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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】鋼帯の切断設備及び冷間圧延設備
(51)【国際特許分類】
   B21B 15/00 20060101AFI20241008BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20241008BHJP
   B21B 38/04 20060101ALI20241008BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20241008BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20241008BHJP
   B21B 39/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B21B15/00 B
B21B38/00 F
B21B38/04 A
B21C51/00 P
B21C51/00 J
B21B1/22 J
B21B39/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023541371
(86)(22)【出願日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2023014431
(87)【国際公開番号】W WO2024018701
(87)【国際公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2022115036
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】福永 貴之
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508113(JP,A)
【文献】特開平06-254626(JP,A)
【文献】特開2000-266510(JP,A)
【文献】特開2000-298519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00 - 11/00
B21B 47/00 - 99/00
B21B 15/00 - 15/02
B21B 38/00 - 38/12
B21B 39/00 - 41/12
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行鋼帯の後端と後行鋼帯の先端とを接合した接合部を検出する接合部検出装置と、
鋼帯の端部を検出する端部検出装置と、
前記鋼帯の上方及び下方の一方に設けられるサポート部と、前記鋼帯の上方及び下方の他方に、前記サポート部に対して前記鋼帯の搬送方向に中心位置をずらして設けられる押圧部と、を備えて、前記鋼帯の振動を抑制する振動抑制装置と、
前記接合部の近傍をレーザー切断する切断装置と、を備える、鋼帯の切断設備。
【請求項2】
先行鋼帯の後端と後行鋼帯の先端とを接合した接合部を検出する接合部検出装置と、
鋼帯の端部を検出する端部検出装置と、
前記鋼帯の上方及び下方の一方に設けられるサポート部と、前記鋼帯の上方及び下方の他方に、前記サポート部に対して前記鋼帯の搬送方向に中心位置をずらして設けられる押圧部と、を備えて、前記鋼帯の振動を抑制する振動抑制装置と、
前記接合部の近傍をレーザー切断する切断装置と、を備え、
前記端部検出装置と前記振動抑制装置とは互いに別の架台に設けられる、鋼帯の切断設備。
【請求項3】
前記振動抑制装置は
記押圧部と前記サポート部とで前記接合部の近傍を抑えるように、前記押圧部及び前記サポート部の一方を前記押圧部及び前記サポート部の他方に対して移動させるシリンダーと、を備える、請求項1に記載の鋼帯の切断設備。
【請求項4】
前記振動抑制装置は、前記鋼帯の進行方向に対して、前記切断装置の上流側及び下流側の双方に設けられる、請求項1に記載の鋼帯の切断設備。
【請求項5】
前記端部検出装置は、前記鋼帯の進行方向に対して、前記切断装置の上流側及び下流側の双方及び両端に設けられる、請求項1に記載の鋼帯の切断設備。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の鋼帯の切断設備と、前記鋼帯を冷間圧延する冷間圧延機と、を備える、冷間圧延設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼帯の切断設備及び冷間圧延設備に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の冷間圧延工程において、生産性の向上又は歩留りの向上を目的に、先行材(先行鋼帯)の後端と後行材(後行鋼帯)の先端とを接合し、連続的に冷間圧延ラインに供給することが一般的である。これにより、鋼帯の全長にわたり、張力を付与した状態で圧延することが可能になり、鋼帯の先端及び後端においても、板厚及び形状を高精度に制御することができる。
