(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】引き戸付き開き戸の戸構造
(51)【国際特許分類】
E06B 3/50 20060101AFI20241008BHJP
E05D 3/12 20060101ALI20241008BHJP
E05D 15/58 20060101ALI20241008BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
E06B3/50
E05D3/12 Z
E05D15/58 A
E06B3/48
(21)【出願番号】P 2020151191
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】512017338
【氏名又は名称】ヨダコーポレーション有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】依田 隆夫
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-065253(JP,A)
【文献】登録実用新案第3171314(JP,U)
【文献】特開2003-214013(JP,A)
【文献】実開平03-047369(JP,U)
【文献】特開2012-102525(JP,A)
【文献】実開平01-075586(JP,U)
【文献】特開2005-048539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/04-3/46,3/50-3/52
E05D 15/58
E06B 3/48,3/90-3/94
E05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に配置される第1及び第2の縦戸枠の前記第1の縦戸枠に蝶番で取り付けられ、前記蝶番を軸に回転可能な開き戸と、
前記開き戸に、水平方向に延びるスライドレールを介して取り付けられ、平面が前記開き戸の平面に沿って水平方向に摺動可能な引き戸とを有し、
前記第2の縦戸枠側に前記引き戸を移動して、前記開き戸と引き戸とが前記第1及び第2の縦戸枠の間を閉じた状態から、前記引き戸を前記開き戸の平面に沿って前記第1の縦戸枠側に摺動させながら前記開き戸を回転させて、前記第1及び第2の縦戸枠の間を開いた状態に
し、
前記閉じた状態から前記開いた状態にする場合、利用者が前記引き戸を前記開き戸の平面に沿って前記第1の縦戸枠側に引くと共に前記利用者の通過方向に押すことで、前記引き戸の前記第2の縦戸枠側の端部が、前記第2の縦戸枠の位置から、前記引き戸が前記開き戸に重ねられて開いた状態にされたときの前記引き戸の前記端部の位置に向かう曲線状の軌跡を通過する、戸構造。
【請求項2】
前記蝶番が第1方向と前記第1方向と逆の第2方向の両方に回転可能な二重蝶番である、請求項1に記載の戸構造。
【請求項3】
前記スライドレールが、
アウターレールと、
前記アウターレールに第1のベアリングボールを介して収容される中間レールと、
前記中間レールに第2のベアリングボールを介して収容されるインナーレールとを有し、
前記アウターレールまたはインナーレールの一方のレールが前記開き戸に固定され、他方のレールが前記引き戸に固定される、請求項1に記載の戸構造。
【請求項4】
前記アウターレールが、前記引き戸または開き戸の一方の戸の上端面及び下端面に固定され、
前記インナーレールが、前記開き戸または引き戸の他方の戸の上端面及び下端面に固定される、請求項3に記載の戸構造。
【請求項5】
前記引き戸の前記第2の縦戸枠側の端面に設けられた第1の磁石と、前記第2の縦戸枠の前記引き戸の端面に対抗する面に設けられた第2の磁石とを有する係止手段を有する、請求項1に記載の戸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸を引きながら開き戸を開閉する引き戸付開き戸の戸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引き戸式、開き戸式などの戸構造が知られている。引き戸と開き戸とはそれぞれ長所、欠点を有する。引き戸は、平面的に薄いスペース内で開閉可能という長所を持つが、一方の戸を他方の戸に重ねた状態で開口状態となり開口の幅が狭いという欠点を持つ。開き戸は、1対の戸を観音開きまたは1つの戸を前後に開くため開口の幅が広いという長所を持つが、逆に、開閉するために平面的に扇状のスペースを必要とする欠点を持つ。
