(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両情報生成システム及び電子制御装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241008BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G06Q10/20
B60S5/00
(21)【出願番号】P 2023567535
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2022031018
(87)【国際公開番号】W WO2023112388
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2021203689
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本城 祐太朗
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127209(JP,A)
【文献】特開2006-275929(JP,A)
【文献】特開2005-306255(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213024(WO,A1)
【文献】特開2019-040277(JP,A)
【文献】特開2005-227141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B60S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電子制御装置と、前記電子制御装置と通信ネットワークを介して通信可能なサーバとを含む車両情報生成システムであって、
前記電子制御装置は、
前記車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における前記車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、
前記負荷値の積分値を演算する積分処理部と、
前記積分値を前記サーバに送信するための処理を行う送信処理部と、
を備え、
前記サーバは、
前記積分値に前記車両の部位毎及び前記負荷値毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算するゲイン処理部と、
複数種の前記負荷値のそれぞれに対応する複数の前記ゲイン積分値を加算した合計値に基づいて前記車両のダメージに関する車両情報を生成する生成部と、
を備える、
車両情報生成システム。
【請求項2】
前記車両情報は、車体部分のダメージに関する情報であってボディ用ゲインを用いて演算された複数の前記ゲイン積分値の合計値に基づくボディダメージ情報と、サスペンションのダメージに関する情報であって前記ボディ用ゲインとは異なるサスペンション用ゲインを用いて演算された複数の前記ゲイン積分値の合計値に基づくサスペンションダメージ情報とを含む、
請求項1に記載の車両情報生成システム。
【請求項3】
前記負荷値は、所定のばね上共振周波数域に対応するばね上加速度を含み、
前記演算部は、前記ばね上共振周波数域外の加速度データを除去するフィルタ処理を行う、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項4】
前記負荷値は、所定のばね下共振周波数域に対応するばね下加速度を含み、
前記演算部は、前記ばね下共振周波数域外の加速度データを除去するフィルタ処理を行う、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項5】
前記負荷値は、車体のねじれに関するワープ量を含み、
前記演算部は、複数の車輪の車高値差又は複数の車輪の回転速度差に基づいて前記ワープ量を演算する、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項6】
前記負荷値は、前記車両の前後方向にかかる前後加速度を含む、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項7】
前記負荷値は、前記車両の左右方向にかかる左右加速度を含む、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項8】
前記負荷値は、いずれかの前記負荷値が閾値を超えた衝撃回数を含み、
前記生成部は、前記衝撃回数に基づいて前記車両情報を生成する、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項9】
前記積分処理部は、前記車両の走行開始時から走行終了時までの時間に対応する前記積分値を演算し、
前記送信処理部は、前記走行終了時に前記積分値を前記サーバに送信するための処理を行う、
請求項
1に記載の車両情報生成システム。
【請求項10】
前記サーバは、前記ゲインを変更可能なゲイン設定部、
を更に備える請求項1~9のいずれか1項に記載の車両情報生成システム。
【請求項11】
車両に搭載された電子制御装置と、前記電子制御装置と通信ネットワークを介して通信可能なサーバとを含む車両情報生成システムであって、
前記電子制御装置は、
前記車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における前記車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、
前記負荷値の積分値を演算する積分処理部と、
