(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造装置、焼結鉱の製造方法及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
C22B 1/20 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
C22B1/20 U
(21)【出願番号】P 2024533996
(86)(22)【出願日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2024006881
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2023088691
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 壮太郎
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-5589(JP,A)
【文献】特開2013-129894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有するドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置であって、
当該点火炉の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成部と、
前記焼締量データに基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整部と、
を有する、焼結鉱の製造装置。
【請求項2】
前記焼締量データ生成部は、前記パレットの幅方向においてそれぞれ異なる複数の箇所の前記焼締量データを生成する、請求項1に記載の焼結鉱の製造装置。
【請求項3】
前記焼締量データ生成部は、前記パレットの幅方向において等間隔に位置する5か所の前記焼締量データを生成する、請求項2に記載の焼結鉱の製造装置。
【請求項4】
前記点火炉の前記ラインバーナは、前記パレットの幅方向においてそれぞれ異なる複数の領域を加熱し、
前記焼締量データ生成部は、前記ラインバーナの加熱領域に応じた箇所の前記焼締量データを生成する、請求項2又は、3に記載の焼結鉱の製造装置。
【請求項5】
前記点火炉の前記ラインバーナは、前記パレットの幅方向の中央領域及び、前記パレットの幅方向において前記中央領域の両側に配される他の領域を加熱し、
前記ガス量調整部は、前記中央領域の前記燃焼ガスの供給量を、前記他の領域よりも少ない量に調整する、請求項2又は、3に記載の焼結鉱の製造装置。
【請求項6】
前記点火炉において前記原料層に着火される際の、前記原料層の表面温度及び、前記焼締量に基づいて決定される前記表面温度の目標値を取得する表面温度取得部を有し、
前記ガス量調整部は、前記原料層の前記表面温度及び、前記表面温度の前記目標値に基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整する、請求項1~3のいずれかに記載の焼結鉱の製造装置。
【請求項7】
循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有するドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置を用いた焼結鉱の製造方法であって、
当該点火炉の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成工程と、
前記焼締量データ生成工程において生成された前記焼締量データに基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整工程と、
を有する、焼結鉱の製造方法。
【請求項8】
循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有するドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置の動作を制御するコンピューターに、
当該点火炉の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成工程と、
前記焼締量データ生成工程において生成された前記焼締量データに基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整工程と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置、焼結鉱の製造方法及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉用原料である焼結鉱は、原料として、主に鉄鉱石、石灰石及び生石灰、SiO2系の成分を含む副原料、返鉱並びに、粉コークス等の固体燃料を含む。焼結鉱は、次のようにして製造される。原料は、水分が添加された後に、造粒されて擬似粒子となる。擬似粒子は、パレットに装入される。パレットに装入された疑似粒子は装入原料と称される。