【0003】
以下の特許文献2、3には、1対の戸を引き戸としても使用することができ、また開き戸としても使用することができる構造が開示される。特許文献2では、1対の戸を左右の戸枠にそれぞれ蝶番で取り付けることに代えて、1対の戸を左右の戸枠に近接する上下の戸枠にそれぞれ連結体で取り付ける構造を有する。連結体で上下の戸枠に取り付けられた1対の戸は、左右方向に移動して引き戸となり、連結体を中心に前後方向に回転して開き戸となる。
【0004】
特許文献3では、1対の戸を上の戸枠に吊るし、下の戸枠のレール上を移動させて引き戸となり、上下の戸枠を真ん中から1対の戸とともに観音開きすることで開き戸となる。
【0005】
また、特許文献1には、3枚の戸のうち右側と真ん中の戸を左側の戸の位置に移動して引き戸となり、左側の戸の位置に移動させて重なった3枚の戸を左端の蝶番を中心に回転させて、片側の開き戸となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭54-45943号公報
【文献】特開昭56-39280号公報
【文献】特開昭59-154283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の戸構造では、2枚の戸を引き戸として移動させ、移動により重ねられた3枚の戸を蝶番を中心にして回転させて片側の開き戸とする。これにより、開口幅が戸枠と同等の広さとなる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の戸構造は構造が複雑であるとともに、3つの戸を開いて全開状態にするためには、2枚の枠体を引き戸として移動しその後重なった3つの戸を開く必要があり、操作が複雑である。
【0009】
そこで、本実施の形態の第1の側面の目的は、構造がシンプルで開く動作が容易な戸構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態の第1の側面は、左右に配置される第1及び第2の縦戸枠の前記第1の縦戸枠に蝶番で取り付けられ、前記蝶番を軸に回転可能な開き戸と、
前記開き戸に、水平方向に延びるスライドレールを介して取り付けられ、平面が前記開き戸の平面に沿って水平方向に摺動可能な引き戸とを有し、
前記第2の縦戸枠側に前記引き戸を移動して、前記開き戸と引き戸とが前記第1及び第2の縦戸枠の間を閉じた状態から、前記引き戸を前記開き戸の平面に沿って前記第1の縦戸枠側に摺動させながら前記開き戸を回転させて、前記第1及び第2の縦戸枠の間を開いた状態にする、戸構造である。
【発明の効果】
【0011】
第1の側面によれば、構造がシンプルで開く動作が容易な戸構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態における引き戸付き開き戸の概略構成例と閉じた状態から開いた状態への変化例を示す図である。
【
図2】スライドレールの一例と二重蝶番の一例を示す図である。
【
図3】スライドレールの取り付けの第1の例を示す図である。
【
図4】スライドレールの取り付けの第2の例を示す図である。
【
図5】スライドレールの取り付けの第3の例を示す図である。
【
図6】本実施の形態における引き戸と第2の縦戸枠との間の係止手段の例を示す図である。
【
図7】本実施の形態における引き戸と第2の縦戸枠との間の係止手段を解除する把手の例を示す図である。
【
図8】本実施の形態における引き戸付き開き戸を開閉する場合の利用者の操作軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[引き戸付き開き戸の構成と開く動作]
図1は、本実施の形態における引き戸付き開き戸の概略構成例と閉じた状態から開いた状態への変化例を示す図である。図中、(A)は閉じた状態、(B)は開く動作、(C)開いた状態をそれぞれ示す。
