的な接着力低下と同時に加水分解も進行するため、水冷のための水没環境下では特に劣化が進行する。
【0038】
この結果、接着剤が徐々に剥離し、ついにハルバッハ配列を構成する磁石が反発力により外れ、押し出されることになる。押し出された結果、流路をふさいで焼損する、センサカバーを押し変形させる、コイルに損傷(変形、絶縁不良、断線など)を生じさせる、といったことが生じる。
【0039】
実際、従来のハルバッハ配列磁石を用いた電磁超音波センサでは、磁石の外れによる電磁超音波センサの不具合が発生する。例えば、測定対象が高温下での測定(測定対象:鋳造スラブ、表面温度約900℃、リフトオフ5mm、カバー材質SUS304、厚さ0.2mm)を数回行ったのち確認すると、カバー部が膨らんでいた。解体して内部を確認したところ、磁石が外れて押し出されており、流路をふさぎ、コイルを焼損したことを確認している。
【0040】
<ハルバッハ配列磁石>
図5は、本発明の実施形態に係るハルバッハ配列磁石の構成を示す図である。図5(a)に示すように、ハルバッハ配列磁石は、ピン止め型としている。このハルバッハ配列磁石の縦横高さの寸法、比は任意であるが、一例として、20mm(幅)×30mm(長さ)×40mm(高さ)の磁石を5個並べたものとなっている。利用する磁極の数や求める磁場強度によって適宜設計する。
【0041】
このハルバッハ配列磁石は、すべての磁石(主磁石2及び補助磁石3)の中央部に孔20があけられている。この孔径は一例として、5mmとしている。元の磁石の大きさ、磁力の強さ、加工精度などで適宜設計すればよい。
【0042】
この孔20は、磁石の概中央である。ハルバッハ配列を構成した状態で一直線になる位置に孔20があけられる。孔加工は、着磁、メッキ前に孔加工を施す方法と、着磁後の磁石に加工を施す方法があるが、製造コスト及び作業性の観点から、着磁・メッキ前に孔加工することが好ましい。孔20が大きすぎると、磁石の有効体積が小さくなり、磁場強度が低下する。小さすぎると、加工が難しくなる。具体的には、ネオジム磁石は防錆のためにメッキを施す(ニッケルメッキなど)が、孔径が小さくなると、孔内面のメッキが難しくなり、結果としてさびやすくなり、寿命が短くなったり、錆びにより磁場強度が低下する。また、ネオジム磁石は焼結体であるので、製作過程で多少の寸法変化が生じることがある。それを見越して孔径、ピンサイズを検討するとよい。
【0043】
そして、本実施形態の場合は、孔20の両端に留め具は配置されない。このように、ハルバッハ配列磁石10の両端に留め具を配置しないのが最も好ましい。この形状だと、ハルバッハ配列磁石10の両端にある2つの主磁石2は、それぞれ、補助磁石3と接していない側に非常にわずかであるが動くことができる。もし、孔20の両端に留め具を配置する場合は、少なくとも一端の主磁石2が補助磁石3と接していない側に非常にわずかでも動くことができる程度には、距離をあけるようにするのが好ましい。もちろん、両端とも距離を開ける方がより好ましい。さらに言えば、貫通ピン21の軸にそって両端の主磁石2を隣の補助磁石3に押し付けるように、孔20の両端に留め具を配置することは、本発明ではない。
【0044】
孔20の位置は、中央が好ましい。まず、端面は磁場分布に影響を与える。磁場強度および磁場分布は電磁超音波の送受信感度に与える影響が大きい。
【0045】
中央部以外の位置に空けることを考える。例えば、磁場印加面1/3の位置などに空けたことを考える。端部に空けるよりも磁場分布への影響は小さいと考えられるが、例えば主磁石2では、2種類の磁石を準備する必要がある。これは、コストアップと、製造手順の複雑化を招く。例えば、磁石選択を間違えたとき、再組み立てすればよいが、磁石同士の吸着は非常に強力であるので、取り外しが困難であることも考えられる。中央部であれば、対称性から主磁石2は1種類でよく、補助磁石3も1種類、計2種類あればよいことがわかる。
【0046】
