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特許7568108フィルタ装置および高周波フロントエンド回路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】フィルタ装置および高周波フロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/205 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H01P1/205 B
H01P1/205 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023533466
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2022022348
(87)【国際公開番号】W WO2023281942
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2021112053
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 誠之
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0057362(US,A1)
【文献】特開2009-231793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0134212(US,A1)
【文献】国際公開第2005/104149(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/131140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
互いに対向する第1接地電極および第2接地電極と、
前記入力端子および前記出力端子のうちのいずれか一方の端子に接続された第1共振器とを備え、
前記第1共振器は、
前記第1接地電極と前記第2接地電極との間に設けられ、前記第1接地電極および前記第2接地電極に接続された第1中間接地電極と、
前記第1接地電極と前記第1中間接地電極との間に設けられ、前記第1中間接地電極および前記一方の端子に接続された第1共振部と、
前記第1接地電極と前記第1中間接地電極との間に設けられ、前記第1中間接地電極に接続された第2共振部と、
前記第2接地電極と前記第1中間接地電極との間に設けられ、前記第1中間接地電極に接続された第3共振部とを備える、フィルタ装置。
【請求項2】
前記第3共振部は、前記第1中間接地電極を基準として前記第1共振部と対称的な位置と、前記第1中間接地電極を基準として前記第2共振部と対称的な位置とを結ぶ経路上に設けられる、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第3共振部は、前記第1中間接地電極を基準として前記第1共振部と対称的な位置に設けられる、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記第3共振部は、前記第1中間接地電極を基準として前記第2共振部と対称的な位置に設けられる、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記第3共振部は、前記第1中間接地電極を基準として前記第1共振部と対称的な位置と、前記第1中間接地電極を基準として前記第2共振部と対称的な位置とを結ぶ経路上の位置とは異なる位置に設けられる、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記第1共振部と前記第2共振部とは、誘導性結合または容量性結合によって結合される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第1共振部、前記第2共振部、および前記第3共振部の各々は、通過帯域の中心周波数に対応する波長の1/4の長さを有する第1導体を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記第1共振部、前記第2共振部、および前記第3共振部の各々は、前記第1中間接地電極に接続された前記第1導体と、前記第1導体に接続され前記第1接地電極または前記第2接地電極に対向する平板電極とを含む、請求項7に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記中心周波数に対応する波長の1/2の長さを有する第2導体を含む少なくとも1つの中間共振器をさらに備え、
前記第1共振器は、前記少なくとも1つの中間共振器と誘導性結合によって結合される、請求項7に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの中間共振器は、前記第2導体と、前記第2導体に接続され前記第1接地電極に対向する第1平板電極と、前記第2導体に接続され前記第2接地電極に対向する第2平板電極とを含む、請求項9に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記第1共振器は、前記第2接地電極と前記第1中間接地電極との間に前記第3共振部を含む複数の共振部を備え、
前記複数の共振部の各々は、前記第1中間接地電極に接続されている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
前記入力端子および前記出力端子のうちの前記一方の端子とは異なる他方の端子に接続された第2共振器をさらに備え、
前記第2共振器は、
前記第1接地電極と前記第2接地電極との間に設けられ、前記第1接地電極および前記第2接地電極に接続された第2中間接地電極と、
前記第1接地電極と前記第2中間接地電極との間に設けられ、前記第2中間接地電極および前記他方の端子に接続された第4共振部と、
前記第1接地電極と前記第2中間接地電極との間に設けられ、前記第2中間接地電極に接続された第5共振部と、
前記第2接地電極と前記第2中間接地電極との間に設けられ、前記第2中間接地電極に接続された第6共振部とを備える、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項13】
入力端子と、
出力端子と、
互いに対向する第1接地電極および第2接地電極と、
前記入力端子に接続された第1共振器と、
前記出力端子に接続された第2共振器と、
前記第1共振器および前記第2共振器のうちの少なくともいずれか一方と誘導性結合によって結合された少なくとも1つの中間共振器とを備え、
前記第1共振器は、
前記第1接地電極と前記第2接地電極との間に設けられ、前記第1接地電極および前記第2接地電極に接続された第1中間接地電極と、
前記第1接地電極と前記第1中間接地電極との間に設けられ、前記第1中間接地電極および前記入力端子に接続された第1共振部と、
前記第1接地電極と前記第1中間接地電極との間に設けられ、前記第1中間接地電極に接続された第2共振部と、
前記第2接地電極と前記第1中間接地電極との間に設けられ、前記第1中間接地電極に接続された第3共振部とを備え、
前記第2共振器は、
前記第1接地電極と前記第2接地電極との間に設けられ、前記第1接地電極および前記第2接地電極に接続された第2中間接地電極と、
前記第1接地電極と前記第2中間接地電極との間に設けられ、前記第2中間接地電極および前記出力端子に接続された第4共振部と、
前記第1接地電極と前記第2中間接地電極との間に設けられ、前記第2中間接地電極に接続された第5共振部と、
前記第2接地電極と前記第2中間接地電極との間に設けられ、前記第2中間接地電極に接続された第6共振部とを備える、フィルタ装置。
【請求項14】
請求項1~請求項5、および請求項13のいずれか1項に記載のフィルタ装置を備える、高周波フロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置および高周波フロントエンド回路に関し、より特定的には、共振器を備えるフィルタ装置の特性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2009/060696号(特許文献1)には、共振器電極を囲むようにグランド電極が配置されるとともに、共振器電極に結合された入出力電極を備えるチップ型フィルタ部品が開示されている。特許文献1に開示されたチップ型フィルタ部品では、チップ本体の内部に設けられた電極部の電極長さが共振器電極の共振周波数よりも低い周波数に相当する波長の1/2の長さに設定されている。
【0003】
