(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】搬送状態検知装置、及び搬送状態検知方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20241008BHJP
B65G 15/08 20060101ALI20241008BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241008BHJP
【FI】
B65G43/08 E
B65G15/08 A
G06T7/00 350C
G06T7/00 610Z
(21)【出願番号】P 2023535800
(86)(22)【出願日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2023008373
(87)【国際公開番号】W WO2023171625
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2022034561
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河西 萌
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】西名 慶晃
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108664874(CN,A)
【文献】特開2000-304523(JP,A)
【文献】特開2019-169010(JP,A)
【文献】特開2001-272209(JP,A)
【文献】特開2021-017296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/08
B65G 15/08
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトコンベアで搬送されるベルト上の搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知装置であって、
搬送物を搬送する上記ベルトを上方から撮像する撮像装置と、
上記撮像装置が撮像した撮像画像を画像処理することで、
一つの撮像画像の内容から上記ベルト上の搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知部と、
を備え、
上記搬送状態検知部は、
画像処理によって、上記ベルト上に存在する上記搬送物の領域に関する情報である搬送物領域情報を取得する画像処理部と、
取得した上記搬送物領域情報に基づき、上記ベルト上に積載されている搬送物の状態である上記搬送状態を判定する状態判定部と、
を備える、
搬送状態検知装置。
【請求項2】
上記搬送状態検知部は、上記搬送物の搬送状態として、上記ベルト上の搬送物の有無及び上記ベルトによる搬送物の搬送量の情報の少なくとも一方の情報を検知する、
請求項1に記載した搬送状態検知装置。
【請求項3】
1台のベルトコンベアのベルトの延在方向に沿って2台以上の上記撮像装置を備え、
上記搬送状態検知部は、各撮像装置の撮像位置での搬送状態をそれぞれ判定し、判定した複数の搬送状態から、搬送状態の変化を判定する、
請求項1に記載した搬送状態検知装置。
【請求項4】
上記画像処理部は、予め撮像した上記撮像画像について、ベルト上の搬送物の領域、ベルトの領域、及びそれ以外の領域のどの領域のクラスに分類されるかを画素ごとにラベリングした教師画像データを、畳み込みニューラルネットワークで学習することで作成した学習済みモデルを用いて、上記撮像装置が撮像した撮像画像から、上記搬送物領域情報を取得する、
請求項1に記載した搬送状態検知装置。
【請求項5】
上記搬送状態検知部は、上記ベルト上に存在する搬送物の面積を算出し、算出した搬送物の面積から上記搬送物の搬送量を搬送状態の情報として求める搬送量算出部を備える、
請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載した搬送状態検知装置。
【請求項6】
上記搬送状態検知部は、上記搬送量算出部が求めた搬送量が、予め設定した許容範囲内か否かを判定し、許容範囲外と判定すると、その判定結果を出力する判定情報出力部を備える、
請求項
5に記載した搬送状態検知装置。
【請求項7】
