(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】物品昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/07 20060101AFI20241008BHJP
B65G 1/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B66F9/07 A
B65G1/04 531B
(21)【出願番号】P 2020143791
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】内堀 俊幸
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-218405(JP,A)
【文献】特開平04-131477(JP,A)
【文献】特開2009-067511(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106092616(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0022579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 1/00-19/02
B65G 1/00-69/34
B66B 1/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品をキャリッジに載せて昇降させる物品昇降装置において、
前記物品昇降装置の上部に配置した上部従動スプロケットに係合する吊り下げチェーンにより、前記キャリッジとカウンターウェイトを釣瓶式に吊り下げ、
前記物品昇降装置の下部に配置した駆動スプロケットに係合する駆動チェーンの一端を、前記キャリッジ又は前記キャリッジを吊り下げる前記吊り下げチェーンの下端に繋げ、
前記駆動チェーンの他端を前記カウンターウェイトに繋げ、
前記駆動スプロケットを駆動装置により駆動することにより、前記キャリッジ及び前記カウンターウェイトをガイド支柱に沿って昇降させる物品昇降装置であって、
前記駆動スプロケットと前記キャリッジとの間の前記駆動チェーンに、
キャリッジ側テークアップ装置を設けるとともに、
前記駆動スプロケットと前記カウンターウェイトとの間の前記駆動チェーンに、
カウンターウェイト側テークアップ装置を設けてな
り、
前記キャリッジ側テークアップ装置及び前記カウンターウェイト側テークアップ装置は、
前記駆動チェーンに係合し、前記駆動チェーンに張力を付与する方向及びその反対の方向へ可動するテークアップスプロケット、
前記テークアップスプロケットを前記駆動チェーンに張力を付与する方向へ付勢する付勢部材、及び
前記付勢部材の付勢力に抗する方向への前記テークアップスプロケットの移動を所定位置で規制するテークアップストッパー
を備える、
物品昇降装置。
【請求項2】
前記駆動チェーンが前記キャリッジから垂下する下端部に第1下部従動スプロケットを設けるとともに、前記駆動チェーンが前記カウンターウェイトから垂下する下端部に第2下部従動スプロケットを設け、
前記キャリッジから垂下して前記第1下部従動スプロケットにより方向を変えた前記駆動チェーンと、前記カウンターウェイトから垂下して前記第2下部従動スプロケットにより方向を変えた前記駆動チェーンとの間に前記駆動スプロケットを配置し、
前記第1下部従動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記駆動チェーンに、前記キャリッジ側テークアップ装置を設け、
前記第2下部従動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記駆動チェーンに、前記カウンターウェイト側テークアップ装置を設けてなる、
請求項1に記載の物品昇降装置。
【請求項3】
前記カウンターウェイトの重量は、前記キャリッジの重量以上である、
請求項1
又は2に記載の物品昇降装置。
【請求項4】
前記キャリッジ側テークアップ装置及び前記カウンターウェイト側テークアップ装置の一方又は両方に、前記駆動チェーンの破断を検知するチェーン破断検知装置を設けてなる、
請求項1~
3の何れか1項に記載の物品昇降装置。
【請求項5】
前記吊り下げチェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドに前記駆動チェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドを連結し、