【0003】
パレットは、焼結機において循環するように移動する。装入原料は、焼結機に設けられたカットゲートを通過することにより、その高さが調整される。カットゲートを通過した装入原料は、原料に含まれている固体燃料を燃焼させて焼結鉱となる。焼結鉱は、破砕が行われる排鉱部において、その燃焼が完了する。破砕された焼結鉱は、冷却された後に、整流される。
【0004】
装入原料は、焼結鉱の強度の確保及び、歩留向上の観点から、パレットの幅方向において偏りなく焼成が行われることが好ましい。そこで、装入原料の焼結の偏りを抑止することが行われており、例えば、パレットの幅方向における装入原料の燃焼状態に応じて、パレットの幅方向の装入原料の高さを調整することが、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、焼結機の幅方向の複数位置で焼結層を通過する風速を測定し、風速に応じて焼結機の幅方向に供給される原料の量を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-57481号公報
【文献】特開昭61-250120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、パレットに装入された原料層を正面から撮像する必要があり、カメラの配置位置が制限される。また、排鉱部において原料が落ちるタイミングで撮像されるため、鮮明な画像を得ることが困難であり、測定精度にバラつきが生じる問題がある。このため、特許文献1では、歩留まり改善のための調整を迅速に実施することができない問題がある。
【0008】
ところで、焼結の偏りには、原料層が点火された後の表面温度のバラつきが問題となる場合がある。原料層の表面温度のバラつきは、固体燃料として原料に含まれているコークスが偏在することによって生じると考えられている。特許文献2では、コークスの偏りを調整することができないため、焼結の偏りを改善することができない問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、装入原料の焼結の偏りを抑止することが可能な焼結鉱の製造装置、焼結鉱の製造方法及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
[1]
循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有するドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置であって、
当該点火炉の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成部と、
前記焼締量データに基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整部と、
を有する、焼結鉱の製造装置。
[2]
前記焼締量データ生成部は、前記パレットの幅方向においてそれぞれ異なる複数の箇所の前記焼締量データを生成する、[1]に記載の焼結鉱の製造装置。
[3]
前記焼締量データ生成部は、前記パレットの幅方向において等間隔に位置する5か所の前記焼締量データを生成する、[2]に記載の焼結鉱の製造装置。
[4]
前記点火炉の前記ラインバーナは、前記パレットの幅方向においてそれぞれ異なる複数の領域を加熱し、
前記焼締量データ生成部は、前記ラインバーナの加熱領域に応じた箇所の前記焼締量データを生成する、[2]又は、[3]に記載の焼結鉱の製造装置。
[5]
前記点火炉の前記ラインバーナは、前記パレットの幅方向の中央領域及び、前記パレットの幅方向において前記中央領域の両側に配される他の領域を加熱し、
前記ガス量調整部は、前記中央領域の前記燃焼ガスの供給量を、前記他の領域よりも少ない量に調整する、[2]又は、[3]に記載の焼結鉱の製造装置。
[6]
前記点火炉において前記原料層に着火される際の、前記原料層の表面温度及び、前記焼締量に基づいて決定される前記表面温度の目標値を取得する表面温度取得部を有し、
前記ガス量調整部は、前記原料層の前記表面温度及び、前記表面温度の前記目標値に基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整する、[1]~[3]のいずれかに記載の焼結鉱の製造装置。
[7]
循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有するドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置を用いた焼結鉱の製造方法であって、
