(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】災害調査支援装置、災害調査支援システム、災害調査支援方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01D 21/00 20060101AFI20241008BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01D21/00 M
G01W1/00 Z
(21)【出願番号】P 2023532872
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025290
(87)【国際公開番号】W WO2023281572
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 千里
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛道
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-110557(JP,A)
【文献】特開2011-209780(JP,A)
【文献】特開2020-112945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/00
G01W 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する範囲判定手段と、
前記災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する調査領域抽出手段と、
画像取得装置が前記調査領域において取得した画像を取得する画像取得手段と、
取得した前記画像を用いて前記調査領域における第1の水位を判定する水位判定手段と
を含む災害調査支援装置。
【請求項2】
前記調査領域抽出手段が、地図情報を用いて、前記調査領域を抽出する
請求項1に記載の災害調査支援装置。
【請求項3】
前記調査領域抽出手段が、車両が通行できる前記調査領域を抽出する
請求項1又は2に記載の災害調査支援装置。
【請求項4】
前記調査領域抽出手段が、所定の施設に関連する前記調査領域を抽出する
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【請求項5】
前記施設が、水位観測所、及び、水門の少なくともいずれか一つを含む
請求項4に記載の災害調査支援装置。
【請求項6】
前記調査領域抽出手段が、地表の種類を用いて前記調査領域を抽出する
請求項1ないし5のいずれが1項に記載の災害調査支援装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項に記載の災害調査支援装置と、
災害調査支援装置に前記測定結果を出力する前記地表測定装置と、
災害調査支援装置に前記画像を出力する前記画像取得装置と
災害調査支援装置が判定した前記第1の水位を表示する表示装置と
を含む災害調査支援システム。
【請求項8】
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定し、
前記災害範囲に基づいて、調査領域を抽出し、
画像取得装置が前記調査領域において取得した画像を取得し、
取得した前記画像を用いて前記調査領域における第1の水位を判定する
災害調査支援方法。
【請求項9】
災害調査支援装置が、
請求項8に記載の災害調査支援方法を実行し、
前記地表測定装置が、前記災害調査支援装置に前記測定結果を出力し、
前記画像取得装置が、前記災害調査支援装置に前記画像を出力し、
表示装置が、前記災害調査支援装置が判定した前記第1の水位を表示する
災害調査支援方法。
【請求項10】
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する処理と、
前記災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する処理と、
画像取得装置が前記調査領域において取得した画像を取得する処理と、
取得した前記画像を用いて前記調査領域における第1の水位を判定する処理と
をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害の調査の支援に関し、特に、水害などを伴う災害の調査の支援に関する。
【背景技術】
【0002】
災害状況の把握として、合成開口レーダーが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の災害対策支援方法は、合成開口レーダーから取得したレーダー画像データを用いて災害状況を把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
災害が発生した場合、災害状況の調査が、実施される。災害状況の調査の範囲は、一般的にかなり広い範囲となる。そこで、災害状況の調査を支援する技術が望まれている。特許文献1に記載の技術は、合成開口レーダーを用いる技術である。例えば、洪水などの水害の影響を調査する際、合成開口レーダーを用いた判定の精度は、数m程度である。しかし、洪水の水位の調査の精度としては、数cmから数十cm程度の精度が望ましい場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決し、災害状況の調査の精度を向上する災害調査支援装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態における災害調査支援装置は、
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する範囲判定手段と、
災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する調査領域抽出手段と、
画像取得装置が調査領域において取得した画像を取得する画像取得手段と、
取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する水位判定手段と
を含む。
【0007】
本発明の一形態における災害調査支援システムは、
上記の災害調査支援装置と、
災害調査支援装置に測定結果を出力する地表測定装置と、
災害調査支援装置に画像を出力する画像取得装置と
災害調査支援装置が判定した第1の水位を表示する表示装置と
を含む。
【0008】
本発明の一形態における情報処理方法は、
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定し、
災害範囲に基づいて、調査領域を抽出し、
画像取得装置が調査領域において取得した画像を取得し、
取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する。
【0009】
あるいは、本発明の一形態における情報処理方法は、
災害調査支援装置が、上記の災害調査支援方法を実行し、
地表測定装置が、災害調査支援装置に測定結果を出力し、
画像取得装置が、災害調査支援装置に画像を出力し、
表示装置が、災害調査支援装置が判定した第1の水位を表示する。
【0010】
本発明の一形態における記録媒体は、
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する処理と、
災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する処理と、
画像取得装置が調査領域において取得した画像を取得する処理と、
取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する処理と
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に基づけば、災害状況の調査の精度を向上するとの効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態にかかる災害調査支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる災害調査支援システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図4】ドライブレコーダーが画像を取得した位置の一例を示す図である。
【
図5】画像取得部が取得する画像の位置の一例を示す図である。
【
図6】痕跡を用いた水位判定の一例を説明するための図である。
【
図8】第1の実施形態にかかる災害調査支援装置の動作の一例を示すフロー図である。
【
図9】災害調査支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態にかかる災害調査支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】第3の実施形態にかかる災害調査支援システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。各図面は、本発明の実施形態を説明するためのものである。ただし、本発明の実施形態は、各図面の記載に限られるわけではない。また、各図面の同様の構成には、同じ番号を付し、その繰り返しの説明を、省略する場合がある。また、以下の説明に用いる図面において、本発明の課題の解決に関係しない部分の構成については、記載を省略し、図示しない場合もある。
【0014】
<用語>
「画像取得装置」とは、所定の撮像装置を備え、構造物(例えば、道路、橋梁、のり枠、堤防、桟橋、護岸、又は、滑走路)及びその周辺に関連する画像を取得する装置である。画像取得装置は、移動体(例えば、車両、無人航空機(ドローン)、又は、人)に搭載又は牽引されて移動する装置(例えば、ドライブレコーダー)でもよく、固定された装置(例えば、固定カメラ)でもよい。画像取得装置として用いられる固定カメラは、撮影方向が固定されたカメラに限らず、ある程度の範囲おいて撮影方向を変更できるカメラでもよい。
【0015】
画像取得装置が取得する「画像」は、構造物を含む画像である。画像は、構造物の周辺を含んでもよい。例えば、画像は、道路及び橋梁などの構造物を走行する車両(例えば、四輪又は二輪の自動車)に搭載されたドライブレコーダーが撮影した道路及び道路の周辺(例えば、標識、他の車両、及び、信号機)を含む画像である。画像は、静止画でもよく、動画のように複数の静止画を含む画像でもよい。あるいは、画像は、前方、左右側方、及び、後方のような複数の方向の画像を含む画像でもよい。なお、複数の方向の画像を含む場合、画像は、一つの画像の中に複数の方向の画像を合成した画像でもよく、複数の方向の画像を含む画像の組でもよい。
【0016】
さらに、画像は、静止画及び動画に加え、画像に関連する情報を含んでもよい。例えば、画像は、画像取得装置に関連する情報(焦点距離、及び、画素数など)、及び、画像の取得に関連する情報(撮影時間、及び、撮影位置など)を含んでもよい(以下、これらをまとめて「画像の取得情報」と呼ぶ)。あるいは、画像は、その画像を取得した画像取得装置を搭載した移動体(例えば、車両)に関連する情報を含んでもよい。例えば、画像は、「移動体の操作情報(例えば、車両のアクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ハンドル、ワイパー、ウインカー、及び、ドアの開閉などの操作情報)」を含んでもよい。あるいは、画像は、その画像の取得作業を行った「作業者が追加した情報(例えば、災害の状況及び災害の痕跡などに対する作業者のコメント)」を含んでもよい。あるいは、画像は、画像の取得における「周辺情報(例えば、天気、温度、湿度、照度、又は、音声)」を含んでもよい。
【0017】
