(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】アミノ酸ベースの栄養素の使用及びそれを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20241008BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/54 20060101ALI20241008BHJP
A61K 33/08 20060101ALI20241008BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20241008BHJP
A61K 33/14 20060101ALI20241008BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241008BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/185
A61K31/352
A61K31/401
A61K31/54
A61K33/08
A61K33/10
A61K33/14
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021536139
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2019103659
(87)【国際公開番号】W WO2020043185
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】201811009698.8
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521083980
【氏名又は名称】チェンドゥ クァチャンアオプー メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521083991
【氏名又は名称】クァチャン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ファンリン・ゾウ
(72)【発明者】
【氏名】リーチャン・ゾウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンシャ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】イーシー・ワン
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0129070(US,A1)
【文献】特表2002-534369(JP,A)
【文献】米国特許第05690967(US,A)
【文献】特表2002-515401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍内注射による固形腫瘍の予防又は治療用の医薬組成物であって、アミノ酸ベースの栄養素と、
前記固形腫瘍の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤と、薬学的に許容される液体担体とを含み、
前記医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、
10~25%であり、
前記アミノ酸ベースの栄養素が、
アルギニン、グリシン、リジン、
グルタミン酸塩酸塩、システイン、スレオニン、プロリン、ロイシン、アラニン、セリン、グルタミン酸、システイン塩酸塩からなる群から選択される1つ以上であ
り、
前記相乗剤が、アルカリ化剤及び生体染料から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、
15~25%である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸ベースの栄養素が、リジンおよびアルギニンから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記生体染料が、メチレンブルー、パテントブルー、イソサルファーブルー、及びニューメチレンブルーから選択される1以上であり、
前記アルカリ化剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及び重炭酸ナトリウムから選択される1以上である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
組合せ(1)~(5)のいずれかを含む、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
(1)アルギニンとベンガルレッド;
(2)アルギニンとメチレンブルー;
(3)アルギニンとNaOH;
(4)アルギニン、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウム;
(5)アルギニン、KClおよびNaOH;
【請求項6】
前記医薬組成物は、アルギニン、水酸化ナトリウム及び重炭酸ナトリウムを含み、アルギニンの濃度(w/v)は15~25%であり、水酸化ナトリウムの濃度(w/v)は2~5%であり、重炭酸ナトリウムの濃度(w/v)は3~10%である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、アルギニン、炭酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムを含み、アルギニンの濃度(w/v)は15~25%であり、炭酸ナトリウムの濃度(w/v)は3~10%であり、重炭酸ナトリウムの濃度(w/v)は3~10%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記相乗剤が生体色素を含み、前記医薬組成物において、前記生体色素の濃度(w/v)は、0.35~2%である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アルカリ化剤が強塩基及び弱塩基の少なくともいずれかを含み、
前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択され、前記医薬組成物中の前記強塩基の濃度(w/v)は0.5~7.5%であり、
前記弱塩基が、リン酸二水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムから選択され、前記医薬組成物中の前記弱塩基の濃度(w/v)は2~35%である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
腫瘍内注射による固形腫瘍を治療するためのデバイスであって、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物を含むことを特徴とするデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物の製造における高濃度のアミノ酸ベースの栄養素の使用、前記アミノ酸ベースの栄養素及びその相乗剤を含む局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物、及び前記組成物を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの研究によって支持されているように、固形腫瘍は、局所病変疾患、特に難治性局所病変疾患の研究モデルとしてしばしば使用される。固形腫瘍は、腫瘍の症状を伴う腫瘍疾患である。腫瘍は、腫瘍細胞を含む特徴的な病理組織である。膵臓癌の腫瘍を例にすると、膵臓癌細胞は、その体積の約30%しか占めていない。腫瘍細胞に加えて、腫瘍組織には、他の各種細胞、各種細胞間物質、各種管などの、他の多くの成分(腫瘍細胞の微小環境とも呼ばれる)が存在することが多く見られる。
【0003】
抗腫瘍薬の開発における主要な問題点の1つは、特異性である。細胞毒性剤は、腫瘍細胞抑制実験の肯定的な結果に基づいて、全身投与を通じて腫瘍細胞を標的にすることができる。しかし、これらの薬剤は、正常細胞と標的細胞を十分に認識できないので、全身的効果(腫瘍内外の腫瘍細胞を阻害する効果)をもたらすものの、全身毒性という大きなリスクを誘発する可能性があり、それらの有効用量と安全性限界との差が十分には大きくない。更に、薬剤分子は腫瘍組織に効果的に浸透して、その内部の腫瘍細胞に作用する必要があり、これは障壁がないイベントではない。血液供給が不十分な一部の腫瘍(膵臓癌など)では、患者に利益をもたらす可能性は更に低くなる。
【0004】
局所投与は、薬剤の物理的標的化という利点を有する。したがって、細胞毒性剤の局所投与は、薬剤の腫瘍内濃度を上昇させ、それによってそれらの有効性を改善することができると、以前は信じられていた。しかし、細胞毒性剤の局所投与は、有効性に有意な改善を示していない。腫瘍内濃度を単に上昇させるだけでは、腫瘍内組織の癌細胞を標的とする薬剤の効率を大きく改善することはできないと思われる。遅延放出形態を採用することに加えて、細胞毒性剤は、依然として、臨床現場においては全身投与されている。化学的アブレーション剤(高純度エタノール、高濃度の酸及び塩基)は、細胞破壊ではなく組織破壊を特徴とする。細胞毒性剤と比較して、それらは癌細胞を標的とする全身的な治療効果を殆ど有しないが、より高い局所的治療効果を示すことが多い。しかし、それらは通常、他の組織と標的組織とを十分には認識できない強力な破壊剤である。これにより、介入量(例えば、0.2ml/kg以下の酸塩基投与量)及び実際に薬剤を適用できる介入部位が極めて制限される(例えば、腫瘍が位置する器官が制限される、腫瘍のエッジアブレーションが制限される、など)。したがって、化学的アブレーション剤は、過去10年間で、悪性固形腫瘍の臨床治療から徐々に使用されなくなっている。事実、臨床現場で高い局所安全性と高い局所有効性の両方を備えた局所薬は殆ど存在しない。
【0005】
したがって、先行技術では充足することができない様々な臨床的ニーズを満たすために、固形腫瘍などの局所病変疾患を治療するための新薬、特に局所薬を開発する必要性が依然として存在する。事実、他の局所病変疾患、特に難治性局所病変疾患の予防及び治療に対しても喫緊に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、局所病変疾患、特に難治性局所病変疾患を予防及び治療するための局所薬を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、局所病変を物理的に標的とするが、より高い特異性を有する局所薬を提供することである。
【0007】
本開示の態様によれば、局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物の製造における局所有効成分としての、高濃度のアミノ酸ベースの栄養素の使用を提供する。
【0008】
一実施形態によれば、局所医薬組成物中のアミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である。局所医薬組成物は、更に、局所病変疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤、及び薬学的に許容される液体担体を含む。
【0009】
本開示の別の態様によれば、アミノ酸ベースの栄養素を含む医薬組成物を、それを必要とする個体に局所投与することを含み、局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である局所病変疾患を予防及び治療するための方法を提供する。
【0010】
一実施形態によれば、局所医薬組成物は、更に、局所病変疾患の治療においてアミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤、及び薬学的に許容される液体担体を含んでもよい。
【0011】
本開示の別の態様によれば、アミノ酸ベースの栄養素、局所病変疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤、及び薬学的に許容される液体担体を含み、局所医薬組成物中のアミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物を提供する。
【0012】
本開示の更に別の態様によれば、本開示に係る医薬組成物を、それを必要とする個体に局所投与することを含む、局所病変疾患を予防及び治療する方法を提供する。
【0013】
本開示に係る、アミノ酸ベースの栄養素と、その局所活性相乗薬としての従来の非有効化合物とを含む組成物は、単一の対応する成分を含む薬剤と比較して、以下の利点を有する。即ち、局所病変疾患に対する相乗効果を提供して有効性を向上させる一方で、非特異的な組織破壊に対する拮抗作用を提供して安全性を向上させる。
【0014】
本発明に係る実施形態は、局所病変疾患の治療のための先行技術と比較して以下の利点を有する。即ち、先行技術の細胞毒性剤と比較して、殆ど無毒の全身安全性と局所病変疾患に対する有意に高い有効性を示す;分子標的薬と比較して、適応症のスクリーニングが厳格でなく、急速に成長する腫瘍、大きな腫瘍、及び血液供給に乏しい腫瘍に対して大きな可能性を有する;先行技術の化学的アブレーション剤と比較して、より高い特異性を示す、即ち、局所病変疾患に対して有効性を示す一方で、非病変組織に対しては有意に低い局所刺激を示し、その結果、より広い介入適応範囲とより多い適用量を有することができる。本発明の使用及び組成物はまた、先行技術の細胞毒性剤及び既存の分子標的薬が遭遇する薬剤耐性の問題に起因する悪影響を受けない。更に、前記使用及び組成物は、調製が簡単で低コストであり、高額な費用を支払う余裕がない一般の人々に安全且つ効果的な治療を提供するのに特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発明者らは、特定の濃度閾値(例えば、≧5%)に達すると、アミノ酸ベースの栄養素は依然として全身性有効成分として使用できないが、局所病変疾患を治療するための局所有効成分として使用できることを見出した。本発明の発明者らは、更に、局所有効成分としての高濃度のアミノ酸ベースの栄養素と、特定の好ましい物質(相乗剤)とを含む組成物が、特に、局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物中の高濃度のアミノ酸ベースの栄養素の濃度が以下に記載の比を有する場合に、局所病変疾患の治療において相乗効果を有することを見出した。本発明の文脈において、本明細書で使用される「局所有効成分」という用語は、局所効果(通常、局所組織に対する破壊効果)を提供する局所薬剤中の有効成分を意味する。本明細書で使用される「全身性有効成分」という用語は、血液を介して移動することによって標的領域に到達し、効果(通常、局所組織に対する破壊効果)をもたらす薬剤(例えば、静脈内薬剤、経口薬剤)の有効成分を意味する。
【0016】
本発明の文脈において、本明細書で使用される「局所作用」又は「局所活性」という用語は、薬理学的作用又は薬理学的活性が、薬剤を運搬する血液ではなく、主に薬剤自体によって標的領域で発揮されることを意味する。「局所薬(組成物)」という用語は、主に局所作用によって薬効をもたらす治療薬(組成物)を意味する。本明細書で使用される「標的領域」という用語は、隣接領域、界面、局所病変の内部(好ましくは内側部分)などの投与の標的部位を意味する。
【0017】
本発明の文脈において、医薬組成物は、局所的な相乗的組成物である。本発明の文脈において、医薬組成物は、同一溶液中において局所的に相乗的である。
【0018】
本発明の文脈において、「局所的相乗効果」という用語は、複数の薬剤成分を一緒に局所的に共投与することによって達成される局所的効果による薬剤の相乗効果を意味する。「相乗効果」という用語は、薬剤成分(アミノ酸ベースの栄養素及びそれらの局所相乗剤など)の併用により発揮され、各成分を別々に使用す場合よりも有利であり、例えば、相乗効果と相乗的安全性を含む、治療に対する薬効を意味する。「相乗効果」という用語は、有効成分のいずれかを単独で使用した場合よりも高い、有効成分の併用で示される望ましい効果、及び/又は成分のいずれかを単独で使用した場合には見られない、併用における望ましい効果(例えば、腫瘍抑制率)を意味する。「相乗的安全性」という用語は、有効成分のいずれかを単独で使用した場合よりも高い、有効成分の併用で示される望ましい安全性(例えば、刺激、周囲の正常組織への損傷)を意味する。併用効果が、単剤単独使用時の最大効果以下であっても、薬効が効果的であり、併用安全性は、単剤が最大の薬効(例えば、副作用に対する拮抗作用)を達成するときの単独使用時安全性よりも有意に高く、併用により、相乗効果ももたらされる。「局所相乗剤」(本願ではしばしば相乗剤と略す)という用語は、特定の薬剤(例えば、アミノ酸ベースの栄養素)と組み合わせて相乗効果を発揮して局所作用をもたらすことができる成分(例えば、アミノ酸ベースの栄養素以外の有機栄養素、酸味料、アルカリ化剤、従来の非有効芳香族化合物)を意味する。一般に、局所相乗剤と特定の薬剤の全身共投与は、相乗効果を生じない、又はもたらされる相乗効果が局所作用によってもたらされる相乗効果ではない。
【0019】
したがって、本発明の一態様によれば、局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物の製造における局所有効成分としてのアミノ酸ベースの栄養素の使用を提供し、前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%であり、前記局所医薬組成物が、更に、前記局所病変疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤と、薬学的に許容される液体担体とを含む。
【0020】
本開示の別の態様によれば、≧2.5%の濃度のアミノ酸ベースの栄養素、局所病変疾患の治療において前記濃度で含まれる前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤、及び薬学的に許容される液体担体を含み、局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物を提供する。
【0021】
本開示の別の態様によれば、アミノ酸ベースの栄養素を含む局所医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする個体に局所投与することを含み、前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%であり、前記局所医薬組成物が、更に、前記局所病理疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤と、薬学的に許容される液体担体とを含む。
【0022】
実施形態によれば、局所医薬組成物中のアミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である。
【0023】
本発明の文脈において、「治療有効量」という用語は、疾患(腫瘍など)を治療し、有効な効果(疾患の症状の軽減又は/及び緩和など)を得るために使用される薬剤の量を意味する。
【0024】
本発明の文脈において、特段の断りがない限り、「濃度」という用語は、局所医薬組成物中の特定の成分の重量/体積パーセント濃度%(w/v)を意味する。「局所投与濃度」という用語は、薬剤が局所投与されるときの特定の成分の濃度を意味し、薬剤が標的領域に接触する部分(例えば、注射針穴又は灌流チューブの出口)における特定の成分の濃度であることができる。
【0025】
本開示において、「アミノ酸ベースの栄養素」という用語は、栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸ベースの化合物を意味し、好ましくは、栄養及びヘルスケア効果を有する、アミノ酸、アミノ酸ポリマー、及びアミノ酸誘導体から選択され、より好ましくは、中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はガイドラインに含まれるアミノ酸ベースの栄養素、及び栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸ベースのアジュバントから選択される。本発明の文脈において、使用される「栄養及びヘルスケア効果」という用語は、以下の生物学的作用のうちの1以上によってもたらされるインビボ効果を意味する。即ち、エネルギーの供給、生物学的に活性な物質(タンパク質など)の合成への関与、部分的な代謝への関与、動物の腸の微小生態学的バランスの維持、及び生物の健康に有益な他の生理学的調節への関与(タンパク質合成の調節、免疫応答の調節など)である。
【0026】
本発明の文脈において、アミノ酸ベースの栄養素としてのアミノ酸、アミノ酸ポリマー、及びアミノ酸誘導体は、好ましくは、タンパク質アミノ酸及び非タンパク質アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸、又はタンパク質アミノ酸及び非タンパク質アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸を含むアミノ酸ポリマー、タンパク質アミノ酸及び非タンパク質アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸の誘導体、又は、タンパク質アミノ酸及び非タンパク質アミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーの誘導体である。
【0027】
本発明の文脈において、「タンパク質アミノ酸」という用語は、タンパク質を構成する主要なアミノ酸を意味し、「非タンパク質アミノ酸」という用語は、タンパク質アミノ酸以外のアミノ酸であり、栄養及びヘルスケア機能成分として、栄養ヘルスケア製品、従来の食事、及び機能性食事(ヘルスケア食事など)にも使用することができるアミノ酸を意味する。
【0028】
具体的には、本開示において、タンパク質アミノ酸は、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリンなど)、極性中性アミノ酸(トリプトファン、チロシン、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニンなど)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、ヒスチジンなど)、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など)からなる群から選択されるアミノ酸を含む。グリシンを除く前記アミノ酸はいずれも、L型α-アミノ酸である。非タンパク質アミノ酸には、以下のアミノ酸を含むことができる。即ち、β-アラニン、タウリン、γ-アミノ酪酸(GABA)、茶ポリフェノール(テアニン)、カボチャ種子アミノ酸(3-アミノ-3-カルボキシプリドフィン酸)、グルタミン、シトルリン、オルニチンなどである。
【0029】
アミノ酸ポリマーは、前記したアミノ酸を含むオリゴペプチド及びポリペプチドから選択することができる。
【0030】
本開示において、本明細書で使用される「オリゴペプチド」という用語は、ペプチド結合によって結合された2~10個の同一又は異なるアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって結合された11~100個の同一又は異なるアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。オリゴペプチド又はポリペプチドを構成するアミノ酸はいすれも、前記アミノ酸の1以上であることができる、又は他のアミノ酸を更に含むことができる。一実施形態では、オリゴペプチドは、グリシル-L-チロシン、グリシルアラニン、グリシルグリシン、リジン-グリシンジペプチド、N-(2)-L-アラニル-L-グルタミン、カルノシン(β-アラニンヒスチジン共重合体)、グルタチオン、コラーゲンオリゴペプチド、カゼイン加水分解ペプチド、大豆オリゴペプチド、オリゴアルギニン、オリゴグリシン、オリゴリジンからなる群から選択される1以上であることができる。一実施形態では、ポリペプチドは、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、及びポリリジンからなる群から選択される1以上であることができる。
【0031】
アミノ酸誘導体は、例えば、前記アミノ酸を含むアミノ酸塩から選択することができる。本発明の文脈において、本明細書で使用される「アミノ酸塩」という用語は、前記アミノ酸と酸又は塩基とによって形成される塩であり、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、鉄塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩のような塩基と形成される塩、及び酸と形成される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸塩水素塩、リン酸塩二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、アミノ酸塩など、より具体的には、例えば、塩酸リジン、塩酸ヒスチジン、塩酸グルタミン酸、塩酸システイン、塩酸アルギニン、硫酸グリシン、硫酸鉄グリシン、塩酸リジン、アスパラギン酸塩酸塩などを意味する。
【0032】
本開示において、アミノ酸ベースの栄養素は、栄養及びヘルスケア効果を有する以下のアミノ酸化合物の1以上を含む:アミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチド、及びポリペプチド。本発明の医薬組成物において、アミノ酸ベースの栄養素は、1以上、例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のアミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチド、及びポリペプチドであることができる。
