(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ニアアイ光学システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241008BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241008BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20241008BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/00 Z
G02B5/08 Z
G02B17/08
(21)【出願番号】P 2020184136
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202010070389.2
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】500093133
【氏名又は名称】中強光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】簡 宏達
【審査官】弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0231780(US,A1)
【文献】特開2013-083686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104536138(CN,A)
【文献】特開2012-053379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0198471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光束を受けるニアアイ光学システムであって、
前記ニアアイ光学システムは、前記映像光束を第一方向に拡張させる第一光導波路を含み、
前記第一光導波路は、
第一入光領域を有する第一表面と、
前記第一表面に対向する第二表面と、
前記第二表面に設置された複数個の第一反射斜面と、
前記第二表面に設置された複数個の第二反射斜面とを含み、
前記第二表面は陥凹領域を有し、かつ前記陥凹領域が前記第一入光領域
に合わせられ、
前記陥凹領域が平坦な底面及び対向する第一傾斜側壁と第二傾斜側壁を有し、
前記複数個の第一反射斜面、前記陥凹領域及び前記複数個の第二反射斜面が第一方向に沿って順に配列され、かつ前記第一傾斜側壁、前記平坦な底面及び前記第二傾斜側壁が前記第一方向に沿って順に配列されることを特徴とする、ニアアイ光学システム。
【請求項2】
前記平坦な底面、前記第一傾斜側壁、前記第二傾斜側壁、前記複数個の第一反射斜面及び前記複数個の第二反射斜面
とが反射面である、請求項1に記載のニアアイ光学システム。
【請求項3】
前記第一光導波路はさらに、
前記第二表面に設置された複数個の第一反射表面と、
前記第二表面に設置された複数個の第二反射表面とを含み、
前記複数個の第一反射表面と前記複数個の第一反射斜面が前記第一方向に交互に配列され、
前記複数個の第二反射斜面と前記複数個の第二反射表面が前記第一方向に交互に配列される、請求項2に記載のニアアイ光学システム。
【請求項4】
前記映像光束は前記第一入光領域を経由して前記第一光導波路に入った後、
前記映像光束が前記平坦な底面に反射されて前記映像光束の第一部分を形成し、かつ前記第一表面を経由して前記第一光導波路を離れ、
前記映像光束が前記第一傾斜側壁に反射されて前記映像光束の第二部分を形成し、前記映像光束の前記第二部分が前記複数個の第一反射表面に反射され、前記複数個の第一反射斜面に反射され、かつ前記第一表面を経由して前記第一光導波路を離れ、
前記映像光束が前記第二傾斜側壁に反射されて前記映像光束の第三部分を形成し、前記映像光束の前記第三部分が前記複数個の第二反射表面に反射され、前記複数個の第二反射斜面に反射され、かつ前記第一表面を経由して前記第一光導波路を離れる、請求項3に記載のニアアイ光学システム。
【請求項5】
前記ニアアイ光学システムはさらに、
前記映像光束を第二方向に拡張させる第二光導波路と、
前記第二光導波路において傾斜して配置される偏光分光面と、
前記第二光導波路と前記第一表面との間に配置される四分の一波長板とを含み、
前記第一表面が前記第二光導波路と前記第二表面との間に配置され、
前記映像光束が前記第二光導波路に入った後、前記偏光分光面と前記四分の一波長板を順に透過し、前記第一光導波路の前記第一入光領域まで伝達され、かつ、前記第一表面から前記第一光導波路を離れた前記映像光束が順に前記四分の一波長板を透過し、前記第二光導波路に入り、かつ前記偏光分光面に反射されて、前記映像光束が前記第二光導波路において前記第二方向に伝達される、請求項4に記載のニアアイ光学システム。
