(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】波長変換装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 3/10 20180101AFI20241008BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20241008BHJP
F21V 3/08 20180101ALI20241008BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241008BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241008BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
F21V3/10 330
F21V9/30
F21V3/08
F21S2/00 481
F21Y115:30
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021136909
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】川上 康之
(72)【発明者】
【氏名】前村 要介
(72)【発明者】
【氏名】村井 俊介
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012939(JP,A)
【文献】特開2021-021906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0203585(US,A1)
【文献】特表2014-508379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 3/00
F21V 9/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面及び光出射面を有し、前記受光面から入射された入射光の波長を変換して波長変換光を生成し、前記波長変換光を前記光出射面から出射する板状の波長変換体と、
前記波長変換体の前記光出射面上に配置された複数のアンテナと、を有し、
前記複数のアンテナは、前記光出射面の第1の領域において、前記複数のアンテナの各々が所定周期で配列されたアンテナアレイを形成し、かつ前記第1の領域以外の第2の領域において前記アンテナアレイが存在しておらず、
前記第1の領域の光出射面に至る前記入射光の前記受光面から前記光出射面までの光路長が前記第2の領域の光出射面に至る前記入射光の前記受光面から前記光出射面までの光路長よりも長いことを特徴とする波長変換装置。
【請求項2】
前記光出射面の第1の領域に対向する前記受光面の部分と前記第1の領域との間の距離が前記光出射面の第2の領域に対向する前記受光面の部分と前記第2の領域と間の距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記第2の領域及び前記第2の領域に対向する前記受光面の部分の少なくとも一方には凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波長変換装置。
【請求項4】
前記第2の領域には、前記第2の領域に対向する前記受光面の部分に前記凹部が形成されている場合、前記複数のアンテナより低い凹凸の光路変更面が前記光出射面の平坦面上に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の波長変換装置。
【請求項5】
前記凹部の底面は前記光出射面の第1の領域と平行に形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の波長変換装置。
【請求項6】
前記第1の領域に対向する前記受光面の部分が前記入射光の光路を前記第2の領域へ変更する変更面となっていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記変更面は、傾斜面、鋸歯状面、曲面、又は粗面となっていることを特徴とする請求項6に記載の波長変換装置。
【請求項8】
前記波長変換体は、前記
光出射面を備え且つ前記入射光の波長を変換する蛍光体プレートと、前記受光面を備え且つダイクロイックミラーを挟んで前記蛍光体プレートを支持する透明支持体と、から構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の波長変換装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の波長変換装置と、
前記波長変換体に入射させる光を生成する光源と、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項10】
前記光源はレーザ光を生成するレーザ光源であることを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記レーザ光源は前記第1の領域及び前記第2の領域へ向けて発光する複数の発光部のアレイからなる光源アレイであることを特徴とする請求項
10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記レーザ光源は前記第2の領域へ向けて発光する複数の発光部のアレイからなる光源アレイであることを特徴とする請求項
10に記載の照明装置。
【請求項13】
