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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G02B6/255
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020569441
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049938
(87)【国際公開番号】W WO2020158240
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019014512
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】伊土 将平
(72)【発明者】
【氏名】上甲 和文
(72)【発明者】
【氏名】明尾 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】高柳 寛
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142469(JP,A)
【文献】実開昭60-023813(JP,U)
【文献】中国実用新案第207895106(CN,U)
【文献】特開昭60-046510(JP,A)
【文献】中国実用新案第203275701(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36- 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着接続された光ファイバ同士の接続箇所を補強するために、前記接続箇所に被せられた補強用スリーブを加熱して、前記補強用スリーブを収縮させる補強用スリーブ加熱装置であって、
所定の方向に沿って延び前記所定の方向に交差する一方向に開口し、前記補強用スリーブを配置可能な収容空間を形成する発熱体と、
前記収容空間の開口の少なくとも一部を覆う位置に配置される蓋と、を備え、
前記蓋は、前記収容空間内に前記補強用スリーブが配置された状態において、前記補強用スリーブを収容空間内に押し込む向きに前記補強用スリーブに当接する当接面を含み、
前記蓋は、前記押し込む向きにおける前記当接面の位置を可変に構成されており、
前記蓋は、
前記当接面を含む当接部材と、
前記当接部材を保持する保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記当接部材に対して前記押し込む向きに弾性力を作用させるバネと、を有し、
前記当接部材は、前記収容空間の長手方向に沿って延び、前記収容空間と反対側に開口された箱状を呈し、
前記当接面は、前記当接部材の底部に形成されており、
前記当接部材の前記開口側の端部にはフランジが設けられており、
前記保持部材は、カバー部と、側壁部とを有し、
前記側壁部の一方の開口端部は、前記カバー部の周縁部に接続されており、前記側壁部の他方の開口端部には、前記フランジの前記収容空間側への移動を規制する突起が設けられている、
補強用スリーブ加熱装置。
【請求項2】
前記蓋は、前記押し込む向きにおける前記当接部材の位置を段階的に切り替える切替機構を有する、
請求項1に記載の補強用スリーブ加熱装置。
【請求項3】
前記蓋は、樹脂によって形成されている、
請求項1または請求項2に記載の補強用スリーブ加熱装置。
【請求項4】
前記蓋は、中空に形成されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補強用スリーブ加熱装置
【請求項5】
前記光ファイバ同士を融着接続する融着接続装置と、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の補強用スリーブ加熱装置と、を備える、
融着接続機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機に関する。