前記吊り下げチェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンド、又は前記駆動チェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドに設けたストッパー部材に前記キャリッジが当接した状態で、前記吊り下げチェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンド及び前記駆動チェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドと前記キャリッジは位置決めされ、
前記キャリッジは、前記ストッパー部材に対して上方へ移動可能である、
請求項1~
4の何れか1項に記載の物品昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚設備の上下複数段の階層に対して物品を昇降させる物品昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下複数段の階層を備えた棚設備に用いる前記階層に対して物品を昇降させる物品昇降装置として、前記物品昇降装置の上部に上部スプロケットを設け、上部スプロケットに掛けた吊り下げチェーンの一端にキャリッジを取り付けるとともに、前記吊り下げチェーンの他端にカウンターウェイトを取り付け、上部スプロケットを駆動装置により駆動して釣瓶式にキャリッジを昇降させるものがある(例えば、特許文献1参照。以下において、「上駆動方式の物品昇降装置」という。)。
【0003】
また、前記物品昇降装置として、前記物品昇降装置の上部に上部スプロケットを設けるとともに、前記物品昇降装置の下部に下部スプロケットを設けてループ状にチェーンを張設し、下部スプロケットを駆動装置により駆動して釣瓶式にキャリッジを昇降させるものがある(例えば、特許文献2参照。以下において、「下駆動方式の物品昇降装置」という。)。
【0004】
下駆動方式の物品昇降装置は、例えば、上部スプロケットに掛けた吊り下げチェーンの一端及び他端にキャリッジ及びカウンターウェイトを取り付け、下部スプロケットに掛けたリターン側チェーンの一端及び他端にキャリッジ及びカウンターウェイトを取り付ける。
【0005】
上駆動方式の物品昇降装置では、前記吊り下げチェーンが伸びても常に張力が作用するので、前記吊り下げチェーンは常に緊張状態にある。それに対して下駆動方式の物品昇降装置では、前記吊り下げチェーンは常に緊張状態にあるが、前記リターン側チェーンには常に張力が作用しない。したがって、下駆動方式の物品昇降装置では、前記吊り下げチェーン及び前記リターン側チェーンの伸びに伴って、前記リターン側チェーンが弛緩する。
【0006】
前記リターン側チェーンの弛緩は、駆動装置により駆動する下部スプロケットから前記リターン側チェーンが外れるという極めて重大な事故につながる危険があるため、下駆動方式の物品昇降装置では、前記リターン側チェーンに張力を付与するテークアップ機構を設けている。
【0007】
例えば、特許文献2の発明の従来技術におけるテークアップ機構は、ループ状に張設するチェーンの取付部である、前記リターン側チェーンをキャリッジに連結する箇所にテークアップ機構(チェーン引き上げ用スプリング等)を設けている。また、特許文献2の発明におけるテークアップ機構(28)は、ループ状に張設するチェーンの取付部ではなく、駆動スプロケット(17,18)のキャリッジ(9)側に設けた可動スプロケット(19,20)に前記リターン側チェーン(11B,12B)を掛け渡し、可動スプロケット(19,20)をスプリング(31)で付勢することにより、可動スプロケット(19,20)を介して前記リターン側チェーン(11B,12B)に張力を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-48700号公報
【文献】特公平6-562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カウンターウェイトを備えた物品昇降装置において駆動装置の容量(モーター及び減速機の容量、又はギヤドモータの容量)を決定するための大きな要因は負荷の所要動力である。負荷の所要動力は、搬送速度とアンバランス荷重で決まる。すなわち、アンバランス荷重を最小にすることで駆動装置の容量を最小にできる。ここで、アンバランス荷重とは、キャリッジ側とカウンターウェイト側の重量差である。
【0010】
上駆動方式の物品昇降装置では、アンバランス荷重を最小にして駆動装置の容量を最小にするために、カウンターウェイトの重量Wcwを、キャリッジの重量Wcに当該キャリッジに載せる物品(積荷)の重量Wwの半分(Ww/2)を加えた重量とするのが、カウンターウェイトの適正重量である。すなわち、Wcw=Wc+Ww/2とする。それにより、積荷が有る場合と無い場合のどちらも、アンバランス荷重がWw/2になり、アンバランス荷重が最小になるので、駆動装置の容量を最小にできる。このように駆動装置の容量を最小にできることが上駆動方式の物品昇降装置の利点である。