前記光源は発光ダイオードと前記発光ダイオードからの光を配光調整して前記入射光を生成する集光光学系とから構成されることを特徴とする請求項9に記載の照明装置。
【請求項14】
光源と、波長変換装置からなる照明装置において、
前記波長変換装置は、受光面及び光出射面を有し、前記受光面から入射された入射光の波長を変換して波長変換光を生成し、前記波長変換光を前記光出射面から出射する板状の波長変換体と、前記波長変換体の前記光出射面上に配置された複数のアンテナと、を有し、
前記複数のアンテナは、前記光出射面の第1の領域において、前記複数のアンテナの各々が所定周期で配列されたアンテナアレイを形成し、かつ前記第1の領域以外の第2の領域において前記アンテナアレイが存在していない、波長変換装置であり、
前記光源が一次光を前記波長変換体の前記受光面に照射する場合、
前記波長変換体は前記一次光の一部を波長変換し二次光を生成し、
前記光出射面へは前記波長変換体を通過した前記一次光と前記二次光が到達し、
前記第1の領域において前記二次光が相対的に多く到達し、前記第2の領域において前記一次光が相対的に多く到達する、
ことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の波長を変換する波長変換装置及び当該波長変換装置を含む照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定のスペクトルで光を放出する光源と、当該光源からの光の波長を変換して出力する波長変換装置とを組み合わせた青色発光及び黄色発光(補色)を混色させる照明装置が知られている。また、例えば、特許文献1及び2には、出射光の指向性を高める照明装置として、波長変換媒体とアンテナアレイとを用いた照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-13688号公報(特許6789536号公報)
【文献】特許60603394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光体プレートのアンテナアレイ光出射面に対して内部から大きな角度でアンテナアレイに入射する光は、アンテナ作用(局在表面プラズモン共鳴と光回折を介した共振)により比較的外部へ取り出されやすい。蛍光体は屈折率が高いため一次光は蛍光体プレートに入射すると光軸方向(光出射面の垂直方向)に揃えられる。従って、二次光に波長変換されずに光出射面まで到達した一次光の一部は、アンテナ作用を受けにくい小さな入射角度で光出射面に到達することになる。これら蛍光体プレートの光出射面に到達した一次光はアンテナアレイに吸収もしくは後方に反射されて損失となる。
【0005】
アンテナアレイは周期的に配列された金属(ピラー)のアンテナの複数から構成されるので、一般に、光出射面の5~50%をアンテナアレイで遮蔽することになる。すなわち光出射面に到達した一次光の最大半分がアンテナアレイにより吸収もしくは後方に反射されて外部に取り出されない第一の課題がある。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、光取出し効率を向上できる波長変換装置及び当該波長変換装置を含む照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による波長変換装置は、受光面及び光出射面を有し、前記受光面から入射された入射光の波長を変換して波長変換光を生成し、前記波長変換光を前記光出射面から出射する板状の波長変換体と、
前記波長変換体の前記光出射面上に配置された複数のアンテナと、を有し、
前記複数のアンテナは、前記光出射面の第1の領域において、前記複数のアンテナの各々が所定周期で配列されたアンテナアレイを形成し、かつ前記第1の領域以外の第2の領域において前記アンテナアレイが存在しておらず、
前記第1の領域の光出射面に至る前記入射光の前記受光面から前記光出射面までの光路長が前記第2の領域の光出射面に至る前記入射光の前記受光面から前記光出射面までの光路長よりも長いことを特徴とする。
【0008】
また、本発明による照明装置は、当該波長変換装置と、蛍光体プレートに入射させる光を生成する光源と、を有することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施例に係る照明装置の構成を示す光源の光軸を含む概略断面図である。
【
図2】第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の正面図である。
【
図4】第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の構成を示す光源の光軸を含む概略断面図である。
【
図5】第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の変形例の正面図である。
【
図6】第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の変形例の正面図である。
【
図7】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図8】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図9】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図10】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図11】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図12】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図13】第一実施例における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【
