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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】アンテナ装置、および通信端末装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/50 20060101AFI20241008BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01Q1/50
H03H7/38 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023545151
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2022028381
(87)【国際公開番号】W WO2023032511
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2021144106
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021173126
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 貴文
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/219160(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101284(WO,A1)
【文献】特開2014-053808(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153654(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/50
H03H 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナと第2アンテナとを備えるアンテナ装置であって、
前記第1アンテナは、
高周波信号を供給する給電回路に接続される第1放射素子と、
前記第1放射素子と前記給電回路との間に接続される第1コイルと、を含み、
前記第2アンテナは、
前記第1コイルに対して磁気結合する第2コイルと、
前記第2コイルに接続される第2放射素子と、を含み、
前記第1アンテナのインピーダンスは、前記第2アンテナの基本波の共振周波数において、50Ωより大きい、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1アンテナの基本波の共振周波数は、前記第2アンテナの高調波の共振周波数より低い、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2放射素子の長さは、前記第1放射素子の長さより長い、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
第1アンテナと第2アンテナとを備えるアンテナ装置であって、
前記第1アンテナは、
高周波信号を供給する給電回路に接続される第1放射素子と、
前記第1放射素子と前記給電回路との間に接続される第1コイルと、を含み、
前記第2アンテナは、
前記第1コイルに対して磁気結合する第2コイルと、
前記第2コイルに接続される第2放射素子と、を含み、
前記給電回路からみた前記第1アンテナの反射係数の位相が、前記第2アンテナの基本波の共振周波数において、90度以下もしくは270度以上である、アンテナ装置。
【請求項5】
前記第1コイルと前記給電回路との間に接続される第1インピーダンス整合素子をさらに備える、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2コイルと前記第2放射素子との間に接続される第2インピーダンス整合素子をさらに備える、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1コイルに並列接続されるコンデンサをさらに備える、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1放射素子と前記第2放射素子とは、同一基板上に形成されている、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第2放射素子と前記給電回路が第1基板上にあり、前記第1放射素子は第2基板上に形成されている請求項1~請求項のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記給電回路と前記第1放射素子の間はケーブルで接続されており、ケーブルが接続されている前記第1基板上に第3インピーダンス整合素子を、さらに備える請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記給電回路と、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の前記アンテナ装置と、を備える、通信端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置、および通信端末装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の周波数帯域で動作させる通信端末装置が開発されている。当該通信端末装置に用いられるアンテナ装置は、使用可能な周波数帯域を広帯域化する必要があり直接的又は間接的に結合する2つのアンテナを備えている。給電するアンテナと無給電のアンテナとの2つのアンテナを結合させたアンテナ装置が特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/016120号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すアンテナ装置において、例えば、LTE(Long Term Evolution)で使用されるLow-Band(0.7~0.96GHz)で用いる場合、共振周波数がそれ程高くないため十分なアンテナの長さ(放射素子の長さ)を確保することができる。