【0033】
本開示において、アミノ酸ベースの栄養素としてのアミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチド、及びポリペプチドは、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、セリン、システイン、メチオニン、スレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、β-アラニン、タウリン、γ-アミノ酪酸(GABA)、テアニン、シトルリン、及びオルニチンからなる群から選択されるアミノ酸、又はそれらの塩、前記アミノ酸を含む又はからなるオリゴペプチド及びポリペプチドであり、より好ましくは、アルギニン、リジン、グリシン、システイン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸、又はそれらの塩、前アミノ酸を含む又はからなるオリゴペプチド及びポリペプチドである。
【0034】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、アルギニン、アルギネート、又はアルギニンを含むオリゴペプチド若しくはポリペプチドから選択される。
【0035】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、リジン、リジネート(lysinate)、又はリジンを含むオリゴペプチド若しくはポリペプチドから選択される。
【0036】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、グリシン、グリシネート、又はグリシンを含むオリゴペプチド若しくはポリペプチドから選択される。
【0037】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、グルタミン酸、グルタメート、又はグルタミン酸を含むオリゴペプチド若しくはポリペプチドから選択される。
【0038】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸又はアミノ酸塩から選択され、局所医薬組成物中のアミノ酸又はアミノ酸塩の濃度(w/v)は、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは、15%~25%又は20%~25%である。
【0039】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸を含む。
【0040】
一実施形態では、局所医薬組成物中の栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸の濃度(w/v)は、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは、15%~25%又は20%~25%である。
【0041】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸塩を含む。
【0042】
一実施形態では、局所医薬組成物中の栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸塩の濃度(w/v)は、≧3%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは、15%~25%又は20%~25%である。
【0043】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、栄養及びヘルスケア効果を有するオリゴペプチド及びポリペプチドから選択され、局所医薬組成物中のオリゴペプチド及びポリペプチドの濃度(w/v)は、≧5%であり、好ましくは7.5~25%であり、より好ましくは10%~25%である。
【0044】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素は、アミノ酸及び/又はアミノ酸塩とオリゴペプチド及びポリペプチドとの組合せであり、局所医薬組成物中の前記組合せの濃度(w/v)は、≧5%であり、好ましくは7.5~25%であり、より好ましくは10%~25%である。
【0045】
本開示において、局所病変疾患の治療においてアミノ酸ベースの栄養素との相乗効果を有する相乗剤は、従来の非有効化合物及び抗腫瘍化学剤を含む。
【0046】
本開示の範囲において、本明細書で使用される「従来の非有効化合物」という用語は、従来の有効な薬剤(抗腫瘍剤など)と異なり、細胞実験における特定の細胞に対して効果(抗腫瘍細胞効果など)を示し得るが、吸収作用により動物実験において従来の有効な薬剤よりも効果的な阻害を示さないことから、薬剤規制当局(FDAなど)によって、非抗局所病変薬、栄養剤、診断薬、医薬賦形剤などの特定の局所病変疾患の効果的な治療のための薬剤として承認されていない剤を意味する。
【0047】
本開示において、従来の非有効化合物は、アミノ酸ベースの栄養素以外の有機栄養素、酸味剤、アルカリ化剤、及び従来の非有効芳香族化合物からなる群から選択される1以上である。
【0048】
本開示において、アミノ酸ベースの栄養素以外の有機栄養素は、炭水化物栄養素及び/又は脂質栄養素を含む。
【0049】
本開示において、従来の非有効芳香族化合物は、生体染料、サリチル酸化合物、及びキニーネ化合物からなる群から選択される1以上である。
【0050】
本開示において、従来の非有効化合物は、炭水化物栄養素、脂質栄養素、生体染料、酸味料、アルカリ化剤、サリチル酸化合物、及びキニーネ化合物からなる群から選択される1以上である。
【0051】
先行技術においては、炭水化物栄養素及び脂質栄養素は、主に、吸収を通じて栄養及びヘルスケア効果をもたらす。栄養学的支援は癌患者の栄養状態を改善することができる一方で、腫瘍細胞の増殖を促進し得ると一般に信じられている。本発明において、本発明者らは、予想外なことに、炭水化物栄養素及び脂質栄養素を、アミノ酸ベースの栄養素の局所作用相乗剤として有用なものとした。
【0052】
本発明の文脈において、本明細書で使用される「炭水化物栄養素」という用語は、栄養及び健康効果を有する炭水化物化合物を意味し、好ましくは、栄養及び健康効果を有する単糖、糖ポリマー、及び糖誘導体から選択され、より好ましくは、中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はのガイドラインに含まれる栄養及び健康効果を有する炭水化物栄養素及び炭水化物賦形剤から選択される。
【0053】
特定の実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び炭水化物栄養素を含む。
【0054】
特定の実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、炭水化物栄養素と、脂質栄養素、生体染料、酸味料、アルカリ化剤、サリチル酸化合物、キニーネ化合物、及び抗腫瘍化学剤からなる群の1以上とを含む。
【0055】
特定の実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び炭水化物栄養素を含み、アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、炭水化物栄養素の濃度(w/v)は、≧10%、10~40%、15~50%、又は25~50%である。
【0056】
本開示において、炭水化物栄養素としての単糖、糖ポリマー、及び糖誘導体は、好ましくは、グルコース、リボース、デオキシリボース、キシロース、フルクトース、ガラクトース、及びフコースからなる群から選択される単糖、前記単糖を含む糖ポリマー、又はそれらの誘導体である。
【0057】
糖ポリマーは、前記したように、二糖、オリゴ糖、及び単糖を含む多糖から選択することができる。本発明の文脈においては、本明細書で使用される「二糖」という用語は、グリコシド結合によって結合された2つの単糖を含むポリマーを意味する。本明細書で使用される「オリゴ糖」という用語は、グリコシド結合によって結合された3~10個の単糖を含むポリマーを意味する。本明細書で使用される「多糖」という用語は、グリコシド結合によって結合された10超の単糖を含むポリマーを意味する。二糖、オリゴ糖、又は多糖を構成する単糖はいずれも、前記単糖の1以上であることができる、又は他の単糖を更に含むことができる。一実施形態では、二糖は、ラクツロース、マルトース、スクロース、ラクトース、及びトレハロースから選択される1以上であることができる。一実施形態では、オリゴ糖は、キトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンノースオリゴ糖、マルトオリゴ糖、及びイソマルトオリゴ糖から選択さる1以上であることができる。一実施形態では、多糖は、デンプン、セルロース、デキストラン、及びグリコサミノグリカンから選択される1以上であることができる。
【0058】
糖誘導体は、例えば、前記単糖又は糖ポリマーの糖誘導体であることができ、糖酸、糖酸塩、及び糖アルコールからなる群から選択することができる。本発明の文脈において、本明細書で使用される「糖酸」という用語は、単糖又は糖ポリマーの酸誘導体を意味する。本明細書で使用される「糖酸塩」という用語は、単糖又は糖ポリマーの塩誘導体を意味する。本明細書で使用される「糖アルコール」という用語は、単糖又は糖ポリマーのアルコール誘導体を意味する。一実施形態では、糖酸は、グルコン酸、マンノン酸、及びアラビン酸から選択される1以上であることができる。一実施形態では、糖酸塩は、グルコン酸ナトリウム、マンニン酸ナトリウム、及びアラビン酸ナトリウムから選択される1以上であることができる。実施形態では、糖アルコールは、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、及びキシリトールから選択される1以上であることができる。
【0059】
本発明の医薬組成物において、炭水化物栄養素は、単糖、オリゴ糖、多糖、糖酸、糖酸塩、及び糖アルコールの1以上、例えば、2、3、4、又は5以上であることができる。
【0060】
一実施形態では、炭水化物栄養素は、グルコース、グルコース含有糖ポリマー、又はグルコース誘導体から選択される。
【0061】
一実施形態では、炭水化物栄養素は、リボース、リボース含有糖ポリマー、又はリボース誘導体から選択される。
【0062】
一実施形態では、炭水化物栄養素は、キシロース、キシロース含有糖ポリマー、又はキシロース誘導体から選択される。
【0063】
一実施形態では、炭水化物栄養素は、好ましくは、グルコース、フルクトース、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクトロース、ソルビトール、リボース、ソルボース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、キシロオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、マンノースオリゴ糖、キシリトールから選択される1以上であり、より好ましくは、グルコース、グルコン酸ナトリウム、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、リボース、マンノースオリゴ糖、キシリトールから選択される1以上である。一実施形態では、医薬組成物中の炭水化物栄養素の濃度(w/v)は、5%超であり、好ましくは、≧10%、10~40%、15~50%、又は25~50%である。
【0064】
本開示に係る医薬組成物において、脂質栄養素は、任意の薬学的に許容される脂質栄養素を含み、好ましくは、中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はガイドラインに含まれる栄養及びヘルスケア効果を有する脂質化合物から選択され、より好ましくは、脂肪、脂肪酸、脂肪乳剤、及び脂肪様体(adipoid)から選択される1以上である。
【0065】
実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び脂質栄養素を含む。
【0066】
実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、脂質栄養素と、抗腫瘍化学剤、炭水化物栄養素、生体染料、酸味料、及びアルカリ化剤の1以上とを含む。
【0067】
一実施形態では、医薬組成物中の脂質栄養素の濃度(w/v)は、≧4%であり、好ましくは4~25%である。
【0068】
一実施形態では、脂質栄養素は、植物油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、長鎖脂肪乳剤、中鎖脂肪乳剤、及びリン脂質から選択される1以上である。
【0069】
実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び生体染料を含む。
【0070】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、生体染料と、炭水化物栄養素、脂質栄養素、酸味料、アルカリ化剤、サリチル酸化合物、キニーネ化合物、及び抗腫瘍化学剤の1以上とを含む。
【0071】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び生体染料を含み、前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、前記生体染料の濃度(w/v)は、≧0.35%、0.35~1.5%、又は1~10%である。
【0072】
本開示に係る医薬組成物において、生体染料は、動物の生体組織に侵入後、組織、細胞、細胞内ユニットなどの構造を着色することができるが、動物の全身に、許容できない害を及ぼすことがない芳香族化合物染料を含む。生体染料は、当業者に知られている任意の好適な染料であることができる。例えば、メチレンブルー、パテントブルー、イソスルフィドブルー、Bengal Red、Toluidine Blue、Trypan Blue、Basic Blue、Eosin、Basic Fuchsin、Crystal Violet、Gentian Violet、Neutral Red、Janus Green B、及びSafraninからなる群から選択される1以上の有機染料及びそれらの水和物又は誘導体であることができる。
【0073】
本開示に係る医薬組成物において、メチレンブルー染料は、以下の化合物並びにそれらの水和物及び誘導体から選択することができる:メチレンブルー、パテントブルー、イソスルフィドブルー、及びニューメチレンブルー。メチレンブルー染料は、好ましくは、メチレンブルー並びにその水和物及び誘導体から選択される。本開示に係る医薬組成物において、メチレンブルー染料の濃度(w/v)は、≧0.35%であり、好ましくは0.35~2%であり、より好ましくは0.35~1.5%又は0.5~1%である。
【0074】
一実施形態では、本開示に係る医薬組成物において、メチレンブルー染料以外の生体染料の濃度(w/v)は、1~10%である。
【0075】
実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び酸味料を含む。
【0076】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、酸味料と、炭水化物栄養素、脂質栄養素、生体染料、アルカリ化剤、サリチル酸化合物、及びキニーネ化合物の1以上とを含む。
【0077】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び酸味料を含み、前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、前記酸味料の濃度(w/v)は、≧0.25%であり、好ましくは0.5~10%である。
【0078】
本発明の文脈において、「酸味料」という用語は、主にアジュバントとして、より具体的には、医薬の調製におけるpH調整のために使用される酸を意味する。通常、酸味料は、酸性度を与えること以外は、特別な生物学的活性を導入しない。本開示に係る組成物において、酸味料は、中国、米国、又は欧州の公式の管轄行政部門(FDA又は中国食品医薬品局など)によって承認された酸味料から好ましくは選択される任意の薬学的に許容される酸味料を含む、又は中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はガイドライン(例えば、中国薬局方の2015年版の第IV巻「Pharmaceutical Excipients」又はR.C.Luoらによって編集された「Manual of Pharmaceutical Excipients」の第4版)に含まれる酸味料を含む。
【0079】
本開示において、酸味料は、強酸及び弱酸を含む。酸は、水溶液中でのイオン化の程度に応じて強酸と弱酸とに分けられる。酸のイオン化の程度は、イオン化定数(Ka)で表される。Kaが小さいほど、酸性度は弱くなる。例えば、弱酸のイオン化定数(Ka)は、0.0001未満である。より一般的には、イオン化の程度は、イオン化定数の負の対数(酸性度係数、pKaと呼ばれる)で表される。pKaが大きいほど、酸性度は弱くなる。「強酸」という用語は、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、セレン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、塩素酸などの、pKaが1未満の酸を意味する。「弱酸」という用語は、炭酸、ホウ酸、酢酸、リン酸、亜硫酸、ピルビン酸、シュウ酸、酒石酸、亜硝酸などの、pKaが1より大きい酸を意味する。
【0080】
一実施形態では、酸味料は、強酸及び弱酸から選択される1以上であり、局所医薬組成物において、酸味料の濃度(w/v)は、>0.25%であり、好ましくは0.75~15%である。
【0081】
一実施形態では、強酸は、塩酸、硫酸、及び硝酸の1以上を含み、好ましくは塩酸である。
【0082】
一実施形態では、弱酸は、リン酸、マレイン酸、シュウ酸、及び酒石酸の1以上を含む。
【0083】
一実施形態では、弱酸は、水溶性飽和脂肪族カルボン酸又は/及び水溶性ヒドロキシカルボン酸から選択される酸味料を含む。弱酸酸味料は、1~3個のヒドロキシル基で任意に置換されたC1~10脂肪族カルボン酸であることができる。脂肪族カルボン酸は、モノ、ジ、又はトリ脂肪族カルボン酸であることができる。水溶性飽和脂肪族カルボン酸から選択される酸味料は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸、コハク酸の1以上を含み、好ましくは酢酸である。水溶性ヒドロキシカルボン酸から選択される酸味料は、グリコール酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸)、及びリンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)を含む。
【0084】
一実施形態では、酸味料は強酸、好ましくは塩酸を含み、医薬組成物中の強酸の濃度(w/v)は、≧0.25%であり、0.35~2%であり、好ましくは0.5~1.5%又は0.75~1.2%であり、又は好ましくは0.75~2%又は1~1.5%である。
【0085】
一実施形態では、酸味料は弱酸を含み、医薬組成物中の弱酸の濃度(w/v)は、>0.5%であり、好ましくは1~10%、1%~5%、又は0.8~15%であり、好ましくは3.5~15%又は5~15%である。
【0086】
一実施形態では、酸味料は弱酸、好ましくは酢酸を含み、医薬組成物中の弱酸の濃度(w/v)は、0.8~20%、1.5~20%であり、好ましくは2~15%、3.5~15%であり、より好ましくは5~12.5%又は5~15%である。
【0087】
一実施形態によれば、酸味料は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)及び酒石酸から選択される1以上である。
【0088】
一実施形態によれば、酸味料は、弱酸と強酸の組合せであり、局所医薬組成物中の酸味料の濃度は、1~10%又は1~15%であることができ、弱酸の強酸に対する重量比は、99:1~1:99の範囲であることができる。
【0089】
一実施形態では、組成物は、例えば、グリシン/酢酸、アルギニン/炭酸、グリシン/リン酸、グリシン/アルギニン/酢酸を含む。
【0090】
一実施形態では、組成物は、例えば、グリシン/酢酸/酢酸ナトリウム、グリシン/クエン酸/クエン酸ナトリウム、グリシン/クエン酸/クエン酸ナトリウムを含む。
【0091】
一実施形態では、組成物は、例えば、グリシン/塩酸、グリシン/酢酸/塩酸、グリシン/アルギニン/塩酸を含む。
【0092】
特定の実施形態では、医薬組成物は、グリシン及び酢酸を含み、局所医薬組成物において、グリシンの濃度(w/v)は15~25%であり、酢酸の濃度(w/v)は5~20%である。
【0093】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及びアルカリ化剤を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つのアルカリ化剤を含む。
【0095】
一実施形態では、医薬組成物は、複数のアルカリ化剤を含む。
【0096】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、アルカリ化剤と、炭水化物栄養素、脂質栄養素、生体染料、酸味料、サリチル酸化合物、キニーネ化合物、及び抗腫瘍化学療法剤の1以上とを含む。
【0097】
一実施形態では、アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、アルカリ化剤の濃度(w/v)は、≧0.5%であり、好ましくは1~35%である。
【0098】
本発明の文脈において、「アルカリ化剤」という用語は、主にアジュバントとして、より具体的には、医薬の調製におけるpH調整のために使用される塩基を意味する。通常、アルカリ化剤は、塩基度を与えること以外は、特別な生物学的活性を導入しない。本開示に係る組成物においてアルカリ化剤は、中国、米国、又は欧州の公式の管轄行政部門(FDA又は中国食品医薬品局など)によって承認されたアルカリ化剤から好ましくは選択される任意の薬学的に許容されるアルカリ化剤を含む、又は中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はガイドライン(例えば、中国薬局方の2015年版の第IV巻「Pharmaceutical Excipients」又はR.C.Luoらによって編集された「Manual of Pharmaceutical Excipients」の第4版)に含まれるアルカリ化剤を含む。
【0099】
本開示において、アルカリ化剤は、強塩基及び弱塩基を含む。強塩基は、アルカリ金属水酸化物及び強有機塩基を含む。本開示において、アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化カルシウムを含む。有機強塩基は、例えば、コリンである。
【0100】
一実施形態では、アルカリ化剤は、強塩基、好ましくは水酸化ナトリウムを含み、医薬組成物中の強塩基の濃度(w/v)は、≧0.5%であり、好ましくは0.5~7.5%又は0.75~7.5%である。
【0101】
一実施形態では、組成物は、例えば、グリシン/水酸化ナトリウム、アルギニン/水酸化ナトリウム、リジン/水酸化ナトリウムを含む。
【0102】
一実施形態では、組成物は、例えば、グリシン/炭酸ナトリウム/水酸化ナトリウム、アルギニン/炭酸ナトリウム/水酸化ナトリウム、アルギニン/重炭酸ナトリウム/水酸化ナトリウムを含む。
【0103】
一実施形態では、組成物は、例えば、アルギニン/水酸化ナトリウム/KCl又はリジン/水酸化ナトリウム/KClを含む。
【0104】
本開示において、弱塩基は、弱酸強塩基塩基性無機塩、有機弱酸アルカリ金属塩、及び窒素含有弱塩基を含む。
【0105】
本発明の文脈において、「多塩基性弱酸酸性無機塩」という用語は、水中の水素イオンをイオン化することができる多塩基性弱酸無機塩を意味する。化学的アブレーション剤としての多塩基性弱酸酸性無機塩に関し、好ましくは、その0.01M水溶液がアルカリ性であり、好ましくは、pH>8.0である(例えば、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)。「多塩基性弱酸塩基性無機塩」という用語は、水中の水素イオンをイオン化できない多塩基性弱酸無機塩を意味し、多塩基性弱酸-強塩基無機塩の正の塩を含む。「窒素含有弱塩基」という用語は、窒素を含む弱塩基性化合物を意味し、弱塩基性化合物は、水溶性(w/w)が≧2%の弱塩基性化合物から選択されることが好ましい。
【0106】
一実施形態では、組成物は、例えば、グリシン/重炭酸ナトリウム/酢酸、又はグリシン/重炭酸ナトリウム/炭酸を含む。
【0107】
一実施形態では、アルカリ化剤は、多塩基性弱酸塩基性無機塩、好ましくは炭酸ナトリウムを含み、医薬組成物中の多塩基性弱酸塩基性無機塩の濃度(w/v)は、≧1%であり、好ましくは2~10%又は3~10%である。
【0108】
一実施形態では、多塩基性弱酸無機塩は、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、及び重硫酸ナトリウムを含む。
【0109】
一実施形態では、多塩基性弱酸酸性無機塩は、好ましくは、重炭酸ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムである。
【0110】
一実施形態では、アルカリ化剤は、多塩基性弱酸酸性無機塩、好ましくは炭酸ナトリウムを含み、医薬組成物中の多塩基性弱酸酸性無機塩の濃度(w/v)は、≧1%であり、好ましくは2~10%又は3~10%である。
【0111】