【0011】
しかしながら、上駆動方式の物品昇降装置は、駆動装置等の重量物を高所である物品昇降装置の上部に据え付ける必要がある。高所での重量物の据付作業及び保守点検作業には危険が伴うので作業性が低下する。その上、物品昇降装置の上部に、重量物を扱う作業用の通路及び手摺等を設置する必要があるので、その分のコストが増大する。その上さらに、物品昇降装置の上部に、重量物の据付作業及び保守点検作業を作業員が行うための作業スペースを設ける必要があるので、物品昇降装置の揚程が制限される。
【0012】
下駆動方式の物品昇降装置は、駆動装置等の重量物が高所に無いので、上駆動方式の物品昇降装置における上記問題点はなく、すなわち、建屋の有効活用を図ることができるとともにメンテナンス性を向上できる。
【0013】
下駆動方式の物品昇降装置として、例えば特許文献2の発明におけるテークアップ機構(28)を備えたものについて検討する。上駆動方式の物品昇降装置と同様に、カウンターウェイト(W)の重量Wcwを、仮に、キャリッジ(9)の重量Wcに積荷の重量Wwの半分(Ww/2)を加えた重量とする。すなわち、Wcw=Wc+Ww/2とする。また、Wcw=900kg、Wc=500kg、Ww=800kgとする。
【0014】
積荷が無いときのアンバラス荷重(Wcw-Wc=Ww/2=400kg)により、キャリッジ(9)が上方に引き上げられる。この場合、駆動スプロケット(17,18)はモータ(40)により回転が制御されているので、キャリッジ(9)が上方に引き上げられるのを防ごうとする。しかし、テークアップ機構(28)のスプリング(31)は、通常状態におけるリターン側チェーン(11B,12B)のたるみを取る程度の小さなバネ力しかないため、キャリッジ(9)の引張力(400kg)の方が大きいことにより、スプリング(31)は圧縮される。
【0015】
その結果、テークアップ用可動スプロケット(19,20)が特許文献2の第2図の左方向に引っ張られ、キャリッジ(9)はカウンターウェイト(W)に引っ張られて上方に引き上げられ、カウンターウェイト(W)が下方に移動する。それにより、カウンターウェイト(W)の下端から駆動スプロケット(17,18)の間のリターン側チェーン(11B,12B)が弛んで、駆動スプロケット(17,18)から外れる事故が発生するおそれがある。
【0016】
このような事故を防ぐため、積荷が無いときでもキャリッジ(9)がカウンターウェイト(W)に引っ張られて上方に引き上げられないように、カウンターウェイト(W)の重量Wcwをキャリッジ(9)の重量Wc未満(キャリッジの重量-α)にする必要がある。ここで、αは、キャリッジ(9)が上限の時のチェーンのアンバランス荷重と発進加速時の慣性荷重を考慮した荷重である。
【0017】
下駆動方式の物品昇降装置において、キャリッジの重量Wc=500kg、積荷の重量Ww=800kgである場合に、カウンターウェイトの重量Wcwをキャリッジの重量未満(Wcw<Wc)とし、例えばWcw=450kgとすると、積荷が有るときのアンバランス荷重(Wc+Ww-Wcw)は850kgであり、積荷が無いときのアンバランス荷重(Wc-Wcw)は50kgである。したがって、駆動装置の容量は、アンバランス荷重の最大値である850kgを基準として選定する必要がある。そのため、下駆動方式の物品昇降装置は、下部スプロケットを駆動する駆動装置の容量(モーター及び減速機の容量、又はギヤドモータの容量)が大きくなる(上駆動方式の物品昇降装置における駆動装置の容量の2倍近くになる)という問題点がある。
【0018】
本発明は、下駆動方式の物品昇降装置において駆動装置の容量を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕
物品をキャリッジに載せて昇降させる物品昇降装置において、
前記物品昇降装置の上部に配置した上部従動スプロケットに係合する吊り下げチェーンにより、前記キャリッジとカウンターウェイトを釣瓶式に吊り下げ、
前記物品昇降装置の下部に配置した駆動スプロケットに係合する駆動チェーンの一端を、前記キャリッジ又は前記キャリッジを吊り下げる前記吊り下げチェーンの下端に繋げ、
前記駆動チェーンの他端を前記カウンターウェイトに繋げ、
前記駆動スプロケットを駆動装置により駆動することにより、前記キャリッジ及び前記カウンターウェイトをガイド支柱に沿って昇降させる物品昇降装置であって、
前記駆動スプロケットと前記キャリッジとの間の前記駆動チェーンに、