【0005】
しかし、アンテナの長さは、共振周波数が高くなるほど短くなる。そのため、例えば、第5世代移動通信システム(5G)で使用する周波数帯域(3.3~5.0GHz)に用いる場合、アンテナ装置では、無給電のアンテナの長さが短くなり、十分な放射効率が得られないことがあった。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は使用する周波数帯域を広帯域化しつつ、十分な放射効率が得られるアンテナ装置、および通信端末装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従うアンテナ装置は、第1アンテナと第2アンテナとを備えるアンテナ装置である。第1アンテナは、高周波信号を供給する給電回路に接続される第1放射素子と、第1アンテナと給電回路との間に接続される第1コイルと、を含む。第2アンテナは、第1コイルに対して磁気結合する第2コイルと、第2コイルに接続される第2放射素子と、を含む。第1アンテナのインピーダンスは、第2アンテナの基本波の共振周波数において、50Ωより大きい。
【0008】
本開示に従う通信端末装置は、給電回路と、上記のアンテナ装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によるアンテナ装置においては、第1アンテナのインピーダンスが、第2アンテナの基本波の共振周波数において、50Ωより大きいので、使用する周波数帯域を広帯域化することができるとともに、十分な放射効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態におけるアンテナ装置の回路図である。
図2】実施の形態における通信端末装置を示す概略図である。
図3】実施の形態における第1アンテナのインピーダンスを測定する場合の構成を示す概略図である。
図4】実施の形態における第2アンテナのインピーダンスを測定する場合の構成を示す概略図である。
図5】実施の形態におけるアンテナ装置の反射係数の周波数特性を示す図である。
図6】実施の形態におけるアンテナ装置の放射効率を説明するための図である。
図7】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第1状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。
図8】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第1状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。
図9】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第2状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。
図10】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第2状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。
図11】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第3状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。
図12】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第3状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。
図13】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第4状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。
図14】実施の形態におけるアンテナ装置のインピーダンスを第4状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。
図15】変形例1におけるアンテナ装置の回路図である。
図16】変形例2におけるアンテナ装置の回路図である。
図17】変形例3におけるアンテナ装置の回路図である。
図18】変形例4におけるアンテナ装置の回路図である。
図19】変形例5におけるアンテナ装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態]
図1は、実施の形態におけるアンテナ装置100の回路図である。アンテナ装置100は、第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを備える。第1アンテナANT1は、給電回路30に接続される第1放射素子11と、第1放射素子11と給電回路との間に接続される第1コイルL1と、を含む。第2アンテナANT2は、第1コイルL1に対して磁気結合する第2コイルL2と、第2コイルL2に接続される第2放射素子12と、を含む。そのため、第1アンテナANT1は、給電回路30により給電される給電アンテナで、第2アンテナANT2は、給電回路30と接続されておらず、給電回路30により給電されない無給電アンテナである。
【0013】
給電される第1アンテナANT1には、直列に接続されるコンデンサ13と、一端が接続されるコイル14とが設けてある。コイル14の他端は、GNDに接続されている。コンデンサ13およびコイル14はLC回路を構成し、第1アンテナANT1のフィルタ回路として機能している。なお、第1アンテナANT1においてフィルタ回路が不要であれば、コンデンサ13およびコイル14を設ける必要はない。
