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特許7568202メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20241008BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241008BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20241008BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241008BHJP
   A23K 10/16 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
A61K35/747
A23L33/135 ZNA
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/08
A61P29/00
A23K10/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019520289
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2018019866
(87)【国際公開番号】W WO2018216735
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-31
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2017105101
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】FERM  BP-08607
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 里依子
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 義隆
(72)【発明者】
【氏名】室▲崎▼ 伸二
(72)【発明者】
【氏名】田中 由祐
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】伊藤 幸司
【審判官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-114667(JP,A)
【文献】特開2010-95465(JP,A)
【文献】特開平10-167972(JP,A)
【文献】特表2004-520276(JP,A)
【文献】Exp Biol Med、2010、Vol.235、p.849-856
【文献】Nutr J、2013、12、Article ID 138、p.1-11
【文献】Evid Based Complement Alternat Med、2013、Vol.2013、Article ID943020、p.1-12
【文献】利光孝之、外2名、日本農芸化学会2012年大会講演要旨集、2012年、講演番号:3J14p03
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35/00, A23L33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream III)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラムL-137を含有する、体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇の抑制であり、かつ、前記体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇の原因が、高脂肪食摂取によるものであることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
さらに、以下の(i)~(iv)からなる群より選択される1以上の用途に用いられる請求項1に記載の組成物
ii)脂肪組織重量、肝臓の重量の増加抑制用;
(iii)血中のインスリン値、及び/又は血中のレプチン値の上昇抑制用;又は
(iv)血中のAST値、若しくは/及びALT値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇抑制用。
【請求項3】
ラクトバチルス・プランタラムL-137が死菌体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
MCP-1(Monocyte chemotactic protein 1)、F4/80(Anti-EGF-Like Module-Containing Mucin-Like Receptor 1)及びTNF-α(tumor necrosis factor‐alpha)からなる群から選択される脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇抑制用であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
飲食品である請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
飲食品が食品添加物又はサプリメントである請求項に記載の組成物。
【請求項7】
ラクトバチルス・プランタラムL-137の有効量を摂取対象(但し、ヒトを除く)に投与する工程を含む、体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇の抑制方法であって、摂取対象が、高脂肪食を摂取していることを特徴とする方法
【請求項8】
体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇の抑制用医薬製造のためのラクトバチルス・プランタラムL-137の使用であって、前記体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇の原因が、高脂肪食摂取によるものであることを特徴とする使用
【請求項9】
体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇を抑制するためのラクトバチルス・プランタラムL-137の使用(但し、ヒトに対する使用を除く)であって、前記体重、血糖値及び血中のコレステロール値の増加又は上昇の原因が、高脂肪食摂取によるものであることを特徴とする使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物に関するものであり、より詳細には、ラクトバチルス・プランタラムL-137を含有するメタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラクトバチルス・プランタラムL-137について、風邪予防等の様々な機能を有することが知られているが(特許文献1~6及び非特許文献1~10)、ラクトバチルス・プランタラムL-137のメタボリックシンドロームの予防、改善又は治療の機能については一切知られておらず、示唆さえされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-95465号公報
【文献】特開平10-167972号公報
【文献】WO2014/199448号パンフレット
【文献】WO2008/018143号パンフレット
【文献】WO2004/084923号パンフレット
【文献】WO2004/084922号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【文献】Iwasaki.et al,Oral Health Prev Dent.,2016;14(3):207-14.
【文献】Hatano.et al,Int Immunopharmacol.,2015;Apr;25(2):321-31
【文献】Hirose.et al,J Nutr Sci.,2013 Dec 6;2:e39
【文献】Fujiki.et al,Biosci Biotechnol Biochem.,2012;76(5):918-22.
【文献】Arimori.et al,Immunopharmacol Immunotoxicol. 2012 Dec;34(6):937-43
【文献】Hirose.et al,Microbiol Immunol. 2010 Mar;54(3):143-51.
【文献】Maeda.et al,Int Immunopharmacol. 2009 Aug;9(9):1122-5.
【文献】Hirose.et al,J Nutr. 2006 Dec;136(12):3069-73.