孔20に貫通する貫通ピン21の材質は、SUS304などの非磁性体のSUS材が好ましい。またSUSとすることで、錆びなども生じにくい。また非磁性体であれば、アルミや銅なども使用可能であり、適宜選択してよい。一方、磁性体は、磁場を乱すため使用が難しい。組み立ての際に、強く吸着され作業上の危険がある。また、磁場分布によって貫通ピン21の位置を特定の位置に定めることができなくなる可能性が高い。
【0047】
磁石の製造手順は、まずハルバッハ配列の磁石を組み立てる。すなわち、図2に示すような安定領域である、互い違い状態に磁石を組み立てる。その後、万力等で磁石を締め込み、一体化させたハルバッハ配列にする。これにより、孔位置が一致した状態となり、この孔20に貫通ピン21を通す。その後、万力を外し、ハルバッハ配列磁石が完成する。
【0048】
完成したハルバッハ配列磁石は、主磁石2と補助磁石3とが一部反発する磁石配置となっている。接着剤等で固定しない場合、安定な配置に戻ってしまうが、貫通ピン21により配置・形状が維持される。
【0049】
その後、通常のハルバッハ配列を用いた電磁超音波センサと同じように縦波コイル11及び横波コイル12を配置することで電磁超音波センサが製造される。なお、縦波コイル11及び横波コイル12が配置される反対側にはヨーク4が吸着により配置される。
【0050】
本実施形態のハルバッハ配列磁石の固定方法によれば、外形に影響を及ぼすことなく、また、磁場強度、磁場分布に影響を及ぼすこともない。また、コスト面でも有利で、枠製作のコストと、貫通ピン21のコストでは貫通ピン21のコストが低いことは明らかである。また、一部磁石が割れたなどの時にも、接着剤に比較して容易に解体することができ、一部再利用することも容易である。
【0051】
ここで、主磁石2と補助磁石3は互いに反発するため、図2に示すような安定領域に戻ろうとする。この時、もともと一直線であった孔20が変位し、貫通ピン21に接触する。図5(b)に示すように、接触してなお元に戻ろうとするため貫通ピン21に剪断力がかかり、貫通ピン21が抗することにより、貫通ピン21と孔20が係合し、外れにくくなる。なお、この時、図5(c)に示すように、さらに強磁場側には、同じ極の磁極が並ぶため、互いに反発し、外側の磁石には回転力が生じる。しかし、図5(d)に示すように、強磁場側と反対側にヨーク4があることで、図の上下方向以外の変位、すなわち、回転力をヨーク4により拘束することができる。この結果、貫通ピン21のみでは、図5(c)のように、強磁場側の先端が開くような変位が生じるが、貫通ピン21とヨーク4との協働により、磁石をハルバッハ配列の状態に保持することができる。
【0052】
なお、図5(c)の状態で、主磁石2と補助磁石3とは、コイルが設けられる側(強磁場側)で磁場が反発して主磁石2と補助磁石3との間が開きかかる。この開きにより、孔20が強磁場側に反って屈曲する。これは、孔20の両端に留め具がなく、ハルバッハ配列磁石10の両端にある2つの主磁石2が、それぞれ、補助磁石3と接していない側に非常にわずかであるが動くことができるため、このような挙動が可能となる。この時、貫通ピン21が孔20に係合し、さらに外れにくくなる。この結果、接着剤は不要となる。なお、反対側はヨーク4が磁力によって吸着される。なお、貫通ピン21は、孔20内において、ほぼ直線状となる。なお、孔20が強磁場側に反って屈曲する挙動は、先に説明した通り、貫通ピン21の軸にそって両端の主磁石2を隣の補助磁石3に押し付けるように、孔20の両端に留め具を配置しなければ、他の形態でも同様に得ることができる。すなわち他の形態とは、孔20の両端に留め具を配置する場合は、少なくとも一端の主磁石2が補助磁石3と接していない側に非常にわずかでも動くことができる程度には、距離をあけるようにする、または、両端とも距離を開ける。
【0053】
また、貫通ピン21及び孔20は、主磁石2・補助磁石3にわたるような柱状であればよく、円柱に限らず、角柱であってもよい。また、図6に示すように、中央に設けた貫通ピン21及び孔20に替えて、両側面に溝30を設け、この溝30に係合部材31を嵌め込んでもよい。この係合部材31も、安定領域に戻ろうとするときの溝30の変位および剪断力に係合部材31が抗することにより係合するが、さらに脱落を防止するため、図7に示すように、断面が台形のくさび状の溝40に係合部材41を嵌め込んでもよい。なお、円の断面の一部が欠けて内部側が膨らんだ形状の溝であってもよい。