【0014】
アンテナ装置100では、使用可能な周波数帯域を広帯域化するために第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを、第1コイルL1と第2コイルL2とで磁気結合している。つまり、第1コイルL1と第2コイルL2とは、アンテナ結合素子20を構成している。
【0015】
アンテナ結合素子20は、電子機器内の回路基板に実装される、直方体状のチップ部品である。例えば、アンテナ結合素子20を樹脂多層基板で構成する場合、アンテナ結合素子20は、絶縁基材に液晶ポリマー(LCP[Liquid Crystal Polymer])シートを用いて、銅箔で第1コイルL1および第2コイルL2の導体パターンをパターンニングした各々の絶縁基材を積層することで構成される。また、例えば、アンテナ結合素子20をセラミック多層基板で構成する場合、アンテナ結合素子20は、絶縁基材に低温同時焼成セラミックス(LTCC[Low Temperature Co-fired Ceramics])を用いて、銅ペーストを印刷形成して第1コイルL1および第2コイルL2の導体パターンをパターンニングした各々の絶縁基材を積層することで構成される。さらに、アンテナ結合素子20は、セラミック多層基板に限らず、例えば、ガラスを主成分とした絶縁ペーストのスクリーン印刷による塗布を繰り返すことで形成してもよい。このように、アンテナ結合素子20は、絶縁基材が非磁性体であることにより(磁性体フェライトではないので)、所定インダクタンス、所定結合係数のトランスとして用いることができる。
【0016】
このように、アンテナ装置100は、二つの放射素子(第1放射素子11および第2放射素子12)を、アンテナ結合素子20を接続することで、広帯域をカバーすることができる。ところが、例えば、第5世代移動通信システム(5G)で使用する周波数帯域(3.3~5.0GHz)や5GHz帯の無線LANなどの周波数帯域をアンテナ装置100でカバーする場合、第2アンテナANT2を高い共振周波数で共振させる必要があり、第2放射素子12の長さが短くなる。しかし、第2放射素子12の長さが短くなると、十分な放射効率が得られない場合があった。
【0017】
そこで、第2アンテナANT2を基本波の共振周波数で共振させるのではなく高調波の共振周波数で共振させることで、第2放射素子12の長さを長くすることができる。つまり、第2アンテナANT2で共振させたい共振周波数が例えば4.4GHzである場合に、4.4GHzの基本波で第2アンテナANT2を共振させる場合、第2放射素子12の長さは短くなる。しかし、4.4GHzの3倍高調波で第2アンテナANT2を共振させる場合、基本波の共振周波数は1.4GHzとなる。第2放射素子12の長さを1.4GHzの基本波の共振周波数で規定することで、4.4GHzの基本波の共振周波数で規定した場合に比べ、放射素子の長さを長くすることができる。アンテナ装置100では、第2アンテナANT2を高調波の共振周波数で共振させることで第2放射素子12の長さを長くして、十分な放射効率を得ることができる。
【0018】
具体的に、第1放射素子11および第2放射素子12の長さについて説明する。図2は、実施の形態における通信端末装置を示す概略図である。図2に示す通信端末装置は、n78(3.3-3.8GHz)を含む帯域およびn79(4.4-4.9GHz)を含む帯域で通信が可能な携帯端末200である。そのため、携帯端末200は、n78を含む帯域で励起される第1アンテナANT1と、n79を含む帯域で励起される第2アンテナANT2とを含むアンテナ装置100が設けてある。なお、携帯端末200は、例えば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどである。
【0019】
アンテナ装置100は、第1放射素子11および第2放射素子12がパターニングされた基板210の裏側にアンテナ結合素子20が設けてあり、第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを結合している。また、第1アンテナANT1は、図示していないが配線で給電回路30に対して電気的に接続されているが、第2アンテナANT2は、給電回路30に対して電気的に接続されていない。
【0020】
図2に示すように、第1放射素子11はアンテナ結合素子20から図中左方向に延びる線状の導体パターンで構成されている。また、第2放射素子12は、アンテナ結合素子20から図中右方向に延び、途中で図中左方向へ折り返す線状の導体パターンで構成されている。第1放射素子11および第2放射素子12はいずれもモノポールアンテナとして作用する。
【0021】
第1アンテナANT1はn78を含む帯域で励起され、第2アンテナANT2はn79含む帯域で励起されるので、ともに基本波の共振周波数で共振させるのであれば放射素子の長さは、第2放射素子12より第1放射素子11の方が長くなる。しかし、第2アンテナANT2は、3倍高調波の共振周波数で共振させるため、図2に示すように放射素子の長さは、第1放射素子11より第2放射素子12の方が長くなっている。
【0022】
第2アンテナANT2を高調波の共振周波数で共振させる場合であっても、第2アンテナANT2は、基本波の共振周波数で共振される。アンテナ装置100が対象としている周波数帯域に第2アンテナANT2の基本波の共振周波数が含まれていない場合、第2アンテナANT2が基本波の共振周波数で共振すると、アンテナ装置100としては、対象としている周波数帯域以外の妨害波を受信することになり通信性能が劣化する。
【0023】
