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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車載用の半導体スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241008BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023543544
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031121
(87)【国際公開番号】W WO2023026388
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 一輝
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198171(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198957(WO,A1)
【文献】特開2017-174951(JP,A)
【文献】特開2008-021796(JP,A)
【文献】特開2008-294384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用の駆動回路から出力されるオン信号及びオフ信号によって制御され、第1導電路と第2導電路との間においてオン状態とオフ状態とに切り替わる半導体スイッチを有する車載用の半導体スイッチ装置であって、
電圧検出部を有し、
前記半導体スイッチは、
半導体部と、
第1電極と、
第2電極と、
前記駆動回路から前記オン信号及び前記オフ信号が入力される第3電極と、
前記半導体部を覆う封止体と、
前記第1電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に突出する第1リード部と、
前記第2電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に突出する第2リード部と、
前記第1電極の一部として構成され又は前記第1電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に露出する導体部と、
を有し、
前記半導体スイッチは、前記第3電極に前記オン信号が入力された場合に前記第1電極側から前記第2電極側への電流の流れを許容する前記オン状態となり、前記第3電極に前記オフ信号が入力された場合に前記第1電極側から前記第2電極側への電流の流れを遮断する前記オフ状態となり、
前記導体部及び前記第1リード部のいずれか一方が前記第1導電路に接合され、他方が第1電圧検出経路に接合されており、
前記電圧検出部は、前記第1電圧検出経路に印加された電圧を検出する
車載用の半導体スイッチ装置。
【請求項2】
前記第1リード部が前記第1電圧検出経路に接合され、
前記導体部が前記第1導電路に接合されている
請求項1に記載の車載用の半導体スイッチ装置。
【請求項3】
前記第1リード部と前記導体部とは一体的に形成されている
請求項2に記載の車載用の半導体スイッチ装置。
【請求項4】
前記導体部は、板状をなしており、
前記導体部の厚さ方向の片側の面が前記第1導電路に接合される
請求項3に記載の車載用の半導体スイッチ装置。
【請求項5】
前記導体部において前記封止体の外部に露出する露出面の幅は、前記第1リード部の幅よりも大きい
請求項3又は請求項4に記載の車載用の半導体スイッチ装置。
【請求項6】
前記電圧検出部は、前記第1電圧検出経路に印加された電圧が予め定められた異常電圧である場合に遮断信号を出力し、
前記駆動回路は、前記遮断信号が入力された場合に、前記オフ信号を出力する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車載用の半導体スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用の半導体スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パック電池が開示されている。このパック電池は、電池と、電池に直列に接続された保護用のFETと、FETのドレイン・ソース間の電圧を検出する電圧検出回路と、を備える。この電池パックは、電圧検出回路によって検出された電圧に基づいて過電流を検出し、FETに流れる電流を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-357440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の技術では、電極間(例えばドレイン・ソース間)の電圧を検出する際、各々の電極(例えばドレイン電極)に電気的に接続されるリード部あるいはリード部の接続先の導電路の電圧を検出することが想定される。しかし、この場合、上記検出位置と電極との間の経路には、この経路のインダクタンス成分Lsと電流iの時間的変化di/dtとに基づく逆起電力Ls・di/dtが生じることになる。つまり、電圧検出回路によって検出される電圧は、経路のインダクタンス成分Lsに起因する逆起電力の影響を受ける。このため、逆起電力の影響を受けることによる問題が生じること(例えば電圧変化に基づいて過電流を検出して電流を遮断する構成において電流の遮断が遅れることなど)が懸念される。