前記積分値に前記車両の部位毎及び前記負荷値毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算するゲイン処理部と、
前記ゲイン積分値を前記サーバに送信するための処理を行う送信処理部と、
を備え、
前記サーバは、
複数種の前記負荷値のそれぞれに対応する複数の前記ゲイン積分値を加算した合計値に基づいて前記車両のダメージに関する車両情報を生成する生成部と、
を備える、
車両情報生成システム。
【請求項12】
車両に搭載される電子制御装置であって、
前記車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における前記車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、
前記負荷値の積分値を演算する積分処理部と、
前記積分値を前記車両の外部に存在するサーバに通信ネットワークを介して送信するための処理を行う送信処理部と、
を備える電子制御装置。
【請求項13】
車両に搭載される電子制御装置であって、
前記車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における前記車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、
前記負荷値の積分値を演算する積分処理部と、
前記積分値に前記車両の部位毎及び前記負荷値毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算するゲイン処理部と、
前記ゲイン積分値を前記車両の外部に存在するサーバに通信ネットワークを介して送信するための処理を行う送信処理部と、
を備える電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両情報生成システム及び電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたセンサにより取得されたデータに基づいて車両の構成部品のダメージを推定するシステムが利用されている。このようなシステムとして、センサにより取得されたデータを車両からサーバに送信し、当該データをサーバ内で分析することにより車両のダメージに関する情報を生成するシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-127209号公報
【文献】特開2005-227141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムにおいては、車両のダメージを正確に推定するためには膨大なデータを車両からサーバに送信する必要があり、通信負荷が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、通信負荷を増大させることなく、車両のダメージに関する信頼性の高い情報を生成可能な車両情報生成システム及び電子制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態としての車両情報生成システムは、車両に搭載された電子制御装置と、電子制御装置と通信ネットワークを介して通信可能なサーバとを含む車両情報生成システムであって、電子制御装置は、車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、負荷値の積分値を演算する積分処理部と、積分値をサーバに送信するための処理を行う送信処理部と、を備え、サーバは、積分値に車両の部位毎及び負荷値毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算するゲイン処理部と、複数種の負荷値のそれぞれに対応する複数のゲイン積分値を加算した合計値に基づいて車両のダメージに関する車両情報を生成する生成部と、を備える。
【0007】
これにより、通信負荷を増大させることなく、車両の部位毎に信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0008】
また、車両情報は、車体部分のダメージに関する情報であってボディ用ゲインを用いて演算された複数のゲイン積分値の合計値に基づくボディダメージ情報と、サスペンションのダメージに関する情報であってボディ用ゲインとは異なるサスペンション用ゲインを用いて演算された複数のゲイン積分値の合計値に基づくサスペンションダメージ情報とを含んでもよい。
【0009】
これにより、通信負荷を増大させることなく、ボディとサスペンションのそれぞれについて信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0010】
また、負荷値は、所定のばね上共振周波数域に対応するばね上加速度を含み、演算部は、ばね上共振周波数域外の加速度データを除去するフィルタ処理を行ってもよい。
【0011】
これにより、通信負荷を増大させることなく、ばね上加速度のゲイン積分値に基づく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0012】
また、負荷値は、所定のばね下共振周波数域に対応するばね下加速度を含み、演算部は、ばね下共振周波数域外の加速度データを除去するフィルタ処理を行ってもよい。
【0013】
これにより、通信負荷を増大させることなく、ばね下加速度のゲイン積分値に基づく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0014】
