(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】紙幣搬送方向切替機構及びこれを用いた還流式紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/18 20190101AFI20241008BHJP
B65H 29/60 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G07D11/18
B65H29/60 C
(21)【出願番号】P 2020118186
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390010386
【氏名又は名称】NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬一
(72)【発明者】
【氏名】田川 隆昌
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-054811(JP,A)
【文献】特開2016-006581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00-13/00
G07F 19/00
B65H 29/58-29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第3搬送路の接続分岐点に設けられ、紙幣の搬送経路を切り替える紙幣搬送方向切替機構であって、
第1回転軸を中心に回転して前記第1搬送路の接続先を前記第2搬送路又は前記第3搬送路に切り換える第1ゲート部材と、
第2回転軸を中心に回転して前記第2搬送路の接続先を前記第1搬送路又は前記第3搬送路に切り換える第2ゲート部材と、
第3回転軸を中心に回転して前記第3搬送路の接続先を前記第1搬送路又は前記第2搬送路に切り換える第3ゲート部材と、
駆動源からの駆動力を前記第1~第3ゲート部材に伝達するギヤ機構とを備え、
前記第1~第3ゲート部材が前記ギヤ機構を介して相互に連動することにより、前記第1及び第2搬送路間の連通を許可する第1搬送モード、前記第1及び第3搬送路間の連通を許可する第2搬送モード、及び前記第2及び第3搬送路間の連通を許可する第3搬送モードのいずれか一つを選択し、
前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第1搬送路との接続及び前記第3搬送路と前記第2搬送路との接続の両方を遮断するニュートラル位置にあるとき、前記第1ゲート部材が前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続を許可し且つ前記第1搬送路と前記第3搬送路との接続を遮断し、且つ、前記第2ゲート部材が前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続を許可し且つ前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続を遮断することにより、前記第1搬送路と前記第2搬送路との間の紙幣の往復走行を許可し、
前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第1搬送路との接続を許可する第1位置に移動したとき、前記第1ゲート部材が前記第1搬送路と前記第3搬送路との接続を許可し且つ前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続を遮断することにより、前記第1搬送路と前記第3搬送路との間の紙幣の往復走行を許可し、
前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第2搬送路との接続を許可する第2位置に移動したとき、前記第2ゲート部材が前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続を許可し且つ前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続を遮断することにより、前記第2搬送路と前記第3搬送路との間の紙幣の往復走行を許可することを特徴とする紙幣搬送方向切替機構。
【請求項2】
前記ギヤ機構は、前記第1~第3ゲート部材にそれぞれ固定された第1~第3ギヤを含み、前記第1~第3ギヤのいずれか一つは駆動ギヤであり、残りの2つのギヤは前記駆動ギヤに連動する従動ギヤである、請求項1に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項3】
前記第1及び第2ギヤは前記第3ギヤと噛み合っている、請求項2に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項4】
前記駆動源はステッピングモーターである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項5】
前記第3ゲート部材が前記第1位置に移動したとき、前記第2ゲート部材は前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続及び前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続の両方を遮断する位置に移動し、
前記第3ゲート部材が前記第2位置に移動したとき、前記第1ゲート部材は前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続及び前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続の両方を遮断する位置に移動する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項6】
前記第1搬送路と前記第2搬送路とを連通する第1連通路と、
前記第1搬送路と前記第3搬送路とを連通する第2連通路と、
前記第2搬送路と前記第3搬送路とを連通する第3連通路とを有し、
前記第3ゲート部材は、
前記ニュートラル位置のときに前記第2連通路及び前記第3連通路の両方を遮断し、
前記第1位置のときに前記第2連通路を開放し且つ前記第3連通路を遮断し、
前記第2位置のときに前記第3連通路を開放し且つ前記第2連通路を遮断し、
前記第1ゲート部材は、
前記第3ゲート部材が前記ニュートラル位置のときに前記第1連通路を開放し且つ前記第2連通路を遮断し、
前記第3ゲート部材が前記第1位置のときに前記第1連通路を遮断し且つ前記第2連通路を開放し、
前記第3ゲート部材が前記第2位置のときに前記第1連通路及び前記第2連通路の両方を遮断し、
前記第2ゲート部材は、