一実施形態では、窒素含有弱塩基は、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、2-アミノエタノール、トロメタミン、トリエタノールアミン、トリメチロールアミノメタン、2-アミノエタノール、トロメタミン、トリエタノールアミン、メグルミン、及びエチル-D-グルカミンから選択される。
【0112】
一実施形態では、アルカリ化剤は、窒素含有弱塩基を含み、医薬組成物中の窒素含有弱塩基の濃度(w/v)は、≧2%であり、好ましくは2~35%又は3~35%である。
【0113】
一実施形態では、多塩基性弱酸塩基性無機塩は、例えば、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及びホウ砂を含む。
【0114】
一実施形態では、多塩基性弱酸塩基性無機塩は、好ましくは、炭酸ナトリウム及び/又はリン酸ナトリウムである。
【0115】
一実施形態では、組成物は、例えば、アルギニン/アンモニア、グリシン/アンモニア、リジン/アンモニア、又はグルタミン酸塩酸塩/アンモニアを含む。
【0116】
一実施形態では、組成物は、例えば、アルギニン/炭酸ナトリウム、グリシン/炭酸ナトリウム、リジン/炭酸ナトリウム、又はグルタミン酸塩酸塩/炭酸ナトリウムを含む。
【0117】
一実施形態では、組成物は、例えば、アルギニン/重炭酸ナトリウム、グリシン/重炭酸ナトリウム、リジン/重炭酸ナトリウム、グルタミン酸塩酸塩/重炭酸ナトリウム、アルギニン/重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、アルギニン/リン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム、アルギニン/リン酸水素二ナトリウム/リン酸二水素カリウム、アルギニン/リン酸二水素ナトリウム/炭酸ナトリウム、又はグリシン/重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウムを含む。
【0118】
特定の実施形態では、医薬組成物は、アルギニン、水酸化ナトリウム、及び重炭酸ナトリウムを含み、局所医薬組成物において、アルギニンの濃度(w/v)は、15~25%であり、水酸化ナトリウムの濃度(w/v)は、2~5%であり、重炭酸ナトリウムの濃度(w/v)は、3~10%である。
【0119】
特定の実施形態では、医薬組成物は、アルギニン、炭酸ナトリウム、及び重炭酸ナトリウムを含み、局所医薬組成物において、アルギニンの濃度(w/v)は、15~25%であり、炭酸ナトリウムの濃度(w/v)は、3~10%であり、重炭酸ナトリウムの濃度(w/v)は、3~10%である。
【0120】
一実施形態では、医薬組成物は、酸味料又は/及びアルカリ化剤を含み、pH緩衝能を有する。
【0121】
一実施形態では、医薬組成物は、酸味料又は/及びアルカリ化剤を含み、その緩衝能は、>0.01mol・L-1・pH-1である。
【0122】
一実施形態では、医薬組成物の緩衝能は、0.015~0.45mol・L-1・pH-1である。
【0123】
一実施形態では、医薬組成物の緩衝能は、好ましくは、≧0.04mol・L-1・pH-1であり、より好ましくは、、≧0.05mol・L-1・pH-1である。
【0124】
一実施形態では、医薬組成物の緩衝能は、0.04~0.45mol・L-1・pH-1であり、より好ましくは、0.05~0.45mol・L-1・pH-1である。
【0125】
本発明の文脈において、本明細書で使用される「緩衝能」(緩衝指数とも呼ばれる)という用語は、単位体積(例えば、1L)当たりの医薬組成物のpHが、mol・L-1・pH-1の単位で1単位変化するときの強一塩基酸(塩酸など)又は強一塩基(水酸化ナトリウムなど)の量(例えば、xモル)を意味する。
【0126】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及びサリチル酸化合物を含む。
【0127】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、サリチル酸化合物と、炭水化物栄養素、脂質栄養素、生体染料、アルカリ化剤、酸味料、及びキニーネ化合物の1以上とを含む。
【0128】
本開示の文脈において、本明細書で使用される「サリチル酸化合物」という用語は、サリチル酸及びその誘導体を意味する。サリチル酸の化学名は、2-ヒドロキシ安息香酸である。サリチル酸誘導体は、例えば、金属化合物を含む又は含まないサリチル酸誘導体を含み得る、当業者に知られた任意の好適なものであることができる。前者は、例えば、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸亜鉛、金属元素錯体(銅アスピリンなど)などを含むことができ、後者は、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アスピソル(Aspisol)、ジフルオロベンゼンサリチル酸、アミノサリチル酸、p-アミノサリチル酸、N-フェニルアントラニル酸、サリチルアニリド、o-エトキシベンズアミド、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、ジサリシレート、ジクマリン、及びそれらの薬学的に許容される誘導体を含み得る。
【0129】
一実施形態では、サリチル酸化合物は、サリチル酸、アセチルサリチル酸、ジフルオロベンゼンサリチル酸、ジサリシレート、ジクマリン、及びアスピソル、並びにそれらの誘導体からなる群から選択される1以上である。
【0130】
一実施形態では、サリチル酸化合物は、サリチル酸、アセチルサリチル酸、及びアスピソルからなる群から選択される1以上であり、局所医薬組成物において、サリチル酸化合物の濃度(w/v)は、1%超であり、好ましくは3~10%である。
【0131】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及びキニーネ化合物を含む。
【0132】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、キニーネ化合物と、炭水化物栄養素、脂質栄養素、生体染料、アルカリ化剤、酸味料、及びサリチル酸化合物の1以上とを含む。
【0133】
本開示の文脈において、本明細書で使用される「キニーネ化合物」という用語は、薬学的に許容されるキニーネ及びその構造類似体、例えば、キニーネ並びにその異性体及び薬学的に許容される塩を意味する。キニーネの場合、その異性体は、例えば、キニジン、シンコニン、及びシンコニジンであることができ、その塩は、例えば、キニーネ塩酸塩、キニーネ二塩酸塩、キニーネ硫酸塩などであることができる。
【0134】
一実施形態では、キニーネ化合物は、水溶性キニーネ化合物から選択され、好ましくは、キニーネ塩酸塩、キニーネ二塩酸塩、キニーネ硫酸塩から選択される1以上であり、局所医薬組成物において、キニーネ化合物の濃度(w/v)は、1%超であり、好ましくは3~10%である。
【0135】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び抗腫瘍化学療法剤を含む。
【0136】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素と、抗腫瘍化学療法剤と、炭水化物栄養素、脂質栄養素、生体染料、アルカリ化剤、酸味料、キニーネ化合物、及びサリチル酸化合物の1以上とを含む。
【0137】
本開示において、本明細書で使用される「抗腫瘍化学療法剤」という用語は、安全な用量で、吸収によって固形腫瘍を効果的に阻害することができる剤を意味し、任意の薬学的に許容される抗腫瘍化学療法剤から選択され、好ましくは、当技術分野でよく知られたより好ましくは、中国、米国、又は欧州の公式の管轄行政部門(例えば、FDA又は中国食品医薬品局)によって承認された若しくは承認予定の抗腫瘍化学療法剤から選択される、又は中国、米国、又は欧州の公式の薬局方に含まれている若しくは含まれる予定の抗腫瘍化学療法剤から選択される。本明細書で使用される「吸収」という用語は、薬剤が血液によって吸収されて、標的領域への薬剤運搬血液を形成する薬剤の薬理学的効果を意味する。「吸収型薬剤」という用語は、主に吸収によって薬剤効果をもたらす治療薬を意味する。
【0138】
本開示において、抗腫瘍化学療法剤は、下記の群から選択される1以上であることができる:DNAの構造及び機能を損なわせる薬剤、DNAにインターカレートしてRNAの転写を阻害する薬剤、DNA合成を阻害する薬剤、及びタンパク質合成に影響を及ぼす薬剤。DNAの構造と機能を損なわせる薬剤としては、例えば、酸味料(例えば、シクロホスファミド及びカルムスチン)、金属白金錯体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、及びDNAトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ドキソルビシン、トポテカン、及びイリノテカン)が挙げられる。DNAにインターカレートしてRNAの転写を阻害する薬剤としては、例えば、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシンなどの抗腫瘍抗生物質が挙げられる。DNA合成を阻害する薬剤としては、例えば、ピリミジン拮抗薬(ウラシル誘導体5-フルオロウラシル、フトラフル、テガジフル、シトシン誘導体シタラビン、シクロシチジン、5-アザシチジンなど)、プリン拮抗薬(チスプリン(tisupurine)、チオグアニンなど)、葉酸拮抗薬(メトトレキサートなど)が挙げられる。タンパク質合成に影響を及ぼす薬剤としては、例えば、コルヒチン、ビンブラスチン、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)などが挙げられる。
【0139】
本開示に係る医薬組成物において、薬学的に許容される液体担体は、水及び/又はエタノールである。薬理学的に許容される液体担体は、主に、抗腫瘍化学療法剤の性質に応じて選択され、それにより、薬剤は、対応する濃度に達することができる。
【0140】
抗腫瘍化学療法剤は、水溶性抗腫瘍化学療法剤及びアルコール可溶性抗腫瘍化学療法剤から選択される。本発明の文脈において、「アルコール可溶性抗腫瘍化学療法剤」という用語は、効果的な局所作用に必要な濃度以上の、室温におけるエタノール又はエタノール水溶液中での可溶性を有する抗腫瘍化学療法剤を意味し、例えば、タキサン、ビンブラスチンなどが挙げられる。「水溶性抗腫瘍化学療法剤」という用語は、効果的な局所作用に必要な濃度以上の、室温における水溶液中での可溶性を有する抗腫瘍化学療法剤を意味し、例えば、ウラシル誘導体、シクロホスファミド、ゲムシタビン(塩酸ゲムシタビンなど)、エピルビシン(塩酸エピルビシンなど)、抗腫瘍抗生物質(ドキソルビシン、アクチノマイシン(actinomycetes)など)、ビンブラスチン(硫酸ビンブラスチンなど)、テニポシド、金属白金錯体などから選択される1以上の水溶性薬剤が挙げられる。
【0141】
本願に開示される医薬組成物において、抗腫瘍化学療法剤は、ウラシル誘導体、シクロホスファミド、ゲムシタビン、エピルビシン、抗腫瘍抗生物質、テニポシド、金属白金錯体、タキサンから選択される1以上であることができ、好ましくは、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、ゲムシタビン、エピルビシン、抗腫瘍抗生物質、テニポシド、金属白金錯体、及びパクリタキセル、並びにそれらの類似の誘導体から選択される1以上であることができる。
【0142】
一実施形態では、薬学的に許容される液体担体は、水である。
【0143】
本開示に係る局所医薬組成物において、抗腫瘍化学療法剤の濃度は、その飽和濃度の30%超であり、好ましくはその飽和濃度の50~100%であり、ここで、飽和濃度は、液体担体中の抗腫瘍化学療法剤の飽和濃度を意味する。
【0144】
特定の実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び抗腫瘍化学療法剤を含み、アミノ酸ベースの栄養素の抗腫瘍化学療法剤に対する量比(w:w)は、≧125%である。
【0145】
一実施形態では、局所医薬組成物は、アミノ酸ベースの栄養素及び抗腫瘍化学療法剤を含み、アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、0.03~5%であり、好ましくは0.05~2%又は0.05~4%である。
【0146】
特定の実施形態において、局所医薬組成物中の酸味料(シクロホスファミド、カルムスチンなど)から選択される抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、0.5~6%であり、好ましくは0.75~1.5%である。
【0147】
特定の実施形態において、局所医薬組成物中の金属白金錯体(シスプラチン、カルボプラチンなど)から選択される抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、0.03~0.15%であり、好ましくは0.05~0.15%である。
【0148】
特定の実施形態において、局所医薬組成物中のDNAトポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン、トポテカン、イリノテカンなど)から選択される抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、0.05~0.20%であり、好ましくは0.075~0.15%である。
【0149】
特定の実施形態では、局所医薬組成物中の抗腫瘍抗生物質(アクチノマイシン、ダウノルビシンなど)から選択される抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、1~4%であり、好ましくは1~2%である。
【0150】
特定の実施形態において、局所医薬組成物中のピリミジン拮抗薬(5-フルオロウラシル、フトラフル、テガジフルなどのウラシル誘導体、シタラビン、シクロシチジン、及び5-アザシチジンなどのシトシン誘導体など)から選択される抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、0.5~2%であり、好ましくは0.75~1.5%である。
【0151】
特定の実施形態では、医薬組成物は、アルギニン、ウラシル誘導体(例えば、5-フルオロウラシル)、及び/又は金属白金錯体を含み、局所医薬組成物において、アルギニンの濃度(w/v)は15~25%であり、ウラシル誘導体の濃度(w/v)は0.5~1.5%であり、及び/又は金属白金錯体の濃度(w/v)は0.05~0.15%である。
【0152】
特定の実施形態において、医薬組成物は、アルギニン、水酸化ナトリウム、ウラシル誘導体(例えば、5-フルオロウラシル)、及び/又は金属白金錯体を含み、局所医薬組成物において、アルギニンの濃度(w/v)は、15~25%であり、水酸化ナトリウムの濃度(w/v)は0.75~3%であり、ウラシル誘導体の濃度(w/v)は0.5~1.5%であり、及び/又は金属白金錯体の濃度(w/v)は0.05~0.15%である。
【0153】
特定の実施形態では、医薬組成物は、グルタメート塩酸塩及びウラシル誘導体(例えば、5-フルオロウラシル)を含み、局所医薬組成物では、グルタメート塩酸塩の濃度(w/v)は10~25%であり、ウラシル誘導体の濃度(w/v)は0.5~1.5%である。
【0154】
特定の実施形態において、局所医薬組成物中のタキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)から選択される抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)は、0.5~2%であり、好ましくは0.75~1.5%である。
【0155】
本開示に係る医薬組成物は、任意に、賦形剤を更に含むことができる。賦形剤は、当業者に知られた任意の好適なものであることができ、例えば、分散媒、防腐剤、安定剤、湿潤剤及び/又は乳化剤、可溶化剤、粘着剤などの1以上を含むことができる。増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチンである。防腐剤は、例えば、抗酸化剤(アスコルビン酸など)である。
【0156】
本開示に係る医薬組成物は、有効成分(アミノ酸ベースの栄養素、従来の非有効化合物、及び任意に前記他の有効成分)及び液体担体(水、エタノール、又は水/エタノール混合物など)を含む、局所投与に適した任意の剤形であることができ、好ましくは、剤形は、注射剤(好ましくは局所注射剤)、外用液、噴霧製剤などである。
【0157】
本発明の文脈において、本明細書で使用される「注射剤」という用語は、有効成分及び液体担体を含む、インビボ投与のための滅菌調製物を意味する。注射剤は、投与形態に応じて、局所注射剤、静脈内注射剤などに分けられ、静脈内注射剤は、所定の局所投与濃度に達する場合にのみ局所注射剤として使用することができる。注射剤は、物質の種類に応じて、液体注射剤、注射可能な粉末製剤などに分けられる。注射可能な粉末製剤は、滅菌乾燥粉末及び溶媒を含み、滅菌乾燥粉末は、有効成分の一部又は全部を含み、溶媒は、全ての液体担体を含む。注射剤中の有効成分の濃度は、有効成分と全ての液体担体との混合物中の有効成分の濃度であり、通常、局所投与デバイス(注射器、穿刺器具、注射カテーテルなど)の端点(針穴、カテーテルの出口など)での液体薬剤中の有効成分の濃度である。注射可能な粉末製剤の場合、有効成分の濃度は、滅菌乾燥粉末と溶媒(例えば、再構成された溶液、又は薬学的に許容される液体担体)との混合物中の有効成分の濃度である。
【0158】
本発明の文脈において、「外用液」という用語は、有効成分と液体担体とを含み、体表面[皮膚、粘膜(眼粘膜、鼻粘膜など)など)又は/及びキャビティ(口腔、直腸、膣、尿道、鼻腔、耳道など)]に投与される液体薬剤を意味し、例えば、ローション、リニメント、ドロップ、ガーグル、ペイントなどを含む。局所投与の場合、液体薬剤は、通常、ローションボトル、ドリップボトル、ドロップピペット、嗽ボトル、綿棒などの局所投与デバイスによって提供される。外用液中の有効成分の濃度は、液体薬剤中の有効成分の濃度である。
【0159】
本発明の範囲において、「噴霧製剤」という用語は、有効成分と液体担体とを含み、使用時に前記液体製剤を圧力によって噴霧するために使用することができる剤形を意味する。噴霧製剤は、皮膚及び粘膜(眼粘膜、鼻粘膜など)又は/及びキャビティ(口腔、直腸、膣、尿道、鼻腔、外耳道など)に投与することができ、例えば、エアロゾル、スプレー、ネブライザー(nebula)などを含む。局所投与において、液体薬剤の噴霧は、アトマイザー、ネブライザー、スプレイヤーなどの局所投与デバイスによって形成されることが多い。薬剤を標的位置に噴霧し、蓄積して液体薬剤を形成後、その組成は、噴霧前の液体薬剤の組成とほぼ同一である。このように、噴霧製剤中の有効成分の濃度は、噴霧前の液体薬剤中の有効成分の濃度で表すことができる。
【0160】
本開示の別の態様によれば、本開示に係るアミノ酸ベースの栄養素、非有効芳香族化合物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の一部又は全部の凍結乾燥又は半凍結乾燥によって得ることができる又は得られる凍結乾燥又は半凍結乾燥形態の、固形腫瘍を治療するための局所医薬組成物を提供する。
【0161】
本発明の更に別の態様によれば、局所病変疾患を治療するためのデバイスを更に提供し、前記デバイスは、本開示に係るアミノ酸ベースの栄養素及び従来の非有効化合物を含む医薬組成物を含む。前記デバイスは、例えば、アトマイザー、ネブライザー、スプレイヤーなどの、その中の液体をスプレー又は噴霧することができる当技術分野で知られたデバイスであることができる。
【0162】
当業者であれば、本発明の技術的解決策によれば、本発明の組成物が、標的領域に局所的に投与できる剤形、好ましくは局所医薬剤形に調製されることを理解しよう。
【0163】
本発明の調製方法によれば、本発明の医薬組成物の調製は、局所有効成分、液体媒体、及び任意に他の物質を含む液体医薬組成物を調製する工程を含む。液体薬剤は、局所有効成分を含む溶液(例えば、親水性溶媒中の溶液、好ましくは水溶液)、懸濁物、又はエマルジョンであることができる。液体医薬組成物が懸濁物である場合、その中の分散媒体は、マイクロ材料又はナノ材料などの、当業者に知られた任意の好適なものであることができる。液体医薬組成物がエマルジョンである場合、その中の分散媒体は、注射剤に使用することができる植物油、合成油、又は半合成油などの、当業者に知られた任意の好適なものであることができる。植物油は、例えば、綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、及びピーナッツ油であることができる。
【0164】
本発明の調製方法によれば、アミノ酸ベースの栄養素及び相乗剤(従来の非有効化合物など)の濃度は、本発明の組成物中のそれらの濃度以上である。その濃度が本発明の医薬組成物中の濃度よりも高い場合、使用のために更に希釈することができる。
【0165】
本開示の実施形態によれば、本発明の医薬組成物の液体注射剤は、以下の工程を含む方法によって調製することができる:1)アミノ酸ベースの栄養素、任意に従来の非有効化合物、及び任意に他の成分を、局所投与濃度に基づいて必要な量で溶媒(又は薬学的に許容される液体担体)に添加し、それらを混合して均一化し、滅菌して滅菌液体Iを調製すること;2)任意に他の成分(他の栄養素など)を、局所投与濃度に基づいて必要な量で溶媒(又は薬学的に許容される液体担体)に添加し、それらを混合して均一化し、滅菌して滅菌液体IIを調製すること。使用時に、滅菌液体I及び滅菌液体IIが、局所投与デバイスに入れる前又は後に、混合液体を形成し、これをそのまま用いることができる、又は希釈してから局所投与用の液体薬剤として用いることができる。
【0166】
本開示の実施形態によれば、本発明の医薬組成物の注射可能な粉末は、以下の工程を含む方法によって調製することができる:アミノ酸ベースの栄養素の滅菌乾燥粉末、及び任意に、例えば、従来の非有効化合物を局所投与濃度に基づいて必要な量で調製すること;局所投与濃度に基づいて必要な量の他の成分(アミノ酸ベースの栄養素、鎮痛剤など)を含む滅菌ビヒクルを調製すること。無菌乾燥粉末は、好ましくは、無菌凍結乾燥粉末であり、無菌乾燥粉末の調製方法は、以下を含む:1)アミノ酸ベースの栄養素、従来の非有効化合物、及び任意に他の成分を含む溶液を調製すること、2)滅菌、ろ過、包装すること、3)凍結乾燥すること、及び4)プラギングとキャッピングすること。凍結乾燥のためのプロセス条件は、例えば、予備凍結温度-45℃を4時間維持する予備凍結条件、0.1℃/分の速度で温度を-15℃に上昇させ、少なくとも10時間維持する昇華乾燥条件、及び30℃の温度を6時間維持する吸着乾燥条件。使用時に、注射可能な粉末調製物の滅菌乾燥粉末を、滅菌溶媒中で再構成し、再構成した薬剤を形成して、これをそのまま用いることができる、又は希釈してから局所投与用の液体薬剤として用いることができる。
【0167】
本発明の調製方法の実施形態によれば、本発明の医薬組成物の外用液は、以下の工程を含む方法によって調製される:1)アミノ酸ベースの栄養素及び相乗剤(例えば、従来の非有効化合物)並びに任意に他の成分を、局所投与濃度に基づいて必要な量で溶媒に添加して液体を調製すること、2)他の成分(水溶性酸など)を局所投与濃度に基づいて必要な量で、1)で調製した液体に添加し、均一に混合して液体薬剤を得ること。使用時に、液体薬剤をそのまま用いることができる、又は希釈してから局所投与用の外用液として用いることができる。
【0168】
本発明の調製方法の実施形態によれば、本発明の医薬組成物の噴霧製剤は、以下の工程を含む方法によって調製することができる:1)アミノ酸ベースの栄養素及び相乗剤(例えば、従来の非有効化合物)並びに噴霧賦形剤を、局所投与濃度に基づいて必要な量で溶媒に添加して液体を調製すること、2)他の成分(水溶性酸など)を局所投与濃度に基づいて必要な量で、1)で調製した液体に添加し、均一に混合して液体薬剤を得ること。一般的に使用される噴霧賦形剤としては、例えば、グリセリン、ポリソルベート-80、塩化ベンザルコニウム、微結晶性セルロース-カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。使用時に、液体薬剤は、アトマイザー(スプレイヤーなど)に添加され、噴霧作用下でミストの形態で標的領域に局所投与され、そこで、これらのミストは、標的領域に液体薬剤として蓄積される。
【0169】
前記方法の原理によれば、当業者は、任意の好適な特定の方法を採用して、本発明の組成物を含む各種具体的剤形を調製することができる。例えば、本発明の組成物に対してなされる変形例は、異なるタイプ及び濃度のアミノ酸ベースの栄養素を含む、異なるタイプ及び濃度の相乗剤を含む、異なるタイプ及び濃度の他の添加剤(鎮痛剤、活性剤など)を含むことが挙げられる。
【0170】
本開示において、医薬組成物は、主に、局所病変疾患、特に局所投与による難治性局所病変疾患を予防及び治療するために使用される。
【0171】
本発明の文脈において、「局所病変疾患」という用語は、局所病変症状を伴う疾患を意味し、「局所病変」という用語は、動物(好ましくはヒト)の局所的な身体部分の構造、形態、又は機能におけるオリジナルの又は二次的な異常を意味し、これは、例えば、腫瘍体、非腫瘍性肥大、局所炎症、分泌腺の異常な分泌機能などの1以上を含み得る。局所的な身体部分は、当業者に知られた任意の好適な部分であることができる。例えば、分泌系が位置する分泌器官、血液循環系が位置する心臓血管器官、皮膚などの器官の1以上を含む局所的な身体部分を含み得る局所的な身体部分であり得る。
【0172】