このように、画像は、その画像に関連する情報を含んでもよい。以下、画像(静止画及び動画)を除いた画像に含まれる情報をまとめて「画像に関連する情報」又は「画像関連情報」と呼ぶ。ただし、画像関連情報は、画像とは別の情報として扱われてもよい。例えば、画像と画像関連情報とは、一つの画像ファイルに、画像データとメタデータとして保存されてもよい。ただし、以下の説明では、画像は、その画像に関連する情報(画像関連情報)を含むとして説明する。なお、以下の説明では、画像取得装置の一例として、ドライブレコーダーを用いる。また、移動体の一例として、車両を用いる。
【0018】
後ほど説明するように、各実施形態は、画像取得装置が取得した画像の中で、所定の領域において取得された画像を用いる。そのため、いずれかの構成が、画像取得装置が取得した画像から所定の領域の画像を選択する。ただし、各実施形態において、画像を選択する構成は、限定されない。例えば、画像取得装置が、出力する画像の領域を取得し、その領域の画像を出力してもよい。あるいは、所定のシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)が、画像を選択してもよい。例えば、所定のクラウドコンピューティングシステムに含まれる保存装置が、画像取得装置から画像を取得して保存する。そして、そのシステムに含まれる出力装置が、所定の領域の画像を選択して出力してもよい。あるいは、各実施形態の災害調査支援装置が、取得した画像の中から所定の領域の画像を選択してもよい。以下の説明では、これらの場合をまとまて、各実施形態において、災害調査支援装置は、画像取得装置が所定の領域において取得した画像を取得するとして説明する。
【0019】
そして、各実施形態は、画像取得装置から取得した画像を用いて、災害に関連する水位を判定する。例えば、各実施形態は、洪水及び高潮など、水に関連する災害(水害)の水位を判定する。ただし、判定する水位は、洪水及び高潮などの水位に限定されない。例えば、各実施形態は、台風、又は、集中豪雨などにおいて発生する浸水及び冠水の水位を判定してもよい。つまり、災害は、台風及び集中豪雨など降雨を伴う災害を含む。あるいは、災害は、土石流のような水以外の物体を含む災害でもよい。あるいは、災害は、ダム又は堤防の決壊など、構造物の破壊に伴う災害を含む。あるいは、災害は、不適切な水門の開放など、人災を含む。以下の説明では、災害の一例として洪水を用いる。つまり、以下の説明では、画像取得装置が取得した画像は、洪水の水位の判定に用いられる。そのため、少なくとの一部の画像は、洪水の水面、及び、洪水の痕跡の少なくとも一方を含む。痕跡を含む画像を用いる場合、各実施形態は、洪水の痕跡として、利用者などが決定した所定の痕跡が用いればよい。例えば、洪水の痕跡は、塀、電信柱、郵便ポスト、及び、ビルの壁などの少なくとも一つに残された泥、ゴミ、及び、草などの少なくとも一つである。あるいは、洪水の痕跡は、土手などに残された流木、倒れた草、及び、土砂が流出した跡などの少なくとも一つでもよい。ただし、これは、災害を洪水に限定するものではない。例えば、以下の説明における洪水の範囲は、災害範囲の一例である。
【0020】
なお、構造物の側面は、水平面に対して垂直に構築された平面及び曲面の少なくとも一方(以下、「垂直面」と呼ぶ)がある。なお、垂直面とは、幾何学的に厳密な意味での垂直となっている面に限らず、一般的な建物の壁など、構造物として垂直方向の面として認識される面を含む。例えば、垂直面は、一般的なビルなどにおける公差の範囲に入っている柱や壁などの面である。あるいは、垂直面は、テーパ柱の側面など、垂直に対して所定の角度となっているが、一般的には、ほぼ垂直と判断される面を含む。
【0021】
これに対し、車いす用のスロープのように、構造物の面としては、垂直面に対してある程度の角度で斜めとなっている平面又は曲面の少なくとも一方(以下、「斜面」と呼ぶ)がある。斜面の水位は、垂直面の水位に比べ、洪水の流れの向きと斜面の向きと関係の影響を受けて変化しやすい。例えば、洪水が斜面に沿って流れている場合の水位は、概ね、洪水の水位となっている。しかし、洪水が斜面に向かって流れてきた場合、洪水は、洪水の水位より高い所まで到達してしまう。そのため、洪水が斜面に向かって流れてきた場合の水位は、洪水の水位より、高くなりやすい。また、高くなる程度は、一定ではなく、洪水の流速に対応して変化する。このように、斜面は、垂直面に対して、水位の誤差が発生しやすい。
【0022】
そのため、水位の判定に用いる痕跡は、斜面に残った痕跡より、垂直面に残った痕跡の方が望ましい。そこで、各実施形態が用いる画像は、垂直面、又は、垂直面を有する構造物(コンクリートの壁、電信柱、郵便ポスト、及び、一般的なビルディングなど)を含む画像であることが望ましい。ただし、例えば、街路樹、又は、樹木を用いた垣根においても、洪水の痕跡が残る場合がある。そこで、各実施形態は、人工の構造物に限らず、所定の樹木を含む画像を用いてもよい。ただし、以下の説明では、説明の便宜のため、所定の樹木を含む画像を含め、所定の構造物を含む画像と呼ぶ。
【0023】
所定の領域の画像を選択する場合と同様に、垂直面、又は、所定の構造物を含む画像を選択する構成は、限定されない。例えば、画像取得装置が、取得した画像から、垂直面、又は、所定の構造物を含む画像を選択して出力してもよい。あるいは、所定のクラウドコンピューティングシステムが画像を選択してもよい。例えば、所定のクラウドコンピューティングシステムに含まれる保存装置が、画像取得装置から画像を取得して保存する。そして、そのシステムに含まれる出力装置が、垂直面、又は、所定の構造物を含む画像を選択して出力してもよい。あるいは、各実施形態の災害調査支援装置が、垂直面、又は、所定の構造物を含む画像を選択してもよい。
【0024】
「合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar(以下、「SAR」と呼ぶ))」とは、飛翔体が移動しながら電波を送信及び受信して、大きな開口を持ったアンテナと等価な画像を得るレーダーである。レーダー観測における分解能は、アンテナを大きくするほど向上する。しかし、人工衛星などに搭載できるアンテナの大きさには限りがある。そこで、SARは、実開口長が小さなアンテナを用いて、飛翔しながら電波を送信及び受信して(つまり、人工的に「開口」を「合成」して)、進行方向の分解能を高めている(つまり、仮想的に大きなアンテナを構成している)。なお、飛翔体は、SARを搭載する飛翔体であれば、任意の飛翔体でよい。例えば、飛翔体は、人工衛星、航空機、又は、無人航空機(ドローン)である。
【0025】
SARは、測定結果として画像(以下、「SAR画像」と呼ぶ)を出力する。各実施形態は、SAR画像を用いて「地表の変化(以下、単に「地表変化」と呼ぶ場合もある)」を分析できる。例えば、各実施形態は、地表の変化として、同じ場所における異なる時間の2枚のSAR画像を用いて、2つの時間の間における地表の高さの変化を分析できる。あるいは、SARは、地表の変化として、地表の強度の変化を分析できる。なお、SARは、高さの変化及び強度の変化を分析する方法として、任意の方法を用いてよい。例えば、SARは、変化抽出、時系列干渉解析、及び、コヒーレント変化抽出などの技術を用いてもよい。あるいは、SARは、過去のSAR画像などを所定のモデルに適用した機械学習を実行し、機械学習の実行の結果として生成した分析モデルにSAR画像を適用して、地表の変化を分析してもよい。地表の変化の分析は、地表の高さの変化及び地表の強度の変化の分析に限られず、他の分析(例えば、地表の変化の要因の分析又は地表の変化に基づくリスクの大きさの分析など)も含んでもよい。このように、SARは、地表の変化を分析するための測定結果(例えば、SAR画像)を取得するために、地表を測定する装置である。
【0026】
ただし、各実施形態において、地表の変化を分析するための測定結果を取得する装置、つまり、地表を測定する装置は、SARに限定されない。地表を測定する装置としては、例えば、人工衛星、航空機、及び、無人航空機(ドローン)のいずれかに搭載された光学センサ、又は、レーザー測定器がある。各実施形態は、上記のような地表を測定する装置又はシステムの測定結果を用いて、地表の変化を分析してもよい。以下の説明では、これら地表を測定する装置又はシステムをまとめて「地表測定装置」と呼ぶ。
【0027】
地表測定装置には、測定結果を用いて「地表の変化」を分析し、分析の結果である「地表の変化」を出力する装置がある。つまり、地表測定装置は、測定結果を出力する場合もあり、分析結果である地表の変化を出力する場合もある。そこで、以下の説明では説明の煩雑さを避けるため、特に区別して説明する場合を除き、上記の場合をまとめ、災害調査支援装置は、地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表の変化を取得するとして説明する。なお、以下の説明では、地表測定装置及び測定結果の一例として、SAR及びSAR画像を用いる。
【0028】
SARには、複数の周波数(マルチスペクトル)を用いた測定結果を取得できる装置がある。マルチスペクトルを用いた測定結果を用いると、地表の変化に限らず、地表の種類を分析することができる。そこで、各実施形態は、マルチスペクトルを用いたSARの測定結果を用いて地表の種類を分析し、分析した地表の種類を用いてもよい。なお、地表の種類は、使用する周波数に対応して決定される。例えば、地表の種類は、水面、泥土、ゴミ、乾燥土壌、草原、森林、農地、及び、積雪の少なくとも一つを含む。
【0029】
なお、画像取得装置が取得する画像と、地表測定装置が取得する画像とを区別する場合、画像取得装置が取得した画像を「第1の画像」と呼び、地表測定装置が取得した画像を「第2の画像」と呼ぶ。例えば、第1の画像は、垂直面を含む構造物(コンクリートの塀、電信柱、郵便ポスト、及び、一般的なビルディングの壁など)を含む画像である。言い換えると、第1の画像は、例えば、道路を走行する車両に搭載されたドライブレコーダーが撮影した画像のように、水平方向又は水平方向に近い角度を向いた装置が取得した画像である。つまり、第1の画像は、概ね垂直面に対向した装置が取得した画像である。
【0030】
一方、第2の画像は、ある程度の高度から地表を撮影又は測定した画像である。そのため、第2の画像は、例えば、人工衛星に搭載されたSARが取得したSAR画像のような、地表に対して垂直方向又は垂直方向に近い角度を向いた装置が取得又は測定した画像である。つまり、第2の画像は、概ね水平面に対向した装置が取得又は測定した画像である。
【0031】
言い換えると、第1の画像は、少なくとも、地表に対して垂直となっている面(垂直面)を、判定可能に含む画像である。これに対し、第2の画像は、主として、地表を含む画像である。なお、第2の画像は、地表として、道路、農地、及び、河川などの地表面に限らず、屋上又は屋根のような建物などの上部を含んでもよい。このように、第1の画像は、第2の画像とは、撮影方向が異なる画像である。例えば、ドローンに搭載された画像取得装置が取得する第1の画像は、ドローンに搭載された地表測定装置が取得する第2の画像とは、画像の取得方向が異なる。具体的には、例えば、画像取得装置は、水平方向を撮影するように、ドローンに搭載される。一方、地表測定装置は、垂直方向(地表の方向)を測定又は撮影するように、ドローンに搭載される。
【0032】
SARなどの地表測定装置の測定結果(第2の画像)は、ある程度の広い範囲を含む。そのため、SARなどの地表測定装置の測定結果(第2の画像)を用いた分析は、ある程度の広い範囲の地表の変化を取得できる。ただし、SARが取得した測定結果を用いた分析の結果(地表の変化)の精度は、数m程度である。洪水などの災害の水位の精度としては、数cmから十数cm程度であること望ましい。
【0033】