【文献】Murosaki.et al,Cancer Immunol Immunother. 2000 Jun;49(3):157-64.
【文献】Murosaki.et al,J Allergy Clin Immunol. 1998 Jul;102(1):57-64.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ラクトバチルス・プランタラムL-137を含有する組成物が、メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療に有用であることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]ラクトバチルス・プランタラムL-137を含有するメタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物。
[2]肥満抑制、糖又は脂質代謝異常改善、及び炎症抑制からなる群より選択される1つ以上のために用いられる前記[1]に記載の組成物。
[3]高脂肪食摂取等による体重、脂肪組織重量、及び/又は肝臓の重量の増加を抑制するために用いられる前記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]血糖値、血中のコレステロール値、血中のインスリン値、及び/又は血中のレプチン値の上昇を抑制するために用いられる前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]血中のAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)値、若しくは/及びALT(アラニンアミノ基転移酵素)値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇を抑制するために用いられる前記[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]飲食品である前記[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]飲食品が食品添加物又はサプリメントである前記[6]に記載の組成物。
[8]ラクトバチルス・プランタラムL-137の有効量を摂取者に投与する工程を含む、メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療方法。
[8-2]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、肥満を抑制し、糖若しくは脂質代謝異常を改善し、及び/又は炎症を抑制する、前記[8]に記載の方法。
[8-3]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、高脂肪食摂取等による体重、脂肪組織重量、及び/又は肝臓の重量の増加を抑制する、前記[8]又は[8-2]に記載の方法。
[8-4]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血糖値、血中のコレステロール値、血中のインスリン値、及び/又は血中のレプチン値の上昇を抑制する、前記[8]~[8-3]のいずれかに記載の方法。
[8-5]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血中のAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)値、若しくは/及びALT(アラニンアミノ基転移酵素)値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇を抑制する、前記[8]~[8-4]のいずれかに記載の方法。
[8-6]ラクトバチルス・プランタラムL-137が飲食品に含まれている、前記[8]~[8-5]のいずれかに記載の方法。
[8-7]飲食品が食品添加物又はサプリメントである、前記[8-6]に記載の方法。
[9]メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療のために使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[9-2]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、肥満抑制、糖又は脂質代謝異常改善、及び炎症抑制からなる群より選択される1つ以上のために用いられる、前記[9]に記載の、使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[9-3]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、高脂肪食摂取等による体重、脂肪組織重量、及び/又は肝臓の重量の増加を抑制するために用いられる、前記[9]又は[9-2]に記載の、使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[9-4]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血糖値、血中のコレステロール値、血中のインスリン値、及び/又は血中のレプチン値の上昇を抑制するために用いられる