局所投与は、医薬組成物(局所有効成分、成分の比率及び濃度)が、局所病変が存在する組織に介入手段によって投与することができ、組織において所望の治療効果をもたらすことを必要とする。例えば、病変が腫瘍である場合、局所組織は、腫瘍細胞が存在する腫瘍体である。病変が非腫瘍性肥大である場合、局所組織は、過形成、嚢胞、結節などの腫脹した腫瘤などの異常である。病変が局所炎症である場合、局所組織は、炎症を起こした腫脹体などの炎症領域である。病変が異常分泌である場合、局所組織は、異常の原因又はそのような異常分泌が見られる分泌腺である。別の例として、疾患が異常なインスリン分泌である場合、異常の原因は膵島であり、局所組織は膵島又は膵島が位置する膵臓である。疾患が皮膚疾患である場合、局所組織は病変皮膚又は病変皮膚の付属器官である。
【0173】
具体的には、本開示において、局所病変は、腫瘍、非腫瘍性肥大、局所炎症、異常分泌腺機能、及び皮膚疾患を含む。
【0174】
本発明の文脈において、「腫瘍」という用語は、細胞又は変異細胞の異常な増殖のために形成された腫瘤を意味し、固形腫瘍を含む。「固形腫瘍」という用語は、腫瘍体を伴う腫瘍を意味し、任意の病状(悪性及び非悪性)によって任意の段階で形成される腫瘍であり得る。例えば、腫瘍細胞のタイプに応じて分類される以下の群を含む:上皮細胞腫瘍、肉腫、リンパ腫、生殖細胞腫瘍、芽細胞腫;及び腫瘍細胞集中領域が位置する器官又は組織に因んで名付けられた腫瘍、例えば、以下の器官又は組織:皮膚、骨、筋肉、乳房、腎臓、肝臓、肺、胆嚢、膵臓、脳、食道、膀胱、大腸、小腸、脾臓、胃、前立腺、精巣、卵巣、又は子宮に因んで名付けられた腫瘍。
【0175】
具体的には、悪性腫瘍は、例えば、乳癌、膵臓癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、腸癌、口腔癌、食道癌、胃癌、喉頭癌、精巣癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌などを含む。
【0176】
非悪性腫瘍は、例えば、乳房腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、前立腺腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、腸腫瘍、口腔腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、鼻咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、精巣腫瘍、膣腫瘍、子宮腫瘍、卵管腫瘍、卵巣腫瘍などを含む。
【0177】
実施形態では、局所病変疾患は、非腫瘍性肥大を含む。「非腫瘍性肥大」という用語は、腫瘍以外の肥大を意味し、例えば、過形成(乳房、膵臓、甲状腺、副甲状腺、前立腺などの過形成など)、嚢胞(乳房、甲状腺、副甲状腺などの嚢胞など)、結節(乳房、甲状腺、副甲状腺などの結節など)、異常な静脈腫瘤(痔核など)、局所的な炎症及び腫脹、微生物感染及び腫脹などを含む。痔核は、内痔核、外痔核、及び混合痔核を含む。
【0178】
実施形態では、局所病変疾患は、局所炎症、特に難治性炎症を含む。本発明の文脈において、「局所炎症」という用語は、局所身体部分の非腫瘍性炎症を意味し、例えば、変質性炎症、滲出性炎症、及び増殖性炎症を含み、これらは、当業者に知られた任意の好適なものであることができ、例えば、以下の1以上を含む:関節炎、乳腺炎、膵臓炎、甲状腺炎、前立腺炎、肝炎、肺炎、腸炎、口内炎、咽頭炎、歯周炎、食道炎、胃炎、胃潰瘍、鼻炎、副鼻腔炎、喉頭炎、気管炎、気管支炎、膣炎、子宮炎、卵管炎、卵巣炎など。
【0179】
一実施形態では、局所病変疾患は、皮膚疾患、特に難治性皮膚疾患を含む。本発明の文脈において、「皮膚疾患」という用語は、皮膚又は皮膚付属器官の原発性又は続発性の病変を意味し、当業者に知られた任意の好適なものであることができ、例えば、以下の1以上を含む:皮膚癌、非悪性皮膚腫瘍、ウイルス性皮膚疾患(ヘルペス、疣贅、風疹、手足口病など)、細菌性皮膚疾患(膿痂疹、おでき、ライ病など)、真菌性皮膚疾患(各種白癬など)、性感染症(梅毒、淋病、尖圭コンジローマなど)、アレルギー性及び自己免疫性皮膚疾患(接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹など)、物理的皮膚疾患(太陽光皮膚病(solar skin diseases)、凍傷、魚の目、手足の皮膚のひび割れ、褥瘡)、結合組織疾患(紅斑性狼瘡など)、色素性皮膚疾患(そばかす、色素性母斑、各種斑点など)、皮膚付属器疾患(にきび、酒さ、脂漏性皮膚炎、円形脱毛症、禿頭症、多汗症、及び臭汗症など)。
【0180】
実施形態では、局所病変疾患は、分泌腺の異常な分泌機能を含む。本発明の文脈において、「分泌腺」という用語は、腺細胞又は腺細胞集団によって形成され、外分泌腺及び内分泌腺を含む分泌機能を行う構造を意味する。分泌腺の異常な分泌機能は、分泌腺の機能亢進(甲状腺機能亢進症など)及び分泌腺の機能低下(甲状腺機能低下症、低インスリン症(糖尿病の一種)など)を含む。
【0181】
実施形態では、局所病変疾患は、心血管疾患を含む。介入療法は、心血管疾患の重要な治療になっている。心血管疾患は、例えば、血管腫、閉塞性肥大性心筋症、心房細動、不整脈、動脈塞栓症などを含む。
【0182】
本発明の局所医薬組成物は、治療薬である。局所病変疾患を予防及び治療するために使用される場合、医薬組成物はまた、他の介入療法、全身化学療法、免疫療法、光線力学療法、超音波力学療法、外科的介入、又はそれらの組合せと組み合わせて適用し、有効性を更に高めることができる。
【0183】
本開示において、医薬組成物は、主に、局所投与による局所病変疾患を予防及び治療するために使用される。
【0184】
本願に係る局所病変疾患の局所治療及び予防のための使用及び方法において、アミノ酸ベースの栄養素及びその相乗剤は、局所医薬組成物中におけるそれらの濃度又は量比で局所投与される。前記濃度又は量比での投与は、局所応答の相乗効果をもたらすことができる。
【0185】
以下により詳細に記載する研究に基づいて、具体的なメカニズムは、依然、更に研究されていないが、本発明の組成物は、局所病変が位置する組織の関連構造(病変組織、病変細胞、及びそれらの形成に関与する任意の構造など)における損傷を促進するのに有効である一方で、患者の正常組織への損傷を最小限に抑え、局所病変疾患を治療する安全で効果的な医薬効果を達成することが示されている。
【0186】
本開示は、以下の項目を含む。
項目1.局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物の製造における局所有効成分としてのアミノ酸ベースの栄養素の使用であって、前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%であり、前記局所医薬組成物が、更に、前記局所病変疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤と、薬理学的に許容される液体担体とを含む使用。
項目2.局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物であって、アミノ酸ベースの栄養素と、前記局所病変疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤と、薬学的に許容される液体担体とを含み、前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である局所医薬組成物。
項目3.局所病変疾患を予防及び治療するための方法であって、アミノ酸ベースの栄養素を含む局所医薬組成物を、それを必要とする個体に局所投与することを含み、前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%であり、前記局所医薬組成物が、更に、前記局所病変疾患の治療において前記アミノ酸ベースの栄養素との相乗効果をもたらすことができる相乗剤と、薬理学的に許容される液体担体とを含む方法。
項目4.前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である項目1から3のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目5.前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である項目1から4のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目6.前記局所医薬組成物中の前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、10~25%又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である項目1から5のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目7.前記アミノ酸ベースの栄養素が、栄養及びヘルスケア効果を有する以下のアミノ酸化合物:アミノ酸、アミノ酸塩、オリゴペプチド、及びポリペプチドの1以上を含み;好ましくは、以下のアミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アルパラギン酸、グルタミン酸、β-アラニン、タウリン、γ-アミノ酪酸(GABA)、茶ポリフェノール(テアニン)、カボチャ種子アミノ酸(3-アミノ-3-カルボキシプリドフィン酸)、グルタミン、シトルリン、及びオルニチン;より好ましくは、以下のアミノ酸から選択されるアミノ酸若しくはその塩、又は以下のアミノ酸を含む又はからなるオリゴペプチド及びポリペプチド:アルギニン、リジン、グリシン、システイン、アラニン、セリン、及びグルタミン酸から選択されるアミノ酸若しくはその塩、又は前記アミノ酸を含む又はからなるオリゴペプチド及びポリペプチドである項目1から6のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目8.前記アミノ酸ベースの栄養素が、栄養及びヘルスケア効果を有するアミノ酸又はアミノ酸塩から選択され、前記局所医薬組成物における前記アミノ酸又はアミノ酸塩の濃度(w/v)が、≧2.5、≧5%、≧7.5%、10~25%、又は18~25%であり、好ましくは15%~25%又は20%~25%である項目7に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目9.前記アミノ酸ベースの栄養素が、栄養及びヘルスケア効果を有するオリゴペプチド及びポリペプチドから選択され、前記局所医薬組成物における前記オリゴペプチド及びポリペプチドの濃度(w/v)が、≧5%であり、好ましくは7.5~25%である項目7に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目10.前記アミノ酸ベースの栄養素が、アミノ酸及び/又はアミノ酸塩とオリゴペプチド及び/又はポリペプチドとの組合せであり、前記局所医薬組成物における前記組合せの濃度(w/v)が、≧5%であり、好ましくは10~25%である項目7に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目11.前記オリゴペプチドが、グリシル-L-チロシン、グリシルアラニン、グリシルグリシン、リジン-グリシンジペプチド、N-(2)-L-アラニル-L-グルタミン、カルノシン(β-アラニンヒスチジン共重合体)、グルタチオン、コラーゲンオリゴペプチド、カゼイン加水分解ペプチド、大豆オリゴペプチド、オリゴアルギニン、オリゴグリシン、オリゴリジンからなる群から選択される1以上であり、前記ポリペプチドが、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、及びポリリジンからなる群から選択される1以上である項目7に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目12.前記相乗剤が、従来の非有効化合物又は/及び抗腫瘍化学療法剤から選択される項目3、5、又は6に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目13.前記局所医薬組成物において、前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、前記従来の非有効化合物又は/及び前記抗腫瘍化学療法薬の濃度(w/v)が、0.03~50%であり、好ましくは0.35~50%又は0.05~4%である項目12に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目13.前記局所医薬組成物において、前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、前記従来の非有効化合物の濃度(w/v)が、>0.25%であり、好ましくは0.35~50%である項目12に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目13.前記従来の非有効化合物が、炭水化物栄養素、脂質栄養素、1~3個のヒドロキシ基で置換されていてもよい酸味料としてのC1~10の脂肪族カルボン酸、アルカリ化剤、メチレンブルー染料、サリチル酸化合物、及びキニーネ化合物からなる群から選択される1以上である項目12に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目14.前記炭水化物栄養素が、以下の糖単位:グルコース、リボース、キシロース、フルクトース、ガラクトース、フコースの1以上を含む炭水化物化合物から選択され、好ましくは、グルコース、フルクトース、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、ソルビトール、リボース、ソルボース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マンノースオリゴ糖、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、キシリトール、マンニトール、マルチトール、ラクトースから選択される1以上であり、より好ましくは、グルコース、グルコン酸ナトリウム、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、リボース、オリゴマンノース、キシリトールから選択される1以上であり、前記医薬組成物中の前記炭水化物栄養素の濃度(w/v)が、≧5%であり、好ましくは≧10%、10~40%、15~50%、又は25~50%である項目15に記載の用途、方法、又は医薬組成物。
項目15.前記局所医薬組成物において、前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、前記炭水化物栄養素の濃度(w/v)が、≧10%、10~40%、15~50%、又は25~50%である項目13から14のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目15.前記脂質栄養素が、脂肪酸、脂肪乳剤、及び脂肪様体からなる群から選択される1以上であり、好ましくは、植物油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、長鎖脂肪乳剤、中鎖脂肪乳剤、リン脂質からなる群から選択される1以上であり、前記医薬組成物において、前記脂質栄養素の濃度が、≧4%であり、好ましくは4%~25%である項目13に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目16.前記メチレンブルー染料が、以下の化合物:メチレンブルー、パテントブルー、イソサルファーブルー(isosulfur blue)、及びそれらの誘導体を含み、前記局所医薬組成物において、前記メチレンブルー染料の濃度(w/v)が、≧0.35%であり、好ましくは0.35~2%であり、より好ましくは0.35~1.5%又は0.5~1%である項目13に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目17.前記酸味料が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)、酒石酸からなる群から選択される1以上であり、好ましくは酢酸であり、前記局所医薬組成物において、前記酸味料の濃度(w/v)が、>1.5%であり、好ましくは3.5~15%である項目13に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目18.前記アルカリ化剤が、強塩基及び弱塩基を含み、前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムから選択される1以上であり、前記医薬組成物中の前記強塩基の濃度(w/v)が、≧0.5%であり、好ましくは0.5~7.5%又は0.75~7.5%であり、前記弱塩基が、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ砂、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、重硫酸ナトリウム、アンモニア水、塩化アンモニウム、2-アミノエタノール、トロメタミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノエタノール、メグルミン、N-エチル-D-グルカミンから選択される1以上であり、前記医薬組成物中の前記弱塩基の濃度(w/v)が、≧1%であり、好ましくは2~35%又は3~35%である項目13に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目19.前記サリチル酸化合物が、サリチル酸、アセチルサリチル酸、アスピソルからなる群から選択される1以上であり、前記局所医薬組成物において、前記サリチル酸化合物の濃度(w/v)が、1%超であり、好ましくは3~10%である項目13に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目20.前記キニーネ化合物が、水溶性キニーネ化合物又はアルコール可溶性キニーネ化合物から選択され、好ましくは、キニーネ塩酸塩、キニーネ二塩酸塩、及びキニーネ硫酸塩から選択される1以上であり、前記局所医薬組成物において、前記キニーネ化合物の濃度(w/v)が、1%超であり、好ましくは3~10%である項目13に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目21.前記局所医薬組成物において、前記アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)が、5~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%であり、前記抗腫瘍化学療法剤の濃度(w/v)が、0.03~5%であり、好ましくは0.1~2%又は0.05~4%である項目12に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目22.前記抗腫瘍化学療法剤が、DNAの構造及び機能を損なわせる薬剤、DNAに埋め込まれてRNAの転写を阻害する薬剤、DNA合成を阻害する薬剤、及びタンパク質合成に影響を及ぼす薬剤から選択される1以上であり、前記医薬組成物において、前記抗腫瘍化学療法剤の濃度が、その飽和濃度の30%超であり、好ましくは、その飽和濃度の50%~100%であり、前記飽和濃度は、前記液体担体中の前記抗腫瘍化学療法剤の飽和濃度を意味する項目12に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目23.前記抗腫瘍化学療法剤が、ウラシル誘導体、シクロホスファミド、ゲムシタビン、エピルビシン、抗腫瘍抗生物質、テニポシド、金属白金錯体、及びタキサンからなる群から選択される1以上であり、好ましくは、以下の薬剤:ウラシル、シクロホスファミド、ゲムシタビン、エピルビシン、抗腫瘍抗生物質、テニポシド、及び金属白金錯体、及びそれらの類似の誘導体から選択される1以上である項目21に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目24.前記抗腫瘍化学療法剤が、水溶性抗腫瘍化学療法剤又はアルコール可溶性抗腫瘍化学療法剤から選択される項目21から22のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目25.前記薬学的に許容される液体担体が、水及び/又はエタノールである項目3から24のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目26.前記医薬組成物が、注射剤の剤形であり、前記注射剤が、液体注射剤及び注射可能な粉末調製物を含む項目1から25のいずれかに記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目27.前記注射可能な粉末調製物が、滅菌乾燥粉末及び溶媒を含み、前記アミノ酸ベースの栄養素及び前記従来の非有効化合物の一部又は全部が、前記滅菌乾燥粉末に含まれ、前記液体担体が前記溶媒に含まれ、前記アミノ酸ベースの栄養素及び前記従来の非有効化合物の濃度が、それぞれ、前記滅菌乾燥粉末及び溶媒混合物中の濃度である項目26に記載の使用、方法、又は医薬組成物。
項目26.局所病変疾患を治療するための局所医薬組成物であって、項目5から25のいずれかに記載の医薬組成物の一部又は全部を凍結乾燥又は半凍結乾燥することによって得られる乾燥粉末を含む局所医薬組成物。
項目27.局所病変疾患を予防及び治療するための方法であって、請求項5から26のいずれかに記載の医薬組成物を、それを必要とする個体に局所投与することを含む方法。
項目28.前記局所病変が、腫瘍、非腫瘍性肥大、局所炎症、異常な分泌腺機能、及び皮膚病を含む請求項1から27のいずれかに記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目29.前記腫瘍が、悪性腫瘍及び非悪性腫瘍を含む項目28に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目30.前記悪性腫瘍が、乳癌、膵臓癌、甲状腺癌、鼻咽頭癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、腸癌、口腔癌、食道癌、胃癌、喉頭癌、精巣癌、膣癌、子宮癌、及び卵巣癌を含む項目29に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目31.前記非悪性腫瘍が、乳房腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、前立腺腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、腸腫瘍、口腔腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、鼻咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、精巣腫瘍、膣腫瘍、子宮腫瘍、卵管腫瘍、卵巣腫瘍を含む項目29に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目32.前記非腫瘍性肥大が、過形成(乳房、膵臓、甲状腺、副甲状腺、前立腺の過形成など)、嚢胞(乳房、甲状腺、副甲状腺の嚢胞など)、結節(乳房、甲状腺、副甲状腺の結節など)、異常な静脈腫瘤(痔核など)、局所的な炎症及び腫脹、微生物感染及び腫脹を含む項目28に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目33.前記局所炎症が、局所部分の非腫瘍性炎症を意味し、変質性炎症、滲出性炎症、及び増殖性炎症を含む項目28に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目34.前記局所炎症が、関節炎、乳腺炎、膵臓炎、甲状腺炎、前立腺炎、肝炎、肺炎、腸炎、口内炎、咽頭炎、歯周炎、食道炎、胃炎、胃潰瘍、鼻炎、副鼻腔炎、喉頭炎、気管炎、気管支炎、膣炎、子宮炎、卵管炎、及び卵巣炎の1以上を含む項目28に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目35.前記異常な分泌腺機能が、分泌腺の機能亢進(甲状腺機能亢進症など)及び分泌腺の機能低下(甲状腺機能低下症、低インスリン症など)を含む項目28に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目36.前記皮膚疾患が、皮膚又は皮膚付属器官の原発性又は続発性の病変を意味し、皮膚癌、非悪性皮膚腫瘍、ウイルス性皮膚疾患(ヘルペス、疣贅、風疹、手足口病など)、細菌性皮膚疾患(膿痂疹、おでき、ライ病など)、真菌性皮膚疾患(各種白癬など)、性感染症(梅毒、淋病、尖圭コンジローマなど)、アレルギー性及び自己免疫性皮膚疾患(接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹など)、物理的皮膚疾患(太陽光皮膚病(solar skin diseases)、凍傷、魚の目、手足の皮膚のひび割れ、褥瘡)、結合組織疾患(紅斑性狼瘡など)、色素性皮膚疾患(そばかす、色素性母斑、各種斑点など)、皮膚付属器疾患(にきび、酒さ、脂漏性皮膚炎、円形脱毛症、禿頭症、多汗症、及び臭汗症など)の1以上を含む項目28に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
項目37.局所病変疾患を治療するためのデバイスであって、項目5から23のいずれかに記載の医薬組成物を含むデバイス。
項目38.エアロゾル生成器(aerosolizer)、アトマイザー、及びスプレイヤーを含む項目37に記載のデバイス。
【実施例】
【0187】
以下の特定の実施例は、本発明を更に説明するために用いられるが、本発明を限定するものとして用いられるものではない。以下の実施例では、実験動物はいずれも、関連する規制及び業界自主規制にしたがって実施した。特段の断りがない限り、試験はいずれも、従来の方法にしたがって行った。
【0188】