例えば、洪水の場合、洪水の水位の調査が実施される。洪水の水位の調査の精度としては、数cmから数十cm程度の精度が望ましい。しかし、合成開口レーダーを用いて水位を判定する場合、水位の精度は、数m程度である。このように、合成開口レーダーの測定は、洪水の水位の判定としては、必ずしも必要とする精度を実現できない場合がある。そのため、現状、地方自治体の職員などが、洪水の被災地域に赴き、洪水の水位を調査している。例えば、洪水が引いた後、地方自治体の職員などが、洪水の痕跡(例えば、電信柱及び壁に残った泥の跡、又は、付着した草)を調査し、痕跡の位置から洪水の水位を判定している。そのため、地方自治体の職員などの人手による調査は、職員などに対して、かなりの負担となっている。また、風雨及び風浪などは、洪水の痕跡を不明確にする。そのため、痕跡調査は、洪水後、速やかに実施する必要がある。また、洪水時の水位の判定に用いられる痕跡は、複数の種類があり、残される位置も洪水毎に異なる。そのため、洪水の調査の担当者には、ある程度の調査の経験が必要である。また、人の判断は、精度のばらつきが発生しやすい。そこで、洪水などの災害の水位の判定を支援する技術が望まれている。
【0034】
これに対し、ドライブレコーダーから取得した画像(第1の画像)を用いる判定の精度は、数cmから数十cm程度の精度である。しかし、ドライブレコーダーが取得する画像(第1の画像)は、SARの測定結果(第2の画像)に対して、かなり狭い範囲の画像である。そのため、ドライブレコーダーを用いて自治体などの管理対象となる地域の全ての位置において画像を取得する場合、画像を取得するために多くの時間と工数とが必要となる。
【0035】
例えば、ドライブレコーダーが取得する画像を用いて所定の地域の災害の範囲を特定する場合、ドライブレコーダーを用いてその地域全体における画像を取得することが必要となる。このような作業は、かなり多くの時間と工数とが必要となる。また、洪水の痕跡調査は、速やかに実行することが望ましい。そのため、洪水の水位の調査としてドライブレコーダーが取得する画像を用いる場合、画像を取得する領域の絞り込み、言い換えると、水位の調査として有効な領域(以下、「調査領域」と呼ぶ)の提供が望まれている。なお、判定する洪水の水位としては、複数の水位が想定される。例えば、判定する洪水の水位としては、調査時点での水位(例えば、洪水時に調査した水位)、及び、調査時点までの最高水位(例えば、洪水が引いた後に痕跡などを用いて判定する水位)がある。
【0036】
そこで、本発明における各実施形態は、以下で説明するように、地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表の変化と、画像取得装置が取得した画像とを用いて、災害(例えば、洪水)の水位を判定する。すなわち、本発明における各実施形態は、災害状況の調査の精度を向上する。あるいは、本発明における各実施形態は、災害状況の調査における工数及び時間の少なくとも一方を削減することができる。
【0037】
<第1の実施形態>
図面を参照して、本発明における第1の実施形態を説明する。
図1は、第1の実施形態にかかる災害調査支援システム80の構成の一例を示すブロック図である。災害調査支援システム80は、災害調査支援装置10と、SAR20と、ドライブレコーダー30と、表示装置40と、情報提供装置50とを含む。
図1における各構成の数は、一例であり、
図1に示される数に限られない。例えば、災害調査支援システム80は、複数のドライブレコーダー30を含んでもよい。
【0038】
SAR20は、災害調査支援装置10に、測定結果(第2の画像)又は地表の変化を出力する。例えば、SAR20は、災害調査支援装置10に、測定結果であるSAR画像を出力する。この場合、災害調査支援装置10が、SAR20から取得したSAR画像を用いて、「地表の変化」を分析すればよい。なお、災害調査支援装置10がSAR画像を取得する場合、災害調査支援装置10は、SAR20に対して、SAR画像の範囲(例えば、撮像範囲、又は、測定範囲)を出力してもよい。この場合、SAR20は、取得した範囲のSAR画像を、災害調査支援装置10に出力すればよい。
【0039】
あるいは、SAR20は、災害調査支援装置10に、SAR画像を分析した結果である「地表の変化」を出力してもよい。災害調査支援装置10が地表の変化を取得する場合、災害調査支援装置10は、SAR20に対して、地表の変化の範囲(例えば、分析範囲)を出力してもよい。この場合、SAR20は、取得した範囲の地表の変化を出力すればよい。なお、SAR20は、マルチスペクトルを用いて地表を測定してもよい。この場合、SAR20は、マルチスペクトルの測定結果を出力してもよく、マルチスペクトルの測定結果を用いて分析した地表の種類を出力してもよい。
【0040】
ドライブレコーダー30は、災害調査支援装置10に、画像(第1の画像)を出力する。ドライブレコーダー30は、例えば、車両に搭載されて、車両が走行する道路などの画像を取得し、取得した画像を出力する。ただし、ドライブレコーダー30の移動手段は、車両に限定されない。例えば、ドライブレコーダー30は、車両以外の移動体(例えば、ドローン)に搭載されてもよい。あるいは、人などが、ドライブレコーダー30を持ち運んでもよい。あるいは、ドライブレコーダー30は、固定カメラのような移動しない装置でもよい。
【0041】
なお、災害調査支援システム80は、1つに限らず、複数のドライブレコーダー30を含んでもよい。この場合、各ドライブレコーダー30の移動手段は、少なくとも一部が異なっていてもよい。例えば、災害調査支援システム80は、車両に搭載されたドライブレコーダー30と、所定の位置に固定されたドライブレコーダー30とを含んでもよい。
【0042】
後ほど説明するように、災害調査支援装置10は、ドライブレコーダー30が取得した画像において、調査領域の画像を用いる。ただし、既に説明しているように、調査領域の画像を選択する構成は、限定されない。例えば、ドライブレコーダー30が、災害調査支援装置10から調査領域を取得し、取得した調査領域の画像を出力してもよい。あるいは、図示しない装置又はシステムが、ドライブレコーダー30が取得した画像を保存し、保存した画像から調査領域の画像を選択し、選択した画像を災害調査支援装置10に出力してもよい。あるいは、災害調査支援装置10が、取得した画像から調査領域の画像を選択してもよい。以下の説明では、これらをまとめて、災害調査支援装置10はドライブレコーダー30が調査領域において取得した画像を取得するとして説明する。
【0043】
表示装置40は、災害調査支援装置10が出力する水位を表示する。表示装置40は、水位を表示する装置であれば、任意の装置でよい。例えば、表示装置40は、地方自治体の災害支援システムに含まれる表示器でもよい。また、表示装置40の設置位置は、設置可能な任意の場所でよい。さらに、表示装置40は、いずれかの装置に含まれる装置でもよく、他の装置を含む装置でもよい。例えば、表示装置40は、災害調査支援装置10に含まれてもよい。あるいは、表示装置40は、災害調査支援装置10を含む装置でもよい。
【0044】
情報提供装置50は、災害調査支援装置10からの要求された情報を提供する。情報提供装置50は、災害調査支援装置10から要求された情報を提供する装置であれば、任意の装置でよい。災害調査支援装置10の利用者などが、災害調査支援装置10における水位の判定に必要な情報を考慮して、情報提供装置50及び情報提供装置50から取得する情報を決定すればよい。例えば、情報提供装置50は、災害調査支援装置10に道路などの地図情報を提供してもよい。あるいは、情報提供装置50は、災害調査支援装置10に天気に関する情報を提供してもよい。あるいは、情報提供装置50は、災害調査支援装置10に、所定の構造物(例えば、水位観測所)の位置を提供してもよい。
【0045】
災害調査支援装置10は、SAR20からSAR画像を取得し、取得したSAR画像を用いて地表の変化を分析する。あるいは、災害調査支援装置10は、SAR20から、SAR20が取得したSAR画像を分析した結果である地表の変化を取得する。つまり、分析の主体を異なるが、災害調査支援装置10は、SAR20の測定結果(SAR画像)を用いた分析の結果である地表の変化を取得する。そして、災害調査支援装置10は、取得した地表の変化を用いて、災害範囲(例えば、洪水の範囲)を判定する。そして、災害調査支援装置10は、災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する。そして、災害調査支援装置10は、ドライブレコーダー30が調査領域において取得した画像を取得する。そして、災害調査支援装置10は、取得した画像を用いて、調査領域における水位を判定する。そして、災害調査支援装置10は、判定した水位を出力する。
【0046】
図2は、第1の実施形態にかかる災害調査支援システム80の構成の一例を示す概念図である。
図2の災害調査支援システム80は、災害調査支援装置10の一例としてコンピュータ810、SAR20の一例として人工衛星と地上局とを含むSARシステム820、及び、ドライブレコーダー30の一例としてドライブレコーダー830を含む。さらに、
図2の災害調査支援システム80は、表示装置40の一例として端末装置840を含む。さらに、
図2の災害調査支援システム80は、ドライブレコーダー830を搭載して移動する移動体の一例として車両850を含む。さらに、
図2の災害調査支援システム80は、各装置及びシステムを接続する通信路として、ネットワーク880を含む。ネットワーク880は、各装置及びシステムを相互に接続する通信路である。ネットワーク880は、各装置及びシステムを接続できれば、特に制限はない。例えば、ネットワーク880は、インターネット、公衆電話回線、又は、それらの組合せでもよい。
【0047】
図2に含まれる構成の数は、一例であり、
図2に示されている数に限られない。例えば、災害調査支援システム80は、1つ、2つ、又は、4つ以上のドライブレコーダー830を含んでもよい。あるいは、少なくとも一部のドライブレコーダー830は、車両850に搭載されていなくてもよい。例えば、災害調査支援システム80は、ドライブレコーダー830として固定カメラを含んでもよい。なお、
図2は、理解を容易にするため、ドライブレコーダー830を、車両850の外に表示している。ただし、ドライブレコーダー830は、車両850の内部に搭載されてもよい。
【0048】
SARシステム820は、コンピュータ810に、人工衛星を用いて取得したSAR画像を出力する。コンピュータ810は、SARシステム820からSAR画像を取得し、取得したSAR画像を用いて地表の変化を分析する。ただし、コンピュータ810は、SARシステム820から地表の変化を取得してもよい。つまり、コンピュータ810は、SARシステム820が取得したSAR画像を用いた分析の結果である地表の変化を取得する。そして、コンピュータ810は、地表の変化を用いて、調査領域を判定する。
【0049】
車両850は、ドライブレコーダー830を搭載して道路及び橋梁などの構造物を走行する。ドライブレコーダー830は、車両850に搭載され、車両850が走行する道路及び橋梁などの画像を取得する。そして、コンピュータ810は、ドライブレコーダー830から調査領域の画像を取得する。なお、既に説明している通り、ドライブレコーダー830が取得した画像の中から調査領域の画像を選択する構成は、限定されない。例えば、ドライブレコーダー830が、コンピュータ810から調査領域を取得し、取得した調査領域の画像を選択して、コンピュータ810に出力してもよい。あるいは、図示しない装置が、調査領域の画像を選択してもよい。あるいは、コンピュータ810が、取得した画像の中から、調査領域の画像を選択してもよい。そして、コンピュータ810は、調査領域の画像を用いて、水位を判定する。そして、コンピュータ810は、端末装置840に、判定した水位を出力する。端末装置840は、コンピュータ810から取得した水位を表示する。
【0050】
なお、災害調査支援システム80に含まれるコンピュータ810、SARシステム820、ドライブレコーダー830、端末装置840、及び、車両850は、特に制限などはない。コンピュータ810、SARシステム820、ドライブレコーダー830、端末装置840、及び、車両850としては、一般的に利用可能な製品及びシステムが用いられてもよい。そのため、これらの詳細な説明を省略する。
【0051】
次に、