、前記[9]~[9-3]のいずれかに記載の、使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[9-5]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血中のAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)値、若しくは/及びALT(アラニンアミノ基転移酵素)値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇を抑制するために用いられる、前記[9]~[9-4]のいずれかに記載の、使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[9-6]ラクトバチルス・プランタラムL-137が飲食品に含まれている、前記[9]~[9-5]のいずれかに記載の、使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[9-7]飲食品が食品添加物又はサプリメントである、前記[9-6]に記載の、使用するための、ラクトバチルス・プランタラムL-137。
[10]メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用医薬製造のためのラクトバチルス・プランタラムL-137の使用。
[10-2]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、肥満抑制、糖又は脂質代謝異常改善、及び炎症抑制からなる群より選択される1つ以上のために用いられる、前記[10]に記載の使用。
[10-3]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、高脂肪食摂取等による体重、脂肪組織重量、及び/又は肝臓の重量の増加を抑制するために用いられる、前記[10]又は[10-2]に記載の使用。
[10-4]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血糖値、血中のコレステロール値、血中のインスリン値、及び/又は血中のレプチン値の上昇を抑制するために用いられる、前記[10]~[10-3]のいずれかに記載の使用。
[10-5]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血中のAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)値、若しくは/及びALT(アラニンアミノ基転移酵素)値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇を抑制するために用いられる、前記[10]~[10-4]のいずれかに記載の使用。
[10-6]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、飲食品に含まれている、前記[10]~[10-5]のいずれかに記載の使用。
[10-7]飲食品が食品添加物又はサプリメントである、前記[10-6]に記載の使用。
[11]メタボリックシンドロームを予防、改善又は治療するためのラクトバチルス・プランタラムL-137の使用。
[11-2]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、肥満抑制、糖又は脂質代謝異常改善、及び炎症抑制からなる群より選択される1つ以上のために用いられる、前記[11]に記載の使用。
[11-3]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、高脂肪食摂取等による体重、脂肪組織重量、及び/又は肝臓の重量の増加を抑制するために用いられる、前記[11]又は[11-2]に記載の使用。
[11-4]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血糖値、血中のコレステロール値、血中のインスリン値、及び/又は血中のレプチン値の上昇を抑制するために用いられる、前記[11]~[11-3]のいずれかに記載の使用。
[11-5]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、血中のAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)値、若しくは/及びALT(アラニンアミノ基転移酵素)値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現上昇を抑制するために用いられる、前記[11]~[11-4]のいずれかに記載の使用。
[11-6]ラクトバチルス・プランタラムL-137が、飲食品に含まれている、前記[11]~[11-5]のいずれかに記載の使用。