【0014】
引き戸付き開き戸の戸構造は、第1の壁W1と第2の壁W2にそれぞれ取り付けられた第1の縦戸枠FL1と第2の縦戸枠FL2の間に、引き戸PL_Dと開き戸OP_Dを設ける。具体的には、図中(C)に示すとおり、開き戸OP_Dが第1の壁W1の第1の縦戸枠FL1に二重蝶番WHGで取り付けられる。また、引き戸PL_Dが開き戸OP_DにスライドレールSRにより取り付けられる。図中(A)(B)に示されるとおり、スライドレールSRは、引き戸PL_Dと開き戸OP_Dを重ねた状態で互いに対抗する平面P1の上部と下部に、それぞれの部品のレールが取り付けられる。これにより、引き戸PL_Dは開き戸OP_Dの平面P1に沿って左右方向に摺動可能に取り付けられる。但し、図には引き戸PL_Dに取り付けられたスライドレールSRの部品レールは示されていない。そして、引き戸PL_Dの左側上下中央付近に把手HDLが取り付けられる。
【0015】
図中(A)の戸を閉じた状態では、開き戸OP_Dは、その平面P1が第1の壁W1の側面P2と平行な位置にあり閉じた状態にある。一方、引き戸PL_Dは、開き戸OP_Dに対して左側に移動した位置にあり閉じた状態にある。閉じた状態では、開き戸と引き戸の平面P1が互いにずれた位置にあり、第1及び第2の縦戸枠FL1,FL2との間の通路が閉じられた状態となる。
【0016】
(A)の閉じた状態で図中右側から近づいてきた利用者は、(B)の開く動作に示すように、引き戸PL_Dの把手HDLをつかみ引き戸を右側に引きながら、同時に把手を押して開き戸OP_Dを二重蝶番を中心に回転させる。引き戸を右側に引くことで、引き戸PL_Dが開き戸OP_Dの平面P1に沿って摺動する。この摺動動作はスライドレールSRによる。さらに、引き戸を右側に引きながら押して開き戸を回転させると、(C)の開いた状態に示すように、引き戸PL_Dと開き戸OP_Dが略互いに重なった状態で、且つ、第1の壁W1に対して平面視で略直角の状態になり、左右の縦戸枠FL1,FL2間の通路が開口状態となる。
【0017】
開き戸を取り付けた二重蝶番が閉じる方向の弾性力を有するように調整され、引き戸と開き戸の間のスライドレールが伸びる方向の弾性力を有するように構成されていると、(C)の開いた状態で、利用者が引き戸PL_Dの把手HDLを離すと、引き戸と開き戸は(A)の閉じた状態に自動的に戻る。
【0018】
[スライドレール]
図2は、スライドレールの一例と二重蝶番の一例を示す図である。
図2中、(B)はスライドレールの断面図、(A1)(A2)はスライドレールを伸ばした状態と縮めた状態の平面図(断面図の右側から視た図)、(C1)(C2)はスライドレールを伸ばした状態と縮めた状態の側面図(断面図の下側から視た図)である。
【0019】
本実施の形態のスライドレールSRは、例えば、3段引きのスライドレールであり、断面図(B)に示されるとおり、アウターレールRoutと、中間レールRmdと、インナーレールRinとを有する。アウターレールRoutと中間レールRmdとの間にリテーナRTで位置が固定されたベアリングのボールBLが設けられ、同様に、中間レールRmdとインナーレールRinとの間にリテーナRTで位置が固定されたボールBLが設けられる。ボールBLがリテーナを中心にして回転することで、3つのレールが延びた状態と縮めた状態との間のいずれかの位置に摺動可能である。(A1)(C1)が3つのレールを伸ばした状態で、(A2)(C2)が3つのレールを縮めた状態である。
【0020】
3段引きスライドレールで引き戸を開き戸に取り付けることで、引き戸と開き戸の位置をそれぞれの戸の平面P1の横方向にずらすことができ、
図1(A)に示したように、1対の縦戸枠FL1、FL2間に引き戸PL_Dと開き戸OP_Dをずらして配置し、通路を閉じることができる。また、引き戸と開き戸を互いに重なり合う状態にすることができ、
図1(C)に示したように、開いた状態に必要なスペースは開き戸のみの場合よりも狭くできる。
【0021】
本実施の形態では、2段引きスライドレールで引き戸を開き戸に取り付けても良い。その場合、スライドレールを伸ばした状態の長さは各スライドレールの長さの2倍より若干短くなり、1対の縦戸枠FL1、FL2間の距離は引き戸と開き戸の横方向の長さの合計より若干短くなる。