本出願は、2019年1月30日の日本出願第2019-014512号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ファイバ補強部材の加熱処理装置が記載されている。この加熱処理装置は、光ファイバの融着接続部を補強するために、当該融着接続部に被せられたファイバ補強部材を加熱収縮する装置である。加熱処理装置は、ファイバ補強部材を収容する収容部を有し、加熱部をU字形状に湾曲された面状発熱体と、収納部を覆うカバーと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-257855号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、融着接続された光ファイバ同士の接続箇所を補強するために、接続箇所に被せられた補強用スリーブを加熱して、補強用スリーブを収縮させる補強用スリーブ加熱装置である。補強用スリーブ加熱装置は、所定の方向に沿って延び所定の方向に交差する一方向に開口し、補強用スリーブを配置可能な収容空間を形成する発熱体と、収容空間の開口の少なくとも一部を覆う位置に配置される蓋と、を備える。蓋は、収容空間内に補強用スリーブが配置された状態において、補強用スリーブを収容空間内に押し込む向きに補強用スリーブに当接する当接面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A図1Aは、光ファイバの接続箇所近傍に補強用スリーブを被せた状態の一例を示す概略斜視図である。
図1B図1Bは、図1AのIB-IB線に沿った断面図である。
図2図2は、融着接続機の外観を示す斜視図である。
図3図3は、融着接続機の外観を示す斜視図である。
図4図4は、図2の補強用スリーブ加熱装置を示す断面図である。
図5図5は、図4の一部を拡大して示す断面図である。
図6A図6Aは、図5の蓋の長手方向に沿った断面図である。
図6B図6Bは、図5の蓋の長手方向に沿った断面図である。
図7図7は、補強用スリーブ加熱装置の変形例を示す断面斜視図である。
図8図8は、図7のVIII―VIII線に沿った断面の一部を示す図である。
図9A図9Aは、図7の蓋の短手方向に沿った断面図である。
図9B図9Bは、図7の蓋の短手方向に沿った断面図である。
図10A図10Aは、図7の蓋の長手方向に沿った断面図である。
図10B図10Bは、図7の蓋の長手方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
【0007】
前述した特許文献1の加熱処理装置においては、ファイバ補強部材としての補強用スリーブと、面状発熱体の加熱部との接触領域において、補強用スリーブの加熱処理が行われる。したがって、例えば補強用スリーブの径が比較的小さい場合等、補強用スリーブと加熱部との接触領域が狭いほど、加熱処理の効率が低くなることが考えられる。その結果、補強用スリーブを収縮させるために多くの時間が費やされ、電力の浪費が大きくなる場合がある。
【0008】
本開示の一側面は、補強用スリーブを加熱する加熱処理の効率を向上させることができる補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機を提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機によれば、スリーブを加熱する加熱処理の効率を向上させることができる。
【0010】
[実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
本開示の一態様に係る補強用スリーブ加熱装置は、融着接続された光ファイバ同士の接続箇所を補強するために、接続箇所に被せられた補強用スリーブを加熱して、補強用スリーブを収縮させる補強用スリーブ加熱装置である。補強用スリーブ加熱装置は、所定の方向に沿って延び所定の方向に交差する一方向に開口し、補強用スリーブを配置可能な収容空間を形成する発熱体と、収容空間の開口の少なくとも一部を覆う位置に配置される蓋と、を備える。蓋は、収容空間内に補強用スリーブが配置された状態において、補強用スリーブを収容空間内に押し込む向きに補強用スリーブに当接する当接面を含む。
【0012】
この補強用スリーブ加熱装置においては、当接面が補強用スリーブを収容空間内に押し込む向きに補強用スリーブに当接するので、補強用スリーブと発熱体とが接触する接触領域の面積が拡張される。これにより、発熱体から補強用スリーブに伝わる熱量が増加し、補強用スリーブを加熱する加熱処理の効率を向上できる。発熱体の収容空間の内面のうち、補強用スリーブに接触しない非接触領域の面積が狭まるので、非接触領域から放熱される熱量が減少し、加熱処理の完了までに浪費される熱量を低減できる。以上により、補強用スリーブを加熱する加熱処理の効率を向上させることができる。