[11-7]飲食品が食品添加物又はサプリメントである、前記[11-6]に記載の使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、好ましくは、(1)メタボリックシンドロームを予防又は改善する効果、(2)肥満を抑制する効果、(3)糖又は脂質代謝異常を改善する効果、(4)炎症を抑制する効果、より好ましくは全身又は脂肪組織の炎症を抑制する効果、(5)例えば高脂肪食摂取等による体重増加を抑制する効果、(6)脂肪組織重量の増加を抑制する効果、(7)肝臓等の臓器の重量の増加を抑制する効果、(8)血中のコレステロール値の上昇を抑制する効果、(9)血中のインスリン値の上昇を抑制する効果、(10)血中のレプチン値の上昇を抑制する効果、(11)血中のAST値の上昇を抑制する効果、(12)血中のALT値の上昇を抑制する効果、(13)脂肪組織の炎症関連遺伝子(例えば、MCP-1、F4/80、TNF-α等)の発現上昇を抑制する効果、(14)脂質代謝を改善する効果、(15)基礎代謝を促進する効果、(16)体重を減少させる効果、(17)肥満の人、又は肥満気味の人の体脂肪を減らす効果、(18)内臓脂肪又は皮下脂肪を減少させる効果、(19)ダイエット効果を有する効果、(20)肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる効果、及び(21)肥満気味の人の体重やお腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)やウエスト周囲径(ウエストサイズ)を減らすことを助ける効果から選択される1つ以上の効果を奏することができる。
本発明の好ましい効果として、有効成分の投与量が少量であっても本発明の効果が得られ得る点が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、試験期間の体重の変化を示すグラフである。
図2図2は、8週間及び12週間摂餌後の精巣周囲脂肪組織重量を示すグラフである。なお、図2において、同一週齢で異符号の群間で有意差がある。例えば、aとbとは異符号であり、それ以外(aとab、bとab等)とは異符号ではない。図3~5、8、及び9に示される有意差の有無を示す記号(a、b、及びab)についても、上記と同様である。
図3図3は、16週間及び20週間摂餌後の肝臓重量を示すグラフである。
図4図4は、8週間摂餌後の血糖値を示すグラフである。
図5図5は、4週間及び8週間摂餌後の総コレステロール値を示すグラフである。
図6図6は、20週間摂餌後の血中インスリン値を示すグラフである。
図7図7は、8週間及び12週間摂餌後の血中レプチン値を示すグラフである。
図8図8は、20週間摂餌後の血中AST値を示すグラフである。
図9図9は、16週間及び20週間摂餌後の血中ALT値を示すグラフである。
図10図10は、8週間摂餌後のMCP1遺伝子の相対発現量を示すグラフである。
図11図11は、12週間摂餌後のF4/80遺伝子の相対発現量を示すグラフである。
図12図12は、12週間摂餌後のTNF-α遺伝子の相対発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ラクトバチルス・プランタラムL-137を含有するメタボリックシンドロームの予防、改善又は治療用組成物を提供する。
【0011】
本発明の組成物は、ラクトバチルス・プランタラムL-137を含有する。ラクトバチルス・プランタラムL-137は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター)に、受託番号FERM BP-08607号(平成7年11月30日に寄託されたFERM P-15317号より移管)として寄託されている。なお、ラクトバチルス・プランタラムL-137の変異株であっても、ラクトバチルス・プランタラムL-137の特徴を備えるものはラクトバチルス・プランタラムL-137の範疇である。
【0012】
本発明の組成物は、ラクトバチルス・プランタラムL-137に加えて、それ以外の成分を含有していてもよい。該成分は、本発明の効果を失しない限り、特に限定されず、例えば、医薬、薬学又は食品等の分野で知られる任意の成分を用いることができる。本発明のひとつの態様において、ラクトバチルス・プランタラムL-137以外の成分は、ラクトバチルス・プランタラムL-137菌体と親和性の高いもの、又はラクトバチルス・プランタラムL-137と結合し得るもの等であることが好ましい。このような成分としては、例えば、脂質、ステロール、植物油、鉱油、レシチン類等が挙げられる。
【0013】
本発明の組成物中、ラクトバチルス・プランタラムL-137の含有量は、本発明の効果が発揮されれば、特に限定されないが、組成物100質量%中、例えば、約0.001質量%~100質量%の範囲であってよい。
【0014】
(ラクトバチルス・プランタラムL-137の取得方法)
ラクトバチルス・プランタラムL-137の培養は、公知方法、自体公知の方法又はそれらに準じる方法に従って行われてよい。ラクトバチルス・プランタラムL-137は、例えば、天然培地、合成培地、又は半合成培地等の培地に培養することにより得ることができる。培地としては、窒素源及び/又は炭素源を含有するものが好ましく用いられる。前記窒素源としては、例えば、肉エキス、ペプトン、グルテン、カゼイン、酵母エキス、アミノ酸等が挙げられる。前記炭素源としては、例えば、グルコース、キシロース、フラクトース、イノシトール、マルトース、水アメ、麹汁、澱粉、バカス、フスマ、糖蜜、グリセリン等が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