キャリッジ側テークアップ装置を設けるとともに、
前記駆動スプロケットと前記カウンターウェイトとの間の前記駆動チェーンに、
カウンターウェイト側テークアップ装置を設けてなり、
前記キャリッジ側テークアップ装置及び前記カウンターウェイト側テークアップ装置は、
前記駆動チェーンに係合し、前記駆動チェーンに張力を付与する方向及びその反対の方向へ可動するテークアップスプロケット、
前記テークアップスプロケットを前記駆動チェーンに張力を付与する方向へ付勢する付勢部材、及び
前記付勢部材の付勢力に抗する方向への前記テークアップスプロケットの移動を所定位置で規制するテークアップストッパー
を備える、
物品昇降装置。
【0020】
〔2〕
前記駆動チェーンが前記キャリッジから垂下する下端部に第1下部従動スプロケットを設けるとともに、前記駆動チェーンが前記カウンターウェイトから垂下する下端部に第2下部従動スプロケットを設け、
前記キャリッジから垂下して前記第1下部従動スプロケットにより方向を変えた前記駆動チェーンと、前記カウンターウェイトから垂下して前記第2下部従動スプロケットにより方向を変えた前記駆動チェーンとの間に前記駆動スプロケットを配置し、
前記第1下部従動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記駆動チェーンに、前記キャリッジ側テークアップ装置を設け、
前記第2下部従動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記駆動チェーンに、前記カウンターウェイト側テークアップ装置を設けてなる、
〔1〕に記載の物品昇降装置。
【0022】
〔3〕
前記カウンターウェイトの重量は、前記キャリッジの重量以上である、
〔1〕又は〔2〕に記載の物品昇降装置。
【0023】
〔4〕
前記キャリッジ側テークアップ装置及び前記カウンターウェイト側テークアップ装置の一方又は両方に、前記駆動チェーンの破断を検知するチェーン破断検知装置を設けてなる、
〔1〕~〔3〕の何れかに記載の物品昇降装置。
【0024】
〔5〕
前記吊り下げチェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドに前記駆動チェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドを連結し、
前記吊り下げチェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンド、又は前記駆動チェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドに設けたストッパー部材に前記キャリッジが当接した状態で、前記吊り下げチェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンド及び前記駆動チェーンの前記キャリッジ側のチェーンエンドと前記キャリッジは位置決めされ、
前記キャリッジは、前記ストッパー部材に対して上方へ移動可能である、
〔1〕~〔4〕の何れかに記載の物品昇降装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る物品昇降装置によれば、下駆動方式であるので、建屋の有効活用を図ることができるとともにメンテナンス性を向上できる。その上、下駆動方式の物品昇降装置において、駆動スプロケットとキャリッジとの間の駆動チェーンにキャリッジ側テークアップ装置を設けるとともに、駆動スプロケットとカウンターウェイトとの間の駆動チェーンにカウンターウェイト側テークアップ装置を設けていることから、カウンターウェイトの重量を上駆動方式の物品昇降装置と同様に大きくできるので、駆動装置の容量を小さくできる。その上、前記付勢部材の付勢力に抗する方向への前記テークアップスプロケットの移動を所定位置で規制するテークアップストッパーを備えていることから、前記テークアップストッパーにより前記付勢部材の過度の圧縮を抑制できるとともに、前記テークアップストッパーが前記駆動チェーンの緊張(引張力)に抗することができる。前記付勢部材のみで前記駆動チェーンの引張力に対抗するのではなく、前記テークアップストッパーを設けることで前記付勢部材を小さくできるので製造コストを低減できる。しかも前記付勢部材を小さくすることで、通常のチェーン張力を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態に係る物品昇降装置を棚設備に用いた例を示す概略正面図である。
【
図2】物品昇降装置の上部及び下部の要部拡大概略正面図である。
【
図3】キャリッジ側テークアップ装置及びカウンターウェイト側テークアップ装置の部分縦断面概略正面図である。