図1を参照して、災害調査支援装置10の構成を説明する。災害調査支援装置10は、範囲判定部110と、調査領域抽出部120と、地図情報保存部130と、画像取得部140と、水位判定部150と、水位出力部160とを含む。なお、各構成は、図示しない記憶部に、各構成が判定した情報、抽出した情報、及び、取得した情報の少なくとも一部を保存してもよい。この場合、各構成は、記憶部から必要な情報を取得してもよい。
【0052】
範囲判定部110は、SAR20が取得したSAR画像を用いた分析の結果である地表の変化を取得する。例えば、範囲判定部110は、SAR20からSAR画像を取得し、取得したSAR画像における地表の変化を分析する。あるいは、範囲判定部110は、SAR20から、SAR画像の分析の結果である地表の変化を取得してもよい。この場合、範囲判定部110は、地表の変化の分析の動作を省略してもよい。
【0053】
このように、範囲判定部110は、SAR20からSAR画像を取得して地表の変化を分析してもよく、SAR20から地表の変化を取得してもよい。そこで、既に説明している通り、本実施形態の説明では説明の便宜のため、これらをまとめて、範囲判定部110は、SAR20が取得したSAR画像を用いた分析の結果である地表の変化を取得するとして説明する。つまり、範囲判定部110における地表の変化の取得は、SAR画像を取得し、取得したSAR画像を用いて地表の変化を分析する場合と、地表の変化を取得する場合とを含む。
【0054】
なお、範囲判定部110は、SAR20からマルチスペクトルを用いた観測結果を取得してもよい。この場合、範囲判定部110は、取得した観測結果を用いて、地表の変化に加え、地表の種類を分析してもよい。あるいは、範囲判定部110は、SAR20からマルチスペクトルを用いた観測結果の分析結果である地表の種類を取得してもよい。このように、地表の種類は、観測結果の分析結果の一つである。そこで、以下の説明では、特に区別が必要な場合を除き、地表の種類を含めて、地表の変化と呼ぶ。つまり、以下の説明では、地表の変化は、地表の種類を含んでもよい。
【0055】
そして、範囲判定部110は、SAR20の測定結果を用いた分析に結果である地表の変化を用いて洪水の範囲を判定する。洪水の範囲における水面は、冠水のため、通常の地表面のより高くなる。そこで、例えば、範囲判定部110は、洪水の範囲として、地表の変化が所定の閾値より高くなった範囲を判定する。あるいは、誤差を考慮して、範囲判定部110は、洪水の範囲として、地表の変化が閾値より高くなった範囲と、その周辺の所定の範囲(例えば、周囲数十mの範囲)を判定してもよい。範囲判定部110が地表の種類を判定している場合、範囲判定部110は、地表の変化に加え、地表の種類を用いて、洪水の範囲を判定してもよい。例えば、範囲判定部110は、地表の変化が閾値より高くなった範囲のなかで、地表の種類が水面の範囲を、洪水の範囲と判定してもよい。そして、範囲判定部110は、判定した洪水の範囲を調査領域抽出部120に出力する。
【0056】
地図情報保存部130は、地図情報を保存する。地図情報に含まれる情報は、地図情報を利用する構成及び動作に対応して決定される。例えば、地図情報は、道路に関連する情報(道路の位置、長さ、幅、車線数、及び、路面の種類など)である。あるいは、地図情報は、所定の施設(例えば、災害に関連する施設(例えば、避難所、又は、水位観測所))に関する情報(例えば、施設の種類と位置)でもよい。あるいは、地図情報は、標高、地形、及び、地表の種類(例えば、農地、草原、又は、荒地)の少なくとも一つを含んでもよい。そして、地図情報保存部130は、いずれかの構成の要求に基づき、地図情報を出力する。なお、災害調査支援装置10は、地図情報を、情報提供装置50、又は、図示しない装置(例えば、地図情報提供業者のサーバー)から取得してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、地図情報保存部130を含まなくてもよい。
【0057】
調査領域抽出部120は、洪水の範囲に基づいて、水位を調査する領域(調査領域)を抽出する。調査領域抽出部120は、洪水の範囲に加え、地図情報を用いて、調査領域を抽出してもよい。例えば、洪水の範囲に湖、沼、池、川、及び、水路の少なくとも一つを含む場合、調査領域抽出部120は、それらの領域を除いた領域を、調査領域として抽出してもよい。あるいは、ドライブレコーダー30が車両に搭載されている場合、調査領域抽出部120は、地図情報を参照して、洪水の範囲の中で、車両が通行できる道路を含む領域を抽出してもよい。
【0058】
図面を参照して、この場合の例を説明する。
図3は、調査領域の一例を示す図である。
図3において、直線は、道路である。楕円は、範囲判定部110が判定した地表の変化が大きい範囲、つまり、洪水の範囲である。調査領域抽出部120は、調査領域として、範囲判定部110が判定した洪水の範囲の含まれる道路(
図3の太い線となっている道路)を抽出する。調査領域抽出部120は、道路の周辺の領域を抽出してもよい。
【0059】
なお、調査領域は、必ずしも、道路である必要はない。例えば、ドライブレコーダー30が鉄塔又はビルなどの構造物に設置された固定カメラの場合、調査領域は、洪水の範囲を撮影できるドライブレコーダー30が設置されている構造物の位置を含んでもよい。あるいは、人がドライブレコーダー30を持ち運ぶ場合、調査領域は、車両では通行できないが人が通行できる領域(例えば、桟橋、土手及び護岸の上部、又は、所定の施設(例えば、水門)の保守用の通路)でもよい。調査領域は、
図3のような線状の領域ではなく、広さを持った領域でもよい。
図1を参照した説明に戻る。
【0060】
調査領域は、後ほど説明する水位判定部150が水位の判定に用いる画像を取得する領域である。そして、自治体などが管理している施設には、水門など洪水の対策において重要な施設がある。また、河川の水位観測所など、水位を測定している施設がある。このような施設の周辺の水位は、調査対象とした方が好ましい。そこで、調査領域抽出部120は、所定の施設に関連するように調査領域を抽出してもよい。この場合、調査領域抽出部120は、地図情報保存部130又は外部の装置(例えば、情報提供装置50)から、施設の位置情報などを取得してもよい。
【0061】
あるいは、調査領域抽出部120は、洪水の範囲の中で、所定の地表の変化の領域を、調査領域から除外してもよい。例えば、洪水の範囲において、地表の変化が家屋及び電信柱などより高い領域は、洪水が家屋などより高い位置まで達している領域である。そのような領域に残った痕跡は、洪水時の水位より低いため、水位の判定には不適切な痕跡である。そこで、調査領域抽出部120は、そのような領域(例えば、地表の変化が建物の高さより大きい領域)を調査領域から除外してもよい。
【0062】
範囲判定部110が地表の種類を判定している場合、調査領域抽出部120は、地表の種類を用いて、調査領域を抽出してもよい。例えば、調査領域抽出部120は、所定の地表の種類(例えば、泥土又は乾燥土壌)の範囲に基づいて、調査領域を抽出してもよい。例えば、調査領域抽出部120は、泥土の領域から調査領域を抽出してもよい。なお、洪水の範囲がドライブレコーダー30で画像を取得できない領域を含まない場合、調査領域抽出部120は、調査領域として、洪水の範囲を抽出してもよい。そして、調査領域抽出部120は、抽出した調査領域を画像取得部140に出力する。
【0063】
画像取得部140は、ドライブレコーダー30から、調査領域の画像を取得する。例えば、画像取得部140は、ドライブレコーダー30に調査領域を出力し、ドライブレコーダー30から調査領域において撮影された画像を取得する。あるいは、画像取得部140が、ドライブレコーダー30から取得した画像の中から、調査領域の画像を選択してもよい。なお、画像取得部140ではなく、調査領域抽出部120が、ドライブレコーダー30に調査領域を出力してもよい。
【0064】
図面を参照して、画像取得部140における画像の取得動作の一例を説明する。
図4は、ドライブレコーダー30が画像を取得した位置の一例を示す図である。ドライブレコーダー30は、
図4において、円を用いて示されている位置において画像を取得している。なお、ドライブレコーダー30は、調査領域の画像を取得すればよい。例えば、ドライブレコーダー30は、
図3における調査領域で画像を取得すればよい。ただし、一般的に、ドライブレコーダー30は、車両などに搭載されて、連続的に画像を取得する。そのため、ドライブレコーダー30は、調査領域に加え、調査領域に到着するまでの間と、調査領域から戻る間でも画像を取得する。そのため、
図4では、ドライブレコーダー30は、調査領域以外においても、画像を取得している。
【0065】
図5は、画像取得部140が取得する画像の位置の一例を示す図である。画像取得部140は、
図4に示されている各位置において取得された画像のなかで、調査領域に含まれる位置において取得された画像を取得する。
図5において、二重となっている円の位置が、画像取得部140が取得する画像の位置である。つまり、
図5において、二重となっている円の位置が、次に説明する水位判定部150が水位を判定するために用いる画像の取得位置である。
図1を参照した説明に戻る。
【0066】
なお、ドライブレコーダー30が調査領域の少なくとも一部の画像を取得していない場合、画像取得部140は、ドライブレコーダー30に、調査領域の画像の取得を要求してもよい。この場合、例えば、ドライブレコーダー30を搭載した車両の運転手が、ドライブレコーダー30が画像を取得できるように、車両を操作して調査領域を走行すればよい。あるいは、画像取得部140は、画像を取得できる位置に設置されたドライブレコーダー30(例えば、固定カメラ)に画像の取得を依頼してもよい。
【0067】
ドライブレコーダー30が複数の場合、画像取得部140は、複数のドライブレコーダー30の全て又は一部から、調査領域において撮影された画像を取得してもよい。この場合、少なくとも一部の複数の画像が同じ地点を含む画像となる場合がある。あるいは、ドライブレコーダー30を搭載した車両が、同じ道路を複数回通行することがある。この場合も、複数の画像が同じ地点を含む画像となる。このように、少なくとも一部の複数の画像が同じ地点を含む画像の場合、画像取得部140は、同じ地点を含む複数の画像を全て取得してもよく、一つ又は一部の画像を取得してもよい。そして、画像取得部140は、取得した画像を水位判定部150に出力する。
【0068】
水位判定部150は、調査領域の画像を用いて、水位を判定する。水位判定部150は、水位の判定方法として、任意の方法を用いることができる。例えば、水位判定部150は、所定の画像認識を用いて、水位を判定してもよい。なお、本実施形態において、画像認識は、限定されない。例えば、画像認識には、判定モデルを用いた認識、別の方法を用いた認識、及び、それらを組合せた認識などが含まれる。
【0069】
例えば、水位の判定用の機器として、量水標がある。そこで、量水標を含む画像を用いて水位を判定する場合、予め、利用者が、量水標と水面とを含む画像を収集し、収集した画像を所定のモデルに適用した機械学習を実行し、機械学習の結果として判定モデルを生成する。そして、利用者は、生成した判定モデルを、災害調査支援装置10に保存する。そして、水位判定部150は、保存された判定モデルを用いて、量水標を含む画像に含まれる水面の水位を判定する。ただし、水位判定部150がおける水位の判定に用いる画像は、量水標を含む画像に限定されない。例えば、水位判定部150は、画像の含まれる所定の構造物(電信柱など)と水面とを用いて水位を判定してもよい。
【0070】
水位判定部150は、画像に関連する情報(画像関連情報)を用いて、水位を判定する方法を変更してもよい。例えば、水位判定部150は、天気(例えば、晴れ、曇り、雨、及び、雪)に対応した複数の判定モデルを保存し、画像関連情報に含まれる天気の情報を用いて、判定モデルを切り替えてもよい。あるいは、水位判定部150は、画像関連情報に含まれる天気の情報を用いて、複数の判定モデルの判定結果の重みを変更して、複数の判定モデルの判定結果を合成してもよい。