前記第3ゲート部材が前記ニュートラル位置のときに前記第1連通路を開放し且つ前記第3連通路を遮断し、
前記第3ゲート部材が前記第1位置のときに前記第1連通路及び前記第3連通路の両方を遮断し、
前記第3ゲート部材が前記第2位置のときに前記第1連通路を遮断し且つ前記第3連通路を開放する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項7】
前記第1搬送路を構成する第1搬送ベルトと、
前記第2搬送路を構成する第2搬送ベルトと、
前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトの両方と対向して紙幣を挟圧保持する第3搬送ベルトを有し、
前記第1搬送路は前記第1搬送ベルトと前記第3搬送ベルトの一部によって構成され、
前記第2搬送路は前記第2搬送ベルトと前記第3搬送ベルトの他の一部によって構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項8】
前記第1及び第2搬送路は、垂直方向に延設された主搬送路を構成しており、前記第3搬送路は、前記主搬送路の途中から分岐して略水平方向に延設された分岐搬送路を構成している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の紙幣搬送方向切替機構。
【請求項9】
積層配置された複数の紙幣処理ユニットを備え、
前記複数の紙幣処理ユニットの各々は、
前記複数の紙幣処理ユニット間を接続する主搬送路と、
前記主搬送路から分岐して各紙幣処理ユニット内の機能部に紙幣を搬送する分岐搬送路を有し、
前記主搬送路と前記分岐搬送路との接続分岐点には請求項1乃至8のいずれか一項に記載の紙幣搬送方向切替機構が設けられていることを特徴とする還流式紙幣処理装置。
【請求項10】
積層配置された複数の紙幣処理ユニットを備え、
前記複数の紙幣処理ユニットは、
紙幣入出金口及び紙幣識別部を有する入出金ユニットと、
第1金種の紙幣を収納する第1還流式紙幣収納部を有する第1紙幣収納ユニットと、
第2金種の紙幣を収納する第2還流式紙幣収納部を有する第2紙幣収納ユニットと、
紙幣を保管する金庫部を有する金庫ユニットと、
紙幣を一時的にプールするプール部を有する一時プールユニットを含み、
前記複数の紙幣処理ユニットの各々は、
前記複数の紙幣処理ユニット間を接続する主搬送路と、
前記主搬送路から分岐して各紙幣処理ユニット内の機能部に紙幣を搬送する分岐搬送路を有し、
前記主搬送路と前記分岐搬送路との接続分岐点には紙幣搬送方向切替機構が設けられており、
前記紙幣搬送方向切替機構は、
第1回転軸を中心に回転して第1搬送路の接続先を第2搬送路又は第3搬送路に切り換える第1ゲート部材と、
第2回転軸を中心に回転して前記第2搬送路の接続先を前記第1搬送路又は前記第3搬送路に切り換える第2ゲート部材と、
第3回転軸を中心に回転して前記第3搬送路の接続先を前記第1搬送路又は前記第2搬送路に切り換える第3ゲート部材と、
駆動源からの駆動力を前記第1~第3ゲート部材に伝達するギヤ機構とを備え、
前記第1~第3ゲート部材が前記ギヤ機構を介して相互に連動することにより、前記第1及び第2搬送路間の連通を許可する第1搬送モード、前記第1及び第3搬送路間の連通を許可する第2搬送モード、及び前記第2及び第3搬送路間の連通を許可する第3搬送モードのいずれか一つを選択することを特徴とする還流式紙幣処理装置。
【請求項11】
前記ギヤ機構は、前記第1~第3ゲート部材にそれぞれ固定された第1~第3ギヤを含み、前記第1~第3ギヤのいずれか一つは駆動ギヤであり、残りの2つのギヤは前記駆動ギヤに連動する従動ギヤである、請求項10に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項12】
前記第1及び第2ギヤは前記第3ギヤと噛み合っている、請求項11に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項13】
前記駆動源はステッピングモーターである、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項14】
前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第1搬送路との接続及び前記第3搬送路と前記第2搬送路との接続の両方を遮断するニュートラル位置にあるとき、前記第1ゲート部材が前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続を許可し且つ前記第1搬送路と前記第3搬送路との接続を遮断し、且つ、前記第2ゲート部材が前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続を許可し且つ前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続を遮断することにより、前記第1搬送路と前記第2搬送路との間の紙幣の往復走行を許可し、
前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第1搬送路との接続を許可する第1位置に移動したとき、前記第1ゲート部材が前記第1搬送路と前記第3搬送路との接続を許可し且つ前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続を遮断することにより、前記第1搬送路と前記第3搬送路との間の紙幣の往復走行を許可し、
前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第2搬送路との接続を許可する第2位置に移動したとき、前記第2ゲート部材が前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続を許可し且つ前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続を遮断することにより、前記第2搬送路と前記第3搬送路との間の紙幣の往復走行を許可する、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項15】
前記第3ゲート部材が前記第1位置に移動したとき、前記第2ゲート部材は前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続及び前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続の両方を遮断する位置に移動し、
前記第3ゲート部材が前記第2位置に移動したとき、前記第1ゲート部材は前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続及び前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続の両方を遮断する位置に移動する、