【
図4】カウンターウェイト側テークアップ装置の概略正面図である。
【
図5】カウンターウェイト側テークアップ装置の部分縦断面概略右側面図である。
【
図6】吊り下げチェーンのキャリッジ側のチェーンエンドまわりを示す部分縦断面左側面図である。
【
図7】吊り下げチェーンのキャリッジ側のチェーンエンドまわりを示す部分縦断面正面図である。
【
図8】吊り下げチェーンのキャリッジ側のチェーンエンドまわりを示す部分縦断面左側面図であり、ストッパー部材に対してキャリッジが上方へ移動した状態を示している。
【
図9】キャリッジに物品を積載しない状態におけるテークアップ装置の動作を示す概略正面図である。
【
図10】キャリッジに物品を積載した状態におけるテークアップ装置の動作を示す概略正面図である。
【
図11】キャリッジが各階で停止してレベルロック装置によりレベル合わせを行い、キャリッジの重量を物品昇降装置の構造体に預けた状態におけるテークアップ装置の動作を示す概略正面図である。
【
図12】テークアップ装置の動作を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
以下の実施形態において、
図1の紙面に垂直な手前方向を前方とし、前方から見た図を正面図とする。
【0029】
<棚設備>
図1の概略正面図に、本発明の実施の形態に係る物品昇降装置1を棚設備Aに用いた例を示す。棚設備Aは、上下複数段の階層を備えた立体的な物品収納スペースBを有し、物品WをキャリッジCに載せて昇降させる物品昇降装置1を備える。
【0030】
<物品昇降装置>
図1の概略正面図、及び
図2要部拡大概略正面図に示すように、本発明の実施の形態に係る物品昇降装置1は、上部従動スプロケット6A~6Cを上部に配置し、下部従動スプロケット7A~7Cを下部に配置している。
【0031】
(吊り下げチェーン)
吊り下げチェーン2は、上部従動スプロケット6Aに係合し、吊り下げチェーン2の一端のチェーンエンド2AにキャリッジCを吊り下げ、吊り下げチェーン2の他端のチェーンエンド2BにカウンターウェイトCWを吊り下げる。
【0032】
吊り下げチェーン3は、上部従動スプロケット6B,6Cに係合し、吊り下げチェーン3の一端のチェーンエンド3AにキャリッジCを吊り下げ、吊り下げチェーン3の他端のチェーンエンド3BにカウンターウェイトCWを吊り下げる。
【0033】
このように、物品昇降装置1は、吊り下げチェーン2,3により、キャリッジCとカウンターウェイトCWを釣瓶式に吊り下げている。
【0034】
(駆動チェーン)
駆動チェーン4の一端のチェーンエンド4Aは、吊り下げチェーン2の下端のチェーンエンド2Aに繋げており、駆動チェーン4の他端のチェーンエンド4Bは、カウンターウェイトCWに繋げている。なお、駆動チェーン4の一端のチェーンエンド4Aを、吊り下げチェーン2の下端のチェーンエンド2Aではなく、キャリッジCに繋げてもよい。
【0035】
駆動チェーン4がキャリッジCから垂下する下端部に第1下部従動スプロケット7Aを設けるとともに、駆動チェーン4がカウンターウェイトCWから垂下する下端部に第2下部従動スプロケット7Bを設ける。駆動チェーン4は、下部従動スプロケット7A,7C、テークアップスプロケット8、駆動装置Dにより駆動される駆動スプロケット5、テークアップスプロケット9、及び下部従動スプロケット7Bに係合する。
【0036】
(カウンターウェイトの重量)
本発明では、詳細は後述するキャリッジ側テークアップ装置TU1及びカウンターウェイト側テークアップ装置TU2を設けている。それにより、下駆動方式の物品昇降装置1において、カウンターウェイトCWの重量Wcwを上駆動方式の物品昇降装置と同様に大きくできるので、カウンターウェイトCWの重量Wcwを、キャリッジCの重量WcにキャリッジCに載せる物品(積荷)Wの重量Wwの半分を加えた重量とする。すなわち、Wcw=Wc+Ww/2とする。
【0037】
例えば、キャリッジCの重量Wcが500kgで、積荷Wの重量Wwが800kgの場合、カウンターウェイトCWの重量Wcwを、500+800/2=900kgとする。それにより、釣瓶式に吊り下げたキャリッジCとカウンターウェイトCWにおいて、積荷Wが有る場合は、キャリッジC側が400kg(500kg+800kg-900kg)重くなり、積荷Wが無い場合は、カウンターウェイト側が400kg(900kg-500kg)重くなる。なお、カウンターウェイトCWの重量Wcwは、キャリッジCの重量Wc以上(Wcw≧Wc)にすることができる。
【0038】
(駆動装置)
