(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】精子運動性能評価システム及び精子運動性能評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20241008BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241008BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N21/17 A
A61B5/00 N
(21)【出願番号】P 2020143542
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】512197375
【氏名又は名称】リプロバイオ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520328693
【氏名又は名称】合同会社科学コミュニケーション研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】堀永 賢一朗
(72)【発明者】
【氏名】白根 純人
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0130443(KR,A)
【文献】特開2017-161301(JP,A)
【文献】特開2017-090917(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138279(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/052957(WO,A1)
【文献】特開2018-031798(JP,A)
【文献】特表2017-506324(JP,A)
【文献】特表2010-525363(JP,A)
【文献】特表2017-532576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
G01N 21/00 -21/61
A61B 5/00 - 5/01
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精子の運動状態の拡大像を生成する顕微鏡ユニット、及び、前記拡大像を撮像するカメラを有する通信端末を備えるユーザ装置と、
ネットワークを介して前記ユーザ装置と接続され、前記ユーザ装置から送信される撮像画像を受信し、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、前記撮像画像について精子の運動性能を判定した評価結果を前記ユーザ装置に送信する外部サーバとを備え
、
前記顕微鏡ユニットは、光源と、光源を保持する保持部材と、前記光源からの光を集光するレンズを有する顕微鏡本体とを含み、
前記ユーザ装置において、前記光源と、前記レンズと、前記カメラとが、光軸が略一致するように配置され、
前記通信端末がスマートデバイスである、精子運動性能評価システム。
【請求項2】
ユーザが、顕微鏡ユニットにより精子の運動状態の拡大像を生成し、前記拡大像を、カメラを有する通信端末により撮像して撮像画像を取得する工程と、
前記ユーザが、前記撮像画像を、ネットワークを介して前記通信端末から外部サーバへ送信する工程と、
前記外部サーバにおいて、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、前記撮像画像について精子の運動性能を判定した評価結果を前記ユーザの前記通信端末に送信する工程とを含
み、
前記顕微鏡ユニットは、光源と、光源を保持する保持部材と、前記光源からの光を集光するレンズを有する顕微鏡本体とを含み、前記光源と、前記レンズと、前記カメラとが、光軸が略一致するように配置され、
前記通信端末がスマートデバイスである、精子運動性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精子運動性能の評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不妊は、男性側、女性側又は双方の側に原因があるとされている。
例えば、男性側に原因がある男性不妊症の発生頻度は、一般的に30~50%といわれている。男性不妊症は、その大半が、精子減少症、精子無力症、無精子症等の精子及び/又は精液の異常に関連する。
【0003】
精子の低運動性は、一般的に不妊症の一因となることが知られている。精子の運動性能の評価は、精液中の精子を顕微鏡で拡大像を生成し観察することにより行われている。このような精子の運動性能の映像的評価は、採精後1時間以内に行う必要があるため、医療機関等の採精室で検体を採取し、即座に検査することが求められている。そして、精子の運動性能の映像的評価は、精子検査専門の臨床検査技師等の熟練者により行われている。
従って、自身の精子の運動性能を確認するためには、通常、医療機関等で検査を受ける必要がある。また、精子の運動状態は、生活習慣や体調等で変化するため、継続的な検査を行うことが望ましいとされている。
【0004】
近年、自宅等で簡易に精子の状態をセルフチェックすることができる顕微鏡キットが提案されている(非特許文献1及び2)。
