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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H01G4/32 301A
H01G4/32 511L
H01G4/32 305B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023533528
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025104
(87)【国際公開番号】W WO2023282077
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2021114313
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃
(72)【発明者】
【氏名】稲倉 智生
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-57311(JP,A)
【文献】特開平4-57312(JP,A)
【文献】特開2012-182352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子を備えるフィルムコンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、幅方向に対向する第1端面及び第2端面を有する積層体と、前記積層体の前記第1端面に接続された第1外部電極と、前記積層体の前記第2端面に接続された第2外部電極と、を備え、
前記積層体は、第1誘電体フィルム、第2誘電体フィルム、第1金属層、及び、第2金属層を含み、
前記第1誘電体フィルムは、前記幅方向に直交する厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有し、
前記第2誘電体フィルムは、前記厚み方向に対向する第3主面及び第4主面を有し、
前記積層体では、前記第1誘電体フィルムの前記第2主面と前記第2誘電体フィルムの前記第3主面とが前記厚み方向に対向し、
前記第1金属層は、前記第1外部電極に接続され、
前記第2金属層は、前記第2外部電極に接続され、
前記厚み方向に隣り合う前記第1誘電体フィルム及び前記第2誘電体フィルムにおいて、前記第1誘電体フィルムは、前記第2誘電体フィルムに対して前記第1外部電極側に突出し、
前記第2誘電体フィルムに対して前記第1誘電体フィルムが突出している前記幅方向における長さを第1突出幅としたとき、前記厚み方向における前記積層体の外周部において、前記第1突出幅は、前記厚み方向における前記積層体の中央部よりも大きく、かつ、前記厚み方向における前記積層体の最外周に向かって大きくなっており、
前記厚み方向に隣り合う前記第1誘電体フィルム及び前記第2誘電体フィルムにおいて、前記第2誘電体フィルムは、前記第1誘電体フィルムに対して前記第2外部電極側に突出し、
前記第1誘電体フィルムに対して前記第2誘電体フィルムが突出している前記幅方向における長さを第2突出幅としたとき、前記厚み方向における前記積層体の外周部において、前記第2突出幅は、前記厚み方向における前記積層体の中央部よりも大きく、かつ、前記厚み方向における前記積層体の最外周に向かって大きくなっている、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記厚み方向及び前記幅方向に沿う断面を見たとき、前記第1誘電体フィルムのうち、前記厚み方向における前記積層体の最外周に最も近く、かつ、前記第1突出幅が最も大きい前記第1誘電体フィルムの端部をX1点とし、前記X1点から最も近く、かつ、前記第1突出幅が最も小さい前記第1誘電体フィルムの端部をY1点としたとき、前記X1点と前記Y1点とを通る直線と、前記第1突出幅が最も小さい前記第1誘電体フィルムの端部同士を通る直線とが成す角度は、50°以上80°以下である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記厚み方向及び前記幅方向に沿う断面を見たとき、前記第1誘電体フィルムのうち、前記厚み方向における前記積層体の最外周に最も近く、かつ、前記第1突出幅が最も大きい前記第1誘電体フィルムの端部をX1点とし、前記X1点から最も近く、かつ、前記第1突出幅が最も小さい前記第1誘電体フィルムの端部をY1点としたとき、前記X1点と前記Y1点との間の前記幅方向における長さは、前記第1外部電極の外側端部と前記X1点との間の前記幅方向における長さの5%以上50%以下である、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記厚み方向及び前記幅方向に沿う断面を見たとき、前記第2誘電体フィルムのうち、前記厚み方向における前記積層体の最外周に最も近く、かつ、前記第2突出幅が最も大きい前記第2誘電体フィルムの端部をX2点とし、前記X2点から最も近く、かつ、前記第2突出幅が最も小さい前記第2誘電体フィルムの端部をY2点としたとき、前記X2点と前記Y2点とを通る直線と、前記第2突出幅が最も小さい前記第2誘電体フィルムの端部同士を通る直線とが成す角度は、50°以上80°以下である、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記厚み方向及び前記幅方向に沿う断面を見たとき、前記第2誘電体フィルムのうち、前記厚み方向における前記積層体の最外周に最も近く、かつ、前記第2突出幅が最も大きい前記第2誘電体フィルムの端部をX2点とし、前記X2点から最も近く、かつ、前記第2突出幅が最も小さい前記第2誘電体フィルムの端部をY2点としたとき、前記X2点と前記Y2点との間の前記幅方向における長さは、前記第2外部電極の外側端部と前記X2点との間の前記幅方向における長さの5%以上50%以下である、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記第1金属層は、前記第2外部電極に接続されず、
前記第2金属層は、前記第1外部電極に接続されない、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記第1金属層は、前記第1誘電体フィルムの前記第1主面上に設けられ、
前記第2金属層は、前記第2誘電体フィルムの前記第3主面上に設けられている、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記第1誘電体フィルム及び前記第2誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含む、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記第1誘電体フィルム及び前記第2誘電体フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含む、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