請求項14に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項16】
前記第1搬送路と前記第2搬送路とを連通する第1連通路と、
前記第1搬送路と前記第3搬送路とを連通する第2連通路と、
前記第2搬送路と前記第3搬送路とを連通する第3連通路とを有し、
前記第3ゲート部材は、
前記ニュートラル位置のときに前記第2連通路及び前記第3連通路の両方を遮断し、
前記第1位置のときに前記第2連通路を開放し且つ前記第3連通路を遮断し、
前記第2位置のときに前記第3連通路を開放し且つ前記第2連通路を遮断し、
前記第1ゲート部材は、
前記第3ゲート部材が前記ニュートラル位置のときに前記第1連通路を開放し且つ前記第2連通路を遮断し、
前記第3ゲート部材が前記第1位置のときに前記第1連通路を遮断し且つ前記第2連通路を開放し、
前記第3ゲート部材が前記第2位置のときに前記第1連通路及び前記第2連通路の両方を遮断し、
前記第2ゲート部材は、
前記第3ゲート部材が前記ニュートラル位置のときに前記第1連通路を開放し且つ前記第3連通路を遮断し、
前記第3ゲート部材が前記第1位置のときに前記第1連通路及び前記第3連通路の両方を遮断し、
前記第3ゲート部材が前記第2位置のときに前記第1連通路を遮断し且つ前記第3連通路を開放する、請求項14又は15に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項17】
前記第1搬送路を構成する第1搬送ベルトと、
前記第2搬送路を構成する第2搬送ベルトと、
前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトの両方と対向して紙幣を挟圧保持する第3搬送ベルトを有し、
前記第1搬送路は前記第1搬送ベルトと前記第3搬送ベルトの一部によって構成され、
前記第2搬送路は前記第2搬送ベルトと前記第3搬送ベルトの他の一部によって構成される、請求項10乃至16いずれか一項に記載の還流式紙幣処理装置。
【請求項18】
前記第1及び第2搬送路は、垂直方向に延設された主搬送路を構成しており、前記第3搬送路は、前記主搬送路の途中から分岐して略水平方向に延設された分岐搬送路を構成している、請求項10乃至17のいずれか一項に記載の還流式紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の搬送経路の分岐点に設けられ、紙幣の搬送方向を切り替える紙幣搬送方向切替機構及びこれを用いた還流式紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、紙幣を釣銭や払い出し金として払い出す出金機能を備えた還流式紙幣処理装置は、各種自動販売機、入出金装置、両替機等に搭載されている。例えば、特許文献1には、始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に収納しておき、必要に応じて釣銭として払い出すように構成された還流式紙幣処理装置が記載されている。
【0003】
還流式紙幣処理装置では、金種別に収納する複数の収納庫等が積層配置されている。こうした紙幣還流装置では、収納庫等へ紙幣を送るために搬送経路を切り替える切替機構として2方向を切り替えるものが一般的である。しかし、2方向を切り替える切替機構では機能が制限されて紙幣の高速処理等の要求に応えられないため、3方向を切り替える切替機構が必要となる。
【0004】
紙幣の搬送経路の3方向を切り替えるゲート機構については、すでに検討がなされている。例えば、特許文献2には、回転部材の周面に沿った2つの搬送経路の何れか一方に沿って紙幣を移動させて搬送方向を切り替えることにより、部品点数の増大、大型化を伴わずに紙幣収納部からの紙幣の入出金を迅速化することが可能な還流式紙幣処理装置が記載されている。この装置は、正転方向又は逆転方向に回転することで周面に沿って搬送される紙幣の搬送方向を変更させる回転部材と、回転部材の周面と接しない方向から延びてきて回転部材の周面の一部を通過して該回転部材の周面から離間する方向へ延びる第1搬送経路と、一端が第1搬送路と連通し、回転部材の周面を経て他方向へ延びる第2搬送経路と、一端が第1搬送路と連通し、第2搬送経路とは異なる回転部材の周面を経て他方向へ延びる第3搬送経路と、第2及び第3搬送経路の他端と連通する第4搬送経路と、第1搬送経路と第2搬送経路との間での紙幣の移動を許可する第1ゲートと、第1搬送経路と第3搬送経路との間での紙幣の移動を許可する第2ゲートと、第2搬送経路及び第2搬送経路のどちらか一方を第4搬送経路に接続する第3ゲートとを備えている。第3ゲートは、第1及び第2ゲートとの協働により、第4搬送経路から第1搬送経路へ向けて出金される紙幣を第2搬送経路又は第3搬送経路のいずれかに振り分けるので、紙幣の搬送方向を切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-250141号公報
【文献】特開2016-006581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の還流式紙幣処理装置では、金種別に紙幣を収納する複数の収納庫等が積層配置され、搬送経路の分岐点に設けた紙幣搬送方向切替機構を制御して搬送経路を切り替えることにより、各収納庫と紙幣搬送路とを接続する構成が一般的である。
【0007】
従来の還流式紙幣処理装置において、収納庫等の上下位置関係は、仕様により予め決められたものであり、筐体に固定されたものである。しかし、近年は収納庫等の上下位置関係に対してさまざまなバリエーションが顧客から求められており、そうしたニーズに応えられるように収納庫等をモジュール化して縦方向に自由に積み替え可能なモジュール方式が検討されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された従来の紙幣搬送方向切替機構は、中央に比較的大きな回転部材(回転ドラム)を配置し、その周囲に小径ローラやゲートといった各種部材を複数個ずつ配置し、さらに複数のゲートを駆動するためのソレノイド等の駆動源を個別に用意して制御する必要があるため、部品点数の増加による機構の複雑化及び大型化が避けられないという問題がある。