(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】紙筒
(51)【国際特許分類】
A47G 19/22 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A47G19/22 N
(21)【出願番号】P 2018172111
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-09-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2018122444
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 洋
(72)【発明者】
【氏名】兼房 朗
(72)【発明者】
【氏名】濱田 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡井 久幸
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-133840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる内層と、第二の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる外層とを有し、
前記第一および第二の帯状原紙が耐水面と非耐水面とを備え、
内面が前記第一の帯状原紙の耐水面、外面が前記第二の帯状原紙の耐水面から形成されており、
前記第一および第二の帯状原紙の耐水面が、いずれも塗工層であり、
前記第一の帯状原紙と前記第二の帯状原紙
の非耐水面同士が、水溶性または水分散性の接着剤で接着されていることを特徴とする紙筒。
【請求項2】
第一の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる内層と、第二の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる外層とを有し、
前記第一および第二の帯状原紙が耐水面と非耐水面とを備え、
内面が前記第一の帯状原紙の耐水面、外面が前記第二の帯状原紙の耐水面から形成されており、
前記第一および第二の帯状原紙の耐水面が、いずれも塗工層であり、
内層と外層との間に、第三の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる中間層を有し、
前記第三の帯状原紙が、両面が非耐水面であり
、
前記第一の帯状原紙と前記第三の帯状原紙の非耐水面同士、および前記第二の帯状原紙と前記第三の帯状原紙の非耐水面同士が
、水溶性または水分散性の接着剤で接着されていることを特徴とす
る紙筒。
【請求項3】
紙筒を構成する全ての帯状原紙が、同一幅を有し、前記紙筒の軸方向に対して同一角度で、帯幅方向にずれた状態で巻回されていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙筒。
【請求項4】
前記耐水面が、着色された耐水層であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紙筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙筒、特に耐水性に優れた紙筒に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、安価で成形が容易なため、様々な製品の材料として広く用いられており、年間3億トン以上のプラスチック製品が生産されている。
プラスチック製品の多くは、適切に処分されているが、その一部は、管理不十分や不法投棄により、環境中にごみとして流出してしまい、最終的に海に到達する。海洋中に流出するプラスチックごみの量は、年間800万トン以上にのぼると推測されている。これらのプラスチックごみの多くは非生分解性であるため、そのほとんどが海洋中に蓄積され、2050年には、海洋中のプラスチック総量は魚類の総量(重量ベース)を上回ると予測されている。
【0003】
プラスチックごみによる環境破壊を防ぐための動きが始まっており、プラスチック製使い捨て製品を、環境への負荷が小さい材料で代替することが求められている。中でもプラスチック製のストローは、1日に米国で5億本、世界で10億本以上が消費されているが、海鳥や海亀の誤飲による死亡例が報告されており、環境保護団体等が、プラスチック製ストローを使用しないように呼びかける運動を始めている。
【0004】
プラスチック製ストローの、環境への負荷が小さい代替材料としては、生分解性プラスチックと並んで紙が注目されており、例えば、特許文献1、2には、紙製のストローが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-133840号公報
【文献】特開2009-233348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
環境への負荷が小さく、かつ、耐水性に優れた紙筒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.第一の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる内層と、第二の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる外層とを有し、
前記第一および第二の帯状原紙が耐水面と非耐水面とを備え、
内面が前記第一の帯状原紙の耐水面、外面が前記第二の帯状原紙の耐水面から形成されていることを特徴とする紙筒。