前記コンデンサ素子の外周を覆う外装体をさらに備える、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの一種として、可撓性を有するフィルムを誘電体フィルムとして用いながら、フィルムを挟んで互いに対向する第1金属層及び第2金属層を配置した構造のフィルムコンデンサが知られている。フィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子は、例えば、第1金属層が形成されたフィルムと第2金属層が形成されたフィルムとを巻回又は積層して積層体を作製した後、その積層体の両端面に外部電極を形成することにより製造される。
【0003】
このようなフィルムコンデンサは、例えば、コンデンサ素子の外周を外装体で覆った状態で使用される。フィルムコンデンサの外装としては、コンデンサ素子をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆することや、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を充填したケースで被覆することが一般的である。ケースの材料としては、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が用いられる。
【0004】
特許文献1には、少なくとも片側の表面に金属膜が形成された第1のフィルム部材と、第2のフィルム部材とを重畳して構成される金属化フィルムを備え、該金属化フィルムが巻回されて形成され、かつ巻回された金属化フィルムの幅方向の両端のそれぞれに電極部材が接続されたフィルムコンデンサであって、上記第1のフィルム部材は、上記第2のフィルム部材に対して幅方向に突出するように配置されて上記巻回された金属化フィルムにおいて第1突出端と第1没入端とが積層方向に繰り返されるように構成され、上記金属膜は、上記第1突出端の上記第1没入端から幅方向へ突出する部分において露出するよう構成されている、フィルムコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-4916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のフィルムコンデンサでは、第1突出端と第1没入端とが繰り返されるように構成されることで、金属膜へ電極部材が接続しやすくなるため、第1のフィルム部材を加工することなく、金属化フィルムと電極部材との接触部分の機械的強度を向上させることができる、とされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなフィルムコンデンサは、低温状態及び高温状態を繰り返すように使用されることが想定されておらず、低温状態及び高温状態を繰り返すように使用されると、収縮及び膨張を繰り返す。このように、フィルムコンデンサが収縮及び膨張を繰り返すと、積層体に含まれるフィルムと外部電極と外装体との間で熱収縮率に違いがあるため、その3点が近接した箇所において熱応力が集中する。そのため、応力負荷に対する信頼性を向上させる点で改善の余地があると言える。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、低温状態及び高温状態を繰り返すように使用されても、熱応力が集中する箇所での熱応力を緩和することが可能なフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフィルムコンデンサは、コンデンサ素子を備える。上記コンデンサ素子は、幅方向に対向する第1端面及び第2端面を有する積層体と、上記積層体の上記第1端面に接続された第1外部電極と、上記積層体の上記第2端面に接続された第2外部電極と、を備える。上記積層体は、第1誘電体フィルム、第2誘電体フィルム、第1金属層、及び、第2金属層を含む。上記第1誘電体フィルムは、上記幅方向に直交する厚み方向に対向する第1主面及び第2主面を有する。上記第2誘電体フィルムは、上記厚み方向に対向する第3主面及び第4主面を有する。上記積層体では、上記第1誘電体フィルムの上記第2主面と上記第2誘電体フィルムの上記第3主面とが上記厚み方向に対向する。上記第1金属層は、上記第1外部電極に接続される。上記第2金属層は、上記第2外部電極に接続される。上記厚み方向に隣り合う上記第1誘電体フィルム及び上記第2誘電体フィルムにおいて、上記第1誘電体フィルムは、上記第2誘電体フィルムに対して上記第1外部電極側に突出し、上記第2誘電体フィルムに対して上記第1誘電体フィルムが突出している上記幅方向における長さを第1突出幅としたとき、上記厚み方向における上記積層体の外周部において、上記第1突出幅は、上記厚み方向における上記積層体の中央部よりも大きく、かつ、上記厚み方向における上記積層体の最外周に向かって大きくなっている。上記厚み方向に隣り合う上記第1誘電体フィルム及び上記第2誘電体フィルムにおいて、上記第2誘電体フィルムは、上記第1誘電体フィルムに対して上記第2外部電極側に突出し、上記第1誘電体フィルムに対して上記第2誘電体フィルムが突出している上記幅方向における長さを第2突出幅としたとき、上記厚み方向における上記積層体の外周部において、上記第2突出幅は、上記厚み方向における上記積層体の中央部よりも大きく、かつ、上記厚み方向における上記積層体の最外周に向かって大きくなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温状態及び高温状態を繰り返すように使用されても、熱応力が集中する箇所での熱応力を緩和することが可能なフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を示す断面模式図である。
図2図2は、本発明のフィルムコンデンサの別の一例を示す断面模式図である。
図3図3は、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を示す断面模式図である。
図4図4は、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について、第1金属化フィルムの作製工程を示す斜視模式図である。
図5図5は、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について、第2金属化フィルムの作製工程を示す斜視模式図である。
図6図6は、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について、積層体の作製工程を示す断面模式図である。
図7図7は、図6中の第1フィルムリールから第1金属化フィルムを巻き出す様子を上面視した状態を示す模式図である。
図8図8は、実施例1に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。
図9図9は、参考例1に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。