当該点火炉の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成工程と、
前記焼締量データ生成工程において生成された前記焼締量データに基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整工程と、
を有する、焼結鉱の製造方法。
[8]
循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有するドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置の動作を制御するコンピューターに、
当該点火炉の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成工程と、
前記焼締量データ生成工程において生成された前記焼締量データに基づいて、前記点火炉の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整工程と、
を実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の焼結鉱の製造方法及び焼結鉱の製造装置によれば、原料層の焼締量に基づいて、点火炉のラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整する。これにより、原料層の焼締量を適切な状態に調整することができる。したがって、原料層の焼成のバラつきを低減することができ、焼結鉱の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】焼結鉱の製造装置の概要を示す説明図である。
【
図2】焼結鉱の製造装置を上面からみた構成を示す説明図である。
【
図3】焼結鉱の製造装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図4】焼結鉱の製造方法の処理フローを示すフロー図である。
【
図5】
図4のガス量調整工程のサブルーチンを示すフロー図である。
【
図6】各ラインバーナの燃焼ガスの供給量を示すグラフである。
【
図7】原料層の各領域における表面温度を示すグラフである。
【
図8】原料層の各領域における焼締量を示すグラフである。
【
図10】焼締量と、返鉱発生量と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、焼結鉱の製造装置の概要を示している。焼結鉱の製造装置100は、いわゆるドワイトロイド式の製造装置である。焼結鉱の製造装置100は、焼結鉱の原料20を貯蔵するサージホッパー10を有する。
【0014】
焼結鉱の原料20は、特には限定されないが、例えば、赤鉄鉱、磁鉄鉱等の種々の鉄鉱石を含む鉄含有原料、石灰石や生石灰等を含むCaO含有原料、ドロマイトや精錬ニッケルスラグ等を含むMgO含有原料、固体燃料としての粉状のコークス等が挙げられる。鉄含有原料には、製鉄所内に舞い上がるなどして発生した製鉄所内発生ダストが含まれていてもよい。また、焼結鉱の原料には、規定のサイズを満たさない細粒焼結鉱である返鉱などが含まれていてもよい。
【0015】
サージホッパー10には、これらが水と混合されることによって造粒された擬似粒子の状態で原料20が貯蔵されている。サージホッパー10は、貯蔵された原料20を所定量切り出して排出するロールフィーダー11を有する。ロールフィーダー11から排出された原料20は、分割ゲート12によって所定の方向に分流された後に、パレット30に装入される。
【0016】
パレット30は、一の方向(以下、搬送方向ともいう)D1に原料を搬送する搬送装置である。パレット30としては、例えば、循環移動が可能に構成される。
【0017】
パレット30の搬送方向D1の下流側には、カットゲート40が設けられている。カットゲート40は、パレット30の幅方向において、高さを一定にして形成された開口を有する。カットゲート40の開口の高さは、その上流側に位置するパレット30に装入された原料(以下、原料層とも称する。)21の高さよりも低く設定されている。したがって、パレット30がカットゲート40を通過すると、原料層21の高さが均される。
【0018】
パレット30の搬送方向D1において、カットゲート40の下流側には、点火炉50が設けられている。点火炉50は、パレット30の上方に設けられている。点火炉50は、パレット30の原料層21に向けて可燃性ガス(以下、燃焼ガスとも称する)を供給可能に構成されている。尚、点火炉50の下方には、風箱(図示せず)が設けられている。風箱は、パレット30の下方に設けられ、パレット30の上方から下方に空気が流れるように空気を吸引する。
【0019】