このような複雑で大型な紙幣搬送方向切替機構は、還流式紙幣処理装置のモジュール化を困難にする要因の一つとなっており、改善が求められている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、部品点数の増加による機構の複雑化及び大型化を伴わずに紙幣の3方向の搬送経路の切り替えが可能な紙幣搬送方向切替機構及びこれを用いた還流式紙幣処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明による紙幣搬送方向切替機構は、第1回転軸を中心に回転して第1搬送路の接続先を第2搬送路又は第3搬送路に切り換える第1ゲート部材と、第2回転軸を中心に回転して第2搬送路の接続先を第1搬送路又は第3搬送路に切り換える第2ゲート部材と、第3回転軸を中心に回転して第3搬送路の接続先を第1搬送路又は第2搬送路に切り換える第3ゲート部材と、第1~第3ゲート部材を駆動する駆動源と、前記駆動源からの駆動力を前記第1~第3ゲート部材に伝達するギヤ機構とを備え、前記第1~第3ゲート部材が前記ギヤ機構を介して相互に連動することにより、前記第1及び第2搬送路間の連通を許可する第1連通モード、前記第1及び第3搬送路間の連通を許可する第2連通モード、及び前記第2及び第3搬送路間の連通を許可する第3連通モードのいずれか一つを選択することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ギヤ機構を介して第1~第3ゲート部材を連結し、3つのゲート部材を機械的に連動させることで、紙幣の3方向の搬送経路の切り替えが可能な切替機構を簡単な構成により実現することができる。また、3方向のいずれも紙幣の双方向搬送が可能となり、装置内の搬送経路の簡素化及び単純化を実現することができる。さらに、切替機構が小型であるため、還流式紙幣処理装置のユニット化も容易である。
【0012】
本発明において、前記ギヤ機構は、前記第1~第3ゲート部材にそれぞれ固定された第1~第3ギヤを含み、前記第1~第3ギヤのいずれか一つは駆動ギヤであり、残りの2つのギヤは前記駆動ギヤに連動する従動ギヤであることが好ましい。この構成によれば、部品点数の増加による機構の複雑化及び大型化を伴わずに紙幣の3方向の搬送経路の切り替えを実現することができる。
【0013】
本発明において、前記第1及び第2ギヤは前記第3ギヤと噛み合っていることが好ましい。この構成によれば、部品点数の増加による機構の複雑化及び大型化を伴わずに紙幣の3方向の搬送経路の切り替えを実現することができる。
【0014】
前記駆動源はステッピングモーターであることが好ましい。これにより、複雑な機構を採用することなく第1~第3ゲート部材の回転角度を精密に制御することができる。
【0015】
本発明による紙幣搬送方向切替機構は、前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第1搬送路との接続及び前記第3搬送路と前記第2搬送路との接続の両方を遮断するニュートラル位置にあるとき、前記第1ゲート部材が前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続を許可し且つ前記第1搬送路と前記第3搬送路との接続を遮断し、且つ、前記第2ゲート部材が前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続を許可し且つ前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続を遮断することにより、前記第1搬送路と前記第2搬送路との間の紙幣の往復走行を許可し、前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第1搬送路との接続を許可する第1位置に移動したとき、前記第1ゲート部材が前記第1搬送路と前記第3搬送路との接続を許可し且つ前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続を遮断することにより、前記第1搬送路と前記第3搬送路との間の紙幣の往復走行を許可し、前記第3ゲート部材が前記第3搬送路と前記第2搬送路との接続を許可する第2位置に移動したとき、前記第2ゲート部材が前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続を許可し且つ前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続を遮断することにより、前記第2搬送路と前記第3搬送路との間の紙幣の往復走行を許可することが好ましい。
【0016】
本発明による紙幣搬送方向切替機構は、前記第3ゲート部材が前記第1位置に移動したとき、前記第2ゲート部材は前記第2搬送路と前記第1搬送路との接続及び前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続の両方を遮断する位置に移動し、前記第3ゲート部材が前記第2位置に移動したとき、前記第1ゲート部材は前記第1搬送路と前記第2搬送路との接続及び前記第2搬送路と前記第3搬送路との接続の両方を遮断する位置に移動することが好ましい。
【0017】
本発明による紙幣搬送方向切替機構は、前記第1搬送路と前記第2搬送路とを連通する第1連通路と、前記第1搬送路と前記第3搬送路とを連通する第2連通路と、前記第2搬送路と前記第3搬送路とを連通する第3連通路とを有し、前記第3ゲート部材は、前記ニュートラル位置のときに前記第2連通路及び前記第3連通路の両方を遮断し、前記第1位置のときに前記第2連通路を開放し且つ前記第3連通路を遮断し、前記第2位置のときに前記第3連通路を開放し且つ前記第2連通路を遮断し、前記第1ゲート部材は、前記第3ゲート部材が前記ニュートラル位置のときに前記第1連通路を開放し且つ前記第2連通路を遮断し、前記第3ゲート部材が前記第1位置のときに前記第1連通路を遮断し且つ前記第2連通路を開放し、前記第3ゲート部材が前記第2位置のときに前記第1連通路及び前記第2連通路の両方を遮断し、前記第2ゲート部材は、前記第3ゲート部材が前記ニュートラル位置のときに前記第1連通路を開放し且つ前記第3連通路を遮断し、前記第3ゲート部材が前記第1位置のときに前記第1連通路及び前記第3連通路の両方を遮断し、前記第3ゲート部材が前記第2位置のときに前記第1連通路を遮断し且つ前記第3連通路を開放することが好ましい。
【0018】
本発明による紙幣搬送方向切替機構は、前記第1搬送路を構成する第1搬送ベルトと、前記第2搬送路を構成する第2搬送ベルトと、前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトの両方と対向して紙幣を挟圧保持する第3搬送ベルトを有し、前記第1搬送路は前記第1搬送ベルトと前記第3搬送ベルトの一部によって構成され、前記第2搬送路は前記第2搬送ベルトと前記第3搬送ベルトの他の一部によって構成されることが好ましい。
【0019】