図10図10は、比較例1に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。
図11図11は、比較例2に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。
図12図12は、実施例1に係るフィルムコンデンサをモデル化して解析対象としたフィルムコンデンサモデルの一例を示す断面模式図である。
図13図13は、実施例1のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。
図14図14は、参考例1のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。
図15図15は、比較例1のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。
図16図16は、比較例2のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。
図17図17は、実施例1に係るフィルムコンデンサをモデル化して解析対象としたフィルムコンデンサモデルの第1変形例を示す断面模式図である。
図18図18は、実施例1に係るフィルムコンデンサをモデル化して解析対象としたフィルムコンデンサモデルの第2変形例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
以下では、本発明のフィルムコンデンサの一例として、誘電体フィルムの主面上に金属層が設けられた金属化フィルムを含むフィルムが積層された状態で巻回されてなる、いわゆる巻回型のフィルムコンデンサについて説明する。本発明のフィルムコンデンサは、誘電体フィルムの主面上に金属層が設けられた金属化フィルムを含むフィルムが積層されてなる、いわゆる積層型のフィルムコンデンサであってもよい。
【0014】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を示す断面模式図である。
【0015】
図1に示すフィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子10を備えている。コンデンサ素子10は、積層体20と、第1外部電極51と、第2外部電極52と、を備えている。図1では、第1外部電極51に第1リード線61が電気的に接続され、第2外部電極52に第2リード線62が電気的に接続されている。
【0016】
図1に示すフィルムコンデンサ1は、さらに、外装体の一例である外装樹脂70を備えている。外装樹脂70は、コンデンサ素子10の外周を覆っている。
【0017】
図2は、本発明のフィルムコンデンサの別の一例を示す断面模式図である。
【0018】
図2に示すフィルムコンデンサ2は、コンデンサ素子10を備えている。コンデンサ素子10は、積層体20と、第1外部電極51と、第2外部電極52と、を備えている。図2では、第1外部電極51に第1リード線61が電気的に接続され、第2外部電極52に第2リード線62が電気的に接続されている。
【0019】
図2に示すフィルムコンデンサ2は、さらに、外装体の一例である充填樹脂71及び外装ケース72を備えている。コンデンサ素子10との間に充填樹脂71が充填された外装ケース72は、コンデンサ素子10の外周を覆っている。
【0020】
外装樹脂70又は充填樹脂71の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。エポキシ樹脂の硬化剤には、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤を使用してもよい。また、外装樹脂70又は充填樹脂71には、樹脂のみを使用してもよいが、強度の向上を目的として、補強剤を添加してもよい。補強剤には、シリカ、アルミナなどを用いることができる。
【0021】
外装ケース72の材料としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)などの樹脂が用いられる。
【0022】
外装ケース72の材料としてLCPが用いられる場合、例えばp-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基とを骨格にもつLCPを使用することができる。また、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸基以外にも、フェノール、フタル酸、エチレンテレフタレートなどの各種成分を用いて、重縮合体を形成したLCPを使用することができる。
【0023】
外装ケース72は、樹脂に加えて、無機充填材をさらに含むことが好ましい。その場合、外装ケース72に含まれる無機充填材は、LCPよりも融点が高い材料であることが好ましく、融点が680℃以上である材料であることがさらに好ましい。
【0024】
無機充填材の形態は特に限定されず、例えば、繊維状又は板状などの長手方向を有するものが挙げられる。これらの無機充填材は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本明細書において、「繊維状」とは、充填材の長手方向長さと、長手方向に垂直な断面における断面径との関係が、長手方向長さ÷断面径≧5(すなわちアスペクト比が5:1以上)である状態を意味する。ここで、断面径は、断面の外周上において最長となる2点間距離とする。断面径が長手方向で異なる場合、断面径が最大となる箇所で測定を行う。また、「板状」とは、投影面積が最大となる面の断面径と、この断面に対して垂直方向における最大高さとの関係が、断面径÷高さ≧3である状態を意味する。
【0026】
無機充填材は、少なくとも直径5μm以上、長さ50μm以上のサイズを有するものであることが好ましい。
【0027】
無機充填材として、具体的には、繊維状のガラスフィラーや板状のタルク又はマイカなどの材料を使用することができる。特に、無機充填材は、ガラスフィラーを主成分として含むことが好ましい。
【0028】
樹脂を含む外装ケース72は、例えば、射出成形などの方法により製造することができる。
【0029】
外装ケース72の外表面の表面自由エネルギーは、34mN/m以上、40mN/m以下であることが好ましい。この場合、外装ケース72の外表面に対して粘着剤、接着テープなどを用いて追加の部材を400N以上の接着力で強固に固定することができる。また、外装ケース72の外表面に表面張力の高いインクで形式番号、特性などを印字することができる。
【0030】
外装ケース72の外表面の表面自由エネルギーは、外装ケース72の組成(樹脂種、フィラー含率)又は外装ケース72の射出成形方法などで変更することができる。これらは一例であって、他の方法で外装ケース72の外表面の表面自由エネルギーを制御することもできる。
【0031】
外装ケース72の外表面の表面自由エネルギーは、外装ケース72上に液体を塗布した際の、ぬれ張力として測定することができる。
【0032】
