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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】被服、帽子及び液体滲出機構
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A41D13/005 103
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024024680
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594180232
【氏名又は名称】株式会社三機コンシス
(73)【特許権者】
【識別番号】509046505
【氏名又は名称】hap株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】弁理士法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【弁理士】
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】松本 正秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 素
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0011491(US,A1)
【文献】国際公開第2021/179955(WO,A1)
【文献】特許第6931265(JP,B1)
【文献】特開2023-033901(JP,A)
【文献】特開2023-179941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0077720(US,A1)
【文献】特開2019-039120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/005
A42B 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する保持容器と、
被服に液体を滲出せしめる滲出管と、
液体を保持容器から滲出管に送る送液管とを備え、
当該滲出管の側面には滲出管の内部の液体が当該被服に滲出する複数の孔が備わり、
保持容器の液体はサイフォンの原理により被服に送られる被服。
【請求項2】
液体を保持する保持容器と、
帽子に液体を滲出せしめる滲出管と、
液体を保持容器から滲出管に送る送液管とを備え、
当該滲出管の側面には滲出管の内部の液体が当該帽子に滲出する複数の孔が備わり、
当該保持容器の液体はサイフォンの原理により帽子に送られる帽子。
【請求項3】
液体が水であり、
被服が冷却衣服であることを特徴とする
請求項1に記載の被服。
【請求項4】
液体が水であることを特徴とする請求項2に記載の帽子。
【請求項5】
保持容器の配置を鉛直方向に移動させることによって、
液体の送水量を調節することを特徴とする請求項1に記載の被服。
【請求項6】
保持容器の配置を鉛直方向に移動させることによって、
液体の送水量を調節することを特徴とする請求項2に記載の帽子。
【請求項7】
保持容器の形状を変更させることによって、
液体の送水量を調節することを特徴とする請求項1に記載の被服。
【請求項8】
保持容器の形状を変更させることによって、
液体の送水量を調節することを特徴とする請求項2に記載の帽子。
【請求項9】
繊維製品に液体を滲出させるための液体滲出機構であって、
液体を保持する保持容器と、
液体を滲出せしめる滲出管と、
液体を当該保持容器から滲出管に送る送液管とを備え、
当該滲出管の側面には滲出管の内部の液体が当該繊維製品へと滲出する複数の孔が備わり、
当該保持容器が、当該滲出管よりも高い位置に配置されることにより、当該保持容器の液体がサイフォンの原理により滲出管に送られ、滲出管より滲出することを特徴とする液体滲出機構。
【請求項10】
保持容器の鉛直方向高さを調整するための機構を有することを特徴とする請求項9に記載の液体滲出機構。
【請求項11】
保持容器が形状変更可能に構成されており、当該保持容器の形状を変更することにより、保持容器内からの液体の送液量が調節可能であることを特徴とする請求項9または10に記載の液体滲出機構。