【請求項6】
前記複数個の第一反射表面と前記複数個の第二反射表面が前記第一表面に対する傾斜角が80度より大きい、請求項3に記載のニアアイ光学システム。
【請求項7】
前記第一傾斜側壁と前記第二傾斜側壁が鏡面対称であり、前記複数個の第一反射斜面と前記複数個の第二反射斜面が鏡面対称であり、かつ、前記複数個の第一反射表面と前記複数個の第二反射表面が鏡面対称である、請求項3に記載のニアアイ光学システム。
【請求項8】
前記平坦な底面が光透過面であり、かつ、前記第一傾斜側壁、前記第二傾斜側壁、前記複数個の第一反射斜面及び前記複数個の第二反射斜面が全て反射面である。請求項1に記載のニアアイ光学システム。
【請求項9】
前記第一光導波路はさらに、
前記第二表面に設置された複数個の第一透過表面と、
前記第二表面に設置された複数個の第二透過表面とを含み、
前記複数個の第一反射斜面と前記複数個の第一透過表面が前記第一方向において交互に配列され、
前記複数個の第二透過表面と前記複数個の第二反射斜面が前記第一方向において交互に配列される、請求項8に記載のニアアイ光学システム。
【請求項10】
前記映像光束が前記第一入光領域を経由して前記第一光導波路に入った後、
前記映像光束が前記平坦な底面を透過して、前記映像光束の第一部分を形成し、前記第一光導波路を離れ、
前記映像光束が前記第一傾斜側壁に反射されて、前記映像光束の第二部分を形成し、前記映像光束の前記第二部分が前記複数個の第一透過表面を透過し、かつ前記複数個の第一反射斜面に反射され、前記第一光導波路を離れ、
前記映像光束が前記第二傾斜側壁に反射されて、前記映像光束の第三部分を形成し、前記映像光束の前記第三部分が前記複数個の第二透過表面を透過し、かつ前記複数個の第二反射斜面に反射され、前記第一光導波路を離れる、請求項9に記載のニアアイ光学システム。
【請求項11】
前記ニアアイ光学システムはさらに、前記映像光束を第二方向上に拡張させる第二光導波路を含み、
前記第二光導波路は、前記第二表面に向く表面において第二入光領域を有し、前記第二入光領域が前記第二表面からの前記映像光束を受ける、請求項10に記載のニアアイ光学システム。
【請求項12】
前記ニアアイ光学システムはさらに、前記第二表面に配置された補償導波路を含み、
前記複数個の第一透過表面、前記複数個の第一反射斜面、前記複数個の第二透過表面及び前記複数個の第二反射斜面が複数個のプリズム表面構造を形成し、
前記補償導波路は、前記第一光導波路に向く表面において、前記陥凹領域及び前記複数個のプリズム表面構造と互いに補い合う表面構造を有する、請求項9に記載のニアアイ光学システム。
【請求項13】
前記第一傾斜側壁と前記第二傾斜側壁が鏡面対称であり、前記複数個の第一反射斜面と前記複数個の第二反射斜面が鏡面対称であり、かつ、前記複数個の第一透過表面と前記複数個の第二透過表面が鏡面対称である、請求項9に記載のニアアイ光学システム。
【請求項14】
前記複数個の第一反射斜面と前記第一表面との距離が前記第一方向に沿って逓増し、かつ前記複数個の第二反射斜面と前記第一表面との距離が前記第一方向に沿って逓減する、請求項8に記載のニアアイ光学システム。
【請求項15】
前記第一傾斜側壁、前記第二傾斜側壁、前記複数個の第一反射斜面及び前記複数個の第二反射斜面が前記第一表面に対する傾斜角がすべて同じである、請求項8に記載のニアアイ光学システム。
【請求項16】
前記第一傾斜側壁と前記第二傾斜側壁とが鏡面対称であり、かつ前記複数個の第一反射斜面と前記複数個の第二反射斜面とが鏡面対称である、請求項1に記載のニアアイ光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学システムに関し、特にニアアイ光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイHMD(Head/Helmet-mounted displays,HMDs)などニアアイ光学システムの歴史は1970年代のアメリカ軍事技術まで遡れる。一つの投影装置を利用して、表示アセンブリ上の映像または文字情報をユーザの目の中に投影するものである。
【0003】
近年、小型の表示アセンブリの発展に伴い、解像度がさらに高く、サイズとパワーロスがさらに小さくなる傾向にある。また、クラウド技術の発展により、いつでもどこでもクラウドサーバから大量の情報をダウンロードすることができるようになり、膨大なデータを持ち運ぶ紛らわしさから解放された。ニアアイ光学システムの発展で携帯式の(portable)表示装置が登場した。ニアアイ光学システムは、軍事分野以外に、その他の工業生産、シミュレーショントレーニング、3D表示、医療、スポーツ及び電子ゲームなどの関連分野でも成長し、重要な位置を占めている。