外装ケース72の外表面のぬれ張力の測定は、例えば有限会社パシフィック化学製のTension Checker TC-B-30~56(フィルムぬれ張力チェックペン)を用いて行うことができる。具体的には、外装ケース72の外表面に、上記のペンのうち、ある数値のペンで線を引き、インクの線が水滴にならず、2秒間変わらなければ、外装ケース72のぬれ張力は、そのペンの数値と同じか、それ以上と判定する。一方、2秒前後で液膜の破れ又は全体に収縮が生じた場合は、次に低い数値のチェックペンで同様の判定を繰り返すことにより、外装ケース72のぬれ張力を判定する。
【0033】
また、外装ケース72の外表面に対する粘着剤の接着力は、例えば、以下の方法で測定することができる。モメンティブ社製のシリコーン系粘着剤TSE322を外装ケース72の外表面に0.1g塗布した後、パナソニック電工(株)製のガラスエポキシ基板R-1705(1.6mm厚)に外装ケース72の粘着剤が塗布された側を押し付ける。80℃で2時間、熱硬化を行った後、(株)イマダ製のデジタルフォースゲージを用いて、外装ケース72を押して剥がれる時の強度を測定することで、外装ケース72の外表面に対する粘着剤の接着力を測定することができる。
【0034】
図3は、本発明のフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子の一例を示す断面模式図である。
【0035】
本明細書中、コンデンサ素子における厚み方向及び幅方向を、図3に示すように、各々、T及びWで定められる方向とする。ここで、厚み方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0036】
図3に示すコンデンサ素子10は、積層体20と、第1外部電極51と、第2外部電極52と、を備えている。
【0037】
積層体20は、幅方向Wに対向する第1端面20a及び第2端面20bを有している。
【0038】
積層体20は、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが厚み方向Tに積層された状態で巻回されてなる巻回体である。
【0039】
コンデンサ素子10では、低背化の観点から、積層体20の巻軸方向(図3では幅方向W)に垂直な断面を見たときに、積層体20の断面形状は、扁平形状であることが好ましい。より具体的には、積層体20の断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、積層体20の断面形状が真円であるときよりも厚みが小さい形状とされることが好ましい。
【0040】
積層体の断面形状が扁平形状となるようにプレスされたかどうかについては、例えば、積層体にプレス痕が存在するかどうかで確認できる。
【0041】
コンデンサ素子10は、円柱状の巻回軸を有していてもよい。巻回軸は、巻回状態の第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22の中心軸上に配置されるものであり、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を巻回する際の巻軸となるものである。
【0042】
第1金属化フィルム21は、第1誘電体フィルム31と、第1金属層41と、を含む。
【0043】
第1誘電体フィルム31は、厚み方向Tに対向する第1主面31a及び第2主面31bを有している。
【0044】
第1金属層41は、第1誘電体フィルム31の第1主面31a上に設けられている。より具体的には、第1金属層41は、第1誘電体フィルム31の第1主面31a上で、幅方向Wにおいて、第1誘電体フィルム31の一方の側縁に届き、第1誘電体フィルム31の他方の側縁に届かないように設けられている。
【0045】
第2金属化フィルム22は、第2誘電体フィルム32と、第2金属層42と、を含む。
【0046】
第2誘電体フィルム32は、厚み方向Tに対向する第3主面32a及び第4主面32bを有している。
【0047】
第2金属層42は、第2誘電体フィルム32の第3主面32a上に設けられている。より具体的には、第2金属層42は、第2誘電体フィルム32の第3主面32a上で、幅方向Wにおいて、第2誘電体フィルム32の一方の側縁に届かず、第2誘電体フィルム32の他方の側縁に届くように設けられている。
【0048】
積層体20では、第1金属層41における第1誘電体フィルム31の側縁に届いている側の端部が積層体20の第1端面20aに露出し、第2金属層42における第2誘電体フィルム32の側縁に届いている側の端部が積層体20の第2端面20bに露出するように、厚み方向Tに隣り合う第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22が幅方向Wにずれている。つまり、厚み方向Tに隣り合う第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22において、第1金属化フィルム21は、第2金属化フィルム22に対して第1外部電極51側に突出している。また、厚み方向Tに隣り合う第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22において、第2金属化フィルム22は、第1金属化フィルム21に対して第2外部電極52側に突出している。このような状態で、第1金属層41は、第1外部電極51に接続され、第2金属層42は、第2外部電極52に接続される。また、第1金属層41は、第2外部電極52に接続されず、第2金属層42は、第1外部電極51に接続されない。
【0049】
積層体20では、厚み方向Tに隣り合う第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22が上述したように幅方向Wにずれていることから、厚み方向Tに隣り合う第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32において、第1誘電体フィルム31は、第2誘電体フィルム32に対して第1外部電極51側に突出している。また、厚み方向Tに隣り合う第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32において、第2誘電体フィルム32は、第1誘電体フィルム31に対して第2外部電極52側に突出している。
【0050】
積層体20は、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが厚み方向Tに積層された状態で巻回されてなることから、第1誘電体フィルム31、第1金属層41、第2誘電体フィルム32、及び、第2金属層42を厚み方向Tに順に含んでいる、と言える。また、積層体20は、第1誘電体フィルム31、第1金属層41、第2誘電体フィルム32、及び、第2金属層42が厚み方向Tに順に積層された状態で巻回されてなる巻回体である、とも言える。
【0051】