【請求項12】
請求項9に記載の液体滲出機構を有する被服、帽子、ヘルメット、または寝具。
【請求項13】
液体が、水であることを特徴とする請求項9に記載の液体滲出機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水を送るチューブを被服、帽子等に張り巡らせ、チューブに水を流すことによって着衣者の身体を冷やす被服、帽子等に関する。また、液体を送るチューブを被服、帽子等に張り巡らせ、そのようなチューブに機能を付与した液体等を流すことによって、液体に付与された機能を着衣者に発揮せしめる被服、帽子等に関する。また、繊維製品に液体を滲出させるための液体滲出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
水を送るチューブを被服に張り巡らせ、チューブに水を流すことによって着衣者の身体を冷やす冷却衣服が知られている。また、冷却衣服に用いるチューブとして、中空糸膜を用いることが知られている。中空糸膜の壁面に備わる無数の微細孔から水が滲み出し、滲み出した水を冷却衣服が吸収する。着衣者の身体は、冷却衣服に吸収された水自体によって冷やされる。これに加えて、着衣者の身体は、水が気化する際の気化熱により冷やされる。また、冷却衣服のチューブに水を供給するために、水を蓄える容器と、容器からチューブに水を送るポンプを用いることが知られている。
【0003】
図7に特許文献1に記載された冷却衣服を示す。冷却衣服101は、液体供給管102を備える。冷却衣服101では、液体供給管102に液体を送るために、水容器104とポンプ105を用いる。水容器104とポンプ105は冷却衣服101の備えるポケット103に収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-90318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却衣服等、液体を巡らせる手段が必要な被服において、液体を巡らせる手段として、管とポンプを用いることが有効である。しかしポンプを用いる場合、ポンプを被服に直接取り付けたり、被服のポケットに収納させたりする必要がある。このため被服のデザイン性に制限が生じていた。ポンプとして、電動性ポンプと手動性ポンプのいずれも用いることができるところ、電動性ポンプを用いると、着衣者は管に水を送る作業をポンプに任せることができ便利である。このため、市場には電動性ポンプを用いた冷却衣服が多く流通する。しかし、電動性ポンプを用いる場合、さらに電力供給のためのバッテリーを備える必要が生じ、ポンプやバッテリーの重量や煩わしさが着衣者の快適性を妨げていた。この発明は、冷却衣服等、液体を巡らせる手段が必要な被服において、液体を巡らせる手段として、ポンプを用いない手段を提供することを課題とする。また、この発明は、繊維製品に液体を滲出させるための液体滲出機構、及び当該液体滲出機構を有する被服、帽子、ヘルメット又は寝具等に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)液体を保持する保持容器と、被服に液体を滲出せしめる滲出管と、液体を保持容器から滲出管に送る送液管とを備え、当該滲出管の側面には滲出管の内部の液体が当該被服に滲出する複数の孔が備わり、保持容器の液体はサイフォンの原理により被服に送られる被服によって課題を解決する。
(2)液体を保持する保持容器と、帽子に液体を滲出せしめる滲出管と、液体を保持容器から滲出管に送る送液管とを備え、当該滲出管の側面には滲出管の内部の液体が当該帽子に滲出する複数の孔が備わり、当該保持容器の液体はサイフォンの原理により帽子に送られる帽子によって課題を解決する。
(3)液体が水であり、被服が冷却衣服であることを特徴とする(1)に記載の被服によって課題を解決する。
(4)液体が水であることを特徴とする(2)に記載の帽子によって課題を解決する。
(5)保持容器の配置を鉛直方向に移動させることによって、液体の送水量を調節することを特徴とする(1)に記載の被服によって課題を解決する。
(6)保持容器の配置を鉛直方向に移動させることによって、液体の送水量を調節することを特徴とする(2)に記載の帽子。
(7)保持容器の形状を変更させることによって、液体の送水量を調節することを特徴とする(1)に記載の被服によって課題を解決する。