前記培地には、前記窒素源及び/又は炭素源に加えて、さらに、無機質として、例えば硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、鉄、マンガン、モリブデン、又は各種ビタミン類等を1種で、又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0016】
本発明のひとつの態様において、前記ラクトバチルス・プランタラムL-137の培養温度は、例えば、通常約25~40℃程度、好ましくは約27~35℃程度である。
本発明のひとつの態様において、前記ラクトバチルス・プランタラムL-137の培養時間は約12~48時間程度であり、通気振盪してもよい。また、本発明のひとつの態様において、ラクトバチルス・プランタラムL-137の培養は、通気振盪により実施してもよい。また、培地のpHは、特に限定されないが、通常約pH3~6、好ましくは約pH4~6である。
【0017】
ラクトバチルス・プランタラムL-137の菌体は、生菌体であってもよく、死菌体であってもよいが、安定性及び取扱いの容易性等の観点から、死菌体を用いることが好ましい。
培養終了後、菌体を採取した後、加熱死菌体を調製してもよいし、または菌体を培養液から一旦分離することなく、培養液中の菌体を加熱死菌体にし、その加熱死菌体を採取してもよい。菌体を採取する方法としては、例えば培養液に蒸留水を加え、遠心分離などの手段により上清を除き、必要によりその操作を繰り返し、遠心分離や濾過などにより菌体を採取する方法がある。
【0018】
ラクトバチルス・プランタラムL-137の加熱死菌体は、採取された生菌あるいは生菌を含んだ培養液ごと、加熱処理により不活性化させ、噴霧乾燥、凍結乾燥などの適当な手段によって乾燥することにより得られる。加熱温度は通常約60~100℃、好ましくは約70~90℃である。加熱手段としては、ヒーターを用いる公知の手段であってよい。加熱時間は所望の温度に達した後、通常約5~40分、好ましくは約10~30分である。
【0019】
上記の様にして得られた前記死菌体は、さらに摩砕、破砕又は凍結乾燥処理等を行い、死菌体処理物としてもよい。本発明においては、前記死菌体処理物も死菌体として好適に用いることができる。
【0020】
また、本発明には、ラクトバチルス・プランタラムL-137菌体に替えて又は菌体と共に、ラクトバチルス・プランタラムL-137菌体の抽出物を用いてもよい。前記抽出物の抽出方法は特に限定されず、公知方法、自体公知方法又はそれらに準ずる方法に従って行ってもよい。具体的には、例えば、ラクトバチルス・プランタラムL-137の生菌体又は死菌体を、(i)常圧又は加圧下で、室温又は加温した抽出溶媒中に加えて浸漬や撹拌しながら抽出する方法、(ii)抽出溶媒中で還流しながら抽出する方法等が挙げられる。抽出温度、抽出時間は、使用する抽出溶媒の種類は抽出条件によって適宜選択してよい。
【0021】
前記抽出溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、有機溶媒又はこれらの任意の割合での混合溶媒を用いてもよい。前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びn-ブタノール等)、多価アルコール(例えば、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)等の室温で液体であるアルコール類;エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、プロピルエーテル等);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等);ケトン類(例えば、アセトン、エチルメチルケトン等);炭化水素類(例えば、ヘキサン、キシレン、トルエン等);クロロホルム等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記有機溶媒の中でも、操作性や環境に対する影響等の観点から、室温で液体であるアルコール類、例えば、炭素原子数1~4の低級アルコールを用いるのが好ましく、残留溶媒による安全性の観点からはエタノールを用いるのがより好ましい。
【0022】
本発明においては、前記抽出操作により得た抽出液及び残渣を含む混合物を所望により濾過又は遠心分離等に供し、残渣である固形成分を除去して得た抽出液をそのまま本発明の組成物の調製に用いてもよいし、前記抽出液を濃縮、凍結乾燥又はスプレードライ等の方法により、乾燥、粉末化して使用してもよい。
ラクトバチルス・プランタラムL-137菌体の大きさは約1~10μm程度であってもよい。
【0023】
(使用方法)
本発明の組成物の投与経路は、特に限定されず、例えば、経口又は非経口のいずれかの経路で哺乳動物に投与してもよい。
ラクトバチルス・プランタラムL-137の摂取量は、経口又は注射投与の場合は、摂取者の年齢及び体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、成人1人(約60kg)1日当たり、ラクトバチルス・プランタラムL-137を乾燥死菌体として、好ましくは約0.5~200mg、より好ましくは約1~100mg、更に好ましくは約2~50mg摂取されるように設定するのが好ましい。または、成人1人(約60kg)1日当たり、ラクトバチルス・プランタラムL-137を生菌換算で、好ましくは約(5×10)~(2×1011)cfu(Colony forming unit;コロニー形成単位)、より好ましくは約(1×10)~(1×1011)cfu摂取されるように設定するのが好ましい。摂取回数は、1日1回又は複数回に分けて行うことができる。