また、負荷値は、車体のねじれに関するワープ量を含み、演算部は、複数の車輪の車高値差又は複数の車輪の回転速度差に基づいてワープ量を演算してもよい。
【0015】
これにより、通信負荷を増大させることなく、ワープ量のゲイン積分値に基づく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0016】
また、負荷値は、車両の前後方向にかかる前後加速度を含んでもよい。
【0017】
これにより、通信負荷を増大させることなく、前後加速度のゲイン積分値に基づく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0018】
また、負荷値は、車両の左右方向にかかる左右加速度を含んでもよい。
【0019】
これにより、通信負荷を増大させることなく、左右加速度のゲイン積分値に基づく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0020】
また、負荷値は、いずれかの負荷値が閾値を超えた衝撃回数を含み、生成部は、衝撃回数に基づいて車両情報を生成してもよい。
【0021】
これにより、通信負荷を増大させることなく、上衝撃回数に基づく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0022】
また、積分処理部は、車両の走行開始時から走行終了時までの時間に対応する積分値を演算し、送信処理部は、走行終了時に積分値をサーバに送信するための処理を行ってもよい。
【0023】
これにより、通信負荷を大幅に低減できる。
【0024】
また、サーバは、ゲインを変更可能なゲイン設定部を更に備えてもよい。
【0025】
これにより、車両の実劣化度合いと劣化推定演算結果に乖離が生じた場合でも市場状況に鑑み、ゲインの最適化を簡便に行える。
【0026】
また、本発明の他の実施形態としての車両情報生成システムは、車両に搭載された電子制御装置と、電子制御装置と通信ネットワークを介して通信可能なサーバとを含む車両情報生成システムであって、電子制御装置は、車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、負荷値の積分値を演算する積分処理部と、積分値に車両の部位毎及び負荷値毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算するゲイン処理部と、ゲイン積分値をサーバに送信するための処理を行う送信処理部と、を備え、サーバは、複数種の負荷値のそれぞれに対応する複数のゲイン積分値を加算した合計値に基づいて車両のダメージに関する車両情報を生成する生成部と、を備える。
【0027】
このように、車両側にゲイン処理部が備えられ、ゲイン積分値が車両からサーバに送信される構成であっても、通信負荷を増大させることなく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0028】
また、本発明の他の実施形態としての電子制御装置は、車両に搭載される電子制御装置であって、車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、負荷値の積分値を演算する積分処理部と、積分値を車両の外部に存在するサーバに通信ネットワークを介して送信するための処理を行う送信処理部と、を備える。
【0029】
これにより、通信負荷を増大させることなく信頼性の高い車両情報を生成可能な車両情報生成システムを実現できる。
【0030】
また、本発明の他の実施形態としての電子制御装置は、車両に搭載される電子制御装置であって、車両に搭載されたセンサの検出結果に基づいて走行中における車両への負荷に関する複数種の負荷値を演算する演算部と、負荷値の積分値を演算する積分処理部と、積分値に車両の部位毎及び負荷値毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算するゲイン処理部と、ゲイン積分値を車両の外部に存在するサーバに通信ネットワークを介して送信するための処理を行う送信処理部と、を備える。
【0031】
これにより、通信負荷を増大させることなく信頼性の高い車両情報を生成可能な車両情報生成システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車両情報生成システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の車載センサ、サスペンション機構、及びSC-ECUの設置状態の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の車両情報生成システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の車両情報生成システムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態のばね上加速度積分値及びばね下加速度積分値を演算する際のSC-ECUにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のワープ量積分値を演算する際のSC-ECUにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、及びワープ量積分値に基づいてボディダメージ情報を生成する際のサーバにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態のばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、及びワープ量積分値に基づいてサスペンションダメージ情報を生成する際のサーバにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の前後加速度積分値及び左右加速度積分値を演算する際のSC-ECUにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の前後加速度積分値及び左右加速度積分値に基づいてボディダメージ情報を生成する際のサーバにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の前後加速度積分値及び左右加速度積分値に基づいてサスペンションダメージ情報を生成する際のサーバにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の衝撃回数に基づいて車両情報を生成する際のSC-ECU及びサーバにおける処理の一例を概念的に示す図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態の車両情報生成システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両情報生成システム1の構成の一例を示すブロック図である。車両情報生成システム1は、車両2とサーバ3とを含み、車両2のダメージに関する車両情報を生成するシステムである。サーバ3は、車両2から通信ネットワーク5を介して受信したデータに基づいて車両情報を生成するための処理を行う。
【0035】
車両2は、MC(Main Control)-ECU(Electronic Control Unit)10、SC(Suspension Control)-ECU11(電子制御装置の一例)、通信I/F(Interface)12、ユーザI/F13、車載センサ14、駆動機構21、制動機構22、操舵機構23、サスペンション機構24等を含む。これらの構成要素10~14,21~24は、CAN(Controller Area Network)20を介して互いに通信可能に接続されている。
【0036】
MC-ECU10は、CAN20を介して取得される各種データに基づいて車両2の全体的な制御を行うユニットである。MC-ECU10は、プログラムに従って演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)を含むマイクロプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を利用して構成され得る。
【0037】
SC-ECU11は、CAN20を介して取得される各種データに基づいてサスペンション機構24を制御するための処理を行うユニットである。また、本実施形態のSC-ECU11は、サスペンション機構24を制御するための処理に加え、車両情報の生成に関連する処理も実行する。SC-ECU11は、プログラムに従って演算処理を実行するCPUを含むマイクロプロセッサ、FPGA、ASIC等を利用して構成され得る。
【0038】
通信I/F12は、通信ネットワーク5を介してサーバ3等の外部装置と所定の通信プロトコルに準じた通信を確立するユニットである。ユーザI/F13は、車両2とユーザ(車両2の乗員等)との間で情報の送受を行うユニットであり、例えば車室内に設置されたディスプレイ、スピーカ、マイク、操作ユニット、タッチパネル等であり得る。車載センサ14は、車両2に搭載されたセンサであり、加速度(重力)センサ、車高センサ、車輪速センサ、測距センサ等を含む。
【0039】
駆動機構21は、車両2の推進力を発生させる機構であり、例えばエンジン、モータ、スロットル機構等を利用して構成される。制動機構22は、車両2の制動力を発生させる機構であり、例えばブレーキディスク、ブレーキパッド、油圧機構、回生ブレーキ機構等を利用して構成される。操舵機構23は、車両2の進行方向を変化させる機構であり、例えばステアリングホイール、リンク機構、パワーステアリング機構等を利用して構成される。
【0040】
サスペンション機構24は、車両2の車体部分と車輪軸とを連結し、路面からの衝撃をやわらげる緩衝作用を奏する機構であり、ショックアブソーバ(ダンパ)、スプリング、アクチュエータ等を利用して構成される。本実施形態のサスペンション機構24は、SC-ECU11からの制御信号に応じて減衰力、車高等を調整可能な電子制御式の機構である。
【0041】
なお、車両2の構成は上記に限定されるものではない。例えば、CAN20にはMC-ECU10及びSC-ECU11以外のECUが接続されてもよい。
【0042】
サーバ3は、CPU31、RAM(Random Access Memory)32、ROM(Read Only Memory)33、ストレージ34、通信I/F35、ユーザI/F36等を備える。これらの構成要素31~36は、バス37を介して互いに通信可能に接続されている。
【0043】
CPU31は、ROM33やストレージ34に記憶されたプログラムに従いRAM32をワーキングエリアとして所定の演算処理を実行する。ストレージ34は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の大容量不揮発性メモリであり、各種データを記憶する。通信I/F35は、通信ネットワーク5を介して車両2に搭載されたMC-ECU10、SC-ECU11等の外部装置と所定の通信プロトコルに準じた通信を確立するユニットである。ユーザI/F36は、サーバ3とユーザ(車両情報生成システム1の管理者等)との間で情報の送受を行うユニットであり、ディスプレイ、キーボード、タッチパネル、スピーカ、マイク等であり得る。なお、サーバ3の構成は上記に限定されるものではない。