そこで、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数で共振しないようにインピーダンスの調整を行っている。具体的に、アンテナ装置100は、第1アンテナANT1のインピーダンスが、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において、例えば50Ωより大きくなるように調整する。50Ωという数字は一般的なアンテナ設計でも用いられる基準値であり、これよりインピーダンスが大きい場合は、回路に流れる電流値が減少する。また、一般的なアンテナ設計においては、給電回路30の入力側のインピーダンスも50Ω近傍に相当する。したがって、「対象のインピーダンスが50Ωより大きい」場合は、「対象のインピーダンスが給電回路30の入力側のインピーダンスより大きい」場合に相当する。また、本明細書において、インピーダンスの大きさの比較は、インピーダンスの実部と虚部を加味した絶対値で比較する。
【0024】
ここで、図3は、実施の形態における第1アンテナANT1のインピーダンスを測定する場合の構成を示す概略図である。第1アンテナANT1のインピーダンスの測定は、図3のように、給電回路30の代わりに第1コイルL1に対してネットワークアナライザ50を測定ケーブル51で繋ぎ、第1測定状態にして行う。このとき、第1コイルL1と第2コイルL2が一体的に素子に形成され分離が難しい場合、第2コイルL2から第2放射素子12およびGNDを外して第2コイルL2の両端をオープンにする。第1測定状態にして、第1コイルL1と測定ケーブル51と接続点を測定点t1としてネットワークアナライザ50で、第1アンテナANT1のインピーダンスの周波数特性を測定する。なお、測定ケーブル51の長さによる位相シフトについては、トランスの一次側である第1コイルL1との接続点であらかじめ校正しておく。
【0025】
また、図4は、実施の形態における第2アンテナANT2のインピーダンスを測定する場合の構成を示す概略図である。第2アンテナANT2の基本波の共振周波数の測定は、図4のように、GNDに接続する代わりに第2コイルL2に対してネットワークアナライザ50を測定ケーブル52で繋ぎ、第2測定状態にして行う。このとき、第1コイルL1と第2コイルL2が一体的に素子に形成され分離が難しい場合、第1コイルL1から第1放射素子11および給電回路30を外して第1コイルL1の両端をオープンにする。第2測定状態にして、第2コイルL2と測定ケーブル52と接続点を測定点t2としてネットワークアナライザ50で、第2アンテナANT2の基本波の周波数特性を測定する。この測定により、無給電素子の共振周波数を特定できる。なお、測定ケーブル52の長さによる位相シフトについては、トランスの二次側である第2コイルL2との接続点であらかじめ校正しておく。上記第1および第2測定状態での測定により、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数における、第1アンテナANT1のインピーダンスを特定することができる。
【0026】
アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において、第1アンテナANT1のインピーダンスが50Ωより大きいことで、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において、第1コイルL1(トランスの一次側)に流れる電流が減少する。そのため、第2コイルL2(トランスの二次側)に生じる誘導起電力も減少し、第2アンテナANT2自体は基本波の共振周波数で共振しても、アンテナ装置100全体としては、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数で共振しなくなる。
【0027】
図5は、実施の形態におけるアンテナ装置100の反射係数の周波数特性を示す図である。図5において、横軸は周波数、縦軸は反射係数である。ここで、反射係数Aは図1において給電回路30からアンテナ結合素子20側を見た(つまりアンテナ装置100の)反射係数である。また、反射係数Bは図1において第1コイルL1から第1放射素子11側を見た(つまり、第1アンテナANT1の)反射係数である。
【0028】
反射係数Aにおいて、n78を含む帯域で第1アンテナANT1の基本波の共振周波数(第1コイルL1と第1放射素子11とによる共振周波数)で共振が生じ、n79を含む帯域で第2アンテナANT2による3倍高調波の共振周波数(例えば、4.8GHz)で共振が生じている。一方、反射係数Bにおいて、n78を含む帯域で第1アンテナANT1の基本波の共振周波数で共振が生じている。つまり、アンテナ装置100では、アンテナ結合素子20で第2アンテナANT2を第1アンテナANT1に結合させることで、n79を含む帯域まで広帯域化することができる。なお、アンテナ装置100は前述のようにインピーダンスの調整を行うことで、反射係数Aにおいて、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数(例えば、1.5GHz)で共振が観測されていない。つまり、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において動作しない。
【0029】
図6は、実施の形態におけるアンテナ装置100の放射効率を説明するための図である。図6において、横軸は周波数、縦軸は放射効率である。図6において、特性Cは第2アンテナANT2を3倍高調波の共振周波数で共振させた場合のアンテナ装置100の放射効率の周波数特性であり、特性Dは第2アンテナANT2を基本波の共振周波数で共振させた場合のアンテナ装置の放射効率の周波数特性である。第2アンテナANT2を3倍高調波の共振周波数で共振させた場合の方が、第2放射素子12の長さを長くすることができるので、アンテナ装置100は、特性Cが示すようにn79を含む帯域で放射効率が向上している。
【0030】