以下の特定の実施例で使用される材料及び試薬は、特段の断りがない限り、商業的供給源から入手することができる。以下の実施例で使用されるいくつかのアミノ酸ベースの栄養素、従来の非有効化合物、及び抗腫瘍化学療法剤を、表1に示す。
【表1】
【0189】
本発明において、L-アミノ酸はアミノ酸と略され(例えば、L-アルギニンはアルギニンと略される)、還元型グルタチオンはグルタチオンと略され、アラニル-グルタミンジペプチドはALA-GLNと略される。
【0190】
以下の実施例では、特段の断りがない限り、皮下移植腫瘍の動物試験を、薬剤投与当局によって発行された試験ガイドラインにしたがって実施した。試験動物は、Balb/cヌードマウス又は6~8週齢の体重17.5~20.5gのマウスとした。皮下移植は、腫瘍細胞の皮下接種のための従来法にしたがって行った。特段の断りがない限り、腫瘍が必要な体積(例えば、75~500mm3)まで成長したときに、PEMS 3.2ソフトウェア(West China School of Public Health, Sichuan University編集)を使用して、マウスをいくつかの群(各群6頭)に無作為に分けた。実験で観察、測定、分析する項目は、全身状態、体重、摂餌量、腫瘍体積、腫瘍重量、胸腺重量、脾臓重量などであった。
【0191】
腫瘍体積は、以下の式で計算される。
腫瘍体積(V)=1/2×a×b2
式中、「a」は腫瘍の長さを表し、「b」は腫瘍の幅を表す。
【0192】
腫瘍増殖阻害率(本発明では腫瘍抑制率と略記)は、以下の式で計算される。
腫瘍抑制率Y(%)=(CW-TW)/CW×100%
式中、TWは、試験群の平均腫瘍重量であり、CWは、陰性対照群の平均腫瘍重量である。
【0193】
以下の実施例において、実験結果(腫瘍重量など)を平均±標準偏差(x±s)として表し、統計ソフトウェアSPSS13.0又はSPSS19.0ソフトウェアを使用して、2つの実験動物群間の差と群平均値を比較して有意差検定を行い、統計量tを使用して検定を行った。ここで、検定レベルはα=0.05であり、P<0.05は、差が統計的に有意であることを示し、それ以外の場合は統計的有意性がない。
【0194】
本発明の文脈において、薬剤Aと薬剤Bの組合せは、B/Aと示す。以下の実施例では、特段の断りがない限り、薬剤Aと薬剤Bは、それぞれ、アミノ酸ベースの栄養素及び別の有効成分である。
【0195】
薬剤併用の効果(有効性と安全性を含む)は、理論的には、以下のqの判断に基づくことができる。
q=実際の併用効果/単純な加算の理論的に期待される効果
【0196】
q=1の場合、実際の併用効果は理論上の期待値と合致し、相加効果を示す。q<1の場合、実際の併用効果は理論上の期待値よりも低く、拮抗作用を示す。q>1の場合、実際の併用効果は理論上の期待値を上回り、相乗効果を示す。特段の断りがない限り、A又はBの単回使用の有効性(それぞれEA及びEBと示す)及びA/Bの実際の併用有効性(EA+Bと示す)はいずれも、腫瘍抑制率である。前記qの計算式における単純な加算の理論的に期待される薬剤効果を算定するための方法は多種存在するが、その大部分は、細胞実験効果のためのものである。
【0197】
抗腫瘍剤の有効性を改善することは、常に世界最大の医学的問題である。数パーセントでも有効性を改善することは非常に難しいので、動物実験での薬剤併用の理論的期待は通常高くはないが、そのような改善が実現すると、非常に重要である。動物実験の文献で抗腫瘍剤の併用の有効性を判断する一般的方法は、実際の併用効果が単回使用の効果を有意に超えることが、理論的期待値を遥かに超えることを示すという仮定に基づいている。具体的な判断は、(EA+B>EA且つEA+B>EB)の通りであり、組成物群と各成分群との差は、統計的に有意である(いずれもp<0.05)。
【0198】
動物実験における薬剤併用の効果を判断するための別の方法は、Burgi法とした(Burgi Y. Pharmacology; Drug actions and reactions. Cancer Res. 1978, 38(2), 284-285)。Jin Zhengjunは、Burgi法を改良し(Jin Zhengjun, Addition in combined medication, Chinese Journal of Pharmacology, 1980, 1(2), 70-76)、qを、以下の式で計算した。
q=EA+B/(EA+EB-EA・EB)
(EA+EB-EA・EB)は、薬剤Aと薬剤Bの期待される効果である。
【0199】
以下の抗腫瘍動物実験では、薬剤併用の効果を表2に示すように判断した。
【表2】
【0200】
実施例1:本発明の組成物におけるアミノ酸ベースの栄養素の使用に関する基礎研究
先行技術では、アミノ酸ベースの栄養素が、腫瘍の栄養摂取を促進し得ることがあることが報告されている。したがって、アミノ酸ベースの栄養素の抗腫瘍効果を予測すること、即ち、腫瘍を阻害する可能性があるのかどうか、又は腫瘍成長を助長する可能性があるのかを予測することは困難である。以下の実験を通して、本発明の組成物におけるアミノ酸ベースの栄養素の適用のための基本的な技術的解決策が最適化される。
【0201】
1.本発明の組成物における薬理学的に好ましいアミノ酸ベースの栄養素
この研究実験では、成功裏にモデル化された実験動物(膵臓癌細胞PANC-1を有するヌードマウス、平均腫瘍体積105mm
3)を、無作為に2つの陰性対照群と14の試験群に分けました。陰性対照は生理食塩水であり、7つの試験薬は以下の表に示す通りとした。それらを、腹腔内及び腫瘍内に注射した。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回100μl/マウスの用量で薬剤を与えた。薬剤投与終了の翌日、動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、各薬剤投与モードの陰性対照群から計算した。結果を表3に示す。
【表3】
【0202】
表3において、陽性対照(5-フルオロウラシル)は、抗腫瘍細胞剤として、予想通りの結果である。腹腔内注射群の結果は、抗腫瘍細胞剤が、腫瘍細胞を標的にする血中薬の形態で腫瘍の成長を阻害できることを示した。以前は、抗腫瘍細胞剤の腫瘍内投与は、薬剤の局所濃度を増加させることができ、それらの有効性を大幅に改善し得ると一般に信じられていた。しかし、表3に示すように、腫瘍内注射は、5-フルオロウラシルの腫瘍抑制率を有意に上昇させなかった。これは、腫瘍内に注射した場合、薬剤がその標的化(腫瘍細胞)及び薬効(腫瘍細胞の阻害)を実質的に変化させなかったことを示す。また、同一の組織内標的障壁に直面したことから、一貫した有効性を示している。したがって、遅延放出システム内に配されない限り、従来の抗腫瘍細胞剤は、局所投与ではなく、主に吸収によって投与される。
【0203】
表3において、アミノ酸ベースの栄養素の腹腔内注射は、通常適用(血液からの吸収)での予想通りであり、腫瘍抑制率は20%未満であり、効果がないと見なされた。予想外なことには、腫瘍内注射群の腫瘍体積の成長は、初回投与後3日目に腹腔内注射群よりも低くなり始めた。同一実験条件下では、明らかに有効な薬剤効果を示し、腹腔内注射群のよりも標的化及び薬効において有意差を示した。
【0204】
別の実験では、成功裏にモデル化された試験動物(膵臓癌細胞PANC-1を有するヌードマウス、平均腫瘍体積165mm3)を、無作為にブランク群(注射なし)と2つの試験群A及びBに分けた。群A及びBには、10%グルタチオン水溶液の腹腔内注射と腫瘍内注射を、それぞれ受けさせた。薬剤は、実施例1の調製方法にしたがって調製した。A及びBの両群に、薬剤を1回、それぞれ150μl投与した。薬剤投与終了の翌日、3群の動物を安楽死させ、組織学的観察のために腫瘍を解剖した。このような観察から、群Aとブランク群との間に明らかな差がない一方で、群Bはブランク群に対して有意な差を示し、明らかな腫瘍内組織破壊を示していることが分かった。
【0205】
前記結果によれば、本発明の組成物におけるアミノ酸ベースの栄養素の適用は、吸収によって腫瘍細胞を標的化及び阻害する従来の薬理学的選択よりも、その局所作用を介して腫瘍組織を標的化及び破壊する好ましい相乗的な薬効である。
【0206】
2.本発明の組成物におけるアミノ酸ベースの栄養素の好ましい必須組成物
この研究実験では、成功裏にモデル化された実験動物(膵臓癌細胞PANC-1を有するヌードマウス、平均腫瘍体積136mm
3)を、無作為に陰性対照群と28の試験群に分けた。陰性対照は通常の生理食塩水とした。試験薬の組成を以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。いずれの群にも、3日間ごとに1回、合計3回、腫瘍内注射した。各投与用量は、アルギニン≦1000mg/kg、還元型グルタチオン≦1000mg/kg、グルタミン酸塩酸塩≦500mg/kg、グルコース≦1500mg/kg、注射量≦150μlとした。薬剤投与終了翌日、動物を安楽死させた。解剖後、腫瘍重量を測定し、腫瘍抑制率を計算した。結果を表4に示す。
【表4】
【0207】
表4において、より広い濃度範囲(<2%、<5%、又は<10%)では、アミノ酸ベースの栄養素と炭水化物栄養素は、同様の傾向を示し、それらの腫瘍抑制率は、陰性対照群(腫瘍抑制率<20%)に対しても有意な差を示さず、局所薬剤濃度を2倍に増加させても、その腫瘍抑制率は上昇しなかった。濃度閾値(アルギニン濃度≧10%、還元型グルタチオン濃度≧5%、又はグルタチオン塩酸塩≧2%)に到達後、当該濃度での投与量が前の濃度での投与量と同一であっても、アミノ酸ベースの栄養素の腫瘍抑制率は、薬剤組成(薬剤の種類と局所投与濃度)に相関し始めた。グルコースはこの閾値を有さず、腫瘍抑制率の有意な上昇を示さなかった。これらの結果は、局所薬の組成が物質の種類(炭水化物栄養素ではなくアミノ酸ベースの栄養素)だけでなく、局所薬の有効成分の濃度(閾値未満ではなく、閾値超である)にも依存することを示す。
【0208】
前記試験及び更なる類似試験によれば、局所有効成分としての本発明の組成物におけるアミノ酸ベースの栄養素の適用のための技術的解決策は、局所投与であり、アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度が、≧2%、好ましくは3%~25%であり、前記アミノ酸ベースの栄養素が酸性アミノ酸塩を含む場合、前記アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度は、≧2%であり、好ましくは3%~25%であり;
前記アミノ酸ベースの栄養素が、アミノ酸又は/及び酸性アミノ酸塩以外のアミノ酸塩から選択される1以上である場合、前記アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度は、10%~25%であり;
前記アミノ酸ベースの栄養素が、オリゴペプチドの1以上から選択される場合、前記アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度は、7.5%~25%であり;
前記アミノ酸ベースの栄養素が、オリゴペプチド、アミノ酸、又は/及び酸性アミノ酸塩以外のアミノ酸塩の1以上を含む場合、前記アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度は、7.5%~25%である。
【0209】
前記結果及び類似試験によれば、本発明の組成物における局所有効成分としてのアミノ酸ベースの栄養素の適用(実験における腫瘍内注射)を、その従来の吸収性有効成分(吸収型薬剤の栄養成分として通常使用される)の適用(実験における腹腔内注射)と比較すると、以下の本質的な違いが存在する。
1)標的化が異なる。吸収型薬剤(機能性食品など)に含まれるアミノ酸ベースの栄養素は、体内に入り、血中で分散する。薬剤を運搬する血液が受動的に標的領域に入った後、それらは、血管壁及び他の組織障壁の浸透によって、制御された条件下で腫瘍細胞を標的とするなどの標的化のみを行うことができる。本発明の局所薬剤中のアミノ酸ベースの栄養素は、例えば、血液供給血管、細胞間物質、及び/又は腫瘍組織内の他の微小環境構造を含む病理組織(腫瘍内組織など)を直接標的とする。
2)対象領域における薬剤の組成が異なる。医薬組成物中のアミノ酸ベースの栄養素が体内に吸収された後、標的領域の薬剤運搬血液中の組成は、元の薬剤中の組成(例えば、遊離アミノ酸ベースの栄養素の濃度)と大幅に異なる。この組成は、もはや以前の組成ではない。対象領域における薬液において、本発明の局所医薬組成物中のアミノ酸ベースの栄養素の組成は、基本的に元の薬剤の組成と同一である。
3)各種標的化と各種組成は、各種薬効をもたらす。血液を介して輸送される栄養素は、腫瘍細胞と他の細胞の両方に栄養効果があることが文献で示されている。前記試験においては、吸収された薬剤(腹腔内注射群)のアミノ酸ベースの栄養素は、グルコースと異なる又は通常の生理食塩水は大幅に異なる腫瘍阻害効果を示さなかった。局所組成物(腫瘍内注射群)のアミノ酸ベースの栄養素は、腫瘍組織を破壊し、腫瘍細胞に生存と増殖の基礎を喪失させるための局所有効成分として使用された。同一投与量では、2つの群の異なる薬理効果は全く異なっていた。
4)薬物動態効果が異なる。吸収された薬剤(細胞毒性剤など)は、多くの場合、細胞実験の結果に基づいており、その重要な薬物動態パラメータは、有効成分の血中濃度であり(多くの場合、細胞実験の有効濃度に近い)。血中薬剤濃度は通常、投与濃度(投与のために希釈されることが多い)ではなく、投与用量によって保証される。局所有効成分として使用されるアミノ酸ベースの栄養素は、全く異なる薬物動態を示す。前記試験では、局所投与濃度閾値と局所投与濃度間隔が存在した。濃度閾値を超え、特定の濃度間隔内でおいてのみ、局所的活性をもたらすことができた。
【0210】
実施例2:本発明の組成物におけるアミノ酸ベースの栄養素の適用の細胞非依存性に関する研究
腫瘍の重要な特徴の1つは異種性である。従来の細胞毒性薬は主に腫瘍細胞を標的とするので細胞依存性を示す。局所有効成分としての機能と吸収性有効成分との本質的な違い(例えば、細胞毒性を示す)を更に確認するために、以下の実験では、局所有効成分としてのアミノ酸ベースの栄養素の細胞非依存性を研究した。以下の実験では、ヒト腫瘍細胞を有し、成功裏にモデル化されたヌードマウスを無作為に1つの陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に分けた。対応する陰性対照は通常の生理食塩水とした。4種の試験薬は、20%アルギニン、3%グルタミン酸塩酸塩、10%アラニル-グルタミン、及び10%グルタチオンとした。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回100μl/マウスで腫瘍内注射した。薬剤投与終了の翌日に、動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、それぞれの陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。
【0211】
1)乳房腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト乳癌細胞(MDA-MB231)(平均腫瘍体積71mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ55%、61%、57%、及び64%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0212】
2)肺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肺癌細胞(A549)(平均腫瘍体積83mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ53%、57%、52%、及び59%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0213】
3)甲状腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト甲状腺癌細胞(SW579)(平均腫瘍体積103mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ62%、63%、59%、及び61%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0214】
4)前立腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP/AR)(平均腫瘍体積91mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ55%、59%、61%、及び65%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0215】
5)肝腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肝癌細胞(HepG2)(平均腫瘍体積81mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ63%、62%、56%、及び61%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0216】
6)頭頸部腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒトの頭頸部癌細胞(Fμda)(平均腫瘍体積109mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ56%、58%、51%、及び53%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0217】
7)鼻咽頭腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト鼻咽頭癌細胞(CNE1)(平均腫瘍体積78mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ63%、68%、63%、及び61%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0218】
8)胃腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト胃癌細胞(BGC823)(平均腫瘍体積85mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ52%、57%、51%、及び59%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0219】
9)卵巣腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト卵巣癌細胞(PA1)(平均腫瘍体積104mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分けた。群A、B、C、及びDの腫瘍抑制率は、それぞれ56%、61%、62%、及び67%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0220】
前記試験及び他の類似試験は、細胞毒性薬としてのその適用とは全く異なり、本発明の組成物中のアミノ酸ベースの栄養素が、腫瘍細胞を標的とする(したがって、腫瘍細胞に依存する)のではなく、腫瘍組織を標的とする(したがって、明らかな腫瘍細胞依存性がない)ことを更に示す。
【0221】
実施例3:本発明の医薬組成物の調製
本発明の組成物の前記調製方法によれば、本発明の多くの異なる組成物を調製することができる。この実施例で調製された本発明のいくつかの組成物の成分を、表5に列挙する。
【表5】
【0222】
1.液体注射剤の調製(1)
アミノ酸ベースの栄養素(例えば、10gのグルタチオン)、抗腫瘍化学療法剤又は/及び従来の非有効化合物(例えば、30gのグルコース)、任意に他の成分、及び一定の合計量(例えば、100ml)に調整した液体担体(例えば、注射用水)を秤量し、必要な濃度に応じて採取した(表5参照)。混合物をゆっくりと均一に混合し、滅菌及び濾過し、次いで、保存用に必要量(例えば、10ml/ボトル)に分けた。この製剤(例えば、10%グルタチオン/30%グルコース水溶液)は、液体薬剤として局所投与することができる。
【0223】
2.液体注射剤の調製(2)
1)アミノ酸ベースの栄養素(例えば、10gのグルタチオン)、抗腫瘍化学療法剤、又は/及び従来の非有効化合物(例えば、30gのグルコース)、任意に他の成分、及び一定の合計量(例えば、85ml)に調整した液体担体(例えば、注射用水)を秤量し、必要な濃度に応じて採取した(表5参照)。混合物をゆっくりと均一に混合し、滅菌及び濾過し、次いで保存用に必要な量(例えば、8.5ml/ボトル)に分けた。これを、溶液Iとした。
【0224】
2)酸味料(例えば、5gの酢酸)、任意に他の成分、及び一定の合計量(例えば、15ml)に調整した溶媒(例えば、注射用水)を秤量し、必要な濃度(表5に記載)に応じて採取し、ゆっくりと均一に混合し、滅菌及びろ過し、後に使用するために保存用に必要な量(例えば、1.5ml/ボトル)に分けた。これを、溶液IIとした。
【0225】
3)溶液I及び溶液IIは、各成分の必要な濃度にしたがって均一に混合し(例えば、8.5mlの溶液I及び1.5mlの溶液IIを混合)、局所投与用液剤として使用する混合溶液(例えば、10%グルタチオン/30%グルコース/5%酢酸水溶液)とした。
【0226】
3.注射用粉末製剤の調製
1)アミノ酸ベースの栄養素(例えば、10gのグルタチオン)、抗腫瘍化学療法剤又は/及び従来の非有効化合物(例えば、30gのグルコース)、任意に別の成分、及び一定の合計量(例えば、100ml)に調整した溶媒(例えば、注射用水)を秤量し、必要な濃度(表5に記載)に応じて採取し、ゆっくりと均一に混合し、滅菌及びろ過し、凍結乾燥、ストッパリング、キャッピングに必要な量(例えば、10ml/ボトル)に分け、後に使用する滅菌乾燥粉末に調製した。
【0227】
2)任意に、残りの成分(5gの酢酸など)、及び一定の合計量(例えば、100ml)に調整した液体担体(例えば、注射用水)を秤量し、必要な濃度(表5に記載)に応じて採取し、ゆっくりと均一に混合し、滅菌及びろ過し、必要な量(例えば、10ml/ボトル)に分けて、後に使用する滅菌液に調製した。
【0228】
3)必要な量の滅菌粉末(例えば、前記乾燥粉末の1ボトル)を、各成分の必要な濃度にしたがって、必要な量(例えば、前記溶媒の1ボトル)の滅菌液体中で再構成し、局所投与用の液体薬剤として使用される再構成溶液(例えば、10%グルタチオン/30%グルコース/5%酢酸水溶液)とした。
【0229】
4.外用液の調製
アミノ酸ベースの栄養素(10gのグルタチオン)、従来の非有効化合物(例えば、30gのグルコース)、任意に他の成分、及び合計量の80%~90%(例えば、80~90ml)の一定量に調整された溶媒(例えば、水)を秤量し、必要な濃度(表5に記載)にしたがって採取し、ゆっくりと均一に混合してから、残りの従来の非有効化合物(例えば、5gの酢酸)を添加した。任意の残っている他の成分(存在する場合)、及び一定の合計量(例えば、100ml)に調整した溶媒(注射用水など)を採取、ゆっくりと均一に混合した。この製剤(例えば、30%グルコース/10%グルタチオン/5%酢酸水溶液)は、局所投与用の局所液体薬剤として直接使用することができる。
【0230】
5.噴霧製剤の調製
アミノ酸ベースの栄養素(例えば、3gのグルタミン酸塩酸塩)、従来の非有効化合物(例えば、30gのグルコース)、及び噴霧製剤のための以下の補助材料:グリセロール(2.5g)、ポリソルベート-80(1.5g)、塩化ベンザルコニウム(0.02g)、微結晶性セルロース-カルボキシメチルセルロースナトリウム(1.5g)、及び一定の合計量(100mlなど)に調整した溶媒(注射用水など)を秤量し、必要な濃度(表5に記載)にしたがって採取し、後に使用するためにゆっくりと混合した。この製剤(例えば、30%グルコース/3%グルタミン塩酸塩を含むスプレーのストック溶液)をスプレイヤーに添加した後、標的領域に直接噴霧して液体薬剤を形成することができる。
【0231】
実施例4:薬理学的に好ましい相乗的組成物
前記実施例1及び2の研究は、アミノ酸ベースの栄養素が、必要な条件(局所投与、濃度閾値)の下で、局所活性を示すことができることを示す。あらゆる有効成分と同様に、アミノ酸ベースの栄養素を他の物質と共に使用すると、相乗効果をもたらすことがあり、また、相加効果ももたらすことがあり、また、拮抗作用ももたらすことがある。利用可能な非常に少ない臨床オプションから、(数万の)抗腫瘍有効成分が(数十の)有効薬になるための(数十万の)併用オプションを通して相乗効果をもたらす可能性は非常に低いことが分かる。
【0232】
1.アミノ酸ベースの栄養素/従来の非有効化合物組成物
実験では、成功裏にモデル化された実験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積153mm
3)を、無作為に2つの陰性対照群と22の試験群に分けた。陰性対照群には通常の生理食塩水を投与した。11種の治験薬を以下の表に示した。それらを、腹腔内及び腫瘍内に注射した。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回≧120μl/マウスの注射量で投与した。投与終了後5日目に、動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、各薬剤投与モードの陰性対照群から計算した。結果を表6に示す。
【表6】
【0233】