図14】第一実施例における光源アレイとの組み合わせた変形例の照明装置を示す概略断面図である。
【
図15】第一実施例おける光源アレイとの組み合わせた変形例の光源アレイと波長変換装置を示す概略断面図である。
【
図16】第一実施例おける光源アレイとの組み合わせた変形例の光源アレイと波長変換装置を示す概略断面図である。
【
図17】第二実施例に係る照明装置における波長変換装置の構成を示す概略断面図である。
【
図18】第二実施例に係る照明装置における波長変換装置の変形例の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、第一実施例に係る照明装置11の構成を示す模式的な断面図である。なお、以下の断面図において、光学部品のハッチングを省略している。
【0012】
照明装置11は、筐体12に収容された光源13及び該光源13の光軸上に配置された波長変換装置WCを含み、例えば、プロジェクタ、車両用灯具、一般照明装置等の光源として用いられることができる。また、照明装置11は、波長変換装置WCの外部に面した表面から照明光L3(一次光L1(励起光)及び二次光L2(波長変換光))を外部に出射する。なお、照明装置11の外部に面した表面側に照明光L3を投光する投光光学系(図示せず)を備えてもよい。
【0013】
筐体12には、光源13を固定する開口と、波長変換装置WCを固定する開口とが設けられている。また、波長変換装置WCは、筐体12の外部に面した表面上に並列配置されているアンテナアレイ部15(第一領域)及び非アンテナアレイ部16(第二領域)を有する。
【0014】
(光源)
光源13は、所定の波長域の励起光の一次光L1を出射する。光源13は、例えば、当該レーザ素子として、半導体レーザを含む。光源13は、例えば、440nm~460nmの範囲にピーク波長を有する光(青色光)を出射するInGaN系の端面発光レーザ(Edge Emitting Laser: EEL)を用いる。例えば、光源13として、EELの他、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、フォトニック結晶面発光レーザダイオード(Photonic Crystal Surface Emitting Laser: PCSEL)等の半導体レーザを用いることができる。半導体レーザは強い指向性を有しており、波長変換装置WCへの入射効率が高く且つアンテナアレイ部15により指向性が高められた二次光L2と合わせて狭角白色光とできるため、光源13として好ましい。
【0015】
光源13は、波長変換装置WCの受光面S1(アンテナアレイ部15が形成された光出射面S2とは反対側)から、その一次光L1が入射するように配置されるのが好ましい(
図1、参照)。
【0016】
ここで、第二の課題について説明する。アンテナ作用により取り出される光の配光(出射角)は波長や光出射面への入射角度によっても異なり同じアンテナアレイの下では一次光と二次光の配光を一致させることは難しい。また、一次光はアンテナ作用を受けにくく、蛍光体プレートから出射後も蛍光体プレート入射前の光源の配光(指向性)が保持される。一般に、蛍光体プレートへの入射効率を高くするためには一次光をコリメートもしくは可能な限り狭い放射角に整形することが望ましい。これらの理由から一次光は二次光よりも狭い放射角で蛍光体プレートから取り出されることが多く、結果、照明光に中心から外側に向かって色温度が減少していくような色分離が発生する恐れがある。
【0017】
そこで、図示しないが、光源13として、発光ダイオードや半導体レーザのいずれを用いる場合も光源13と波長変換装置WCとの間に所定の光学系を配置し、一次光L1を例えば二次と同じ配光などの所望の配光(FFP: Far Field Pattern)に調整してもよい。これにより上記の第2の課題の解決が期待できる。
【0018】
また、光源13と波長変換装置WCとの間にインテグラル光学系を配置し及び蛍光体プレート14における一次光L1の照射強度分布(NFP: Near Field Pattern)を例えばトップハット型の強度分布に調整してもよい。これにより、蛍光体プレート14の局所的な発熱による温度消光を抑え波長変化効率を向上できる。
【0019】
(波長変換装置)
波長変換装置WCは、光源13の光軸を法線とする板状の蛍光体プレート14と、蛍光体プレート14の光源13の反対側の主面上に共に並列配置されたアンテナアレイ部15(第一領域)及び非アンテナアレイ部16(第二領域)とを含む。
【0020】
筐体12内における一次光L1の光路上に設けられている蛍光体プレート14は、光源13から入射した一次光L1の波長を変換し、一次光L1とは異なる波長を有する二次光(波長変換光)を生成する。照明光L3は、蛍光体プレート14によって一次光L1の波長が変換された二次光L2と、蛍光体プレート14を透過した一次光L1と、を含むことになる。波長変換装置WCは、この二次光L2及び一次光L1を照明光L3として出射する。
【0021】
アンテナアレイ部15及び非アンテナアレイ部16は、蛍光体プレート14上に形成され、蛍光体プレート14から出射される照明光L3の配光制御を行う。