2.前記第一の帯状原紙と前記第二の帯状原紙とが、接着剤で接着されていることを特徴とする1.に記載の紙筒。
3.内層と外層との間に、第三の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる中間層を有し、
前記第三の帯状原紙が、両面が非耐水面であり、各層間が接着剤で接着されていることを特徴とする1.に記載の紙筒。
4.紙筒を構成する全ての帯状原紙が、同一幅を有し、前記紙筒の軸方向に対して同一角度で、帯幅方向にずれた状態で巻回されていることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の紙筒。
5.前記耐水面が、着色された耐水層であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の紙筒。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙筒は、紙を主体としており、環境への負荷が小さい。また、本発明の紙筒は、紙を主体とするが耐水性に優れており、水と接触する用途で使用される紙筒に好適に利用することができる。耐水面が着色された耐水層からなる帯状原紙を用いた紙筒は、耐水層の欠陥を発見しやすいため、不良品の発生を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施態様である紙筒の部分分解図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<紙筒>
本発明の紙筒は、第一の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる内層と、第二の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる外層とを有する。本発明の紙筒に使用する第一および第二の帯状原紙は、耐水面と非耐水面とを備えており、紙筒の内面が第一の帯状原紙の耐水面、紙筒の外面が第二の帯状原紙の耐水面から形成されている。
【0011】
本発明の一実施態様である紙筒の部分分解図を、
図1に示す。
一実施態様である紙筒1は、内層11と外層12とを有し、内層11は第一の帯状原紙110が螺旋状に巻回されてなり、外層12は第二の帯状原紙120が螺旋状に巻回されてなる。第一の帯状原紙110は耐水面111と非耐水面112を、第二の帯状原紙120は耐水面121と非耐水面122を備えている。紙筒1は、その内面が第一の帯状原紙110の耐水面111、外面が第二の帯状原紙120の耐水面121から形成されている。また、第一の帯状原紙110の非耐水面112と、第二の帯状原紙120の非耐水面122とは、接着剤(図示せず)により、貼り合わされている。
【0012】
本発明の紙筒は、少なくとも内層と外層を有していればよく、内層と外層に加えて1層以上の中間層を有する3層以上の構成とすることもできる。ただし、層数が多くなると、製造工程が煩雑となる、高コストとなる、欠陥が発生しやすくなる、といった問題があるため、内層と外層の2層、または、両面が非耐水面である第三の帯状原紙が螺旋状に巻回されてなる1層の中間層を加えた3層であることが好ましい。
【0013】
本発明で使用する第一及び第二の帯状原紙は、耐水面と非耐水面とを備えており、また、3層以上の構成とする場合は、中間層を形成するための1枚以上の帯状原紙は、両面が非耐水面である。そのため、本発明の紙筒を構成する各層は、非耐水面同士が接着剤で貼り合わされており、各層が強固に接着している。また、本発明の紙筒は、内面が第一の帯状原紙の耐水面、外面が第二の帯状原紙の耐水面から形成されており、耐水性に優れている。
本発明の紙筒は、各層間での剥離が生じにくく、耐水性に優れているため、水と接触する用途に利用することができ、例えば、ストロー、マドラー等として好適に利用することができる。
【0014】
帯状原紙を螺旋状に巻回して紙筒の一層を形成するに際し、帯状原紙の幅方向における重複幅(
図1におけるd
1、d
2)が狭いほうが段差の小さな紙筒を形成できる点から好ましい。具体的には、重複幅は、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。
ここで、紙筒の一層を、2本以上の帯状原紙で形成することは、1本の帯状原紙を螺旋状に巻回して形成した紙筒において、帯状原紙を長さ方向に沿って2本以上に切断したことと同義であり、本発明の技術的思想の範囲内である。
【0015】
本発明の紙筒において、各層の巻き方向は、同一方向(S巻き、または、Z巻き)であってもよく、異なる方向であってもよい。ただし、隣接する層を異なる方向(S巻きとZ巻き)に巻回すと、ある層を形成する帯状原紙の幅方向の接合部と、隣接する層を形成する帯状原紙の幅方向の接合部とが周期的に重複し、この重複部分に隙間が生じやすくなるため、同一方向に巻回すことが好ましい。
【0016】
帯状原紙を同一方向に巻く場合は、隣接する層を形成する帯状原紙の幅方向の接合部が重複しないように、各層を形成する帯状原紙が、同一幅を有し、紙筒の軸方向に対して同一角度で、帯幅方向にずれた状態で巻回されていることが好ましい。隣接する層を形成する帯状原紙のずれ幅(
図1におけるD)は、帯幅方向において、帯状原紙の幅の10%以上であることが好ましい。帯状原紙の幅の10%以上ずらして巻回して貼り合わせることにより、強固に一体化した紙筒を製造することができる。ずれ幅は、帯状原紙の幅の25%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、50%であることが最も好ましい。なお、ずれ幅の最大値は、帯状原紙の幅の50%である。