上記のようにチップ型フィルタ部品を構成することで、通過帯域近傍に生じる導波管モードによる不要なスプリアスを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/060696号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、通信規格の増加などに伴って無線通信に使用される周波数帯域が増加しており、非常に狭い間隔で隣接する周波数帯域が使用される場合がある。このため、特許文献1に開示されるようなフィルタ装置においては、一般的に、信号の通過帯域を適切に調整可能であるとともに、所望の通過帯域においては低損失で信号を通過させ、所望の通過帯域以外の非通過帯域においては効率的に信号を減衰させることが求められている。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、共振器を備えるフィルタ装置において、信号の通過帯域を適切に調整可能にするとともに、非通過帯域における減衰特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るフィルタ装置は、入力端子と、出力端子と、互いに対向する第1接地電極および第2接地電極と、入力端子および出力端子のうちのいずれか一方の端子に接続された第1共振器とを備える。第1共振器は、第1中間接地電極と、第1共振部と、第2共振部と、第3共振部とを備える。第1中間接地電極は、第1接地電極と第2接地電極との間に設けられ、第1接地電極および第2接地電極に接続されている。第1共振部は、第1接地電極と第1中間接地電極との間に設けられ、第1中間接地電極および上記の一方の端子に接続されている。第2共振部は、第1接地電極と第1中間接地電極との間に設けられ、第1中間接地電極に接続されている。第3共振部は、第2接地電極と第1中間接地電極との間に設けられ、第1中間接地電極に接続されている。
【0008】
本開示に係るフィルタ装置は、入力端子と、出力端子と、互いに対向する第1接地電極および第2接地電極と、入力端子に接続された第1共振器と、出力端子に接続された第2共振器と、第1共振器および第2共振器のうちの少なくともいずれか一方と誘導性結合によって結合された少なくとも1つの中間共振器とを備える。第1共振器は、第1中間接地電極と、第1共振部と、第2共振部と、第3共振部とを備える。第1中間接地電極は、第1接地電極と第2接地電極との間に設けられ、第1接地電極および第2接地電極に接続されている。第1共振部は、第1接地電極と第1中間接地電極との間に設けられ、第1中間接地電極および入力端子に接続されている。第2共振部は、第1接地電極と第1中間接地電極との間に設けられ、第1中間接地電極に接続されている。第3共振部は、第2接地電極と第1中間接地電極との間に設けられ、第1中間接地電極に接続されている。第2共振器は、第2中間接地電極と、第4共振部と、第5共振部と、第6共振部とを備える。第2中間接地電極は、第1接地電極と第2接地電極との間に設けられ、第1接地電極および第2接地電極に接続されている。第4共振部は、第1接地電極と第2中間接地電極との間に設けられ、第2中間接地電極および出力端子に接続されている。第5共振部は、第1接地電極と第2中間接地電極との間に設けられ、第2中間接地電極に接続されている。第6共振部は、第2接地電極と第2中間接地電極との間に設けられ、第2中間接地電極に接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るフィルタ装置によれば、第2接地電極と第1中間接地電極との間に設けられた第3共振部の位置を調整することで、第1共振部、第2共振部、および第3共振部における共振によってフィルタ装置の通過特性に減衰極を生じさせることができる。これにより、信号の通過帯域を適切に調整することができるとともに、非通過帯域における減衰特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路を有する通信装置のブロック図である。
図2】実施の形態1のフィルタ装置における結合関係を示す図である。
図3】実施の形態1のフィルタ装置の等価回路図である。
図4】実施の形態1のフィルタ装置の斜視図である。
図5】実施の形態1のフィルタ装置の各積層の一例を示す平面図である。
図6】実施の形態1のフィルタ装置の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
図7】入力端子に接続された共振器の斜視図である。
図8】入力端子に接続された共振器における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。
図9図8の共振器の通過特性を示す図である。
図10】入力端子に接続された共振器において共振部の数を減らした場合の例を示す図である。
図11図10の共振器の通過特性を示す図である。
図12】入力端子に接続された共振器において共振部の数を減らした場合の例を示す図である。
図13図12の共振器の通過特性を示す図である。
図14】実施の形態1のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
図15】比較例のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
図16】変形例の共振器における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。
図17図16の共振器の通過特性を示す図である。
図18】変形例の共振器における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。
図19図18の共振器の通過特性を示す図である。
図20図8図16、および図18の各共振器の通過特性を比較するための図である。
図21】変形例の共振器における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。
図22図21の共振器の通過特性を示す図である。
図23図16および図21の各共振器の通過特性を比較するための図である。
図24】実施の形態2の共振器における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。
図25図24の共振器の通過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(通信装置10の基本構成)
図1は、実施の形態1のフィルタ装置が適用される高周波フロントエンド回路20を有する通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯電話基地局である。
【0013】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナ12と、高周波フロントエンド回路20と、ミキサ30と、局部発振器32と、D/Aコンバータ(DAC)40と、RF回路50とを備える。また、高周波フロントエンド回路20は、バンドパスフィルタ22,28と、増幅器24と、減衰器26とを含む。なお、図1においては、高周波フロントエンド回路20が、アンテナ12から高周波信号を送信する送信回路を含む場合について説明するが、高周波フロントエンド回路20はアンテナ12で受信した高周波信号を伝達する受信回路を含んでいてもよい。
【0014】
通信装置10は、RF回路50から伝達された送信信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ12から放射する。RF回路50から出力された送信信号である変調済みのデジタル信号は、D/Aコンバータ40によってアナログ信号に変換される。ミキサ30は、D/Aコンバータ40によってデジタル信号からアナログ信号に変換された送信信号を、局部発振器32からの発振信号と混合して高周波信号へとアップコンバートする。バンドパスフィルタ28は、アップコンバートによって生じた不要波を除去して、所望の周波数帯域の送信信号のみを抽出する。減衰器26は、送信信号の強度を調整する。増幅器24は、減衰器26を通過した送信信号を、所定のレベルまで電力増幅する。バンドパスフィルタ22は、増幅過程で生じた不要波を除去するとともに、通信規格で定められた周波数帯域の信号成分のみを通過させる。バンドパスフィルタ22を通過した送信信号は、アンテナ12を介して放射される。
【0015】
上記のような通信装置10におけるバンドパスフィルタ22,28として、本開示に対応したフィルタ装置100を採用することができる。
【0016】
(フィルタ装置100の回路構成)
図2および図3を用いて、実施の形態1に係るフィルタ装置100の回路構成について説明する。図2は、実施の形態1のフィルタ装置100における結合関係を示す図である。図3は、実施の形態1のフィルタ装置100の等価回路図である。
【0017】
図2および図3を参照して、フィルタ装置100は、入力端子T1と、出力端子T2と、入力端子T1と出力端子T2との間に設けられた複数の共振器RT10~RT70とを備える。具体的には、フィルタ装置100は、入力端子T1に接続された共振器RT10と、出力端子T2に接続された共振器RT20と、共振器RT10と共振器RT20との間に設けられた複数の共振器RT30,RT40,RT50,RT60,RT70とを備える。
【0018】
共振器RT10は、本開示の「第1共振器」または「第2共振器」に対応する。共振器RT10は、共振部RT11と、共振部RT12と、共振部RT13と、共振部RT11と共振部RT12とに接続されたキャパシタC14とを含む。
【0019】