表6において、陽性対照(5-フルオロウラシル)は、抗腫瘍細胞剤として、予想通りの結果である。腹腔内注射群の結果は、抗腫瘍細胞剤が、腫瘍細胞を標的にする血中薬の形態で腫瘍の成長を阻害できることを示した。以前は、抗腫瘍細胞剤の腫瘍内投与は、薬剤の局所濃度を増加させることができ、それらの有効性を大幅に改善し得ると一般に信じられていた。しかし、表6に示すように、腫瘍内注射は、5-フルオロウラシルの腫瘍抑制率を有意に上昇させなかった。これは、腫瘍内に注射した場合、薬剤がその標的化(腫瘍細胞)及び薬効(腫瘍細胞の阻害)を実質的に変化させなかったことを示す。また、同一の組織内標的障壁に直面したことから、一貫した有効性を示している。したがって、遅延放出システム内に配されない限り、従来の抗腫瘍細胞剤は、局所投与ではなく、主に吸収によって投与される。
【0234】
表6において、アミノ酸ベースの栄養素/従来の非有効化合物組成物の腹腔内注射群は、通常の適用(血液を介した吸収)で期待通りの結果を示し、腫瘍抑制率は20%未満であり、相乗効果を示さなかった。予想外なことには、腫瘍内注射群の腫瘍体積の成長は、初回投与後3日目に腹腔内注射群よりも低くなり始めた。組成物の各グループ(試験群7~11)において、腫瘍内注射によって示された腫瘍抑制率は、腹腔内注射よりも10倍超高く、成物の腹腔内注射群とは有意に異なる標的化及び薬効を示した。
【0235】
前記表において、以下の組成物の腫瘍内注射群のqは、1.00より大きく、腫瘍重量において各成分群と統計的に有意(p<0.05、p<0.05)な差があったので、これらの組成物群は有意な相乗効果を示した。即ち、10%グルタチオン/25%グルコース(q=1.17>1.00、10%グルタチオン群及び25%グルコース群との腫瘍重量差が、P<0.05)、10%グルタチオン/0.7%メチレンブルー(q=1.40>1.00、10%グルタチオン群及び0.7%メチレンブルー群との腫瘍重量差が、P<0.05)、10%グルタチオン/5%DHA(q=1.02>1.00)、10%グルタチオン群及び5%DHA群との腫瘍重量差が、P<0.05)、10%グルタチオン/25%グルコース/3.5%酢酸(q=1.01>1.00、10%グルタチオン/3.5%酢酸群及び25%グルコース群との腫瘍重量差が、P<0.05)の各組成物である。
【0236】
前記の表において、試験群8の腫瘍抑制率は、試験群2及び試験群4のそれぞれの腫瘍抑制率よりも高く(EA+B>EA及びEA+B>EB)、組成物群8と組成物群2との間の腫瘍重量の差及び組成物群8と組成物群4との間の腫瘍重量の差が、統計的に有意(それぞれP<0.05、P<0.05)であったので、組成物試験群は相乗効果を示した。
【0237】
本発明の他の組成物(例えば、表5の組成物)を使用する実験でも、同様の結果を得ることができる。
【0238】
別の実験では、成功裏にモデル化された試験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積161mm
3)を、ブランク対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。陰性対照群には生理食塩水を投与した。5種の試験薬の組成と注射方法を、以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、≦130μl/マウスの注射量で1回投与した。投与終了翌日、動物を安楽死させ、組織学的観察のために腫瘍を解剖した。腫瘍内組織破壊は、ブランク対照群を0で示し、5%酢酸群を5で示すことによって区別した。結果を表7に示す。
【表7】
【0239】
前記の表の結果は、腫瘍内注射中の組成物群(群B)の相乗的な破壊効果を更に裏付けた。
【0240】
2.アミノ酸ベースの栄養素/抗腫瘍細胞薬剤の組成物
この実験では、成功裏にモデル化された実験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積175mm
3)を無作為に2つの陰性対照群と14の試験群に分けた。陰性対照群には通常の生理食塩水を投与した。7種の試験薬を以下の表に示す。これらを、腹腔内及び腫瘍内に注射した。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回≦150μl/マウスの注射量で投与した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物を解剖後に腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、各投与方法の陰性対照群から計算した。結果を表8に示す。
【表8】
【0241】
前記表において、各組成物の腫瘍内注射群の腫瘍抑制率は、その各成分群のいずれよりも大きく(EA+B>EA及びEA+B>EB)、腫瘍重量に関して、各成分群との統計的に有意な差(p<0.05、p<0.05)があったので、これらの組成物群はいずれも相乗効果を示した:1%の5-フルオロウラシル/20%のアルギニン(より高い腫瘍抑制率、及び1%の5-フルオロウラシル群及び20%のアルギニン群との腫瘍重量差が、P<0.05であった)、1%の5-フルオロウラシル/20%のグリシン(より高い腫瘍抑制率、及び1%の5-フルオロウラシル群及び20%のグリシン群との腫瘍重量差が、P<0.05であった)、1%の5-フルオロウラシル/10%のグルタチオン(比較的高い腫瘍抑制率、及び1%の5-フルオロウラシル群及び10%のグルタチオンとの腫瘍重量差が、P<0.05であった)。
【0242】
別の実験では、成功裏にモデル化された試験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積171mm
3)を無作為にブランク対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に分けた。陰性対照群には生理食塩水を投与した。5種の試験薬の組成と注射方法を以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、≦130μl/マウスの注射量で1回投与した。投与終了翌日、動物を安楽死させ、組織学的観察のために腫瘍を解剖した。腫瘍内組織破壊は、ブランク対照群を0で示し、5%酢酸群を5で示すことによって区別した。結果を表9に示す。
【表9】
【0243】
前記の表の結果は、腫瘍内注射中の組成物群(群B)の相乗的な破壊効果を更に裏付けた。
【0244】
3.組成物の相乗的薬効のマウス試験
以下の実験では、マウスをヌードマウスに代えて実験動物として使用した。前者は、正常な免疫系を有するので、臨床患者により近い。
【0245】
一実験において、試験動物はBALB/cマウスとし、モデリング細胞は乳癌4T1細胞として、移植腫瘍を、動物の右腋窩の皮下にて1×10
6細胞/マウスでモデル化した。成功裏にモデル化された実験動物(平均腫瘍体積336mm
3)を、無作為に14の実験群に分けた(以下の表に示す)。実験群を、1つの陰性対照群(群0)と13の試験群(群1~13)に分けた。陰性対照群には生理食塩水を投与した。試験薬を以下の表に示した。これらはいずれも腫瘍内注射した。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl//マウスの注射量で投与した。投与中、動物の全身状態及び投与後の腫瘍周辺の正常組織の壊死の程度を観察した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、各投与方法の陰性対照群から計算した。結果を表10に示す。
【表10】
【0246】
前記表において、各組成物の腫瘍内注射群のqは相乗効果を示し(q>1.00)、組成物の腫瘍内注射群と各成分群との間の腫瘍重量差は統計的に有意であった(p<0.05、p<0.05)。これらの組成群はいずれも有意な相乗効果を示した。具体的には、20%のアルギニン/1%の5-フルオロウラシル群(q=1.26>1.00、20%のアルギニン群及び1%の5-フルオロウラシル群との腫瘍重量差は、P<0.05であった)、15%のアルギニン/4%の重炭酸ナトリウム/7%の炭酸ナトリウム(q=1.09>1.00、15%のアルギニン群及び4%の重炭酸ナトリウム/7%の炭酸ナトリウム群との腫瘍重量差は、P<0.05であった)、15%のアルギニン/7%の重炭酸ナトリウム/3%のNaOH(q=1.13>1.00、15%のアルギニン群及び7%の重炭酸ナトリウム/3%のNaOH群との腫瘍重量差は、P<0.05であった)、20%のグリシン/10%の酢酸(q=1.22>1.00、20%のグリシン群及び10%の酢酸群との腫瘍重量差は、P<0.05であった)、及び20%のアルギニン/1%のNaOH(q=1.29>1.00、20%のアルギニン群及び1%のNaOH群との腫瘍重量差は、P<0.05であった)である。
【0247】
前記試験及び更なる類似試験によれば、以下の結論を導き出すことができる。即ち、アミノ酸ベースの栄養素が局所活性を示すために必要な条件下(局所投与+局所濃度閾値)において、腫瘍組織を標的とし破壊するアミノ酸ベースの栄養素の薬効は、他の有効成分(従来の非有効化合物及び/又は抗腫瘍化学療法剤)との局所的な相乗効果をもたらし得る。以下の実施例では、相乗効果の技術的解決策を更に試験する。
【0248】
実施例5:相乗的な技術解決策に関する更なる研究
実際には、アミノ酸ベースの栄養素と他の有効成分との間の相乗効果の可能性は、そのような相乗効果が必要であることを意味しない。以下の実験では、各種条件下において、併用によってもたらされる様々な効果(相乗効果、付加効果、拮抗作用)を試験する。
【0249】
1.アミノ酸ベースの栄養素/従来の非有効化合物の組成物
この実験では、成功裏にモデル化された実験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積164mm
3)を、無作為に陰性対照群と46の試験群に分けた。陰性対照群には通常の生理食塩水を投与した。試験薬の組成を以下の表に示す。即ち、アミノ酸ベースの栄養素単剤の4つの種類と濃度(X%のアミノ酸ベースの栄養素)、非有効吸収剤の18の種類と濃度(Y%の非有効吸収剤)、アミノ酸ベースの栄養素と非有効吸収剤の様々な種類と濃度を含む24の組成物(X%のアミノ酸ベースの栄養素/Y%の非有効吸収剤)である。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製し。いずれの群にも、腫瘍内に、3日間ごとに1回、合計3回注射した。各投与の用量は、グルタチオン≦1000mg/kg、アルギニン≦1500mg/kg、塩酸≦50mg/kg、酢酸≦375mg/kg、メチレンブルー≦100mg/kg、キニーネ二塩酸塩≦250mg、グルコース≦2250mg/kg、注射量≦150μlとした。投与終了後5日目に、動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、陰性対照群から腫瘍抑制率を算出した。各試験群の腫瘍抑制率を表11に示す。
【表11】
*:行の括弧内のデータは、X%アミノ酸ベースの栄養素群の平均腫瘍抑制率を示す。例えば、2.5%グルタチオン群の平均腫瘍抑制率は12%であった。
**:列の括弧内のデータは、Y%の従来の非有効化合物群の平均腫瘍抑制率を示す。例えば、20%酢酸群の平均腫瘍抑制率は92%であった。
***:括弧なしのデータは、X%のアミノ酸ベースの栄養素/Y%の従来の非有効化合物群の平均腫瘍抑制率を示す。例えば、2.5%グルタチオン/20%酢酸群の平均腫瘍抑制率は93%であった。
【0250】
前記表において、以下の組成物群と少なくとも1つの成分群との間で、腫瘍重量に統計的に有意な差(p>0.05)がないので、これらの組成物群によって示される有効性は付加効果に過ぎない:2.5%グルタチオン/20%酢酸、20%アルギニン/1%酢酸、2.5%グルタチオン/2%塩酸、20%アルギニン/0.25%塩酸、2.5%グルタチオン/10%ベンガルレッド、2.5%グルタチオン/40%グルコース、20%アルギニン/5%グルコース、2.5%グルタチオン/5%DHA。
【0251】
前記表において、各組成物の腫瘍内注射群の腫瘍抑制率は、その各成分群のいずれよりも大きく(EA+B>EA及びEA+B>EB)、各成分群との腫瘍重量に統計的に有意な差(p<0.05、p<0.05)があったので、以下の組成物群はいずれも相乗効果を示した:20%アルギニン/2%酢酸、10%アルギニン/1%塩酸、20%アルギニン/0.5%塩酸。
【0252】
前記表において、以下の組成物群のqは>1.00であり、各成分群との腫瘍重量の差が統計的に有意(p<0.05、p<0.05)であったので、これらの組成群は有意な相乗効果を示した:5%グルタチオン/5%酢酸(q=1.06)、5%グルタチオン/1%塩酸(q=1.01)、5%グルタチオン/10%ベンガルレッド(q=1.02)、5%グルタチオン/40%グルコース(q=1.42)、5%グルタチオン/5%DHA(q=1.03)、10%アルギニン/5%ベンガルレッド(q=1.06)、20%アルギニン/0.35%メチレンブルー(q=1.041、10%アルギニン/30%グルコース(q=1.14)、20%アルギニン/20%グルコース(q=1.15)、20%アルギニン/5%DHA(q=1.04)、20%アルギニン/3%DHA(q=1.04)。
【0253】
別の実験では、試験動物をBALB/cマウスとし、モデリング細胞を乳癌4T1細胞とし、移植腫瘍を、動物の右腋窩の皮下にて1×10
6細胞/マウスでモデル化した。成功裏にモデル化された実験動物(平均腫瘍体積317mm
3)を、無作為に1つの陰性対照群(群0)と9つの薬剤試験群(1~9)に分けた。陰性対照群は通常の生理食塩水とした。試験薬を以下の表に示し。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製し。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl/マウスの注射量で腫瘍内注射により投与した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後の腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、陰性対照群から計算した。結果を表12に示す。
【表12】
【0254】
前記表において、試験群7、1、及び6のうち、組成物群7と試験群1の腫瘍抑制率に大きな差はなく、これらの2群の残存腫瘍重量に有意差がなかった(p>0.05)ので、相乗効果を示さなかった。試験群8、2、及び4のうち、組成物群8のqは1.14>1.00であり、群2及び4との残存腫瘍重量の差がそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。試験群9、3、及び5のうち、組成物群9のqは1.31>1.00であり、群3及び5との残存腫瘍重量の差がそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。
【0255】
別の実験では、試験動物をBALB/cマウスとし、モデリング細胞を乳癌4T1細胞とし、移植腫瘍を、動物の右腋窩の皮下にて1×10
6細胞/マウスでモデル化した。成功裏にモデル化された実験動物(平均腫瘍体積307mm
3)を、無作為に1つの陰性対照群(群0)と13の薬剤試験群(1~13)に分けた。陰性対照群は通常の生理食塩水とした。試験薬を以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl/マウスの注射量で腫瘍内注射により投与した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後の腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、陰性対照群から計算した。結果を表13に示す。
【表13】
【0256】
前記表において、試験群7、1、及び6のうち、組成物群7と単剤群1の腫瘍抑制率に大きな差はなく、これらの2群間における残存腫瘍重量に有意差はなかった(p>0.05)ので、相乗効果を示さなかった。試験群8、1、及び4のうち、組成物群8のqは1.43>1.00であり、群1及び4との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。試験群9、2、及び5のうち、組成物群9のqは1.43>1.00であり、群2及び5との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。同様に、組成物群10も明らかな相乗効果を示したが、その腫瘍抑制率は組成物群9の僅か60%であった。試験群11、3、及び5のうち、組成物群11及び単剤群5の腫瘍抑制率に大きな差はなく、これらの2群間における残存腫瘍重量に有意差がなく(p>0.05)、相乗効果を示さなかった。
【0257】
更に、試験群13、12、及び9のうち、組成物群13のqは1.16>1.00であり、群12及び9との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。この結果は、pHの変化が殆どない条件下で、相乗剤の添加が組成物の性質を変化させ(例えば、緩衝能を上昇させ)、組成物が相乗効果を示すようにすることができることを改めて示している。
【0258】
別の実験では、試験動物をBALB/cマウスとし、モデリング細胞を乳癌4T1細胞とし、移植腫瘍を、動物の右腋窩の皮下にて1×10
6細胞/マウスでモデル化した。成功裏にモデル化された実験動物(平均腫瘍体積325mm
3)を、無作為に1つの陰性対照群(群0)と5つの薬剤試験群(1~5)に分けた。陰性対照群は通常の生理食塩水とした。試験薬を以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間に1回、合計3回、各回150μl/マウスの注射量で腫瘍内注射により投与した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後の腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、陰性対照群から計算した。結果を表14に示す。
【表14】
【0259】
前記表において、試験群3、1、及び2のうち、組成物群3のqは1.34>1.00であり、群1及び2との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。試験群5、3、及び4のうち、組成物群5のqは1.08>1.00であり、群3及び4との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。
【0260】
別の実験では、試験動物はBALB/cマウスとし、モデリング細胞を乳癌4T1細胞とし、移植腫瘍を、動物の右腋窩の皮下にて1×10
6細胞/マウスでモデル化した。成功裏にモデル化された実験動物(平均腫瘍体積316mm
3)を、1つの陰性対照群(群0)と5つの薬剤試験群(1~5)に分けた。陰性対照群は通常の生理食塩水とした。試験薬を以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl/マウスの注射量で腫瘍内注射により投与した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後の腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、陰性対照群から計算した。結果を表15に示す。
【表15】
【0261】
前記表において、試験群3、1、及び2のうち、組成物群3のqは1.04>1.00であり、群2及び1との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らかな相乗効果を示した。更に、試験群5、3、及び4のうち、組成物群5のqは1.05>1.00であり、群3及び4との残存腫瘍重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(いずれもp<0.05)、明らか相乗効果を示した。この結果は、pHの変化が殆どない条件下で、相乗剤の添加が組成物の性質を変化させ(例えば、緩衝能を上昇させ)、組成物が相乗効果を示すようにすることができることを改めて示している。
【0262】
更に、前記試験及び他の類似試験によれば、アミノ酸ベースの栄養素、酸味料又は/及びアルカリ化剤を含む本発明の医薬組成物の大部分は、pH緩衝能を有しており、通常、>0.01mol・L-1・pH-1、好ましくは0.04~0.45mol・L-1・pH-1、より好ましくは0.05~0.45mol・L-1・pH-1の緩衝能を有していた。
【0263】
2.アミノ酸ベースの栄養素/抗腫瘍細胞薬剤の組成物
この実験では、成功裏にモデル化された実験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積169mm
3)を、無作為に陰性対照群と16の試験群に分けた。陰性対照群は通常の生理食塩水とした。以下の表に示すように、16種の試験薬の組成物は、4種の濃度が異なる5-フルオロウラシル単剤(X%の5-フルオロウラシル)、5種の濃度が異なるアミノ酸ベースの栄養素(Y%のアミノ酸ベース栄養素)、様々な濃度の5-フルオロウラシルと様々な濃度のアミノ酸ベースの栄養素からなる7種の組成物(X%の5-フルオロウラシル/Y%のアミノ酸ベースの栄養素)を含む。薬物はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。使用した5-フルオロウラシルの飽和濃度(Canti)は、約1.5%であった。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、腫瘍内に注射した。各時点での投与量は、5-フルオロウラシルを50mg/kg、グルタチオンを≦1g/kg、注射量≦150μl/マウスとした。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。腫瘍抑制率は、陰性対照群から計算した。結果を表16に示す。
【表16】
*:行の括弧内のデータは、X%の5-フルオロウラシル群の平均腫瘍抑制率を示す。例えば、0.5%の5-フルオロウラシル群の平均腫瘍抑制率は59%であった。
**:列の括弧内のデータは、Y%のアミノ酸ベースの栄養素群の平均腫瘍抑制率を示す。例えば、20%のアルギニン群の平均腫瘍抑制率は61%であった。
***:括弧なしのデータは、X%の5-フルオロウラシル/Y%のアミノ酸ベースの栄養素群の平均腫瘍抑制率を示す。例えば、0.5%の5-フルオロウラシル/20%のアルギニン群の平均腫瘍抑制率は63%であった。
【0264】
前記表において、以下の組成群の腫瘍抑制率は、それらの各成分群のいずれよりも高く(EA+B>EA及びEA+B>EB)、各成分群との腫瘍重量に統計的に有意な差があった(p<0.05、p<0.05)ので、これらの組成物群はいずれも相乗効果を示した:0.75%の5-フルオロウラシル/20%のアルギニン、0.75%の5-フルオロウラシル/10%のグルタチオン、1%の5-フルオロウラシル/10%のグルタチオン、1%の5-フルオロウラシル/3%のグルタメート。
【0265】
前記表において、以下の組成群と少なくとも1つの各成分群との間で腫瘍重量に殆ど差がないので、これらの組成物群によって示される有効性は、付加効果に過ぎない:0.5%の5-フルオロウラシル/20%アルギニン、1.5%の5-フルオロウラシル/2.5%のグルタチオン。
【0266】
別の実験では、試験動物をBALB/cマウスとし、モデリング細胞を乳癌4T1細胞とし、移植腫瘍を、動物の右腋窩の皮下に1×10
6細胞/マウスでモデル化した。成功裏にモデル化された実験動物(平均腫瘍体積317mm
3)を、無作為に陰性対照群と16の試験群に分けた。陰性対照群は生理食塩水とした。試験薬の組成を以下の表に示す。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl/マウスの投与量で腫瘍内注射した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。各試験剤群の腫瘍抑制率を表17に示す。
【表17】
【0267】
前記表において、各組成群のqは>1.00であり、相乗効果を示し、組成群と単一成分群との腫瘍重量差は統計的に有意であった(p<0.05、p<0.05)。したがって、これらの組成物群は、いずれも明らかな相乗効果を示した:20%のアルギニン/1%の5-Fu(q=1.26>1.00)、10%のアルギニン/1%の5-Fu(q=1.10>1.00)、20%のグリシン/5%の酢酸/1%の5-Fu(q=1.02>1.00、1%の5-Fu群及び20%のグリシン/5%の酢酸群との腫瘍重量差は、p<0.05であった)、20%のグリシン/15%の酢酸/1%の5-Fu(q=1.03>1.00、1%の5-Fu群及び20%のグリシン/15%の酢酸群との腫瘍重量差は、p<0.05であった)。前記表において、5%のアルギニン/1%の5-Fu群のqは1.02>1.00であり、相乗効果を示したが、この群と1%5-Fu群との腫瘍重量差は統計的に有意ではなかったので(P>0.05)、組成物の試験群は相乗効果を示したものの、その相乗効果は明らかではなかった。
【0268】
前記表において、以下の組成物群のqは<1.00であり、拮抗的効果を示し、特定の成分群との腫瘍重量に統計的に有意な差がなかったので(p>0.05)、これらの組成物群は拮抗的効果を示したが、拮抗性は明らかではなかった:2.5%のアルギニン/1%の5-Fu(q=0.98<1.00、1%の5-Fu群との腫瘍重量差は、p>0.05であった)、20%のグリシン/2.5%の酢酸/1%の5-Fu(q=0.81<1.00、1%の5-Fu群との腫瘍重量差は、p>0.05であった)、20%のグリシン/25%の酢酸/1%の5-Fu(q=0.99<1.00、20%のグリシン/25%酢酸群との腫瘍重量差は、p>0.05であった)。
【0269】
前記試験及び更なる類似試験によれば、本発明の組成物の相乗的な技術的解決策は、以下の通りである。
1.病変組織での局所投与、
2.相乗的組成物の局所投与であって、相乗的組成物は、
1)アミノ酸ベースの栄養素の濃度が、>2.5%であり、好ましくは5~25%又は3~25%であり、