【0022】
[スライドレールの取り付け例]
[第1の例]
図3は、スライドレールの取り付けの第1の例を示す図である。
図3(A)は引き戸と開き戸が重なった状態の側面図であり、(B)は引き戸が開き戸から左に移動した閉じた状態の矢印V1から視た正面図である。この例では、スライドレールSRが引き戸と開き戸の間の上部と下部にそれぞれ設けられる。具体的には、開き戸OP_Dの上部と下部に設けた凹部のスライドレール収容部10と引き戸PL_Dの上部と下部に設けた凹部のスライドレール収容部11とに、スライドレールSRが
図2(B)のように縦向きに収容される。そして、スライドレールSRのアウターレールRoutが開き戸OP_DにネジSCにより固定され、インナーレールRinが引き戸PL_DにネジSCにより固定される。スライドレール収容部10、11は、引き戸と開き戸の相対抗する平面の距離をできるだけ短くするためのものであり、スライドレールの横方向の厚み分の凹部が形成されればよい。
【0023】
上記のようにスライドレールを開き戸と引き戸の間に取り付けたことで、引き戸PL_Dが閉じた状態になると、正面図(B)に示されるとおり、開き戸OP_Dの上下位置にスライドレールのアウターレールRoutと中間レールRmdの一部が露出され、側面図(A)の開き戸側から視た背面図(正面図(B)の紙面反対側の図)では、引き戸PL_Dの上下位置にスライドレールのインナーレールRinと中間レールRmdの一部が露出される。
【0024】
[第2の例]
図4は、スライドレールの取り付けの第2の例を示す図である。
図3と同様に、
図4(A)は引き戸と開き戸が重なった状態の側面図であり、(B)は引き戸が開き戸から左に移動した閉じた状態の矢印V1から視た正面図である。この例では、引き戸の上下端面に設けられた隠し板14、15により形成された凹部のスライドレール収容部12内に、スライドレールSRが
図2(B)の状態から左側に90°回転した横向きに収容される。そして、アウターレールRoutが引き戸PL_DにネジSCにより固定され、開き戸OP_Dの上下に設けた凹部のスライドレール収容部13にネジSCで固定された金属の取り付け板PL1に、インナーレールRinがネジSCで固定される。
【0025】
上記のようにスライドレールSRを横向きにして引き戸PL_Dの上下端面のスライドレール収容部12内に収納した場合、引き戸PL_Dが閉じた状態になると、正面図(B)に示すように、開き戸OP_Dの上下の位置にインナーレールRinと中間レールRmdの一部と取り付け板PL1が露出される。一方、側面図(A)の開き戸側から視た背面図(正面図(B)の紙面反対側の図)では、引き戸PL_Dの上下端面に固定されたアウターレールRoutと中間レールRmdの一部はスライドレール収容部12内に収容され、隠し板15により隠されて外部に露出されない。
【0026】
しかし、正面図(B)に示すとおり、インナーレールRinの長さを約半分にして、開き戸の右半分の領域のインナーレールをなくすことで、開き戸OP_Dに取り付けられた取り付け板PL1とインナーレールRinの露出部分を少なくできる。また、スライドレールSRが横向きで引き戸と開き戸に取り付けられるので、矢印V1から視た正面図(B)で露出される中間レールRmdとインナーレールRinの垂直方向の長さが
図3の第1の例より短くなる。その結果、
図4の第2のスライドレール取り付け例でのスライドレールの露出量は、
図3の第1のスライドレール取り付け例よりも大きく減少する。
【0027】
[第3の例]
図5は、スライドレールの取り付けの第3の例を示す図である。
図3と同様に、
図5(A)は引き戸と開き戸が重なった状態の側面図であり、(B)は引き戸が開き戸から左に移動した閉じた状態の矢印V1から視た正面図である。
【0028】
この例では、
図4の第2の例と同様に、スライドレールSRが引き戸PL_Dの上下端に設けた隠し板14、15で形成された凹部のスライドレール収容部12内に収容され、アウターレールRoutが引き戸PL_Dの隠し板14にネジSCで固定される。また、インナーレールRinは、それに連結された取り付け板PL2を介して開き戸OP_Dの上下端部に設けたスライドレール収容部13にネジSCで取り付けられる。開き戸OP_Dの上下端部にはスライドレールの取り付け板PL2を隠す隠し板17が形成される。