または外用塗布の場合は、適用する皮膚面積に応じて、ラクトバチルス・プランタラムL-137の塗布量を適宜選択することができるが、通常、当該塗布量は、適用部位の面積約10cmに対して、1日につき、好ましくは約0.01~2.5mg、より好ましくは約0.02~1mgである。前記の投与用量を、1日あたり、1回又は数回に分けて投与ないし適用するとよい。
少ないラクトバチルス・プランタラムL-137の投与量で本発明の効果が得られ得る点でも本発明は優れている。
【0024】
本発明の組成物を経口投与する場合は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤であってもよく、シロップ剤等の液剤であってもよい。これらの製剤を製造する場合には、その製剤形態に応じた担体もしくは添加剤を使用することができる。担体もしくは添加剤としては、例えば、賦形剤(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロース、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸、リン酸カリウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、精製タルク、ポリエチレングリコール等)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム液、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、溶解補助剤(アラビアゴム、ポリソルベート80等)、吸収促進剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等)、保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、増粘剤(プロピレングリコール、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)又はpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等)を挙げることができる。必要に応じて、コーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0025】
本発明の組成物は、特に限定されないが、例えば、飲食品、飼料、食品添加剤、飼料添加剤、医薬品、又は化粧品等であってよく、好ましくは、飲食品等である。
【0026】
本発明の組成物を含有する飲食品は、一般的に飲食品に用いられる食品添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。なお、飲食品には、機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品、病者用食品が含まれる。
【0027】
本発明に好適な飲食品は特に限定されない。具体的には、例えば、いわゆる栄養補助食品(サプリメント)としての錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤等を挙げることができる。これ以外には、例えば茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子及びパン類、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の冷菓等を挙げることができる。
【0028】
本発明の組成物を飲食品の形態に調製した場合、当該飲食品、添付説明書又は包装箱等には、本発明の組成物の作用に鑑みて、(1)メタボリックシンドロームを予防又は改善する旨、(2)肥満を抑制する旨、(3)糖又は脂質代謝異常を改善する旨、(4)炎症を抑制する旨、より好ましくは全身又は脂肪組織の炎症を抑制する旨、(5)例えば高脂肪食摂取等による体重増加を抑制する旨、(6)脂肪組織重量の増加を抑制する旨、(7)肝臓等の臓器の重量の増加を抑制する旨、(8)血中のコレステロール値の上昇を抑制する旨、(9)血中のインスリン値の上昇を抑制する旨、(10)血中のレプチン値の上昇を抑制する旨、(11)血中のAST値の上昇を抑制する旨、(12)血中のALT値の上昇を抑制する旨、(13)脂肪組織の炎症関連遺伝子(例えば、MCP-1(Monocyte chemotactic protein 1)、F4/80(Anti-EGF-Like Module-Containing Mucin-Like Receptor 1)、TNF-α(tumor necrosis factor‐alpha)等)の発現上昇を抑制する旨、(14)脂質代謝を改善する旨、(15)基礎代謝を促進する旨、(16)体重を減少させる旨、(17)肥満の人、又は肥満気味の人の体脂肪を減らす旨、(18)内臓脂肪又は皮下脂肪を減少させる旨、(19)ダイエット効果を有する旨、(20)肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる旨、(21)肥満気味の人の体重やお腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)やウエスト周囲径(ウエストサイズ)を減らすことを助ける旨、及び(22)体脂肪、お腹周り(ウエストサイズ)、体重、BMI、お腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)が気になる人に適している旨から選択される1以上を表示することができる。