キャリッジCから垂下して第1下部従動スプロケット7Aにより方向を変えた駆動チェーン4と、カウンターウェイトCWから垂下して第2下部従動スプロケット7Bにより方向を変えた駆動チェーン4との間に駆動スプロケット5を配置している。そして、例えば直交軸ギヤドモータである駆動装置Dにより駆動スプロケット5を駆動することにより、駆動チェーン4を介してキャリッジC及びカウンターウェイトCWをガイド支柱H(
図1)に沿って昇降させる。
【0039】
本実施の形態に示すように、カウンターウェイトCWの重量WcwをキャリッジCの重量Wcに積荷Wの重量の半分を加えた重量(Wcw=Wc+Ww/2)とすることにより、積荷Wが有る場合と積荷Wが無い場合とでキャリッジ側とカウンターウェイト側の重量差であるアンバランス荷重が同じになるので、駆動装置Dの容量を小さくすることができる。
【0040】
(テークアップ装置)
物品昇降装置1には、駆動スプロケット5とキャリッジCとの間の駆動チェーン4にキャリッジ側テークアップ装置TU1を設けるとともに、駆動スプロケット5とカウンターウェイトCWとの間の駆動チェーン4にカウンターウェイト側テークアップ装置TU2を設けている。
【0041】
本実施の形態では、キャリッジ側テークアップ装置TU1は、駆動チェーン4がキャリッジCから垂下する下端部に設けた第1下部従動スプロケット7Aと駆動スプロケット5との間の駆動チェーン4に設けている。また、カウンターウェイト側テークアップ装置TU2は、駆動チェーン4がカウンターウェイトCWから垂下する下端部に設けた第2下部従動スプロケット7Bと駆動スプロケット5との間の駆動チェーン4に設けている。
【0042】
このような構成により、駆動チェーン4をキャリッジCに連結する箇所にテークアップ装置を設ける構成と比較して、キャリッジCから垂下する駆動チェーン4(例えば、
図9参照)の重量をキャリッジCの下側のテークアップ装置で引っ張り上げる必要がないことから、キャリッジ側テークアップ装置TU1のスプリングの強さを小さくできる。したがって、コスト低減化及びコンパクト化を図ることができる。
【0043】
次に、
図3の部分縦断面概略正面図、
図4の概略正面図、及び
図5の部分縦断面概略右側面図を参照してテークアップ装置の構造について説明する。
【0044】
キャリッジ側テークアップ装置TU1は、支軸8Aまわりに回転するテークアップスプロケット8を駆動チェーン4に係合させて駆動チェーン4に張力を付与する。カウンターウェイト側テークアップ装置TU2は、支軸9Aまわりに回転するテークアップスプロケット9を駆動チェーン4に係合させて駆動チェーン4に張力を付与する。
【0045】
キャリッジ側テークアップ装置TU1とカウンターウェイト側テークアップ装置TU2の構造は同じであるので、カウンターウェイト側テークアップ装置TU2を代表させて、その構造を説明する。
【0046】
支軸9Aは支持枠体10に固定されており、軸受を介してテークアップスプロケット9が支軸9Aにより回転可能に支持される。支持枠体10は、ガイド部材Gにより上下方向にスライド可能に支持される。それにより、テークアップスプロケット9は、駆動チェーン4に張力を付与する方向(上方)及びその反対の方向(下方)へ可動する。
【0047】
支持枠体10の上部に、上下方向に長い連結軸11の下端部が固定される。連結軸11は、テークアップフレームFの上側に配置した支持筒12内のコイルスプリング13内、及び支持筒12の上端に固定された円環部材Eに挿通され、円環部材Eの上側のダブルナットKに螺合する。
【0048】
このような構成により、後述のように駆動チェーン4に弛緩が発生したとき、コイルスプリング13により支持筒12と連結軸11とテークアップスプロケット9が上方に付勢されて移動することで、駆動チェーン4に張力が付与される。その場合、
図12に示されるように、支持筒12の下端面12AであるテークアップストッパーSとテークアップフレームFの間には、隙間SKが発生する。このように駆動チェーン4に張力を付与する付勢部材として、コイルスプリング13に替えて、例えばエアーシリンダーなどを用いてもよい。
【0049】
テークアップスプロケット9のコイルスプリング13の上方への付勢力に抗する方向(下方)への移動は、支持筒12の下端面12AであるテークアップストッパーSがテークアップフレームFに当接する所定位置で規制される。このようなテークアップストッパーSによりコイルスプリング13の過度の圧縮を抑制できるとともに、テークアップストッパーSが駆動チェーン4の緊張(引張力)に抗することができる。スプリングのみで駆動チェーン4の引張力に対抗するのではなく、テークアップストッパーSを設けることでスプリングを小さくできるので製造コストを低減できる。しかもスプリングを小さくすることで、通常のチェーン張力を小さくできる。
【0050】