【0003】
先行材と後行材の接合部(溶接部)の板幅方向端部は、先行材と後行材の鋼帯幅の差、鋼帯厚の差及び位置ずれなどのために、不可避的に幅段差部が形成される。そのため、このままの状態で圧延すると、幅段差部に応力集中が生じ、接合部で破断に至る可能性がある。接合部での破断が生じると、冷間圧延ラインを停止せざるを得ないため、生産性を低下させるとともに、破断片により損傷したワークロールを交換する必要が生じるため、生産コストの上昇を招く。
【0004】
そこで、接合部での破断を防止するために、接合部の近傍での応力集中を緩和する目的で、接合部の板幅方向端部にノッチ(切り欠き)を形成するノッチングが行われる。鋼帯の冷間圧延工程において、ノッチングの後で圧延することが行われている。
【0005】
ノッチングの方法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、角部を有しない半円形状に、機械的にせん断加工する方法が一般的である。ただし、この半円形状のノッチは、外縁の曲率が一律であり、接合部において鋼帯の幅が最も小さくなるため、接合部において最大の応力が発生することになる。
【0006】
しかしながら、近年の冷延鋼帯の薄肉化、高合金化により、機械的にせん断加工した箇所が圧延時に破断の要因となることがあり、特許文献2及び特許文献3には、その対応としてレーザー切断を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-076911号公報
【文献】特開2017-080803号公報
【文献】特開2017-080806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行鋼帯の後端と後行鋼帯の先端とを接合した後、接合部を切断装置に通板する際に、ライン設備の通板精度及び鋼帯の状態によって、停止位置から上下流方向及び幅方向に対してずれが生じることがある。そのため、接合部でない部分の切断又は鋼帯のない位置での切断を行うことがあり、切断不良の発生、機器の損傷などが生じるおそれがある。
【0009】
また、良好な切断性及び断面性状を維持するため、レーザー切断を行う切断装置の先端と鋼帯との距離は1~5mm程度で近接し、かつ、その距離を一定にする必要がある。切断装置は、先端と鋼帯との距離を一定に制御する機構が備わっており、高精度に一定の距離を維持できることが多い。しかし、連続した鋼帯は平坦でないことがあり、鋼帯が振動することもある。そのため、距離を一定に制御する機構の制御範囲外となって、切断面の荒れ及び切断残りが発生することがある。
【0010】
本開示は、上記のような事情を鑑みてなされたものであり、連続した鋼帯同士の接合部を正確にレーザー切断することを可能にする鋼帯の切断設備及び冷間圧延設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本開示の一実施形態に係る鋼帯の切断設備は、
先行鋼帯の後端と後行鋼帯の先端とを接合した接合部を検出する接合部検出装置と、
鋼帯の端部を検出する端部検出装置と、
前記鋼帯の振動を抑制する振動抑制装置と、
前記接合部の近傍をレーザー切断する切断装置と、を備える。
【0012】
(2)本開示の一実施形態に係る鋼帯の切断設備は、
先行鋼帯の後端と後行鋼帯の先端とを接合した接合部を検出する接合部検出装置と、
鋼帯の端部を検出する端部検出装置と、
前記鋼帯の振動を抑制する振動抑制装置と、
前記接合部の近傍をレーザー切断する切断装置と、を備え、
前記端部検出装置と前記振動抑制装置とは互いに別の架台に設けられる。
【0013】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記振動抑制装置は、
前記鋼帯の上方及び下方の一方に設けられるサポート部と、
前記鋼帯の上方及び下方の他方に設けられる押圧部と、
前記押圧部と前記サポート部とで前記接合部の近傍を抑えるように、前記押圧部及び前記サポート部の一方を前記押圧部及び前記サポート部の他方に対して移動させるシリンダーと、を備える。