【0022】
(蛍光体プレート)
図2は第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の正面図である。
図3は
図2の破線枠内の拡大部分正面図である。
図4は波長変換装置の構成を示す光源の光軸を含む概略断面図である。
【0023】
蛍光体プレート14は、受光面S1から一次光L1を受光する。蛍光体プレート14は、蛍光体プレート14内において一次光L1の波長を変換し、二次光L2を生成する。また、蛍光体プレート14は、一次光L1の一部を一次光L1として透過させる。蛍光体プレート14は、これら二次光L2及び一次光L1を含む照明光L3を光出射面S2から出射する。
【0024】
蛍光体プレート14は、蛍光体材料を焼結させた単相もしくは単結晶の蛍光体板すなわちセラミックプレートからなる。例えば、蛍光体プレート14は、セリウムを発光中心とした単相のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)蛍光体を焼結した透明なセラミックプレートからなる。単相YAG:Ceは屈折率が比較的高い故に、入射した一次光L1を蛍光体プレート14内で略平行化できる。そのため、一次光L1は小さな入射角で光出射面S2に達し、効率よく一次光L1が取り出され、且つ指向性も維持される。
【0025】
蛍光体プレート14が単相の蛍光体からなる透明なセラミックプレートからなる場合、一次光L1は、入射した一次光L1の配光特性を維持した状態で蛍光体プレート14から出射される(蛍光体プレート14を透過する前後で同じ進行方向を有する)。従って、例えば、一次光L1として光源13からのレーザ光が蛍光体プレート14に入射した場合、一次光L1は、当該レーザ光とほぼ同じ配光特性を有する。
【0026】
例えば、蛍光体プレート14は、二次光L2として、500nm~800nmの波長帯域の光(黄色光)を生成する。従って、本実施例においては、蛍光体プレート14の光出射面S2からは、照明光L3として、黄色光(二次光L2)及び青色光(一次光L1)が混色され、白色光として視認される光が出力される。
【0027】
なお、蛍光体プレート14は、セラミックプレートからなる場合に限定されない。例えば、高温度で長時間使用しない用途では、蛍光体プレート14は、蛍光体粒子を含むバインダを板状に成形したものであってもよい。例えば、蛍光体プレート14は、YAG:Ce蛍光体の粉末を透明バインダ中に分散させて固めたものであってもよい。
【0028】
(アンテナアレイ部)
アンテナアレイ部15は、照明光L3のうち、主に二次光L2の配光制御を行う。
図2に示すように、アンテナアレイ部15は、蛍光体プレート14の光出射面S2の平坦面上に形成されている複数の光学アンテナ15A(以下、単にアンテナと称する)により、構成される。
【0029】
図2に示すように、アンテナアレイ部15は、例えば、ストライプ状に非アンテナアレイ部16を挟んで平行に形成される。アンテナアレイが形成されているアンテナアレイ部15は十分なアンテナ作用を得るために光出射面S2上のいずれの方向においても10μm以上の幅を有するように形成する。アンテナアレイを形成する光出射面S2と受光面S1は表面粗さRa10nm以下、好ましくは1nm以下の平坦・平滑面である。
【0030】
図3に示すように、複数のアンテナ15Aは、蛍光体プレート14内における一次光L1(励起光)の光学波長よりも十分に大きな周期(アンテナ周期)Pで配置される。複数のアンテナ15Aは、蛍光体プレート14内における二次光L2の波長に対応する周期Pで配列されている。アンテナ15Aの各々は互いに同程度のアンテナ幅(直径)Wを有する。なお、アンテナ15Aが柱状又は錐状の形状を有する場合、アンテナ幅Wとはアンテナ15Aの最大幅をいう。
【0031】
アンテナ15Aの各々は、ナノサイズの微小な柱状又は錐状の金属突起である。また、アンテナ15Aの各々は、円柱形状を有し、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Pt(プラチナ)、Pd(パラジウム)、Al(アルミニウム)及びNi(ニッケル)等の可視光領域にプラズマ周波数を有する材料、並びにこれらを含む合金又は積層体から形成される。
【0032】
また、
図4に示すように、アンテナ15Aの各々は互いに同程度のアンテナ高さH1を有する。
【0033】
アンテナ15Aのアンテナアレイにおいては、例えば400nm周期Pのアンテナ15Aの正方格子配列で各アンテナ直径Wが220nm、各アンテナ高さH1が220nmのAlピラーである。これによりYAG:Ceの発光(波長500~700nm)に対して高いアンテナ作用を示し、二次光L2に指向性を付与し且つ光取り出し効率を向上させる。
【0034】
アンテナアレイは上記に限らず求める指向性等により変形できる。例えば形状は円柱(ピラー)に限らず、多角形、矩形の柱状もしくは錘状としてもよく、アンテナアレイ配列は正方格子の他に三角格子や準結晶配列のもの使用でき、周期も所望の増強波長(色度、色温度)に応じて変更することができる。例えば、アンテナアレイ部15は、互いにアンテナ周期Pが異なる複数のアンテナアレイセグメントを有していてもよい。今回のように蛍光体プレート14にYAG:Ceを用いる場合はアンテナアレイの周期は(光学)波長付近の250~500nmの範囲(効率を考えた現実的な範囲は300~450nm)で利用できる。また、各アンテナの大きさ、高さも求める指向性と効率(増強効率、光取り出し効率)に応じて大きさ(幅、直径)Wは50~300nmで、アンテナ高さH1は50~300nmとする。