ベルトコンベアのベルトで搬送される搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知方法であって、
搬送物を搬送するベルトを上方から撮像し、撮像した撮像画像を画像処理することで、
一つの撮像画像の内容から上記ベルト上の搬送物の搬送状態を判定し、
上記画像処理によって、上記ベルト上に存在する上記搬送物の領域に関する情報である搬送物領域情報を取得し、
取得した上記搬送物領域情報に基づき、上記ベルト上に積載されている搬送物の状態である上記搬送状態を判定する、
搬送状態検知方法。
【請求項8】
1台のベルトコンベアのベルトの延在方向に沿った2カ所以上の位置で上記撮像を行い、
その各撮像の位置での搬送状態をそれぞれ判定し、判定した複数の搬送状態から、搬送状態の変化を判定する、
請求項7に記載した搬送状態検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアで搬送されるベルト上の搬送物の搬送状態を、画像処理にて自動検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原料ヤードに貯蔵された原料(搬送物)は、製鉄所の生産に応じて、次工程である焼結、コークス、高炉等の各工場に搬送される。このため、原料ヤードでの原料の搬送能力が製鉄所の生産に大きく影響する。原料ヤード内には、原料の搬送のために多数のベルトコンベアが設置されている。そして、種類や銘柄の異なる原料を搬送する。このため、各種の原料は、落下式のシュート等を利用した乗り継ぎ部により、複数のベルトコンベアを乗り継いで目的の場所に向けて搬送される構成となっている。
【0003】
このとき、ベルトコンベアの乗り継ぎ部でのベルトへの原料積載時に、原料がベルトの幅方向に片寄って乗ってしまうことがある。この場合、原料の搬送中に落鉱(ベルトからの原料の落下)が生じてしまうことがある。特に、原料の搬送量(ベルトへの積載量)が増加するほど、落鉱のリスクが高まる。また、落鉱にともなって、ベルトコンベアやその周辺の設備での機械トラブルや清掃コストが増加する。
【0004】
従来は、カメラで撮影した画像をオペレータが画面上で見て、ベルト上の原料の搬送状態を監視している。しかし、人の目によって、ベルトコンベアによる搬送状態を常時監視することは難しい。このため、従来、落鉱のリスクを回避するために、ベルトへの原料の積載量を安全サイドで操業していた。つまり、ベルト幅に対し、原料の搬送量の余力を大きく残して操業していた。そして、このことは、原料ヤードでの原料の搬送能力を抑える一因となる。
このため、近年、人の目での監視によらずに、複数のベルトコンベアの搬送状態をまとめて監視することが望まれている。
【0005】
ここで、ベルトコンベアのベルト異常を監視する技術として、例えば特許文献1又は2に記載された技術がある。
特許文献1では、搬送物を搬送するベルトコンベアを管理するために、ベルトの画像を連続的に取得する。更に、特許文献1では、連続的に取得した画像群の位置関係からベルトの位置を判別する。そして、特許文献1には、判別したベルトの位置関係から、ベルトコンベアの異常発生の危険度を判別する、ことが開示されている。
また、特許文献2では、ベルトの幅方向端部領域の画像データを、劣化レベル判定モデルに入力して、ベルトの幅方向端部領域の劣化レベルを判定する。そして、特許文献2には、判定したベルト位置の情報とそのベルト位置に対する劣化レベルの情報を出力する、ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-18999号公報
【文献】特開2021-17296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2に記載のベルト異常を監視する方法では、走行するベルトの蛇行などベルト自体の異常状態を監視することは可能である。しかし、特許文献1及び2に記載の方法では、搬送物の積載量(搬送量)が少なすぎるなど、ベルト上の搬送物の異常を直接、検知することはできない。