本発明において、前記第1及び第2搬送路は、垂直方向に延設された主搬送路を構成しており、前記第3搬送路は、前記主搬送路の途中から分岐して略水平方向に延設された分岐搬送路を構成していることが好ましい。
【0020】
また、本発明による還流式紙幣処理装置は、積層配置された複数の紙幣処理ユニットを備え、前記複数の紙幣処理ユニットの各々は、前記複数の紙幣処理ユニット間を接続する主搬送路と、前記主搬送路から分岐して各紙幣処理ユニット内の機能部に紙幣を搬送する分岐搬送路を有し、前記主搬送路と前記分岐搬送路との接続分岐点には上記特徴を有する本発明による紙幣搬送方向切替機構が設けられていることを特徴とする。
【0021】
従来の大きな紙幣搬送方向切替機構を用いて構成された還流式紙幣処理装置の場合、還流式紙幣処理装置をユニット化しにくいという問題がった。しかしながら、本発明による小型で簡易な構造の搬送方向岐切替機構を用いた場合には、還流式紙幣処理装置のユニット化が容易であり、顧客が製造する自動販売機等の上位装置のレイアウトに合わせて還流式紙幣処理装置を自由に設計することができる。すなわち、本発明による環流式紙幣処理装置は、複数の紙幣処理ユニットの各々が紙幣の搬送方向を3方向に切り替え可能な紙幣搬送方向切替機構を備えているので、顧客が製造する自動販売機のレイアウト変更に対して柔軟に対応でき、還流式紙幣処理装置のレイアウト変更を容易に実施することができる。
【0022】
本発明において、前記複数の紙幣処理ユニットは、紙幣入出金口及び紙幣識別部を有する入出金ユニットと、第1金種の紙幣を収納する第1還流式紙幣収納部を有する第1紙幣収納ユニットと、第2金種の紙幣を収納する第2還流式紙幣収納部を有する第2紙幣収納ユニットと、紙幣を保管する金庫部を有する金庫ユニットと、紙幣を一時的にプールするプール部を有する一時プールユニットを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品点数の増加による機構の複雑化及び大型化を伴わずに紙幣の搬送経路を3方向に切り替え可能な紙幣搬送方向切替機構及びこれを用いた還流式紙幣処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
【
図3】
図3は、搬送方向切替部の構成の一例を示す略斜視図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、3方向の搬送経路の説明図である。
【
図5】
図5は、第1及び第2搬送路間の接続を許可する第1搬送モードで動作する搬送方向切替部の略側面図である。
【
図6】
図6は、第1及び第3搬送路間の接続を許可する第2搬送モードで動作する搬送方向切替部の略側面図である。
【
図7】
図7は、第2及び第3搬送路間の接続を許可する第3搬送モードで動作する搬送方向切替部の略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
【0027】
図1に示すように、この還流式紙幣処理装置1は、異種又は同種の機能を有する複数の紙幣処理ユニット2が縦方向に積み上げられた構成を有しており、各紙幣処理ユニット2内には、紙幣識別部や紙幣収納部といった機能部3と、垂直方向に延びる主搬送路4と、主搬送路4から分岐して略水平方向に延びる分岐搬送路5と、主搬送路4と分岐搬送路5との接続分岐点に設けられた搬送方向切替部10(紙幣搬送方向切替機構)が設けられている。主搬送路4は最上層から最下層まで連続する一本の搬送路であり、ある紙幣処理ユニット2から別の紙幣処理ユニット2へ紙幣を搬送することができる。主搬送路4を通ってある紙幣処理ユニット2内に送られてきた紙幣は、分岐搬送路5を経由して機能部3に送られ、紙幣の各種処理が行われる。
【0028】
本実施形態において、複数の紙幣処理ユニット2は、入金された紙幣を一枚ずつ装置本体内に送り込むと共に、釣銭や払戻金として紙幣を払い出す入出金ユニット2Aと、紙幣を一時的にプールする一時プールユニット2Bと、釣銭として使用する特定金種の紙幣を出し入れ自在に収容する第1及び第2紙幣収納ユニット2C,2Dと、第1及び第2紙幣収納ユニット2C,2Dから紙幣を回収して保管する金庫ユニット2Eとを有している。本実施形態による還流式紙幣処理装置1は、金庫ユニット2E、第2紙幣収納ユニット2D、第1紙幣収納ユニット2C、一時プールユニット2B、及び入出金ユニット2Aが下から上に向かって順に積層配置された構成を有している。
【0029】
入出金ユニット2Aは、紙幣入出金口3iと、紙幣入出金口3iから装置内へと延びる分岐搬送路5(入出金搬送路)と、分岐搬送路5の途中に設けられた紙幣識別部3Aと、分岐搬送路5に接続された主搬送路4と、分岐搬送路5と主搬送路4との接続分岐点に設けられた搬送方向切替部10とを備えている。
【0030】
第1紙幣収納ユニット2Cは、例えば千円紙幣(第1金種)を収容する還流式紙幣収納部3C(第1還流式紙幣収納部)と、紙幣を垂直方向に搬送する主搬送路4と、主搬送路4から分岐して還流式紙幣収納部3Cに接続された分岐搬送路5と、主搬送路4と分岐搬送路5との接続分岐点に設けられた搬送方向切替部10とを備えている。
【0031】
第2紙幣収納ユニット2Dは、例えば五千円紙幣(第2金種)を収容する還流式紙幣収納部3D(第2還流式紙幣収納部)と、紙幣を垂直方向に搬送する主搬送路4と、主搬送路4から分岐して還流式紙幣収納部3Dに接続された分岐搬送路5と、主搬送路4と分岐搬送路5の接続分岐点に設けられた搬送方向切替部10とを備えている。
【0032】
金庫ユニット2Eは、非還流式の紙幣収納部である金庫部3Eと、紙幣を垂直方向に搬送する主搬送路4と、主搬送路4から分岐して金庫部3Eに接続された分岐搬送路5と、主搬送路4と分岐搬送路5との接続分岐点に設けられた搬送方向切替部10とを備えている。
【0033】
一時プールユニット2Bは、第1紙幣収納ユニット2C内の還流式紙幣収納部3C又は第2紙幣収納ユニット2D内の還流式紙幣収納部3Dが払い出した紙幣を一旦プールした後、金庫ユニット2Eに一括して移送し、或いは釣銭や払戻金として出金する紙幣を一時的にプールしてから出金する一時プール部3Bと、一時プール部3Bに接続された分岐搬送路5と、分岐搬送路5に接続された主搬送路4と、分岐搬送路5と主搬送路4との接続分岐点に設けられた搬送方向切替部10とを備えている。
【0034】
釣銭として使用する千円紙幣や五千円紙幣は還流式紙幣収納部3C,3Dにそれぞれ収納されるが、還流式紙幣収納部3C,3Dに入りきらない紙幣は、釣銭として使用されない一万円紙幣と共に、金庫部3Eに回収される。このとき、還流式紙幣収納部3C,3D内の紙幣は、一時プール部3Bを経由して金庫部3Eに送られる。
【0035】