【0035】
アンテナアレイ部15の各アンテナ15Aに二次光L2が照射されると、アンテナ15Aの表面での局在表面プラズモン共鳴によってアンテナ15Aの近傍の電場の強度が増大する。また、アンテナ15Aが配置される周期Pを二次光L2の光学波長程度とすることで、隣接する個々のアンテナ15Aの局在表面プラズモン共鳴が光回折を介した共振を起こし、アンテナ15Aの近傍の電場の強度がさらに増大される。従って、二次光L2の光取り出し効率が向上する。
【0036】
この電場増強の結果、二次光L2は、増幅され、また、狭角な配光特性(低エタンデュ)となってアンテナアレイ部15から出射される。すなわち、アンテナアレイ部15は、蛍光体プレート14内の二次光L2を増強し、また、二次光L2の出射方向を絞ると同時に二次光L2の光取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0037】
なお、アンテナアレイ部15は、アンテナ周期Pを対象となる光の波長(媒体内波長)程度又はこれよりも少し大きくすることで、高いアンテナ作用を生じさせる。
【0038】
一方、アンテナ15Aは、蛍光体プレート14内における一次光L1(励起光)の光学波長よりも十分に大きな周期Pで配置されている。これによって、一次光L1に対しては、アンテナ作用は実質的に生じない。すなわち、一次光L1は、光源の配光特性(強度及び形状)が維持された状態で、アンテナアレイ部15から出射される。
【0039】
換言すれば、アンテナアレイ部15は、二次光L2(例えば黄色光)の強度及び指向性を調節する機能を有する。一方、アンテナアレイ部15は、蛍光体プレート14内で波長変換されなかった一次光L1(例えば青色光)を素通りさせる。
【0040】
このように、アンテナアレイ部15が実質的に二次光L2にのみアンテナ作用を生じさせるように構成されていることによって、照明光L3のうちの一次光L1はアンテナアレイ部15のアンテナ作用を受けないが、一次光の一部はアンテナアレイに吸収もしくは後方に反射されて損失となる。よって、アンテナアレイ部15からはアンテナ作用により主に二次光L2が放出される。
【0041】
本実施例においては、アンテナアレイ部15は、非アンテナアレイ部16よりそれらの対向する受光面までの厚さが厚く形成されている。すなわち、アンテナアレイ部15の光出射面S2に至る一次光L1の受光面S1から光出射面S2までの光路長が非アンテナアレイ部16の光出射面S2に至る一次光L1の受光面S1から光出射面S2までの光路長よりも長くなるように、具体的には、蛍光体プレート14は、光出射面S2のアンテナアレイ部15に対向する受光面S1の部分S1aとアンテナアレイ部15との間の距離が光出射面S2の非アンテナアレイ部16に対向する受光面S1の部分S1bと非アンテナアレイ部16と間の距離よりも大きくなるように、構成されている。
【0042】
一次光L1は受光面S1に対し光軸が垂直に入射され、部分S1aとS1bの両方に照射されるが、出射される光の様子は異なることになる。
【0043】
アンテナアレイ部15が形成された領域の蛍光体プレート14の厚さ(受光面S1aと光出射面S2との距離Ta)は例えば80μm以上であり、これにより入射した一次光L1の約50%以上が二次光L2に変換されてアンテナアレイに吸収、反射される一次光L1が従来よりも低減する。好ましくは200μm以上とすると、一次光L1の約90%が光出射面S2に到達するまでに二次光L2に変換され、アンテナアレイ部15に入射した一次光L1の損失を3%以下と大幅に抑えることができる。
【0044】
(非アンテナアレイ部)
非アンテナアレイ部16は、主に一次光L1の配光制御を行う窓部として機能する。
【0045】
蛍光体プレート14の光出射面S2にはアンテナアレイ部15に加えて、アンテナアレイが形成されず蛍光体プレート14が表出した非アンテナアレイ部16形成されている。
【0046】
一次光L1の二次光L2への変換割合はアンテナアレイ部15よりも低く、0%も含み、80%以下としている。
【0047】
非アンテナアレイ部16はアンテナアレイ部15よりも薄く形成され、厚みゼロを含む180μm以下とすれば波長変換されなかった一次光L1を照明光として取り出すことができる。非アンテナアレイ部16は、所望の色度、色温度となるように厚さ(受光面S1bと光出射面S2との距離Tb)、占有面積を決めることができる。例えばダイシング、ドライエッチング等の一般的な手法で蛍光体プレート14の光出射面S2側に、その所定深さの底面が光出射面S2のアンテナアレイ部15と平行な凹部DPを形成するか、蛍光体プレート14作製時に金型等で所望の凹部形状に焼成する等して得ることができる。
【0048】
本実施例の波長変換装置WCは、一次光L1が入射する受光面S1と該受光面S1との反対側に光出射面S2を有する一次光L1の少なくとも一部を長波長化する蛍光体プレート14と、該蛍光体プレート14の光出射面S2に微小なアンテナ15Aの複数が周期的に配列されたアンテナアレイが形成されたアンテナアレイ部15(第1の領域)とアンテナアレイが形成されていない非アンテナアレイ部16(第2の領域)を有し、底面が平坦な形状(バスタブ型)凹部DPを設けて非アンテナアレイ部16の蛍光体プレート14の厚さ(受光面S1bと光出射面S2との距離Tb)はアンテナアレイ部15の蛍光体プレート14の厚さ(受光面S1aと光出射面S2との距離Ta)よりも薄く、一次光の蛍光体プレート内の光路長が短くなっている。
【0049】