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、ベルト上の搬送物の搬送状態を自動検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題解決のために、本発明の一態様は、ベルトコンベアで搬送されるベルト上の搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知装置であって、搬送物を搬送する上記ベルトを上方から撮像する撮像装置と、上記撮像装置が撮像した撮像画像を画像処理することで、上記ベルト上の搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知部と、を備えることを要旨とする。
【0010】
また、本発明の態様は、ベルトコンベアのベルトで搬送される搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知方法であって、搬送物を搬送するベルトを上方から撮像し、撮像した撮像画像を画像処理することで、上記ベルト上の搬送物の搬送状態を判定する、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、搬送物を搬送するベルトを撮像した撮像画像について画像処理を行う。この結果、本発明の態様によれば、ベルト上の搬送物の搬送状態を、自動検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るベルトコンベア及び搬送状態検知装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】上行きベルトをベルト走行方向からみた図である。
【
図4】本発明に基づく実施形態に係る撮像画像の例を示す図である。(a)は撮像部(カメラ)が撮像した撮像画像を、(b)は、撮像部(カメラ)が撮像した画像から一部領域を切り出した撮像画像を示す。
【
図5】学習済みモデルでの入力((a))と出力((b))のイメージを示す図である。
【
図6】搬送状態検知部及び判定情報出力部での処理例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、原料ヤードには、ベルトコンベアが多数設置されている。原料は、ベルトコンベアによって原料ヤードまで搬送されて原料山として貯蔵される。また、原料は、必要に応じて、ベルトコンベアによって次工程に供給される。原料ヤードでは、種類や銘柄の異なる原料が、落下式のシュート等を利用した乗り継ぎ部により複数のベルトコンベアを乗り継いで搬送される。
本実施形態では、原料ヤードで用いるベルトコンベアへの適用を想定して説明する。しかし、本開示は、その他のベルトコンベアの設備に対しても適用できる。
また、本実施形態では、ベルトで搬送される搬送物として、バラ物からなる原料を例に説明する。搬送物は、バラ物に限定されない。
なお、以下の説明では、搬送物を原料とも記載する。
【0014】
(全体構成)
図1は、本実施形態のベルトコンベア1及び搬送状態検知装置21を示す概略図である。
【0015】
<ベルトコンベア1>
ベルトコンベア1は、無端状のベルト3と、プーリー7とを備える。ベルト3は、駆動プーリー7a及び複数の従動プーリー7bからなるプーリー7の回転により、所定の張力を持って、複数のローラー8上を走行する。駆動プーリー7aは、電動機5により減速機6を介して回転駆動される。
本実施形態では、ローラー8のうち、上行きベルト3aを支持するローラーは、
図2に示すように、中央ローラー8aと、左右ローラー8bとの組合せから構成される。中央ローラー8aは、ベルト幅方向(
図2における左右方向)において、幅方向中央に配置される。左右ローラー8bは、中央ローラー8aの左右に配置されて軸が傾斜したローラーである。これによって、ローラー8は、上行きベルト3aを台形状に支持可能となっている。なお、下行きベルト3b側を支持するローラー8は、一本のローラーで構成される。もっとも、ローラー8によるベルト3の支持構成は、これに限定されない。
【0016】
また、本実施形態では、シュート等からなる原料投入装置20が、上行きベルト3aの搬送方向上流に位置する。原料投入装置20から、搬送物としての原料2がベルト3上に積載されて、走行するベルト3で原料2が搬送される。そして、原料2は、上行きベルト3aで搬送方向下流まで搬送され、順次、シュート4に投入される。
【0017】
<搬送状態検知装置21>
搬送状態検知装置21は、ベルト3上に積載されている原料2の搬送状態を検知する装置である。原料2の搬送状態は、例えば、走行するベルト3上の原料2の載置状態である。
搬送状態検知装置21は、