共振部RT11は、本開示の「第1共振部」または「第4共振器」に対応する。図3に示されるように、共振部RT11は、入力端子T1と接地端子GNDとの間で並列接続されたインダクタL11とキャパシタC11とを含む。インダクタL11およびキャパシタC11の各々の一方端は入力端子T1に接続され、インダクタL11およびキャパシタC11の各々の他方端は接地端子GNDに接続されている。インダクタL11は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/4の長さを有する導体(後述するビアV11)を含む。共振部RT11は、所謂λ/4共振器である。
【0020】
共振部RT12は、本開示の「第2共振部」または「第5共振器」に対応する。共振部RT12は、キャパシタC14と接地端子GNDとの間で並列接続されたインダクタL12とキャパシタC12とを含む。キャパシタC14の一方端は入力端子T1に接続され、キャパシタC14の他方端はインダクタL12およびキャパシタC12の各々の一方端に接続されている。インダクタL12およびキャパシタC12の各々の一方端はキャパシタC14を介して入力端子T1に接続され、インダクタL12およびキャパシタC12の各々の他方端は接地端子GNDに接続されている。インダクタL12は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/4の長さを有する導体(後述するビアV12)を含む。共振部RT12は、所謂λ/4共振器である。
【0021】
共振部RT13は、本開示の「第3共振部」または「第6共振器」に対応する。共振部RT13は、インダクタL13とキャパシタC13とを含む。インダクタL13の一方端は接地端子GNDに接続され、インダクタL13の他方端はキャパシタC13の一方端に接続されている。キャパシタC13の他方端は接地端子GNDに接続されている。インダクタL13は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/4の長さを有する導体(後述するビアV13)を含む。共振部RT13は、所謂λ/4共振器である。
【0022】
共振器RT20は、本開示の「第1共振器」または「第2共振器」に対応する。共振器RT20は、共振部RT21と、共振部RT22と、共振部RT23と、共振部RT21と共振部RT22とに接続されたキャパシタC24とを含む。
【0023】
共振部RT21は、本開示の「第1共振部」または「第4共振部」に対応する。共振部RT21は、出力端子T2と接地端子GNDとの間で並列接続されたインダクタL21とキャパシタC21とを含む。インダクタL21およびキャパシタC21の各々の一方端は出力端子T2に接続され、インダクタL21およびキャパシタC21の各々の他方端は接地端子GNDに接続されている。インダクタL21は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/4の長さを有する導体(後述するビアV21)を含む。共振部RT21は、所謂λ/4共振器である。
【0024】
共振部RT22は、本開示の「第2共振部」または「第5共振部」に対応する。共振部RT22は、キャパシタC24と接地端子GNDとの間で並列接続されたインダクタL22とキャパシタC22とを含む。キャパシタC24の一方端は出力端子T2に接続され、キャパシタC24の他方端はインダクタL22およびキャパシタC22の各々の一方端に接続されている。インダクタL22およびキャパシタC22の各々の一方端はキャパシタC24を介して出力端子T2に接続され、インダクタL22およびキャパシタC22の各々の他方端は接地端子GNDに接続されている。インダクタL22は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/4の長さを有する導体(後述するビアV22)を含む。共振部RT22は、所謂λ/4共振器である。
【0025】
共振部RT23は、本開示の「第3共振部」または「第6共振部」に対応する。共振部RT23は、インダクタL23とキャパシタC23とを含む。インダクタL23の一方端は接地端子GNDに接続され、インダクタL23の他方端はキャパシタC23の一方端に接続されている。キャパシタC23の他方端は接地端子GNDに接続されている。インダクタL23は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/4の長さを有する導体(後述するビアV23)を含む。共振部RT23は、所謂λ/4共振器である。
【0026】
共振器RT30は、本開示の「中間共振器」に対応する。共振器RT30は、直列接続されたキャパシタC31と、インダクタL31と、キャパシタC32とを含む。キャパシタC31の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC31の他方端はインダクタL31の一方端に接続されている。キャパシタC32の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC32の他方端はインダクタL31の他方端に接続されている。インダクタL31は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有する導体(後述するビアV31)を含む。共振器RT30は、所謂λ/2共振器である。
【0027】
共振器RT40は、本開示の「中間共振器」に対応する。共振器RT40は、直列接続されたキャパシタC41と、インダクタL41と、キャパシタC42とを含む。キャパシタC41の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC41の他方端はインダクタL41の一方端に接続されている。キャパシタC42の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC42の他方端はインダクタL41の他方端に接続されている。インダクタL41は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有する導体(後述するビアV41)を含む。共振器RT40は、所謂λ/2共振器である。
【0028】
共振器RT50は、本開示の「中間共振器」に対応する。共振器RT50は、直列接続されたキャパシタC51と、インダクタL51と、キャパシタC52とを含む。キャパシタC51の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC51の他方端はインダクタL51の一方端に接続されている。キャパシタC52の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC32の他方端はインダクタL51の他方端に接続されている。インダクタL51は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有する導体(後述するビアV51)を含む。共振器RT50は、所謂λ/2共振器である。
【0029】
共振器RT60は、本開示の「中間共振器」に対応する。共振器RT60は、直列接続されたキャパシタC61と、インダクタL61と、キャパシタC62とを含む。キャパシタC61の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC61の他方端はインダクタL61の一方端に接続されている。キャパシタC62の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC62の他方端はインダクタL61の他方端に接続されている。インダクタL61は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有する導体(後述するビアV61)を含む。共振器RT60は、所謂λ/2共振器である。
【0030】
共振器RT70は、本開示の「中間共振器」に対応する。共振器RT70は、直列接続されたキャパシタC71と、インダクタL71と、キャパシタC72とを含む。キャパシタC71の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC71の他方端はインダクタL71の一方端に接続されている。キャパシタC72の一方端は接地端子GNDに接続され、キャパシタC72の他方端はインダクタL71の他方端に接続されている。インダクタL71は、信号の通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有する導体(後述するビアV71)を含む。共振器RT70は、所謂λ/2共振器である。
【0031】
図2に示されるように、共振器RT10の共振部RT11と共振部RT12とは、誘導性結合M1によって結合されている。共振器RT20の共振部RT21と共振部RT22とは、誘導性結合M2によって結合されている。共振器RT10の共振部RT13と共振器RT30とは、誘導性結合M3によって結合されている。共振器RT30と共振器RT40とは、誘導性結合M4によって結合されている。共振器RT40と共振器RT50とは、誘導性結合M5によって結合されている。共振器RT50と共振器RT60とは、誘導性結合M6によって結合されている。共振器RT60と共振器RT70とは、誘導性結合M7によって結合されている。共振器RT70と共振器RT20の共振部RT23とは、誘導性結合M8によって結合されている。さらに、共振器RT40と共振器RT60とは、誘導性結合M9によって結合されている。
【0032】
(フィルタ装置100の内部構成)