【0071】
あるいは、水位判定部150は、画像に関連する情報を用いて、判定に用いる画像を選択してもよい。例えば、雨が降っている時点では、洪水の水位は、最大の水位に達していない場合がある。そこで、水位判定部150は、画像関連情報に含まれる天気の情報を用いて、所定の天候(例えば、降雨終了後の曇り)の画像を用いて、水位を判定してもよい。このように、水位判定部150は、画像に関連する情報を用いて、水位を判定してもよい。
【0072】
あるいは、ドライブレコーダー30の撮影方向などの撮影条件は、水位の判定に影響する。そこで、水位判定部150は、画像に関連する情報に含まれる画像の取得に関連する情報を用いて、水位を判定してもよい。例えば、水位の判定に用いられる情報は、撮影位置、移動体におけるドライブレコーダー30の設置高さ、ドライブレコーダー30の設置角度、ドライブレコーダー30から構造物までの距離、及び、画角などである。
【0073】
なお、水位判定部150は、水位の判定において、画像の位置に対応した地図情報に含まれる情報(例えば、地表の標高)を用いてもよい。例えば、水位は、洪水時における地表から水面までの高さである。そして、各地点の地表の標高に水位を加えた値は、各地点における洪水時の水面の標高である。例えば、洪水の範囲がかなり広い範囲の場合、その範囲の洪水における水面の高低差(つまり、水面の標高差)に対応して、洪水の流れが発生する。洪水の流れは、被害の範囲及び状況の変化に影響する。
【0074】
そこで、水位判定部150は、水位として、地図情報を用いて取得した各地点の標高と、判定した水位とを用いて、各地点の洪水時の水面の標高を判定してもよい。このように、水位判定部150は、判定する水位として、水面の標高を判定してもよい。なお、水位判定部150が用いる地図情報は、調査領域抽出部120及び画像取得部140の少なくともどちらかが用いる地図情報と同じ地図情報でもよく、どちらの地図情報とも異なる地図情報でもよい。さらに、水位判定部150は、判定に用いる地図情報として、地図情報保存部130に保存されている地図情報を用いてもよく、情報提供装置50から取得した地図情報を用いてもよく、図示しない装置から取得した地図情報を用いてもよい。
【0075】
さらに、水位判定部150は、所定の方法(例えば、画像認識)を用いて画像に含まれる水面の痕跡を判定し、判定した痕跡を用いて洪水時の水位を判定してもよい。例えば、利用者が、洪水の痕跡を含む画像を収集し、収集した画像を用いた機械学習の結果として痕跡用の判定モデルを生成し、生成した痕跡用の判定モデルを災害調査支援装置10に保存してもよい。判定に用いられる痕跡は、調査対象となる構造物に対応して利用者などが決定した痕跡である。例えば、痕跡は、垂直面を備えている構造物(ビル、塀、及び電信柱など)に残された泥、ゴミ、又は、草などでもよい。あるいは、痕跡は、垣根などに残された泥、ゴミ、又は、草でもよい。あるいは、痕跡は、土手などにおける流木、倒れた草、流れてきた岩石、又は、流出した土砂の跡(例えば、土砂の流出した土手の窪み)でもよい。
【0076】
画像が複数の種類の構造物を含む場合、水位判定部150は、構造物の種類それぞれに対応した方法(例えば、画像認識)を用いて水位を判定してもよい。画像が複数の種類の痕跡を含む場合、水位判定部150は、痕跡の種類それぞれに対応した方法(例えば、画像認識)を用いても痕跡を判定してもよい。
【0077】
さらに、画像が複数の構造物及び複数の痕跡を含む場合、水位判定部150は、構造物と痕跡との組み合わせそれぞれに対応した方法(例えば、画像認識)を用いてもよい。なお、水位判定部150は、水位及び痕跡の判定に用いる方法として、画像認識に限られず、その他の方法を用いてもよい。利用者などが、洪水の状態、及び、取得できた画像などに基づいて、水位及び痕跡を判定するのに適切な方法を選択すればよい。
【0078】
図6は、痕跡を用いた水位の判定の一例を説明するための図である。
図6は、洪水後における電信柱と塀と道路とを含む画像である。電信柱、塀、及び、道路には、洪水の痕跡として、泥の痕跡が、残っている。そこで、例えば、水位判定部150は、道路(つまり、地表)から、電信柱の泥の痕跡の上部までの高さを、水位と判定する。このように、電信柱の側面は、垂直面の一例である。ただし、垂直面は、電信柱の側面に限定されない。例えば、
図6において、塀は、垂直面の別の例である。
【0079】
ただし、
図6において、電信柱と塀との間は、洪水時に狭い水路となる。狭い水路では、一般的に、他の部分より水位が高くなる。そのため、
図6において、電信柱に近い範囲の塀の泥の跡は、他の部分に対して高くなっている。このように、狭い水路となるような部分の痕跡は、洪水時の水位の判定に用いないほうがよい。そこで、水位判定部150は、
図6における電信柱の近傍の塀のように、水位の判定に適切でない痕跡を除外してもよい。あるいは、水位判定部150は、
図6における電信柱の道路側のような、水位の判定に適切な痕跡を選択して、水位を判定してもよい。
図1を参照した説明に戻る。
【0080】
痕跡は、斜面に比べ、垂直面の方が、適切に残りやすい。そこで、水位判定部150は、垂直面を含む画像を選択して用いてもよい。ただし、画像に含まれる面が垂直面であるか斜面であるかの判定は、画像に含まれる構造物を判定するより難しい場合がある。そこで、水位判定部150は、所定の構造物(例えば、垂直面を含む構造物)を含む画像を選択してもよい。
【0081】
さらに、構造物には、洪水の痕跡が適切に残りやすい構造物と、適切には残りにくい構造物がある。例えば、広い道に設けられた石塀、電信柱、及び、コンクリートの壁は、洪水の痕跡が適切に残りやすい。一方、狭い路地の壁、及び、車いす用のスロープのような斜面は、洪水の痕跡が適切には残りにくい。そこで、水位判定部150は、洪水の痕跡が残りやすい構造物を含む画像を選択して用いてもよい。
【0082】
これらの場合、水位判定部150は、画像取得部140に、ドライブレコーダー30から所定の条件を満足する画像(例えば、垂直面を含む画像、又は、痕跡が残りやすい構造物を含む画像)の取得を要求してもよい。画像取得部140は、水位判定部150からの要求に基づいて、要求された条件を満足する画像をドライブレコーダー30から取得すればよい。
【0083】
水位判定部150は、判定誤差を低減するため、複数の画像を用いて水位を判定してもよい。例えば、同じ地点を含む複数の画像がある場合、水位判定部150は、それら複数の画像を用いて、その地点の水位を判定してもよい。例えば、水位判定部150は、その地点の水位として、複数の画像それぞれ用いて判定した水位の平均値を用いてもよい。あるいは、水位判定部150は、水位として、複数の地点の水位に所定の統計処理(例えば、算術平均値、又は、距離を考慮した加重平均値)を適用して算出した値を用いてもよい。例えば、水位判定部150は、水位として、水位を判定する地点及び近傍の地点の画像を用いて判定した複数の水位に所定の統計処理(例えば、平均値、又は、距離を考慮した加重平均値)を適用して算出した値を用いてもよい。
【0084】
あるいは、水位判定部150は、所定範囲内の画像を用いて判定した複数の水位から求めた分散又は標準偏差の所定倍の範囲に入らない水位を、異常値として除外してもよい。あるいは、水位判定部150は、各地点の水位ではなく、所定の広さの領域の水位を判定してもよい。例えば、水位判定部150は、洪水の水位として、所定の区画(例えば、自治体の管理用の区画、又は、調査領域を所定数に分割した区画)に含まれる水位を用いて、その区画の水位を判定してもよい。例えば、水位判定部150は、区画内の水位の平均値を区画の水位としてもよい。
【0085】
なお、洪水の痕跡は、画像を取得するまでに移動している可能性がある。あるいは、画像認識を用いた判定は、判定誤差を含む場合がある。つまり、水位判定部150における水位の判定は、誤判定の可能性がある。そこで、水位判定部150は、所定の情報を用いて、誤判定した水位を判定してもよい。以下、説明の煩雑さをさけるため、「誤判定した水位の判定」を含め、「水位の判定」と呼ぶ。
【0086】
例えば、画像を用いる判定の精度(例えば、数cm程度)よりは低い精度(例えば、m程度)ではあるが、災害調査支援装置10は、SAR20の測定結果を用いた分析の結果である地表の変化を用いて、洪水の範囲の水位を判定できる。そこで、水位の判定における誤判定を避けるため、水位判定部150は、地表の変化を用いて判定した水位を用いて、画像を用いて判定した水位を判定してもよい。以下、説明の便宜のため、ドライブレコーダー30が取得した画像を用いて判定した水位を「第1の水位」と呼ぶ。また、SAR20から取得した測定結果又は地表の変化を用いて判定した水位を「第2の水位」と呼ぶ。
【0087】
例えば、水位判定部150は、第1の水位の中で、第2の水位に対して所定の範囲(例えば、2m以下の範囲)に含まれる第1の水位を用いてもよい。つまり、水位判定部150は、第2の水位を用いて第1の水位を選択してよい。あるいは、水位判定部150は、第1の水位の中で、第2の水位に対して所定の範囲(例えば、2mを超える範囲)に含まれる水位を、誤判定として、除外してもよい。このように、水位判定部150は、地表の変化を用いて判定した洪水の範囲又は調査範囲における水位(第2の水位)を用いて、画像を用いて判定した水位(第1の水位)を判定してもよい。
【0088】
第2の水位を判定する構成は、限定されない。例えば、範囲判定部110が、取得した地表の変化を用いて第2の水位を判定し、判定した第2の水位を水位判定部150に出力してもよい。あるいは、水位判定部150が、範囲判定部110から洪水の範囲又は調査領域の地表の変化を取得し、取得した地表の変化を用いて調査領域における第2の水位を判定してもよい。また、範囲判定部110又は水位判定部150は、第2の水位の判定に用いる方法として、任意の方法を用いてよい。例えば、範囲判定部110又は水位判定部150は、所定の画像認識を用いて第2の水位を判定してもよい。
【0089】
SAR20の測定における空間分解能は、一般的に、ドライブレコーダー30からの画像を用いた判定の空間分解能より低い。つまり、第2の水位の空間分解能は、第1の水位の空間分解能より低い。そのため、第2の水位に対して、複数の第1の水位が対応する場合がある。そこで、複数の第1の水位が一つの第2の水位に対応する場合、水位判定部150は、第2の水位に対応する第1の水位の中から、所定の第1の水位を選択してもよい。例えば、水位判定部150は、第2の水位に対応する第1の水位に中から、最も第2の水位の値に近い第1の水位を選択してもよい。あるいは、水位判定部150は、第2の水位の値に近い方から所定数の第1の水位の平均値を、第1の水位としてもよい。このように、水位判定部150は、第2の水位を用いて、第1の水位を判定してもよい。
【0090】
なお、第2の水位の判定においても、誤判定が発生する可能性がある。そこで、水位判定部150は、第1の水位を用いて、第2の水位を判定してもよい。例えば、水位判定部150は、第2の水位の対応する複数の第1の水位に対して、所定の閾値より大きく異なる第2の水位を用いなくてもよい。例えば、水位判定部150は、第2の水位に対応する第1の水位の平均値と、第2の水位とを比較し、第1の水位の平均値に対して所定の閾値より大きく異なる第2の水位を用いなくてもよい。
【0091】
第1の水位の判定に用いる情報は、地表の変化を用いて判定した第2の水位に限定されない。水位判定部150は、所定の装置から取得した情報を用いて、第1の水位の誤判定を判定してもよい。例えば、水位判定部150は、水位を判定する地点の近傍の水位観測所など所定の施設が測定した水位を用いて、第1の水位を判定してもよい。より詳細には、例えば、水位判定部150は、近傍の水位観測所が測定した水位との差が閾値より大きい第1の水位を誤判定した水位と判定して、そのような第1の水位を除外してもよい。この場合、水位判定部150は、水位として、標高を用いてもよい。このように、水位判定部150は、SAR20から取得した地表の変化を用いて判定した第2の水位に加え又は替えて、水位観測所が測定した水位を第2の水位として用いてもよい。なお、水位判定部150は、第1の水位と第2の水位とを関連づけてもよい。第2の水位を第1の水位に関連付ける場合、水位判定部150は、第2の水位を用いた第1の水位の判定を実行しなくてもよい。例えば、災害調査支援装置10は、第1の水位と第2の水位との関連性を出力し、第2の水位を用いた第1の水位の判定を、利用者などに委ねてもよい。