例えば非特許文献1及び2には、スマートフォンのカメラに専用の顕微鏡キットを取り付けて、採精した精液中の精子を観察する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】TENGA メンズルーペ,[online],株式会社TENGAヘルスケア,[令和2年6月26日検索],インターネット<URL:https://tengahealthcare.com/products/mensloupe/>
【文献】seem,[online],株式会社リクルート,[令和2年6月26日検索],インターネット<URL:https://seem.life/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び2に記載の顕微鏡キットでは、光源を確保することが難しいため、観察視野の光量を十分に確保することができず、精子の状態を確実に観察できない場合がある。
【0007】
また、非特許文献1に記載の顕微鏡キットでは、光源を調整し、精子の状態を観察することができたとしても、精子の運動状態又は運動性能の評価を行う機能を有していないため、自身の精子の運動状態又は運動性能の専門的な評価を得ることはできない。
【0008】
さらに、通常、精液中の精子は均一に分散されておらず、観察視野によって、精子の数及び運動状態が大きく異なるため、精子の観察には視野の自由度は必須とされるが、非特許文献2に記載の顕微鏡キットでは、観察視野の変更ができないことに加え、再利用もできないので、検査の精度及び信頼性に欠ける。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みて、実際の精子の運動状態を反映した精子運動性能の評価結果を医療機関等で受診することなく得ることのできる精子運動性能評価システム及び評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、精子の運動性能について専門的な評価結果が得られるシステムについて鋭意検討した結果、精子の運動状態の拡大像を生成することのできる顕微鏡ユニットを備えると共に、精子運動性能の評価が、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて行われることにより、実際の精子の運動状態を反映した精子運動性能の評価結果を医療機関等で受診することなく得ることができることを見出した。本発明は、本発明者らによって初めて見出された知見及び成功例に基づいて完成されたものである。
【0011】
従って、本発明によれば、以下の態様の精子運動性能評価システム及び精子運動性能評価方法が提供される。
〔1〕精子の運動状態の拡大像を生成する顕微鏡ユニット、及び、前記拡大像を撮像するカメラを有する通信端末を備えるユーザ装置と、
ネットワークを介して前記ユーザ装置と接続され、前記ユーザ装置から送信される撮像画像を受信し、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、前記撮像画像について精子の運動性能を判定した評価結果を前記ユーザ装置に送信する外部サーバとを備える、精子運動性能評価システム。
〔2〕前記顕微鏡ユニットは、光源と、光源を保持する保持部材と、前記光源からの光を集光するレンズを有する顕微鏡本体とを含む、〔1〕に記載の精子運動性能評価システム。
〔3〕前記ユーザ装置において、前記光源と、前記レンズと、前記カメラとが、光軸が略一致するように配置される、〔2〕に記載の精子運動性能評価システム。
〔4〕前記通信端末がスマートデバイスである、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の精子運動性能評価システム。
〔5〕ユーザが、顕微鏡ユニットにより精子の運動状態の拡大像を生成し、前記拡大像を、カメラを有する通信端末により撮像して撮像画像を取得する工程と、
前記ユーザが、前記撮像画像を、ネットワークを介して前記通信端末から外部サーバへ送信する工程と、
前記外部サーバにおいて、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、前記撮像画像について精子の運動性能を判定した評価結果を前記ユーザの前記通信端末に送信する工程とを含む、精子運動性能評価方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実際の精子の運動状態を反映した精子運動性能の評価結果を医療機関等で受診することなく得ることができる。
また、本発明によれば、顕微鏡ユニットが、光源と、光源を保持する保持部材と、光源からの光を集光するレンズとを備える構成により、観察視野の光量が十分に確保され、精子の運動状態の撮像画像が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一態様の精子運動性能評価システムを示す概略ブロック図である。
【
図2】
図1に示すユーザ装置を構成する顕微鏡ユニットを各構成要素に解体した状態を示す概略平面図である。
【
図3】
図1に示すユーザ装置を模式的に示す概略側面図である。
【
図4】
図1に示すユーザ装置の顕微鏡本体の一部(台座)を示す概略側面図である。
【
