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特許7568242液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法
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  • 特許-液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 9/00 20060101AFI20241008BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F25D9/00 B
A23L3/36 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023116472
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】393027729
【氏名又は名称】株式会社カンネツ
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】白澤 尚士
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-193679(JP,A)
【文献】特開2020-008263(JP,A)
【文献】特開2020-170301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F25D 13/00
A23L 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽(1)内の冷却不凍液(2)に食品(A)を浸漬し、食品(A)を凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、
浸漬状態の食品重量を計測する重量計(3)を、備え、
上記重量計(3)にて計測される上記食品重量が、食品(A)の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有する液冷式急速冷凍装置。
【請求項2】
液槽(1)内の冷却不凍液(2)に食品(A)を浸漬し、食品(A)を凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、
上記食品(A)を風袋(4)に収容した状態で冷却不凍液(2)に浸漬するように構成し、
浸漬状態の上記食品(A)及び風袋(4)の総重量(W)を計測する重量計(3)を、備え、
上記重量計(3)にて計測される上記食品(A)及び風袋(4)の総重量(W)が、食品(A)の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有することを特徴とする液冷式急速冷凍装置。
【請求項3】
上記重量計(3)がロードセル(5)又は重量センサー(8)である請求項1又は2記載の液冷式急速冷凍装置。
【請求項4】
液槽(1)内の冷却不凍液(2)に食品(A)を浸漬し、食品(A)を凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、
上記食品(A)を風袋(4)に収容した状態で冷却不凍液(2)に浸漬するように構成し、
浸漬状態の上記食品(A)及び風袋(4)の総重量(W)を計測する重量計(3)を、備え、
上記重量計(3)が、液槽(1)の上方に配設された吊下げ式重量計(6)であって、
風袋(4)を上記重量計(6)にて吊下げることにより、浸漬状態の上記食品(A)及び風袋(4)の総重量(W)を計測し、
上記重量計(6)にて計測される上記食品(A)及び風袋(4)の総重量(W)が、食品(A)の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有することを特徴とする液冷式急速冷凍装置。
【請求項5】
食品(A)を冷却不凍液(2)に浸漬させ、浸漬状態の食品重量を重量計(3)にて計測して、計測される上記食品重量が、食品(A)の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知することを特徴とする凍結完了検知方法。
【請求項6】
食品(A)を風袋(4)に収容した状態で冷却不凍液(2)に浸漬させ、浸漬状態の上記食品(A)及び風袋(4)の総重量(W)を重量計(3)にて計測して、計測される上記総重量(W)が、食品(A)の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知することを特徴とする凍結完了検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液槽内の冷却不凍液に食品を浸漬し、食品を凍結させる液冷式急速冷凍装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-172255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の液冷式急速冷凍装置は、食品の凍結完了を、使用者の知識と経験に基づいて判断している。そして、食品が芯部まで凍結するのに要する時間は、食品の形状や含有物質等の様々な条件に左右されるので、使用者は、凍結完了時を正確に検知することができない。従って、冷凍処理時間の長短が使用者の能力に左右され、食品の凍結が不完全な状態で食品を冷凍装置から取出して食品が劣化したり、食品の冷却を過度に長時間続けて電気代が無駄になるという問題がある。あるいは、食品に温度計を刺して温度を計測するので、食品が損傷するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、凍結完了時を知ることができる液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法を提供することを目的とする。特に、食品を損傷することなく確実に凍結完了時を知ることができる液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液冷式急速冷凍装置は、液槽内の冷却不凍液に食品を浸漬し、食品を凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、浸漬状態の食品重量を計測する重量計を、備え、上記重量計にて計測される上記食品重量が、食品の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有するものである。