パレット30の搬送方向D1において、点火炉50の下流側には、表面温度計60が設けられている。表面温度計60は、焼結された原料22の表面温度を測定する温度計である。表面温度計60としては、特には限定されないが、例えば、サーモカメラを用いることができる。
【0020】
パレット30の搬送方向D1において、表面温度計60の下流側には、層厚レベル計70が設けられている。層厚レベル計70は、点火炉50で燃焼された原料層21の高さを測定するセンサである。層厚レベル計70としては、特には限定されないが、例えば、超音波距離計、レーザ距離計等を用いることができる。
【0021】
パレット30の搬送方向D1において、層厚レベル計70の下流側には、焼結された原料層21を排鉱する排鉱部80が設けられている。排鉱部80において、原料層21の燃焼が終了する。燃焼熱によって焼き固められた原料層21は、塊状の焼結ケーキとなる。焼結ケーキは、排鉱部80から外部に排出される。焼結ケーキは、排鉱部80においてパレット30から落下する際に搬送方向D1の幅方向に亀裂が生じて破断される。排鉱部80から排出された焼結ケーキは、破砕された後に、冷却される。冷却された焼結ケーキは、整粒され、例えば、平均粒径が5.0mm以上の塊成物からなる成品焼結鉱となる。尚、平均粒径が5.0mm未満のものは高炉への装入に適さないものとして、再度、焼結鉱の原料として使用される。
【0022】
焼結鉱の製造装置100は、装置の動作を制御する制御部90を有する。制御部90は、原料層21の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成部91を有する。制御部90は、焼締量データに基づいて、点火炉50に供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整部92を有する。制御部90は、原料層21の表面温度及び、原料層21の表面温度の目標値を取得する表面温度取得部93を有する。
【0023】
図2は、焼結鉱の製造装置100を上面からみた構成を示している。
図2に示すように、点火炉50は、搬送方向D1における幅方向D2において配列された複数のラインバーナ51を有する。尚、方向D2は、パレット30の幅方向に相当する。
【0024】
図2においては、6本のラインバーナ51が幅方向D2において所定の間隔で配列されている。各々のラインバーナ51は、パレット30の原料層21に向けて燃焼ガスを噴出可能に設けられている。また、各々のラインバーナ51は、燃焼ガスの噴出量を独立して調整可能なバルブ(図示せず)を有している。このように、ラインバーナ51の各々は、パレット30の幅方向D2においてそれぞれ異なる複数の領域を加熱するように配置されるとよい。
【0025】
層厚レベル計70は、幅方向D2において所定の間隔で複数配列されている。
図2においては、層厚レベル計70は、幅方向D2に5つ配列されている。層厚レベル計70が設けられる数については特には限定されないが、層厚レベル計70の検出領域及び、パレット30の幅方向D2の長さに応じて設けることができる。各々の層厚レベル計70は、例えば、等間隔で5つ設けられることが好ましい。また、層厚レベル計70は、搬送方向D1において点火炉50よりも下流の任意の位置に設置することができる。尚、層厚レベル計70の各々は、ラインバーナ51の加熱領域に対応した位置に設けられているとよい。
【0026】
図3は、焼結鉱の製造装置100の機能ブロックを示している。
図3に示すように、焼結鉱の製造装置100は、点火炉50、表面温度計60、層厚レベル計70、制御部90がバスBを介して互いに通信可能に接続されている。
【0027】
制御部90は、CPU,ROM,RAMを有する焼結鉱の製造装置100の動作を制御するコンピューターである。制御部90は、ROMから必要なデータ及びソフトウェアのプログラムを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアのプログラムに従った演算処理を実行する。
【0028】
尚、ROMには、カットゲート40によって均された原料層21の層厚である第1の層厚が格納されている。第1の層厚は、カットゲート40の開口の高さを用いてもよいし、層厚レベル計(図示せず)を用いて測定されたものであってもよい。またROMには、焼締量の目標値、当該焼締量の目標値に応じた燃焼ガスの供給量の目標値及び、点火炉50において原料層21に着火される際の原料層21の表面温度の目標値が格納されている。
【0029】
表面温度計60は、原料層21に向けて設置されている。表面温度計60は、温度の計測が開始されると、計測された温度を原料層21の表面温度として制御部90のROMに逐次格納する。
【0030】
各々の層厚レベル計70は、原料層21の層厚を測定すると、当該層厚を第2の層厚として制御部90のROMに逐次格納する。層厚レベル計70の各々は、例えば、ラインバーナ51の加熱領域に対応した各領域の層厚を第2の層厚として制御部90のROMに逐次格納する。