【0029】
但し、
図4の第2の例と異なり、
図5の第3の例のスライドレールSRのアウターレールRoutは、
図3の第1の例と同様に縦向きで引き戸PL_DにネジSCで固定される。
【0030】
図5の第3の例のスライドレールSRは、
図2の断面図(B)のスライドレールと比較すると、その縦方向の長さが横方向の長さより短く、インナーレールRinに取り付け板PL2が連結された特殊な構造を持つ。それにより、
図5の正面図(B)に示すとおり、引き戸PL_Dの上下位置の隠し板15の外側に露出するアウターレールRoutと中間レールRmdの垂直方向の長さが短い。
【0031】
また、
図4の第2の例と同様に、開き戸OP_Dに取り付け板PL2を介して取り付けられるインナーレールRinは、水平方向の長さを約半分にしている。そのため、正面図(B)に示すとおり、開き戸OP_Dの右半分の領域にインナーレールRinが露出することがない。また、引き戸PL_Dを閉じた正面図(B)において、開き戸OP_Dの上下位置に露出する中間レールRmdとインナーレールRinの垂直方向の長さも短い。これにより、引き戸PL_Dを閉じた状態で正面図および背面図で露出されるスライドレールの部品の面積が、
図3の第1の例より縮小される。
【0032】
[引き戸と縦戸枠との間の係止手段と解除手段]
図6は、本実施の形態における引き戸PL_Dと第2の縦戸枠FL2との間の係止手段の例を示す図である。本実施の形態では、
図1に示したとおり、開き戸OP_Dの一端側の側面が第1の縦戸枠FL1に二重蝶番WHGで固定され、開き戸OP_Dに引き戸PL_DがスライドレールSRを介して固定される。しかし、上下の横戸枠は設けられておらず、開き戸と引き戸は上下の横戸枠(
図1中図示せず)には固定されない。そこで、引き戸を開き戸から横方向にずらした閉じた状態で引き戸を固定するために、
図6に示すとおり、第2の壁W2に固定された第2の縦戸枠FL2に係止用の磁石20、21を設け、引き戸の開き戸側とは反対側の側面に係止用の磁石22、23を設ける。
【0033】
すなわち、係止手段は、引き戸の第2の縦戸枠FL2側に設けられた第1の係止磁石22、23と、第2の縦戸枠FL2に設けられた第2の係止磁石20、21とを有し、開き戸と引き戸とが第1及び第2の縦戸枠FL1、FL2の間を閉じた状態で、第1の係止磁石と前記第2の係止磁石とが磁力により接着される係止構造を有する。
【0034】
図6(A)の第1の例では、縦戸枠FL2に磁石20のS側と磁石21のN側をそれぞれ外側に向け且つ縦方向に並べて取り付け、引き戸の側面に磁石22のN側と磁石23のS側をそれぞれ外側に向けて且つ縦方向に並べて取り付ける。これにより、引き戸の側面が縦戸枠FP2に近づくと、つまり閉じる状態に近づくと、引き戸の側面が縦戸枠FP2に引き寄せられ、2対の磁石が吸着し、引き戸と縦戸枠とが互いに係止状態となる。この係止状態で引き戸と開き戸は横方向にずれた閉じた状態となる。
【0035】
図6(B)の第2の例では、縦戸枠FL2に磁石20のS側と磁石21のN側をそれぞれ外側に向け且つ横方向に並べて取り付け、引き戸の側面に磁石22のN側と磁石23のS側をそれぞれ外側に向けて且つ横方向に並べて取り付ける。このように磁石を設けることで、利用者が引き戸と開き戸とを共に回転して閉じる方向に動かすと、引き戸の側面と縦戸枠FP2とが近づき最初は反発しあうが、更に引き戸を開き戸と共に回転して閉じる方向に強く近づけると、2対の磁石が吸着し、引き戸と縦戸枠とが互いに係止状態となる。この場合、利用者は、係止状態になる前に磁石の反発力を感じてから吸着力を感じるので、閉じる手応えを感じることができる。
【0036】
一方、利用者が開き戸を閉じる状態まで回転してから、引き戸を開き戸の平面に沿って縦戸枠FL2側に引くと、2対の磁石が反発し合うことなく吸着する。
【0037】
図7は、本実施の形態における引き戸と第2の縦戸枠との間の係止手段を解除する把手の例を示す図である。