【0005】
本開示は、経路のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を抑えつつ電極間の電圧を検出しうる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用の半導体スイッチ装置は、車載用の駆動回路から出力されるオン信号及びオフ信号によって制御され、第1導電路と第2導電路との間においてオン状態とオフ状態とに切り替わる半導体スイッチを有する車載用の半導体スイッチ装置であって、電圧検出部を有し、前記半導体スイッチは、半導体部と、第1電極と、第2電極と、前記駆動回路から前記オン信号及び前記オフ信号が入力される第3電極と、前記半導体部を覆う封止体と、前記第1電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に突出する第1リード部と、前記第2電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に突出する第2リード部と、前記第1電極の一部として構成され又は前記第1電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に露出する導体部と、を有し、前記半導体スイッチは、前記第3電極に前記オン信号が入力された場合に前記第1電極側から前記第2電極側への電流の流れを許容する前記オン状態となり、前記第3電極に前記オフ信号が入力された場合に前記第1電極側から前記第2電極側への電流の流れを遮断する前記オフ状態となり、前記導体部及び前記第1リード部のいずれか一方が前記第1導電路に接合され、他方が第1電圧検出経路に接合されており、前記電圧検出部は、前記第1電圧検出経路に印加された電圧を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、経路のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を抑えつつ電極間の電圧を検出しうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車載用の半導体スイッチ装置の構成を概略的に示す回路図である。
図2図2は、半導体スイッチの平面図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、半導体スイッチの底面図である。
図5図5は、車載用の半導体スイッチ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕本開示の車載用の半導体スイッチ装置は、車載用の駆動回路から出力されるオン信号及びオフ信号によって制御され、第1導電路と第2導電路との間においてオン状態とオフ状態とに切り替わる半導体スイッチを有する車載用の半導体スイッチ装置であって、電圧検出部を有し、前記半導体スイッチは、半導体部と、第1電極と、第2電極と、前記駆動回路から前記オン信号及び前記オフ信号が入力される第3電極と、前記半導体部を覆う封止体と、前記第1電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に突出する第1リード部と、前記第2電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に突出する第2リード部と、前記第1電極の一部として構成され又は前記第1電極に電気的に接続され、前記封止体の外部に露出する導体部と、を有し、前記半導体スイッチは、前記第3電極に前記オン信号が入力された場合に前記第1電極側から前記第2電極側への電流の流れを許容する前記オン状態となり、前記第3電極に前記オフ信号が入力された場合に前記第1電極側から前記第2電極側への電流の流れを遮断する前記オフ状態となり、前記導体部及び前記第1リード部のいずれか一方が前記第1導電路に接合され、他方が第1電圧検出経路に接合されており、前記電圧検出部は、前記第1電圧検出経路に印加された電圧を検出する。
【0011】