(8)保持容器の形状を変更させることによって、液体の送水量を調節することを特徴とする(2)に記載の帽子によって課題を解決する。
(9)繊維製品に液体を滲出させるための液体滲出機構であって、液体を保持する保持容器と、液体を滲出せしめる滲出管と、液体を当該保持容器から滲出管に送る送液管とを備え、当該滲出管の側面には滲出管の内部の液体が当該繊維製品へと滲出する複数の孔が備わり、当該保持容器が、当該滲出管よりも高い位置に配置されることにより、当該保持容器の液体がサイフォンの原理により滲出管に送られ、滲出管より滲出することを特徴とする液体滲出機構によって課題を解決する。
(10)保持容器の鉛直方向高さを調整するための機構を有することを特徴とする(9)に記載の液体滲出機構によって課題を解決する。
(11)保持容器が形状変更可能に構成されており、当該保持容器の形状を変更することにより、保持容器内からの液体の送液量が調節可能であることを特徴とする(9)または(10)に記載の液体滲出機構によって課題を解決する。
(12)(9)に記載の液体滲出機構を有する被服、帽子、ヘルメット、または寝具によって課題を解決する。
(13)液体が、水であることを特徴とする(9)に記載の液体滲出機構によって課題を解決する。
【0007】
液体は、水に限らず、アルコールや液化ガスも対象である。また、水等の液体に抗菌剤、防虫剤、フレグランス、といった機能成分を含ませた場合も対象である。
【0008】
被服は、上着や下着などの被服のみならず、靴、帽子など体を覆うもの全般を含み、本発明においてはいわゆる衣料用品のみならず、ヘルメット・サポーター・防具・防護具などを含むことが可能な概念である。
【0009】
水を保持する保持容器として例えばタンクを用いる。タンク内の水を、サイフォンの原理を用いて送水するために、送水先をタンクよりも低い位置に配置させる必要がある。また、スタート時には送水管を水で満たす必要がある。スタート時に送水管を水で満たすために、例えばタンクを手や手指で握りタンク内の水を送水管に送る作業が必要になる。このため、タンクは可とう性を備えたものであることが好ましい。
【0010】
滲出管の側面には微細孔が備わるが、送水管には微細孔は備わらない。従って、送水管にあっては内部の液体が滲み出ることはない。滲出管に送水された水は、滲出管の側面の微細孔から被服に向けて排出され気化する。この結果、送水先において水の吸水が促進され、タンクからの送水が促される。
【0011】
水を気化させるにありファンなどの送風機を使うことにより、気化のスピードを速めることができる。また気化にあたって、このようなファンを断続的使う、又は使わないことにより、気化のスピードを調整したり、速めないでおくこともできる。水の気化は比較的ゆっくりと進むため、水量が少なくても足り、小さなタンクで足りる。その結果、柔らかい小さなタンクを、例えば、ポロシャツの衿の取り付け位置の縫い代に沿って横方向に入れ込んだり、フードや帽子に取り付けることができる。これにより、ファッション性に影響を与えずにタンクを取り付けることができる。
【0012】
被服における保持容器の配置を鉛直方向に移動させる手段として、例えば、タンクを収納するポケットを被服に設け、ポケットを被服から着け外し自在にしてポケットの位置を移動させる手段がある。また、鉛直方向に高さの異なる複数のポケットを被服に予め設け、タンクを配置すべき高さに存するポケットに、タンクを入れ替える手段がある。また、被服にポケットを設けることなく、面ファスナー等の取付手段によりタンクを被服に直接取り付ける手段がある。
【0013】
保持容器の形状を変更させる手段として、例えば、タンク内の水が減ってきた際に、タンクを高さ方向に折り曲げてタンクの高さを低くして水面を上げる手段がある。また、タンクの下部に外部から圧力を加えてタンクの下部を押しつぶし、タンクの下部に水が入らないようにする手段がある。タンク内の水面を上げる手段としてタンクを交換するという手段によることなく、タンクの形状を変更させる手段によることで、着衣者の作業を簡易なものにできる。
【0014】