【0013】
ところで、融着接続された光ファイバ同士の接続箇所を補強するために、当該光ファイバの種類に応じて、互いにサイズの異なる複数種類の補強用スリーブが用いられることが考えられる。そのような場合、補強用スリーブ加熱装置は、互いにサイズの異なる複数種類の補強用スリーブのそれぞれに対して加熱効率を向上させることが望ましい。
【0014】
蓋は、押し込む向きにおける当接面の位置を可変に構成されていてもよい。この場合、収容空間の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブのそれぞれに応じて、当接面が当該補強用スリーブに当接するように、当接面の位置を調節することができる。したがって、収容空間の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブのそれぞれに対して加熱効率の向上を図ることができる。
【0015】
蓋は、当接面を含む当接部材と、当接部材を保持する保持部材と、保持部材に設けられ、当接部材に対して押し込む向きに弾性力を作用させるバネと、を有してもよい。この場合、収容空間の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブのそれぞれに応じて、当接面の位置を調節しやすい。よって、種類が多数に及ぶ場合であっても、各補強用スリーブに応じて接触面の面積の拡張を図ることができる。
【0016】
蓋は、当接面を含む当接部材と、押し込む向きにおける当接部材の位置を段階的に切り替える切替機構と、を有していてもよい。この場合、収容空間の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブのそれぞれに応じた当接面の位置の調節を容易に行うことができる。
【0017】
蓋は、押し込む向きにおける当接部材の位置を段階的に切り替える切替機構を有していてもよい。この場合、収容空間の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブのそれぞれに応じた当接面の位置の調節を容易に行うことができる。
【0018】
蓋は、樹脂によって形成されていてもよい。この場合、蓋が例えば金属製である場合等と比較して、蓋の断熱性能を高めることができるので、発熱体からの熱が蓋を通じて外部へ逃げることが抑制される。これにより、発熱体と補強用スリーブとの間の伝熱効率を向上させることができる。
【0019】
蓋は、中空に形成されていてもよい。この場合、空洞によって蓋の断熱性能が高まるので、発熱体からの熱が蓋を通じて外部へ逃げることが抑制される。これにより、発熱体と補強用スリーブとの間の伝熱効率を向上させることができる。
【0020】
本開示の別の一態様に係る融着接続機は、光ファイバ同士を融着接続する融着接続装置と、上記のいずれかの補強用スリーブ加熱装置と、を備える。この融着接続機は、上記のいずれかの補強用スリーブ加熱装置を備えるので、補強用スリーブと発熱体の内面とが接触する接触領域の面積が拡張される。その結果、補強用スリーブを加熱する加熱処理の効率を向上させることができる。
【0021】
[実施形態の詳細]
本開示の一態様に係る補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明においては、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0022】
まず、補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機が用いられる光ファイバについて説明する。図1Aは、光ファイバの接続箇所近傍に補強用スリーブを被せた状態の一例を示す概略斜視図である。図1Bは、図1AのIB-IB線に沿った断面図である。補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機は、単心の光ファイバ10の融着接続に用いられてもよいし、図1A及び図1Bに示されるように、多芯の光ファイバ10の融着接続に用いられてもよい。或いは、補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機は、光ファイバ10を有するドロップケーブル12(図4参照)の融着接続に用いられてもよい。