【0014】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記振動抑制装置は、前記鋼帯の進行方向に対して、前記切断装置の上流側及び下流側の双方に設けられる。
【0015】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記端部検出装置は、前記鋼帯の進行方向に対して、前記切断装置の上流側及び下流側の双方及び両端に設けられる。
【0016】
(6)本開示の一実施形態に係る冷間圧延設備は、
(1)から(5)のいずれかの鋼帯の切断設備と、前記鋼帯を冷間圧延する冷間圧延機と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、連続した鋼帯同士の接合部を正確にレーザー切断することを可能にする鋼帯の切断設備及び冷間圧延設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る鋼帯の切断設備の構成例を示す図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る鋼帯の切断設備の構成例を示す図である。
図3図3は、切断装置の平面軌道の切断ロジックの一例を示す図である。
図4図4は、切断装置の高さ決定ロジックの一例を示す図である。
図5図5は、ピンチロールの使用及び不使用による鋼帯の振動状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る鋼帯の切断設備及び冷間圧延設備が説明される。
【0020】
図1及び図2は、本実施形態に係る鋼帯1の切断設備の構成例を示す図である。図2において、左図が鋼帯1の切断設備の斜視外観図を示し、右図が側面図を示す。以下において、鋼帯1の搬送方向は進行方向とも称される。また、板幅方向端部は単に「端部」と称される。
【0021】
図1に示すように、鋼帯1の切断設備に、先行鋼帯の後端と後行鋼帯の先端とを接合した接合部2を有する鋼帯1が搬入される。鋼帯1の切断設備は、接合部2を検出する接合部検出装置5と、鋼帯1の端部を検出する端部検出装置6と、鋼帯1の振動を抑制する振動抑制装置7と、接合部2の近傍をレーザー切断する切断装置4と、を備える。本実施形態において、鋼帯1の切断設備は、先端に切断装置4を取り付けたロボットアーム3を備える。ロボットアーム3は、例えば切断設備操作盤などの制御装置によって制御されて、ノッチングなどのレーザー切断を実行する。本実施形態において、鋼帯1を挟んで両端側にロボットアーム3に取り付けられた切断装置4が対になって設けられている。ただし、切断装置4は、本実施形態のように複数であってよいし、1つであってよい。また、本実施形態において、ロボットアーム3は多軸である。そのため、切断装置4の位置を自由に制御して制限のない切断軌道を設定でき、例えば円弧状にレーザー切断させることができる。
【0022】
図2に示すように、接合部検出装置5は、鋼帯1の板幅方向における中央部の上方に設けられる。接合部検出装置5は、鋼帯1の表面における凹凸などの特徴を検出可能であれば、設置位置が限定されるものでない。接合部検出装置5は、本実施形態のように鋼帯1の表面を撮影するカメラであってよいが、特定の装置に限定されない。ただし、接合部検出装置5は、鋼帯1の振動などに影響されずに接合部2を判別可能なように、画像を取得できる撮像装置であることが好ましい。接合部検出装置5からの画像に基づいて、ロボットアーム3を制御する制御装置は、接合部2を判別し、切断範囲を把握して、切断装置4が動作するタイミングを特定し、正確に切断軌道を生成することができる。端部検出装置6及び振動抑制装置7の構成の詳細については後述する。
【0023】
鋼帯1の切断設備は、冷間圧延設備の一部を構成してよい。冷間圧延設備は、上記の鋼帯1の切断設備の他に、少なくとも鋼帯1を冷間圧延する冷間圧延機を備える。冷間圧延機は、鋼帯1の切断設備の下流側に設けられて、ノッチが形成された鋼帯1を冷間圧延する。ここで、冷間圧延設備は、鋼板の製造設備の一部を構成してよい。鋼板の製造設備は、例えば冷間圧延機より下流側に、鋼帯1を切断する設備をさらに備えて、所望のサイズの鋼板を切り出してよい。
【0024】
ここで、上記のように、従来の切断設備において、接合部2でない部分の切断又は鋼帯1のない位置での切断(不適切な位置での切断)を行うことがある。鋼帯1が振動することによって切断装置4の先端と鋼帯1との距離を一定に保つ制御が機能せずに切断面の荒れ及び切断残りが発生することがあった。
【0025】