【0029】
なお、高脂肪食とは、例えば脂質エネルギー比率が30%以上(好ましくは30~60%)である食品組成物、又は食品組成物100g当たりの含有脂肪量が10g以上(好ましくは20~100g、より好ましくは30g~100g、より好ましくは40~100g、より好ましくは50~100g、より好ましくは60~100g)の食品組成物のことをいう。
脂質エネルギー比率は、次の式で求めることができる。
脂質エネルギー比率(%)={脂質量(グラム)×9キロカロリー/総エネルギー(キロカロリー)}×100
高脂肪食として、例えば、牛ばら肉、牛肉(サーロイン)、豚ばら肉、ベーコン、サラミ、ウインナー、フォアグラ、フランクフルト等の肉類;あんこうのきも、まぐろのトロ、いわし(油漬)、さんま、ツナ、うなぎのかば焼、はまちの刺身、ぶり、ぎんだら、すじこ、いくら等の魚介類;クロワッサン、デニッシュパン、カップ麺等の穀類;卵黄、生クリーム、クリームチーズ、プロセスチーズ、バター、アイスクリーム等の卵・乳製品;油揚げ、きな粉等の豆類;マカダミアナッツ、松の実、くるみ、ごま、アーモンド、落花生、カシューナッツ等のナッツ類;アボガド、フライドポテト等の野菜・芋類;ココナッツミルク等の飲料;ポテトチップス、チョコレート、ビスケット、ポップコーン等の菓子類;若しくはマヨネーズ、フレンチドレッシング、オリーブオイル、ラー油、ピーナッツバター等の調味料;又はこれらを原料とする食品等が挙げられる。
【0030】
本発明の組成物を含有する飼料としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ等の家畜用飼料、ニワトリ等の家禽用飼料、イヌ、ネコ等のペット用飼料などが挙げられる。本発明の飼料は、飼料中に本発明の組成物を添加する以外、一般的な飼料の製造方法を用いて加工製造することができる。
【0031】
また、本発明の組成物は医薬品に配合して使用することもできる。医薬品はラクトバチルス・プランタラムL-137と公知の医薬品添加剤等を配合して製造され得る。
【0032】
また、本発明の組成物は化粧品に配合して使用することもできる。化粧品としては、例えば、ボディ洗浄料、ハンド洗浄料、洗顔料等の洗浄料類や化粧水、乳液、クリーム等の基礎化粧料、ファンデーション、アンダーメークアップ、白粉等のメークアップ料等の化粧料剤形等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物は、好ましくは、(1)メタボリックシンドロームを予防又は改善する効果、(2)肥満を抑制する効果、(3)糖又は脂質代謝異常を改善する効果、(4)炎症を抑制する効果、より好ましくは全身又は脂肪組織の炎症を抑制する効果、(5)例えば高脂肪食摂取等による体重増加を抑制する効果、(6)脂肪組織重量の増加を抑制する効果、(7)肝臓等の臓器の重量の増加を抑制する効果、(8)血中のコレステロール値の上昇を抑制する効果、(9)血中のインスリン値の上昇を抑制する効果、(10)血中のレプチン値の上昇を抑制する効果、(11)血中のAST値の上昇を抑制する効果、(12)血中のALT値の上昇を抑制する効果、(13)脂肪組織の炎症関連遺伝子(例えば、MCP-1、F4/80、TNF-α等)の発現上昇を抑制する効果、(14)脂質代謝を改善する効果、(15)基礎代謝を促進する効果、(16)体重を減少させる効果、(17)肥満の人、又は肥満気味の人の体脂肪を減らす効果、(18)内臓脂肪又は皮下脂肪を減少させる効果、(19)ダイエット効果を有する効果、(20)肥満の予防、治療もしくは症状の改善に用いることができる効果、及び(21)肥満気味の人の体重やお腹の脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)やウエスト周囲径(ウエストサイズ)を減らすことを助ける効果から選択される1以上の効果を奏することができる。
【0034】
肥満抑制効果とは、例えば高脂肪食摂取等による体重、脂肪組織重量、及び/又は肝臓等の臓器の重量の増加を抑制すること等をいう。高脂肪食摂取等による肝臓等の重量の増加は脂肪肝を伴うため、増加を抑制することにより脂肪肝の改善も期待できる。
糖代謝異常改善効果とは、例えば血糖値やインスリン値の上昇を抑制すること等をいう。
脂質代謝異常改善効果とは、例えば血中のコレステロール値やレプチン値の上昇を抑制すること等をいう。
炎症抑制効果とは、例えば血中のAST値、若しくは/及びALT値の上昇、又は/並びに脂肪組織の炎症関連遺伝子(MCP1、F4/80、又はTNF-α等)の発現上昇を抑制すること等をいう。炎症抑制効果は、全身の炎症に対するものであってもよく、脂肪組織の炎症に対するものであってもよい。
【実施例
【0035】
以下に実施例及び試験例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(実験方法)