図4図6を用いて、実施の形態1に係るフィルタ装置100の内部構成について説明する。図4は、実施の形態1のフィルタ装置100の斜視図である。図5は、実施の形態1のフィルタ装置100の各積層の一例を示す平面図である。図6は、実施の形態1のフィルタ装置100の積層構造の一例を示す分解斜視図である。
【0033】
フィルタ装置100は、複数の誘電体層が所定の方向に沿って積み上げられて形成された、直方体または略直方体の誘電体基板110を備えている。誘電体基板110において、複数の誘電体層が積み上げられている方向を積層方向とする。誘電体基板110における各誘電体層は、たとえば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)のような誘電体セラミック、あるいは、水晶または樹脂などの誘電体材料によって形成される。誘電体基板110の内部において、複数の電極および複数のビアによって各共振器RT10~RT70が構成される。なお、本明細書において「ビア」とは、積層方向における位置が異なる複数の電極を接続するために、誘電体基板に設けられた導体を示す。ビアは、たとえば、導電ペースト、めっき、および/または金属ピンなどによって形成される。
【0034】
以下の説明においては、誘電体基板110の積層方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって誘電体基板110の長辺に沿った方向を「X軸方向」とし、Z軸方向に垂直であって誘電体基板110の短辺に沿った方向を「Y軸方向」とする。また、以下では、各図におけるZ軸の正方向を上側、負方向を下側と称する場合がある。
【0035】
なお、図4図6および後述する図7においては、内部構成を示すために、誘電体基板110の誘電体が省略されており、内部に設けられた電極(平板電極,接地電極)、ビア、および端子などの導電体のみが示されている。
【0036】
図4図6を参照して、誘電体基板110は、XY方向に延伸する下面111および上面112と、下面111の外縁および上面112の外縁をつなぐ側面113とを有する。誘電体基板110は、Z軸の正方向に沿って下面111から上面112に向かって順に、第1層S101(図5(A))、第2層S102(図5(B))、第3層S103(図5(C))、第4層S104(図5(D))、第5層S105(図5(E))、および第6層S106(図5(F))が配置されている。
【0037】
第1層S101は、接地端子GNDに対応する接地電極G100と、入力端子T1と、出力端子T2とが配置されている。接地電極G100には、2つの切り欠き部分K1,K2が形成されており、切り欠き部分K1に入力端子T1が設けられ、切り欠き部分K2に出力端子T2が設けられている。入力端子T1、出力端子T2、および接地端子GNDの各々は、フィルタ装置100と外部機器とを接続するための外部端子として機能する。
【0038】
第2層S102は、接地端子GNDに対応する接地電極G1を含む。接地電極G1は、本開示の「第1接地電極」に対応する。接地電極G1には、2つの切り欠き部分K11,K12が形成されており、切り欠き部分K11に平板電極P1が設けられ、切り欠き部分K12に平板電極P2が設けられている。
【0039】
誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合、第2層S102の切り欠き部分K11,K12は第1層S101の切り欠き部分K1,K2とそれぞれ重なる。第2層S102の切り欠き部分K11に設けられた平板電極P1は、誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、第1層S101の切り欠き部分K1に設けられた入力端子T1と重なる位置に設けられている。第2層S102の切り欠き部分K12に設けられた平板電極P2は、誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、第1層S101の切り欠き部分K2に設けられた出力端子T2と重なる位置に設けられている。
【0040】
第3層S103は、入力端子T1側に配置された平板電極P11,P12と、出力端子T2側に配置された平板電極P21,P22とを含む。平板電極P11,P12は、誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、入力端子T1および平板電極P1と重なる位置に設けられている。平板電極P21,P22は、誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、出力端子T2および平板電極P2と重なる位置に設けられている。平板電極P11,P12,P21,P22の各々は、接地電極G1に接続されることなく、接地電極G1から間隔を空けて配置されている。
【0041】
さらに、第3層S103は、平板電極P311,P411,P511,P611,P711を含む。平板電極P311,P411,P511,P611,P711の各々は、本開示の「第1平板電極」に対応する。平板電極P311,P411,P511,P611,P711の各々は、接地電極G1に接続されることなく、接地電極G1に対向するように接地電極G1から間隔を空けて配置されている。
【0042】
第4層S104は、接地端子GNDに対応する接地電極G3および接地電極G4を含む。接地電極G3,G4の各々は、本開示の「第1中間接地電極」または「第2中間接地電極」に対応する。接地電極G3は、入力端子T1側に配置される一方で、接地電極G4は、出力端子T2側に配置されている。接地電極G3は、誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、入力端子T1、平板電極P1および平板電極P11,P12と重なる位置に設けられている。接地電極G4は、誘電体基板110の法線方向(Z軸方向)から平面視した場合に、出力端子T2、平板電極P2および平板電極P21,P22と重なる位置に設けられている。
【0043】
第5層S105は、平板電極P13,P23,P312,P412,P512,P612,P712を含む。平板電極P312,P412,P512,P612,P712の各々は、本開示の「第2平板電極」に対応する。平板電極P13,P23,P312,P412,P612,P712の各々は、後述する接地電極G2に接続されることなく、接地電極G2に対向するように接地電極G2から間隔を空けて配置されている。
【0044】
第6層S106は、接地端子GNDに対応する接地電極G2を含む。接地電極G2は、接地電極G1と対向するように配置されている。接地電極G2は、本開示の「第2接地電極」に対応する。
【0045】
誘電体基板110には、複数のグランドビアVGが設けられている。複数のグランドビアVGの各々は、Z軸方向に延伸する柱状導体であり、第1層S101~第6層S106の各々の接地電極に接続されている。たとえば、第2層の接地電極G1、第2層の接地電極G2、および第4層の接地電極G3は、グランドビアVG11,VG12を含む複数本(この例では7本)のグランドビアVGによって接続されている。第2層の接地電極G1、第2層の接地電極G2、および第4層の接地電極G4は、グランドビアVG21,VG22を含む複数本(この例では5本)のグランドビアVGによって接続されている。
【0046】
図4および図6に示されるように、入力端子T1と平板電極P1との間には、Z軸方向に延伸するビアV1が設けられている。ビアV1は、入力端子T1と平板電極P1とを接続する。
【0047】
平板電極P1と平板電極P11との間には、Z軸方向に延伸するビアV10が設けられている。ビアV10は、平板電極P1と平板電極P11とを接続する。
【0048】
平板電極P11と接地電極G3との間には、Z軸方向に延伸するビアV11が設けられている。ビアV11は、本開示の「第1導体」に対応し、平板電極P11と接地電極G3とを接続する。
【0049】
平板電極P12と接地電極G3との間には、Z軸方向に延伸するビアV12が設けられている。ビアV12は、本開示の「第1導体」に対応し、平板電極P12と接地電極G3とを接続する。
【0050】
接地電極G3と平板電極P13との間には、Z軸方向に延伸するビアV13が設けられている。ビアV13は、本開示の「第1導体」に対応し、接地電極G3と平板電極P13とを接続する。
【0051】
図2および図3に示した共振器RT10の共振部RT11は、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3および入力端子T1に接続されている。具体的には、共振部RT11は、平板電極P11と、平板電極P11に対向する接地電極G3と、平板電極P11と接地電極G3とを接続するビアV11とから構成される。図3のインダクタL11は、ビアV11によって構成される。図3のキャパシタC11は、平板電極P11と接地電極G1とによって構成される。
【0052】
図2および図3に示した共振器RT10の共振部RT12は、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3に接続されている。なお、共振部RT12は、入力端子T1に接続されていない。具体的には、共振部RT12は、平板電極P12と、平板電極P12に対向する接地電極G3と、平板電極P12と接地電極G3とを接続するビアV12とから構成される。図3のインダクタL12は、ビアV12によって構成される。図3のキャパシタC12は、平板電極P12と接地電極G1とによって構成される。