次に、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数においてアンテナ装置100を動作させないインピーダンスの調整について説明する。図7は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第1状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。図8は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第1状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。
【0031】
図7に示すスミスチャートは、図1に示すアンテナ装置100の第1コイルL1と第1放射素子11との間に移相器(図示せず)を設けて第1アンテナANT1のインピーダンスを第1状態に調整した場合を図示している。ここで、第1状態とは、移相器により、第1測定状態で給電回路30から見込む、第1アンテナANT1の反射係数の位相が180度付近である状態である。反射係数の位相とは、スミスチャートにおいて中心から右側のX軸を起点として、反時計回りに、対象周波数の点と中心とを結んだ線とのなす角度である。
【0032】
同様に、図9は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第2状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。図10は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第2状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。ここで、第2状態とは、移相器により、第1測定状態で給電回路30から見込む、第1アンテナANT1の反射係数の位相が90度付近にある状態である。また、電圧と電流の位相差は90度付近にある状態でもある。
【0033】
図11は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第3状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。図12は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第3状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。ここで、第3状態とは、移相器により、第1測定状態で給電回路30から見込む、第1アンテナANT1の反射係数の位相が0(ゼロ)度付近にある状態である。また、電圧と電流の位相差は180度付近にある状態でもある。
【0034】
図13は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第4状態に調整した場合のスミスチャートを示す図である。図14は、実施の形態におけるアンテナ装置100のインピーダンスを第4状態に調整した場合のアンテナ特性を説明するための図である。ここで、第4状態とは、移相器により、第1測定状態で給電回路30から見込む、第1アンテナANT1の反射係数の位相が-90度付近にある状態である。また、電圧と電流の位相差は-90度付近にある状態でもある。
【0035】
なお、図7図14では、第1アンテナANT1のインピーダンスとアンテナ装置100の特性との関係を説明するために、アンテナ装置100に移相器を設けて、第1アンテナANT1のインピーダンスを変化させている。しかし、実施の形態におけるアンテナ装置100には必ずしも移相器を設ける必要はない。つまり、実施の形態におけるアンテナ装置100では、第2放射素子12の基本波の共振周波数において動作しないように回路構成でインピーダンスを調整すれば移相器を設けなくても良い。
【0036】
第2アンテナANT2の基本波の共振周波数における、第1アンテナANT1のインピーダンスの変化を表1に示す。表1では、反射係数の位相(差)を180度、90度、0度、-90度と変化させた場合の第1アンテナANT1のインピーダンスの変化を示している。なお、表1では、Re{Z}がインピーダンスの実部を、Im{Z}がインピーダンスの虚部をそれぞれ示している。また、表1では、給電回路30の入力側のインピーダンスがいずれも50.0Ωである。インピーダンスの大きさの比較は、インピーダンスの実部と虚部を加味した絶対値で比較する。
【0037】
【表1】
【0038】
図7(a),図9(a),図11(a),図13(a)は、第2アンテナANT2を結合させない第1アンテナANT1単体を第1放射素子11側から見たインピーダンスをスミスチャート上に軌跡として表した図である。マークm1は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数における第1アンテナANT1のインピーダンスを示している。図7(a),図9(a),図11(a),図13(a)に示すように、反射係数の位相差が180度、90度、0度、-90度と変化させるに従い、マークm1が時計回りに移動している。図7(a),図9(a),図11(a),図13(a)に示すスミスチャートは、50Ωで正規化されているため、反射係数の位相差90度以下、-90度以上で第1アンテナANT1のインピーダンスが50Ωより大きくなる。すなわち、スミスチャートで対象周波数における点が右半分に存在する場合は第1アンテナANT1のインピーダンスが50Ωより大きくなる。
【0039】
図7(b),図9(b),図11(b),図13(b)は、第2アンテナANT2を結合させたアンテナ装置100全体を給電回路30側から見たインピーダンスをスミスチャート上に軌跡として表した図である。マークm2は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数におけるアンテナ装置100全体のインピーダンスを示している。図7(b),図9(b),図11(b),図13(b)に示すように、反射係数の位相差が180度、90度、0度、-90度と変化させるに従い、マークm2が時計回りに移動している。図7(b),図9(b),図11(b),図13(b)に示すスミスチャートは、50Ωで正規化されているため、位相差90度以下、270度以上でアンテナ装置100全体のインピーダンスが50Ωより大きくなる。すなわち、スミスチャートで対象周波数における点が右半分に存在する場合は、アンテナ装置100全体のインピーダンスが50Ωより大きくなる。