この車載用の半導体スイッチ装置では、導体部及び第1リード部のうち、一方が電流経路として機能し、他方が電圧検出に用いられる。このため、第1電極と第1電圧検出経路との間のインダクタンス成分を小さく抑える構成をとりやすい。つまり、この構成によれば、第1電極と第1電圧検出経路との間のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を抑えつつ、第1電極及び第2電極間の電圧を検出する構成をとりやすい。
【0012】
〔2〕前記第1リード部が前記第1電圧検出経路に接合され、前記導体部が前記第1導電路に接合されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、屈曲しやすい第1リード部を第1電圧検出経路に接合させる構成であるため、第1電圧検出経路の配置位置の自由度を高めることができる。
【0014】
〔3〕前記第1リード部と前記導体部とは一体的に形成されていてもよい。
【0015】
第1リード部と導体部が一体的に形成されている構成では、第1リード部が第1導電路に接合され、且つ第1リード部又は第1導電路に第1電圧検出経路が接合される場合、導体部と第1リード部の両方に電流が流れるため、導体部と第1リード部の両方のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を受ける。これに対し、本構成では、第1リード部が第1電圧検出経路に接合され、導体部が第1導電路に接合されているため、第1導電路から第2導電路に流れる電流が第1リード部を通過しなくなり、その結果、第1リード部のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を受けないか、あるいは受けにくい。このため、第1電極と第1電圧検出経路との間のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響をより確実に抑えることができる。
【0016】
〔4〕前記導体部は、板状をなしており、前記導体部の厚さ方向の片側の面が前記第1導電路に接合されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、導体部のインダクタンス成分を小さく抑えやすいため、第1電極と電圧検出回路との間のインダクタンス成分を小さく抑えやすい。また、この構成によれば、半導体スイッチで生じた熱を導体部から第1導電路に放出しやすい。
【0018】
〔5〕前記導体部において前記封止体の外部に露出する露出面の幅は、前記第1リード部の幅よりも大きくてもよい。
【0019】
この構成によれば、導体部のインダクタンス成分を小さく抑えやすいため、第1電極と電圧検出回路との間のインダクタンス成分を小さく抑えやすい。また、この構成によれば、半導体スイッチで生じた熱を導体部から第1導電路に放出しやすい。
【0020】
〔6〕前記電圧検出部は、前記第1電圧検出経路に印加された電圧が予め定められた異常電圧である場合に遮断信号を出力し、前記駆動回路は、前記遮断信号が入力された場合に、前記オフ信号を出力してもよい。
【0021】
この構成によれば、第1電極と第1電圧検出経路との間のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を抑えつつ電圧を検出し、その検出した電圧が異常電圧である場合に駆動回路からオフ信号を出力することができる。このため、第1電極の電圧に異常が生じた場合に、半導体スイッチをより迅速にオフ状態に切り替えることができる。
【0022】
<第1実施形態>
図1に示す車載用の半導体スイッチ装置1(以下、「半導体スイッチ装置1」とも称する)は、自動車などの車両に搭載される装置である。半導体スイッチ装置1は、第1導電路11と、第2導電路12と、半導体スイッチ13と、回路基板14と、を有する。
【0023】
第1導電路11及び第2導電路12は、車両に搭載される電源部90と負荷91との間に設けられ、電源部90から負荷91へ電力を供給する電力路の一部として機能する。第1導電路11と第2導電路12との間には、半導体スイッチ13が設けられている。第1導電路11は、図1に示すように、半導体スイッチ13よりも電源部90側に配置されている。第2導電路12は、半導体スイッチ13よりも負荷91側に配置されている。
【0024】
半導体スイッチ13は、後述する駆動回路42から出力されるオン信号及びオフ信号によって制御され、第1導電路11と第2導電路12との間においてオン状態とオフ状態とに切り替わる半導体スイッチング素子である。半導体スイッチ13は、本実施形態ではFET、より具体的にはNチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とするが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など別の半導体スイッチング素子であってもよい。
【0025】