【0004】
ニアアイ光学システムが大きな視野角を提供できれば、ユーザからすれば、即ち、人の目でより大きな映像画面が見える。導波路を用いて映像光束を伝達する時に、視野角は主に導波路の材料及び形状要因(form factor)の影響を受けるため、従来の導波路が提供できる視野角が制限され、ニーズを満足できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のニアアイ光学システムは、視角範囲を有効に拡張させ、かつ高い光効率及び高い映像均一性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
映像光束を受けるニアアイ光学システムであって、ニアアイ光学システムは映像光束を第一方向に拡張させる第一光導波路を含み、第一光導波路が第一表面、第二表面、複数個の第一反射斜面及び複数個の第二反射斜面を含む。第一表面が第一入光領域を有し、第二表面と第一表面が対向して設置される。第二表面は第一入光領域に合わせられた陥凹領域を有し、陥凹領域が平坦な底面及び対向する第一傾斜側壁と第二傾斜側壁を有する。複数個の第一反射斜面が第二表面に設置され、かつ複数個の第二反射斜面が第二表面に設置される。複数個の第一反射斜面、陥凹領域及び複数個の第二反射斜面が第一方向に沿って順に配列され、かつ第一傾斜側壁、平坦な底面及び第二傾斜側壁が第一方向に沿って順に配列される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施例のニアアイ光学システムにおいて、その第一光導波路は、平坦な底面及び対向する第一傾斜側壁と第二傾斜側壁を含む陥凹領域を用いて、映像光束を三つの部分に分ける。これにより、二つの対向する方向(Opposite direction)に視角範囲を拡張させ、かつニアアイ光学システムに高い光効率及び高い映像均一性をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の一実施例のニアアイ光学システムの一方向における断面概略図。
【
図1B】本発明の一実施例のニアアイ光学システムの異なる方向における断面概略図。
【
図2A】本発明の別の実施例のニアアイ光学システムの一方向における断面概略図。
【
図2B】本発明の別の実施例のニアアイ光学システムの異なる方向における断面概略図。
【
図3】本発明のさらに別の実施例のニアアイ光学システムの第一光導波路と補償導波路の断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aと
図1Bは本発明の一実施例のニアアイ光学システムの異なる二つの方向における断面概略図である。
図1Aと
図1Bを参照すると、本実施例のニアアイ光学システム100は映像光束を112受けるものであり、映像光束112は例えばプロジェクター(projector)110から発射され、プロジェクター110は例えばピコプロジェクター(pico projector)である。ニアアイ光学システム100は映像光束112を第一方向D1に拡張させる第一光導波路200を含み、第一光導波路200が第一表面210、第二表面220、複数個の第一反射斜面222及び複数個の第二反射斜面226を含む。第一表面210は第一入光領域A1を有し、第二表面220が第一表面210に対向して設置される。第二表面220は陥凹領域230を有し、陥凹領域230が第一入光領域A1に合わせられ、かつ対応する。陥凹領域230は平坦な底面232及び対向する第一傾斜側壁234と第二傾斜側壁236を有する。複数個の第一反射斜面222は第二表面220に設置され、かつ複数個の第二反射斜面226が第二表面220に設置されている。本実施例において、複数個の第一反射斜面222、陥凹領域230及び複数個の第二反射斜面226が第一方向D1に沿って順に配列され、かつ第一傾斜側壁234、平坦な底面232及び第二傾斜側壁236が第一方向D1に沿って順に配列されている。さらに説明すると、第一方向D1の正方向及び第一方向D1の逆方向に沿って、複数個の第一反射斜面222及び複数個の第二反射斜面226が陥凹領域230を中心領域として配列されている。
【0010】
本実施例において、第一光導波路200はさらに複数個の第一反射表面224及び複数個の第二反射表面228を含む。複数個の第一反射表面224は第二表面220に設置され、かつ、複数個の第一反射表面224と複数個の第一反射斜面222が第一方向D1において交互に配列される。複数個の第二反射表面228は第二表面220に設置され、かつ、複数個の第二反射斜面226と複数個の第二反射表面228が第一方向D1において交互に配列される。本実施例において、平坦な底面232、第一傾斜側壁234、第二傾斜側壁236、複数個の第一反射斜面222、複数個の第二反射斜面226、複数個の第一反射表面224及び複数個の第二反射表面228は全て反射面であり、かつその上に反射層、例えば金属反射層がコーティングされる。
【0011】
本実施例において、映像光束112は第一入光領域A1を経由して第一光導波路200に入った後、映像光束112が平坦な底面232に反射されて映像光束112の第一部分112aを形成し、かつ第一表面210を経由して第一光導波路200を離れる。映像光束112が第一傾斜側壁234に反射されて映像光束112の第二部分112bを形成し、映像光束112の第二部分112bが複数個の第一反射表面224に反射され、複数個の第一反射斜面222に反射されて、かつ第一表面210を経由して第一光導波路200を離れる。映像光束112が第二傾斜側壁236に反射されて映像光束112の第三部分112cを形成し、映像光束112の第三部分112cが複数個の第二反射表面228に反射され、複数個の第二反射斜面226に反射されて、かつ第一表面210を経由して第一光導波路200を離れる。
【0012】
本実施例において、ニアアイ光学システム100はさらに、第二光導波路120、偏光分光面140及び四分の一波長板(quarter waveplate)130を含む。第二光導波路120は映像光束112を第二方向D2に拡張させるものであり、本実施例において、第二方向D2が第一方向D1に垂直であり、ユーザがニアアイ光学システム100を着用した時に、第一方向D1が例えば水平方向であり、第二方向D2が例えば鉛直方向(重力方向)である。また、別の実施例において、第一方向D1が鉛直方向であり、第二方向D2が水平方向であってもよい。本実施例において、第一表面210が第二光導波路120と第二表面220との間に配置されている。
【0013】
図1Bを参照すると、偏光分光面(Polarizing Beam Splitting Surface)140は第二光導波路120中に傾斜して配置され、かつ四分の一波長板130が第二光導波路120と第一表面210との間に配置されている。プロジェクター110からの映像光束112が第二光導波路120に入った後、順に偏光分光面140と四分の一波長板130を透過し、第一光導波路200の第一入光領域A1まで伝達される。その後、前記映像光束112の第一部分112a、第二部分112b及び第三部分112cのように前記経路を通って、第一表面210から第一光導波路200を離れる。第一表面210から第一光導波路200を離れた映像光束112は順に四分の一波長板130を透過し、第二光導波路120に入り、さらに偏光分光面140に反射されることで、映像光束112が第二光導波路120中に第二方向D2に伝達される。本実施例において、プロジェクター110からの映像光束112は偏光分光面140に対する、例えばP偏光光束または非偏光光束であり、従って、偏光分光面140を透過した映像光束112がP偏光光束であり、そして、映像光束112が四分の一波長板130を通って第一光導波路200に入り、第一光導波路200内部での反射と伝達により、第一表面210から第一光導波路200を離れた映像光束112が四分の一波長板130を透過した後、S偏光光束に変換され、このS偏光光束が偏光分光面140に反射されることで、映像光束112が第二光導波路120中に第二方向D2へ伝達される。
【0014】
本実施例において、第二光導波路120は第二方向D2に配列された複数個の反射斜面122を有し、これにより第二光導波路120中に伝達される映像光束112をユーザの目50まで反射することができ、映像光束112の映像が目50の角膜と水晶体の集光作用によって目50の網膜上に像形成される。つまり、ニアアイ光学システム100は目50の前方(手前)に虚像を形成し、第二光導波路120が目50とこの虚像との間に位置する。第一方向D1と第二方向D2が第三方向D3に垂直であり、第三方向D3が目50の直視方向に平行または略平行であってもよい。また、本実施例において、目50はニアアイ光学システム100が表示する虚像を見ることができるほか、第二光導波路120によって第二光導波路120後方の周辺景観を見ることができる。つまり、環境光束が第二光導波路120を通って目50に取り込まれるため、ニアアイ光学システム100は拡張現実ディスプレイとすることができる。
【0015】
本実施例において、複数個の第一反射表面224と複数個の第二反射表面228が第一表面210に対する傾斜角θ1とθ2は何れも80度より大きい。また、本実施例において、第一傾斜側壁234と第二傾斜側壁236が鏡面対称(mirror symmetry)であり、複数個の第一反射斜面222と複数個の第二反射斜面226が鏡面対称であり、かつ、複数個の第一反射表面224と複数個の第二反射表面228が鏡面対称である。前記鏡面対称は陥凹領域230を参考基準とする。
【0016】