【0044】
図2は、第1実施形態の車載センサ14(14A~14D)、サスペンション機構24、及びSC-ECU11の設置状態の一例を示す図である。本実施形態の車載センサ14には、加速度センサ14A,14B、車高センサ14C、及び車輪速センサ14Dが含まれる。なお、これらの加速度センサ14A,14B、車高センサ14C、及び車輪速センサ14Dを含むセンサ群を総称して車載センサ14と記載する場合がある。
【0045】
加速度センサ14Aは車体51の前方側に配置され、加速度センサ14Bは車体51の後方側に配置されている。加速度センサ14Bは、SC-ECU11に内蔵されていてもよい。加速度センサ14A,14Bの検出信号に基づいて、車両2(車体51)にかかるあらゆる方向の加速度を測定できる。
【0046】
車高センサ14Cは、各車輪のストローク変位を検出するセンサである。各車高センサ14Cからの検出結果に基づいて各車輪の車高値差(例えば対角線上に位置する一対の車輪の車高値差)を測定でき、当該車高値差に基づいて車体51のねじれに関するワープ量を測定できる。
【0047】
車輪速センサ14Dは、各車輪の回転速度を検出するセンサである。各車輪速センサ14Dからの検出結果に基づいて各車輪の回転速度差(例えば対角線上に位置する一対の車輪の回転速度差)を測定でき、当該回転速度差に基づいてワープ量を測定できる。
【0048】
なお、車載センサ14の構成は上記に限定されるものではない。例えば、加速度センサ14A,14Bの個数や設置位置は、車両2の形状等に応じて適宜決定されるべきものである。
【0049】
図3は、第1実施形態の車両情報生成システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。車両2に搭載されたSC-ECU11は、演算部101、積分処理部102、及び送信処理部103を備える。これらの機能的構成要素101~103は、例えば、SC-ECU11に内蔵されるCPU、メモリ、論理回路等のハードウェア要素と、CPUを制御するプログラム(ソフトウェア要素)との協働により構成され得る。
【0050】
演算部101は、車載センサ14の検出結果(センサデータ)等に基づいて走行中における車両2への負荷に関する負荷値を演算する。演算部101は、センサデータだけでなく、CAN20を介して取得される他のECUからの情報等を利用して負荷値を演算してもよい。また、演算部101は、複数種の負荷値を演算してもよい。本実施形態の演算部101は、負荷値として、ばね上加速度、ばね下加速度、ワープ量、前後加速度、左右加速度、及び衝撃回数を演算する。
【0051】
ばね上加速度とは、車両2の上下方向にかかる加速度のうち所定のばね上共振周波数域(例えば0.9Hz~1.5Hz等)に対応する加速度である。ばね下加速度とは、車両2の上下方向にかかる加速度のうち所定のばね下共振周波数域(例えば10Hz~15Hz等)に対応する加速度である。ワープ量とは、車体51のねじれの度合いを示す値である。前後加速度とは、車両2の前後方向にかかる加速度である。左右加速度とは、車両2の左右方向にかかる加速度である。衝撃回数とは、車両2にかかる加速度(例えばばね上加速度、前後加速度、左右加速度等)が予め定められた閾値を超えた回数を示す値である。
【0052】
積分処理部102は、演算部101により演算された負荷値の積分値を演算する。本実施形態の積分値には、ばね上加速度、ばね下加速度、ワープ量、前後加速度、及び左右加速度のそれぞれを積分して得られる、ばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、ワープ量積分値、前後加速度積分値、及び左右加速度積分値が含まれる。積分処理部102は、例えば、車両2の走行開始時から走行終了時までの時間に対応する積分値を演算する。走行開始時及び走行終了時の判定方法は特に限定されるべきものではないが、例えば、エンジン、モータ等の駆動機構21の駆動状態、シフトレバーの位置等に基づいて走行開始時及び走行終了時を判定できる。
【0053】
送信処理部103は、積分処理部102により演算された積分値をサーバ3に送信するための処理を行う。また、送信処理部103は、演算部101により演算された衝撃回数をサーバ3に送信するための処理を行う。本実施形態の送信処理部103は、積分値及び衝撃回数を含むデータをCAN20に出力し、通信I/F12に対して当該データをサーバ3に送信させるための指示を行う。送信処理部103は、例えば、車両2の走行終了時に当該データを送信するための処理を行う。
【0054】
サーバ3は、受信部201、ゲイン処理部202、ゲイン設定部203、生成部204、及び出力部205を備える。これらの機能的構成要素201~205は、例えば、サーバ3を構成するCPU31等のハードウェア要素と、CPU31等を制御するプログラム(ソフトウェア要素)との協働により構成され得る。
【0055】
受信部201は、車両2(SC-ECU11)から送信された積分値及び衝撃回数を含むデータを受信する。
【0056】
ゲイン処理部202は、受信部201により受信された積分値(本実施形態においてはばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、ワープ量積分値、前後加速度積分値、及び左右加速度積分値)に、車両2の部位毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値を演算する。車両2の部位とは、例えば、車体部分、サスペンション機構24等である。車体部分とは、例えば、シャーシ、フレーム等の車体51の骨格を構成する部分である。ゲイン処理部202は、例えば、車体部分に対応する積分値を演算する場合には第1ゲイン(ボディ用ゲインの一例)を用いてゲイン積分値を演算し、サスペンション機構24に対応する積分値を演算する場合には第1ゲインとは異なる第2ゲイン(サスペンション用ゲインの一例)を用いてゲイン積分値を演算する。これにより、通信負荷を増大させることなく、ボディとサスペンションのそれぞれについて信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0057】