積層体20では、第1誘電体フィルム31の第2主面31bと第2誘電体フィルム32の第3主面32aとが厚み方向Tに対向している。また、第1誘電体フィルム31の第1主面31aと第2誘電体フィルム32の第4主面32bとが厚み方向Tに対向している。このように、積層体20では、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが厚み方向Tに積層された状態で巻回されている。言い換えれば、積層体20では、第1金属化フィルム21が第2金属化フィルム22の内側となり、より具体的には、第1金属層41が第1誘電体フィルム31の内側となり、かつ、第2金属層42が第2誘電体フィルム32の内側となるように、第1金属化フィルム21と第2金属化フィルム22とが厚み方向Tに積層された状態で巻回されている。つまり、積層体20では、第1金属層41と第2金属層42とは、第1誘電体フィルム31又は第2誘電体フィルム32を挟んで互いに対向している。
【0052】
第2誘電体フィルム32に対して第1誘電体フィルム31が突出している幅方向Wにおける長さを第1突出幅としたとき、図3に示すように、厚み方向Tにおける積層体20の外周部において、第1突出幅は、厚み方向Tにおける積層体20の中央部よりも大きく、かつ、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に向かって大きくなっている。
【0053】
また、第1誘電体フィルム31に対して第2誘電体フィルム32が突出している幅方向Wにおける長さを第2突出幅としたとき、図3に示すように、厚み方向Tにおける積層体20の外周部において、第2突出幅は、厚み方向Tにおける積層体20の中央部よりも大きく、かつ、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に向かって大きくなっている。
【0054】
上述したように、フィルムコンデンサが低温状態及び高温状態を繰り返すように使用される場合、積層体に含まれるフィルムと外部電極と外装体との間で熱収縮率に違いがあるため、その3点が近接した箇所において熱応力が集中する。本発明のフィルムコンデンサでは、積層体の外周部におけるフィルムの突出幅が積層体の中央部よりも大きく、かつ、積層体の最外周に向かって大きくなる形状とすることで、フィルムと外部電極との接合形状が改善されている。これにより、熱応力が集中する箇所での熱応力を緩和することができる。
【0055】
厚み方向Tにおける積層体20の中央部において、第1突出幅は、図3に示すように一定であることが好ましいが、50μm以下の高低差を有してもよい。同様に、厚み方向Tにおける積層体20の中央部において、第2突出幅は、図3に示すように一定であることが好ましいが、50μm以下の高低差を有してもよい。
【0056】
厚み方向T及び幅方向Wに沿う断面を見たとき、第1誘電体フィルム31のうち、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第1突出幅が最も大きい第1誘電体フィルム31の端部をX1点とし、X1点から最も近く、かつ、第1突出幅が最も小さい第1誘電体フィルム31の端部をY1点としたとき、X1点とY1点とを通る直線と、第1突出幅が最も小さい第1誘電体フィルム31の端部同士を通る直線とが成す角度(図3中、θ1で示す角度であり、第1ピッチ角度θ1とも呼ぶ)は、50°以上80°以下であることが好ましい。この場合、X1点における熱応力を緩和する効果が高い。
【0057】
厚み方向T及び幅方向Wに沿う断面を見たとき、第1誘電体フィルム31のうち、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第1突出幅が最も大きい第1誘電体フィルム31の端部をX1点とし、X1点から最も近く、かつ、第1突出幅が最も小さい第1誘電体フィルム31の端部をY1点としたとき、X1点とY1点との間の幅方向Wにおける長さ(図3中、H1で示す長さであり、第1ピッチ高さH1とも呼ぶ)は、第1外部電極51の外側端部とX1点との間の幅方向Wにおける長さ(図3中、T1で示す長さであり、第1電極厚みT1とも呼ぶ)の5%以上50%以下であることが好ましい。この場合、X1点における熱応力を緩和する効果が高い。
【0058】
厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第1突出幅が最も大きい第1誘電体フィルム31の第2主面31bは、図3に示すように第1外部電極51に覆われていてもよく、第1外部電極51に覆われていなくてもよい。言い換えると、コンデンサ素子10の外周が外装体に覆われる場合、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第1突出幅が最も大きい第1誘電体フィルム31の端部は、外装体に接触しなくてもよく、外装体に接触してもよい。
【0059】
厚み方向T及び幅方向Wに沿う断面を見たとき、第2誘電体フィルム32のうち、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第2突出幅が最も大きい第2誘電体フィルム32の端部をX2点とし、X2点から最も近く、かつ、第2突出幅が最も小さい第2誘電体フィルム32の端部をY2点としたとき、X2点とY2点とを通る直線と、第2突出幅が最も小さい第2誘電体フィルム32の端部同士を通る直線とが成す角度(図3中、θ2で示す角度であり、第2ピッチ角度θ2とも呼ぶ)は、50°以上80°以下であることが好ましい。この場合、X2点における熱応力を緩和する効果が高い。
【0060】
厚み方向T及び幅方向Wに沿う断面を見たとき、第2誘電体フィルム32のうち、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第2突出幅が最も大きい第2誘電体フィルム32の端部をX2点とし、X2点から最も近く、かつ、第2突出幅が最も小さい第2誘電体フィルム32の端部をY2点としたとき、X2点とY2点との間の幅方向Wにおける長さ(図3中、H2で示す長さであり、第2ピッチ高さH2とも呼ぶ)は、第2外部電極52の外側端部とX2点との間の幅方向Wにおける長さ(図3中、T2で示す長さであり、第2電極厚みT2とも呼ぶ)の5%以上50%以下であることが好ましい。この場合、X2点における熱応力を緩和する効果が高い。
【0061】
厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第2突出幅が最も大きい第2誘電体フィルム32の第4主面32bは、図3に示すように第2外部電極52に覆われていてもよく、第2外部電極52に覆われていなくてもよい。言い換えると、コンデンサ素子10の外周が外装体に覆われる場合、厚み方向Tにおける積層体20の最外周に最も近く、かつ、第2突出幅が最も大きい第2誘電体フィルム32の端部は、外装体に接触しなくてもよく、外装体に接触してもよい。
【0062】
第1誘電体フィルム31の端部、第2誘電体フィルム32の端部、第1外部電極51の外側端部、及び、第2外部電極52の外側端部は、各々、平坦であることが好ましいが、50μm以下の高低差を有してもよい。
【0063】
第1ピッチ高さH1、第2ピッチ高さH2、第1電極厚みT1及び第2電極厚みT2等の長さについては、例えば、図3に示す断面を回転研磨機などで作製し、測長機能を有する顕微鏡を用いて測定できる。