【0007】
また、液槽内の冷却不凍液に食品を浸漬し、食品を凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、上記食品を風袋に収容した状態で冷却不凍液に浸漬するように構成し、浸漬状態の上記食品及び風袋の総重量を計測する重量計を、備え、上記重量計にて計測される上記食品及び風袋の総重量が、食品の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有するものである。
また、上記重量計がロードセル又は重量センサーである。
【0008】
また、液槽内の冷却不凍液に食品を浸漬し、食品を凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、上記食品を風袋に収容した状態で冷却不凍液に浸漬するように構成し、浸漬状態の上記食品及び風袋の総重量を計測する重量計を、備え、上記重量計が、液槽の上方に配設された吊下げ式重量計であって、風袋を上記重量計にて吊下げることにより、浸漬状態の上記食品及び風袋の総重量を計測し、上記重量計にて計測される上記食品及び風袋の総重量が、食品の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有するものである。
【0009】
また、本発明に係る凍結完了検知方法は、食品を冷却不凍液に浸漬させ、浸漬状態の食品重量を重量計にて計測して、計測される上記食品重量が、食品の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知する方法である。
また、食品を風袋に収容した状態で冷却不凍液に浸漬させ、浸漬状態の上記食品及び風袋の総重量を重量計にて計測して、計測される上記総重量が、食品の凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液冷式急速冷凍装置及び凍結完了検知方法によれば、食品を損傷することなく必要十分な凍結完了時を知ることができる。そして、必要十分な時間、冷却を行うことができる。すなわち、冷凍処理時間が短すぎることによる品質劣化や、長時間の冷凍処理によるエネルギーロスを防止し、冷凍処理工程を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す要部簡略断面図である。
図2】風袋に食品を載置した状態を示す斜視図である。
図3】風袋と食品の総重量の重量変化を示すグラフである。
図4】浮力を説明するための食品の断面図であって、(A)は冷凍開始時の食品の断面図、(B)は凍結完了時の食品の断面図である。
図5】第2の実施の形態を示す要部簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1図2は、本発明の第1の実施の形態を示す。
液槽1内の冷却不凍液2に食品Aを浸漬し、食品Aを凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、食品Aを風袋4に収容した状態で冷却不凍液2(ブライン液)に浸漬するように構成する。冷却不凍液2は、例えば、エチルアルコールである。食品Aを凍結させる際、冷却不凍液2の温度を、例えば、-50℃以上-20℃以下に設定する。また、本発明に於て、「食品」とは、真空パック食品の場合、樹脂袋9を含むものとする。また、本発明に於て、「風袋」には、棚、籠、ネット袋、皿を含むものとする。
【0013】
浸漬状態の食品A及び風袋4の総重量Wを計測する重量計3を、備える。重量計3がロードセル5又は重量センサー8である。ロードセル5(重量センサー8)が液槽1の上端縁7に配設されている。風袋4の一部をロードセル5(重量センサー8)に載置させることにより食品A及び風袋4の総重量Wを測定するように構成する。
【0014】
図3は、重量計3(図1参照)の経時的計測結果を示す。重量計3にて計測される食品A及び風袋4の総重量Wが、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少する。すなわち、凍結開始時刻t0 から(事実上の)凍結完了時刻tA までの間、上記総重量Wが、初期重量W0 から完全凍結重量Wmin へとしだいに減少する。これは、次の理由による。
【0015】
一般に食品Aは水分を含有するが、食品Aの凍結に伴って、水分が凍結し、体積が増加する(約 1.1倍に膨張する)。図4(A)は、冷凍開始時の食品Aの断面図を示し、図4(B)は、凍結完了時の食品Aの断面図を示す。浮力Fは、物体(食品A)が押しのけた体積変化に比例して増減するので、食品Aの体積が増加すると、浮力Fが増加し、重量計3にて計測される上記総重量Wは、浮力Fの増加分、減少する。すなわち、冷凍開始時の浮力F1 より、凍結完了時の浮力F2 のほうが大きく、重量計3にて計測される食品Aと風袋4の総重量Wは、冷凍開始時と比較して、凍結完了時は、F2 -F1 だけ小さくなる。
【0016】
重量計3にて計測される食品A及び風袋4の総重量Wの減少変化が零(0)になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有する。言い換えると、重量計3にて計測される食品A及び風袋4の総重量Wの減少変化が零になったときを、(食品Aが完全に凍結した)凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有する。例えば、コンピュータ(図示省略)によって、風袋4に食品Aを載置した直後の食品A及び風袋4の総重量Wを規定として、食品A及び風袋4の総重量Wの計測値のログを取得し、総重量Wの変化が初めて計測された後、単位時間Δtあたりの変化が初めて零になったとき(図3に示す凍結完了時刻tZ )を凍結完了とする。そして、凍結完了を使用者に通知する凍結完了通知機能を有する。凍結完了通知機能の通知手段は、例えば、パネル表示、ランプ点灯、ブザー音の発生等である。