【0023】
光ファイバ10は、ガラス部10aと、ガラス部10aを覆う被覆部10bと、を備えている。光ファイバ10は、先端部において、被覆部10bが除去され、ガラス部10aが露出している。光ファイバ10は、ガラス部10aが露出している先端部同士が突き合わせられた端面10c同士において融着接続されている。
【0024】
融着接続された光ファイバ10同士の接続箇所には、接続箇所を補強するための補強用スリーブ11が被せられる。補強用スリーブ11は、熱収縮チューブ11aと、熱収縮チューブ11a内に配置された抗張力体11b及びインナーチューブ11cとで構成されている。抗張力体11bは、金属又はガラス繊維等によって形成されている。インナーチューブ11cは、熱溶融性樹脂で形成されている。補強用スリーブ11としては、サイズ(例えば直径)が互いに異なる複数種類のものが使用される。
【0025】
融着接続機は、光ファイバ10同士を融着接続するための装置である。図2及び図3は、融着接続機の外観を示す斜視図である。図2は風防カバーが閉じている状態の外観を示し、図3は風防カバーが開けられて融着接続機の内部構造が見える状態の外観を示す。図2及び図3に示される融着接続機1は、箱状の筐体2を備えている。この筐体2の上部には、光ファイバ10同士を融着するための融着接続装置3と、複数(例えば2つ)の補強用スリーブ加熱装置4とが設けられている。融着接続機1は、筐体2の内部に配置されたカメラ(図示せず)によって撮像された光ファイバ10同士の融着接続状況を表示するモニタ5を備えている。さらに、融着接続機1は、融着接続装置3への風の進入を防止するための風防カバー6を備えている。
【0026】
融着接続装置3は、一対の光ファイバホルダ3aを載置可能なホルダ載置部と、一対のファイバ位置決め部3bと、一対の放電電極3cとを有している。融着対象の光ファイバ10のそれぞれは光ファイバホルダ3aに保持固定され、当該光ファイバホルダ3aはそれぞれホルダ載置部に載置固定される。ファイバ位置決め部3bは、光ファイバホルダ3a同士の間に配置され、光ファイバホルダ3aのそれぞれに保持された光ファイバ10の先端部を位置決めする。放電電極3cは、ファイバ位置決め部3b同士の間に配置され、アーク放電によって光ファイバ10の先端同士を融着するための電極である。
【0027】
風防カバー6は、融着接続装置3を開閉自在に覆うように筐体2に連結されている。風防カバー6の側面6aのそれぞれには、融着接続装置3へ(すなわち光ファイバホルダ3aのそれぞれへ)光ファイバ10を導入するための導入口6bが形成されている。
【0028】
補強用スリーブ加熱装置4は、融着接続装置3において融着接続された光ファイバ10同士の接続箇所を補強するために、接続箇所に被せられた補強用スリーブ11を加熱して、補強用スリーブ11を収縮させる装置である。2つの補強用スリーブ加熱装置4は、例えば、融着接続装置3に隣接して並設されている。図4は、補強用スリーブ11が加熱されるときにおける図2の補強用スリーブ加熱装置4を示す断面図である。図5は、図4の一部を拡大して示す断面図である。図4及び図5に示されるように、補強用スリーブ加熱装置4は、発熱体41と、発熱体保持部42と、蓋43と、を備える。
【0029】
発熱体41は、補強用スリーブ11を配置可能な収容空間45を形成している。収容空間45は、所定の方向(例えば、一対の光ファイバホルダ3aの並ぶ方向)に沿って延び、所定の方向に交差する一方向(ここでは、上方)に開口している。発熱体41は、例えば、断面U字形状の放熱板41aと、当該放熱板41aの外面に貼り合わされた断面U字形状のフィルム型ヒータ41bと、を含む。放熱板41aは、例えばアルミ板である。放熱板41aの内面41cは、フィルム型ヒータ41bからの熱によって発熱する。収容空間45は、この内面41cによって形成されている。補強用スリーブ11は、収容空間45内に配置され、この内面41cと接触することによって加熱される。放熱板41aの断面形状及びフィルム型ヒータ41bの断面形状は、例えばV字形状等であってもよい。
【0030】