半導体スイッチ13は、図2から図4に示すように、半導体部20と、第1電極21と、第2電極22と、第3電極23と、封止体24と、第1リード部31と、第2リード部32と、第3リード部33と、第4リード部34と、導体部35とを有する。半導体スイッチ13は、扁平な形状をなしている。本実施形態では、半導体スイッチ13の厚さ方向をZ方向とし、幅方向をY方向とし、Z方向及びY方向に対して交差(より具体的には直交)する方向をX方向とする。
【0026】
半導体部20は、Si、SiCなどの半導体材料を有してなる。半導体部20は、第1半導体領域(本実施形態ではドレイン領域)と、第1半導体領域とは異なる位置に配置される第2半導体領域(本実施形態ではソース領域)と、を有する。半導体部20は、扁平な形状をなしている。半導体部20の厚さ方向は、Z方向に沿っており、より具体的にはZ方向と同じである。
【0027】
第1電極21、第2電極22及び第3電極23は、それぞれ電極層として構成されている。第1電極21、第2電極22及び第3電極23の厚さ方向はZ方向に沿っており、より具体的には、Z方向と同じである。第1電極21は、本実施形態ではドレイン電極であり、半導体部20の第1半導体領域に電気的に接続されている。第2電極22は、本実施形態ではソース電極であり、半導体部20の第2半導体領域に電気的に接続されている。第3電極23は、本実施形態ではゲート電極であり、後述する駆動回路42からオン信号及びオフ信号が入力される。第1電極21は、半導体部20のZ方向の一方側に配置され、第2電極22及び第3電極23は、半導体部20のZ方向の他方側に配置される。つまり、半導体部20は、第1電極21と、第2電極22及び第3電極23との間に配置される。半導体スイッチ13は、第3電極23にオン信号が入力された場合に第1電極21側から第2電極22側への電流の流れを許容するオン状態となり、第3電極23にオフ信号が入力された場合に第1電極21側から第2電極22側への電流の流れを遮断するオフ状態となる。
【0028】
封止体24は、半導体部20、第1電極21、第2電極22及び第3電極23を覆う。封止体24は、絶縁性を有する。封止体24は、例えば合成樹脂製である。封止体24は、例えばトランスファー方式でモールド成形される。封止体24は、扁平な形状をなしている。封止体24の厚さ方向は、Z方向に沿っており、より具体的にはZ方向と同じである。封止体24は、第1面24Aと、第2面24Bとを有する。第1面24Aは、封止体24のX方向の一方側の面である。第2面24Bは、第1面24Aとは異なる位置に設けられた面であり、より具体的には封止体24のZ方向の一方側の面である。封止体24には、封止体24をZ方向(厚さ方向)に貫通する第1貫通孔24Cが形成されている。第1貫通孔24Cの断面は円形をなしている。第1貫通孔24Cには図示しないネジが挿通可能とされており、半導体スイッチ13をネジ止めすることができる。
【0029】
第1リード部31、第2リード部32、第3リード部33及び第4リード部34は、それぞれ金属製であり、細長い形状をなしている。第1リード部31、第2リード部32、第3リード部33、及び第4リード部34は、封止体24からX方向の一方側に突出した形態をなしている。第1リード部31、第2リード部32、第3リード部33、及び第4リード部34は、Y方向に沿って並んで配置されている。つまり、第1リード部31、第2リード部32、第3リード部33、及び第4リード部34は、半導体スイッチ13の幅方向に沿って並んで配置されている。
【0030】
第1リード部31は、本実施形態ではドレイン端子である。第1リード部31は、第1電極21に電気的に接続され、封止体24の第1面24Aから封止体24の外部に突出している。第1リード部31は、導体部35に電気的に接続されている。第1リード部31と導体部35とは、同一部材で一体的に形成されている。第1リード部31は、導体部35を介して第1電極21に電気的に接続されている。
【0031】
第2リード部32及び第4リード部34は、本実施形態ではソース端子である。第2リード部32及び第4リード部34は、それぞれワイヤ36を介して第2電極22に電気的に接続され、封止体24の第1面24Aから封止体24の外部に突出している。第2リード部32及び第4リード部34は、Y方向において、第1リード部31と第3リード部33との間に配置されている。
【0032】
第3リード部33は、本実施形態ではゲート端子である。第3リード部33は、ワイヤ36を介して第3電極23に電気的に接続され、封止体24の第1面24Aから封止体24の外部に突出している。
【0033】