【0092】
水位判定部150は、第1の水位の判定についての正確度(accuracy)を判定してもよい。例えば、画像認識を用いる場合、水位判定部150は、画像認識の水位の判定における正確度を判定してもよい。さらに、水位判定部150は、正確度に関連するランクを判定してもよい。ランクは、利用者などが、正確度を所定数に分類したものである。例えば、ランクは、正確度を3つ(例えば、高、中、及び、低の3つのランク)に分類したものである。この場合、水位判定部150は、水位の判定の正確度を、所定のランク(例えば、正確度が高/中/低の3つのランクのいずれか一つ)に分類してもよい。
【0093】
そして、水位判定部150は、判定した第1の水位を水位出力部160に出力する。なお、水位判定部150は、第1の水位を、図示しない記憶部に保存してもよい。水位判定部150は、第1の水位に関連付けて、第2の水位を出力してもよい。あるいは、水位判定部150は、水位の判定用いた画像を、水位に関連付けて出力してもよい。あるいは、水位判定部150は、判定した正確度を出力してもよい。さらに、水位判定部150は、正確度のランクを出力してもよい。
【0094】
水位出力部160は、水位判定部150が判定した水位を、所定の装置(例えば、表示装置40)に出力する。水位出力部160は、地図情報に関連付けて、水位を出力してもよい。水位出力部160が出力する地図情報は、調査領域抽出部120、画像取得部140、及び、水位判定部150の少なくとも一つが用いる地図情報と同じ地図情報でもよく、いずれの地図情報とも異なる地図情報でもよい。さらに、水位出力部160は、水位の判定に用いた画像を出力してもよい。例えば、水位出力部160は、判定した水位の位置の少なくとも一部の位置に関連する画像を出力してもよい。
【0095】
図7は、画像の出力の一例を示す図である。
図7は、矢印が出ている判定用画像取得位置の画像(例えば、ドライブレコーダー30を搭載した車両の進行方向に対して側面方向の画像)の表示例である。例えば、表示装置40は、次のように動作して、画像を表示してもよい。表示装置40が、
図5のような画面を表示する。利用者は、表示されている画像における希望の位置にカーソルを合わせてクリックする。表示装置40は、災害調査支援装置10にクリックされた位置の画像を要求し、
図7のように災害調査支援装置10から取得した画像を表示する。
【0096】
水位出力部160は、画像を出力する場合、画像に関連する情報(画像関連情報)を出力してもよい。例えば、水位出力部160は、画像を出力するときに、撮影条件(例えば、天気)及び作業者が追加した情報(例えば、作業者のコメント)の少なくとも一方を出力してもよい。なお、水位判定部150が判定の正確度を判定している場合、水位出力部160は、水位に関連付けて、正確度を出力してもよい。あるいは、水位判定部150が正確度を所定のランクに分類している場合、水位出力部160は、判定されたランクを出力してもよい。さらに、水位出力部160は、洪水の範囲、及び、調査領域の少なくともどちらかを出力してもよい。あるいは、水位判定部150が第1の水位と第2の水位とを関連付けている場合、水位出力部160は、第1の水位に関連付けて、第2の水位を出力してもよい。あるいは、水位出力部160は、地表の変化を出力してもよい。地表の変化を出力する場合、水位出力部160は、地表の変化に関連付けて、地表の変化の分析に用いた測定結果(例えば、SAR画像)及び測定結果の測定時間の少なくともどちらかを出力してもよい。表示装置40は、それぞれの場合に対応して、出力された情報を表示すればよい。あるいは、表示装置40は、災害調査支援装置10に、出力する情報を要求してもよい。
【0097】
なお、
図7は、調査領域の画像を表示している。ただし、災害調査支援装置10は、調査領域とは異なる領域の画像を出力してもよい。例えば、災害調査支援装置10は、調査領域に含まれない地点の画像を出力してもよい。ただし、災害調査支援装置10は、調査領域に含まれない地点の画像を取得していない。そのため、このような場合、災害調査支援装置10は、ドライブレコーダー30から、調査領域に含まれない地点の画像を取得してもよい。
【0098】
次に図面を参照して、災害調査支援装置10の動作を説明する。
図8は、第1の実施形態にかかる災害調査支援装置10の動作の一例を示すフロー図である。範囲判定部110は、SAR20の測定結果を用いた分析の結果である地表の変化を用いて、洪水の範囲を判定する(ステップS210)。範囲判定部110は、地表の種類を判定し、地表の変化に加え、地表の種類を用いて洪水の範囲を判定してもよい。さらに、範囲判定部110は、洪水の範囲における地表の変化を用いて、洪水の水位(第2の水位)を判定してもよい。
【0099】
調査領域抽出部120は、洪水の範囲に基づいて、洪水の調査領域を抽出する(ステップS220)。調査領域抽出部120は、調査領域の抽出に、地図情報を用いてもよい。画像取得部140は、ドライブレコーダー30から、調査領域の画像を取得する(ステップS230)。画像取得部140は、所定の構造物(例えば、垂直面を含む構造物)を含む画像を取得してもよい。あるいは、画像取得部140は、所定の施設に関連する画像を取得してもよい。
【0100】
水位判定部150は、画像を用いて、洪水の水位(第1の水位)を判定する(ステップS240)。水位判定部150は、画像を用いて洪水の痕跡を判定し、判定した痕跡を用いて洪水の水位(第1の水位)を判定してもよい。あるは、水位判定部150は、第2の水位を用いて、第1の水位を判定してもよい。その際、水位判定部150は、範囲判定部110から地表の変化を取得して第2の水位を判定してもよい。水位判定部150は、水位の判定の正確度及びランクを判定してもよい。
【0101】
そして、水位出力部160は、水位を所定の装置(例えば、表示装置40)に出力する(ステップS250)。水位出力部160は、地図情報に関連付けて水位を出力してもよい。さらに、水位出力部160は、水位に関連付けて、水位に関連する画像、画像に関連する情報、判定の正確度、及び、正確度のランクの少なくとも一つを出力してもよい。
【0102】
上記までの説明のように、第1の実施形態にかかる災害調査支援装置10は、範囲判定部110と、調査領域抽出部120と、画像取得部140と、水位判定部150とを含む。範囲判定部110は、地表測定装置(例えば、SAR20)の測定結果(例えば、SAR画像)を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する。調査領域抽出部120は、災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する。画像取得部140は、画像取得装置(例えば、ドライブレコーダー30)が調査領域において取得した画像を取得する。水位判定部150は、取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する。
【0103】
災害調査支援装置10は、災害状況の調査の精度を向上する。例えば、災害調査支援装置10は、地表測定装置(例えば、SAR20)の測定結果(例えば、SAR画像)を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定し、判定した災害範囲に基づいて画像を取得する調査領域を抽出する。SAR20などは、洪水などの災害時においても地表を測定できる。そのため、災害調査支援装置10は、洪水などの災害時の地表変化を用いて、適切な調査領域を絞り込むことができる。つまり、災害調査支援装置10は、作業者などにおける水位の調査の工数を削減する。そして、災害調査支援装置10は、調査範囲のセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報を用いて洪水の水位など災害に関連する水位を判定する。そのため、災害調査支援装置10は、災害状況の調査の精度を向上させる。さらに、災害調査支援装置10がセンサ情報を用いて水位を判定するため、災害調査支援装置10は、作業者などにおける水位の判定の工数を削減し、さらに、判定における精度のばらつきの発生を低減する。
【0104】
調査領域抽出部120は、地図情報を用いて、調査領域を抽出してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、より適切に、調査領域を抽出できる。さらに、調査領域抽出部120は、車両が通行できる調査領域を抽出してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、画像を取得する画像取得装置として、車両に搭載されたドライブレコーダー30などを利用して、迅速に画像を取得できるよ。その結果、災害調査支援装置10は、画像を取得における作業者などの工数及び画像取得の時間などを削減した画像取得を実現できる。
【0105】
調査領域抽出部120は、所定の施設に関連する調査領域を抽出してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、水位の判定として、所定の施設に関連する適切な位置における水位を判定する。調査領域抽出部120は、施設として、水位観測所、及び、水門の少なくともいずれか一つを含む施設を用いてもよい。この場合、災害調査支援装置10は、水位に関連する施設に対応した水位を判定できる。
【0106】
調査領域抽出部120は、地表の種類を用いて調査領域を抽出してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、より適切に、調査領域を抽出できる。地表の種類は、水面、泥土、乾燥土壌、草原、森林、及び、積雪の少なくとも一つを含んでもよい。例えば、森林の領域は、画像の取得が難しい。調査領域抽出部120は、地表の種類を用いて、森林のような画像の取得が難しい領域を避けた調査領域を抽出できる。このように、地表の種類を用いると、災害調査支援装置10は、適切な調査領域を抽出できる。
【0107】
画像取得部140は、固定された画像取得装置(例えば、固定カメラ)、及び、車両に搭載された画像取得装置(例えば、ドライブレコーダー30)の少なくとも一方から画像を取得してもよい。例えば、鉄塔又はビルの上部に設置された固定カメラは、洪水時でも、画像を取得できる場合がある。あるいは、画像取得部140は、望遠カメラを備えたドライブレコーダー30が、洪水の範囲から離れた位置(つまり、安全な位置)で取得した画像を取得してもよい。例えば、画像取得部140は、テレビの中継車に搭載されたカメラが、洪水の範囲から離れた位置(つまり、安全な位置)で取得した画像を取得してもよい。このように、画像取得部140は、災害後(例えば、洪水後)ではなく、災害時(例えば、洪水時)の画像を取得してもよい。そして、水位判定部150は、災害時(例えば、洪水時)の画像を用いて水位を判定してもよい。この場合、水位判定部150は、災害時において水位を判定できる。
【0108】
あるいは、車両に搭載されたドライブレコーダー30を用いると、徒歩でドライブレコーダー30を運ぶ場合に比べ、画像の取得の負荷が、低減される。また、車両は、徒歩に比べ、画像の取得位置までの移動時間が短い。そのため、災害調査支援装置10は、車両に搭載されたドライブレコーダー30を用いて、迅速に画像取得を実現できる。その結果、災害調査支援装置10は、より適切に水位を判定できる。
【0109】