発熱体保持部42は、筐体2上に発熱体41を保持している。発熱体保持部42は、台座部42aと、一対の固定部42bと、を有する。台座部42aは、例えば樹脂によって形成される。台座部42aは、所定の方向を長手方向とする直方体形状を呈している。台座部42aは、筐体2と一体化されていてもよい。台座部42aには、収容空間45の延在方向に沿って延び、当該台座部42aの上面に開口された保持溝が形成されている。この保持溝には、発熱体41の下部が配置されている。固定部42bは、例えば板金部材によって形成されている。一対の固定部42bは、台座部42aの保持溝を挟んで台座部42aの上面から上方にそれぞれ延びている。一対の固定部42bの各先端部は、発熱体41の上端部を台座部42aに向けて押さえ込むように、台座部42aに向けて湾曲している。
【0031】
発熱体保持部42の所定の方向の両端には、ファイバ配置部44がそれぞれ設けられている。ファイバ配置部44には、光ファイバ10を配置可能な配置溝44aが形成されている。各配置溝44aは、収容空間45の延長線上に位置している。補強用スリーブ11が加熱されるとき、各配置溝44aには、補強用スリーブ11の両端部から露出した光ファイバ10が配置される。
【0032】
蓋43は、収容空間45の開口を開閉可能に構成されている。蓋43は、ファイバ配置部44の端部に回動軸44bを介して回動可能に連結される。蓋43は、回動軸44bまわりに回動することにより、収容空間45の開口を開閉する。蓋43は、閉状態において、収容空間45の開口を覆う位置に配置される。蓋43は、収容空間45の延在方向を長手方向とする長尺状を呈している。蓋43は、閉状態において、収容空間45の開口の少なくとも一部を覆う大きさを有していればよい。しかしながら、本実施形態では、蓋43が収容空間45の開口の全体を覆うとともに配置溝44aの開口まで覆う大きさを有する例を示している。補強用スリーブ11が加熱されるとき、収容空間45の開口と配置溝44aの開口とは、蓋43によって覆われた状態(すなわち、閉状態)となっている。
【0033】
図4において、一方の補強用スリーブ加熱装置4の収容空間45内には、多芯(ここでは、12芯)の光ファイバ10同士の接続箇所に被せられた補強用スリーブ11(以下では、「補強用スリーブ11A」という場合がある。)が配置されている。他方の補強用スリーブ加熱装置4の収容空間45内には、光ファイバ10を有するドロップケーブル12の接続箇所に被せられた補強用スリーブ11(以下では、「補強用スリーブ11B」という場合がある。)が配置されている。補強用スリーブ11Bの収容空間45の深さ方向におけるサイズは、補強用スリーブ11Aの当該方向におけるサイズよりも大きい。
【0034】
蓋43は、図4及び図5に示される状態(すなわち、閉状態)において、収容空間45に臨む内面43aと、内面43aの反対側の面であって外部空間に臨む外面43bと、を含む。収容空間45内に補強用スリーブ11が配置され、収容空間45の開口が蓋43によって覆われた状態において、内面43aの一部は補強用スリーブ11に当接する。すなわち、蓋43は、補強用スリーブ11が加熱されるときに補強用スリーブ11に当接する当接面43cを含む。当接面43cは、収容空間45の開口側から補強用スリーブ11に当接する。言い換えると、当接面43cは、補強用スリーブ11を収容空間45内に押し込む向きに補強用スリーブ11に当接する。蓋43は、当該押し込む向きにおける当接面43cの位置を可変に構成されている。蓋43は、当接面43cと外面43bとを互いに接近又は離間させることにより、当該押し込む向きにおける当接面43cの外面43bに対する相対位置を変更させる。
【0035】
図6A及び図6Bは、図5の蓋43の長手方向に沿った断面図である。図6Aは、外面43bと当接面43cとを最も離間させた状態の蓋43を示し、図6Bは、外面43bと当接面43cとを最も接近させた状態の蓋43を示している。図4図5図6A及び図6Bに示されるように、蓋43は、上記当接面43cを含む当接部材46と、当接部材46を保持する保持部材47と、複数(例えば2つ)のバネ48と、を有する。当接部材46及び保持部材47は、例えば樹脂によって形成されている。当接部材46と保持部材47との間には、当接部材46の一端付近から他端付近に亘って空洞が形成されている。すなわち、蓋43は中空に形成されている。収容空間45内における補強用スリーブ11の配置状況を視認可能とする観点から、当接部材46及び保持部材47は、可視光に対して透明であってもよい。