アンテナアレイ部15の蛍光体プレート14が厚いため入射した一次光L1の光路長が長く、大部分が二次光L2(蛍光の黄色光)に変換されてアンテナアレイ部15光出射面S2に到達する。照明光として利用される一次光L1(青色光)は主にアンテナアレイが形成されていない非アンテナアレイ部16から取り出されるためアンテナアレイによる損失を受けずに外部へ取り出すことができる。これらにより従来アンテナアレイにより吸収、反射されて損失となっていた一次光L1(青色光)の割合を減ずることが可能になり、波長変換装置WCの光取り出し効率向上が期待される。これにより上記の第1の課題の解決が期待できる。
【0050】
また、従来のように蛍光体プレート14の厚みやアンテナアレイによる蛍光の取り出し効率にばらつきがあった場合でも後から非アンテナアレイ部16の厚さ、形成範囲(占有率)を調整することで一次光L1と二次光L2の割合を調整して所望の色温度、色度を得ることができる。これにより上記の第3の課題の解決が期待できる。
【0051】
(変形例)
図5及び
図6は第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の第1及び第2変形例の正面図である。
【0052】
アンテナアレイ部15と非アンテナアレイ部16の占有面積比は所望の色温度、色度に合わせて任意に調整できる。例えば、光源13の青色光と蛍光体プレート14の黄色光を混合し、色温度5500~6500Kの一般的な白色照明光を得る場合、非アンテナアレイ部16の専有面積比は2%以上50%以下の範囲であることが好ましい。例えば非アンテナアレイ部16の蛍光体プレートの厚みが100μm、140μm及び180μmの場合、非アンテナアレイ部の専有面積はそれぞれ5~15%、10~25%及び20~40%の範囲で調整することにより色温度5500~6500Kの白色照明光が得られる。
【0053】
また、アンテナアレイ部15、非アンテナアレイ部16の配置についても、
図2のようにストライプ状に非アンテナアレイ部16を形成する以外に、第1変形例として、
図5に示すようにアンテナアレイ部15に囲まれるように非アンテナアレイ部16の複数例えば4個の四角又は円状の窓として配置してもよい。また、第2変形例として、
図6に示すようにアンテナアレイ部15に囲まれた非アンテナアレイ部16の環状の窓として配置してもよい。
【0054】
非アンテナアレイ部16一つあたりの窓の広さは例えば1μm□以上とする。また、一次光L1(青色光、約450nm)の波長より十分に大きい1μmの幅以上のストライプであれば一次光L1を十分に取り出すことができる。光出射面S2上の色ムラを抑える観点からは出来るだけ小さな占有面積の非アンテナアレイ部16の窓を多く、均一に分布させて配置するのが好ましい。例えば、非アンテナアレイ部16一つあたりの最大幅(径)を50μm以下、好ましくは10μm以下とする、もしくは非アンテナアレイ部16一つあたりの占有面積を光出射面S2全体の5%以下とすることで隣接するアンテナアレイ部15との色度の違いを目立たせなくすることができる。
【0055】
図7乃至
図13は第一実施例に係る照明装置における波長変換装置の第3乃至第8変形例の概略断面図である。
【0056】
第一実施例では波長変換装置WCの光出射面S2側に凹部DPを形成して非アンテナアレイ部16としていたが、これに限らず第3変形例として受光面S1側に凹部DPを形成し、光出射面S2を平坦面として非アンテナアレイ部16の蛍光体プレート14の厚さを変えてもよい(
図7、参照)。これにより、例えば非アンテナアレイ部16の光出射面S2側の蛍光体プレート14表面に反射防止膜やマイクロレンズ等が設置しやすくなり(図示せず)、取り出し効率や一次光L1の配光を制御することできる。これにより上記の第1の課題の解決が期待できる。また、反射防止膜やマイクロレンズの設置により非アンテナアレイ部16から取り出される二次光L2の取り出し効率を調整することができ、これによっても隣接するアンテナアレイ部15との色度の違いを目立たせなくすることができる。
【0057】
また、非アンテナアレイ部16の光出射面S2側に形成する凹部DPは、これまでの底面が平坦な形状(バスタブ型)だけでなく、第4変形例として断面形状がドーム(U字)状(
図8、参照)の他、V字形状、粗面であってもよい。これらの利点は形状により光出射面S2から取り出される一次光L1の配光を微調整できることにある。すなわち、アンテナアレイ部15により付与された二次光L2の配光特性に合わせて一次光L1の配光特性を修正することができる。これにより上記の第2の課題の解決が期待できる。なお、第5変形例として受光面S1側にドーム(U字)状の凹部DPを形成し、光出射面S2を平坦面として非アンテナアレイ部16の蛍光体プレート14の厚さを変えてもよい(
図9、参照)。
【0058】
さらに、第1乃至第5変形例を組み合わせた第6変形例として、
図10、
図11に示すように光出射面S2側と受光面S1側に同様の又は異なる断面形状の凹部DPを形成し、非アンテナアレイ部16の蛍光体プレート14の厚さを変えてもよい。
【0059】
このように、非アンテナアレイ部16及び非アンテナアレイ部16に対向する受光面S1の部分S1bの少なくとも一方には凹部DPが形成されることにより、一次光L1の指向性と取り出し効率を向上できる。
【0060】
第3及び第5変形例(
図7及び
図9、参照)において、非アンテナアレイ部16に対向する受光面S1の部分S1bに凹部DPが形成され非アンテナアレイ部16の光出射面S2は何もない平坦面として説明してきたが、第7変形例として当該平坦面に限らず、レンズアレイ形状(