還流式紙幣収納部3C,3Dから金庫部3Eに紙幣を回収する際に一時プール部3Bを利用する理由は、還流式紙幣収納部3C,3Dからの紙幣を一枚ずつ直接かつ高速で入金処理することができない金庫部3Eの構造に対応するためである。すなわち、還流式紙幣収納部3C,3Dから一時プール部3Bに一枚ずつ紙幣を送り込んで所定枚数積層し、一時プール部3B内の紙幣束を一括して金庫部3Eに搬送することにより、金庫部3Eへの回収効率を高めることができる。
【0036】
紙幣入出金口3iに投入された紙幣は、分岐搬送路5及び主搬送路4を経て、第1紙幣収納ユニット2C、第2紙幣収納ユニット2D、及び金庫ユニット2Eのいずれかに収納される。例えば、千円紙幣は第1紙幣収納ユニット2C内の還流式紙幣収納部3C、五千円紙幣は第2紙幣収納ユニット2D内の還流式紙幣収納部3D、一万円紙幣は金庫ユニット2E内の金庫部3Eにそれぞれ収納される。
【0037】
第1及び第2紙幣収納ユニット2C,2D内には、還流式紙幣収納部3C,3Dと共に、主搬送路4と分岐搬送路5との間で紙幣を受け渡すための搬送方向切替部10がそれぞれ設けられている。第1及び第2紙幣収納ユニット2C,2D内の還流式紙幣収納部3C,3Dから釣銭として払い出された紙幣を一時プール部3Bに送り出す場合や、紙幣を金庫部3Eに送る場合にも、各搬送方向切替部10の作用により、搬送経路を利用した最短距離での直接的な搬送が行われる。
【0038】
搬送方向切替部10は、第1及び第2紙幣収納ユニット2C,2D内及び一時プールユニット内のみならず、入出金ユニット2A内及び金庫ユニット2E内にも採用されている。例えば、最上層に位置する入出金ユニット2Aにおいて、紙幣の搬送経路は分岐搬送路5から主搬送路4の下方に向かう経路だけであり、主搬送路4の上方に向かう経路はないため、搬送方向切替部10は必ずしも必要ではない。しかし、後述するように、入出金ユニット2Aを最下層やの中間層にレイアウトする場合には、搬送経路の切り替えが必要となる。このような紙幣処理ユニットのレイアウト変更に柔軟に対応できるようにするため、入出金ユニット2A内及び金庫ユニット2E内にも搬送方向切替部10が採用されている。
【0039】
上記のように、本実施形態による還流式紙幣処理装置1は、それぞれが独立した複数の紙幣処理ユニット2を適宜組み合わせて構成されるものであり、ユーザーの要望に応じて組み合わせ及び配置を柔軟に設定することができる。例えば、金種に応じて還流式紙幣収納ユニットの数を増やしたり、金庫ユニット2Eや一時プールユニット2Bを省略したりすることが可能である。また、入出金ユニット2Aを最下層や中間層に配置したり、金庫ユニット2Eを第1及び第2紙幣収納ユニット2C,2Dよりも上方に配置したりすることも可能である。一般的には、このような変更はユーザーからの注文に応じて装置組み立て時に行われるものであるがユーザー自らが製品購入後に変更できるように構成することも可能である。
【0040】
図2は、本発明の第2の実施の形態による還流式紙幣処理装置の構成を示す略側面断面図である。
【0041】
図2に示すように、この還流式紙幣処理装置1は、一時プールユニット2B、第1紙幣収納ユニット2C、第2紙幣収納ユニット2D及び金庫ユニット2Eが、入出金ユニット2Aの上方に設置されており、入出金ユニット2Aが最下層に配置されている点にある。上記のように、還流式紙幣処理装置を構成する各機能はユニット化されているので、各機能の上下方向の位置を自由にレイアウトすることができる。そして各機能を自由にレイアウトした場合でも、各紙幣処理ユニット内に設けた搬送方向切替部10の作用により、紙幣収納部から釣銭として払い出された紙幣を出金プール部に送る場合や、紙幣を一時プール部に送る場合にも、搬送経路を利用した最短距離での直接的な搬送を行うことができる。
【0042】
図1に示した還流式紙幣処理装置1では、入出金ユニット2A内の分岐搬送路5から主搬送路4の上側に向かう経路や、金庫ユニット2E内の分岐搬送路5から主搬送路4の下側に向かう経路を使用しないので、搬送方向切替部10を設ける必要はない。しかし、
図2のように、入出金ユニット2Aを装置の最下層に配置した場合には、入出金ユニット2A内の分岐搬送路5から主搬送路4の上側に向かう経路や金庫ユニット2E内の分岐搬送路5から主搬送路4の下側に向かう経路を使用する必要性が生じする。本発明は、このような還流式紙幣処理装置1のユニット化に伴う設計の自由度と部品の共通化のため、各紙幣処理ユニット内に搬送経路の3方向の切り替えが可能な搬送方向切替部10を設けるものである。
【0043】
図3は、搬送方向切替部10の構成の一例を示す略斜視図である。また、
図4(a)~(c)は、3方向の搬送経路の説明図である。さらに、
図5~
図7は、搬送方向切替部10の動作説明図であって、
図5は、第1及び第2搬送路11A,11B間の接続を許可する第1搬送モードで動作する搬送方向切替部10の略側面図、
図6は、第1及び第3搬送路11A,11C間の接続を許可する第2搬送モードで動作する搬送方向切替部10の略側面図、
図7は、第2及び第3搬送路11B,11C間の接続を許可する第3搬送モードで動作する搬送方向切替部10の略側面図である。
【0044】
図3に示すように、搬送方向切替部10は、紙幣を垂直方向に搬送する主搬送路4と、主搬送路4の途中から分岐して紙幣を略水平方向に搬送する分岐搬送路5との接続分岐点に設けられている。主搬送路4は、接続分岐点よりも上方に位置する第1搬送路11Aと、接続分岐点よりも下方に位置する第2搬送路11Bとで構成されている。また、分岐搬送路5は第3搬送路11Cで構成されている。
【0045】
第1搬送路11Aの上方から下方に向かって搬送されてきた紙幣は、搬送方向切替部10によって第2搬送路11B及び第3搬送路11Cのどちらかに振り分けられる。搬送方向切替部10が紙幣を第3搬送路11C側に送る場合には、第1搬送路11Aと第3搬送路11Cとの接続を確保すると共に、第1搬送路11Aと第2搬送路11Bとの接続が遮断され、これにより第1搬送路11Aと第3搬送路11Cとの間で紙幣の双方向の移動が可能となる。搬送方向切替部10が紙幣を第2搬送路11B側に送る場合には、第1搬送路11Aと第2搬送路11Bとの接続が確保されると共に、第1搬送路11Aと第3搬送路11Cとの接続が遮断され、これにより第1搬送路11Aと第2搬送路11Bとの間で紙幣の双方向の移動が可能となる。
【0046】
ここで、
図4(a)~(c)に示すように、搬送方向切替部10によって切り替えられる紙幣の搬送方向は、「上下方向」、「上横方向」、「下横方向」の3方向である。「上下方向」とは、
図4(a)に示すように、搬送方向切替部10を素通りして紙幣を主搬送路4の上方から下方に送る方向又はその逆方向である。「上横方向」とは、
図4(b)に示すように、主搬送路4の上方から送られてくる紙幣を分岐搬送路5に引き込む方向又はその逆方向である。「下横方向」とは、