【0040】
図8(a),図10(a),図12(a),図14(a)は、反射係数の位相差を180度、90度、0度、-90度と変化させた場合のアンテナ装置100の反射係数の周波数特性を示す図である。図8(a),図10(a),図12(a),図14(a)において、横軸は周波数、縦軸は反射係数である。マークm3は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数におけるアンテナ装置100の反射係数のピークを示している。マークm3に示す反射係数のピークは、位相差が180度、90度、0度と変化するに従い小さくなり、位相差が0度、-90度と変化するに従い大きくなる。
【0041】
図8(b),図10(b),図12(b),図14(b)は、反射係数の位相差を180度、90度、0度、-90度と変化させた場合のアンテナ装置100に流れる電流量の周波数特性を示す図である。図8(b),図10(b),図12(b),図14(b)において、横軸は周波数、縦軸は電流量である。特性Eは第1アンテナANT1に流れる電流量の周波数特性であり、特性Fは第2アンテナANT2に流れる電流量の周波数特性であり、特性Gはアンテナ装置100全体に流れる電流量の周波数特性である。マークm4は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数における第2アンテナANT2に流れる電流量を示している。破線で囲まれている範囲が第2アンテナANT2の基本波の共振周波数の範囲である。マークm5は、第2アンテナANT2の3倍高調波の共振周波数における第2アンテナANT2に流れる電流量を示している。マークm4,m5に示す第2アンテナANT2に流れる電流量は、位相差が180度、90度、0度と変化するに従い小さくなり、位相差が0度、-90度と変化するに従い大きくなる。特に、反射係数の位相差が0(ゼロ)度の場合にマークm4に示す第2アンテナANT2に流れる電流量は略0(ゼロ)となっている。
【0042】
反射係数の位相差が180度、90度、0度と変化するに従い、図8(b),図10(b),図12(b)に示すように第2アンテナANT2に流れる電流量(マークm4)は小さくなっている。逆に、アンテナ装置100全体のインピーダンス(マークm2)は、図7(b),図9(b),図11(b)に示すように位相差が180度、90度、0度と変化するに従い大きくなっている。つまり、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数においてインピーダンスを大きくすることで第1コイルL1(トランスの一次側)に流れる電流が減少するので、第2コイルL2(トランスの二次側)に生じる誘導起電力も減少している。
【0043】
反射係数の位相差が180度、90度、0度と変化するに従い、図8(b),図10(b),図12(b)に示すように第2アンテナANT2に流れる電流量(マークm4)が小さくなることで、図8(a),図10(a),図12(a)に示す反射係数のピーク(マークm3)が小さくなっている。つまり、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において第2コイルL2(トランスの二次側)に生じる誘導起電力が減少したことで、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数で共振しなくなる。
【0044】
一方、反射係数の位相差が180度、90度、0度と変化するに従い、図8(b),図10(b),図12(b)に示すように第2アンテナANT2に流れる電流量(マークm5)も小さくなっているが、マークm4のように電流量が略0(ゼロ)となることはない。そのため、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の3倍高調波の共振周波数において第2コイルL2(トランスの二次側)に生じる誘導起電力も減少するが、第2アンテナANT2の3倍高調波の共振周波数で共振することになる。
【0045】
前述のように、アンテナ装置100は、第1アンテナANT1のインピーダンスが、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において50Ωより大きくなるように調整する。つまり、アンテナ装置100は、第1アンテナANT1のインピーダンスが、スミスチャートの右半面(位相差90度以下、270度以上)に位置するように調整する。これによって、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数で共振し難くして、通信性能を向上させることができる。
【0046】
以上のように、実施の形態に係るアンテナ装置100は、第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを備える。第1アンテナANT1は、高周波信号を供給する給電回路30に接続される第1放射素子11と、第1放射素子11と給電回路30との間に接続される第1コイルL1と、を含む。第2アンテナANT2は、第1コイルL1に対して磁気結合する第2コイルL2と、第2コイルL2に接続される第2放射素子12と、を含む。第1アンテナANT1のインピーダンスは、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において、50Ωより大きい。
【0047】