図5】本発明の一態様の精子運動性能評価システムのユーザ装置における処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一態様の精子運動性能評価システムの外部サーバにおける処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様である組成物について詳細に説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0015】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている推測及び理論は、本発明者らのこれまでの知見及び経験によってなされたものであることから、本発明はこのような推測及び理論のみによって拘泥されるものではない。
【0016】
〔精子運動性能評価システム〕
本発明の一態様の精子運動性能評価システムは、精子の運動状態の拡大像を生成する顕微鏡ユニット、及び、拡大像を撮像するカメラを有する通信端末を備えるユーザ装置と、ネットワークを介してユーザ装置と接続され、ユーザ装置から送信される撮像画像を受信し、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、撮像画像について精子の運動性能を判定した評価結果をユーザ装置に送信する外部サーバとを備えるものである。
【0017】
以下、本発明の一態様の精子運動性能評価システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一態様の精子運動性能評価システムを示す概略ブロック図である。
精子運動性能評価システム100は、ユーザ装置Aと、外部サーバBとが、ネットワークCを介して相互に通信可能に接続されて構成される。
ネットワークCは、特に限定されず、例えばインターネット、移動体通信網、ローカルエリアネットワーク等が挙げられ、これら複数種類のネットワークが組み合わされたネットワークであってもよい。
【0018】
〔ユーザ装置〕
ユーザ装置Aは、例えば
図2及び
図3に示すように、精子の運動状態の拡大像を生成する顕微鏡ユニット10と、顕微鏡ユニット10により生成される拡大像を撮像するカメラ30を有する通信端末20とを有する。
ユーザ装置Aにおいて、顕微鏡ユニット10は、通信端末20に内蔵されるカメラ30に取り付けて使用する。
【0019】
〔顕微鏡ユニット〕
顕微鏡ユニットは、精子の運動状態の拡大像を生成することができるものであれば、特に限定されない。顕微鏡ユニットには、観察視野の光量を十分に確保するため、光源が具備されていることが好ましいが、室内灯等を利用することもできる。
具体的には、顕微鏡ユニット10は、例えば
図2に示すような簡易な組み立て式のものとすることができる。顕微鏡ユニット10が組み立て式のものであることにより、コンパクトに収納することができると共に、可搬性に優れる。
【0020】
顕微鏡ユニット10は、
図2及び
図3に示すように、光源素子11aを備える光源デバイス11と、光源デバイス11を保持する保持部材12と、光源素子11aからの光を集光するレンズ14aを有する顕微鏡本体18と、スライドガラス15とを備える。
顕微鏡ユニット10が、光源デバイス11と、光源デバイスを保持する保持部材12と、光源素子11aからの光を集光するレンズ14aとを備える構成により、複雑な光源調整の必要がなく、観察視野の光量が十分に確保され、精子の運動状態の撮像画像が確実に得られる。
【0021】
光源デバイス11は、先端部に例えばLED等の光源素子11aが配置される。光源素子11aがLEDである場合においては、例えば白色LEDが好ましい。
【0022】
保持部材12は、例えば全体がコの字形状のものである。保持部材12は、互いに対向して設けられる一対の側板12a,12bと、側板12aと側板12bとの間に側板12,12bに対して垂直方向に取り付けられる天板12cとを備える。一対の側板12a,12bの底面には、それぞれ、突起状の係合部17a,17bが設けられている。
天板12cの中心には、厚さ方向に貫通する貫通孔12hが設けられている。この貫通孔12hには、光源デバイス11の先端部に設けられた光源素子11aが嵌合されるため、貫通孔12hの大きさは、光源素子11aの直径と同等とされる。
【0023】
保持部材12を構成する材料は、特に限定されないが、例えばガラス又はシリコン等の無機材料、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0024】
顕微鏡本体18は、例えば、楕円板状の台座14と、当該台座14の上面に配置される円環板状のステージ13とから構成される。
【0025】
ステージ13の外周縁部には、厚さ方向に貫通する一対の貫通孔13a,13bが設けられている。貫通孔13a,13bには、それぞれ、保持部材12の側板12a,12bの底面に設けられた係合部17a,17bが嵌合されるため、貫通孔13a,13bの大きさは、それぞれ、係合部17a,17bの直径と同等とされる。また、ステージ13の中心には、厚さ方向に貫通する貫通孔13cが設けられている。貫通孔13cは、ステージ13の下面に配置される台座14に設けられるレンズ14aを露出すると共にレンズ14aを保持固定する凸部14cと螺合されるため、貫通孔13cの大きさは、凸部14cと略同等とされる。また、貫通孔13cの内側面には、螺旋状溝(図示せず)が形成されている。
【0026】
台座14は、例えば
図4に示すように、楕円板状の基板14dの一方側の上面に円柱状の凸部14bが形成されている。凸部14bの外側面には、ステージ13の貫通孔13cの内側面に形成された螺旋状溝と螺合可能な螺旋状溝14cが形成されている。凸部14bの上面の中心には、開口が形成され当該開口にレンズ14aが嵌合され保持固定されている。