図7には2つの例が示される。
図7(A)の第1の解除する把手の例では、把手HDLを押し下げると、円形の軸を中心に把手が回転し、把手HDLに連結する解除部材RLが回転し壁W2側の縦戸枠FL2を押し、引き戸PL_Dを矢印V2方向に移動させて磁石による係止状態を解除する。
【0038】
図7(B)の第2の解除する把手の例では、把手HDLに連結する解除部材RLが引き戸側の磁石22、23に連結され、更に、磁石22、23が引き戸PL_D内に設けられた空間30内を移動可能に構成されている。そして、把手HDLを押し下げると、把手が回転し、解除部材RLが磁石22、23を矢印方向に移動させ、磁石による係止状態を解除する。その結果、引き戸PL_Dは矢印方向に移動可能になる。
【0039】
[引き戸付き開き戸の開閉操作]
図8は、本実施の形態における引き戸付き開き戸を開閉する場合の利用者の操作軌跡を示す図である。
図8には、第1の壁W1、第1の縦戸枠FL1、二重蝶番WHG、開き戸OP_D、引き戸PL_D、第2の縦戸枠FL2及び第2の壁W2の上面図が示される。
図8は、引き戸付き開き戸が2つの縦戸枠FL1,FL2の間を閉じた状態を示す。利用者は、図中下から上方向に2つの縦戸枠間を通過する場合、引き戸付き開き戸を閉じた状態から開いた状態にするために、引き戸PL_Dの把手HDLを図中右側に引くと共に図中上側に押す。この場合、利用者により移動する把手HDLの軌跡は、
図8に示すとおり、T1、T2、T3の三種類が考えられる。
【0040】
軌跡T1は、利用者が引き戸を右側に引きながら同時に引き戸を図中上側に押して開き戸を回転させた場合の軌跡である。軌跡T3は、利用者がまず引き戸を右側に引き、引き終わってから重なった引き戸と開き戸を押して開き戸を回転させた場合の軌跡である。そして、軌跡T2は、現実的にはまれではあるが、利用者が最初に引き戸を図中上側に押して開き戸を回転させ、開き戸が90°回転した後に引き戸を開き戸に沿って引いた場合の軌跡である。
【0041】
3つの軌跡を比較すると、軌跡T1が最も短い軌跡である。よって、本実施の形態では、利用者は、引き戸を右側に引きながら同時に引き戸を図中上側に押して開き戸を回転させることで、最も効率的に引き戸付き開き戸を開けることができる。
【0042】
利用者が図中上から下方向に2つの縦戸枠間を通過する場合も同様に、利用者は、引き戸を右側に引きながら同時に引き戸を図中上側に押して開き戸を回転させることで、最も効率的に引き戸付き開き戸を開けることができる。
【0043】
本実施の形態では、利用者が最も効率的な開口操作ができるように、二重蝶番の回転方向の弾性力と、スライドレールのスライド方向の摩擦力とが調整されることが好ましい。
【0044】
本実施の形態では、開き戸を二重蝶番を介して第1の縦戸枠に固定したが、二重蝶番に代えて一重蝶番にしてもよい。その場合、利用者は、一方の方向に通るときは引き戸を開き戸に沿って引きながら押す操作を行い、反対方向に通るときは引き戸を開き戸に沿って引きながら手前に引く操作を行う。車椅子の利用者の場合は、開き戸を二重蝶番で縦戸枠に固定するのが好ましい。
【0045】
図3、4、5に示した3種類のスライドレールの取り付け例では、スライドレールのアウターレールとインナーレールを取り付ける開き戸又は引き戸を、図に示したものと逆の関係にしてもよい。
【0046】
以上のとおり、本実施の形態によれば、縦戸枠間に設けられる戸を引き戸付き開き戸にし、引き戸をスライドレールを介して開き戸に取り付けることで、利用者は引き戸を引きながら開き戸を開くことでより少ない労力で戸を開くことができる。よって、高齢者や車椅子の非健常者も容易に操作することができる。
【符号の説明】
【0047】
W1:第1の壁 W2:第2の壁
FL1:第1の縦戸枠 FL2:第2の縦戸枠
OP_D:開き戸 PL_D:引き戸
SR:スライドレール Rout:アウターレール
Rmd:中間レール Rin:インナーレール
BL:ベアリングボール SC:取り付けネジ
PL1:取り付け板 S,N:係止磁石
HDL:把手
14,15,17: 隠し板
10,11,12,13:スライドレール収容部
WHG:二重蝶番(ちょうつがい、ダブルヒンジ)