【0036】
当接部材46は、収容空間45の長手方向に沿って延び、収容空間45と反対側に開口された箱状を呈している。当接面43cは、当接部材46の底部に形成されている。底部における当接面43cと反対側の裏面には、2つのバネ48の一端部をそれぞれ固定保持する2つのバネホルダ46aが設けられている。当接部材46の開口側の端部には、フランジ46bが設けられている。フランジ46bは、例えば当接部材46の開口側の端部の全周に亘って設けられている。
【0037】
保持部材47は、外面43bを含むカバー部47aと、側壁部47bと、を有する。カバー部47aは、例えば、板状を呈する。カバー部47aの主面の一つは、外面43bによって構成されている。カバー部47aにおける外面43bと反対側の裏面には、2つのバネ48の他端部をそれぞれ固定保持する2つのバネホルダ47cが設けられている。カバー部47aは、バネ48を介して当接部材46を保持している。
【0038】
バネ48は、例えば圧縮コイルばねである。バネ48は、蓋43の閉状態において、当接部材46に対して、収容空間45内に押し込む向き(すなわち、当接面43cを外面43bから離間させる向き)に弾性力を作用させる。例えば、補強用スリーブ11A(収容空間45の深さ方向におけるサイズが比較的小さい補強用スリーブ11)が収容空間45内に配置された場合、補強用スリーブ11Aと当接面43cとの当接によってバネ48が縮んで当接面43cの位置が調節される(図4及び図5参照)。これにより、当接面43cによって補強用スリーブ11Aとの当接状態が十分に確保される。一方、補強用スリーブ11B(収容空間45の深さ方向におけるサイズが比較的大きい補強用スリーブ11)が収容空間45内に配置された場合、補強用スリーブ11Bと当接面43cとの当接によってバネ48が縮んで当接面43cの位置が調節される(図4参照)。これにより、当接面43cによって補強用スリーブ11Bを過度に押圧することが抑制される。
【0039】
側壁部47bは、カバー部47aと当接部材46との間に配置されている。側壁部47bは、例えば、枠状を呈する。側壁部47bの一方の開口端部は、カバー部47aの周縁部に接続されている。側壁部47bの他方の開口端部には、フランジ46bの収容空間45側への移動を規制する突起47dが設けられている。突起47dは、例えば側壁部47bの他方の開口端部の全周に亘って設けられている。図6Aに示されるように、当接部材46に対して、当接面43cを外面43bから離間させる向きにバネ48の弾性力が作用すると、フランジ46bが突起47dに引っ掛かる。これにより、当接部材46と保持部材47との分離が抑制される。側壁部47bには、連結部47eが設けられている。連結部47eは、回動軸44bを介してファイバ配置部44の端部に連結される部分である。側壁部47b及び連結部47eは、互いに異なる部品によって形成され固定部材47fによって固定されていてもよいし、一部品によって形成されていてもよい。
【0040】
以上説明した補強用スリーブ加熱装置4及び融着接続機1の作用効果について説明する。本実施形態に係る補強用スリーブ加熱装置4においては、当接面43cが補強用スリーブ11を収容空間45内に押し込む向きに補強用スリーブ11に当接するので、補強用スリーブ11と発熱体41の内面41cとが接触する接触領域の面積が拡張される。これにより、発熱体41から補強用スリーブ11に伝わる熱量が増加し、補強用スリーブ11を加熱する加熱処理の効率を向上できる。発熱体41の内面41cのうち、補強用スリーブ11に接触しない非接触領域の面積が狭まるので、非接触領域から放熱される熱量が減少し、加熱処理の完了までに浪費される熱量を低減できる。以上により、補強用スリーブ11を加熱する加熱処理の効率を向上させることができる。
【0041】
ところで、融着接続された光ファイバ10同士の接続箇所を補強するために、当該光ファイバ10の種類等に応じて、互いにサイズの異なる複数種類の補強用スリーブ11が用いられることが考えられる。そのような場合であっても、補強用スリーブ加熱装置4は、複数種類の補強用スリーブ11のそれぞれに対して加熱効率を向上させることが望ましい。
【0042】