図4(c)に示すように、主搬送路4の下方から送られてくる紙幣を分岐搬送路5に引き込む方向又はその逆方向である。
【0047】
例えば、
図1において第1紙幣収納ユニット2C内の搬送方向切替部10に着目したとき、紙幣を「上下方向」に搬送可能にする搬送モード(第1搬送モード)により、入出金ユニット2Aや一時プールユニット2Bからの紙幣を第2紙幣収納ユニット2Dや金庫ユニット2Eに送ることができる。また逆に、第2紙幣収納ユニット2Dや金庫ユニット2Eからの紙幣を入出金ユニット2Aや一時プールユニット2Bに送ることができる。
【0048】
また、紙幣を「上横方向」に搬送可能にする搬送モード(第2搬送モード)により、入出金ユニット2Aや一時プールユニット2Bからの紙幣を第1紙幣収納ユニット2C内の第1紙幣収納部3Cに送ることができ、逆に第1紙幣収納部3C内の紙幣を入出金ユニット2Aや一時プールユニット2Bに送ることができる。さらに紙幣を「下横方向」に搬送可能にする搬送モード(第3搬送モード)ことにより、第2紙幣収納部3D内の紙幣を金庫ユニット2Eに送ることができる。
【0049】
図3、
図5~
図7に示すように、搬送方向切替部10は、第1搬送路11Aを第2搬送路11B及び第3搬送路11Cのどちらか一方に接続する第1ゲート部材12Aと、第2搬送路11Bを第1搬送路11A及び第3搬送路11Cのどちらか一方に接続する第2ゲート部材12Bと、第3搬送路11Cを第1搬送路11A及び第2搬送路11Bのどちらか一方に接続する第3ゲート部材12Cと、第1~第3ゲート部材12A~12Cを駆動する図示しないステッピングモーターとを備えている。また搬送方向切替部10は、第1搬送路11Aと第3搬送路11Cとの間に配置され、第1搬送路11Aと第3搬送路11Cとを連通させる連通路を規定する第1固定ガイド部材15Aと、第2搬送路11Bと第3搬送路11Cとの間に配置され、第2搬送路11Bと第3搬送路11Cとを連通させる連通路を規定する第2固定ガイド部材15Bとを備えている。
【0050】
第1~第3搬送路11A~11Cは、一対のプーリー18,18間に掛け渡された搬送ベルト17(17A~17E)を用いてそれぞれ構成されている。第1搬送路11Aは、互いに対向して紙幣を挟圧保持しながら搬送する一対の搬送ベルト17A,17Cの組み合わせからなり、第2搬送路11Bは、互いに対向して紙幣を挟圧保持しながら搬送する一対の搬送ベルト17A,17Cの組み合わせからなる。搬送ベルト17A(第1搬送ベルト)及び搬送ベルト17B(第2搬送ベルト)が第1及び第2搬送路11A,11Bだけをそれぞれカバーするのに対して、搬送ベルト17C(第3搬送ベルト)は、第1搬送路11A及び第2搬送路11Bに共通する長い搬送ベルトである。そのため、第1搬送路11Aは第1搬送ベルト17Aと第3搬送ベルト17Cの一部によって構成され、第2搬送路11Bは第2搬送ベルト17Bと第3搬送ベルト17Cの他の一部によって構成される、第3搬送路11Cは、互いに対向して紙幣を挟圧保持しながら搬送する一対の搬送ベルト17D,17E(第4及び第5搬送ベルト)の組み合わせからなる。
【0051】
第1ゲート部材12Aは、第1回転軸13Aを中心に回転自在に構成された可動ガイド部材であって、第1搬送路11A側に向かって尖った先端部と、第2搬送路11B側に位置する基端部と、先端部から基端部に向かって直線的に形成された平坦部とを有している。第1ゲート部材12Aの平坦部が主搬送路4と平行な状態(ニュートラル位置)にあるとき、第1搬送路11Aから第2搬送路11Bに向かう連通路(第1連通路16A)が開放され且つ第1搬送路11Aから第3搬送路11Cに向かう連通路(第2連通路16B)が閉止された状態となるので、第1搬送路11Aと第2搬送路11Bが連通可能な可能となる。
【0052】
第1ゲート部材12Aがニュートラル位置から時計回りに回転して先端部が主搬送路4を横切っているとき、第1搬送路11Aから第2搬送路11Bに向かう連通路が閉止され且つ第1搬送路11Aから第3搬送路11Cに向かう連通路が開放された状態となるので、第1搬送路11Aと第3搬送路11Cが連通可能な状態となる。一方、第1ゲート部材12Aがニュートラル位置から反時計回りに回転して先端部が主搬送路4から遠ざかっているときには、第1搬送路11Aから第2搬送路11Bに向かう連通路及び第1搬送路11Aから第3搬送路11Cに向かう連通路の両方が閉止された状態となる。
【0053】
第2ゲート部材12Bは、第2回転軸13Bを中心に回転自在に構成された可動ガイド部材であって、第2搬送路11B側に向かって尖った先端部と、第1搬送路11A側に位置する基端部と、先端部から基端部に向かって直線的に形成された平坦部とを有している。第2ゲート部材12Bの平坦部が主搬送路4と平行な状態(ニュートラル位置)にあるとき、第2搬送路11Bから第1搬送路11Aに向かう連通路(第1連通路16A)が開放され且つ第2搬送路11Bから第3搬送路11Cに向かう連通路(第3連通路16C)が閉止された状態となるので、第2搬送路11Bと第1搬送路11Aが連通可能な状態となる。
【0054】
第2ゲート部材12Bがニュートラル位置から反時計回りに回転して先端部が主搬送路4を横切っているとき、第2搬送路11Bから第1搬送路11Aに向かう連通路が閉止され且つ第2搬送路11Bから第3搬送路11Cに向かう連通路が開放された状態となるので、第2搬送路11Bと第3連通路16Cが連通可能な状態となる。一方、第2ゲート部材12Bがニュートラル位置から時計回りに回転して先端部が主搬送路4から遠ざかっているときには、第2搬送路11Bから第1搬送路11Aに向かう連通路及び第2搬送路11Bから第3搬送路11Cに向かう連通路の両方が閉止された状態となる。
【0055】
第3ゲート部材12Cは、第3回転軸13Cを中心に回転自在に構成された可動ガイド部材であって、第3搬送路11C側に向かって尖った先端部を有している。第3ゲート部材12Cの先端部が上側(第1搬送路11A側)及び下側(第2搬送路11B側)のどちら側にも偏っていないニュートラル位置にあるとき、第3搬送路11Cは第1搬送路11A及び第2搬送路11Bのどちらとも連通していない閉止状態となる。しかし、第3ゲート部材12Cがニュートラル位置から反時計回りに回転して先端部が斜め下方を向いているとき、第3搬送路11Cから第1搬送路11Aに向かう連通路(第2連通路16B)が開放され且つ第3連通路16Cから第2搬送路11Bに向かう連通路(第3連通路16C)が閉止された状態となるので、第3搬送路11Cと第1搬送路11Aが連通可能な状態となる。また、第3ゲート部材12Cがニュートラル位置から時計回りに回転してその先端部が斜め上方を向いているとき、第3連通路16Cから第1搬送路11Aに向かう連通路が閉止され且つ第3連通路16Cから第2搬送路11Bに向かう連通路が開放された状態となるので、第3搬送路11Cと第2搬送路11Bが連通可能な状態となる。