【0017】
本発明の紙筒の直径は特に制限されず、その用途に応じて様々な直径とすることができる。例えば、本発明の紙筒は耐水性に優れているため、内径3mm以上15mm以下の紙筒を、紙製ストローとして好適に利用することができる。
【0018】
<帯状原紙・紙筒用原紙>
本発明において、帯状原紙は、紙筒用原紙を所定の幅に裁断し、帯状とすることにより製造される。帯状原紙の幅は特に制限されず、製造する紙筒の径に応じて適宜調整することができるが、通常、8mm以上40mm以下程度である。
第一および第二の帯状原紙を形成するための紙筒用原紙は、耐水面と非耐水面とを備えている。耐水面と非耐水面とを備える紙筒用原紙としては、特に制限することなく使用することができ、例えば、基紙上に、耐水性を有する樹脂を塗工、ラミネート等して耐水層を形成したものを用いることができる。また、中間層を形成するための両面が非耐水面である第三の帯状原紙は、耐水面を設けない基紙を裁断して製造することができる。
【0019】
ここで、本発明において、耐水面とは、JIS P8140に規定されるコッブ法(接触時間30秒)により得られる吸水度の値が5g/m2以下である面をいい、非耐水面とはこの値が5g/m2より大きい面をいう。
耐水面は、この値が4g/m2以下であることがより好ましく、3g/m2以下であることがさらに好ましい。
非耐水面は、接着性の点から、この値が6g/m2より大きいことが好ましく、7g/m2より大きいことがより好ましい。
【0020】
・基紙
基紙は、パルプ、填料、各種助剤等からなる。
本発明の紙筒を、ストローやマドラー等の飲食品や口に接触する用途(以下、食器用途という)に使用する場合、原料として、食品添加物として認可を受けている、またはFDA認証取得済み等、食品安全性に適合したものを使用することが好ましい。
【0021】
パルプとしては、針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、サルファイトパルプ(SP)等の木材の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、リファイナグランドパルプ(RGP)、ストーングランドパルプ(SGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の木材の機械パルプ、ケナフ、バガス、竹、麻、ワラなどから得られた非木材パルプ、古紙を原料とし、脱墨工程にて古紙に含まれるインキを除去した古紙パルプなど、公知のパルプを適宜配合して用いることが可能である。
ただし、本発明の紙筒を、食器用途に使用する場合、異物混入が発生し難いLBKP、NBKP等の化学パルプが好ましく、また、古紙パルプの配合量が少ないことが好ましい。具体的には、化学パルプの配合量が80%以上であることが好ましく、化学パルプの配合量が100%であることが特に好ましい。
【0022】
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどの無機填料、尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料等の公知の填料を使用することができる。なお、填料は、必須材料ではなく、使用しなくてもよい。
【0023】
各種助剤としては、ロジン、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)などのサイズ剤、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの乾燥紙力増強剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリビニルアミン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂などの湿潤紙力増強剤、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、嵩高剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が例示可能であり、必要に応じて適宜選択して使用可能である。
【0024】
・耐水層
耐水層は、上記した耐水性能を有する耐水面を得られるものであれば特に制限されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、これらの誘導体であるポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系、シリコーン系、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、セルロース系、ウレタン系等の耐水性樹脂を含む塗料を使用することができる。これらの中で、生分解性である耐水性樹脂が、環境への点から好ましい。また、白色の基紙上に設ける耐水層が、透明または白色であると、ピンホール等の欠陥が発見しにくいため、耐水層は、顔料、染料等により、白色以外の色に着色されていることが好ましい。
耐水層を形成する塗料は、樹脂以外にも、顔料、染料、硬化剤、レベリング剤、溶剤等を含むことができる。溶媒を含む場合は、溶媒が水であることが、安全性に優れるため好ましい。
本発明の紙筒を、食器用途として使用する場合、食品添加物として認可を受けている、またはFDA認証取得済み等、食品安全性に適合したものを使用することが好ましい。
【0025】
<抄紙>
基紙の製造(抄紙)方法、抄紙機の型式は特に限定されるものではなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公知の製造(抄紙)方法、抄紙機が選択可能である。