導体部35は、金属製であり、板状をなしている。導体部35の厚さ方向は、Z方向に沿っており、より具体的にはZ方向である。つまり、導体部35の厚さ方向は、封止体24の厚さ方向に沿っており、より具体的には、封止体24の厚さ方向と同じ方向である。導体部35は、第1電極21とは別体として構成されており、第1電極21に電気的に接続されている。導体部35のZ方向の他方側の面は、第1電極21に接合されている。なお、本明細書において、「接合」には、直列接合される構成だけでなく、他の導電層を介して接合される構成も含まれる。導体部35の厚さ方向は、第1電極21の厚さ方向に沿っており、より具体的には第1電極21の厚さ方向と同じ方向である。つまり、導体部35と第1電極21は、重なっている。導体部35のZ方向の他方側に半導体部20及び第1電極21が配置されている。導体部35は、封止体24の第2面24Bから外部に露出している。導体部35は、封止体24の外部に露出する露出面35Aを有する。露出面35Aは、Z方向の一方側を向いた状態で配置されている。露出面35Aの幅W1は、第1リード部31の幅W2よりも大きい。導体部35は、半導体部20で生じた熱を封止体24の外部に放出する放熱板として機能する。導体部35には、導体部35をZ方向(厚さ方向)に貫通する第2貫通孔35Bが形成されている。第2貫通孔35Bの断面は円形をなしている。第2貫通孔35Bの直径は、封止体24の第1貫通孔24Cの直径よりも大きい。第2貫通孔35Bの内周面は、第1貫通孔24Cの内周面よりも径方向外側に配置されている。
【0034】
回路基板14は、半導体スイッチ13を制御しうる。回路基板14は、図1及び図5に示すように、基板40と、制御部41と、駆動回路42と、第1電圧検出経路43と、第2電圧検出経路44と、電圧検出部45と、を有する。基板40は、例えば合成樹脂製であり、板状をなしている。基板40には、配線パターンが形成されている。制御部41、駆動回路42、第1電圧検出経路43、第2電圧検出経路44、及び電圧検出部45は、基板40上に搭載されている。
【0035】
制御部41は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU、RAM、ROMなどを有する。制御部41は、駆動条件が成立した場合に、駆動回路42に駆動信号を与える。駆動回路42は、駆動信号が与えられた場合に、半導体スイッチ13の第3電極23に向けてオン信号を出力する。第3電極23にオン信号が入力されると、半導体スイッチ13がオン状態となり、第1電極21側から第2電極22側へ電流が流れる。これにより、電源部90に基づく電力が、負荷91に供給される。駆動条件は、特に限定されず、例えば車両の始動スイッチがオン状態に切り替わったことであってもよいし、車両のユーザによって開始操作が行われたことであってもよい。始動スイッチは、エンジン搭載車であればイグニッションスイッチであり、電気自動車であればパワースイッチである。制御部41は、例えば外部のECU(Electronic Control Unit)から入力される信号に基づいて、車両の始動スイッチのオンオフ状態やユーザの操作結果を認識することができる。
【0036】
制御部41は、停止条件が成立した場合に、駆動回路42に停止信号を与える。駆動回路42は、停止信号が与えられた場合に、半導体スイッチ13の第3電極23に向けてオフ信号を出力する。第3電極23にオフ信号が入力されると、半導体スイッチ13がオフ状態となり、第1電極21側から第2電極22側への電流の流れが遮断される。これにより、電源部90から負荷91への電力供給が遮断される。停止条件は、特に限定されず、例えば車両の始動スイッチがオフ状態に切り替わったことであってもよいし、車両のユーザによって停止操作が行われたことであってもよい。
【0037】
電圧検出部45は、例えば公知の電圧検出回路を有して構成されており、第1電圧検出経路43と第2電圧検出経路44との間の電圧を検出する。第1電圧検出経路43は第1電極21に電気的に接続され、第2電圧検出経路44は第2電極22に電気的に接続される。このため、電圧検出部45は、第1電極21と第2電極22との間の電圧を検出しうる。電圧検出部45は、第1電極21と第2電極22との間の電圧が閾値電圧以下であるか否かを判定する。電圧検出部45は、第1電極21と第2電極22との間の電圧が閾値電圧以下であると判定した場合に、駆動回路42に向けて遮断信号を出力する。駆動回路42は、遮断信号が入力された場合、駆動信号が入力された状態であっても、オフ信号を出力する。つまり、第1電極21と第2電極22との間の電圧が閾値電圧以下となった場合、駆動回路42から第3電極23にオフ信号が入力される。これにより、半導体スイッチ13は、オフ状態となる。
【0038】
次の説明は、半導体スイッチ13の接続構造に関する。
図5に示すように、半導体スイッチ13よりもZ方向の一方側に第1導電路11及び第2導電路12が配置されており、半導体スイッチ13よりもZ方向の他方側に回路基板14が配置されている。
【0039】