【0031】
点火炉50は、制御部90からの指令に基づいて、各ラインバーナ51から燃焼ガスを噴出させる装置である。
【0032】
制御部90の焼締量データ生成部91は、第1の層厚及び、排鉱部80における原料層21の層厚である第2の層厚に基づいて、原料層21の焼締量である焼締量データを生成する。
【0033】
焼締量は、焼成による原料層21の収縮の度合いとして生成することができる。焼締量データ生成部91は、例えば、第1の層厚から第1の層厚に対応する領域の第2の層厚を差し引くことにより焼締量を求め、当該焼締量を焼締量データとして生成する。焼締量データ生成部91は、生成した焼締量データをROMに格納する。
【0034】
ガス量調整部92は、焼締量データ生成部91が生成した焼締量データに基づいて、点火炉50に供給される燃焼ガスの量を調整する。ガス量調整部92は、例えば、ラインバーナ51に設けられているバルブ(図示せず)の開度を調整することにより、点火炉50に供給される燃焼ガスの量を調整する。また、ガス量調整部92は、ラインバーナ51の各々に設けられているバルブ(図示せず)に対して独立して開度を調整するとよい。
【0035】
表面温度取得部93は、ROMを参照することで、原料層21の表面温度及び、原料層21の表面温度の目標値を取得する。尚、原料層21の表面温度の目標値は、焼締量に基づいて決定されるとよい。原料層21の表面温度の目標値は、例えば、目標値となる焼締量に対応する表面温度の関係を試験等により導き出しておき、当該焼締量に対応した原料層21の表面温度で決定されるとよい。
【0036】
図4は、焼結鉱の製造方法の処理フローを示している。焼結鉱の製造方法の処理フローは、例えば、焼結鉱の製造装置100の稼働によって実行される。
図4に示すように、焼結鉱の製造方法の処理フローが実行されると、焼締量データ生成部91は、第1の層厚及び、第2の層厚をROMから読み出す。焼締量データ生成部91は、第1の層厚及び、第2の層厚に基づいて、原料層21の焼締量である焼締量データを生成して、焼締量データ生成工程を実行する(ステップS101)。
【0037】
ステップS101の焼締量データ生成工程において、焼締量データ生成部91は、カットゲート40の開口高さである第1の層厚及び、各々の層厚レベル計70によって測定された第2の層厚を用いて、それぞれの焼締量データを生成するとよい。
【0038】
焼締量データ生成部91は、パレット30の幅方向D2においてそれぞれ異なる複数の箇所の焼締量データを生成するとよい。具体的には、焼締量データ生成部91は、ラインバーナ51の加熱領域に応じた箇所の焼締量データを生成するようにするとよい。このように、焼締量データを生成することにより、パレット30の幅方向D2における焼締量の偏りを把握することができる。尚、焼締量データ生成部91は、焼締量データに対応するラインバーナ51に供給される燃焼ガスの量の目標値を生成するとよい。
【0039】
次いで、表面温度取得部93は、ROMを参照することで、原料層21の表面温度及び、原料層21の表面温度の目標値を取得することにより、表面温度取得工程を実行する(ステップS102)。
【0040】
ガス量調整部92は、ステップS101で生成された焼締量データに基づいて、点火炉50に供給される燃焼ガスの量を調整することにより、ガス量調整工程が実行される(ステップS103)。
【0041】
ガス量調整部92は、ステップS103のガス量調整工程において、例えば、ステップS101で生成された焼締量データが予め定めた目標値となるように、点火炉50に供給される燃焼ガスの量を調整する。このとき、ガス量調整部92は、ステップS102の表面温度取得工程で取得した原料層21の表面温度の目標値に近づくように、燃焼ガスの量を調整するとよい。原料層21の表面温度は、焼締量と高い関係性がある。したがって、焼締量データ及び、原料層21の表面温度の目標値の2つの要素を用いて燃焼ガスの量を調整することにより、焼締量を適切な状態に近づけることが可能となる。
【0042】
図5は、ガス量調整部92によるガス量調整工程のサブルーチンを示している。
図5に示すように、ガス量調整部92は、ガス量調整工程が開始されると、焼締量及び、焼締量の目標値である焼締量目標値を取得して、焼締量取得工程を実行する(S201)。
【0043】
ガス量調整部92は、ステップS201で取得した焼締量と焼締量目標値との差が閾値以内か判定する(ステップS202)。
【0044】
ガス量調整部92は、ステップS202の判定が閾値以下である場合(ステップS202:Yes)、設定を維持して(ステップS203)、処理を終了する。
【0045】
ガス量調整部92は、ステップS202の判定が閾値以下ではない場合(ステップS202:No)、各ラインバーナ51から噴出される燃焼ガスの量及び、各ラインバーナ51から噴出される燃焼ガスの量の目標値を取得する(ステップS204)。