【0053】
図2および図3に示した共振器RT10の共振部RT13は、接地電極G2と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3に接続されている。具体的には、共振部RT13は、接地電極G3と、接地電極G3に対向する平板電極P13と、接地電極G3と平板電極P13とを接続するビアV13とから構成される。図3のインダクタL13は、ビアV13によって構成される。平板電極P13は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P13と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC13は、平板電極P13と接地電極G2とによって構成される。
【0054】
出力端子T2と平板電極P2との間には、Z軸方向に延伸するビアV2が設けられている。ビアV2は、出力端子T2と平板電極P2とを接続する。
【0055】
平板電極P2と、平板電極P21との間には、Z軸方向に延伸するビアV20が設けられている。ビアV20は、平板電極P2と平板電極P21とを接続する。
【0056】
平板電極P21と接地電極G4との間には、Z軸方向に延伸するビアV21が設けられている。ビアV21は、本開示の「第1導体」に対応し、平板電極P21と接地電極G4とを接続する。
【0057】
平板電極P22と接地電極G4との間には、Z軸方向に延伸するビアV22が設けられている。ビアV22は、本開示の「第1導体」に対応し、平板電極P22と接地電極G4とを接続する。
【0058】
接地電極G4と平板電極P23との間には、Z軸方向に延伸するビアV23が設けられている。ビアV23は、本開示の「第1導体」に対応し、接地電極G4と平板電極P23とを接続する。
【0059】
図2および図3に示した共振器RT20の共振部RT21は、接地電極G1と接地電極G4との間に設けられ、接地電極G4および出力端子T2に接続されている。具体的には、共振部RT21は、平板電極P21と、平板電極P21に対向する接地電極G4と、平板電極P21と接地電極G4とを接続するビアV21とから構成される。図3のインダクタL21は、ビアV21によって構成される。図3のキャパシタC21は、平板電極P21と接地電極G1とによって構成される。
【0060】
図2および図3に示した共振器RT20の共振部RT22は、接地電極G1と接地電極G4との間に設けられ、接地電極G4に接続されている。なお、共振部RT22は、出力端子T2に接続されていない。具体的には、共振部RT22は、平板電極P22と、平板電極P22に対向する接地電極G4と、平板電極P22と接地電極G4とを接続するビアV22とから構成される。図3のインダクタL22は、ビアV22によって構成される。図3のキャパシタC22は、平板電極P22と接地電極G1とによって構成される。
【0061】
図2および図3に示した共振器RT20の共振部RT23は、接地電極G2と接地電極G4との間に設けられ、接地電極G4に接続されている。具体的には、共振部RT23は、接地電極G4と、接地電極G4に対向する平板電極P23と、接地電極G4と平板電極P23とを接続するビアV23とから構成される。図3のインダクタL23は、ビアV23によって構成される。平板電極P23は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P23と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC23は、平板電極P23と接地電極G2とによって構成される。
【0062】
平板電極P311と平板電極P312との間には、Z軸方向に延伸するビアV31が設けられている。ビアV31は、本開示の「第2導体」に対応し、平板電極P311と平板電極P312とを接続する。
【0063】
平板電極P411と平板電極P412との間には、Z軸方向に延伸するビアV41が設けられている。ビアV41は、本開示の「第2導体」に対応し、平板電極P411と平板電極P412とを接続する。
【0064】
平板電極P511と平板電極P512との間には、Z軸方向に延伸するビアV511,V512,V513が設けられている。ビアV511,V512,V513は、本開示の「第2導体」に対応し、平板電極P511と平板電極P512とを接続する。
【0065】
平板電極P611と平板電極P612との間には、Z軸方向に延伸するビアV61が設けられている。ビアV61は、本開示の「第2導体」に対応し、平板電極P611と平板電極P612とを接続する。
【0066】
平板電極P711と平板電極P712との間には、Z軸方向に延伸するビアV71が設けられている。ビアV71は、本開示の「第2導体」に対応し、平板電極P711と平板電極P712とを接続する。
【0067】
図2および図3に示した共振器RT30は、接地電極G1と接地電極G2との間に設けられている。具体的には、共振器RT30は、平板電極P311と、平板電極P311に対向する平板電極P312と、平板電極P311と平板電極P312とを接続するビアV31とから構成される。図3のインダクタL31は、ビアV31によって構成される。平板電極P311は、接地電極G1に接続されていないため、平板電極P311と接地電極G1との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC31は、平板電極P311と接地電極G1とによって構成される。平板電極P312は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P312と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC32は、平板電極P312と接地電極G2とによって構成される。
【0068】
図2および図3に示した共振器RT40は、接地電極G1と接地電極G2との間に設けられている。具体的には、共振器RT40は、平板電極P411と、平板電極P411に対向する平板電極P412と、平板電極P411と平板電極P412とを接続するビアV41とから構成される。図3のインダクタL41は、ビアV41によって構成される。平板電極P411は、接地電極G1に接続されていないため、平板電極P411と接地電極G1との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC41は、平板電極P411と接地電極G1とによって構成される。平板電極P412は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P412と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC42は、平板電極P412と接地電極G2とによって構成される。
【0069】
図2および図3に示した共振器RT50は、接地電極G1と接地電極G2との間に設けられている。具体的には、共振器RT50は、平板電極P511と、平板電極P511に対向する平板電極P512と、平板電極P511と平板電極P512とを接続するビアV511~V513とから構成される。図3のインダクタL51は、ビアV511~V513によって構成される。平板電極P511は、接地電極G1に接続されていないため、平板電極P511と接地電極G1との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC51は、平板電極P511と接地電極G1とによって構成される。平板電極P512は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P512と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC52は、平板電極P512と接地電極G2とによって構成される。
【0070】
共振器RT50は、平板電極P511と平板電極P512との間にビアV511~V513が並列に接続された、ループ形状を有している。このようなループ形状の共振器RT50では、共振器RT50で形成されるインダクタの空芯径が大きくなるので、誘電体基板110のサイズが同じ場合にはQ値を向上させることができる。あるいは、Q値を維持しながら、誘電体基板110のサイズを小さくすることができる。
【0071】
図2および図3に示した共振器RT60は、接地電極G1と接地電極G2との間に設けられている。具体的には、共振器RT60は、平板電極P611と、平板電極P611に対向する平板電極P612と、平板電極P611と平板電極P612とを接続するビアV61とから構成される。図3のインダクタL61は、ビアV61によって構成される。平板電極P611は、接地電極G1に接続されていないため、平板電極P611と接地電極G1との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC61は、平板電極P611と接地電極G1とによって構成される。平板電極P612は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P612と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC62は、平板電極P612と接地電極G2とによって構成される。