【0064】
第1誘電体フィルム31は、硬化性樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0065】
本明細書中、主成分は、重量百分率が最も高い成分を意味し、好ましくは、重量百分率が50重量%よりも高い成分を意味する。
【0066】
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。
【0067】
本明細書中、熱硬化性樹脂は、熱で硬化し得る樹脂を意味しているが、その硬化方法を限定するものではない。したがって、熱硬化性樹脂には、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビーム等)でも硬化し得る樹脂も含まれる。また、材料によっては、材料自体が有する反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱等を与えなくても硬化が進む樹脂についても、熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、光で硬化し得る樹脂である限り、光以外の方法(例えば、熱等)でも硬化し得る樹脂も含まれる。
【0068】
硬化性樹脂は、水酸基(OH基)を有する第1有機材料と、イソシアネート基(NCO基)を有する第2有機材料との硬化物からなることが好ましい。この場合、硬化性樹脂は、第1有機材料の水酸基と第2有機材料のイソシアネート基とが反応して得られるウレタン結合を有する硬化物からなる。
【0069】
第1誘電体フィルム31におけるウレタン結合の存在については、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で分析することにより確認できる。
【0070】
硬化性樹脂が上述した反応により得られる場合、出発材料の未硬化部分が第1誘電体フィルム31中に残留する場合がある。例えば、第1誘電体フィルム31は、水酸基及びイソシアネート基の少なくとも一方を含んでいてもよい。この場合、第1誘電体フィルム31は、水酸基及びイソシアネート基の一方を含んでいてもよいし、水酸基及びイソシアネート基の両方を含んでいてもよい。
【0071】
第1誘電体フィルム31における水酸基及び/又はイソシアネート基の存在については、FT-IRで分析することにより確認できる。
【0072】
第1有機材料としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0073】
第1有機材料としては、複数種類の有機材料が併用されてもよい。
【0074】
第2有機材料としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。第2有機材料としては、これらのポリイソシアネートの少なくとも1種の変性体が用いられてもよいし、これらのポリイソシアネートの少なくとも1種とその変性体との混合物が用いられてもよい。
【0075】
第2有機材料としては、複数種類の有機材料が併用されてもよい。
【0076】
第1誘電体フィルム31は、熱可塑性樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0077】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート等が挙げられる。
【0078】
第1誘電体フィルム31は、各種機能を付加するための添加剤を含んでいてもよい。
【0079】
添加剤としては、例えば、平滑性を付与するためのレベリング剤等が挙げられる。
【0080】
添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成するものであることが好ましい。このような添加剤としては、例えば、水酸基、エポキシ基、シラノール基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0081】
第2誘電体フィルム32も、第1誘電体フィルム31と同様に、硬化性樹脂を主成分として含んでいてもよいし、熱可塑性樹脂を主成分として含んでいてもよい。また、第2誘電体フィルム32も、第1誘電体フィルム31と同様に、添加剤を含んでいてもよい。
【0082】
第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32の組成は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0083】
第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32の厚みは、好ましくは1μm以上、10μm以下であり、より好ましくは3μm以上、5μm以下である。
【0084】
第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32の厚みは、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0085】
第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32の厚みについては、光学式膜厚計を用いて測定できる。
【0086】
第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32は、各々、好ましくは、上述したような樹脂材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形した後、熱処理で硬化させることにより作製される。
【0087】
第1金属層41及び第2金属層42の構成材料としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、スズ、ニッケル等の金属が挙げられる。
【0088】
第1金属層41及び第2金属層42の組成は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0089】
第1金属層41及び第2金属層42の厚みは、好ましくは5nm以上、40nm以下である。
【0090】
第1金属層41及び第2金属層42の厚みは、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0091】
第1金属層41の厚みについては、第1金属化フィルム21の厚み方向における切断面を、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより測定できる。第2金属層42の厚みについても、第1金属層41の厚みと同様に測定できる。
【0092】
第1金属層41及び第2金属層42は、各々、好ましくは、上述したような金属を、第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32の主面に蒸着することにより形成される。
【0093】