【0054】
<磁場強度確認結果>
ここで、貫通ピン21の有無のハルバッハ配列磁石及び従来配列磁石の3パターンについて、静磁場シミュレーションを行った。なお、貫通ピン21は、図5に示したものと同じである。実用センサの寸法の一例に基づき、20mm(幅)×30mm(長さ)×40mm(高さ)を5個並べた磁石とし、幅100mmおよびその周辺領域を解析領域として設定した。本実施形態として、磁石の中央部に直径5mmの孔20をあけ、直径4.5mmのSUS304の丸棒を貫通ピン21として挿入したモデルを作成した。反対側には、板厚3mmの鋼板(SS400)を磁気ヨークとして取り付けた。磁石特性として、同一の値(カタログ値から採用すればよい。例えば950kA/m)を設定した。その他の電気、磁気特性については、シミュレーションにプリセットされている各種材料の特性、空気特性を設定した。磁場強度、分布について解析する。解析は、有限要素法によった。
【0055】
図8は、比較結果を示す図である。なお、電磁超音波発生に特に重要な成分、縦波に利用する、センサ表面に平行(磁石幅方向)な成分を、表面から5mmの位置で取得した。この位置は、測定対象の表面位置に相当し、電磁超音波センサの感度に直結する値である。
【0056】
図6に示すように、従来配列磁石(S/N配列)に比較し、ハルバッハ配列磁石とすることにより、磁場強度が大幅に向上し、かつ均一になっていることがわかる。また、貫通ピン21の有無に関しては、ほとんど差がない(1%程度)ことが分かった。
【0057】
<製作と評価>
製作したハルバッハ配列磁石は、20(幅)×30(長さ)×40(高さ)を5個並べた磁石とし、主磁石3個、補助磁石2個の構成とした。30mm×40mmの面の中央に、Φ5mmの孔20をあけた。貫通ピン21はSUS304とし、径はΦ4.5mmを選択した。長さは磁石の横幅と同じ、100mmとした(20mm×5=100mm)。
【0058】
まず、磁石を互い違いに並べ、その後万力で締め込み、孔位置が一致したところで貫通ピン21を挿入する。製造時の誤差により多少干渉することがあったが、締め込みを少し緩め、孔位置を調整することで貫通させることができた。貫通ピン21の挿入後には、万力を外し、センサ面にコイルを取付け、電磁超音波センサを構成する。センサコイルはフレキシブルプリント基板で製作し、厚みは約0.5mmのシート状であり、直接磁石の表面に貼り付けた。
【0059】
電磁超音波センサとして使用したときの感度特性は、従来のハルバッハ配列と従来配列(S/N配列)とを対比例とした。なお、磁石以外の送受信コイルおよび電磁超音波の送受信に利用する機器はすべて同一の物である。
【0060】
コイルは送受信ともフレキシブルプリント基板のパターンで作成したレーストラック型のコイルを用いた。磁石の表面に直接貼り付け、大電流の高周波パルスを印可する。受信側もフレキシブルプリント基板で製作し、プリアンプにより増幅後、PCに取り込んだ。超音波伝搬には、250mm厚のアルミブロックを用いた。送信用センサと受信用センサでアルミブロックを挟み、電磁超音波を送受信し、透過信号の振幅を取得した。また表面からの距離を変化し、センサリフトオフとして変化を見た。
【0061】
結果は、ハルバッハ配列の採用により感度(信号振幅)が2倍向上した。また、リフトオフ特性はいずれの方式においてもほぼ同じ傾きを有しており、ハルバッハ配列の採用により送受信感度が向上した。また、貫通ピン21によるピン止めにより差が生じていなかった。
【0062】
寿命評価は、ピン止めハルバッハ配列を用いて試作したセンサを、実際の連続鋳造スラブでの測定に供して、測定した。測定対象は、鋳造スラブ(表面温度約900°、リフトオフ5mm)とし、水冷ジャケットに入れ、内部通水による水冷を行った。前面パネルとの間隔は約1mmで、2リットル/分の水を常時還流している。
【0063】