本実施例のニアアイ光学システム100において、その第一光導波路200は、平坦な底面232及び対向する第一傾斜側壁234と第二傾斜側壁236を有する陥凹領域230を用いて、映像光束112を三つの部分に分ける。これにより、対向する二方向において(即ち、第一方向D1上及び第一方向D1の逆方向上)視角範囲を拡張させ、かつニアアイ光学システム100の光効率と映像の均一性を高め、及び視野角を大きくすることができる。また、本実施例のニアアイ光学システム100において、一般的な導波路の対向する二つの表面による全反射特性と異なり、本実施例の映像光束112が第一傾斜側壁234と第二傾斜側壁236に反射された後に、第一反射表面224と第一反射斜面222によって形成される光取込み構造及び第二反射表面228と第二反射斜面226によって形成される光取込み構造へ直接照射され、かつ、第一光導波路200中に全反射による伝達がない。従って、本実施例のニアアイ光学システムは映像光束112を正確に目50まで伝達し、かつ光効率を高めことができる。また、第一光導波路200は一般的な導波路のような対向する二つの表面による全反射特性を有しないため、光取込み構造を設計する時に、大視野角の映像光束112が小視野角の映像光束112の光取込み構造の影響を受けることを有効に回避でき、つまり、本実施例では異なる視野角の光取込み構造を別々に分けて設計することが可能で、一部視野角の映像光束112を個別に調整することが可能であり、これにより映像均一性を高めることができる。光取込み構造は例えば角柱構造。
【0017】
また、本実施例において、平坦な底面232の第一方向D1上の幅は、映像光束112が陥凹領域230に入射する時の第一方向D1上の幅より小さい。また、第一反射表面224が第一表面210に対する傾斜角θ1(または第二反射表面228が第一表面210に対する傾斜角θ2)に第一反射斜面222が第一表面210に対する傾斜角θ3(または第二反射斜面226が第一表面210に対する傾斜角θ4)を足し、さらに第一傾斜側壁234が第一表面210に対する傾斜角θ5(または第二傾斜側壁236が第一表面210に対する傾斜角θ6)を足した和が、例えば180度である。また、第一反射斜面222、第二反射斜面226、第一反射表面224及び第二反射表面228は、基準参考平面221から上へ突出した光取込み構造の表面と見なすことができ、基準参考平面221が第一表面210と第二表面220に平行であり、平坦な底面232が第一表面210に平行であってもよい。本実施例において、隣接する二つの光取込み構造が密接するものである。なお、別の実施例において、隣接する二つの光取込み構造の間に隙間があってもよく、かつ隣接する二つの光取込み構造の間の第二表面220が基準参考平面221に沿って二つの光取込み構造を繋げるようにしてもよい。
【0018】
また、本実施例において、陥凹領域230から最も遠い光取込み構造の第一反射表面224と陥凹領域の中心との第一方向D1における距離がh/tan(2*(θ5)‐90°‐arcsin(sin(φ/n)+w/2)より小さい。なお、hは平坦な底面232と基準参考平面221との第三方向D3(即ち、第一表面210に垂直な方向)における距離であり、φは映像光束112が第二光導波路120に入射する前の空地中の最大出力角度であり、nは第一光導波路200の材料の屈折率であり、wは平坦な底面232が第一方向D1における幅である。一実施例において、前記距離より大きい場合、映像光束112が入射されなくなる。
【0019】
図2Aと
図2Bは本発明の別の実施例のニアアイ光学システムが異なる二つの方向における断面概略図である。
図2Aと
図2Bを参照すると、本実施例のニアアイ光学システム100aは
図1Aと
図1Bのニアアイ光学システム100に類似するが、両者の主な相違点は以下の通りである。本実施例のニアアイ光学システム100aにおいて、第一光導波路200aの陥凹領域230の平坦な底面232aが光透過面であり、第一傾斜側壁234、第二傾斜側壁236、複数個の第一反射斜面222及び複数個の第二反射斜面226が何れも反射面であり、かつその上に反射層、例えば金属反射層がコーティングされている。
【0020】
本実施例において、第一光導波路200aは第一反射表面224と第二反射表面228を含まず、その代わりに、第一光導波路200aは複数個の第一透過表面224a及び複数個の第二透過表面228aを含む。複数個の第一透過表面224aは第二表面220に設置され、かつ、複数個の第一反射斜面222と複数個の第一透過表面224aが第一方向D1において交互に配列される。複数個の第二透過表面228aは第二表面220に設置され、かつ複数個の第二透過表面228aと複数個の第二反射斜面226が第一方向D1において交互に配列される。
【0021】