図1に示すように、撮像装置9と搬送状態検知部10とを備える。符号11は、撮像画像を蓄積する画像蓄積装置としてのデータベースである。
【0018】
<撮像装置9>
本実施形態の撮像装置9は、可視カメラからなる。撮像装置9は、ベルトコンベア1のベルト3のうち、上行きベルト3aを上方から撮像して、撮像画像を取得する。
図4は、撮像画像の例を示す模式図である。撮像装置9は、ベルト3の少なくとも幅方向両端部が撮像されるように調節して設置されている。
図1の例では、撮像装置9の撮像軸は、ベルト3の走行方向に傾けて設置されている。
なお、撮像装置9の設置場所は、ベルト3を十分に監視可能な視野を確保する必要がある。また、
図1では、1台のベルトコンベア1に1台の撮像装置9を設ける場合を図示している。上行きベルト3aの延在方向(走行方向)に沿って2台以上の撮像装置9を設けても良い。この場合、搬送方向に沿った2カ所での搬送状態の違いから、途中での落鉱等を検出できる。
【0019】
<搬送状態検知部10>
搬送状態検知部10は、
図3に示すように、画像処理部10Aと、状態判定部10Bと、判定情報出力部10Cとを備える。
【0020】
<画像処理部10A>
画像処理部10Aは、撮像装置9が撮像した撮像画像について画像処理を行う。そして、画像処理部10Aは、搬送物領域情報及びベルト領域情報のうち、少なくとも搬送物領域情報を取得する。搬送物領域情報は、ベルト3上での原料2の領域の情報である搬送物領域情報である。ベルト領域情報は、原料2が載っていないベルト3(ベルト3の上面が露出している部分)の領域の情報である。
搬送物領域情報としては、載置されている原料2の位置情報などが例示できる。
画像処理部10Aは、画像処理として、取得した画像について2値化その他の強調処理を行う構成でもよい。この場合、画像中のベルト3の幅方向端部位置や、ベルト3上に載置された原料2の外周輪郭位置を検出する。そして、検出した位置から、ベルト領域情報や搬送物領域情報を取得する。
【0021】
しかし、原料ヤードのベルトコンベア1は室外に置かれることも多い。この場合、周りの環境(季節や天候など)によって、強調処理では、撮像画像から画像中のベルト3の幅方向端部位置の検出精度が悪くなるおそれがある。また、強調処理では、ベルト3上に載置されている原料2の外周輪郭位置の検出精度が悪くなるおそれがある。
このため、本実施形態では、予め、学習済みモデル12を、教師有りデータを用いた、深層学習などの機械学習によって予め生成しておく。学習済みモデル12は、撮像画像を入力とし、ベルト3上に載置されている原料2の載置位置の領域の搬送物領域情報を出力とするモデルである。
そして、本実施形態の画像処理部10Aは、撮像画像を入力データとし、上記の学習済みモデル12を使用して搬送物領域情報を取得することとする。
学習済みモデル12を得るための機械学習としては、例えばセマンティックセグメンテーションが例示できる。
【0022】
セマンティックセグメンテーションを採用する場合を考える。この場合、予め撮像した学習用の撮像画像を構成する各画素についてそれぞれ、3つの領域のクラスいずれかにラベリングした教師画像データを作成する。3つの領域とは、ベルト3上の原料2の領域、原料位置を除くベルト3の領域、及びそれ以外の領域である。すなわち、画像中を、ベルト3上の原料2の領域、ベルト3の領域、及びそれ以外の領域に分割する。そして、画像中の画素について、それぞれどの領域(クラス)に分類されるかラベリングして教師画像データを作成する。そして、多数の教師画像データを畳み込みニューラルネットワークで学習させることで、学習済みモデル12を生成する。学習済みモデル12は、撮像画像(入力データ)を入力とし、撮像画像中の少なくとも原料2の領域に関する情報を出力する。
【0023】
ここで、撮像装置9で撮像する時間帯や天候が異なる複数の教師画像データを用いてモデルを生成するとよい。これによって、屋外でのベルトコンベア1の撮像画像であっても、安定して精度良く原料2の領域が検出できる。この結果、原料2の搬送状態の自動監視が精度よく可能となる。
学習済みモデル12の出力情報は、例えば、撮像画像中の、どの領域が原料2の領域で、どの領域がベルト3の領域なのかの情報が付与されたデータである。なお、原料2の領域は、1つの領域で構成されている場合もあるし、複数の領域に分かれて構成されている場合もある。
【0024】