第1導電路11は、第1バスバー11Aを含む。第1バスバー11Aは、板状をなしている。第2導電路12は、第2バスバー12Aを含む。第2バスバー12Aは、板状をなしている。第1導電路11の第1バスバー11A、第2導電路12の第2バスバー12A、及び回路基板14の厚さ方向は、半導体スイッチ13の封止体24の厚さ方向に沿っており、より具体的には、半導体スイッチ13の封止体24の厚さ方向と同じである。
【0040】
第1バスバー11Aは、Y方向に沿って延びるように配置される第1配置部11Bを有する。第2バスバー12Aは、Y方向に沿って延びるように配置される第2配置部12Bを有する。第1配置部11Bと第2配置部12Bとは互いにX方向に間隔を空けて並んで配置されている。半導体スイッチ13は、第1配置部11B上に配置され、導体部35の露出面35Aが第1配置部11Bに接合されている。露出面35Aの第1配置部11Bとの接合領域の幅は、第1リード部31の幅よりも大きい。ここで「接合領域」とは、導体部35と第1導電路11とが接合される部分の外縁よりも内側の領域をいい、上記内側の領域の全体が接合されていてもよいし、上記内側の領域の一部が接合されていなくてもよい。
【0041】
第1配置部11BのX方向の一方側には第2配置部12Bが配置されている。第2配置部12BのZ方向の他方側の面には、第2リード部32のZ方向の一方側の面が接合されている。
【0042】
第1リード部31、第3リード部33、第4リード部34は、屈曲されて以下のように構成されている。
【0043】
第1リード部31は、封止体24の外部においてZ方向の他方側に延びる第1延出部31Bを有する。より具体的には、第1リード部31は、封止体24からX方向の一方側に突出する第1突出部31Aを有し、第1延出部31Bは、第1突出部31Aの先端からZ方向の他方側に延びている。
【0044】
第3リード部33は、封止体24の外部においてZ方向の他方側に延びる第3延出部33Bを有する。より具体的には、第3リード部33は、封止体24からX方向の一方側に突出する第3突出部33Aを有し、第3延出部33Bは、第3突出部33Aの先端からZ方向の他方側に延びている。
【0045】
第4リード部34は、封止体24の外部においてZ方向の他方側に延びる第4延出部34Bを有する。より具体的には、第4リード部34は、封止体24からX方向の一方側に突出する第4突出部34Aを有し、第4延出部34Bは、第4突出部34Aの先端からZ方向の他方側に延びている。
【0046】
第1延出部31B、第3延出部33B及び第4延出部34Bは、それぞれ回路基板14の配線パターンに半田付けなどで接合されている。第1延出部31Bは、第1電圧検出経路43に接合されている。第4延出部34Bは、第2電圧検出経路44に接合されている。つまり、第1電圧検出経路43は、第1リード部31を介して第1電極21に電気的に接続されており、第2電圧検出経路44は、第4リード部34を介して第2電極22に電気的に接続されている。第3延出部33Bには、駆動回路42からオン信号及びオフ信号が選択的に入力される。
【0047】
次の説明は、第1実施形態の効果に関する。
第1実施形態の車載用の半導体スイッチ装置1は、半導体スイッチ13と、電圧検出部45と、を有している。半導体スイッチ13は、車載用の駆動回路42から出力されるオン信号及びオフ信号によって制御され、第1導電路11と第2導電路12との間においてオン状態とオフ状態とに切り替わる。半導体スイッチ13は、半導体部20と、第1電極21と、第2電極22と、第3電極23と、封止体24と、第1リード部31と、第2リード部32と、導体部35と、を有している。第3電極23は、駆動回路42からオン信号及びオフ信号が入力される。封止体24は、半導体部20を覆う。第1リード部31は、第1電極21に電気的に接続され、封止体24の外部に突出している。第2リード部32は、第2電極22に電気的に接続され、封止体24の外部に突出している。導体部35は、第1電極21に電気的に接続され、封止体24の外部に露出している。半導体スイッチ13は、第3電極23にオン信号が入力された場合に第1電極21側から第2電極22側への電流の流れを許容するオン状態となり、第3電極23にオフ信号が入力された場合に第1電極21側から第2電極22側への電流の流れを遮断するオフ状態となる。導体部35は第1導電路11に接合されており、第1リード部31は第1電圧検出経路43に接合されている。電圧検出部45は、第1電圧検出経路43に印加された電圧を検出する。この構成によれば、第1電極21に電気的に接続される第1リード部31及び導体部35のうち、導体部35が電流経路として機能し、第1リード部31が電圧検出に用いられる。このため、第1電極21と第1電圧検出経路43との間のインダクタンス成分を小さく抑える構成をとりやすい。つまり、この構成によれば、第1電極21と第1電圧検出経路43との間のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を抑えつつ、第1電極21及び第2電極22間の電圧を検出する構成をとりやすい。