本実施例において、プロジェクター110からの映像光束112が第一入光領域A1を経由して第一光導波路200aに入った後、映像光束112が平坦な底面232aを透過して映像光束112の第一部分112aを形成し、第一光導波路200aを離れる。映像光束112が第一傾斜側壁234に反射されて映像光束112の第二部分112bを形成し、映像光束112の第二部分112bが複数個の第一透過表面224aを透過し、かつ複数個の第一反射斜面222に反射されて、第一光導波路200aを離れる。また、映像光束112が第二傾斜側壁236に反射されて映像光束112の第三部分112cを形成し、映像光束112の第三部分112cが複数個の第二透過表面228aを透過し、かつ複数個の第二反射斜面226に反射されて、第一光導波路200aを離れる。
【0022】
本実施例において、ニアアイ光学システム100aはさらに、第二表面220に配置された補償導波路205を含む。複数個の第一透過表面224a、複数個の第一反射斜面222、複数個の第二透過表面228a及び複数個の第二反射斜面226が複数個のプリズム表面構造229を形成し、補償導波路205が第一光導波路200aの表面206に面しおり、かつ、陥凹領域230及び複数個のプリズム表面構造229に対し補い合う表面構造207を有する。詳しく言うと、補償導波路205の表面構造207が第一光導波路200aの表面206と補い合うものである。
【0023】
図2Bを参照すると、本実施例において、映像光束112の前記第一部分112a、第二部分112b及び第三部分112cが前記経路を辿って第一光導波路200aを離れた後、第二表面220に面した第二光導波路120の表面121における第二入光領域A2まで伝達され、第二入光領域A2から第二光導波路120に入る。例を挙げる、映像光束112が第一光導波路200aを離れた後、まず補償導波路205を透過し、そして第二入光領域A2を経由で第二光導波路120に入る。つまり、第二入光領域A2は第一光導波路200aの第二表面220からの映像光束112を受けるものである。
【0024】
本実施例において、第一傾斜側壁234と第二傾斜側壁236が鏡面対称であり、複数個の第一反射斜面222と複数個の第二反射斜面226が鏡面対称であり、かつ、複数個の第一透過表面224aと複数個の第二透過表面228aが鏡面対称である。本実施例において、第一傾斜側壁234、第二傾斜側壁236、複数個の第一反射斜面222及び複数個の第二反射斜面226が第一表面210に対する傾斜角が全て同じである。
【0025】
図3は本発明のさらに別の実施例のニアアイ光学システムの第一光導波路と補償導波路の断面概略図である。
図3を参照すると、本実施例の第一光導波路200bと補償導波路205bが
図2Aの第一光導波路200aと補償導波路205に類似するが、両者の主な相違点は以下の通りである。本実施例の第一光導波路200bにおいて、複数個の第一反射斜面222bと第一表面210との距離H1が第一方向D1に沿って逓増し、かつ、複数個の第二反射斜面226bと第一表面210との距離H2が第一方向D1に沿って逓減する。言い換えれば、第一反射斜面222bと第二反射斜面226bから第一表面210までの距離H1とH2はいずれも陥凹領域230に近づくほど大きくなり、陥凹領域230から離れるほど小さくなる。これにより、陥凹領域230から比較的に遠い第一反射斜面222bと第二反射斜面226bにおいても十分な光強度を有する映像光束112を受けることができ、映像画面の明るさの均一性を有効に維持できる。また、本実施例において、第一反射表面224bは隣接する二つの第一反射斜面222bの間に配置され、かつ第二反射表面228bは隣接する二つの第二反射斜面226bの間に配置される。前記第一反射斜面222bと第二反射斜面226bから第一表面210までの距離H1とH2は平均値計算によって得られた数値である。
【0026】
以上を纏めると、本発明の実施例のニアアイ光学システムにおいて、その第一光導波路は、平坦な底面及び対向する第一傾斜側壁と第二傾斜側壁を有する陥凹領域を用いて、映像光束分を三つの部分に分ける。これにより、対向する二つの方向において視角範囲を拡張させ、かつニアアイ光学システムに高い光効率及び高い映像均一性をもたらすことができる。以上の説明したのは本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を制限するものではない。本発明の請求の範囲及び発明内容を基に行われた簡単、等価の変更と修正はすべて本発明の範囲内に属する。また、本発明の任意の実施例または請求項は、必ずしも本発明のすべての目的または利点または特徴を達成するものとは限らない。さらに、要約書と発明の名称は特許検索に利用されるものであり、本発明の権利範囲を制限するものではない。また、明細書で言及される「第一」、「第二」等の用語は構成部の名称を示し、構成部の数の上限または下限を制限するものではない。