液体の滲出する対象を帽子とすることができる。帽子は、ヘルメットのような防護機能を有していることが可能であり、または純粋にヘルメットであることも可能である。液体を水とした場合、水の滲出対象を帽子またはヘルメットとすることにより人の頭を冷やすことができる。帽子・ヘルメットは人の頭を覆う程度の大きさでしかなく、また人の目に留まりやすい位置(人の頭)に置かれるものであることから、帽子・ヘルメットに液体を送る手段としてポンプを用いることは、使い勝手や外観の観点で好ましくない。滲出する液体を帽子・ヘルメットに送る手段として、ポンプを用いずにサイフォンの原理を用いる結果、液体の滲出対象を帽子・ヘルメットとすることができるのである。
【0015】
サイフォンの原理を用いて送水するために、帽子・ヘルメットにあっても、液体の滲出する対象が衣類の場合と同様、送水先を水を保持する保持容器(例えばタンク)よりも低い位置に配置させる必要がある。また、送水のスタート時には送水管を水で満たす必要がある。なお、後述の通り、ある程度短い距離であれば、水の凝集力により、水を保持する保持容器が送水先よりも低い位置にあっても水は移動する。
【0016】
人体に着用された際、帽子・ヘルメットは、シャツやパンツといった被服よりも重力方向上方に位置するため、帽子・ヘルメットに用いる保持容器(例えばタンク)を、シャツやパンツといった被服に送る水を貯える保持容器として共同利用することができる。特に、被服の首回りは被服の最も上に位置するため、被服の首回りを冷やすにあたり、保持容器の配置が困難であるため、有効である。この場合に、帽子・ヘルメットに設けた液体保持容器から延びる送水管を、被服に及ぶように延ばすことは言うまでもない。
【0017】
液体の滲出する対象を、マットレス、布団、毛布、ブランケット、シュラフといった少なくとも人との接触部分に繊維製品を有する寝具とすることも可能である。液体を水とした場合、水の滲出対象を寝具とすることにより人の身体のおおむね全体を冷やすことができる。寝具は睡眠中長時間使用するものであるから、ポンプを用いることは、電力消費量等の観点で好ましくない。滲出する液体を寝具に送る手段として、ポンプを用いずにサイフォンの原理を用いる結果、液体の滲出対象を寝具とすることができるのである。
【発明の効果】
【0018】
液体保持容器から被服等への送水を、サイフォンの原理を利用して行うことにより、例えば冷却衣服において、ポンプを用いる必要がなくなる。その結果、被服等にとって重要な要素であるデザインの観点での自由度が高まる。また、ポンプやバッテリーを装備する必要がなくなることから、例えば冷却衣服において、重量や嵩張りによる煩わしさをなくすことができる。寝具等、長時間使用するものにおいては、ポンプを長時間使用することによって発生するエネルギー消費を著しく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1から実施例4に係る被服を示す。
図2】実施例1から実施例4に係る被服及びタンクを示す。
図3】実施例1を示す。
図4】実施例2を示す。
図5】実施例3を示す。
図6】実施例4を示す。
図7】従来例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて詳細に説明する。実施例1から実施例4は、いずれも、被服の例としての冷却衣服に液体として水を滲出させる手段、つまり冷却衣服に水を行き渡らせるために、冷却衣服の着衣中に、冷却衣服におけるタンクの位置を変える手段の例である。
【0021】
図1に実施例1から実施例4に係る被服1を示す。被服1は、チューブユニット(10、20,30)を備える。チューブユニット10は被服の首周りに配置される。チューブユニット20とチューブユニット30は、被服の胴体部右側と胴体部左側に配置される。チューブユニット10,20及び30はいずれも、リボン状の布で構成される帯体(11、21、31)と、帯体に沿うように帯体に取り付けられた滲出管(13、23、33)を備える。帯体は吸水拡散性に優れた素材で成る。滲出管は、帯体と接する面積を広くするべく波型を描き、帯体に沿うよう帯体に縫製等で取り付けられている。滲出管の壁面には無数の微細孔が設けてあり、滲出管内の水は微細孔から滲み出て、帯体に吸収される。滲出管は、チューブユニット10では長さ方向に一本延び、チューブユニット20及びチューブユニット30では長さ方向に二本延びる。
【0022】