台座14においては、基板14dの下面(凸部14bが配置されている面とは逆の面)に、通信端末20と固定するための両面テープ(図示せず)が設けられている。
【0027】
レンズ14aは、精子の運動状態精子の拡大像を生成することができるものであれば、種類や材質については特に限定されないが、観察視野の光量を十分に確保する観点から集光用の単焦点レンズを用いることができ、例えばボールレンズ等を用いることができる。ボールレンズを用いる場合、レンズの大きさは、例えば1mm~10mmとされる。
【0028】
顕微鏡本体18においては、台座14の凸部14bとステージ13の貫通孔13cとが螺合されるが、ステージ13の回転方向に応じて昇降(上下移動)する構成となる。従って、顕微鏡本体18においては、ステージ13を回転させることにより、台座14のレンズ14aの焦点距離を調整することができる。
【0029】
ステージ13を構成する材料は、特に限定されないが、例えばガラス又はシリコン等の無機材料、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂等の有機材料が挙げられる。
また、台座14を構成する材料は、特に限定されないが、例えばガラス又はシリコン等の無機材料、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0030】
スライドガラス15は、例えば平板の矩形状のものである。スライドガラス15の表面には、検体(精液)が塗布されるが、検体の乾燥防止のため、カバーガラス16が設けられることが好ましい。
【0031】
〔検体〕
顕微鏡ユニット10のスライドガラス15表面に塗布される検体(精液)は、採精後1時間以内のものが好ましい。また、スライドガラス15表面に塗布する検体量及び塗布厚は、精子の運動状態精子の拡大像を生成することができれば特に限定されない。
【0032】
この例の顕微鏡ユニット10の組み立て方法としては、例えば、台座14の凸部14aとステージ13の貫通孔13cとを螺合して顕微鏡本体18を構成し、光源デバイス11の光源素子11aを保持部材12における天板12cの貫通孔12hに嵌合すると共に、保持部材12における側板12a,12bの底面に設けられた係合部17a,17bを顕微鏡本体18のステージ13の貫通孔13a,13bにそれぞれ嵌合することにより、行われる。このようにして組み立てられることにより、光源素子11aと、レンズ14aとが光軸が一致するように配置されると共に、光源デバイス11、保持部材12及び顕微鏡本体18は一体化されて保持固定される。そして、精子の拡大像を生成する際に、顕微鏡本体18のレンズ14a上にスライドガラス15を配置する。
組み立てられた顕微鏡ユニット10の具体的な寸法としては、例えば、光源素子11aからスライドガラス15(表面)までの距離(d1)が例えば1cm~5cm、スライドガラス15(表面)からレンズ14aまでの距離(d2)が例えば0.1mm~0.5mmとされる。
【0033】
上記のように組み立てられた顕微鏡ユニット10は、通信端末20のカメラ30に取り付けられてユーザ装置Aとして構成される。顕微鏡ユニット10を通信端末20のカメラ30に取り付ける方法としては、特に限定されないが、例えば、顕微鏡本体18のレンズ14aが通信端末20のカメラ30の光軸上に位置するように配置し、顕微鏡本体18の裏面(基板14dの下面)に設けられる例えば両面テープ等で固定する方法等が挙げられる。
ユーザ装置Aにおいては、光源素子11aと、顕微鏡本体18のレンズ14aと、通信端末20のカメラ30とが光軸が略一致するように配置されている。このような構成により、光源素子11aからの光が確実にレンズ14に集光され、スライドガラス15表面に塗布された検体に対して集光光が照射されるので、観察視野の光量が十分に確保され、精子の運動状態の撮像画像がより一層確実に得られる。また、顕微鏡ユニット10において、レンズ14a上のスライドガラス15を動かすことにより、観察視野の自由度が得られる。さらに、スライドガラス15は洗浄することにより、再利用可能であるので、検査の精度及び信頼性が向上すると共に、継続的な検査が可能となる。
【0034】
〔通信端末〕
通信端末20は、顕微鏡ユニット10により生成される拡大像を撮像するカメラ30を有する。通信端末20としては、外部サーバBとネットワークCを介して撮像画像の送信及び評価結果の受信をすることができれば特に限定されないが、例えば、スマートフォン、タブレット等のスマートデバイスが利便性の観点から好ましい。
【0035】
〔外部サーバ〕
外部サーバBは、ユーザ装置Aから送信される撮像画像を受信し、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、精子の運動性能を判定した評価結果をユーザ装置Aに送信する。
外部サーバBは、例えば、CPU部、メモリ部、ストレージ部、送受信部、及び入出力部を主要構成として備え、これらが互いにバスを介して電気的に接続されて構成される。外部サーバBは、例えばクラウドサーバ等であってもよい。外部サーバBのストレージ部には、予め精子の運動状態に関するデータが収集・構築されている。
【0036】
予め収集された精子の運動状態に関するデータについては、具体的には以下のようなデータを用いることができる。