鋼帯1の切断設備において、端部検出装置6は、切断装置4の上流側と下流側に設けられる。本実施形態において、端部検出装置6は、上流側に2つ、下流側に2つの計4つが設けられている。図2に示すように、端部検出装置6は、鋼帯1の進行方向に対して、切断装置4の上流側及び下流側の双方及び両端に設けられている。端部検出装置6が上流側と下流側に設けられることによって、接合部2を挟む先行鋼帯及び後行鋼帯のそれぞれの端部が正確に検出される。端部検出装置6は、例えばレーザーの反射に基づいて位置を検出するレーザーセンサーなどで構成されてよいが、通光センサー又は画像センサーを用いてよい。端部検出装置6が通光センサーの場合に、光が透過しない位置を端部として検出する方式としてよい。端部検出装置6によって鋼帯1の端部を正確に検出し、接合部検出装置5の画像に基づく正確な接合部2の位置を含めて切断位置を計算することによって、不適切な位置での切断を回避することができる。接合部2の検出については、撮影された画像の輝度差などから溶接線を検出する方式としてよい。ここで、鋼帯1を上方から撮影した画像に基づいて先行鋼帯と後行鋼帯の両端部を検出する方法もあるが、鋼帯1の端部を精度よく検出するには色度差を確保する必要があり、鋼帯1の下方に色度の違う設備が必要となるという制約が生じる。またレーザー切断により、汚れもすぐ発生するため、維持管理が必要である。本実施形態のように端部検出装置6を用いる方法は、このような問題も生じることがなく、先行鋼帯及び後行鋼帯のそれぞれの端部を正確に検出できる。
【0026】
鋼帯1の切断設備において、振動抑制装置7は、鋼帯1の下方に設けられるサポート部8と、鋼帯1の上方に設けられる押圧部9と、押圧部9とサポート部8とで接合部2の近傍を抑えるように押圧部9をサポート部8に対して移動させるシリンダー10と、を備える。シリンダー10は、押圧部9をサポート部8に向けて移動させたり、押圧部9をサポート部8から離れるように移動させたりする。シリンダー10は、ロボットアーム3と同様に、制御装置によって制御されてよい。本実施形態において、押圧部9とサポート部8とは、鋼帯1を上方と下方から抑えるピンチロールとして機能する。本実施形態において、押圧部9が板押さえロールで、サポート部8がサポートロールで構成されている。先行鋼帯と後行鋼帯の接合部2が鋼帯1の切断設備内に搬送されて、振動抑制装置7で鋼帯1を抑えることで振動が抑制される。端部検出装置6及び接合部検出装置5にて鋼帯1の端部の切断に必要な位置情報が判定され、制御装置が判定した切断軌道に合わせてロボットアーム3を動作させながら、切断装置4からレーザー照射させることによって、鋼帯1の切断が実施される。本実施形態に係る鋼帯1の切断設備では、押圧部9とサポート部8とで接合部2の近傍を抑えることによって、鋼帯1の振動を抑えて、レーザー切断を実行させることができる。ここで、接合部検出装置5と端部検出装置6は、振動抑制装置7と同じ架台にある場合に、動作時にずれが生じるおそれがあるため、可能な限り振動抑制装置7と架台を分離することが望ましい。本実施形態において、端部検出装置6と振動抑制装置7とは互いに別の架台に設けられる。そのため、鋼帯1の振動によって切断装置4の先端と鋼帯1との距離を一定に保つ制御が機能しないことを回避でき、良好な切断性及び断面性状を維持できる。本実施形態では端部検出装置6と振動抑制装置7とを互いに別の架台に設けているが、同一の架台に設けてよい。ただし、振動抑制装置7が鋼帯1の振動を抑制する際に鋼帯1から伝達される微振動が、端部検出装置6の検出精度に影響しないようにするために、端部検出装置6と振動抑制装置7とは別の架台に設けられることが望ましい。また、サポート部8と押圧部9の位置は限定されない。例えば押圧部9が鋼帯1の下方に設けられて、サポート部8が鋼帯1の上方に設けられる構成も可能である。つまり、振動抑制装置7は、鋼帯1の上方及び下方の一方に設けられるサポート部8と、鋼帯1の上方及び下方の他方に設けられる押圧部9と、を備える。また、シリンダー10は、押圧部9に代えて、サポート部8を移動させる構成であってよい。例えばサポート部8が鋼帯1の上方に設けられる構成の場合に、シリンダー10はサポート部8を移動させてよい。つまり、シリンダー10は、押圧部9及びサポート部8の一方を、押圧部9及びサポート部8の他方に対して移動させればよい。
【0027】
また、図2に示すように、接合部検出装置5についても振動抑制装置7と別の架台に設けられており、動作時にずれが生じないように構成されている。本実施形態において、端部検出装置6と接合部検出装置5は同じ架台上に配置しているが、配置上制約がなければ分離してよい。振動抑制装置7は鋼帯1に空圧などによる負荷をかけるため、板押さえ時に架台が歪むことがあり得る。測定機器に影響しないように、振動抑制装置7と測定装置の架台も分離することが好ましい。ただし、強度が十分である場合には、振動抑制装置7と測定装置を共通の架台に設けてよい。