C57BL/6Jマウス(雄性、6週齢)を日本チャールズリバー株式会社から購入し、7日間CE-2で馴化させた。その後、平均体重がほぼ同一になるように1群25匹ずつ群分けし、試験食として、通常食(AIN-93G;表1参照)、60%高脂肪食(cal%;カロリー%)(表2参照)とそれにラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus prantarum)L-137加熱死菌体(HK L-137)を0.002質量%含有させたHK L-137含有60%高脂肪食(cal%)(表2参照)を20週間摂取させた。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
試験中は、明暗サイクルは12時間、室温23±3℃の環境下で、個体別にケージに収容し、自由飲水、自由摂取で飼育し、毎週体重の測定を行った。
【0040】
摂取4週間ごとに各群を代表する5匹(平均体重、標準偏差SDが全体とほぼ同じ)をそれぞれの群から選出した。それらのマウスを、非絶食下でエーテル麻酔してから、ヘパリン処理したシリンジを用いて大静脈から採血し、また、精巣周囲脂肪組織、肝臓の採取をして重量測定を行った。
【0041】
採取した血液は、遠心分離(2000×gで20分)して、血漿にし、血糖値、血中総コレステロール値、血中AST値、血中ALT値、血中インスリン値、血中レプチン値を市販のキット(グルコースCII-テストワコー、コレステロールE-テストワコー、トランスアミラーゼCII-テストワコー:和光純薬、マウスインスリン測定キット、マウス/ラットレプチン測定キット:モリナガ)を用いて測定した。
【0042】
精巣周囲脂肪組織を、RNAlater(Thermo Fisher Scientific)に浸漬して-80℃で保存し、解凍後、RNA抽出(Rneasy Lipid Tissue Mini Kit、QIAGEN)を行った。抽出したRNAは、以下の酵素と機器(One Step SYBR PrimeScript RT-PCR Kit II:Takara、Thermal Cycler Dice TP800:Takara)を用いて、炎症関連遺伝子(Monocyte chemotactic protein 1(MCP1)、Anti-EGF-Like Module-Containing Mucin-Like Receptor 1(F4/80)、tumor necrosis factor‐alpha(TNF alpha))と、内部標準遺伝子(beta-actin)を測定し(プライマーについて表3参照)、内部標準遺伝子で補正した炎症遺伝子発現量を算出した。
【0043】
【表3】
【0044】
(実験結果)
1.肥満抑制効果
試験期間の体重の変化を表4及び図1に、8週間及び12週間摂餌後の精巣周囲脂肪組織重量を表5及び図2に、16週間及び20週間摂餌後の肝臓重量を表6及び図3にそれぞれ示した。
これらの結果から、ラクトバチルス・プランタラムL-137は、高脂肪食摂取による体重増加、脂肪組織重量増加、及び肝臓重量増加を抑制することが確認された。
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
2.糖・脂質代謝異常改善効果
8週間摂餌後の血糖値を表7及び図4に、4週間及び8週間摂餌後の総コレステロール値を表8及び図5に、20週間摂餌後の血中インスリン値を表9及び図6に、8週間及び12週間摂餌後の血中レプチン値を表10及び図7にそれぞれ示した。
これらの結果から、ラクトバチルス・プランタラムL-137は、高脂肪食摂取による血糖値上昇、血中総コレステロール値上昇、血中インスリン値上昇を有意に抑制することが確認された。また、ラクトバチルス・プランタラムL-137は、高脂肪食摂取によるレプチン値上昇を抑制する傾向があることが確認された。
【0049】
【表7】
【0050】
【表8】
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
3.炎症抑制効果
20週間摂餌後の血中AST値を表11及び図8に、16週間及び20週間摂餌後の血中ALT値を表12及び図9に、8週間摂餌後のMCP1遺伝子の相対発現量を表13及び図10に、12週間摂餌後のF4/80遺伝子の相対発現量を表13及び図11に、12週間摂餌後のTNF-α遺伝子の相対発現量を表13及び図12にそれぞれ示した。
これらの結果から、ラクトバチルス・プランタラムL-137は、高脂肪食摂取による血中AST値上昇、血中ALT値上昇、脂肪組織炎症関連遺伝子発現の増加を抑制することが確認された。
【0054】
【表11】
【0055】
【表12】
【0056】
【表13】
【0057】
これらの結果からラクトバチルス・プランタラムL-137が、メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療に有用であることが示された。
【0058】
本発明の組成物は、ダイエット、肥満の予防又は改善、更には糖尿病、高中性脂肪血症、高コレステロール血症又は動脈硬化症等の原因となるメタボリックシンドロームの予防、改善又は治療を目的とした飲食品、医薬品、飼料等として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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