貫通ピン21無しの従来のハルバッハ配列型センサは、数回の測定後に前面パネルのふくらみ・変形と、磁石部の外れ及び磁石の飛び出し、コイルの焼損が生じた。これに対し、ピン止め型のハルバッハ配列では、20回の鋳造での測定を経てもパネルの変形は生じず、健全を保っている。感度を維持したままセンサ寿命を大幅に伸ばすことができ、信頼性向上と保守費用の低廉化にも寄与する。
【0064】
本実施の形態では、ハルバッハ配列を構成する磁石の中央部に孔をあけ、その孔に非磁性、金属製の貫通ピンを通すことにより、接着剤や枠を用いずとも、ハルバッハ配列の磁石を固定することができ、接着剤を用いないため、熱負荷、あるいは水冷環境下であっても、熱膨張および/または収縮してもずれることなく、信頼性とセンサ寿命を確保ことができる。また、測定面に部材・構造もないため、リフトオフも大きくならず、電磁超音波発生におけるハルバッハ配列の感度をそのまま維持することができる。
【0065】
<計測装置、欠陥計測装置、凝固位置計測装置>
上記の実施形態に係る電磁超音波センサは、例えば、金属材料の表層および/または内部に対するいろいろな計測装置に適用することができる。そして、これら計測装置は、上記の電磁超音波センサを用いて、金属材料の表層および/または内部に対する特定の物理量の計測を行うことができる。電磁超音波センサを活用した計測装置としては、より具体的には、欠陥計測装置または凝固位置計測装置に適用することができる。この欠陥計測装置は、上記の電磁超音波センサを用いて金属材料の表層および/または内部の欠陥計測を行うことができる。または、この凝固位置計測装置は、上記の電磁超音波センサを用いて金属材料の凝固位置の計測を行うことができる。また、この計測装置は、金属材料の材質計測(機械的特性、電磁気的特性などの計測)を行うことができる。特に従来の超音波計測装置と異なり、非接触での計測が可能という利点を生かして、高温/温度制御下での材質計測を行うことができる。
【0066】
<計測方法、欠陥計測方法、凝固位置計測方法>
上記の実施形態に係る電磁超音波センサは、例えば、金属材料の表層および/または内部に対するいろいろな計測方法に適用することができる。そして、これら計測方法は、上記の電磁超音波センサを用いて、金属材料の表層および/または内部に対する特定の物理量の計測を行うことができる。電磁超音波センサを活用した計測方法としては、より具体的には、欠陥計測方法または凝固位置計測方法に適用することができる。この欠陥計測方法は、上記の電磁超音波センサを用いて金属材料の表層および/または内部の欠陥計測を行うことができる。または、この凝固位置計測方法は、上記の電磁超音波センサを用いて金属材料の凝固位置の計測を行うことができる。また、この計測方法は、金属材料の材質計測(機械的特性、電磁気的特性などの計測)を行うことができる。特に従来の超音波による計測方法と異なり、非接触での計測が可能という利点を生かして、高温/温度制御下での材質計測を行うことができる。
【0067】
<金属材料の製造方法 その1>
上記の計測方法は、例えば金属材料の製造方法に適用することも可能である。そして、金属材料の製造方法では、計測方法を用いて特定の物理量を計測しながら金属材料を製造することができる。
【0068】
上記の欠陥計測方法は、例えば金属材料の製造方法に適用することも可能である。そして、金属材料の製造方法では、欠陥計測方法を用いて欠陥を計測しながら金属材料を製造することができる。
【0069】
上記の凝固位置計測方法は、例えば金属材料の製造方法に適用することも可能である。そして、金属材料の製造方法では、凝固位置計測方法を用いて金属材料(例えば、金属材料を鋳造して製造する鋳片)の凝固位置を測定しながら金属材料を製造することができる。
【0070】
<金属材料の品質管理方法 その1>
上記の計測方法は、例えば金属材料の品質管理方法に適用することも可能である。そして、金属材料の品質管理方法では、計測方法を用いて特定の物理量を計測しながら金属材料の品質を管理することができる。
【0071】
上記の欠陥計測方法は、例えば金属材料の品質管理方法に適用することも可能である。そして、金属材料の品質管理方法では、欠陥計測方法を用いて欠陥を計測しながら金属材料の品質を管理することができる。
【0072】