【0028】
振動抑制装置7は、鋼帯1の進行方向に対して、切断装置4の上流側及び下流側の双方に設けられることが好ましい。これによって、先行鋼帯、後行鋼帯のそれぞれを抑えることができる。先行鋼帯、後行鋼帯のそれぞれの下方にサポート部8(サポートロール)が位置する状態で、シリンダー10を用いて、切断直前に押圧部9(板押さえロール)を下降させる。これにより、切断範囲への振動の伝達を抑制することが出来る。ここで、板押さえロールはサポートロールの直上ではなく、中心位置をロール径に対して5~100%程度ずらすことによって振動をさらに抑制できる。
【0029】
図3は平面軌道における切断軌道を判定するロジックの一例を示す図である。まず、接合部検出装置5の情報に基づいて、所定の切断円弧の長手方向の頂点位置を接合部2に合わせる処理が行われる。次に、円弧頂点の幅方向の頂点位置、端部検出装置6の情報に基づいて、先行鋼帯と後行鋼帯のうち幅が狭い側においても切断されるように深さ(半径)が定められる。次に、鋼帯1の端部より外側において切断開始、切断終了の位置が定められ、鋼帯1の内側において切断の倣い制御を開始、終了する位置が定められる。ここで、先端の異常検知を避けるため、鋼帯1の内側でのみ倣い制御を実施する必要がある。
【0030】
図4は切断装置4の高さ位置を特定するロジックを示す図である。倣い制御が実施される位置にて切断装置4の高さが次のように決定される。まず、ロボットアーム3が鋼帯1の上方から徐々に降下し、切断装置4の鋼帯検知の機能によって鋼帯1が検出されると、その検出信号をもとにロボットアーム3が停止される。その後、切断装置4は先端と鋼帯1との距離を一定に保つ機能によって高さが定められる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る鋼帯1の切断設備及び冷間圧延設備は、上記の構成によって、不適切な位置での切断を回避でき、鋼帯1の振動の影響を抑制できる。その結果として、連続した先行鋼帯と後行鋼帯の接合部2を正確にレーザー切断することが可能になり、接合部2の破断(溶接部破断)を生じることなく冷間圧延することが可能になる。
【0032】
本開示の実施形態について、諸図面に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が実行する方法、装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0033】
以下、本開示内容の効果を実施例(実験例)に基づいて具体的に説明するが、本開示内容はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例)
本実施例として、母材厚が2.0mm、板幅が1200mmの3.0質量%のSiを含有する電磁鋼板用の素材鋼板を用いて、接合部2の端部のレーザー切断を行った。先行鋼帯と後行鋼帯との接合部2の近傍において、鋼帯1の両端部に対する円弧状のレーザー切断と先行鋼帯の幅中央位置に対する円形閉断面形状のレーザー切断が行われた。
【0035】
ここで、比較例として、端部検出せずに設定幅情報からの固定の位置とし、接合部2を検出せずに装置中心位置を切断中心位置とし、高さ位置を調整せずに一律同じとし、ピンチロールを使用しない条件でレーザー切断が行われた。本実施例と比較例とが、それぞれ100コイルで実施された。切断が必要な接合部2の除去の成功率は、比較例で12%であったが、本実施例で100%であった。本実施例では、鋼帯1の位置を正確に把握して、切断精度が大幅に改善することが確認された。
【0036】
また、図5は、ピンチロール(振動抑制装置7)の使用及び不使用による鋼帯1の振動状態を示す。変位計を用いて0.5sec単位で鋼帯1の高さ変位が検出された。0.0secは切断位置において鋼帯1を停止させた時間である。また、ピンチロールを使用する場合に、1.0secで鋼帯1を抑える指令が出された。
【0037】
図5に示す通り、鋼帯1の停止直後は大きく振動しているが、ピンチロールにより鋼帯1を抑えることで鋼帯1の振動が大きく抑制され、良好な切断面が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
1 鋼帯
2 接合部(溶接部)
3 ロボットアーム
4 切断装置
5 接合部検出装置
6 端部検出装置
7 振動抑制装置
8 サポート部
9 押圧部
10 シリンダー
図1
図2
図3
図4
図5