蓋43は、上記の押し込む向きにおける当接面43cの位置を可変に構成されていてもよい。この場合、収容空間45の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブ11のそれぞれに応じて、当接面43cが当該補強用スリーブ11に当接するように、当接面43cの位置を調節することができる。したがって、収容空間45の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブ11のそれぞれに対して加熱効率の向上を図ることができる。
【0043】
蓋43は、当接面43cを含む当接部材46と、当接部材46を保持する保持部材47と、保持部材47に設けられ、当接部材46に対して押し込む向きに弾性力を作用させるバネ48と、を有してもよい。蓋43は、弾性力によって当接面43cの位置を調節してもよい。この場合、収容空間45の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブ11のそれぞれに応じて、当接面43cの位置を調節しやすい。よって、補強用スリーブ11の種類が多数に及ぶ場合であっても、各補強用スリーブ11に応じて当接面43cの面積の拡張を図ることができる。
【0044】
蓋43は、樹脂によって形成されていてもよい。この場合、蓋43が例えば金属製である場合等と比較して、蓋43の断熱性能を高めることができるので、発熱体41からの熱が蓋43を通じて外部へ逃げることが抑制される。これにより、発熱体41と補強用スリーブ11との間の伝熱効率を向上させることができる。
【0045】
蓋43は、中空に形成されていてもよい。この場合、空洞によって蓋43の断熱性能が高まるので、発熱体41からの熱が蓋43を通じて外部へ逃げることが抑制される。これにより、発熱体41と補強用スリーブ11との間の伝熱効率を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係る融着接続機1は、上記の補強用スリーブ加熱装置4を備える。よって、補強用スリーブ11と発熱体41の内面41cとが接触する接触領域の面積が拡張され、補強用スリーブ11を加熱する加熱処理の効率を向上させることができる。
【0047】
本発明に係る補強用スリーブ加熱装置及び融着接続機は、上述した実施形態に限られるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、融着接続機1は、1つの補強用スリーブ加熱装置4のみを備えていてもよく、融着接続機1が備える補強用スリーブ加熱装置4の数は適宜変更可能である。
【0048】
蓋43は、バネ48を有していなくてもよい。この場合、蓋43は、当接部材46の重量によって、押し込む向きにおける当接面43cの位置を可変に構成されていてもよい。或いは、蓋43は、バネ48の弾性力以外の作用によって、当接面43cの位置を可変に構成されていてもよい。
【0049】
図7は、補強用スリーブ加熱装置の変形例を示す断面斜視図である。図8は、図7のVIII―VIII線に沿った断面の一部を示す図である。融着接続機1は、補強用スリーブ加熱装置4に代えて、図7及び図8に示される補強用スリーブ加熱装置4Aを備えていてもよい。
【0050】
補強用スリーブ加熱装置4Aは、蓋43に代えて、蓋43とは異なる蓋43Aを備える点において前述した補強用スリーブ加熱装置4と相違する。補強用スリーブ加熱装置4Aは、その他の点において補強用スリーブ加熱装置4と同様に構成されていてもよい。以下、主に相違点について説明する。
【0051】
蓋43Aは、バネ48を有していない。蓋43Aは、バネ48の弾性力以外の作用によって、当接面43cの位置を可変に構成されている点で、蓋43Aと相違している。図9A及び図9Bは、図7の蓋43Aの短手方向に沿った断面図である。図10A及び図10Bは、図7の蓋43Aの長手方向に沿った断面図である。図7図10Bに示されるように、蓋43Aは、当接面43cを含む当接部材46Aと、当接部材46Aを保持する保持部材47Aと、切替機構50と、を有している。切替機構50は、当接面43cを収容空間45内に押し込む向き(すなわち、当接面43cを外面43bから離間させる向き)における当接部材46Aの位置を段階的に切り替える(図9A及び図9Bを参照)。切替機構50は、例えば、保持部材47Aにおける当接部材46Aを保持する位置を切り替える。切替機構50は、当接部材46Aに設けられた第1嵌合部51と、保持部材47に設けられた第2嵌合部52と、保持位置の切り替えを操作する操作部53と、によって構成されている。