ゲイン設定部203は、ユーザ(車両情報生成システム1の管理者等)の操作に応じてゲインを任意の値に変更する。
【0058】
生成部204は、ゲイン処理部202により演算されたゲイン積分値に基づいて車両2のダメージに関する車両情報を生成する。このとき、生成部204は、複数種の負荷値のそれぞれに対応する複数のゲイン積分値の合計値に基づいて車両情報を生成してもよい。また、生成部204は、衝撃回数に基づいて車両情報を生成してもよい。
【0059】
出力部205は、生成部204により生成された車両情報を所定の出力先へ出力する。出力先は、車両情報を利用可能なシステム、装置等であれば特に限定されるべきものではないが、例えば、中古車査定システム、メンテナンス管理システム等であり得る。
【0060】
図4は、第1実施形態の車両情報生成システム1における処理の一例を示すフローチャートである。SC-ECU11は車両2の走行が開始したか否かを判定し(S101)、走行が開始していない場合(S101:No)、本ルーチンを終了する。走行が開始した場合(S101:Yes)、SC-ECU11の演算部101はCAN20からセンサデータ等を取得し(S102)、センサデータ等に基づいて負荷値を演算して記憶する(S103)。その後、SC-ECU11は車両2の走行が終了したか否かを判定し(S104)、走行が終了していない場合(S104:No)、ステップS102が再度実行される。これにより、走行中に演算された負荷値が車両2に搭載された適宜な記憶装置に蓄積されていく。走行が終了した場合(S104:Yes)、SC-ECU11の積分処理部102は、走行中に蓄積された負荷値の積分値(例えば、ばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、ワープ量積分値、前後加速度積分値、及び左右加速度積分値のうちの少なくとも1つ)を演算する(S105)。そして、SC-ECU11の送信処理部103は、演算された積分値及び衝撃回数をサーバ3へ送信する(S106)。
【0061】
サーバ3の受信部201がSC-ECU11から送信された積分値及び衝撃回数を受信すると(S111)、ゲイン処理部202は当該積分値にゲインを積算したゲイン積分値を演算する(S112)。そして、生成部204は当該ゲイン積分値及び衝撃回数に基づいて車両情報を生成する(S113)。このように生成された車両情報は、車両2の識別情報等に紐付けられて記憶され、所定の出力先に出力される。
【0062】
以下に、ばね上加速度、ばね下加速度、及びワープ量に基づいて車両情報を生成する場合について、
図5~
図8を参照して説明する。
【0063】
図5は、第1実施形態のばね上加速度積分値及びばね下加速度積分値を演算する際のSC-ECU11における処理の一例を概念的に示す図である。演算部101は、加速度センサ14A,14Bから取得した加速度センサデータからばね上共振周波数域に対応する加速度データを抽出するばね上共振周波数フィルタ処理(ローパスフィルタ処理)を行うことにより、ばね上共振周波数域に対応する加速度の経時変化を示すばね上加速度を演算する。また、演算部101は、加速度センサデータからばね下共振周波数域に対応する加速度データを抽出するばね下共振周波数フィルタ処理(ハイパスフィルタ処理)を行うことにより、ばね下共振周波数域に対応する加速度の経時変化を示すばね下加速度を演算する。その後、積分処理部102は、ばね上加速度に対して積分処理を行うことによりばね上加速度積分値を演算し、ばね下加速度に対して積分処理を行うことによりばね下加速度積分値を演算する。このように演算されたばね上加速度積分値及びばね下加速度積分値は、送信処理部103により所定のタイミングで(例えば走行終了時に)サーバ3に送信される。
【0064】
図6は、第1実施形態のワープ量積分値を演算する際のSC-ECU11における処理の一例を概念的に示す図である。演算部101は、車高センサ14Cから取得した各車輪の車高センサデータ(対角線上に位置する一対の車輪の車高値差等)から各車輪の変位量を推定する車輪変位量推定処理により、変位量の経時変化を示すワープ量を演算する。その後、積分処理部102は、ワープ量に対して積分処理を行うことによりワープ量積分値を演算する。このように演算されたワープ量積分値は、送信処理部103により所定のタイミングで(例えば走行終了時に)サーバ3に送信される。また、ワープ量は、車輪速センサ14Dから取得した各車輪の車輪速センサデータ(対角線上に位置する一対の車輪の回転速度差等)から各車輪の変位量を推定する車輪変位量推定処理により演算されてもよい。
【0065】
図7は、第1実施形態のばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、及びワープ量積分値に基づいてボディダメージ情報を生成する際のサーバ3における処理の一例を概念的に示す図である。ボディダメージ情報は、車両情報の一例であり、車両2の車体部分のダメージに関する情報である。
【0066】