これにより、実施の形態に係るアンテナ装置100は、第1アンテナANT1のインピーダンスを調整することで、使用する周波数帯域を広帯域化することができるとともに、十分な放射効率が得られる。
【0048】
第1アンテナANT1の基本波の共振周波数は、第2アンテナANT2の高調波の共振周波数より低いことが好ましい。これにより、使用する周波数帯域を広帯域化することができる。
【0049】
第2放射素子12の長さは、第1放射素子11の長さより長いことが好ましい。これにより、第2アンテナANT2の放射効率を向上させることができる。
【0050】
携帯端末200(通信端末装置)は、給電回路30と、上記のアンテナ装置100と、を備える。これにより、携帯端末200は、広帯域で安定した通信が可能となる。
【0051】
[変形例1]
図15は、変形例1におけるアンテナ装置100Aの回路図である。なお、図15に示すアンテナ装置100Aにおいて、図1に示すアンテナ装置100と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0052】
アンテナ装置100Aは、第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを備える。第1アンテナANT1は、給電回路30に接続される第1放射素子11と、第1放射素子11と給電回路との間に接続される第1コイルL1と、を含む。第2アンテナANT2は、第1コイルL1に対して磁気結合する第2コイルL2と、第2コイルL2に接続される第2放射素子12と、を含む。さらに、アンテナ装置100Aは、第2コイルL2と第2放射素子12との間にインピーダンス整合素子16が接続されている。
【0053】
インピーダンス整合素子16を第2アンテナANT2に設けることで、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数においてインピーダンスを大きくすることができる。インピーダンス整合素子16によりインピーダンスを大きくすることで、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において第2アンテナANT2に流れる電流量をより小さくすることができる。
【0054】
以上のように変形例1に係るアンテナ装置100Aは、第2コイルL2と第2放射素子12との間に接続されるインピーダンス整合素子16(第2インピーダンス整合素子)をさらに備える。これにより、変形例1に係るアンテナ装置100Aは、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において第2アンテナANT2に流れる電流量をより小さくすることができる。
【0055】
[変形例2]
図16は、変形例2におけるアンテナ装置100Bの回路図である。なお、図16に示すアンテナ装置100Bにおいて、図1に示すアンテナ装置100と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0056】
アンテナ装置100Bは、第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを備える。第1アンテナANT1は、給電回路30に接続される第1放射素子11と、第1放射素子11と給電回路との間に接続される第1コイルL1と、を含む。第2アンテナANT2は、第1コイルL1に対して磁気結合する第2コイルL2と、第2コイルL2に接続される第2放射素子12と、を含む。さらに、アンテナ装置100Bは、第1コイルL1と第1放射素子11との間にインピーダンス整合素子17が接続されている。
【0057】
インピーダンス整合素子17を第1アンテナANT1に設けることで、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において第1コイルL1(トランス一次側)に流れる電流を分流させることができる、インピーダンス整合素子17により第1コイルL1(トランス一次側)に流れる電流を分流させることで、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において第2アンテナANT2に流れる電流量をより小さくすることができる。このとき、インピーダンス整合素子17は第1アンテナANT1の一部であり、第1アンテナANT1のインピーダンスの測定はインピーダンス整合素子17も含めた状態を対象として測定する。
【0058】
以上のように変形例2に係るアンテナ装置100Bは、第1コイルL1と給電回路30との間に接続されるインピーダンス整合素子17(第1インピーダンス整合素子)をさらに備える。これにより、変形例2に係るアンテナ装置100Bは、第2アンテナANT2の基本波の共振周波数において第2アンテナANT2に流れる電流量をより小さくすることができる。
【0059】
[変形例3]
図17は、変形例3におけるアンテナ装置100Cの回路図である。なお、図17に示すアンテナ装置100Cにおいて、図1に示すアンテナ装置100と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0060】
アンテナ装置100Cは、第1アンテナANT1と第2アンテナANT2とを備える。第1アンテナANT1は、給電回路30に接続される第1放射素子11と、第1放射素子11と給電回路との間に接続される第1コイルL1と、を含む。第2アンテナANT2は、第1コイルL1に対して磁気結合する第2コイルL2と、第2コイルL2に接続される第2放射素子12と、を含む。さらに、アンテナ装置100Cは、第1コイルL1に対してコンデンサ18を並列に接続している。
【0061】
コンデンサ18を第1コイルL1に対して並列に接続することで、第2アンテナANT2を3倍高調波の共振周波数で共振させる場合に、5倍高調波以上の共振周波数の信号をトランス(第1コイルL1)に経由させずにバイパスすることができる。これにより、第2アンテナANT2において、不要な5倍高調波以上の共振周波数で共振しないようにすることができる。