【0046】
ガス量調整部92は、ステップS204で取得された噴出される燃焼ガスの量が、ステップS101で作成された目標値に近づくようにかつ、ステップS102で取得された原料層21の表面温度が目標値に近づくように設定を変更する(ステップS205)。
【0047】
ガス量調整部92は、ステップS201の焼締量取得工程に戻り、ステップS202の閾値の判定工程において、閾値以下であると判定されるまで、上記の処理を繰り返し行う。ガス量調整部92は、ステップS201~S205までの処理を、いわゆるPID(Proportional-Integral-Differential)制御によって行うとよい。
【0048】
以上のように、本実施形態の焼結鉱の製造装置100及び、焼結鉱の製造方法によれば、原料層21の焼締量に基づいて、点火炉50のラインバーナ51に供給される燃焼ガスの量を調整する。これにより、原料層21の焼締量を適切な状態に調整することができる。また、当該燃焼ガスの量の調整を、パレット30の幅方向D2に配列された複数のラインバーナ51の各々に対して行うことにより、パレット30の幅方向D2における焼成のばらつきを低減することができ、焼結鉱の歩留まりを向上させることができる。
【0049】
また、原料層21の表面温度を目標値に近づくように、点火炉50のラインバーナ51に供給される燃焼ガスの量を調整することにより、原料層21の焼締量をより適切な状態に調整することができる。
【0050】
尚、焼締量は、パレット30の幅方向D2において偏りが生じやすい。例えば、パレット30の幅方向D2においては、中央側よりも、端部側の方が返鉱の確率が高くなる傾向がある。このような場合、中央側の燃焼ガスの供給量を端部側よりも少ない量に調整するようにするとよい。具体的には、ラインバーナ51は、パレット30の幅方向D2の中央領域及び、中央領域の両側に配される他の領域を加熱するように複数配されるようにするとよい。また、ガス量調整部92は、中央領域の燃焼ガスの供給量を、他の領域よりも少ない量に調整するようにするとよい。
【0051】
尚、ステップS102の表面温度取得工程は、任意に実行される工程である。したがって、実施形態の態様によっては、当該工程は省略されてもよい。この場合、ステップS205の設定変更工程においては、ガス量調整部92は、ステップS204で取得された噴出される燃焼ガスの量が、ステップS101で作成された目標値に近づくように設定を変更するとよい。
【実施例】
【0052】
点火炉のラインバーナに供給される燃焼ガスの量の態様を変更して、焼結鉱の製造を行い、返鉱量の比較を行った。パレットの幅方向において5つのラインバーナを均等な間隔で配置した。各々のラインバーナの供給される燃焼ガスの量を一定にした場合を比較例とした。各々のラインバーナの供給される燃焼ガスの量を、原料層の焼締量に応じて調整した場合を実施例とした。
【0053】
比較例における各ラインバーナに供給される燃焼ガスの供給量は次の通りとした。
図6は、パレットの幅方向に配列されたラインバーナの燃焼ガスの供給量を示すグラフである。
図6において、ラインバーナ1~5は、パレットの幅方向において、端部から順に配されている。ラインバーナ1、5は、パレットの幅方向の端部に配されている。ラインバーナ3は、パレットの幅方向の中央に配されている。ラインバーナ2、4は、パレットの幅方向において、ラインバーナ1、5及びラインバーナ3の間に配されている。
図6に示されるように、比較例では、ラインバーナ1~5に供給される燃焼ガスの量は、288Nm
3/hとした。
【0054】
図6に示す条件で原料層の焼成を行った。その際の比較例における原料層の表面の温度は次の通りであった。
図7は、パレットの幅方向に拡がる各領域における原料層の表面温度を示すグラフである。
図7に示されるように、比較例において、北の領域では、原料層の表面温度が270℃であった。また、中央の領域では、原料層の表面温度が252℃であった。南の領域では、原料層の表面温度が286℃であった。
【0055】
図6に示す条件で原料層の焼成を行った。その際の比較例における原料層の焼締量は次の通りであった。
図8は、パレットの幅方向に拡がる各領域における原料層の焼締量を示すグラフである。
図8において、領域1~5は、ラインバーナ1~5の設置位置に対応する領域である。比較例では、パレット30の幅方向において中央側と、端部側とでは焼締量に差が生じた。具体的には、パレット30の幅方向において中央側の焼締量は、他の領域よりも高い値となった。
【0056】
図6に示す条件で原料層の焼成を行った。その際の比較例における返鉱発生量は次の通りであった。
図9は、単位時間当たりの返鉱発生量を示すグラフである。
図9に示されるように、比較例の返鉱量は、149.3t/hであった。
【0057】