ゲイン処理部202は、SC-ECU11から受信した積分値(ばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、及びワープ量積分値)に第1ゲイン(ゲインGb1、ゲインGb2、及びゲインGb3)を積算したゲイン積分値(ばね上加速度ゲイン積分値、ばね下加速度ゲイン積分値、及びワープ量ゲイン積分値)を演算する。第1ゲインは、ボディダメージ情報の対象となる車体部分に対応するゲインであり、負荷値の種類毎に予め設定された1以上のゲインを含む。本実施形態の第1ゲインは、ばね上加速度に対応するゲインGb1、ばね下加速度に対応するゲインGb2、及びワープ量に対応するゲインGb3を含み、Gb3>Gb1>Gb2の関係が成り立っている。このようなゲインGb1~Gb3の大小関係は、各負荷値の車体部分への影響度に基づいて決定される。ここでは、各負荷値の車体部分に対する影響度は、ワープ量、ばね上加速度、ばね下加速度の順に大きいと考えられるため、上記のような大小関係となるように設定されている。
【0067】
生成部204は、上記のようにゲイン処理部202により演算された複数のゲイン積分値(ばね上加速度ゲイン積分値、ばね下加速度ゲイン積分値、及びワープ量ゲイン積分値)の合計値を、車体部分のダメージの大きさを示すボディダメージ情報とする。この場合、当該合計値が大きいほど車体部分のダメージが大きいと評価できる。
【0068】
図8は、第1実施形態のばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、及びワープ量積分値に基づいてサスペンションダメージ情報を生成する際のサーバ3における処理の一例を概念的に示す図である。サスペンションダメージ情報は、車両情報の一例であり、サスペンション機構24のダメージに関する情報である。
【0069】
ゲイン処理部202は、SC-ECU11から受信した積分値(ばね上加速度積分値、ばね下加速度積分値、及びワープ量積分値)に第2ゲイン(ゲインGs1、ゲインGs2、及びゲインGs3)を積算したゲイン積分値(ばね上加速度ゲイン積分値、ばね下加速度ゲイン積分値、及びワープ量ゲイン積分値)を演算する。第2ゲインは、サスペンションダメージ情報の対象となるサスペンション機構24に対応するゲインであり、負荷値の種類毎に予め設定された1以上のゲインを含む。本実施形態の第2ゲインは、ばね上加速度に対応するゲインGs1、ばね下加速度に対応するゲインGs2、及びワープ量に対応するゲインGs3を含み、Gs2>Gs3>Gs1の関係が成り立っている。このようなゲインGs1~Gs3の大小関係は、各負荷値のサスペンション機構24への影響度に基づいて決定される。ここでは、各負荷値のサスペンション機構24に対する影響度は、ばね下加速度、ワープ量、ばね上加速度の順に大きいと考えられるため、上記のような大小関係となるように設定されている。
【0070】
生成部204は、上記のようにゲイン処理部202により演算された複数のゲイン積分値(ばね上加速度ゲイン積分値、ばね下加速度ゲイン積分値、及びワープ量ゲイン積分値)の合計値を、サスペンション機構24のダメージの大きさを示すサスペンションダメージ情報とする。この場合、当該合計値が大きいほどサスペンション機構24のダメージが大きいと評価できる。
【0071】
以下に、前後加速度及び左右加速度に基づいて車両情報を生成する場合について、
図9~
図11を参照して説明する。
【0072】
図9は、第1実施形態の前後加速度積分値及び左右加速度積分値を演算する際のSC-ECU11における処理の一例を概念的に示す図である。演算部101は、加速度センサ14A,14Bから取得した加速度センサデータから、車両2の前後方向にかかる加速度の経時変化を示す前後加速度と、車両2の左右方向にかかる加速度の経時変化を示す左右加速度とを演算する。その後、積分処理部102は、前後加速度に対して積分処理を行うことにより前後加速度積分値を演算し、左右加速度に対して積分処理を行うことにより左右加速度積分値を演算する。このように演算された上下加速度積分値及び左右加速度積分値は、送信処理部103により所定のタイミングで(例えば走行終了時に)サーバ3に送信される。
【0073】
図10は、第1実施形態の前後加速度積分値及び左右加速度積分値に基づいてボディダメージ情報を生成する際のサーバ3における処理の一例を概念的に示す図である。
【0074】
ゲイン処理部202は、SC-ECU11から受信した積分値(前後加速度積分値及び左右加速度積分値)に第3ゲイン(ボディ用ゲインの一例)を積算したゲイン積分値(前後加速度ゲイン積分値及び左右加速度ゲイン積分値)を演算する。第3ゲインは、ボディダメージ情報の対象となる車体部分に対応するゲインであり、前後加速度に対応するゲインGb4及び左右加速度に対応するゲインGb5を含み、Gb4=Gb5の関係が成り立っている。これは、車体部分に対する影響度については、前後加速度と左右加速度との間にほとんど差はないと考えられるためである。
【0075】
生成部204は、上記のようにゲイン処理部202により演算された前後加速度ゲイン積分値及び左右加速度ゲイン積分値の合計値を、車体部分のダメージの大きさを示すボディダメージ情報とする。この場合、当該合計値が大きいほど車体部分のダメージが大きいと評価できる。
【0076】
図11は、第1実施形態の前後加速度積分値及び左右加速度積分値に基づいてサスペンションダメージ情報を生成する際のサーバ3における処理の一例を概念的に示す図である。
【0077】