セマンティックセグメンテーションを用いた学習済みモデル12を使用した場合、次のような出力になる。つまり、出力画像中の原料2の領域の画素に対し、画素毎に、原料2の領域である旨の識別情報(搬送物領域情報)が付与された画像データが出力される。すなわち、セマンティックセグメンテーションを用いた学習済みモデル12の出力値である画像データでは、原料2かベルト3かその他かの識別情報が画素毎に付与されている。これにより、どの領域が原料2で、どの領域がベルト3なのか識別することができる。例えば、学習済みモデル12は、クラス毎に画素の色を変えて表示した画像データを出力する。
そして、画像処理部10Aは、上記の学習済みモデル12を用いて、撮像装置9が撮像した撮像画像を入力とし、搬送物領域情報を含む画像データを出力する。
【0025】
ここで、学習済みモデル12に入力する撮像画像は、撮像装置9が撮像した画像そのものである必要は無い。撮像装置9が、
図4(a)のように、ベルト3の長手方向(走行方向)に所定長さ撮像するように設定されている場合を考える。この場合、その撮像した撮像画像から長手方向の一部を切り出した、
図4(b)のような領域の画像を学習済みモデル12に入力する撮像画像としても良い。切り出す領域は、画像データの搬送状態の検知が必要な特定領域のみとする。特定領域とは、例えば、原料2の状態が安定している領域とか、逆にベルト3が幅方向に蛇行しやすい領域とかである。また、2以上の領域を切り出しても良い。この場合、切り出した領域毎に画像処理を実行すれば良い。ここで、符号3aは、ベルト3のうち、原料2が載っていない露出部分を指す。
図5(a)でも同様である。
なお、撮像装置9が撮像した撮像画像や切り出した画像等は、データベース11に逐次、蓄積しておく。そして、蓄積した画像で、適宜、学習済みモデル12の更新処理を実行しても良い。
【0026】
<状態判定部10B>
状態判定部10Bは、画像処理部10Aが取得した情報に基づき、原料2の搬送状態を判定する。
ここで、原料2の搬送状態は、例えば、ベルト3上に載置されている原料2の載置状態に関する情報である。更に、原料2の搬送状態は、ベルト3上の原料2の有無、ベルト3による原料2の搬送量の情報、ベルト3上に存在する原料2の幅方向位置に関する情報である。
ベルト領域情報も検出する場合、ベルト3に対する原料2の相対的な位置の状態も、搬送状態として識別可能となる。また、ベルト領域情報から、間接的に搬送状態を判定しても良い。
本実施形態の状態判定部10Bは、画像処理部10Aが求めた情報から、原料2の搬送状態を判定する。状態判定部10Bは、例えば、学習済みモデル12が出力した、搬送物領域情報やベルト領域情報が付与された画像から、原料2の搬送状態を判定する。
【0027】
<搬送量算出部10Ba>
本実施形態の状態判定部10Bは、搬送量算出部10Baを備える。
搬送量算出部10Baは、上面視における、ベルト3上に存在する原料2の面積を算出する。搬送量算出部10Baは、算出した原料2の面積から、ベルト3の単位長さ当たりのベルト3による原料2の搬送量を算出する。搬送量は搬送状態の一例を構成する。
【0028】
搬送量算出部10Baは、例えば、学習済みモデル12が出力した画像データ中の、原料2の画素の数(原料2の占める面積相当)を求める。そして、搬送量算出部10Baは、画素の大きさに対応する係数を乗算することで、原料2の占有面積を算出する。そして、搬送量算出部10Baは、算出した原料2の占有面積から、ベルト3に積載されている原料2の単位長さ当たりの搬送量を求める。搬送量は、原料2の面積から算出することができる。例えば、トラフ型ベルトコンベヤの理論搬送量を算出する式(真島卯太郎:コンベヤ計算法、工学図書株式会社、東京、(1979)、p.14)を用いる。この場合、特定した画素から求めた原料2の画素数(面積)から、原料2の体積、すなわち搬送量を算出することができる。このとき、操業条件からベルト3の速度や密度をあてはめる。
【0029】
<判定情報出力部10C>
判定情報出力部10Cは、状態判定部10Bが求めた判定情報や、搬送量算出部10Baが求めた搬送量、及びそのような情報から判定した搬送状態などの情報を出力する。例えば、その情報の出力によって、判定情報などをオペレータに報知する。
状態判定部10B及び判定情報出力部10Cの処理フロー例について、
図6を参照して説明する。この処理は、例えば、画像処理部10Aからの出力を入力する度に繰り返し実行される。