【0072】
図2および図3に示した共振器RT70は、接地電極G1と接地電極G2との間に設けられている。具体的には、共振器RT70は、平板電極P711と、平板電極P711に対向する平板電極P712と、平板電極P711と平板電極P712とを接続するビアV71とから構成される。図3のインダクタL71は、ビアV71によって構成される。平板電極P711は、接地電極G1に接続されていないため、平板電極P711と接地電極G1との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC71は、平板電極P711と接地電極G1とによって構成される。平板電極P712は、接地電極G2に接続されていないため、平板電極P712と接地電極G2との間には、局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC72は、平板電極P712と接地電極G2とによって構成される。
【0073】
以上のように、共振器RT10は入力端子T1に接続され、共振器RT20は出力端子T2に接続されている。共振器RT10,RT30,RT40,RT50は、X軸の正方向に、この順に配置されている。共振器RT50,RT60,RT70,RT20は、X軸の負方向に、この順に配置されている。さらに、共振器RT10と共振器RT20、共振器RT30と共振器RT70、および共振器RT40と共振器RT60とは、Y軸方向に隣接している。
【0074】
すなわち、共振器RT10から、共振器RT30、共振器RT40、共振器RT50、共振器RT60、および共振器RT70を経由して、共振器RT20へ至る経路は、共振器RT50を折り返し点として線対称に折り返された形態となっている。
【0075】
共振器RT10~RT70の各々は、TE101モードを基本モードとする共振器であり、Z軸方向を電界方向とし、XY平面に沿った面方向に磁界が回る共振モードで信号が伝達される。
【0076】
隣接する共振器は、誘導性結合あるいは容量性結合によって結合される。一般的に、隣接する共振器間の結合窓における電界方向の間隔(すなわち、Z軸方向の間隔)が狭められると容量性結合となり、結合窓における電界方向に直交する方向の間隔が狭められると誘導性結合となることが知られている。
【0077】
フィルタ装置100においては、共振部RT11の平板電極P11と共振部RT12の平板電極P12との間に局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC14は、平板電極P11と平板電極P12とによって構成される。共振部RT21の平板電極P21と共振部RT22の平板電極P22との間に局部的な容量が形成されている。図3のキャパシタC24は、平板電極P21と平板電極P22とによって構成される。
【0078】
共振部RT11のビアV11と共振部RT12のビアV12との間には、誘導性結合M1が生じている。共振部RT21のビアV21と共振部RT22のビアV22との間には、誘導性結合M2が生じている。共振部RT13のビアV13と共振器RT30のビアV31との間には、誘導性結合M3が生じている。共振器RT30のビアV31と共振器RT40のビアV41との間には、誘導性結合M4が生じている。共振器RT40のビアV41と共振器RT50のビアV51との間には、誘導性結合M5が生じている。共振器RT50のビアV51と共振器RT60のビアV61との間には、誘導性結合M6が生じている。共振器RT60のビアV61と共振器RT70のビアV71との間には、誘導性結合M7が生じている。共振器RT70のビアV71と共振部RT23のビアV23との間には、誘導性結合M8が生じている。共振器RT40のビアV41と共振器RT60のビアV61との間には、誘導性結合M9が生じている。
【0079】
(共振器の通過特性)
図7図13を用いて、共振器RT10の通過特性について説明する。図7は、入力端子T1に接続された共振器RT10の斜視図である。図8は、入力端子T1に接続された共振器RT10における各共振部RT11~RT13の位置関係を簡略的に示す図である。なお、図8および後述する図10図12図16図18図21図24では、接地電極G3を基準として共振部RT11と対称的な位置Aと、接地電極G3を基準として共振部RT12と対称的な位置Bとを結ぶ経路に対して直交し、かつZ軸に対して直交する方向(図7の矢印Yの方向,フィルタ装置100の側面方向)から、共振器RT10をみたときの各共振部RT11~RT13の位置関係が簡略的に示されている。
【0080】
図7および図8を参照して、共振部RT11は、平板電極P11と、平板電極P11に対向する接地電極G3と、平板電極P11と接地電極G3とを接続するビアV11とを含む。ビアV11の一方端は接地電極G3に接続され、ビアV11の他方端はビアV10を介して入力端子T1に接続されている。共振部RT12は、平板電極P12と、平板電極P12に対向する接地電極G3と、平板電極P12と接地電極G3とを接続するビアV12とを含む。ビアV12の一方端は接地電極G3に接続され、ビアV12の他方端は開放端となっている。共振部RT13は、平板電極P12と、平板電極P12に対向する接地電極G3と、平板電極P12と接地電極G3とを接続するビアV12とを含む。ビアV12の一方端は接地電極G3に接続され、ビアV12の他方端は開放端となっている。
【0081】
図8に示されるように、図7の矢印Yの方向から共振器RT10をみたときに、共振部RT13は、接地電極G3を基準として共振部RT11と対称的な位置Aと、接地電極G3を基準として共振部RT12と対称的な位置Bとを結ぶ経路上に設けられている。言い換えると、位置Aと位置Bとを結ぶ経路に対して直交する方向(矢印Yの方向)の側面から共振器RT10をみたときに、共振部RT13は、位置Aと位置Bとの間に配置されている。
【0082】
図9は、図8の共振器RT10の通過特性を示す図である。図9において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN11)および反射損失(破線LN12)が示されている。なお、図9においては、信号が共振器RT10のみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0083】
図9を参照して、共振器RT10においては、通過帯域よりも低周波数側に1つの減衰極AP11が生じ、通過帯域よりも高周波数側に1つの減衰極AP12が生じている。具体的には、29GHz付近に設定された信号の通過帯域よりも低周波数側の約25GHz付近で減衰極AP11が生じ、通過帯域よりも高周波数側の約33GHz付近で減衰極AP12が生じている。
【0084】
図10は、入力端子T1に接続された共振器RT10において共振部の数を減らした場合の例を示す図である。図10に示す例では、共振部RT12を削除した場合の共振器RT10を、共振器RT10Aとして示す。図10に示されるように、共振器RT10Aは、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3および入力端子T1に接続された共振部RT11と、接地電極G2と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3に接続された共振部RT13とから構成されている。
【0085】
図11は、図10の共振器RT10Aの通過特性を示す図である。図11において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN11A)および反射損失(破線LN12A)が示されている。なお、図11においては、信号が共振器RT10Aのみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0086】
図11を参照して、共振器RT10Aにおいては、通過帯域よりも低周波数側の約24GHz付近で1つの減衰極AP11Aが生じている。このことから、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられた共振部RT11と、接地電極G2と接地電極G1との間に設けられた共振部RT13とが作用することで、1つの低周波数側の減衰極(図9のAP11,図11のAP11A)が生じることが分かる。
【0087】
図12は、入力端子T1に接続された共振器RT10において共振部の数を減らした場合の例を示す図である。図12に示す例では、共振部RT13を削除した場合の共振器RT10を、共振器RT10Bとして示す。図12に示されるように、共振器RT10Bは、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3および入力端子T1に接続された共振部RT11と、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられ、接地電極G3に接続された共振部RT12とから構成されている。
【0088】