第1金属層41には、ヒューズ部が設けられていてもよい。第1金属層41に設けられるヒューズ部は、第1金属層41において、第2金属層42に対向する部分が複数に分割された分割電極部と、第2金属層42に対向しない部分である電極部とを接続する部分である。ヒューズ部が設けられた第1金属層41の電極パターンとしては、例えば、特開2004-363431号公報、特開平5-251266号公報等に開示された電極パターンが挙げられる。
【0094】
第2金属層42にも、第1金属層41と同様に、ヒューズ部が設けられていてもよい。
【0095】
第1外部電極51は、積層体20の第1端面20aに接続されている。より具体的には、第1外部電極51は、積層体20の第1端面20aに露出した第1金属層41の端部に接触することで、第1金属層41に接続されている。一方、第1外部電極51は、第2金属層42に接続されていない。
【0096】
第2外部電極52は、積層体20の第2端面20bに接続されている。より具体的には、第2外部電極52は、積層体20の第2端面20bに露出した第2金属層42の端部に接触することで、第2金属層42に接続されている。一方、第2外部電極52は、第1金属層41に接続されていない。
【0097】
第1外部電極51及び第2外部電極52の構成材料としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、亜鉛-アルミニウム合金等の金属が挙げられる。
【0098】
第1外部電極51及び第2外部電極52の組成は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0099】
第1外部電極51及び第2外部電極52は、各々、好ましくは、積層体20の第1端面20a及び第2端面20bに、上述したような金属を溶射することにより形成される。
【0100】
コンデンサ素子10は、例えば、以下の方法で製造される。
【0101】
<金属化フィルムの作製工程>
図4は、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について、第1金属化フィルムの作製工程を示す斜視模式図である。図5は、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について、第2金属化フィルムの作製工程を示す斜視模式図である。
【0102】
まず、例えば、上述した第1有機材料、第2有機材料、添加剤等を混合することにより、樹脂溶液を作製する。そして、得られた樹脂溶液をフィルム状に成形した後、熱処理で硬化させることにより、図4及び図5に示すような、第1誘電体フィルム31及び第2誘電体フィルム32を作製する。
【0103】
次に、図4に示すように、第1誘電体フィルム31の第1主面31aに、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、スズ、ニッケル等の金属を蒸着して第1金属層41を形成することにより、第1金属化フィルム21を作製する。この際、幅方向において、第1誘電体フィルム31の一方の側縁に届き、第1誘電体フィルム31の他方の側縁に届かないように、第1金属層41を形成する。
【0104】
また、図5に示すように、第2誘電体フィルム32の第3主面32aに、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、スズ、ニッケル等の金属を蒸着して第2金属層42を形成することにより、第2金属化フィルム22を作製する。この際、幅方向において、第2誘電体フィルム32の一方の側縁に届かず、第2誘電体フィルム32の他方の側縁に届くように、第2金属層42を形成する。
【0105】
<積層体の作製工程>
図6は、本発明のフィルムコンデンサの製造方法の一例について、積層体の作製工程を示す断面模式図である。
【0106】
まず、図6に示すように、第1金属化フィルム21が第1リール軸111に巻回された第1フィルムリール101と、第2金属化フィルム22が第2リール軸112に巻回された第2フィルムリール102とを準備する。
【0107】
次に、第1フィルムリール101から第1金属化フィルム21を巻き出し、第2フィルムリール102から第2金属化フィルム22を巻き出す。この際、第1誘電体フィルム31の第2主面31bと第2誘電体フィルム32の第3主面32aとが対向するように、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を巻き出す。
【0108】
そして、巻き出された第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22は、幅方向にずれて重なった状態で、巻回軸200に巻回される。
【0109】
図7は、図6中の第1フィルムリールから第1金属化フィルムを巻き出す様子を上面視した状態を示す模式図である。
【0110】
図7に示すように、第1金属化フィルム21を巻き出す際、第1リール軸111は、巻き出し方向に直交する幅方向(両矢印で示す方向)に揺動可能である。第1リール軸111が幅方向に揺動することにより、第1金属化フィルム21が同じ幅方向に動きつつ巻き出される。
【0111】
第2金属化フィルム22を巻き出す際も同様に、第2リール軸112は、巻き出し方向に直交する幅方向に揺動可能である。これにより、第2金属化フィルム22が同じ幅方向に動きつつ巻き出される。
【0112】
したがって、第1リール軸111及び第2リール軸112を揺動させる際、揺動タイミング、揺動距離等の揺動条件を調整することにより、上述した第1突出幅及び第2突出幅を調整できる。その結果、図3に示したような構造を有する積層体20を、巻回軸200に巻回された状態で作製できる。
【0113】
また、巻回軸200の巻回速度を、第1リール軸111及び第2リール軸112の揺動条件と組み合わせて調整することによっても、第1突出幅及び第2突出幅を調整できる。
【0114】
なお、第1リール軸111及び第2リール軸112を幅方向に揺動させる代わりに、巻回軸200を幅方向に揺動させたり、第1金属化フィルム21及び第2金属化フィルム22を走行させる走行ローラを幅方向に揺動させたりしても、図3に示したような構造を有する積層体20を、巻回軸200に巻回された状態で作製できる。
【0115】
その後、必要に応じて、得られた積層体20を、幅方向に直交する方向から挟んで楕円円筒形状にプレスしてもよい。
【0116】
<外部電極の形成工程>
積層体20の第1端面20aに、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、亜鉛-アルミニウム合金等の金属を溶射することにより、図3に示した第1外部電極51を、第1金属層41に接続されるように形成する。
【0117】
また、積層体20の第2端面20bに、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、亜鉛-アルミニウム合金等の金属を溶射することにより、図3に示した第2外部電極52を、第2金属層42に接続されるように形成する。
【0118】
以上により、図3に示したコンデンサ素子10が製造される。
【0119】