【0052】
当接部材46Aには、図5のバネホルダ46aが設けられていない。当接部材46Aには、第1嵌合部51及び操作部53が設けられている。当接部材46Aは、その他の点において当接部材46と同様に構成されていてもよい。保持部材47Aには、図5のバネホルダ47cが設けられていない。保持部材47Aには、第2嵌合部52が設けられている。保持部材47Aは、その他の点において保持部材47と同様に構成されていてもよい。
【0053】
第1嵌合部51及び第2嵌合部52は、互いに嵌合可能な形状を呈し、互いに嵌合可能な位置にそれぞれ設けられている。第1嵌合部51及び第2嵌合部52は、互いに嵌合した嵌合状態とは異なる位置において互いに当接した当接状態を維持可能な形状を呈している。操作部53は、嵌合状態と当接状態とを切り替えるために、第1嵌合部51の位置を変更させる。切替機構50は、嵌合状態において、外面43bと当接面43cとを最も離間させ(図10B参照)、当接状態において、外面43bと当接面43cとを接近させる(図10A参照)。このように、切替機構50は、外面43bに対する当接部材46Aの相対位置を段階的に切り替える。
【0054】
例えば、第1嵌合部51及び第2嵌合部52は、平坦な複数の頂面と平坦な複数の底面とを有する凹凸形状を呈している。複数の頂面及び複数の底面は、蓋43Aの長手方向に沿って交互に配列されている。操作部53は、例えばレバーである。操作部53は、例えば、蓋43Aの長手方向に沿って押し込まれたり引き出されたりすることにより、第1嵌合部51の位置を移動させる。
【0055】
嵌合状態においては、図10Bに示されるように、第1嵌合部51の頂面と第2嵌合部52の底面とが互いに当接し、第1嵌合部51の底面と第2嵌合部52の頂面とが互いに当接する。これにより、図9Bに示されるように、当接面43cが収容空間45の開口に近い位置に配置される。一方、当接状態においては、図10Aに示されるように、第1嵌合部51及び第2嵌合部52の頂面同士が互いに当接し、第1嵌合部51及び第2嵌合部52の底面同士は互いに離間する。これにより、図9Aに示されるように、当接面43cの位置が、収容空間45内の開口から離れた位置に配置される。このように、切替機構50によれば、嵌合状態及び当接状態の2段階において、当接面43cの位置が切り替わる。
【0056】
切替機構50は、嵌合状態とは異なる複数の位置において互いに当接した複数の当接状態を維持可能に構成されることにより、3段階以上に当接面43cの位置を切り替えてもよい。更には、蓋は、これら切替機構50と併せて、弾性力の作用により当接面43cの位置を可変にする機構、又は弾性力以外の作用による機構が組み合わされて構成されていてもよい。
【0057】
この補強用スリーブ加熱装置4Aによれば、収容空間45の深さ方向におけるサイズが互いに異なる複数種類の補強用スリーブ11のそれぞれに応じた当接面43cの位置の調節を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1…融着接続機、2…筐体、3…融着接続装置、3a…光ファイバホルダ、3b…ファイバ位置決め部、3c…放電電極、4,4A…補強用スリーブ加熱装置、5…モニタ、6…風防カバー、6a…側面、6b…導入口、10…光ファイバ、10a…ガラス部、10b…被覆部、10c…端面、11,11A,11B…補強用スリーブ、11a…熱収縮チューブ、11b…抗張力体、11c…インナーチューブ、12…ドロップケーブル、41…発熱体、41a…放熱板、41b…フィルム型ヒータ、41c…内面、42…発熱体保持部、42a…台座部、42b…固定部、43,43A…蓋、43a…内面、43b…外面、43c…当接面、44…ファイバ配置部、44a…配置溝、44b…回動軸、45…収容空間、46,46A…当接部材、46a…バネホルダ、46b…フランジ、47,47A…保持部材、47a…カバー部、47b…側壁部、47c…バネホルダ、47d…突起、47e…連結部、48…バネ、50…切替機構、51…第1嵌合部、52…第2嵌合部、53…操作部。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B