図13は、図12の共振器RT10Bの通過特性を示す図である。図13において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN11B)および反射損失(破線LN12B)が示されている。なお、図13においては、信号が共振器RT10Bのみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0089】
図13を参照して、共振器RT10Bにおいては、通過帯域よりも高周波数側の約33GHz付近で1つの減衰極AP12Bが生じている。このことから、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられた共振部RT11と、接地電極G1と接地電極G3との間に設けられた共振部RT12とが作用することで、1つの高周波数側の減衰極(図9のAP12,図13のAP12B)が生じることが分かる。
【0090】
図10図13に示されたように、共振器RT10においては、共振部RT11と共振部RT13との作用によって1つの低周波数側の減衰極が生じ、共振部RT11と共振部RT12との作用によって1つの高周波数側の減衰極が生じる。
【0091】
(フィルタ装置の通過特性)
図14および図15を用いて、比較例のフィルタ装置の通過特性と比較しながら、フィルタ装置100の通過特性について説明する。図14は、実施の形態1のフィルタ装置100の通過特性を示す図である。図15は、比較例のフィルタ装置の通過特性を示す図である。
【0092】
なお、比較例のフィルタ装置は、実施の形態1のフィルタ装置100のように3つのλ/4共振器を含む共振器RT10を備えていない代わりに、入力端子T1と接地電極G2との間に1つのλ/2共振器を備えている。具体的には、比較例のフィルタ装置においては、入力端子T1側の共振器が、容量性結合によって入力端子T1に結合されかつ通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有するビアと、接地電極G2と対向しかつ当該ビアに接続される平板電極とを備えている。また、比較例のフィルタ装置は、実施の形態1のフィルタ装置100のように3つのλ/4共振器を含む共振器RT20を備えていない代わりに、出力端子T2と接地電極G2との間に1つのλ/2共振器を備えている。具体的には、比較例のフィルタ装置においては、出力端子T2側の共振器が、容量性結合によって出力端子T2に結合されかつ通過帯域の中心周波数に対応する波長λの1/2の長さを有するビアと、接地電極G2と対向しかつ当該ビアに接続される平板電極とを備えている。
【0093】
図14および図15において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN1,LN201)および反射損失(破線LN2,LN202)が示されている。なお、図14および図15に示されている通過帯域は、24.25GHz~27.5GHzである。
【0094】
図14および図15を参照して、比較例のフィルタ装置においては、通過帯域よりも低周波数側および通過帯域よりも高周波数側のいずれにも減衰極が生じていない。これに対して、実施の形態1のフィルタ装置100においては、通過帯域よりも低周波数側に2つの減衰極AP1,AP2が生じ、通過帯域よりも高周波数側に3つの減衰極AP3,AP4,AP5が生じている。
【0095】
減衰極AP1は、図10および図11を用いて説明したように、共振器RT10の共振部RT11と共振部RT13とが作用することで主に生じている。減衰極AP2は、共振器RT20の共振部RT21と共振部RT23とが作用することで主に生じている。減衰極AP3は、図12および図13を用いて説明したように、共振器RT10の共振部RT11と共振部RT12とが作用することで主に生じている。減衰極AP4は、共振器RT20の共振部RT21と共振部RT22とが作用することで主に生じている。なお、減衰極AP5は、共振器RT40と共振器RT60との間の誘導性結合M9によって主に生じていると考えられる。
【0096】
このように、実施の形態1のフィルタ装置100においては、入力端子T1に接続された共振器RT10および出力端子T2に接続された共振器RT20の各々によって、通過帯域の高周波数側および低周波数側の各々に減衰極が生じる。
【0097】
また、共振器RT10における共振部RT13の位置と、共振器RT20における共振部RT23の位置とを調整することで、共振器RT10の共振によって生じる減衰極AP1の周波数と、共振器RT20の共振によって生じる減衰極AP2の周波数とを一致させることができる。これにより、共振器RT10の共振によって生じる減衰極AP1と、共振器RT20の共振によって生じる減衰極AP2との両方が作用することで、低周波数側の減衰極における信号の減衰量をより大きくすることができる。
【0098】
実施の形態1のフィルタ装置100においては、これらの減衰極AP1~AP5によって、通過帯域よりも低周波数側および高周波数側において、比較例のフィルタ装置よりも急峻かつ高減衰の減衰特性を得られることが分かる。特に、フィルタ装置100においては、通過帯域よりも低周波数側に2つの減衰極が生じているため、低周波数側の急峻性が高い減衰特性が得られ、さらに、通過帯域よりも高周波数側に3つの減衰極が生じているため、高周波数側の急峻性が高い減衰特性が得られる。
【0099】
また、フィルタ装置100においては、各共振器RT10~RT70がビアを用いて伝送線路を構成しているため、ストリップラインを用いて伝送線路を構成している共振器よりも挿入損失を小さくすることができる。
【0100】
以上のように、実施の形態1のフィルタ装置100においては、信号の通過帯域を適切に調整可能にするとともに、非通過帯域における減衰特性を向上させることができる。
【0101】
[変形例]
図16図23を用いて実施の形態1の共振器の変形例について説明する。図16は、変形例の共振器RT101における各共振部RT11~RT13の位置関係を簡略的に示す図である。図16の例では、図7の矢印Yの方向から共振器RT10をみたときに、共振部RT13は、接地電極G3を基準として共振部RT11と対称的な位置Aに設けられている。
【0102】
図17は、図16の共振器RT101の通過特性を示す図である。図17において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN21)および反射損失(破線LN22)が示されている。なお、図17においては、信号が共振器RT101のみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0103】
図17を参照して、共振器RT101においては、通過帯域よりも低周波数側に1つの減衰極AP21が生じ、通過帯域よりも高周波数側に1つの減衰極AP22が生じている。具体的には、29GHz付近に設定された信号の通過帯域よりも低周波数側の約24GHz付近で減衰極AP21が生じ、通過帯域よりも高周波数側の約32GHz付近で減衰極AP22が生じている。
【0104】
図18は、変形例の共振器RT102における各共振部RT11~RT13の位置関係を簡略的に示す図である。図18の例では、図7の矢印Yの方向から共振器RT102をみたときに、共振部RT13は、接地電極G3を基準として共振部RT12と対称的な位置Bに設けられている。
【0105】
図19は、図18の共振器RT102の通過特性を示す図である。図19において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN31)および反射損失(破線LN32)が示されている。なお、図19においては、信号が共振器RT102のみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0106】
図19を参照して、共振器RT102においては、通過帯域よりも低周波数側に1つの減衰極AP31が生じ、通過帯域よりも高周波数側に1つの減衰極AP32が生じている。具体的には、29GHz付近に設定された信号の通過帯域よりも低周波数側の約27GHz付近で減衰極AP31が生じ、通過帯域よりも高周波数側の約33GHz付近で減衰極AP32が生じている。
【0107】
図20は、図8図16、および図18の各共振器RTの通過特性を比較するための図である。図20を参照して、共振部RT13を位置A(共振部RT11側)に近づければ近づけるほど、低周波数側の減衰極が低周波数側に向かって移動し、共振部RT13を位置B(共振部RT12側)に近づければ近づけるほど、低周波数側の減衰極が高周波数側に向かって移動することが分かる。
【0108】
図21は、変形例の共振器RT103における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。図21の例では、図7の矢印Yの方向から共振器RT103をみたときに、共振部RT13は、接地電極G3を基準として共振部RT11と対称的な位置Aと、接地電極G3を基準として共振部RT12と対称的な位置Bとを結ぶ経路とは異なる位置に設けられている。言い換えると、図7の矢印Yの方向から共振器RT103をみたときに、共振部RT13は、共振部RT11と共振部RT12との間の領域よりも外側に配置されている。
【0109】