図12、参照)の他、非アンテナアレイ部16の蛍光体プレート14表面を粗面や、レンズ形状等に当該平坦面を加工することもできるし、蛍光体プレート14の非アンテナアレイ部16の平坦面にガラス、樹脂、セラミック等の透明部材でレンズや粗面形状の構造体を形成して、アンテナ15Aより低い凹凸からなる光路変更面TXとしてもよい。第7変形例により一次光L1の指向性をアンテナアレイ部15から放射される二次光L2に近づけることができるだけでなく、非アンテナアレイ部16から放出される二次光L2の取り出し効率と指向性も調整できるため、例えば、色ムラを低減する効果も期待される。すなわち、非アンテナアレイ部16には、非アンテナアレイ部16に対向する受光面S1の部分S1bに凹部DPが形成されている場合、複数のアンテナより低い凹凸の光路変更面TXが光出射面S2の平坦面上に形成されることも、本実施例の変形例に含まれる。
【0061】
図13は、本実施例の第8変形例の波長変換装置を示す概略断面図である。
【0062】
第8変形例の波長変換装置WCは、光出射面S2面を備え且つ一次光L1の波長を変換する蛍光体プレート14と、受光面S1を備え且つダイクロイックミラーDCMを挟んで蛍光体プレート14を支持する透明支持体TSと、から構成される。
【0063】
波長変換装置WCの放熱性及び機械強度向上のため蛍光体プレート14の受光面S1側に透明支持体TSを接合することができる。このとき蛍光体プレート14と透明支持体TSは一次光L1を透過し、二次光L2を反射するダイクロイックミラーDCMを介して接合されていてもよい。これにより二次光L2の後方(受光面S1側)を光出射面S2側に反射し照明光と利用できるため波長変換装置WCの効率向上に寄与できる。さらに、図示はしていないが透明支持体TSの表面(受光面S1)に反射防止膜(ARコート)を形成し、一次光L1の入射効率を高めることもできる。
【0064】
当該接合には蛍光体プレート14と透明支持体TSとの間に樹脂や低融点ガラス等による接着層を設けることもできる。他には直接接合技術を用いて蛍光体プレート14と透明支持体TSもしくはダイクロイックミラーDCMとの界面で化学結合を形成させることができる。これにより樹脂、ガラスを用いるよりも放熱性の高い波長変換装置WCを得ることができる。
【0065】
図14は、本実施例の第9変形例の光源アレイとの組み合わせた照明装置を示す概略断面図である。
図15は、本実施例の第9変形例における光源アレイと波長変換装置を示す概略断面図である。
【0066】
ここで第3の課題について説明する。目的の照明色(色温度)を得るには励起光である一次光と変換光である二次光の混合比を調整する必要があるが、蛍光体プレートの蛍光体組成や蛍光体プレート厚の精密な制御が必要となり、また、それ以外にもアンテナアレイの仕上がりで色温度が変動することがある。これは、アンテナ設計の他、作製時のアンテナ構造体の形状均一性によっても一次光と二次光それぞれの損失と光取り出し効率が変動するためである。よって、一次光と二次光の混合比を調整することが難しい。
【0067】
図1~
図13に示す装置の説明では通常の半導体レーザ(EEL)を一つ用いた照明装置を示したが、複数のレーザ光源13すなわちレーザアレイ(光源アレイ)により波長変換装置の蛍光体プレート14を励起してもよい。例えば、
図14は光源13に複数の発光部の垂直共振器面発光レーザからなるVCSELアレイを用いた照明装置である。VCSELアレイの各発光部EPは、それぞれアンテナアレイ部15と非アンテナアレイ部16の全てを照射するように配列されている。
【0068】
各発光部EPからの光の光軸が部分S1aと部分S1bに垂直になるように配置されている。また、各発光部EPには光が主に部分S1aに入射される発光部と、光が主に部分S1bに入射される発光部とを含む。第9変形例により波長変換装置WCの作製後も発光部EPの出力を変化することで、波長変換装置WCの作製後も一次光L1と二次光L2の混合比率を任意に調整し所望の色温度、色度の照明光を得ることができる。これにより上記の第3の課題の解決が期待できる。さらには、波長変換装置WCのアンテナアレイ部15の構造及び/または非アンテナアレイ部16の凹部DP形状が異なる複数の領域を設ければ、VCSELアレイを制御する光源制御装置COLによる照明装置の駆動中に、照明装置の色温度と配光特性を任意に変更設定できる効果が得られる。
【0069】
図16は、本実施例の第10変形例における光源アレイと波長変換装置を示す概略断面図である。
【0070】
第9変形例ではアンテナアレイ部15と非アンテナアレイ部16の全てに対向させて光源のVCSELアレイが配置されているが、これに限らず例えば
図16に示すようにアンテナアレイ部15(部分S1a)へ一次光L1を入射させず(もしくは相対的に少なく)非アンテナアレイ部16(部分S1b)(の一部)にのみ入射(もしくは相対的に多く)させるようにVCSELアレイの発光部EPを配置して構成してもよい。すなわち、非アンテナアレイ部16で一次光L1から波長変換された二次光L2(蛍光)は、蛍光体プレート14内で反射、伝搬を繰り返しアンテナアレイ部15の光出射面S2のアンテナアレイに到達できるため、所望の色温度、色度を得られるのであれば、アンテナアレイ部15へ一次光L1を入射させなくてもよい。
【0071】
ただし、本変形例の場合、非アンテナアレイ部16でも蛍光体プレート14は一定の厚みを有し、波長変換が行われている必要がある。
【0072】