図2に、実施例1から実施例4に係る被服1を示す。タンク40の水は、送水管26とジョイント22を介してチューブユニット20上の滲出管23に至る。また、送水管27とジョイント32を介してチューブユニット30上の滲出管33に至る。図2に示すタンク40の水の水面はチューブユニット10よりもある程度下方にある。このため、タンク40の水をチューブユニット10上の滲出管13に送ることは困難である。このため、チューブユニット10に水をもたらすタンクは別途、首回りのフチ又は帽子に備えたものを用いる(図示しない)。タンク40内には水41が納められている。タンク40は、実施例1から実施例4に示す手段により被服に備えられる。
【0023】
タンクは可撓性を備えた素材で成る。使用開始時は、まず、タンク40を手又は手指で掴み押ししてタンク内の水41を送水管26及び送水管27に送り出す。送りだされた水は各ジョイント(22、32)を介して滲出管(23、33)の中を水で満たす。これにより水は、サイフォンの原理により、タンク内の水41の水面よりも低い位置に水が流れる。なお、水は、タンク内の水41の水面よりも少し高い位置であっても、水の凝集力により少し流れる。サイフォン効果、特に使用開始時における効果を高めるために、送水管26,27の一部に逆止弁・一方向弁を設けることも考えられる。
【実施例1】
【0024】
実施例1は、冷却衣服の着衣中に冷却衣服に水を行き渡らせるために、タンクを収めるポケットの位置を変える例である。実施例1を図3に示す。図3ではチューブユニットと管の記載を省略している。
【0025】
図3(a)に示す通り、タンク40はポケット50に収められている。ポケット口はポケットの上方にある。ポケットは、マジックテープ、ボタン(あるいはボタンホール)又はホックにより、冷却衣服の外側に取り付けられる。タンクを冷却衣服の外側に取り付けることにより、タンクを手又は手指で掴み押す作業をしやすい。
【0026】
冷却衣服の適切な位置に、マジックテープ、ボタン、ホック等が設けてあり、冷却衣服の適切な位置にポケット50を付け替えることができる。図3(b)に示すポケット50は、首周りのような被服の高い位置に配置されたチューブユニットに水を行きわたらせる際にタンクを収納するのに適している。内径2mmのシリコン製のチューブを用いた場合、水は、タンク内の水面よりも70mm上方まで容易に巡った。タンクをさらに上方に移動させると、水面のよりも100mm上方では水の巡りが不充分となり、140mmを超えると水は全く巡らなくなった。
【実施例2】
【0027】
実施例2は、冷却衣服の着衣中に冷却衣服に水を行き渡らせるために、タンクを折り曲げてタンクの形状を変化させる例である。実施例2を図4に示す。図4ではチューブユニットと管の記載を省略している。
【0028】
図4(a)に示す通り、タンク45はポケット50に収められている。ポケット口はポケットの上方にある。実施例2で用いるタンク45は、図4(b)に示す通り、折線46で折り曲げることができ、折り曲げることによりタンク45は高さが約半分になる。タンク内の水が減少するとタンク内の水面が下がり被服に水が充分に行き渡らなくなるところ、水面が下がった際にタンクを折り曲げて高さを半分にし、後述の通り容器を比較的高い位置に取り付けることにより、タンクの水面を、水面が下がる前と同様の位置に維持することができる。タンクを収納するポケットの位置は、送水先の高さに応じて選択されるため、タンクの水面を、水面が下がる前と同様の位置に維持することには、意義がある。
【0029】
図4(c-1)から(c-6)に、タンクを、ポケット内に設けた面ファスナーで被服に取り付ける例を示す。(c-1)に示す通りポケット50の内部には面ファスナー53が設けてある。面ファスナー53は、高さ方向に延びて設けられている。図では、説明のために、ポケット内の面ファスナーを実線で示す。タンク45の背面にも面ファスナーがとりつけてあり、(c-2)に示す通り、水41を入れたタンク45は、ポケット内で、面ファスナー53により被服に取り付けてある。タンク内の水は、チューブを介して被服の各所に送られる結果減少し、(c-3)に示す通り水面の位置が下がる。タンク45を折り曲げてタンクの高さを約半分にし、(c-4)に示す通り、タンクの位置を少し上方に移動させる。その結果タンク内の水面の高さは(c-2)に示す当初のものとほぼ同じになる。その後タンクの水は、チューブを介して被服の各所にさらに送られ、その結果(c-5)に示す通り、水面は下がる。(c-6)に示す通り、タンクの位置をさらに上方に移動させることにより、タンク内の水面の高さは、再度、(c-2)に示す当初のものと同様になる。