また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよく、酸性領域で抄紙した後、紙層の表面にアルカリ性薬剤を塗布してもよい。
【0026】
基紙の坪量は、50g/m2以上200g/m2以下であることが、剛直な紙筒を形成する点から好ましい。また、内層、外層を形成する基紙の坪量は同じであってもよく、異なっていてもよい。ただし、中間層を設ける場合は、中間層を形成する基紙の坪量が、内層、外層を形成する基紙の坪量より大きいことが、巻き加工性の点から好ましい。
【0027】
<耐水層の形成>
耐水層の形成方法は、特に限定されるものではなく、耐水層を形成する樹脂の種類、粘度、溶媒の有無等に応じて、ブレードコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、グラビアコーター等による塗工方法、押出しラミネート、ウェットラミネート、ドライラミネート等の公知のラミネート方法等により、形成することができる。
【0028】
耐水層の塗工量(乾燥重量)は、上記した耐水性能を有する耐水面を得られるものであれば特に制限されないが、1g/m
2以上25g/m
2以下であることが好ましい。塗工量が1g/m
2未満では耐水性が不足する場合がある。塗工量が25g/m
2を超えると、帯状原紙を螺旋状に巻回す際の幅方向における重複部分(
図1におけるd
1、d
2)が剥がれやすくなる。塗工量の下限は、1.2g/m
2以上であることがより好ましく、1.5g/m
2以上であることがさらに好ましく、2g/m
2以上であることが最も好ましい。塗工量の上限は、15g/m
2以下であることがより好ましく、10g/m
2以下であることがさらに好ましく、6g/m
2以下であることが最も好ましい。
【0029】
<接着剤>
本発明の紙筒は、各層間が接着剤で貼り合わされてなる。この接着剤としては、公知の接着剤を特に制限することなく使用することができる。例えば、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、澱粉系、アクリル系、エポキシ系等の接着剤を使用することができる。これらの中で、水溶性、または、水分散性の接着剤が、製造時の環境負荷が小さく、また、食器用途として安心して使用できるため好ましい。さらに、生分解性である接着剤が、環境への負荷が小さい点から好ましい。
本発明の紙筒を、食器用途として使用する場合、食品添加物として認可を受けている、またはFDA認証取得済み等、食品安全性に適合した接着剤を使用することが好ましい。
【0030】
<紙筒の製造方法>
本発明の紙筒は、公知の方法で製造することができる。すなわち、紙筒用原紙を裁断して帯状原紙とし、帯状原紙をマンドレル(鉄芯)にスパイラル巻きしながら接着剤で貼り付けることにより、本発明の紙筒を製造することができる。接着剤は、ロール状の帯状原紙を繰り出してマンドレルに巻きつけるまでの間に、帯状原紙の非耐水面に塗布することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
「実施例1」
坪量104g/m2の基紙に、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、L716)を16g/m2でラミネートし、紙筒用原紙を得た。
この紙筒用原紙を、幅16mmに裁断して、ポリエチレン側が耐水面、基紙側が非耐水面である第一および第二の帯状原紙を得た。なお、JIS P8140に規定されるコッブ法(接触時間30秒)による吸水度は、耐水面が0.14g/m2、非耐水面が23.3g/m2であった。
【0032】
直径6mmのマンドレルに、第一の帯状原紙を耐水面が内側となるように螺旋状に巻き付け、内層を形成した。第二の帯状原紙の非耐水面にポリ酢酸ビニル系接着剤を塗工した後、内層上に非耐水面を内側として螺旋状に巻き付けて外層を形成し、紙筒を得た。
【0033】
「実施例2」
ポリエチレンに変えて、耐水ニス(櫻宮化学社製、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む)を5.1g/m2で塗工した面を耐水面とした紙筒用原紙を使用した以外は、実施例1と同様にして紙筒を得た。この紙筒用原紙のJIS P8140に規定されるコッブ法(接触時間30秒)による吸水度は、耐水面が1.55g/m2、非耐水面が18.9g/m2であった。
【0034】
「比較例1」
第一の帯状原紙の非耐水面を内側として内層を形成した以外は、実施例1と同様にして紙筒を製造した。
「比較例2」
第二の帯状原紙の耐水面を内側として内層を形成した以外は、実施例1と同様にして紙筒を製造した。
【0035】
・耐水性評価
実施例、比較例で製造した紙筒を常温の水を入れたコップに30分浸漬し、浸漬部分で剥離の有無を目視で確認した。
実施例1、2で製造した紙筒は、30分浸漬した後も、内層と外層との間で剥離が生じなかった。
それに対し、比較例1、2で製造した紙筒は、紙筒先端の巻き部分で剥離が生じ、また、水に浸した部分で巻きに緩みが生じた。これは、比較例1、2で製造した紙筒は、内面または外面の非耐水面から水が浸透し、さらに、耐水面と非耐水面の間での接着力に劣るため、内層と外層との間で剥離が生じたと考えられる。
【符号の説明】
【0036】
1 紙筒
11 内層
110 第一の帯状原紙
111 第一の帯状原紙の耐水面
112 第一の帯状原紙の非耐水面
12 外層
120 第二の帯状原紙
121 第二の帯状原紙の耐水面
122 第二の帯状原紙の非耐水面