水位判定部150は、調査領域において取得された画像に含まれる痕跡を用いて第1の水位を判定してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、作業者の工数を削減し、判定における精度のばらつきの判定を低減しながら、適切な調査領域において、洪水後など災害後における痕跡調査を実施できる。さらに、調査領域において取得された画像の少なくとも一部は、所定の構造物における痕跡を含んでもよい。構造物には、痕跡の残りやすい構造物がある。そこで、水位判定部150は、そのような構造物を含む画像を用いて、水位の判定の精度を向上できる。さらに、所定の構造物は、垂直面を含む構造物でもよい。垂直面は、斜面に比べ、痕跡が適切に残りやすい。そのため、垂直面を含む構造物を含む画像を用いると、災害調査支援装置10は、水位の判定における精度を向上できる。
【0110】
さらに、画像取得部140は、痕跡が、泥、ゴミ、及び、草、流木、岩石、及び、流出した土砂の跡の少なくとも一つを含む画像を取得してもよい。これらの痕跡は、洪水などの災害の痕跡調査に適する痕跡である。そのため、災害調査支援装置10は、適切な痕跡調査を実現できる。
【0111】
さらに、水位判定部150は、画像認識を用いて痕跡を判定してもよい。災害調査支援装置10は、上記の構成を用いて、自動的に、痕跡を用いた水位の判定を実現できる。その結果、災害調査支援装置10は、水位の判定における作業者の工数を削減し、精度のばらつきを低減できる。痕跡は、複数の種類の痕跡を含んでもよい。そして、水位判定部150は、痕跡の種類それぞれに対応した画像認識を用いて痕跡を判定してもよい。災害調査支援装置10は、上記の構成を用いて、自動的に、複数の種類の痕跡を用いた水位の判定を実現できる。その結果、複数の種類の痕跡が残されている場合でも、災害調査支援装置10は、水位の判定における作業者の工数を削減し、精度のばらつきを低減できる。
【0112】
水位判定部150は、画像認識の正確度を判定してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、水位の判定における正確度を提供できる。さらに、水位判定部150は、正確度のランクを判定してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、水位の判定における正確度の概要として、ランクを提供できる。水位判定部150は、標高を用いて第1の水位を判定してもよい。洪水などでの冠水の水面の標高は、地表の標高に、地表から痕跡までの高さを加えた値である。災害調査支援装置10は、上記の構成を用いて、洪水時などの災害時の水面の標高を判定できる。
【0113】
水位判定部150は、複数の画像を用いた統計処理を用いて第1の水位を判定してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、より誤差を低減した水位の判定を実現できる。水位判定部150は、画像に関連する情報を用いて、第1の水位を判定してもよい。この場合、水位判定部150は、画像に関連する情報を用いて、より正確に水位を判定できる。画像に関連する情報は、画像の取得情報、画像取得装置を搭載した移動体の操作情報、作業者が追加した情報、及び、周辺情報の少なくとも一つを含んでもよい。この場合、水位判定部150は、それらの情報を用いて、より正確に水位を判定できる。
【0114】
水位判定部150は、地表の変化を用いて判定した災害範囲における第2の水位を用いて第1の水位(画像を用いて判定した水位)を判定してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、第1の水位の判定における誤判定を低減できる。水位判定部150は、第1の水位を用いて、第2の水位を判定してもよい。例えば、水位判定部150は、複数の第1の水位を用いて、不適切な第2の水位を判定してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、第2の水位の誤判定を低減できる。
【0115】
水位判定部150は、水位観測所が測定した水位を用いて、第1の水位を判定してもよい。このように、災害調査支援装置10は、地表の変化と異なる情報を用いて第1の水位を判定してもよい。その結果、災害調査支援装置10は、より適切に第1の水位を判定できる。さらに、水位判定部150は、第2の水位を第1の水位と関連付けてもよい。この場合、災害調査支援装置10は、第1の水位に関連する第2の水位、つまり、第1の水位と第2の水位との関連性を提供できる。
【0116】
災害調査支援装置10は、判定した第1の水位を出力する水位出力部160を含んでもよい。災害調査支援装置10は、この構成を用いて、利用者などに、判定した水位を提供できる。水位出力部160は、第1の水位と、地図情報とを関連付けて出力してもよい。災害調査支援装置10は、この構成を用いて、利用者などに、判定した水位を、地図に関連付けて提供できる。その結果、利用者などにおける水位の位置の把握が、容易となる。つまり、利用者の利便性が、向上する。
【0117】
水位出力部160は、第1の水位に関連する画像を出力してもよい。このような構成を用いて、災害調査支援装置10は、水位に関連する画像を利用者などに提供できる。その結果、利用者などは、画像を用いて、より適切に災害の状況を把握できる。水位出力部160は、画像に関連する情報(例えば、撮影条件、又は、作業者のコメント)を出力してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、利用者などに、画像に加え、追加情報として画像に関連する情報を提供できる。
【0118】
水位出力部160は、第1の水位と、第1の水位の判定の正確度を出力してもよい。この場合、利用者などは、出力された判定の正確度を用いて、出力された水位だけではなく、正確度を用いて対応策などを決定できる。さらに、水位出力部160は、第1の水位と、第1の水位の正確度のランクとを出力してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、第1の水位の判定に対する正確度に関連するランクを提供することができる。利用者などは、ランクを参照して、水位の判定の正確度の概略を判定できる。
【0119】
水位出力部160は、第1の水位と、画像と、その画像に関連する情報とを出力してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、利用者などに、画像に加え、水位の判定用の情報を提供できる。水位出力部160は、第1の水位に関連する第2の水位を出力してもよい。この場合、災害調査支援装置10は、第1の水位に関連する第2の水位を提供できる。その結果、利用者などは、第2の水位を参照して、第1の水位を判定できる。
【0120】
災害調査支援システム80は、災害調査支援装置10と、地表測定装置(例えば、SAR20)と、画像取得装置(例えば、ドライブレコーダー30)と、表示装置40とを含む。災害調査支援装置10は、上記のように動作する。地表測定装置(例えば、SAR20)は、災害調査支援装置10に測定結果(例えば、SAR画像)を出力する。画像取得装置(例えば、ドライブレコーダー30)は、災害調査支援装置10に画像を出力する。表示装置40は、災害調査支援装置10が判定した水位を表示する。災害調査支援システム80は、これらの構成を用いて、利用者などに水位を提供できる。
【0121】
[ハードウェア構成]
次に、災害調査支援装置10のハードウェア構成について説明する。災害調査支援装置10の各構成部は、ハードウェア回路で構成されてもよい。あるいは、災害調査支援装置10において、各構成部は、ネットワークを介して接続した複数の装置を用いて、構成されてもよい。例えば、災害調査支援装置10は、クラウドコンピューティングを利用して構成されてもよい。あるいは、災害調査支援装置10において、複数の構成部は、1つのハードウェアで構成されてもよい。あるいは、災害調査支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータ装置として実現されてもよい。災害調査支援装置10は、上記構成に加え、さらに、ネットワークインターフェース回路(NIC:Network Interface Circuit)を含むコンピュータ装置として実現されてもよい。
【0122】
図9は、災害調査支援装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。災害調査支援装置10は、CPU610と、ROM620と、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを含み、コンピュータ装置を構成している。CPU610は、ROM620及び記憶装置640の少なくとも一方からプログラムを読み込む。そして、CPU610は、読み込んだプログラムに基づいて、RAM630と、記憶装置640と、NIC650とを制御する。そして、CPU610を含むコンピュータ装置は、これらの構成を制御し、
図1に示されている、範囲判定部110と、調査領域抽出部120と、画像取得部140と、水位判定部150と、水位出力部160としての各機能を実現する。
【0123】
CPU610は、各機能を実現する際に、RAM630又は記憶装置640を、プログラム及びデータの一時的な記憶媒体として使用してもよい。あるいは、CPU610は、コンピュータで読み取り可能にプログラムを記憶した記録媒体690が含むプログラムを、図示しない記録媒体読み取り装置を用いて読み込んでもよい。あるいは、CPU610は、NIC650を介して、図示しない外部の装置からプログラムを受け取り、RAM630又は記憶装置640に保存し、保存したプログラムに基づいて動作してもよい。
【0124】
ROM620は、CPU610が実行するプログラム及び固定的なデータを記憶する。ROM620は、例えば、P-ROM(Programmable-ROM)又はフラッシュROMである。RAM630は、CPU610が実行するプログラム及びデータを一時的に記憶する。RAM630は、例えば、D-RAM(Dynamic-RAM)である。記憶装置640は、災害調査支援装置10が長期的に保存するデータ及びプログラムを記憶する。具体的には、記憶装置640は、少なくとも地図情報保存部130として動作する。また、記憶装置640は、CPU610の一時記憶装置として動作してもよい。記憶装置640は、例えば、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)又はディスクアレイ装置である。
【0125】
ROM620と記憶装置640とは、不揮発性(non-transitory)の記録媒体である。一方、RAM630は、揮発性(transitory)の記録媒体である。そして、CPU610は、ROM620、記憶装置640、及び、RAM630の少なくとも一つに記憶されているプログラムを基に動作可能である。つまり、CPU610は、不揮発性記録媒体及び揮発性記録媒体の少なくともどちらかを用いて動作可能である。
【0126】
NIC650は、ネットワークを介した外部の装置(例えば、SAR20、ドライブレコーダー30、表示装置40、及び、情報提供装置50)とのデータのやり取りを中継する。NIC650は、例えば、LAN(Local Area Network)カードである。さらに、NIC650は、有線に限らず、無線を用いてもよい。このように構成された災害調査支援装置10は、
図1の災害調査支援装置10と同様の効果を得ることができる。その理由は、災害調査支援装置10のCPU610が、プログラムに基づいて、
図1の災害調査支援装置10と同様の機能を実現できるためである。
【0127】
<第2の実施形態>
災害調査支援装置10は、図示しない装置(例えば、所定のクラウド内の記憶装置又は記憶システム)に保存された測定結果(例えば、SAR画像)、地図情報、及び、画像を用いてもよい。この場合、災害調査支援装置10は、地図情報保存部130を含まなくてもよい。あるいは、災害調査支援装置10は、図示しない装置(例えば、所定のクラウド内の記憶装置又は記憶システム)に、判定した水位を保存してもよい。そこで、このような場合について、第2の実施形態として説明する。