【0030】
図4(d-1)から(d-6)に、タンクを、ポケット内に設けたホックで被服に取り付ける例を示す。(d-1)に示す通りポケット50の内部にはホック53が設けてある。ホック53は、高さ方向に、順に3つ並んでいる。図では、説明のために、ポケット内のホックを実線で示す。タンク45の背面にもホックがとりつけてあり、(d-2)に示す通り、水41を入れたタンク45は、ポケット内で、ホック53により被服に取り付けてある。タンク内の水は、チューブを介して被服の各所に送られる結果減少し、(d-3)に示す通り水面の位置が下がる。タンク45を折り曲げてタンクの高さを約半分にし、(d-4)に示す通り、タンクの位置を、ホック一つ分上方に移動させる。その結果タンク内の水面の高さは(d-2)に示す当初のものとほぼ同じになる。その後タンクの水は、チューブを介して被服の各所にさらに送られ、その結果(d-5)に示す通り、水面は下がる。(d-6)に示す通り、タンクの位置を、さらにホック一つ分上方に移動させることにより、タンク内の水面の高さは、再度、(d-2)に示す当初のものと同様になる。
【0031】
図4の(c-1)や(d-1)に示すように、面ファスナーやホックは、ポケットの外側ではなくポケットの内側に設ける。なぜならば、ポケットの外側に設けた場合デザイン上の制約が生じるためである。また、特に面ファスナーにあってはポケットの外側に設けると、着衣中に面ファスナーが周囲とくっついてしまう等の支障が生じるためである。タンク内の水の水面の高さを維持するためには、タンクを折り曲げることなく、タンクを元の大きさのままで位置を高くすることも考えられるところ、タンクの大きさが元のままの場合、タンクはポケットからはみ出してしまう。このため、タンクを折り曲げて高さを低くして、タンクの位置を高くすることには意義がある。
【実施例3】
【0032】
実施例3は、冷却衣服の着衣中に冷却衣服に水を行き渡らせるために、衣服に上下方向の異なる高さにポケットを設ける例であり、ポケット口が側方にある。実施例3を図5に示す。図5ではチューブユニットと管の記載を省略している。
【0033】
実施例3では、冷却衣服1の左右それぞれの脇に、ポケット51が縦方向に並んで配置される。ポケット口55は、ポケット51の側面に設けられる。各ポケットの下方は、ポケット内のタンク等の落下を防止するために、部分的にポケット口が、縫い留める、等の手段により閉じられている。
【実施例4】
【0034】
実施例4は、冷却衣服の着衣中に冷却衣服に水を行き渡らせるために、ポケットの側方の開口にファスナーを取り付けて、ファスナーの開閉によりチューブを変形させる例である。実施例4を図6に示す。図6ではチューブユニットと管の記載を省略している。
【0035】
ポケット57は、タンク50が挿入された際にタンク50との間にすき間が生じない程度の、タンクの外形と同様の大きさと形状で成る。ポケット57の側面に設けられたポケット口58には、ファスナー59が備えてあり、ポケットの下方からファスナーを閉じると、ファスナーが綴じることによって狭くなったポケットの形状変化に伴い、ポケット内のタンク50が、下方からポケットに押しつぶされて変形する。この結果、タンク内の水面が上昇する。
【符号の説明】
【0036】
1 被服
10 チューブユニット
11 帯体
12 ジョイント
13 滲出管
20 チューブユニット
21 帯体
22 ジョイント
23 滲出管
25,26、27 送水管
30 チューブユニット
31 帯体
32 ジョイント
33 滲出管
40 タンク
41 水
45 タンク
46 折線
50、51 ポケット
53 面ファスナー
54 ホック
55 ポケット口
58 ポケット口
59 ファスナー
101 冷却衣服
102 液体供給管
103 ポケット
104 水容器
105 ポンプ
【要約】
【課題】
冷却衣服等の被服等に液体を巡らせる手段が必要な被服等において、液体を巡らせる手段として、ポンプを用いない手段を提供することを課題とする。
【解決手段】
液体を保持する保持容器と、当該液体を被服等に送る送水管とを備え、
当該送水管の側面には当該送水管の内部の液体が滲出する複数の孔が備わり、
当該保持容器内部の液体はサイフォンの原理により当該被服に送水される被服等によって課題を解決する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7