(駆動チェーンの破断検知装置)
図4及び
図5に示すように、カウンターウェイト側テークアップ装置TU2には、駆動チェーン4が破断した際にコイルスプリング13の付勢力により上方へ移動する支持筒12の位置を検出することにより駆動チェーン4の破断を検知する、例えばリミットスイッチであるチェーン破断検知装置Iを設けている。このようなチェーン破断検知装置Iは、キャリッジ側テークアップ装置TU1及びカウンターウェイト側テークアップ装置TU2の一方又は両方に設ける。
【0051】
(吊り下げチェーンのキャリッジ側のチェーンエンド)
図6の部分縦断面左側面図、及び
図7の部分縦断面正面図に示すように、吊り下げチェーン2のキャリッジC側のチェーンエンド2Aのチェーンエンド金具14と、駆動チェーン4のキャリッジC側のチェーンエンド4Aのチェーンエンド金具18とを連結している。そして、吊り下げチェーン2のチェーンエンド金具14にストッパー部材15を設けている。チェーンエンド金具14に設けたストッパー部材15は円筒状であり、コイルスプリング17を内装している。なお、ストッパー部材15は、駆動チェーン4のチェーンエンド金具18に設けてもよい。
【0052】
図6の部分縦断面左側面図に示す状態では、キャリッジCに設けたプレート16の当接面16Aにストッパー部材15の上面15Aが当接する。この状態では、吊り下げチェーン2のキャリッジC側のチェーンエンド2Aのチェーンエンド金具14にキャリッジCが高さ方向に支持され、位置決めされる。
【0053】
キャリッジCは、
図6の部分縦断面左側面図のようにチェーンエンド金具14に位置決めされた状態から、
図8の部分縦断面左側面図の状態のようにストッパー部材15に対して上方へ移動可能である。
【0054】
図6~
図8のような吊り下げチェーン2のキャリッジC側のチェーンエンド2Aの構造により、後述するレベルロック装置でキャリッジCの荷重を各階に預けて停止することで高さ方向の位置決めを行う物品昇降装置1において、キャリッジC及びチェーンエンドのストッパー部材15等の構造が、駆動チェーン4をキャリッジCに直接連結した場合に比べて簡単になる。
【0055】
(吊り下げチェーンの破断検知装置)
図6~
図8に示すように、吊り下げチェーン2の破断を検知する、例えばリミットスイッチであるチェーン破断検知装置Jを設けている。吊り下げチェーン2が破断した際には、リミットスイッチのレバーの先端がストッパー部材15の外周から外れてレバーが回動するので吊り下げチェーン2に破断を検知できる。
【0056】
<テークアップ装置の動作>
【0057】
(キャリッジに積荷を積載しない状態)
図9の概略正面図に示すように、キャリッジCに積荷Wを積載しない状態では、カウンターウェイトCWがキャリッジCの重量よりも重いので、キャリッジC側の駆動チェーン4にアンバランス分の張力が発生する。それにより、キャリッジ側テークアップ装置TU1のテークアップスプロケット8が下方へ移動する。テークアップスプロケット8の下方への移動は、テークアップストッッパーS(
図4及び
図5の支持筒12の下端面12AがテークアップフレームFに当接するもの)により所定位置で規制されるので、駆動チェーン4の緊張(引張力)に抗することができる。
【0058】
カウンターウェイトCW側の駆動チェーン4には、吊り下げチェーン2及び駆動チェーン4の全長の摩耗伸び分と弾性伸び分による弛緩が発生するが、カウンターウェイト側テークアップ装置TU2のコイルスプリング13の上方への付勢力によりテークアップスプロケット9が上方へ移動することで駆動チェーン4に張力を付与する。
【0059】
(キャリッジに積荷を積載した状態)
図10の概略正面図に示すように、キャリッジCに積荷Wを積載した状態では、キャリッジC及び積荷Wの重量がカウンターウェイトCWの重量よりも重いので、カウンターウェイトCW側の駆動チェーン4にアンバランス分の張力が発生する。それにより、カウンターウェイト側テークアップ装置TU2のテークアップスプロケット9が下方へ移動する。テークアップスプロケット9の下方への移動は、テークアップストッッパーS(
図4及び
図5の支持筒12の下端面12AがテークアップフレームFに当接するもの)により所定位置で規制されるので、駆動チェーン4の緊張(引張力)に抗することができる。
【0060】
キャリッジC側の駆動チェーン4には、吊り下げチェーン2及び駆動チェーン4の全長の摩耗伸び分と弾性伸び分による弛緩が発生するが、キャリッジ側テークアップ装置TU1のコイルスプリング13の上方への付勢力によりテークアップスプロケット8が上方へ移動することで駆動チェーン4に張力を付与する。
【0061】