アミノ酸ベースの栄養素が酸性アミノ酸塩を含む場合、アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度が3%~25%であり、アミノ酸ベースの栄養素が、アミノ酸又は/及び前記アミノ酸塩以外のアミノ酸塩から選択される1以上である場合、アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度が、10%~25%、好ましくは15%~25%又は20%~25%であり、アミノ酸ベースの栄養素が1以上のオリゴペプチドから選択される場合、アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度が、5%~25%、好ましくは7.5%~25%であり、アミノ酸ベースの栄養素が、オリゴペプチド、アミノ酸、又は/及び酸性アミノ酸塩以外のアミノ酸塩の1以上を含む場合、アミノ酸ベースの栄養素の局所投与濃度が、5%~25%であり、好ましくは7.5~25%又は10~25%である、
2)抗腫瘍化学療法剤の濃度がその飽和濃度の30%超であり、好ましくはその飽和濃度の50%~100%である、又は/及び
3)従来の非有効化合物の濃度が、>0.25%であり、好ましくは0.35~50%であり、
従来の非有効化合物において、その他の栄養素の局所投与濃度は、2%超であり、好ましくは3%~40%であり、非有効芳香族化合物の局所投与濃度は、0.25%超であり、好ましくは0.35%~10%である、又は/及び酸味料の局所投与濃度が、0.25%超であり、好ましくは0.75%~15%である。
【0270】
その他の栄養素において、脂質栄養素の局所投与濃度は、2%超であり、好ましくは3%~25%でり、又は/及び炭水化物栄養素の局所投与濃度は、10%超であり、好ましくは15%~40%である。
【0271】
非有効芳香族化合物において、メチレンブルー染料の局所投与濃度は、0.25%超且つ2%以下であり、好ましくは0.35%~2%である。他の非有効芳香族化合物(他の生体染料、サリチル酸化合物、及びキニーネ化合物など)の局所投与濃度は、1%超であり、好ましくは3%~10%である。
【0272】
酸味料において、強酸の局所投与濃度は、0.25%超且つ2%未満、好ましくは0.75%~1.5%であり、弱酸の局所投与濃度は、1.5%超且つ20%未満、好ましくは3.5%~15%であり、又は/及び中強酸の局所投与濃度は、0.5%超且つ5%未満、好ましくは1%~5%である。
【0273】
アルカリ化剤において、強塩基の局所投与濃度は、0.5%超且つ10%未満であり、好ましくは0.75%~7%であり、弱塩基の局所投与濃度は、1.5%超且つ35%未満であり、好ましくは2.5%~15%である。
【0274】
前記相乗的技術的解決策のいずれかを使用することにより、アミノ酸ベースの栄養素及び従来の非有効化合物又は/及び抗腫瘍化学療法剤を含む本発明の組成物の相乗効果は、癌細胞に対する阻害効果も、無差別的な組織破壊効果も示さないが、相乗的に効果を高め、局所的損傷を低減するという個々の成分の効果を示す。換言すれば、本発明の組成物は、局所作用の特異性を著しく改善する。
【0275】
実施例6:好ましいアミノ酸ベースの栄養素
この実験では、成功裏にモデル化された実験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積186mm
3)を、陰性対照群、陽性対照群、及び10の試験群に無作為に分けた。陰性対照群は通常の生理食塩水、陽性対照群は1%の5-フルオロウラシル、試験薬は、10%アミノ酸ベースの栄養素/5%酢酸の組成物とした(アミノ酸ベースの栄養素の種類は変更可能)。試験群1~9で使用した組成物中のアミノ酸ベースの栄養素は、グリシン、システイン塩酸塩、リジン塩酸塩、プロリン、バリン、アラニン、グルタチオン、セリン、ALA-GLNであり、試験群10で使用した試験薬は、10%アルギニン/10%グリシン/5%酢酸とした。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間に1回、合計3回、≦150μlの注射量で腫瘍内注射した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。陽性対照群の腫瘍抑制率は61%であった。試験群の結果を表18に示す。
【表18】
【0276】
これらの結果及び更なる類似試験に基づくと、本発明のアミノ酸ベースの栄養素/酸味料の組成物の極めて効果的且つ相乗的な技術的解決策は、アミノ酸ベースの栄養素が、好ましくは以下のアミノ酸:アルギニン、リジン、システイン、アラニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、及びこれらのアミノ酸を含むアミノ酸誘導体の1以上から選択される。
【0277】
別の実験では、成功裏にモデル化にされた実験動物(HepG2を有するヌードマウス、平均腫瘍体積172mm
3)を、陰性対照群、陽性対照群、及び14の試験群に無作為に分けた。陰性対照は生理食塩水、陽性対照は1%の5-フルオロウラシル、試験薬は1%メチレンブルー/10%アミノ酸ベースの栄養素の組成物(アミノ酸ベースの栄養素の種類は変更可能)とした。試験群1~13で使用した組成物中のアミノ酸ベースの栄養素は、アルギニン、グリシン、システイン塩酸塩、バリン、スレオニン、プロリン、ヒスチジン塩酸塩、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、アラニン、グルタチオン、セリンであり、試験群14で使用した試験薬は、1%メチレンブルー/5%アルギニン/5%グリシンとした。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、≦150μlの注射量で腫瘍内注射した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。陽性対照群の腫瘍抑制率は63%であった。試験群の結果を表19に示す。
【表19】
【0278】
これらの結果及び更なる類似試験に基づくと、本発明のアミノ酸ベースの栄養素/メチレンブルー染料組成物の極めて効果的且つ相乗的な技術的解決策は、アミノ酸ベースの栄養素が、好ましくは以下のアミノ酸:アルギニン、グリシン、システイン、スレオニン、プロリン、リジン、ロイシン、アラニン、セリン、グルタミン酸、及びこれらのアミノ酸を含むアミノ酸誘導体の1以上から選択される、より好ましくは以下のアミノ酸単位:アルギニン、グリシン、システイン塩酸塩、リジン、アラニン、セリン、及びグルタミン酸を含む1以上から選択される。
【0279】
実施例7:組成物の抗腫瘍適用
1.一連の試験1
この一連の実験では、ヒトの癌細胞を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、無作為に1つの陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に分けた。対応する陰性対照群は通常の生理食塩水であり、5種の試験薬は以下の通りとした:20%グリシン/10%酢酸、20%リジン/1%メチレンブルー、10%グルタチオン/30%グルコース、20%アルギニン/30%グルコース/5%酢酸、20%グリシン/5%DHA/10%酢酸。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl/マウスで腫瘍内注射した。投与終了翌日、動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、それぞれの陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。
【0280】
1)乳房腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト乳癌細胞(MDA-MB231)(平均腫瘍体積153mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ85%、91%、81%、88%、及び83%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0281】
2)肺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肺癌細胞(A549)(平均腫瘍体積183mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ81%、83%、76%、86%、及び82%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0282】
3)甲状腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト甲状腺癌細胞(SW579)(平均腫瘍体積174mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ79%、81%、76%、85%、及び83%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0283】
4)前立腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP/AR)(平均腫瘍体積168mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ75%、82%、79%、81%、及び78%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0284】
5)肝腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肝癌細胞(HepG2)(平均腫瘍体積183mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ73%、86%、75%、81%、及び83%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0285】
6)頭頸部腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒトの頭頸部癌細胞(Fμda)(平均腫瘍体積169mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ86%、81%、79%、91%、及び87%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0286】
7)鼻咽頭腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト鼻咽頭癌細胞(CNE1)(平均腫瘍体積196mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ91%、81%、79%、86%、及び82%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0287】
8)胃腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト胃癌細胞(BGC823)(平均腫瘍体積164mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ71%、76%、82%、87%、及び83%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0288】
9)卵巣腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト卵巣癌細胞(PA1)(平均腫瘍体積191mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と5つの試験群(群A、B、C、D、及びE)に無作為に分けた。群A、B、C、D、及びEの腫瘍抑制率は、それぞれ86%、92%、81%、91%、及び86%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0289】
2.一連の試験2
この一連の実験では、ヒトの癌細胞を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、無作為に1つの陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に分けた。対応する陰性対照群は通常の生理食塩水とし、6種の試験薬は、1%の5-フルオロウラシル/20%アルギニン、1%の5-フルオロウラシル/10%ALA-GLN、1%の5-フルオロウラシル/10%グルタチオン、1%の5-フルオロウラシル/10%グリシン/10%酢酸、1%の5-フルオロウラシル/10%グルタチオン/10%グルコース/5%酢酸、及び1%の5-フルオロウラシル/20%リジン/1%メチレンブルーとした。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回100μl/マウスで腫瘍内注射した。投与終了翌日、動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、それぞれの陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。
【0290】
1)乳房腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト乳癌細胞(MDA-MB231)(平均腫瘍体積187mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ77%、73%、71%、82%、86%、及び89%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0291】
2)肺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肺癌細胞(A549)(平均腫瘍体積203mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ71%、75%、72%、81%、85%、及び87%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0292】
3)甲状腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト甲状腺癌細胞(SW579)(平均腫瘍体積211mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ75%、77%、73%、85%、89%、及び93%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0293】
4)前立腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP/AR)(平均腫瘍体積194mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ73%、71%、75%、87%、85%、及び91%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0294】
5)肝腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肝癌細胞(HepG2)(平均腫瘍体積214mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ73%、75%、72%、81%、87%、及び93%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0295】
6)頭頸部腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒトの頭頸部癌細胞(Fμda)(平均腫瘍体積172mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ76%、72%、71%、81%、89%、及び95%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0296】
7)鼻咽頭腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト鼻咽頭癌細胞(CNE1)(平均腫瘍体積203mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ73%、71%、75%、83%、87%、及び85%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0297】
8)胃腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト胃癌細胞(BGC823)(平均腫瘍体積218mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ71%、72%、75%、83%、87%、及び91%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0298】
9)卵巣腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト卵巣癌細胞(PA1)(平均腫瘍体積186mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と6つの試験群(群A、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。群A、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ72%、71%、73%、81%、87%、及び92%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0299】
3.一連の試験3
この一連の実験では、ヒトの癌細胞を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、無作為に1つの陰性対照群と3つの試験群に分けた。対応する陰性対照は通常の生理食塩水とした。3種の試験薬は、15%アルギニン/7%重炭酸ナトリウム/3%水酸化ナトリウム、2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトール、及び20%グリシン/3%重炭酸ナトリウム/10%酢酸とした。薬剤はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。各群に、3日間ごとに1回、合計3回、各回150μl/マウスで腫瘍内注射した。投与終了後5日目に動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、それぞれの陰性対照群から腫瘍抑制率を計算した。
【0300】
1)乳房腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト乳癌細胞(MDA-MB231)(平均腫瘍体積303mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ92%、97%、及び91%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0301】
2)肺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肺癌細胞(A549)(平均腫瘍体積326mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ92%、95%、及び89%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0302】
3)甲状腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト甲状腺癌細胞(SW579)(平均腫瘍体積341mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ92%、97%、及び88%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0303】
4)前立腺腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP/AR)(平均腫瘍体積348mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ93%、97%、及び92%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0304】
5)肝腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト肝癌細胞(HepG2)(平均腫瘍体積309mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ92%、95%、及び89%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0305】
6)頭頸部腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒトの頭頸部癌細胞(Fμda)(平均腫瘍体積305mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ93%、97%、及び86%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0306】
7)鼻咽頭腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト鼻咽頭癌細胞(CNE1)(平均腫瘍体積327mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ91%、95%、及び88%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0307】
8)胃腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト胃癌細胞(BGC823)(平均腫瘍体積314mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ88%、91%、及び93%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0308】
9)卵巣腫瘍の治療への適用
この研究実験では、ヒト卵巣癌細胞(PA1)(平均腫瘍体積311mm3)を有する成功裏にモデル化されたヌードマウスを、陰性対照群と3つの試験群(群D、E、及びF)に無作為に分けた。群D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ91%、93%、及び85%であり、これらはいずれも、一般に考えられている有効な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満足した。
【0309】
実施例3の方法によって調製された本発明の他のいくつかの組成物(各実施例における相乗的医薬組成物など)もまた、前記腫瘍の治療に使用することができ、それらも同様の結果をもたらすことができる。
【0310】
局所病変症状を伴う疾患、特に難治性疾患の介入治療は、通常、腫瘍をモデルとする。局所病変に関連する疾患のうち、腫瘍のメカニズムは非常に複雑であり、治療が最も困難である。腫瘍をモデルとして使用することにより得られた局所薬剤投与技術的解決策は、通常、他の局所病変関連疾患にも適用できる。以下の実験は、本発明の組成物のより多くの用途について検討する。
【0311】
実施例8:抗非腫瘍性及び非炎症性腫脹への適用(1)
一実験において、妊娠していない雌ラット(体重150~180g)を、無作為にブランク対照群とモデル群に分けた。乳房過形成をモデルとして、モデル群に安息香酸エストラジオール(0.5mg/kg、1回/1日、20日間連続)を筋肉内注射した後、プロゲステロン(5mg/kg、1回/1日、5日間連続)を筋肉内注射した。成功裏にモデル化された実験動物を、陰性対照群、陽性対照群、及び4つの試験群(群A、B、C、D)に無作為に分け、各群、4頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水とし、陽性対照はRuzengning錠とした。4種の試験薬は、20%グリシン/10%酢酸、20%リジン/1%メチレンブルー、10%グルタチオン/30%グルコース、及び20%アルギニン/30%グルコース/5%酢酸とした。試験薬はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。陰性対照群及び試験群の両方について、腫脹した領域に1日間ごとに1回、各回100μl/マウスで、合計5回注射した。陽性対照群には、1日間に1回、各回1g/kgで27回灌流することにより、陽性対照を投与した。実験で観察、測定、分析された項目には、食餌摂取量、体重、全身状態などの従来のパラメータに加えて、相対的乳頭肥大率(T/C%)と乳房組織の病変が含まれた。
【0312】
相対的な乳頭の直径を計算するための式は、以下の通りである。
RTD=Dt/D0、式中、D0は、初回投与後30日目にブランク対照群で測定された乳頭直径であり、Dtは、同じ日に陽性対照群又は試験群で測定された乳頭直径である。
【0313】
相対的な乳頭肥大率を計算するための式は、以下の通りである。
T/C(%)=TRTD/CRTD×100、式中、TRTDは、陽性対照群又は試験群のRTDであり、CRTDは、陰性対照群のRTDである。
【0314】
試験群における相対的な乳頭肥大率の評価基準は、以下の通りとした。
T/C(%)>50の場合、非活性を示し、T/C(%)≦50且つ、乳頭直径を分散分析によって陰性対照群と比較することによりP<0.05である場合、有効を示す。
【0315】