【0048】
更に、第1電極21に電気的に接続される第1リード部31及び導体部35のうち、第1リード部31が第1電圧検出経路43に接合され、導体部35が第1導電路11に接合されている。つまり、屈曲しやすい第1リード部31を第1電圧検出経路43に接合させる構成であるため、第1電圧検出経路43の配置位置の自由度を高めることができる。
【0049】
更に、第1リード部31と導体部35とは一体的に形成されている。第1リード部31と導体部35が一体的に形成されている構成では、第1リード部31が第1導電路11に接合され、且つ第1リード部31又は第1導電路11に第1電圧検出経路43が接合される場合、導体部35と第1リード部31の両方に電流が流れるため、導体部35と第1リード部31の両方のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を受ける。これに対し、本構成では、第1リード部31が第1電圧検出経路43に接合され、導体部35が第1導電路11に接合されているため、第1導電路11から第2導電路12に流れる電流が第1リード部31を通過しなくなり、その結果、第1リード部31のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を受けないか、あるいは受けにくい。このため、第1電極21と第1電圧検出経路43との間のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響をより確実に抑えることができる。
【0050】
更に、導体部35は、板状をなしている。導体部35の厚さ方向の片側(Z方向の一方側)の面が第1導電路11に接合されている。この構成によれば、導体部35のインダクタンス成分を小さく抑えやすいため、第1電極21と第1電圧検出経路43との間のインダクタンス成分を小さく抑えやすい。また、この構成によれば、半導体スイッチ13で生じた熱を導体部35から第1導電路11に放出しやすい。
【0051】
更に、導体部35において封止体24の外部に露出する露出面35Aの幅W1は、第1リード部31の幅W2よりも大きい。この構成によれば、導体部35のインダクタンス成分を小さく抑えやすいため、第1電極21と第1電圧検出経路43との間のインダクタンス成分を小さく抑えやすい。また、この構成によれば、半導体スイッチ13で生じた熱を導体部35から第1導電路11に放出しやすい。
【0052】
更に、電圧検出部45は、第1電圧検出経路43に印加された電圧が予め定められた異常電圧である場合に遮断信号を出力し、駆動回路42は、遮断信号が入力された場合に、オフ信号を出力する。この構成によれば、第1電極21と第1電圧検出経路43との間のインダクタンス成分に起因する逆起電力の影響を抑えつつ電圧を検出し、その検出した電圧が異常電圧である場合に駆動回路42からオフ信号を出力することができる。このため、第1電極21の電圧に異常が生じた場合に、半導体スイッチ13をより迅速にオフ状態に切り替えることができる。
【0053】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0054】
上記実施形態では、導体部が第1電極とは別体であったが、導体部が第1電極と同一部材で一体的に構成されてもよい。つまり、導体部が第1電極の一部として構成されていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、導体部が第1導電路に接合され、第1リード部が第1電圧検出経路に接合される構成であったが、導体部が第1電圧検出経路に接合され、第1リード部が第1導電路に接合される構成であってもよい。
【0056】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1…半導体スイッチ装置
11…第1導電路
11A…第1バスバー
11B…第1配置部
12…第2導電路
12A…第2バスバー
12B…第2配置部
13…半導体スイッチ
14…回路基板
20…半導体部
21…第1電極
22…第2電極
23…第3電極
24…封止体
24A…第1面
24B…第2面
24C…第1貫通孔
31…第1リード部
31A…第1突出部
31B…第1延出部
32…第2リード部
33…第3リード部
33A…第3突出部
33B…第3延出部
34…第4リード部
34A…第4突出部
34B…第4延出部
35…導体部
35A…露出面
35B…第2貫通孔
36…ワイヤ
40…基板
41…制御部
42…駆動回路
43…第1電圧検出経路
44…第2電圧検出経路
45…電圧検出部
90…電源部
91…負荷
W1…露出面の幅
W2…第1リード部の幅
図1
図2
図3
図4
図5