以上のように、駆動スプロケット5とキャリッジCとの間の駆動チェーン4にキャリッジ側テークアップ装置TU1を設けるとともに、駆動スプロケット5とカウンターウェイトCWとの間の駆動チェーン4にカウンターウェイト側テークアップ装置TU2を設けることにより、カウンターウェイトCWの重量Wcwを大きくでき(Wcw≧Wc)、カウンターウェイトCWの重量Wcwを例えば上駆動方式の物品昇降装置と同様(Wcw=Wc+Ww/2)にできる。それにより、積荷Wが有る場合と積荷Wが無い場合とでキャリッジC側とカウンターウェイトCW側の重量差であるアンバランス荷重が同じになるので、駆動装置Dの容量を小さくすることができる。
【0062】
(キャリッジが各階で停止してレベル合わせをした状態)
図11の概略正面図は、キャリッジCが各階で停止して図示しないレベルロック装置によりレベル合わせを行い、キャリッジCの重量を物品昇降装置1の構造体に預けた状態の例を示している。この例では、最上階の床のレベルLに対してキャリッジCのレベル合わせを行っている。
【0063】
レベルロック装置によるレベル合わせは、次のように行う。すなわち、キャリッジC側に設けた、図示しないキャリッジ昇降位置センサがキャリッジCの停止位置を検出した時点でレベルロック装置によりレベル合わせが行われるが、即時に駆動装置D(
図1~
図3)を停止せずに、所定時間分だけ余計に運転して下降した後に駆動装置Dを停止させる。
【0064】
キャリッジCが昇降中の吊下げチェーン2,3は、キャリッジCとカウンターウェイトCWの重量により、数十mm程度伸びた状態(弾性伸び)になっている。そして、キャリッジCを各階で停止させてレベルロック装置によるレベル合わせを行うと、レベルロック装置によりキャリッジCの荷重は物品昇降装置1の構造体に完全に預けられ、吊下げチェーン2,3からキャリッジCは完全に縁が切られる。
【0065】
このようにレベルロック装置によりレベル合わせを行った状態では、
図8に示すように、吊り下げチェーン2のチェーンエンド金具14に設けたストッパー部材15の上面15Aと、キャリッジCに設けたプレート16の当接面16Aとは離間し、ストッパー部材15の上面15Aと、キャリッジCに設けたプレート16の当接面16Aとの間には隙間ができる。それにより、キャリッジCは吊下げチェーン2,3から縁が切れた状態となり、キャリッジCはレベルロック装置により各階の高さで確実に位置決めされる。
【0066】
図11において、キャリッジCの重量は吊下げチェーン2,3に作用していないので、カウンターウェイトCWの重量により、カウンターウェイトCWの上側の吊り下げチェーン2及び駆動チェーン4のキャリッジC側チェーンエンド4Aから駆動スプロケット5までの部分が緊張した状態となる。それにより、キャリッジ側テークアップ装置TU1のテークアップスプロケット8が下方へ移動する。テークアップスプロケット8の下方への移動は、テークアップストッッパーS(
図4及び
図5の支持筒12の下端面12AがテークアップフレームFに当接するもの)により所定位置で規制されるので、駆動チェーン4の緊張(引張力)に抗することができる。
【0067】
駆動チェーン4のカウンターウェイトCW側のチェーンエンド4Bから駆動スプロケット5までの部分は弛緩した状態となるが、カウンターウェイト側テークアップ装置TU2のコイルスプリング13の上方への付勢力によりテークアップスプロケット9が上方へ移動することで、駆動チェーン4のカウンターウェイトCW側のチェーンエンド4Bから駆動スプロケット5までの部分に張力を付与する。
【0068】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 物品昇降装置
2,3 吊り下げチェーン
2A,2B,3A,3B チェーンエンド
4 駆動チェーン
4A,4B チェーンエンド
5 駆動スプロケット
6A,6B,6C 上部従動スプロケット
7A,7B,7C 下部従動スプロケット
8,9 テークアップスプロケット
8A,9A 支軸
10 支持枠体
11 連結軸
12 支持筒
12A 端面
13 コイルスプリング
14 チェーンエンド金具
15 ストッパー部材
15A 上面
16 プレート
16A 当接面
17 コイルスプリング
18 チェーンエンド金具
A 棚設備
B 物品収納スペース
C キャリッジ
CW カウンターウェイト
D 駆動装置
E 円環部材
F テークアップフレーム
G ガイド部材
H ガイド支柱
I,J チェーン破断検知装置
K ダブルナット
L 最上階の床のレベル
S テークアップストッパー
SK 隙間
TU1 キャリッジ側テークアップ装置
TU2 カウンターウェイト側テークアップ装置
W キャリッジに載せる物品(積荷)
Wc キャリッジの重量
Wcw カウンターウェイトの重量
Ww 積荷の重量