例えば、医療機関での精子検査で用いる検体と同じ検体をユーザ装置Aと同様の装置を用いて精子の運動状態の撮像画像を取得する。そして、医療機関での精子検査で実際に測定した運動率を例えば5段階のカテゴリー(カテゴリー1:81%以上、カテゴリー2:61~80%、カテゴリー3:41~60%、カテゴリー4:21~40%、カテゴリー5:20%以下)に分類し、当該分類されたカテゴリーと、ユーザ装置Aにおける撮像画像とを紐づけたデータとする。このようにして得られるデータを数百名収集したものを、予め収集された精子の運動状態に関するデータとすることができる。
【0037】
ユーザ装置Aから送信される撮像画像について、精子の運動性能を判定する方法としては、上記のようにして収集したデータに基づいて、トレーニングを受けた検査技師がユーザ装置Aから送信された撮像画像についてカテゴリー1~5のいずれのカテゴリーに属するか判定を行う方法が挙げられる。また、ユーザ装置Aから送信される撮像画像について、精子の運動性能を判定する方法としては、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による学習を行った結果に基づくものであってもよい。
以上のような判定方法によれば、医師や精子検査専門の臨床検査技師による診断を受けることなく、精子の運動性能について専門的な評価結果を得ることができる。
【0038】
図5は、ユーザ装置Aにおける処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、例えばスマートフォン等のスマートデバイスにインストールされるアプリケーションソフトによって実行することもできる。
ユーザ装置Aにおいて、まず、通信端末20のカメラ(インカメラ)30を起動する(ステップS11)。このステップにおいて、通信端末20のカメラ30のオートフォーカス機能は作動させてもよいし、作動させなくてもよい。
次に、予め組み立てられた顕微鏡ユニット10をカメラ30に取り付けて固定し、検体が塗布されたスライドガラス15をレンズ14a上に配置されるように調整する。また、顕微鏡本体18のステージ13を回転させて、通信端末20の液晶画面を見ながらピントを調整して精子の拡大像を生成する(ステップS12)。ここで、精子の拡大像が適切に得られない場合は、スライドガラス15を移動させて観察視野を調整する。また、スライドガラス15に塗布された検体を洗浄し、再塗布してもよい。
次に、精子の拡大像が得られれば、カメラ30で精子の動画を例えば10秒間程度撮像し、撮像画像を取得する(ステップS13)。
そして、取得した撮像画像を通信端末20から外部サーバBへ送信し(ステップS14)、完了する。
【0039】
図6は、外部サーバBにおける処理の流れを示すフローチャートである。
まず、外部サーバBにおいて、ユーザ装置Aから送信される撮像画像を受信する(ステップS21)。
次に、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、撮像画像について精子の運動性能を判定する(ステップS22)。
そして、評価結果をユーザ装置Aに送信(ステップS23)し、完了する。
【0040】
以上のように、本発明の一態様の評価システムによれば、ユーザ装置A側で精子運動状態の測定を行って、その測定結果をサーバBに送り、サーバB側でデータに基づいて判定される評価結果をユーザ装置Aに提供することが可能となり、専門的な精子の運動性能を簡易に確認することができる。
【0041】
〔評価方法〕
本発明の一態様の精子運動性能評価方法は、ユーザが、顕微鏡ユニットにより精子の運動状態の拡大像を生成し、拡大像を、カメラを有する通信端末により撮像して撮像画像を取得する工程と、ユーザが、撮像画像を、ネットワークを介して通信端末から外部サーバへ送信する工程と、外部サーバにおいて、予め収集された精子の運動状態に関するデータに基づいて、撮像画像について精子の運動性能を判定した評価結果をユーザの通信端末に送信する工程とを含む方法である。
撮像画像を取得する工程において、顕微鏡ユニットにより精子の運動状態の拡大像を生成する方法は、特に限定されないが、例えば、顕微鏡ユニットが、光源と、光源を保持する保持部材と、光源からの光を集光するレンズを有するものである構成とすることができる。このような構成により、複雑な光源調整が必要なく、観察視野の光量が十分に確保され、精子の運動状態の撮像画像が確実に得られる。また、撮像画像を取得する工程において、カメラを有する通信端末は、スマートフォン、タブレット等のスマートデバイスであることが、利便性の観点から好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の精子運動性能評価システムは、自宅等で簡易に、かつ、継続的に専門的な精子の運動性能を確認することができるので、医療機関等での受診に先立って自身の精子の運動機能が正常か否かを事前確認することに極めて有効的に活用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 顕微鏡ユニット
11 光源デバイス
11a 光源素子
12 保持部材
12a 側板
12b 側板
12c 天板
12h 貫通孔
13 ステージ
13a 貫通孔
13b 貫通孔
13c 貫通孔
14 台座
14a レンズ
14b 凸部
14c 螺旋状溝
14d 基板
15 スライドガラス
16 カバーガラス
17a 係合部
17b 係合部
18 顕微鏡本体
20 通信端末
30 カメラ
100 精子運動性能評価システム
A ユーザ装置
B 外部サーバ
C ネットワーク