上記の凝固位置計測方法は、例えば金属材料の品質管理方法に適用することも可能である。そして、金属材料の品質管理方法では、凝固位置計測方法を用いて金属材料(例えば、金属材料を鋳造して製造する鋳片)の凝固位置を計測しながら金属材料の品質を管理することができる。
【0073】
<金属材料の製造設備、鋳造設備>
上記の計測装置は、例えば金属材料の製造設備に適用することも可能である。そして、金属材料の製造設備では、上記計測装置を用いて特定の物理量を計測しながら金属材料を製造することができる。
【0074】
上記の欠陥計測装置は、例えば金属材料の製造設備に適用することも可能である。そして、金属材料の製造設備では、上記の欠陥計測装置により金属材料の表層および/または内部の欠陥を計測しながら金属材料を製造することができる。
【0075】
上記の凝固位置計測装置は、例えば金属材料の製造設備に適用することも可能である。そして、金属材料の製造設備では、上記の凝固位置計測装置により金属材料(例えば、金属材料を鋳造して製造する鋳片)の凝固位置を計測しながら金属材料を製造することができる。
【0076】
また、上記の凝固位置計測装置は、例えば連続鋳造設備などの鋳造設備に適用することも可能である。そして、上記鋳造設備では、上記の電磁超音波センサを用いて鋳片の凝固位置を計測しながら鋳片を製造することができる。または、上記の電磁超音波センサを用いて鋳片の凝固位置を計測することで鋳片の品質管理を行うことができる。ここで鋳造設備とは、金属材料を鋳造するための装置が、1台だけの場合または複数台の装置が組み合わさった場合の両方を示す。
【0077】
さらに、上記鋳造設備を備えた金属材料の製造設備では、上記鋳造設備により製造した鋳片から金属材料を製造することができる。
【0078】
<金属材料の製造方法 その2>
上記の鋳造設備は、例えば金属材料の製造方法に適用することも可能である。そして、金属材料の製造方法では、上記凝固位置計測装置を備えた上記鋳造設備を用いて凝固位置を計測しながら金属材料を製造することができる。
【0079】
<金属材料の品質管理方法 その2>
上記の鋳造設備は、例えば金属材料の品質管理方法に適用することも可能である。そして、金属材料の品質管理方法では、上記凝固位置計測装置を備えた上記鋳造設備を用いて鋳片を製造中に金属材料の品質を管理することができる。
【0080】
以上説明した実施形態に係るハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置測定方法及び鋳造設備によれば、接着剤や枠を用いずとも、固定治具によってハルバッハ配列磁石を固定することができるため、繰り返される熱負荷にあっても、あるいは水冷環境下であっても、配列される各磁石の固定を可能とし、信頼性とセンサ寿命を確保することができる。
【0081】
なお、本発明においては、「金属材料」として「鋼材」である場合において、上記効果を確実に得ることができ最も好ましい。また、「鋳造設備」として「連続鋳造設備」とした場合が、上記効果を最大限に得ることができ、最も好ましい。
【0082】
なお、ハルバッハ配列磁石は、ハルバッハ配列磁石だけが存在し、その全ての磁石を固定冶具で固定するようにしてもよい。また、ハルバッハ配列磁石は、ハルバッハ配列磁石に他の磁石が結合され、その全ての磁石を固定冶具で固定するようにしてもよいし、ハルバッハ配列磁石だけに対し固定冶具で固定するようにしてもよい。
【0083】
以上、本発明に係るハルバッハ配列磁石、電磁超音波センサ、欠陥計測装置、欠陥計測方法、金属材料の製造方法、金属材料の品質管理方法、金属材料の製造設備、凝固位置計測装置、凝固位置計測方法及び鋳造設備について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1,100 電磁超音波センサ
2 主磁石
3 補助磁石
4 ヨーク
5 測定対象
10 ハルバッハ配列磁石
11 縦波コイル
12 横波コイル
20 孔
21 貫通ピン
30,40 溝
31,41 係合部材
110 従来配列磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8