ゲイン処理部202は、SC-ECU11から受信した積分値(前後加速度積分値及び左右加速度積分値)に第4ゲイン(サスペンション用ゲインの一例)を積算したゲイン積分値(前後加速度ゲイン積分値及び左右加速度ゲイン積分値)を演算する。第4ゲインは、サスペンションダメージ情報の対象となるサスペンション機構24に対応するゲインであり、前後加速度に対応するゲインGs4及び左右加速度に対応するゲインGs5を含み、Gs4=Gs5の関係が成り立っている。これは、サスペンション機構24に対する影響度については、前後加速度と左右加速度との間にほとんど差はないと考えられるためである。
【0078】
生成部204は、上記のようにゲイン処理部202により演算された前後加速度ゲイン積分値及び左右加速度ゲイン積分値の合計値を、車体部分のダメージの大きさを示すサスペンションダメージ情報とする。この場合、当該合計値が大きいほどサスペンション機構24のダメージが大きいと評価できる。
【0079】
以下に、衝撃回数に基づいて車両情報を生成する場合について、
図12を参照して説明する。
【0080】
図12は、第1実施形態の衝撃回数に基づいて車両情報を生成する際のSC-ECU11及びサーバ3における処理の一例を概念的に示す図である。SC-ECU11の演算部101は、ばね上加速度、前後加速度、及び左右加速度のそれぞれについて、車両2の走行中において加速度が予め設定された閾値を超えたか否かを監視する処理(閾値超過監視処理)を実行し、各加速度が閾値を超えた回数を示す衝撃回数を取得する。本実施形態の衝撃回数には、ばね上加速度が閾値を超えた回数を示すばね上衝撃回数、前後加速度が閾値を超えた回数を示す前後衝撃回数、及び左右加速度が閾値を超えた回数を示す左右衝撃回数が含まれる。このように演算された衝撃回数は、送信処理部103により所定のタイミングで(例えば走行終了時に)サーバ3に送信される。
【0081】
サーバ3の生成部204は、上記のようにSC-ECU11から送信された衝撃回数を含む車両情報を生成する。衝撃回数が多いほど車両2のダメージが大きいと評価できる。
【0082】
以上のように、本実施形態によれば、車両の走行中に得られた負荷値を積分した積分値が車両からサーバに送信され、車両のダメージに関する車両情報は当該積分値に基づいて生成される。これにより、負荷値をそのまま車両からサーバへ送信する場合よりもデータ通信量や通信頻度を低く抑えることができる。また、車両情報は、積分値に車両の部位毎に設定されたゲインを積算したゲイン積分値に基づいて生成される。これにより、車両の部位毎のダメージを正確に推定できる。すなわち、本実施形態によれば、通信負荷を増大させることなく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0083】
なお、上記実施形態においては、車両情報を生成するための車両2側の機能的構成要素(演算部101、積分処理部102、及び送信処理部103)がSC-ECU11に備えられる構成を例示したが、これらの機能的構成要素はMC-ECU10等の他のECUに備えられてもよい。
【0084】
以下に他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0085】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態の車両情報生成システム301の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態は、ゲイン処理部202が車両2側に備えられ、ゲイン積分値が車両2からサーバ3に送信される点で第1実施形態と相違する。
【0086】
本実施形態のSC-ECU11は、演算部101、積分処理部102、ゲイン処理部202、及び送信処理部103を備える。本実施形態のゲイン処理部202は、積分処理部102により演算された積分値に上述したゲインを積算してゲイン積分値を演算する。本実施形態の送信処理部103は、ゲイン処理部202により演算されたゲイン積分値及び演算部101により演算された衝撃回数をサーバ3に送信するための処理を行う。
【0087】
本実施形態のサーバ3は、受信部201、生成部204、及び出力部205を備える。本実施形態の受信部201は、SC-ECU11から送信されたゲイン積分値及び衝撃回数を受信する。本実施形態の生成部204は、受信部201により受信されたゲイン積分値及び/又は衝撃回数に基づいて車両情報を生成する。
【0088】
本実施形態のように、積分値に対するゲイン処理は車両2側で行われてもよい。このような構成であっても、通信負荷を増大させることなく信頼性の高い車両情報を生成できる。
【0089】
上述したような車両情報生成システムの機能を実現するための処理をコンピュータ(SC-ECU11、サーバ3等)に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されてもよい。また、プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するようにしてもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1,301…車両情報生成システム、2…車両、3…サーバ、5…通信ネットワーク、10…MC-ECU、11…SC-ECU、12…通信I/F、13…ユーザI/F、14…車載センサ、14A,14B…加速度センサ、14C…車高センサ、14D…車輪速センサ、20…CAN、21…駆動機構、22…制動機構、23…操舵機構、24…サスペンション機構、31…CPU、32…RAM、33…ROM、34…ストレージ、35…通信I/F、36…ユーザI/F、51…車体、101…演算部、102…積分処理部、103…送信処理部、201…受信部、202…ゲイン処理部、203…ゲイン設定部、204…生成部、205…出力部