状態判定部10Bは、まずステップS10にて、学習済みモデル12の出力データ(画像データ)を入力する。
【0030】
ここで、本実施形態では、学習済みモデル12によって、例えば、
図5(a)のような撮像画像を入力し、
図5(b)のような画像データを出力する。
図5(b)に示す画像データの画像は、原料2の領域R1、ベルト3の領域R2、その他の領域R3を、それぞれ異なる表示で表したものである。上述のように画素単位で識別情報が付与されている。ここで、原料2の種類毎に画素の識別情報を変えるようにしてもよい。
図5(b)では、R1が原料2の領域を示し、R2がベルト3の領域を示し、R3がその他の領域を示す。同じ領域中の画素には、同じ識別情報が付与されている。
【0031】
次に、ステップS20にて、ステップS10にて取得した画像データ中の原料2(搬送物)の画素を特定し、原料2の画素数を求める。画素数は、原料2の占める面積Sに比例する。1つの画素の大きさを実際のベルト3上での大きさに変換する係数を、求めた画素数に乗算することで、原料2が占有する面積Sが求められる。
次に、ステップS30では、ステップS20にて求めた原料2の画素数(又は、原料2の占める面積S)が、予め設定した閾値A以上か否かを判定する。そして、閾値A以上の場合にはステップS50に移行し、閾値A未満の場合にはステップS40に移行する。なお、閾値Aは、操業条件に基づき設定すればよい。
【0032】
ステップS40では、「ベルト3上に原料2が無い」と判定し、その判定結果を出力して処理を終了する。判定結果の報知は、例えば、アラーム音の発生、電子メールへの送信、画面への表示などによって実行する。これによって、オペレータは、ベルト3上に原料2が無いことを知ることができる。
ベルト3上に原料2が有る場合には、ステップS50に移行して、切り出した画像領域内の原料2の搬送量Vを求める。搬送量Vは、原料2の面積Sから、公知の手段によって算出することができる。
そして、求めた搬送量Vを表示部に出力する。
【0033】
次に、ステップS60では、ステップS50で求めた搬送量Vが、予め設定した許容範囲(V1以上V2以下)内か否かを判定する。そして、許容範囲内の場合には、処理を終了する。許容範囲外の場合には、ステップS70に移行する。
ベルト領域情報から、ベルトの露出している部分のベルト幅方向の大きさから、許容範囲内か否かを判定してもよい。
なお、許容範囲外には、搬送量が多すぎる場合(V>V2)と少なすぎる場合(V<V1)とがある。
すなわち、搬送条件に応じて、適正な搬送量の範囲(下限値V1と上限値V2)を求め、その範囲を許容範囲とすれば良い。
【0034】
ステップS70では、異常判定の結果を出力する。異常判定の報知は、例えば、アラーム音の発生、電子メールへの送信、画面への表示などによって実行する。オペレータは、その出力された判定結果と搬送量とに基づき、ベルト3による原料2の搬送量の増減を調節することが可能である。
また、ベルト3からの落鉱の有無の推定が行われる。
また、オペレータは、連続して取得した搬送量の履歴に基づき、ベルト3への原料2の積載量を調整しても良い。
ここで、状態判定部10Bは、ベルト3上に原料2が積載されていると判定した場合、ベルト3に対する原料2の位置を搬送状態として検知する処理を実行しても良い。
【0035】
例えば、ベルト3の領域を表す画素から、ベルト3の幅方向両端部の位置若しくはベルト3の幅方向中心位置を求める。更に、原料2の画素の位置から、原料2の領域の重心点を求める。そして、ベルト3の幅方向中心に対する原料2の領域の重心点のベルト幅方向の偏差から、ベルト3上に積載されている原料2のベルト幅方向の片寄りを検知する。また、例えば、ベルト3の幅方向端部と原料2の領域の輪郭とのベルト幅方向の距離を、原料2の搬送状態として求めても良い。
ベルト3の幅方向端部と原料2の領域の輪郭とのベルト幅方向の距離は、ベルト3へ積載された原料2の搬送量の限界の判定材料となる。
【0036】
(動作その他)
本実施形態では、ベルトコンベア1のベルト3を監視可能な位置に可視カメラ(撮像装置9)を設置する。そのカメラで、常時、原料2(搬送物)を搬送するベルト3を監視する。そして、カメラが撮像した撮像画像を画像処理することで、自動でベルト3上の原料2の搬送状態を検知できる。本実施形態では、自動検知であるため、多数のベルトコンベア1の搬送状態を、人の目によらずに、まとめて効率的に監視することが可能となる。