【0128】
図10は、第2の実施形態にかかる災害調査支援装置11の構成の一例を示すブロック図である。災害調査支援装置11は、範囲判定部110と、調査領域抽出部120と、画像取得部140と、水位判定部150とを含む。範囲判定部110は、地表測定装置(例えば、SAR20)の測定結果(例えば、SAR画像)を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する。調査領域抽出部120は、災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する。画像取得部140は、画像取得装置(例えば、ドライブレコーダー30)が調査領域において取得した画像を取得する。水位判定部150は、取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する。災害調査支援装置11は、
図9に示されているハードウェア構成を用いて構成されてもよい。このように構成された災害調査支援装置11は、災害調査支援装置10と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<第3の実施形態>
災害調査支援装置10は、図示しない装置から地図情報を取得し、地図情報保存部130を含まなくてもよい。あるいは、災害調査支援装置10は、情報提供装置50から情報を取得しなくてもよい。そこで、このような場合の災害調査支援システム80の一例を、第3の実施形態として説明する。
図11は、第3の実施形態にかかる災害調査支援システム82の構成の一例を示すブロック図である。
【0130】
災害調査支援システム82は、災害調査支援装置12と、地表測定装置21と、画像取得装置31と、表示装置40とを含む。災害調査支援装置12は、範囲判定部110と、調査領域抽出部120と、画像取得部140と、水位判定部150と、水位出力部160とを含む。そして、災害調査支援装置12は、図示しない装置から地図情報を取得する点を除き、災害調査支援装置10と同様に動作する。災害調査支援装置12は、
図9に示されているハードウェア構成を用いて構成されてもよい。地表測定装置21(例えば、SAR20)は、災害調査支援装置12に地表の変化を出力する。画像取得装置31(例えば、ドライブレコーダー30)は、災害調査支援装置12に画像を出力する。表示装置40は、災害調査支援装置12が出力する水位を表示する。
【0131】
このように構成された災害調査支援システム82において、災害調査支援装置12は、地表測定装置21(例えば、SAR20)の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を取得する。そして、災害調査支援装置12は、地表変化を用いて災害範囲を判定する。そして、災害調査支援装置12は、災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する。そして、災害調査支援装置12は、画像取得装置31(例えば、ドライブレコーダー30)が調査領域で取得した画像を用いて、水位を判定する。そして、災害調査支援装置12は、判定した水位を表示装置40に出力する。そして、表示装置40が、水位を表示する。このように構成された災害調査支援システム82は、災害調査支援システム80と同様の効果を得ることができる。
【0132】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0133】
(付記1)
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する範囲判定手段と、
災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する調査領域抽出手段と、
画像取得装置が調査領域において取得した画像を取得する画像取得手段と、
取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する水位判定手段と
を含む災害調査支援装置。
【0134】
(付記2)
調査領域抽出手段が、地図情報を用いて、調査領域を抽出する
付記1に記載の災害調査支援装置。
【0135】
(付記3)
調査領域抽出手段が、車両が通行できる調査領域を抽出する
付記1又は2に記載の災害調査支援装置。
【0136】
(付記4)
調査領域抽出手段が、所定の施設に関連する調査領域を抽出する
付記1ないし3のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0137】
(付記5)
施設が、水位観測所、及び、水門の少なくともいずれか一つを含む
付記4に記載の災害調査支援装置。
【0138】
(付記6)
地表変化が地表の種類を含み
調査領域抽出手段が、地表の種類を用いて調査領域を抽出する
付記1ないし5のいずれが1項に記載の災害調査支援装置。
【0139】
(付記7)
地表の種類が、水面、泥土、ゴミ、乾燥土壌、草原、森林、及び、積雪の少なくとも一つを含む
付記6に記載の災害調査支援装置。
【0140】
(付記8)
画像取得手段が、固定された画像取得装置、及び、車両に搭載された画像取得装置の少なくとも一方から画像を取得する
付記1ないし7のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0141】
(付記9)
水位判定手段が、調査領域において取得された画像に含まれる痕跡を用いて第1の水位を判定する
付記1ないし8のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0142】
(付記10)
調査領域において取得された画像の少なくとも一部が、所定の構造物における痕跡を含む
付記9に記載の災害調査支援装置。
【0143】
(付記11)
所定の構造物が、垂直面を含む構造物である
付記10に記載の災害調査支援装置。
【0144】
(付記12)
痕跡が、泥、ゴミ、及び、草、流木、岩石、及び、流出した土砂の跡の少なくとも一つを含む
付記9ないし11のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0145】
(付記13)
水位判定手段が、画像認識を用いて痕跡を判定する
付記9ないし12のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0146】
(付記14)
痕跡が複数の種類の痕跡を含み、
水位判定手段が、痕跡の種類それぞれに対応した画像認識を用いて痕跡を判定する
付記13に記載の災害調査支援装置。
【0147】
(付記15)
水位判定手段が、画像認識の正確度を判定する
付記13又は14に記載の災害調査支援装置。
【0148】
(付記16)
水位判定手段が、正確度のランクを判定する
付記15に記載の災害調査支援装置。
【0149】
(付記17)
水位判定手段が、標高を用いて第1の水位を判定する
付記1ないし16のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0150】
(付記18)
水位判定手段が、複数の画像を用いた統計処理を用いて第1の水位を判定する
付記1ないし17のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0151】
(付記19)
水位判定手段が、画像に関連する情報を用いて、第1の水位を判定する
付記1ないし18のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0152】
(付記20)
画像に関連する情報が、画像の取得情報、画像取得装置を搭載した移動体の操作情報、作業者が追加した情報、及び、周辺情報の少なくとも一つを含む
付記19に記載の災害調査支援装置。
【0153】
(付記21)
水位判定手段が、地表変化を用いて判定した災害範囲における第2の水位を用いて第1の水位を判定する
付記1ないし20のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0154】
(付記22)
水位判定手段が、第1の水位を用いて第2の水位を判定する
付記21に記載の災害調査支援装置。
【0155】
(付記23)
水位判定手段が、水位観測所が測定した水位を用いて、第1の水位を判定する
付記21又は22に記載の災害調査支援装置。
【0156】
(付記24)
水位判定手段が、第2の水位を第1の水位と関連付ける
付記21ないし23のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0157】
(付記25)
第1の水位を出力する水位出力手段
を含む付記1ないし24のいずれか1項に記載の災害調査支援装置。
【0158】
(付記26)
水位出力手段が、第1の水位と、地図情報とを関連付けて出力する
付記25に記載の災害調査支援装置。
【0159】
(付記27)
水位出力手段が、第1の水位に関連する画像を出力する
付記25又は26に記載の災害調査支援装置。
【0160】
(付記28)
第1の水位と、第1の水位の判定の正確度とを出力する水位出力手段
を含む付記15に記載の災害調査支援装置。
【0161】
(付記29)
第1の水位と、第1の水位の判定の正確度のランクとを出力する水位出力手段
を含む付記16に記載の災害調査支援装置。
【0162】
(付記30)
第1の水位と、画像と、画像に関連する情報を出力する水位出力手段
を含む付記19又は20に記載の災害調査支援装置。
【0163】
(付記31)
第1の水位と、第1の水位に関連する第2の水位とを出力する水位出力手段
を含む付記24に記載の災害調査支援装置。
【0164】
(付記32)
付記1ないし31いずれか1項に記載の災害調査支援装置と、
災害調査支援装置に測定結果を出力する地表測定装置と、
災害調査支援装置に画像を出力する画像取得装置と
災害調査支援装置が判定した第1の水位を表示する表示装置と
を含む災害調査支援システム。
【0165】
(付記33)
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定し、
災害範囲に基づいて、調査領域を抽出し、
画像取得装置が調査領域において取得した画像を取得し、
取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する
災害調査支援方法。
【0166】
(付記34)
災害調査支援装置が、付記33に記載の災害調査支援方法を実行し、
地表測定装置が、災害調査支援装置に測定結果を出力し、
画像取得装置が、災害調査支援装置に画像を出力し、
表示装置が、災害調査支援装置が判定した第1の水位を表示する
災害調査支援方法。
【0167】
(付記35)
地表測定装置の測定結果を用いた分析の結果である地表変化を用いて災害範囲を判定する処理と、
災害範囲に基づいて、調査領域を抽出する処理と、
画像取得装置が調査領域において取得した画像を取得する処理と、
取得した画像を用いて調査領域における第1の水位を判定する処理と
をコンピュータに実行させるプログラムを記録する記録媒体。
【0168】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる
【符号の説明】
【0169】
10 災害調査支援装置
11 災害調査支援装置
12 災害調査支援装置
20 SAR
21 地表測定装置
30 ドライブレコーダー
31 画像取得装置
40 表示装置
50 情報提供装置
80 災害調査支援システム
82 災害調査支援システム
110 範囲判定部
120 調査領域抽出部
130 地図情報保存部
140 画像取得部
150 水位判定部
160 水位出力部
610 CPU
620 ROM
630 RAM
640 記憶装置
650 NIC
810 コンピュータ
820 SARシステム
830 ドライブレコーダー
840 端末装置
850 車両
880 ネットワーク