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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】エレベータ用防災キャビネット
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B66B11/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024043321
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】岩津 徹
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112793(JP,A)
【文献】特開2009-12954(JP,A)
【文献】特開平09-255243(JP,A)
【文献】特開2007-186280(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0033487(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご内に設置され、開閉扉を有し非常用品が収納されたエレベータ用防災キャビネットであって、前記開閉扉の施錠と解錠とのどちらかを行う電気錠と、前記かご内の音を集音するマイクと、所定操作時に前記かご内にて発せられる識別音を記憶した記憶部と、前記マイクで集音された音が、前記記憶部に記憶された前記識別音と合致すると判定した場合に、前記電気錠を施錠状態から解錠状態に移行する制御部と、を備えたことを特徴とするエレベータ用防災キャビネット。
【請求項2】
前記記憶部に記憶させる前記識別音は、前記マイクを使用して変更可能な機能を備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用防災キャビネット。
【請求項3】
前記かご内に報知する発音部を備える請求項1または2に記載のエレベータ用防災キャビネット。
【請求項4】
前記かご内に報知する発音部と、前記電気錠と前記マイクと前記記憶部と前記制御部と前記発音部とに電力を供給する電源部と、を備える請求項1または2に記載のエレベータ用防災キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの乗客が地震等によりかごの内部に閉じ込められた際に利用するエレベータ用防災キャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータの監視装置の異常検出部によりエレベータの異常検出がされると、従来のエレベータ用防災キャビネットは、異常検出の信号に基づいた解錠信号を受信し、開閉扉を施錠状態から解錠状態にする(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開第2020-152550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータ用防災キャビネットは、施錠された開閉扉を解錠するために、エレベータからの解錠信号の入力が必要となる課題がある。
【0005】
本開示は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、エレベータ用防災キャビネットは、施錠された開閉扉を外部からの解錠信号なしに単独で解錠できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータ用防災キャビネットは、かご内に設置され、開閉扉を有し非常用品が収納されたエレベータ用防災キャビネットであって、開閉扉の施錠と解錠とのどちらかを行う電気錠と、かご内の音を集音するマイクと、所定操作時にかご内にて発せられる識別音を記憶した記憶部と、マイクで集音された音が、記憶部に記憶された識別音と合致すると判定した場合に、電気錠を施錠状態から解錠状態に移行する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エレベータ用防災キャビネットは、施錠された開閉扉を外部からの解錠信号なしに単独で解錠できるようにするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるエレベータの全体構成図である。
図2】実施の形態1における防災キャビネットのかご内設置図である。
図3】実施の形態1における防災キャビネットのブロック図である。
図4】実施の形態1における防災キャビネットのフローチャートである。
図5】実施の形態2における防災キャビネットのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1を用いて実施の形態1におけるエレベータの全体構成図を説明する。図1は、防災キャビネットが設置されるエレベータの全体構成図である。
【0010】
エレベータは、かご1、主ロープ2、釣合おもり3、巻上機5、制御盤6を備える。
かご1の上端には、主ロープ2の一端が接続され、主ロープ2の他端には、釣合おもり3が接続されている。巻上機5は、かご1と釣合おもり3とが互いに相反する方向に昇降するよう主ロープ2の中間部に設置されている。
制御盤6は、巻上機5を駆動し、かご1の昇降制御を行う。
【0011】
図2を用いて実施の形態1に係る防災キャビネットのかご内設置図を説明する。図2は、防災キャビネットのかご内での設置状態を示す図である。
【0012】
防災キャビネット11は、かご1内に設置され、かご1の内部の乗客にとって邪魔にならない位置に設置される。乗客にとって邪魔にならない位置とは、かご1の内部の四隅、左右壁内、奥壁内などである。
防災キャビネット11には、開閉扉12が設けられており、防災キャビネット11の内部には、非常用品(図示せず)が収納されている。
防災キャビネット11は、後述する電気錠により開閉扉12の解錠または施錠が行われる。
【0013】
図3を用いて実施の形態1に係る防災キャビネットのブロック図を説明する。図3は、実施の形態1に係る防災キャビネットのブロック図である。
【0014】