【0017】
図5は、第2の実施の形態を示す。重量計3が吊下げ式重量計6であって、吊下げ式重量計6が液槽1の上方に配設されている。風袋4を重量計3にて吊下げることにより食品A及び風袋4の総重量Wを測定するように構成する。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0018】
次に、第3の実施の形態について説明する。浸漬状態の食品重量を計測する重量計3を、備える。そして、風袋4を介することなく、直接、食品Aのみの重量(食品重量)を計測する。重量計3にて計測される食品重量が、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有する。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0019】
次に、本発明の凍結完了検知方法の一例について説明する。食品A(図1図2参照)を風袋4に収容した状態で冷却不凍液2に浸漬させ、浸漬状態の食品A及び風袋4の総重量Wを重量計3にて計測して、計測される上記総重量Wが、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知する。
【0020】
本発明の凍結完了検知方法の他例について説明する。(風袋4を介することなく)食品Aのみを冷却不凍液2に浸漬させ、浸漬状態の食品重量を重量計3にて計測して、計測される食品重量が、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知する。
【0021】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、ロードセル5又は重量センサー8を、液槽1の内底部に設置して、ロードセル5又は重量センサー8の上に、食品Aのみを載置して、食品重量を計測するも良い。また、ロードセル5又は重量センサー8を、液槽1の内底部に設置して、ロードセル5又は重量センサー8の上に、食品Aを風袋4に収容した状態で載置して、食品A及び風袋4の総重量Wを計測するも良い。
【0022】
以上のように、本発明は、液槽1内の冷却不凍液2に食品Aを浸漬し、食品Aを凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、浸漬状態の食品重量を計測する重量計3を、備え、上記重量計3にて計測される上記食品重量が、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有するので、凍結完了時を知ることができる。特に、食品Aを損傷することなく確実に凍結完了時を知ることができる。そして、必要十分な時間、冷却を行うことができる。すなわち、冷凍処理時間が短すぎることによる品質劣化や、長時間の冷凍処理によるエネルギーロスを防止し、冷凍処理工程を最適化することができる。
【0023】
また、液槽1内の冷却不凍液2に食品Aを浸漬し、食品Aを凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、上記食品Aを風袋4に収容した状態で冷却不凍液2に浸漬するように構成し、浸漬状態の上記食品A及び風袋4の総重量Wを計測する重量計3を、備え、上記重量計3にて計測される上記食品A及び風袋4の総重量Wが、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有するので、凍結完了時を知ることができる。また、風袋4によって、食品Aを容易に液槽1に出し入れすることができる。
また、上記重量計3がロードセル5又は重量センサー8であるので、容易に計測することができる。
【0024】
また、液槽1内の冷却不凍液2に食品Aを浸漬し、食品Aを凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、上記食品Aを風袋4に収容した状態で冷却不凍液2に浸漬するように構成し、浸漬状態の上記食品A及び風袋4の総重量Wを計測する重量計3を、備え、上記重量計3が、液槽1の上方に配設された吊下げ式重量計6であって、風袋4を上記重量計6にて吊下げることにより、浸漬状態の上記食品A及び風袋4の総重量Wを計測し、上記重量計6にて計測される上記食品A及び風袋4の総重量Wが、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有するので、吊下げ式重量計によって、容易かつ迅速に、しかも精度良く、計測できる。
【0025】
また、食品Aを冷却不凍液2に浸漬させ、浸漬状態の食品重量を重量計3にて計測して、計測される上記食品重量が、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知するので、凍結完了時を知ることができる。
【0026】
また、食品Aを風袋4に収容した状態で冷却不凍液2に浸漬させ、浸漬状態の上記食品A及び風袋4の総重量Wを重量計3にて計測して、計測される上記総重量Wが、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、コンピュータによって凍結完了として検知するので、凍結完了時を知ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 液槽
2 冷却不凍液
3 重量計
4 風袋
5 ロードセル
6 吊下げ式重量計
8 重量センサー
A 食品
W 総重量
【要約】
【課題】食品を損傷することなく確実に凍結完了時を知ることができる液冷式急速冷凍装置を提供する。
【解決手段】液槽1内の冷却不凍液2に食品Aを浸漬し、食品Aを凍結させる液冷式急速冷凍装置に於て、浸漬状態の食品重量を計測する重量計3を、備える。重量計3にて計測される食品重量が、食品Aの凍結に伴う体積増加によってしだいに減少し、その減少変化が零になったときを、凍結完了として検知する凍結完了検知機能を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5