【0062】
以上のように変形例3に係るアンテナ装置100Cは、第1コイルL1に並列接続されるコンデンサ18をさらに備える。これにより、変形例3に係るアンテナ装置100Cは、第2アンテナANT2において、不要な5倍高調波以上の共振周波数で共振しないようにすることができる。
【0063】
[変形例4]
図18は、変形例4におけるアンテナ装置100Dの回路図である。なお、図18に示すアンテナ装置100Dにおいて、図1に示すアンテナ装置100と同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0064】
アンテナ装置100Dでは、第1放射素子11と第2放射素子12とが同じ基板に形成されておらず、第2放射素子12を設けたメイン基板60とは別のサブ基板70に第1放射素子11を形成してある。メイン基板60には、第1放射素子11と接続される給電回路30と、第1放射素子11と給電回路との間に接続される第1コイルL1と、第1コイルL1に対して磁気結合する第2コイルL2と、第2コイルL2に接続される第2放射素子12とが形成されている。なお、第1コイルL1と第2コイルL2とは、アンテナ結合素子20を構成している。
【0065】
サブ基板70に形成されている第1放射素子11と、メイン基板60に形成されている第1コイルL1とは、同軸ケーブル80で接続されている。第1放射素子11をサブ基板70に形成し、同軸ケーブル80を介してメイン基板60と接続することで、第1放射素子11の配置の自由度が増す。一方、メイン基板60には、無給電素子である第2放射素子12が形成されているので、第2放射素子12は、第2コイルL2から長い伝送線路を経ることなくから電波を放射することができる。そのため、第2放射素子12において伝送ロスを低減できる。
【0066】
メイン基板60とサブ基板70とを接続する伝送線路は、同軸ケーブル80に限定されず、プリント基板(PCB:Printed Circuit Board)、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、メトロサーク(登録商標)などで構成してもよい。メトロサーク(登録商標)とは、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)のシートを複数積層した樹脂多層基板である。
【0067】
以上のように変形例4に係るアンテナ装置100Dは、第1放射素子11と第1コイルL1とを同軸ケーブル80で接続し、第1放射素子11をサブ基板70に形成することができる。なお、メイン基板60およびサブ基板70は、一例であり第1放射素子11を形成する基板と第2放射素子12を形成する基板とが異なる基板であればよい。
【0068】
[変形例5]
図19は、変形例5におけるアンテナ装置100Eの回路図である。なお、図19に示すアンテナ装置100Eにおいて、図1に示すアンテナ装置100および図18に示すアンテナ装置100Dと同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0069】
アンテナ装置100Eでは、第1コイルL1と同軸ケーブル80の接続点との間にインピーダンス整合素子19を接続する。インピーダンス整合素子19(第3インピーダンス整合素子)を第1コイルL1と同軸ケーブル80の接続点との間に設けることで、メイン基板60の回路と同軸ケーブル80との間でインピーダンスを整合させることができ、長い伝送線路である同軸ケーブル80における伝送ロスを軽減することができる。
【0070】
[その他の変形例]
(1) 前述の実施の形態に係るアンテナ装置100では、第1アンテナANT1を基本波の共振周波数で共振させ、第2アンテナANT2を3倍高調波の共振周波数で共振させると説明した。しかし、これに限定されず、アンテナ装置100は、第1アンテナANT1を3倍高調波の共振周波数で共振させ、第2アンテナANT2を3倍高調波の共振周波数で共振させてもよい。なお、第1アンテナANT1を3倍高調波の共振周波数で共振させる場合、第1アンテナANT1を基本波の共振周波数でも共振させてもよい。これにより、アンテナ装置100は、第1アンテナANT1の基本波の共振周波数を含む周波数帯も使用することが可能となる。
【0071】
(2) 前述の実施の形態に係るアンテナ装置100では、第2アンテナANT2を3倍高調波の共振周波数で共振させると説明した。しかし、これに限定されず、アンテナ装置100は、第2アンテナANT2を3倍高調波以外の共振周波数で共振させてもよい。放射素子の長さは、共振周波数が低いなるほど長くなる。そのため、3倍より大きい高調波の共振周波数で第2アンテナANT2を共振させれば、基本波の共振周波数がより低くなるので、第2放射素子12の長さをより長くすることが可能となる。
【0072】
(3) 前述の実施の形態に係るアンテナ装置100では、n78を含む帯域で励起する第1アンテナANT1に対して、より高い周波数のn79含む帯域で第2アンテナANT2を励起するように構成している。しかし、これに限定されず、アンテナ装置100は、n78を含む帯域で励起する第1アンテナANT1に対して、より低い周波数の帯域で第2アンテナANT2を励起するように構成してもよい。また、アンテナ結合素子20は、加極性であっても減極性であってもよい。
【0073】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
11 第1アンテナ、12 第2アンテナ、13,18 コンデンサ、14 コイル、16,17,19 インピーダンス整合素子、20 アンテナ結合素子、30 給電回路、60 メイン基板、70 サブ基板、80 同軸ケーブル、100,100A,100B,100C アンテナ装置、200 携帯端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図19