これにより、アンテナアレイ部15に吸収される一次光L1がなくなる(もしくは少なくなる)ため高効率な指向性照明装置を提供できる。
【実施例2】
【0073】
図17は、第二実施例に係る照明装置11の構成を示す図である。
【0074】
第二実施例は、一次光L1(励起光)が入射する受光面S1と該受光面S1との反対側に光出射面S2を有する一次光L1の少なくとも一部を長波長化する蛍光体プレート14と、該蛍光体プレート14の光出射面S2にアンテナ15Aが周期的に配列されたアンテナアレイが形成されたアンテナアレイ部15とアンテナが形成されていない非アンテナアレイ部16を有している点では第一実施例と同じである。第二実施例は、アンテナアレイ部15の光出射面S2と反対側の受光面S1の部分S1aが一次光L1の進行方向を変更させる傾斜面を有している点で第一実施例と異なる。すなわち、第二実施例は、アンテナアレイ部15の光出射面S2に至る一次光L1の受光面S1の部分S1aから光出射面S2までの光路長が非アンテナアレイ部16の光出射面S2に至る一次光L1の受光面S1の部分S1bから光出射面S2までの光路長よりも長くなるように、アンテナアレイ部15に対向する受光面S1の部分S1aが一次光L1の光路を非アンテナアレイ部16へ変更する変更面(傾斜面)となっている。
【0075】
第二実施例の波長変換装置WCはアンテナアレイ部15の受光面S1側に蛍光体プレート14端面方向(光出射面S2と平行な方向)に一次光L1の進行方向を変更させる傾斜面(変更面)があること以外は第一実施例と同じ特徴を有する。当該傾斜面はアンテナアレイ部15が形成された反対側の受光面S1の少なくとも一部に形成され、一次光L1が光出射面S2上のアンテナアレイ部15に垂直に向かって進むことを防ぐ。これにより、第一実施例のようにアンテナアレイ部15の厚さ(受光面S1aと光出射面S2との距離Ta)を厚くしなくても一次光L1の光路を長くすることができ、アンテナアレイ部15による損失を低減できる。
【0076】
蛍光体プレート14に使用されるYAG:Ce等のセラミック材料は屈折率が比較的高く、一次光L1が蛍光体プレート14に入射する際、受光面S1の法線方向に大きく屈折する。そこで第二実施例ではアンテナアレイ部15と反対側にある受光面S1を傾斜させた傾斜面(変更面)とすることでアンテナアレイ部15から入射した一次光L1を蛍光体プレート14の端面方向に屈折させ、一次光L1が光出射面S2に到達するまでの光路長を長くしている。よって、アンテナアレイ部15から入射した一次光L1は、アンテナアレイ部15による吸収、反射を受ける前に、ほとんどが二次光L2に変換され光出射面S2に到達する。これにより上記の第1の課題の解決が期待できる。
【0077】
図17に示す装置では、アンテナアレイ部15に対向する受光面S1の部分S1aの傾斜面(変更面)をV字形状の断面としたが、これに限らず、傾斜面(変更面)は一次光L1の少なくとも一部の進行方向を横方向(非アンテナアレイ部16へ)に変更できる断面形状、例えば鋸歯状面、曲面、粗面であってもよい。非アンテナアレイ部16は、一次光L1を取り出せる厚さであればよく、第一実施例の部DPと同様の凹部(図示せず)を、光出射面S2もしくは受光面S1に設けることもできる。
【0078】
図18は、本実施例の第1変形例における波長変換装置を示す概略断面図である。
【0079】
第二実施例でも第一実施例の第8変形例(
図13、参照)同様、放熱性及び機械強度向上のため透明支持体TSと接合することができる。この場合、第二実施例の第1変形例では傾斜面(変更面)は蛍光体プレート14上ではなく透明支持体TSの受光面S1に形成されている。
【0080】
透明支持体TSは屈折率が蛍光体プレート14と同程度以下であることが好ましい。蛍光体プレート14もしくはダイクロイックミラーDCMに対して透明支持体TSの屈折率が高すぎる場合は蛍光体プレート14と透明支持体TSの界面で全反射して蛍光体プレート14内に入射する一次光L1が減少する。よって、透明支持体TSとしては近い屈折率を有し且つ熱伝導率の高いサファイヤ(アルミナ)板が好ましく、もしくは発光中心であるCeがドープされていないYAG基板を用いてもよい。YAG基板は屈折率だけでなく熱膨張係数も蛍光体プレート14(YAG:Ce)とほぼ同じのため高温動作時に蛍光体プレート14と透明支持体TSが剥離する可能性が低く好ましい。
【0081】
以上の実施例1、2及び変形例において蛍光体プレート14の光出射面S2にアンテナアレイ部15と非アンテナアレイ部16を有し、光源からの一次光L1と蛍光体プレート14で波長変換された二次光L2は、アンテナアレイ部15では相対的に二次光L2が多く到達してアンテナアレイと作用し、非アンテナアレイ部16では相対的に一次光L1が多く到達し出射されるように、光源および蛍光体プレート14もしくは蛍光体プレート14を支持する透明支持体TSが構成されている。
【0082】
蛍光体プレート内に入射された一次光L1が光出射面S2に到達するまでの一次光L1の光路長はアンテナアレイ部15では相対的に長く、非アンテナアレイ部16に相対的に短い。また、ここで光路長とは光出射面S2に到達する光の平均的な光路長である。
【0083】
このため、アンテナアレイによる一次光L1の吸収もしくは反射を抑制し光取出し効率を向上できる。
【符号の説明】
【0084】
11 照明装置
12 筐体
13 光源
14 蛍光体プレート
15 アンテナアレイ部
16 非アンテナアレイ部
WC 波長変換装置
DP 凹部
L1 一次光
L2 二次光
S1 受光面
S2 光出射面
TX 光路変更面
DCM ダイクロイックミラー
TS 透明支持体