続いて、実施例の返鉱量を求めた。実施例において、焼締量の目標値は、焼締量と、返鉱量と、の関係に基づいて設定した。
図10は、焼締量と、返鉱量と、の関係を示すグラフである。
図10に示すように、焼締量が50~90mmにかけて、返鉱原単位が減少する傾向がある。焼締量が90mmに達すると、以降は返鉱原単位がほぼ一定となる。したがって、焼締量が90mmより高い値に設定しても返鉱原単位の減少効果が得られにくくなる。実施例においては、目標焼締量を90mmに設定した。
【0058】
実施例においては、比較例で得られた焼締量が目標焼締量の90mmとなるように、燃焼ガスの供給量を調整した。ガス量調整部による燃焼ガスの供給量の調整例としては、例えば、
図8における領域4の焼締量が50mmと測定された場合、ガス量調整部は、当該領域4を加熱するラインバーナに供給される燃焼ガスの供給量を288Nm
3/hよりも増やす調整を行う。当該燃焼ガスの供給量の調整は、焼締量が90mmとなるまで行われる。
【0059】
また、例えば、
図8における領域3の焼締量が130mmと測定された場合、ガス量調整部92は、当該領域3を加熱するラインバーナに供給される燃焼ガスの供給量を76Nm
3/hよりも減らす調整を行う。当該燃焼ガスの供給量の調整は、焼締量が90mmとなるまで行われる。
【0060】
このようにしてガス量調整部による、燃焼ガスの供給量の調整が行われた結果、実施例では、
図6に示すように、ラインバーナ1、2、4、5に供給される燃焼ガスの量が341Nm
3/hであった。ラインバーナ3に供給される燃焼ガスの量は、76Nm
3/hであった。パレットの幅方向において中央側に配されているラインバーナ3の燃焼ガスの供給量は、パレットの幅方向において端部側に配されているラインバーナ1,2,4,5の燃焼ガスの供給量の1/3以下であった。
【0061】
図6に示す条件で原料層の焼成を行った。その際の実施例における原料層の表面の温度は次の通りであった。
図7に示すように、実施例において、北の領域では、原料層の表面温度が280℃であった。また、中央の領域では、原料層の表面温度が103℃であった。南の領域では、原料層の表面温度が266℃であった。
【0062】
図6に示す条件で原料層の焼成を行った。その際の実施例における原料層の焼締量は、
図8に示すように、領域1~5のいずれの領域においても90mmであった。
【0063】
図6に示す条件で原料層の焼成を行った。その際の実施例における返鉱発生量は次の通りであった。
図9は、単位時間当たりの返鉱発生量を示すグラフである。
図9に示されるように、実施例の返鉱量は、141.0t/hであった。したがって、実施例は、比較例よりも返鉱量が8.3t/h低いことが分かった。
【0064】
このように、パレットの幅方向中央のガス量を他と比較して減少させることにより、焼締量に偏りの抑制されることがわかった。中央部の原料層は、表面温度が低くても十分に焼き締まる傾向があることがわかった。端部の原料層は、表面温度が高くなければ、十分な焼き締まりが得られない傾向があることがわかった。
【0065】
ガス量調整部は、実施例のように焼締量が目標値に達するようにガスの供給量を調整することで、原料層の焼締量を均一にすることができる。その結果、返鉱の発生量が低減されることが確認された。
【0066】
すなわち、返鉱発生量は、原料層の焼成が不均一になると増加し、原料層の焼成が均一になる(焼成のばらつきが低減する)ほど減少することがわかった。また、返鉱発生量が減少するということは、整粒後に粒径の大きい成品焼結鉱が多く製造されることを意味する。原料層の焼成を均一化するためには、パレットの幅方向の原料中の熱量を均一化し、焼成ムラを改善することが有効であることがわかった。
【符号の説明】
【0067】
100 焼結鉱の製造装置
20 原料
21 原料層
30 パレット
40 カットゲート
50 点火炉
51 ラインバーナ
60 表面温度計
70 層厚レベル計
80 排鉱部
90 制御部
91 焼締量データ生成部
92 ガス量調整部
93 表面温度取得部
【要約】
【課題】 装入原料の焼結の偏りを抑止することが可能な焼結鉱の製造装置を提供する。
【解決手段】 焼結鉱の製造装置は、ドワイトロイド式の焼結鉱の製造装置である。焼結鉱の製造装置は、循環移動し、かつ焼結鉱の原料の原料層が形成されるパレットと、前記パレット上の前記原料層をラインバーナによって焼結する点火炉と、当該点火炉の下流に位置し、かつ焼結された前記原料層を排鉱する排鉱部と、を有する。焼結鉱の製造装置は、当該焼結機の上流に位置するカットゲートによって均された前記原料層の層厚である第1の層厚及び、前記排鉱部における前記原料層の層厚である第2の層厚に基づいて、前記原料層の焼締量である焼締量データを生成する焼締量データ生成部と、前記焼締量データに基づいて、前記焼結機の前記ラインバーナに供給される燃焼ガスの量を調整するガス量調整部と、を有する。