乳房組織の組織病理学的分析は、以下のように行った。即ち、動物を最終投与後4日目に安楽死させ、ラットの乳腺の第2の対を採取し、パラフィン切片を作製し、HE染色を行って、光学顕微鏡下での乳腺組織の病変を観察した。小葉及び腺房の形態を観察することにより、ラットの各群の乳腺の病理をスコア化した。その中で、乳腺の小葉に過形成がなく、腺の量が非常に少なく、腺房に拡張がない場合、スコア0と記録した。小葉に明らかな過形成がなく、一部の腺房に軽度の過形成があるが拡張がなかった場合、スコア1と記録した。乳房小葉の大部分に過形成があり、一部の腺房に明らかな拡張があった場合、スコア2と記録した。乳房小葉に明らかな過形成があり、腺房が極端に拡張した状態であり、腺上皮細胞が平坦であり、腺房及び管に多くの分泌物があった場合、スコア3と記録した。乳房腺房、管、及び小葉の病理学的過形成が明らかである場合、スコア4と記録した。病理学的分析及び薬効評価基準は、病理学スコア≧3の場合、非活性を示し、1<病理学スコア<3且つ、分散分析によって陰性対照群と比較することによりP<0.05である場合、有効を示す。
【0316】
初回投与後7日目から、群A、B、C、及びDの乳頭径は、陰性対照群と比較して有意に減少した。初回投与後30日目、群A、B、C、D、及び陽性対照群の乳頭径(それぞれ0.81±0.18、0.79±0.13、0.85±0.15、0.77±0.12、0.87±0.1)は、陰性対照群(2.11±0.23)よりも遥かに小さく、その差は統計的に有意であった(P=0.0027、P=0.0021、P=0.0018、p=0.0013、p=0.0029、いずれもP<0.05を示す)。この場合、群A、B、C、D、及び陽性対照群の相対的な乳頭肥大率は、それぞれ38%、37%、40%、37%、及び46%であった。
【0317】
投与後31日目、群A、B、C、及びDの病理学スコアは、それぞれ0.81±0.23、0.92±0.27、0.96±0.25、0.87±0.21であり、いずれも≦1であり、ブランク対照群(0.37±0.18)に近く、陰性対照群の病理学スコア(3.73±0.52)とは有意に異なっていた(P=0.0002、P=0.0002、P=0.0002、P=0.0001、p=0.0001、いずれもp<0.05を示す)。陽性対照群の病理学スコアは2より大きかった(2.19±0.41)。薬剤の安全性の観察結果は、基本的に同一であった。
【0318】
別の実験では、実験動物をモデル化する方法は、前記実験と同一とした。成功裏にモデル化された実験動物を、陰性対照群、陽性対照群、及び3つの試験群(群1、2、及び3)に無作為に分け、各群、6頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水とし、陽性対照はタモキシフェン(Rottendorf Phama GmbH)とした。3種の試験薬は、15%アルギニン/7%重炭酸ナトリウム/3%水酸化ナトリウム、2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトール、及び20%グリシン/3%重炭酸ナトリウム/10%酢酸とした。試験薬はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。陰性対照群及び試験群の両方について、腫脹した領域に3日間ごとに1回、各回100μl/マウスで、合計5回注射した。陽性対照群には、1日間に2回、各回0.1mg/kgで30日間灌流することにより、タモキシフェンを投与した。実験で観察、測定、分析された項目には、食餌摂取量、体重、及び全身状態などの従来のパラメータに加えて、乳頭肥大抑制率と乳房組織の病変が含まれた。乳房組織の病変の計算と薬効の評価基準は、前記実験と同一とした。乳頭肥大抑制率(R%)の計算式は、以下の通りである。
R%=[(ΔD01-ΔDn)/ΔD01]%=1-ΔDn/ΔD01
式中、ΔD01は、初回投与後33日目の陰性対照群の乳頭径(D01)とブランク対照群の乳頭径(D0)の差(D01-D0)、△Dnは、試験群の乳頭径(Dn)とブランク対照群の乳頭径(D0)の差(Dn-D0)である。
【0319】
乳頭肥大抑制率(R%)の薬効評価基準は、(R%)<40%が無効、(R%)≧40%が有効とした。
【0320】
乳頭肥大抑制率の結果を、以下の表20に示す。
【表20】
【0321】
前記表において、初回投与後33日目に、群1、2、及び3並びに陽性対照群の乳頭径はいずれも陰性対照群よりも遥かに小さく、その差は統計的に有意であった(いずれもP<0.05)。この場合、群02、1、2、及び3の乳頭肥大抑制率は、それぞれ58%、83%、79%、及び71%であり、これらは、いずれも有効な薬剤であることを示した。
【0322】
初回投与後33日目、群1、2、及び3の病理学スコアは、それぞれ0.71±0.25、0.73±0.21、0.82±0.21であり、いずれも≦1であり、ブランク対照群(0.32±0.15)に近く、陰性対照群の病理学スコア(3.76±0.36)と統計的に有意に異なる病理学スコアを有していた(いずれも<0.05)。陽性対照群の病理学スコアは1より大きかった(1.74±0.28)。薬剤の安全性の観察結果は、基本的に同一であった。
【0323】
実施例3の方法によって調製した本発明の他のいくつかの組成物(各実施例における相乗的組成物など)も同様の結果をもたらすことができる。
【0324】
乳房の奇形としても知られる乳腺過形成(MGH)は、腫瘤を伴う乳房の痛みと腫張を特徴とする。本発明の組成物が病原性因子(例えば、病原体)それ自体よりも病変組織を標的とすることを考慮すると、乳腺過形成は、炎症性でも悪性でもない増殖性病変の局所病変モデルとして使用することができる。このような疾患としては、非悪性腫瘍、過形成(乳房、膵臓、甲状腺、副甲状腺、前立腺など)、嚢胞(乳房、甲状腺、副甲状腺など)、異常な静脈クラスター(痔核など)、その他の結節(乳房、甲状腺、副甲状腺の結節など)が挙げられる。痔核は、内痔核、外痔核、及び混合痔核を含む。
【0325】
実施例9:抗非腫瘍性非炎症性局所病変疾患への適用(2)
一実験では、妊娠していない雌ラットを無作為にブランク対照群とモデル群に分けた。非炎症性甲状腺腫をモデルとして、ブランク対照群に通常条件下での給餌(飲料水は、0.26mg/Lのヨウ素含量の脱イオン水)、モデル群には低ヨウ素飼料の給餌(飲料水は、ヨウ素不含脱イオン水)を3か月超行い、尿中ヨウ素の大幅な減少及び甲状腺の大幅な肥大を伴うモデルの構築に成功した。成功裏にモデル化された実験動物を、陰性対照群、陽性対照群、及び4つの試験群(群A、B、C、D)に無作為に分け、各群、4頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水であり、陽性対照はヨウ素酸カリウム(KIO3)とした。4種の試験薬は、20%グリシン/10%酢酸、20%リジン/1%メチレンブルー、10%グルタチオン/30%グルコース、及び20%アルギニン/30%グルコース/5%酢酸であり、これらはいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。
【0326】
陰性対照群及び試験群の両方について、腫脹した領域に1日間ごとに1回、各回100μl/マウスで、合計5回注射した。陽性対照群には、1日間に1回の投与頻度で、各回0.4μg/kgの用量で27回灌流することにより、陽性対照を投与した。実験で観察、測定、分析した項目には、食餌摂取量、体重、全身状態などの従来のパラメータに加えて、甲状腺腫、24時間のヨウ素排泄、及び甲状腺の病理学的検査が含まれた。
【0327】
実験の10日目から、試験群は、陰性対照群と比較して甲状腺腫が有意に改善し、ブランク対照群と一貫したヨウ素排泄を示し(差<25%)、陽性対照群と同等の効果を示した。病理学的検査において、陰性対照群では、甲状腺が明らかに肥大し、濾胞が密であり、上皮細胞が長い柱状の増殖及び肥大を有し、増殖性細胞クラスターが視認でき、濾胞の間の血管が著しく増加し、内腔が拡張して鬱血し、小葉間線維組織が増大した。
【0328】
薬剤投与後25日目、試験群とブランク対照群の卵胞形態、上皮細胞、小葉間線維組織などの差は15%未満であり、陽性対照群に近かった。各群の薬剤の安全性の観察結果は、基本的に同一であった。
【0329】
別の実験では、実験動物をモデル化する方法は、前記実験と同一とした。成功裏にモデル化された実験動物を、陰性対照群、陽性対照群、及び3つの試験群に無作為に分け、各群、6頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水とし、陽性対照はヨウ素酸カリウムとし、3種の試験薬は、15%アルギニン/7%重炭酸ナトリウム/3%水酸化ナトリウム、2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトール、及び20%グリシン/3%重炭酸ナトリウム/10%酢酸とした。試験薬はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。
【0330】
陰性対照群(群01)及び試験群(群1、2、及び3)の両方について、腫脹した領域に3日間ごとに1回、各回100μl/マウスで、合計5回注射した。陽性対照群(群02)には、1日間に1回の投与頻度で、各回0.4μg/kgの用量で27回灌流することにより、ヨウ素酸カリウム(KIO3)を投与した。実験で観察、測定、分析した項目には、通常の食餌摂取量、体重、全身状態に加えて、甲状腺の相対重量及び甲状腺の病理学的検査が含まれた。甲状腺病変の観察と薬効の評価基準は、前記実験と同一とした。初回投与から30日目に、ラットを安楽死させて解剖し、甲状腺を剥ぎ取り、湿重量を秤量し、甲状腺の相対質量を計算した(甲状腺の相対質量w=甲状腺の質量/ラットの質量)。
【0331】
甲状腺腫大の抑制率(R%)の計算式は、以下の通りである。
R%=[(ΔW01-ΔWn)/ΔW01]%=1-ΔWn/ΔW01
式中、ΔW01は、陰性対照群(群01)とブランク対照群(群0)の甲状腺の相対質量の差(W01-W0)であり、ΔWnは、試験群(n)とブランク対照群(0)との間の甲状腺の相対質量の差(Wn-W0)である。
【0332】
甲状腺肥大の抑制率(R%)の薬効評価基準は、(R%)<40%が無効、(R%)≧40%が有効とした。実験で得られた甲状腺肥大の抑制率(R%)を、以下の表21に示す。
【表21】
【0333】
前記表において、初回投与から30日間後に、群1、2、3、及び02の甲状腺の相対質量は、陰性対照群よりも遥かに小さく、これらの各群間と陰性対照群との間の差は統計的に有意であった(いずれもP<0.05)。この場合、群1、2、3、及び02の甲状腺肥大抑制率は、それぞれ85%、81%、71%、及び62%であり、これらが、いずれも有効な薬剤であることを示した。
【0334】
更に、薬剤投与後30日目、試験群1、2、及び3のぞれぞれとブランク対照群との間の濾胞形態、上皮細胞、小葉間線維組織などの差は15%未満であり、陽性対照群に近かった。各群の薬剤の安全性の観察結果は、基本的に同一であった。
【0335】
実施例3の方法によって調製した本発明の他のいくつかの組成物(各実施例における相乗的組成物など)も同様の結果をもたらすことができる。甲状腺腫は、最も一般的な非腫瘍性非炎症性局所病変疾患の1つである。本発明の組成物が病原性因子(例えば、病原体)それ自体よりも病変組織を標的とすることを考慮すると、甲状腺腫は、炎症性でも悪性でもない増殖性病変の局所病変モデルとして使用することができる。このような疾患としては、非悪性腫瘍、過形成(乳房、膵臓、甲状腺、副甲状腺、前立腺など)、嚢胞(乳房、甲状腺、副甲状腺など)、異常な静脈クラスター(痔核など)、その他の結節(乳房、甲状腺、副甲状腺の結節など)が挙げられる。痔核は、内痔核、外痔核、及び混合痔核を含む。
【0336】
実施例10:抗局所炎症への応用
一実験では、成体の雄ラット(体重150~180g)を、無作為にブランク対照群とモデル群に分けた。アレルギー性鼻炎をモデルとして、このモデルは、オボアルブミン(OVA)増感剤(1ミリリットル当たり0.5mgのOVAと30mgのAl(OH)3を含む)をアレルゲンとして使用し、腹腔内注射(1日間に1回、合計7回)により感作を誘発させた。その後、モデリングにオボアルブミン溶液(3%OVA)の点鼻液を使用した(1日間に1回、合計7回)。成功裏にモデルを構築した後、PEMS 3.2ソフトウェアを使用して、ラットを無作為に陽性対照群、陰性対照群、及び試験群(群A、B、C、及びD)に分け、各群、4頭とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水スプレー剤とし、陽性対照は、市販のフロ酸モメタゾン鼻腔スプレー剤(Schering-Plough、ベルギー)とした。4種の試験薬は、20%グリシン/10%酢酸、20%リジン/1%メチレンブルー、10%グルタチオン/30%グルコース、及び20%アルギニン/30%グルコース/5%酢酸を含むスプレーとした。スプレー剤の調製方法を実施例1に示す。液体ストック溶液は、水及び以下の補助材料を含有した。即ち、グリセリン(2.5%)、ポリソルベート-80(1.5%)、塩化ベンザルコニウム(0.02%)、及び微結晶性セルロースナトリウム-カルボキシメチルセルロース(1.5%)である。
【0337】
各群に、1日間に1回、7回の鼻腔スプレーを介して投与した。投与から30分間後の3分間以内の引っかき傷の数及びくしゃみの回数を観察指標とした。有効性は、ブランク対照群と比較して判断した。モデル群の引っかき傷の数及びくしゃみの回数が、それぞれブランク対照群の7倍超上及び1倍超の場合、モデリングが成功したとした。薬剤群の引っかき傷の数及びくしゃみの回数が、陽性対照群と同様のレベルに達した場合、薬剤が有効であるとした。
【0338】
投与後15日目の引っかき傷の数及びくしゃみの回数について、群A、B、C、Dの各群及び陽性対照群とブランク対照群との間の数の差は、それぞれ13%、12%、16%9%、及び27%であった。実験中、各群に明らかな粘膜刺激又はアレルギー反応は見られなかった。
【0339】
別の実験では、実験動物をモデル化する方法は、前記実験と同一とした。成功裏にモデル化された実験動物を、陰性対照群、陽性対照群、及び3つの試験群に無作為に分け、各群、6頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水とし、陽性対照はブデソニドの点鼻薬(AstraZeneca Pty Ltd)とし、3種の試験薬は、15%アルギニン/7%重炭酸ナトリウム/3%水酸化ナトリウム、2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトール、及び20%グリシン/3%重炭酸ナトリウム/10%酢酸を含むスプレー剤とした。液体ストック溶液は、水及び以下の補助材料を含有した。即ち、グリセリン(2.5%)、ポリソルベート-80(1.5%)、塩化ベンザルコニウム(0.02%)、及び微結晶性セルロース-カルボキシメチルセルロースナトリウム(1.5%)である。試験薬はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。
【0340】
各モデル群に、1日間に1回、各回300μl/マウスで合計7回の鼻腔スプレーを介して投与した。実験で観察、測定、分析した項目には、通常の食餌摂取量、重量、及び全身状態に加えて、鼻部の症状スコアが含まれた。投与終了翌日に、鼻部症状スコアを評価した。オボアルブミン点鼻薬の鼻腔内投与後30分間以内に観察された鼻部の症状(鼻の引っかき傷、くしゃみ、鼻水)を、累積積分法(integral superposition method)でスコア化した。鼻部の引っかき傷について、数回軽く鼻部を引っ掻いた場合、スコア1、鼻部と顔面を繰り返し引っ掻いた場合、スコア2、鼻部と顔面全体をこすった場合、スコア3とした。くしゃみについて、1~3回のくしゃみの場合、スコア1、4~10回のくしゃみの場合、スコア2、11回以上のくしゃみの場合、スコア3とした。鼻水について、鼻水が前鼻孔まで流れている場合、スコア1、鼻水が前鼻孔を超えて流れている場合、スコア2、顔面全体に鼻水が見られる場合、スコア3とした。実験で得られた鼻部症状スコアを、以下の表22に示す。
【表22】
【0341】
前記表において、初回投与後8日目に、ブランク対照群を除き、その他の全ての群は、オボアルブミン溶液の点鼻薬接種後に、引っかき傷、くしゃみ、及び鼻水などの症状があった。陰性対照群と比較して、群1、2、3、及び02の鼻部症状スコアはいずれも有意に減少し、これらの各群と陰性対照群と間の差は、統計的に有意であった(いずれもP<0.05)。
【0342】
実施例3の方法によって調製された本発明の他のいくつかの組成物(各実施例における相乗的組成物など)も同様の結果をもたらすことができる。アレルギー性鼻炎は、最も一般的な炎症性局所病変疾患の1つである。本発明の組成物が病原性因子(例えば、病原体)それ自体よりも病変組織を標的とすることを考慮すると、アレルギー性鼻炎は、炎症性局所病変疾患のモデルとして使用することができる。そのような疾患としては、関節炎、乳房炎、膵炎、甲状腺炎、前立腺炎、肝炎、肺炎、腸炎、口内炎、咽頭炎、歯周炎、食道炎、胃炎、胃潰瘍、鼻炎、副鼻腔炎、喉頭炎、気管支炎、気管支炎、膣炎、卵管炎、卵巣炎などが挙げられる。
【0343】
実施例11:抗異常分泌腺分泌への応用
この実験では、成体の雄ラット(体重150~180g)を、無作為にブランク対照群とモデル群に分けた。甲状腺機能亢進症をモデルとし、このモデルは、レボチロキシン(腹腔内注射、50μg/100g体重の用量で10日間連続投与)で構築した。血清学的検査及び病理学的検査によりモデリングの成功を確認した後、PEMS 3.2ソフトウェアを使用して、陽性対照群、陰性対照群、及び4つの試験群(群A、B、C、及びD)に無作為に分け、各群、4頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水スプレー剤とし、陽性対照はメチマゾールとした。4種の試験薬は、20%グリシン/10%酢酸、20%リジン/1%メチレンブルー、10%グルタチオン/30%グルコース、及び20%アルギニン/30%グルコース/5%酢酸とした。試験薬はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。陰性対照群及び試験群の両方について、その腫張した領域に、1日間ごとに1回、各回150μl/マウスで、合計8回注射した。陽性対照群には、灌流により陽性対照を27回投与し、投与頻度は1日間に1回とし、用量は各回2mg/kgとした。
【0344】
実験で観察、測定、及び分析した項目には、通常の摂餌量、体重、及び全身状態に加えて、投与当日及び投与後16日目の血清学的検査及び甲状腺病理学的検査が含まれた。血清学的検査は、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用して、血清T3、T4、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定した。病理学的検査は、甲状腺の形態、嚢胞の形態、上皮細胞の形態、及び小葉間線維組織の形態を観察した。検査結果は以下の通りである。
【0345】
投与後25日目の血清学的検査では、陰性対照群(T3は1.9±0.1、T4は171.2±9.3)と比較して、群Aの血清T3、T4の濃度上昇(T3は1.0±0.1、T4は64.3±3.2)、群B(T3は0.9±0.1、T4は61.7±3.3)、群C(T3は0.9±0.1、T4は59.7±3.5)、群D(T3は0.9±0.1、T4は56.3±3.4)は緩慢となり、TSHの減少は改善傾向を示した。血清学的検査の結果から、群A、B、C、D、及び陽性対照群(T3は1.1±0.1、T4は66.3±3.6)とブランク対照群(T3は0.8±0.1、T4は39.6±3.1)との間の血清値の差は、陰性対照群とブランク対照群との差よりも遥かに小さかった。
【0346】
病理学的検査では、陰性対照群は、甲状腺のびまん性肥大、高い柱状の濾胞上皮過形成及び小さな濾胞の形成、嚢胞周辺の異なるサイズの液胞を吸収した多くの上皮細胞、及び多数の鬱血した間質血管、及びリンパ組織の過形成を示した。陰性対照群と比較して、群A、B、C、及びDのびまん性甲状腺が減少し、濾胞上皮過形成と小濾胞形成が有意に減少した。上皮細胞が濾胞周辺の液胞を吸収した量、間質血管の量と鬱血、及びリンパ組織過形成がいずれも減少した。群A、B、C、及びDの病理学的検査結果は、ブランク対照群の結果と類似しており、陽性対照群よりも有意に優れていた。各群において、不可逆的な局所的損傷及び有意な体重減少は見られなかった。
【0347】
別の実験では、実験動物のモデリング方法は、前記実験と同一とした。モデル化されていないブランク対照群(群0)を除き、成功裏にモデル化された実験動物を、陰性対照群(群01)、陽性対照群(群02)、及び3つの試験群に無作為に分け、各群、6頭の動物とした。群分けした日に投与を開始した。陰性対照は通常の生理食塩水とし、陽性対照はメチマゾールとし、3種の試験薬は、20%グリシン/3%重炭酸ナトリウム/10%酢酸、2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトール、15%アルギニン/7%重炭酸ナトリウム/3%水酸化ナトリウムとした。試験薬はいずれも水溶液であり、実施例1の調製方法にしたがって調製した。
【0348】
陰性対照群及び試験群の両方について、その腫張した領域に、3日間ごとに1回、各回100μl/マウスで、合計7回注射した。陽性対照群には、チアマゾールを1日間に1回、各回10mg/kgで21日間投与した。実験で観察、測定、及び分析した項目には、通常の食餌摂取量、体重、及び全身状態に加えて、血清学的検査(甲状腺ホルモンレベル)が含まれた。甲状腺ホルモンレベルは、以下のように決定した。即ち、投与終了後5日目に、ラットを、水のみを与える絶食状態とした。翌日、腹部大動脈から採血し、遠心分離して血清を得た。T3及びT4は、キットの説明書(Beijing North Institute of Biotechnology Co., Ltd.)にしたがって、酵素結合免疫吸着アッセイによって決定された。以下の表23に測定結果を示す。
【表23】
【0349】
前記表において、初回投与後26日目に、陰性対照群と比較して、群1、2、3、及び02の甲状腺ホルモンレベルが有意に低下し、これらの各群と陰性対照群との差が統計的に有意であった(いずれもP<0.05)。
【0350】
実施例3の方法によって調製された本発明の他のいくつかの組成物(各実施例における相乗的組成物など)も同様の結果をもたらすことができる。甲状腺機能亢進症は、異常な分泌腺分泌を伴う最も一般的な局所病変疾患の1つである。本発明の組成物が病原性因子(例えば、病原体)それ自体よりも病変組織を標的とすることを考慮すると、甲状腺機能亢進症は、このタイプの局所病変疾患のモデルとして使用することができる。そのような疾患としては、例えば、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、及び低インスリン症が挙げられる。
【0351】
実施例12:抗皮膚科学的試験
この研究実験では、水虫を罹患した20名のボランティアが実験に参加し、陽性対照群と3つの試験群(群A、B、及びC)を含む4群に分け、各群、5名とした。陽性対照はDermonistat(Xian Janssen Pharmaceutical Ltd)とし、3種の試験薬は、以下の組成を有効成分として有する液体ストックとした。即ち、20%グリシン/3%重炭酸ナトリウム/10%酢酸、15%アルギニン/7%重炭酸ナトリウム/3%水酸化ナトリウム、及び2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトールである。スプレー剤の調製方法を実施例1に示す。前記有効成分に加えて、液体ストック溶液は、以下の補助材料を含有した。即ち、グリセリン(2.5%)、ポリソルベート-80(1.5%)、塩化ベンザルコニウム(0.02%)、及び微結晶性セルロース-カルボキシメチルセルロースナトリウム(1.5%)である。液体ストックスプレー溶液は、使用前にスプレイヤーの容器に保管した。陽性対照群では、Dermonistatを、1日間に1回、7回連続して患部に塗布した。陰性対照群と3つの試験群において、対応するスプレー剤を、1日間に1回、7回連続して患部にスプレーした。有効性の基準は、治癒:皮膚病変の退縮>90%、有効:皮膚病変の退縮>50%、無効:皮膚病変の退縮<50%とした。
【0352】
投与後7日目に、陽性対照群と3つの試験群は、明らかな皮膚病変の退縮を示した。投与後10日目の結果を、以下の表24に示す。
【表24】
【0353】
同様の結果は、実施例3で調製された本発明の他の組成物(例えば、各実施例における相乗的組成物)のスプレー剤を使用しても得られた。
【0354】
水虫は真菌性皮膚病であり、中国南部で最も一般的な皮膚病の1つである。本発明の組成物が病原体それ自体よりも病変組織を標的とすることを考慮すると、水虫は皮膚疾患モデルとして使用することができる。この種の疾患としては、皮膚癌、非悪性皮膚腫瘍、ウイルス性皮膚疾患(ヘルペス、疣贅、風疹、手足口病など)、細菌性皮膚疾患(膿痂疹、おでき、ライ病など)、真菌性皮膚疾患(各種白癬など)、性感染症(梅毒、淋病、尖圭コンジローマなど)、アレルギー性及び自己免疫性皮膚疾患(接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹など)、物理的皮膚疾患(太陽光皮膚病、凍傷、魚の目、手足の皮膚のひび割れ、褥瘡)、結合組織疾患(紅斑性狼瘡など)、色素性皮膚疾患(そばかす、色素性母斑、各種斑点など)、皮膚付属器疾患(にきび、酒さ、脂漏性皮膚炎、円形脱毛症、禿頭症、多汗症、及び臭汗症など)が挙げられる。
【0355】
本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が、前記記載から当業者には明らかであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書中で言及される全ての特許、出願、ジャーナル記事、書籍、及びその他の開示を含む各文献全体を、参照により本明細書に援用する。