防災キャビネット11は、制御部21、集音部22、設定部23、記憶部24、電気錠25、表示部26、及び発音部27を備える。
防災キャビネット11の制御部21は、集音部22によりかご1の内部で集音された集音信号を取得し、その集音信号を解析してデータ化する。
ここで、集音部22はマイクと定義する。
【0015】
記憶部24は、制御部21の制御プログラムの格納、制御演算のデータ、集音信号の解析データ、及び整合判定用の整合基準データの保存を行う。
ここで、整合判定用の整合基準データは、識別音と定義する。
【0016】
記憶部24は、SRAM(Static Random access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memorey)などを使用し、データを記憶し、その記憶したデータを読み出せる手段であれば何でもよい。
【0017】
制御部21は、設定部23により保守員やエレベータ管理人が入力した設定変更要求に関する設定変更信号を取得する。
設定部23は、スイッチ、釦、タッチパネルなどの入力デバイスを使用し、人が選択操作し、その選択操作された操作指令内容を送れる手段であれば何でもよい。
【0018】
電気錠25は制御部21からの解錠指令に基づいて、開閉扉12を解錠する。
表示部26は、制御部21からの表示指令に基づいて、かご1内の乗客に防災キャビネット11の状態を表示したり、設定部23の入力状態を表示したりする。
発音部27は、制御部21からの発音指令に基づいて、かご1内の乗客に防災キャビネット11の状態を報知したり、設定部23の入力状態を報知したりする。
【0019】
次に、各機能ブロックについて、具体的に説明する。
制御部21による集音信号のデータ化は、制御部21は、集音信号の周波数成分ごとの波高値、信号強度、dB値(ある特定の基準に対しての相対的大きさ)などを解析データ化する。制御部21は集音信号の解析データを記憶部24に記憶させる。
【0020】
記憶部24に記憶される整合判定用の整合基準データとは、かご1の内部から集音された集音信号の解析データと一致するか否かを判定する基準となるデータである。集音信号の解析データと整合判定用の整合基準データとは、開閉扉12の解錠の判定に利用するために、周波数成分ごとの波高値、信号強度、dB値などのデータ構造が同じである。
【0021】
記憶部24に記憶される整合判定用の整合基準データには、以下のようなデータが考えられる。
例えば、整合判定用の整合基準データには、かご1の内部に閉じ込められた乗客がかご1の外部に通報するインターホン呼出音を使用する。整合基準データに利用する音をインターホン呼出音にすることにより、制御部21がインターホン呼出音により開閉扉12を解錠し、乗客は防災キャビネット11に収納された非常用品をかご1の内部に閉じ込められたときに使用できる。
【0022】
整合判定用の整合基準データには、エレベータの監視センターからかご1の内部に設置されたインターホンのインターホン連絡音にすることにより、制御部21がインターホン連絡音により開閉扉12を解錠し、乗客は防災キャビネット11に収納された非常用品を使用できる。
エレベータの監視センターは、災害が発生した地域のエレベータに、インターホン連絡音を出すことにより、制御部21がインターホン連絡音により開閉扉12を解錠し、かご1の内部に閉じ込められた乗客からの救出要請を待つことなく、乗客は防災キャビネット11に収納された非常用品を使用できる。
また、広域災害の場合には、エレベータの監視センターがかご1の内部に閉じ込められた乗客からの救出要請を待つことなく、インターホン連絡音による報知する。
インターホン連絡音による報知には、乗客に聞こえないような高い周波数の音を使用してもよい。インターホン連絡音は、乗客に聞こえないような高い周波数の音を使用することにより、かご1の内部の乗客は、エレベータの監視センターからのインターホン連絡音の音に驚くことがなくなり、不安を低減できる。
【0023】
保守員やエレベータ管理人により、設定部23に入力される設定変更要求とは、制御部21が集音信号を解析してデータ化させて記憶させる要求、開閉扉12に設置された電気錠25の手動操作による解錠の動作チェック要求、電気錠25の解錠を動作させるときに使用する集音信号の解析データの追加や更新などの解析データ追加要求や解析データ更新要求などがある。
【0024】
図4を用いて実施の形態1に係る防災キャビネットのフローチャートを説明する。図4は、実施の形態1に係る防災キャビネットのフローチャートである。
【0025】
ステップS1において、防災キャビネット11の制御部21は、集音部22によりかご1の内部で集音された集音信号を取得する。
【0026】
ステップS2において、制御部21はかご1の内部の音を集音できたか否かを判定する。
制御部21は、かご1の内部から集音した場合は、ステップS3に移行する(ステップS2のYES)。
一方、かご1の内部から集音できなかった場合は、終了する。
【0027】
ステップS3において、制御部21は、集音部22によりかご1内部で集音された集音信号を取得し、その集音信号を解析してデータ化する。
【0028】
ステップS4において、制御部21はかご1の内部の音を集音された解析データが、整合判定用の整合基準データと一致するか否かを判定する。
制御部21は、かご1の内部から集音した解析データが整合基準データと一致する場合は、ステップS5に移行する(ステップS4のYES)。
一方、かご1の内部から集音した解析データが整合基準データと一致しなかった場合は、終了する。
【0029】
ステップS5において、制御部21は電気錠25に解錠指令を送り、開閉扉12を解錠状態にする。
ステップS6において、制御部21は発音部27に発音指令を送り、かご1内の乗客に防災キャビネット11の開閉扉12が解錠されたことを報知する。
【0030】
以上のように、本実施の形態1に係る防災キャビネットは、エレベータ用防災キャビネットは、施錠された開閉扉を外部からの解錠信号なしに単独で解錠できるようにする効果を奏する。
また、防災キャビネットを新規に設置する際だけでなく、後から設置する場合にも、エレベータの異常を検出した際の信号を外部から受信する追加の配線が必要なくなるという効果を奏する。
【0031】
実施の形態2.