その後、必要に応じて、得られた第1外部電極51及び第2外部電極52の各々にリード線などの導体端子を接続した後、コンデンサ素子10の外周を外装体で覆ってもよい。
【0120】
以上により、図1に示したフィルムコンデンサ1又は図2に示したフィルムコンデンサ2が製造される。
【実施例
【0121】
以下、本発明のフィルムコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
図8は、実施例1に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。図9は、参考例1に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。図10は、比較例1に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。図11は、比較例2に係るフィルムコンデンサを構成するコンデンサ素子を示す断面模式図である。
【0123】
実施例1、参考例1、比較例1及び比較例2では、フィルムコンデンサをモデル化したフィルムコンデンサモデルを解析対象としてFEM(有限要素法)による応力解析を行った。
【0124】
図12は、実施例1に係るフィルムコンデンサをモデル化して解析対象としたフィルムコンデンサモデルの一例を示す断面模式図である。図13は、実施例1のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。
【0125】
図12に示すように、フィルム部A及び外部電極部Cの幅は30mm、厚みは5mmとし、全体を厚み1mmの外装部Bで覆う構造とした。フィルム部Aと外装部Bと外部電極部Cとが接触する箇所をX1点とし、X1点から最も近く、かつ、フィルム部Aの最も低い点をY1点とした。
【0126】
図12では、第1ピッチ角度θ1は71°、第1ピッチ高さH1は1.5mm(第1電極厚みT1に対する第1ピッチ高さH1の比は30%)とした。
【0127】
図14は、参考例1のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。図15は、比較例1のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。図16は、比較例2のフィルムコンデンサモデルを示す断面模式図である。
【0128】
実施例1、参考例1、比較例1及び比較例2のフィルムコンデンサモデルにおいて、フィルム部Aは熱硬化性樹脂フィルム(線膨張係数:60×10-6/℃)、外装部Bはエポキシ樹脂(線膨張係数:27×10-6/℃)、外部電極部CはAl-Zn電極(線膨張係数:30.2×10-6/℃)により構成した。熱硬化性樹脂フィルム、エポキシ樹脂及びAl-Zn電極の特性を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例1、参考例1、比較例1及び比較例2のフィルムコンデンサモデルに対して、雰囲気温度を25℃から125℃とした際におけるX1点に加わる最大熱応力を確認した。さらに、X1点と反対側のX2点に加わる最大熱応力を確認した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
表2より、実施例1では、参考例1、比較例1及び比較例2と比べてX1点及びX2点における熱応力が緩和されている。
【0133】
実施例1のフィルムコンデンサモデルに対して、第1ピッチ角度θ1及び第1ピッチ高さH1を表3に示す値に変更して、上記と同様の方法によりX1点及びX2点に加わる最大熱応力を確認した。表2の参考例1を基準として、X1点及びX2点に加わる最大熱応力が20MPa未満であれば○、20MPa以上25MPa未満であれば△と評価した。結果を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
表3より、第1ピッチ角度θ1、及び、第1電極厚みT1に対する第1ピッチ高さH1の比が所定の範囲において、X1点及びX2点における熱応力が表2の参考例1よりも緩和されている。
【0136】
実施例1のフィルムコンデンサモデルに対して、熱硬化性樹脂フィルムに代えて、熱可塑性樹脂フィルムであるポリプロピレンフィルム(線膨張係数:100×10-6/℃)を用いて、表3と同じ形状のフィルムコンデンサモデルを構成した。ポリプロピレンフィルムの特性を表4に示す。
【0137】
【表4】
【0138】
上記と同様の方法により、X1点及びX2点に加わる最大熱応力を確認した。結果を表5に示す。
【0139】
【表5】
【0140】
表5より、第1ピッチ角度θ1、及び、第1電極厚みT1に対する第1ピッチ高さH1の比が表5に示す全ての範囲において、X1点及びX2点における熱応力が表2の参考例1よりも緩和されている。
【0141】
図17は、実施例1に係るフィルムコンデンサをモデル化して解析対象としたフィルムコンデンサモデルの第1変形例を示す断面模式図である。
【0142】
図17では、外部電極部Cの厚みが5mmであり、第1ピッチ角度θ1は71°、第1ピッチ高さH1は2.5mm(第1電極厚みT1に対する第1ピッチ高さH1の比は50%)とした。この場合、X1点における熱応力は5.7MPaであった。X1点と反対側のX2点における熱応力も5.7MPaであった。
【0143】
図18は、実施例1に係るフィルムコンデンサをモデル化して解析対象としたフィルムコンデンサモデルの第2変形例を示す断面模式図である。
【0144】
図18では、外部電極部Cの厚みが1mmであり、第1ピッチ角度θ1は71°、第1ピッチ高さH1は0.5mm(第1電極厚みT1に対する第1ピッチ高さH1の比は50%)とした。この場合、X1点における熱応力は5.7MPaであった。X1点と反対側のX2点における熱応力も5.7MPaであった。
【0145】
以上より、X1点及びX2点に加わる熱応力は、第1ピッチ角度θ1、及び、第1電極厚みT1に対する第1ピッチ高さH1の比に依存していると考えられる。
【符号の説明】
【0146】
1、2 フィルムコンデンサ
10 コンデンサ素子
20 積層体
20a 積層体の第1端面
20b 積層体の第2端面
21 第1金属化フィルム
22 第2金属化フィルム
31 第1誘電体フィルム
31a 第1誘電体フィルムの第1主面
31b 第1誘電体フィルムの第2主面
32 第2誘電体フィルム
32a 第2誘電体フィルムの第3主面
32b 第2誘電体フィルムの第4主面
41 第1金属層
42 第2金属層
51 第1外部電極
52 第2外部電極
61 第1リード線
62 第2リード線
70 外装樹脂(外装体)
71 充填樹脂(外装体)
72 外装ケース(外装体)
101 第1フィルムリール
102 第2フィルムリール
111 第1リール軸
112 第2リール軸
200 巻回軸
H1 第1ピッチ高さ
H2 第2ピッチ高さ
T1 第1電極厚み
T2 第2電極厚み
θ1 第1ピッチ角度
θ2 第2ピッチ角度

図1
図2
図3
図4
図5
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