このとき、ベルト3上の原料2の有無、ベルト3上の原料2の幅や搬送量などを、オペレータが把握することができる。そして、ベルトコンベア1による原料2の搬送量を適宜、適正値に調整することで、ベルト3からの落鉱を未然に防止することができる。また、設備トラブルの発生前に効率的な対策をとることができる。このため、本実施形態では、落鉱に起因する設備トラブルや清掃時間・清掃コストを削減することができる。
【0037】
また、適正な最大量が落鉱せずに搬送されているか等を効率的に検知することができる。このため、ベルトコンベア1の設備仕様に対して搬送量を最大化することで、搬送量が抑えられることによる滞船料の削減につながる。
さらに、本実施形態では、学習済みモデル12を用いて搬送状態を検知する。このため、本開示を屋外のベルトコンベア1に適用しても、精度よく搬送状態を検知することが可能である。
【0038】
このように、本開示は、鉄鉱石や石炭などの原料2を搬送、貯蔵する原料ヤードの監視に有用である。本開示は、特に原料2の片寄り検知に好適な技術である。
なお、本開示は、従来のようにベルト3自体の状態からベルト3で搬送される原料2の搬送状態を間接的に検知するものではない。本開示は、ベルト3上の原料2の状態である搬送状態を検知するものである。そして、その搬送状態の検知から、場合によっては、ベルト3の搬送異常を判定できるものである。
【0039】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)ベルトコンベアで搬送されるベルト上の搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知装置であって、
搬送物を搬送する上記ベルトを上方から撮像する撮像装置と、
上記撮像装置が撮像した撮像画像を画像処理することで、上記ベルト上の搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知部と、を備える。
(2)上記搬送状態検知部は、上記搬送物の搬送状態として、上記ベルト上の搬送物の有無及び上記ベルトによる搬送物の搬送量の情報の少なくとも一方の情報を検知する。
(3)上記搬送状態検知部は、画像処理によって、上記ベルト上に存在する上記搬送物の領域に関する情報である搬送物領域情報を取得する画像処理部と、
取得した上記搬送物領域情報に基づき、上記ベルト上に積載されている搬送物の状態である上記搬送状態を判定する状態判定部と、を備える。
(4)上記画像処理部は、予め撮像した上記撮像画像について、ベルト上の搬送物の領域、ベルトの領域、及びそれ以外の領域のどの領域のクラスに分類されるかを画素ごとにラベリングした教師画像データを、畳み込みニューラルネットワークで学習することで作成した学習済みモデルを用いて、上記撮像装置が撮像した撮像画像から、上記搬送物領域情報を取得する。
(5)上記搬送状態検知部は、上記ベルト上に存在する搬送物の面積を算出し、算出した搬送物の面積から上記搬送物の搬送量を搬送状態の情報として求める搬送量算出部を備える。
(6)上記搬送状態検知部は、上記搬送量算出部が求めた搬送量が、予め設定した許容範囲内か否かを判定し、許容範囲外と判定すると、その判定結果を出力する判定情報出力部を備える。
(7)ベルトコンベアのベルトで搬送される搬送物の搬送状態を検知する搬送状態検知方法であって、
搬送物を搬送するベルトを上方から撮像し、撮像した撮像画像を画像処理することで、上記ベルト上の搬送物の搬送状態を判定する。
(8)上記画像処理によって、上記ベルト上に存在する上記搬送物の領域に関する情報である搬送物領域情報を取得し、
取得した上記搬送物領域情報に基づき、上記ベルト上に積載されている搬送物の状態である上記搬送状態を判定する。
【0040】
ここで、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2022-034561(2022年 3月 7日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明なことである。
【符号の説明】
【0041】
1 ベルトコンベア
2 原料(搬送物の一例)
3 ベルト
9 撮像装置
10 搬送状態検知部
10A 画像処理部
10B 状態判定部
10Ba 搬送量算出部
10C 判定情報出力部
12 学習済みモデル
21 搬送状態検知装置