図22は、図21の共振器RT103の通過特性を示す図である。図において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN31)および反射損失(破線LN32)が示されている。なお、図22においては、信号が共振器RT103のみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0110】
図22を参照して、共振器RT103においては、通過帯域よりも低周波数側に1つの減衰極AP41が生じ、通過帯域よりも高周波数側に1つの減衰極AP42が生じている。具体的には、29GHz付近に設定された信号の通過帯域よりも低周波数側の約24GHz付近で減衰極AP41が生じ、通過帯域よりも高周波数側の約32GHz付近で減衰極AP42が生じている。
【0111】
図23は、図16および図21の各共振器の通過特性を比較するための図である。図23を参照して、共振部RT13を位置A(共振部RT11側)から、位置Bから遠ざかる方向に移動させると、低周波数側の減衰極が高周波数側に向かって移動することが分かる。
【0112】
図20および図23の通過特性を考慮すれば、共振部RT13を位置Bから位置Aに向かって移動させると、低周波数側の減衰極が低周波数側に向かって移動し、さらに、共振部RT13を位置Aから、位置Bから遠ざかる方向に移動させると、低周波数側の減衰極が高周波数側に向かって戻ることが分かる。
【0113】
このように、共振器RT10においては、共振部RT13の位置が変化すると、低周波数側の減衰極が生じる周波数が変化する。これにより、共振器RT10において共振部RT13の位置を変化させることで、フィルタ装置100における信号の通過帯域が所望の通過帯域となるように、通過帯域を適切に調整することができる。
【0114】
なお、図7図23においては、入力端子T1に接続された共振器の構成および通過特性が示されているが、出力端子T2に接続された共振器RT20の構成および通過特性は、図7図23に示す共振器の構成および通過特性と同様のことが言える。すなわち、共振器RT20のビアV2,V21~V23および平板電極P21~P23の位置を、入力端子T1に接続された共振器のビアV1,V11~V13および平板電極P11~P13の位置にそれぞれ対応させることで、共振器RT20においても、入力端子T1に接続された共振器RT10、RT101~103と同じような通過特性を得ることができる。
【0115】
共振器RT20においては、共振器RT10と同様に、共振部RT23の位置が変化すると、低周波数側の減衰極が生じる周波数が変化する。これにより、共振器RT20において共振部RT23の位置を変化させることで、フィルタ装置100における信号の通過帯域が所望の通過帯域となるように、通過帯域を適切に調整することができる。
【0116】
さらに、共振器RT10における共振部RT13の位置と、共振器RT20における共振部RT23の位置とを調整することで、共振器RT10の共振によって生じる低周波数側の減衰極の周波数と、共振器RT20の共振によって生じる低周波数側減の衰極の周波数とを一致させることができる。これにより、共振器RT10の共振によって生じる低周波数側の減衰極と、共振器RT20の共振によって生じる低周波数側の減衰極との両方が作用することで、低周波数側の減衰極における信号の減衰量をより大きくすることができる。
【0117】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、共振器RT10が接地電極G1と接地電極G3との間に1つの共振部RT13を備え、共振器RT20が接地電極G1と接地電極G3との間に1つの共振部RT23を備えていた。しかしながら、共振器RT10および共振器RT20の各々は、接地電極G1と接地電極G3との間に複数の共振部を備えていてもよい。
【0118】
図24は、実施の形態2の共振器RT110における各共振部の位置関係を簡略的に示す図である。図24を参照して、実施の形態2の共振器RT110は、接地電極G2と接地電極G3との間において、共振部RT13に加えて共振部RT14をさらに備える。具体的には、共振器RT110においては、接地電極G3を基準として共振部RT11と対称的な位置Aに共振部RT13が設けられ、接地電極G3を基準として共振部RT12と対称的な位置Bに共振部RT14が設けられている。共振部RT13および共振部RT14の各々は、接地電極G3に接続されている。
【0119】
図25は、図24の共振器RT110の通過特性を示す図である。図25において、横軸には周波数が示されており、縦軸には挿入損失(実線LN51)および反射損失(破線LN52)が示されている。なお、図25においては、信号が共振器RT110のみを通過した場合の通過特性が示されており、他の共振器RT20~RT70の通過特性は考慮されていない。
【0120】
図25を参照して、共振器RT110においては、通過帯域よりも低周波数側に1つの減衰極AP51が生じ、通過帯域よりも高周波数側に2つの減衰極AP52,AP53が生じている。
【0121】
図8図23を用いて説明したように、接地電極G1と接地電極G3との間に1つの共振器RT13のみを設けた場合は通過帯域よりも高周波数側に1つの減衰極が生じるが、接地電極G1と接地電極G3との間に2つの共振器RT13,RT14を設けた場合は通過帯域よりも高周波数側に2つの減衰極AP52,AP53が生じる。減衰極AP51は、図10および図11を用いて説明したように、共振部RT11と共振部RT13とが作用することで主に生じる。減衰極AP52は、図12および図13を用いて説明したように、共振部RT11と共振部RT12とが作用することで主に生じる。追加された減衰極AP53は、共振部RT13と共振部RT14とが作用することで主に生じていると考えられる。
【0122】
このように、共振器は、接地電極G2と接地電極G3との間に複数の共振部を備えるため、高周波数側の減衰極の数が増加する。これにより、フィルタ装置100においては、非通過帯域における減衰特性を向上させることができる。
【0123】
なお、図24および図25においては、入力端子T1に接続された共振器RT110の構成および通過特性が示されているが、出力端子T2に接続された共振器RT20の構成および通過特性は、図24および図25に示す共振器RT110の構成および通過特性と同様のことが言える。すなわち、共振器RT20は、接地電極G2と接地電極G3との間において、共振部RT23に加えて共振部をさらに1つ備えていてもよく、その場合、共振器RT20においても、共振器RT110と同じような通過特性を得ることができる。
【0124】
[その他の変形例]
本開示のフィルタ装置は、上記の実施形態に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示のフィルタ装置に適用可能な変形例について説明する。
【0125】
実施の形態のフィルタ装置100は、中間共振器として、5つの共振器RT30~RT70を備えていたが、フィルタ装置100は、少なくとも1つの中間共振器を備えていればよい。
【0126】
実施の形態のフィルタ装置100は、入力端子T1に接続された共振器RT10および出力端子T2に接続された共振器RT20の両方が複数のλ/4共振器によって構成されていた。しかしながら、入力端子T1に接続された共振器RT10および出力端子T2に接続された共振器RT20のうちのいずれか1つは、入力端子T1または出力端子T2と接地電極G2との間に1つのλ/2共振器を備えるような共振器であってもよい。
【0127】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
10 通信装置、12 アンテナ、20 高周波フロントエンド回路、22,28 バンドパスフィルタ、24 増幅器、26 減衰器、30 ミキサ、32 局部発振器、40 コンバータ、50 回路、100 フィルタ装置、110 誘電体基板、111 下面、112 上面、113 側面、C11,C12,C14,C21,C22,C24,C31,C32,C41,C42,C51,C52,C61,C62,C71,C72 キャパシタ、G1,G2,G3,G4,G100 接地電極、GND 接地端子、K1,K2,K11,K12 切り欠き部分、L11,L12,L13,L21,L22,L23,L31,L41,L51,L61,L71 インダクタ、P1,P2,P11,P12,P13,P21,P22,P23,P311,P312,P411,P412,P511,P512,P611,P612,P711,P712 平板電極、RT10,RT10A,RT10B,RT13,RT14,RT20,RT30,RT40,RT50,RT60,RT70,RT101,RT102,RT103,RT110 共振器、RT11,RT12,RT13,RT14,RT21,RT22,RT23 共振部、S101 第1層、S102 第2層、S103 第3層、S103 第3層、S105 第5層、S106 第6層、T1 入力端子、T2 出力端子、V1,V2,V10,V11,V12,V13,V20,V21,V22,V23,V31,V41,V51,V61,V71,V511,V512,V513 ビア、VG,VG11,VG12,VG21,VG22 グランドビア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25