図5を用いて実施の形態2に係る防災キャビネットのブロック図を説明する。図5は、実施の形態2に係る防災キャビネットのブロック図である。
なお、図5の説明において、実施の形態1に係る防災キャビネットのブロック図に相当する部分には、図3と同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
防災キャビネット11は、電源部31を備える。
電源部31は、乾電池、2次電池、及びソーラーパネルなど、少なくとも一つを使用し、電力を防災キャビネット11の各ブロックに給電する。
例えば、ソーラーパネルにより発電した電力は、防災キャビネット11を動作させるとともに、余剰電力を2次電池に蓄電する。その2次電池に蓄電された電力は、ソーラーパネルによる発電した電力が小さくなった場合に、防災キャビネット11の各ブロックに電力を給電できる。
電源部31は複数の電力供給の方法を備えることにより、防災キャビネット11の各ブロックに安定した電力が供給できる。また、乾電池、2次電池、及びソーラーパネルの内いずれかが故障した場合にも、電源部31は、複数の電力供給手段による冗長性が確保できる。
【0033】
電源部31は乾電池や2次電池の蓄電状態を出力したり、ソーラーパネルによる電力量の状態を出力したりして、制御部21は電源部31から電力の電力状態を取得して、表示部26に表示させたり、発音部27に報知させたりする。
また、制御部21は電源部31からの電力状態により、乾電池の電力量の残量、2次電池の蓄電能力、ソーラーパネルの発電能力の経年的な低下などを取得し、表示部26に表示させたり、発音部27に報知させたりする。
【0034】
エレベータの監視センターからかご1の内部に設置されたインターホンのインターホン連絡音には、扉12の解錠をさせる音とは別に、防災キャビネット11に指令をする指令音により、制御部21が電源部31の電力状態を取得して発音部27に電力状態を報知させてもよい。
エレベータの監視センターは、発音部27から報知された電力状態を確認し、乾電池の交換や、2次電池、ソーラーパネルの点検を保守員に指示できる。
【0035】
以上のように、本実施の形態2に係る防災キャビネットは、エレベータ用防災キャビネットは、エレベータから送られる解錠信号の入力や電力供給を受けることなく、単独で施錠された開閉扉を解錠できるという効果を奏する。
【0036】
以上のように構成された本開示のエレベータ用防災キャビネットは、かご1内に設置され、開閉扉12を有し非常用品が収納されたエレベータ用防災キャビネットであって、開閉扉12の施錠と解錠とのどちらかを行う電気錠25と、かご内の音を集音するマイクと、所定操作時にかご内にて発せられる識別音を記憶した記憶部24と、マイクで集音された音が、記憶部24に記憶された識別音と合致すると判定した場合に、電気錠25を施錠状態から解錠状態に移行する制御部21と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
これにより、エレベータ用防災キャビネットは、施錠された開閉扉を外部からの解錠信号なしに単独で解錠できるようにする効果を奏する。また、防災キャビネットを新規に設置する際だけでなく、後から設置する場合にも、エレベータの異常を検出した際の信号を外部から受信する追加の配線が必要なくなるという効果を奏する。
【0038】
また、本開示のエレベータ用防災キャビネットは、記憶部24に記憶させる識別音は、マイクを使用して変更可能なモードを備えることを特徴とする。
【0039】
これにより、エレベータ用防災キャビネットは、かご1の仕様に応じた内部の音の反響や音の音質による影響を少なくできる効果を奏する。
【0040】
また、本開示のエレベータ用防災キャビネットは、かご内に報知する発音部27を備えることを特徴とする。
【0041】
これにより、かご内の乗客は、エレベータ用防災キャビネットが利用可能となったことを知り、保守作業員は、扉12の解錠条件または施錠条件の変更の状態を容易に確認できるといった効果を奏する。
【0042】
また、本開示のエレベータ用防災キャビネットは、かご内に報知する発音部27と、電気錠25とマイクと記憶部24と制御部21と発音部27とに電力を供給する電源部31と、を備えることを特徴とする。
【0043】
これにより、エレベータから送られる解錠信号の入力や電力供給を受けることなく、施錠された開閉扉を外部からの解錠信号なしに単独で解錠できるようにする効果を奏する。
【符号の説明】
【0044】
1 かご、 2 主ロープ、 3 釣合おもり、 5 巻上機、 6 制御盤、 11 防災キャビネット、 12 開閉扉、 21 制御部、 22集音部、 23 設定部、 24 記憶部、 25 電気錠、 26 表示部、 27 発音部、 31 電源部
【要約】      (修正有)
【課題】施錠された開閉扉を外部からの解錠信号なしに単独で解錠できるエレベータ用防災キャビネットを提供すること。
【解決手段】本開示に係るエレベータ用防災キャビネットは、かご内に設置され、開閉扉を有し非常用品が収納されたエレベータ用防災キャビネット11であって、開閉扉12の施錠と解錠とのどちらかを行う電気錠25と、かご内の音を集音するマイクと、所定操作時にかご内にて発せられる識別音を記憶した記憶部24と、マイクで集音された音が、記憶部に記憶された識別音と合致すると判定した場合に、電気錠25を施錠状態から解錠状態に移行する制御部21とを備えることを特徴とする。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5