【0056】
本実施形態において、第3ゲート部材12Cは図示しないステッピングモーターによって回転駆動される。特に、第3ゲート部材12Cの回転量(回転角度)はステッピングモーターによって精密に制御され、これにより第3搬送路11Cを第1搬送路11Aに接続する位置(第1位置)又は第3搬送路11Cを第2搬送路11Bに接続する位置(第2位置)に回動することができる。
【0057】
第1~第3ゲート部材12Cには第1~第3ギヤ14A~14Cがそれぞれ固定されており、第2及び第3ギヤ14B,14Cは第1ギヤ14Aと噛み合っている。そのため、第3ゲート部材12Cの回転力は第1~第3ギヤ14A~14Cからなるギヤ機構14を通じて第1ゲート部材12A及び第2ゲート部材12Bにも伝達され、第1及び第2ゲート部材12A,12Bは第3ゲート部材12Cに連動して回転する。本実施形態において、第1及び第2ギヤ14A,14Cは第3ギヤ14Cと直接噛み合っているので、第1及び第2ゲート部材12A,12Bは第3ゲート部材12Cと逆方向に回転する。第3ギヤ14Cに対する第1及び第2ギヤ14A,14Bのギヤ比は、第3ゲート部材12Cの先端部の可動範囲及び第1及び第2ゲート部材12A,12Bの先端部の可動範囲に基づいて設定される。すなわち、第1~第3ゲート部材12A~12Cの回転量はギヤ比によって調整することができる。
【0058】
本実施形態においては、第3ギヤ14Cを駆動ギヤとし、第1及び第2ギヤ14A,14Bを従動ギヤとし、第1及び第2ゲート部材12A,12Bを第3ゲート部材12Cに従動させているが、第1ゲート部材12Aを駆動して第2及び第3ゲート部材12B,12Cを従動させてもよく、あるいは第2ゲート部材12Bを駆動して第1及び第3ゲート部材12A,12Cを従動させてもよい。
【0059】
第1ゲート部材12Aの回転量はステッピングモーターによって精密に制御できるが、安全性を高めるため、第1ゲート部材12Aの回り過ぎを防止するストッパー機構を設けてもよい。例えば、第1ゲート部材12Aの先端部が第2連通路16Bを開放するように下方に大きく回転したとき、第1ゲート部材12Aの下側の後端部が第3ゲート部材12Cに当接することにより、必要以上の回転が阻止される。同様に、第1ゲート部材12Aの先端部が第1連通路16Aを開放するように下方に大きく回転したとき、第1ゲート部材12Aの上側の後端部が第2ゲート部材12Bに当接することにより、必要以上の回転が阻止される。
【0060】
次に、
図5~
図7を参照しながら、搬送方向切替部10の動作について詳細に説明する。
【0061】
図5に示すように、第3ゲート部材12Cの先端部が第2連通路16B側(上方)及び第3連通路16C側(下方)のどちらも偏っていないニュートラル位置にあるときには、第1ゲート部材12Aが第1連通路16Aを開放し且つ第2連通路16Bを遮断した状態になり、第2ゲート部材12Bが第1連通路16Aを開放し且つ第3連通路16Cを閉止した状態になる。したがって、第1搬送路11Aと第2搬送路11Bは第1連通路16Aを介して連通状態となり、紙幣は矢印で示すように第1搬送路11Aと第2搬送路11Bとの間を往復走行できるようになる。
【0062】
図6に示すように、第3ゲート部材12Cが第3連通路16C側(反時計回り、下方)に回動してその先端部が第2連通路16Bを開放し且つ第3連通路16Cを閉止する位置(第1位置)に移動したとき、第1ゲート部材12Aが第3ゲート部材12Cと逆方向(時計回り)に回動して、第2連通路16Bを開放し且つ第1連通路16Aを閉止した状態になる。さらに、第2ゲート部材12Bも第3ゲート部材12Cと逆方向(時計回り)に回動して、第3連通路16Cと第1連通路16Aの両方を閉止した状態になる。したがって、第1搬送路11Aと第3搬送路11Cは第2連通路16Bを介して連通状態となり、紙幣は矢印で示すように第1搬送路11Aと第3搬送路11Cとの間を往復走行できるようになる。
【0063】
図7に示すように、第3ゲート部材12Cが第2連通路16B側(時計回り、上方)に回動してその先端部が第3連通路16Cを開放し且つ第2連通路16Bを閉止する位置(第2位置)に移動したとき、第2ゲート部材12Bが第3ゲート部材12Cと逆方向(反時計回り)に回動して、第3連通路16Cを開放し且つ第1連通路16Aを閉止した状態になる。さらに、第1ゲート部材12Aも第3ゲート部材12Cと逆方向(反時計回り)に回動して、第2連通路16Bと第1連通路16Aの両方を閉止した状態になる。したがって、第2搬送路11Bと第3搬送路11Cは第3連通路16Cを介して連通状態となり、紙幣は矢印で示すように第2搬送路11Bと第3搬送路11Cとの間を往復走行できるようになる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態による還流型紙幣処理装置は、第1~第3ゲート部材12A~12Cが第1~第3ギヤ14A~14Cからなるギヤ機構14を介して相互に連結された単純な構成であるため、部品点数の増加による機構の複雑化及び大型化を伴わずに紙幣の3方向の搬送経路の切り替えを実現することができる。また、1つのステッピングモーターからの駆動力(回転量)を制御して第3ゲート部材12Cのポジションを制御するだけで、第1ゲート部材12A及び第2ゲート部材12Bのポジションも制御することができる。すなわち、第3ゲート部材12Cの先端部の「上」、「中」、「下」の3ポジションを制御するだけの単純な制御により、3方向の搬送方向を選択することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0066】
例えば、上記実施形態においては、主搬送路が垂直方向に延び、分岐搬送路が略水平方向に延びているが、主搬送路及び分岐搬送路の向きは特に限定されず、主搬送路が水平方向、分岐搬送路が略垂直方向にそれぞれ延びていてもよい。
【0067】
また上記実施形態においては第1~第3ゲート部材12A~12Cの駆動源としてステッピングモーターを用いているが、各種モーター、シリンダー、磁石、バネ等の他の駆動源を用いることも可能である。ただし、ステッピングモーターであれば回転量を制御することで、第3ゲート部材12Cの先端部の「上」、「中」、「下」の3ポジションを精密に制御することができるので、特に好ましい。
【符号の説明】
【0068】
1 還流式紙幣処理装置
2 紙幣処理ユニット
2A 入出金ユニット
2B 一時プールユニット
2C 第1紙幣収納ユニット
2D 第2紙幣収納ユニット
2E 金庫ユニット
3 機能部
3A 紙幣識別部
3B 一時プール部
3C 還流式紙幣収納部
3D 還流式紙幣収納部
3E 金庫部
3i 紙幣入出金口
4 主搬送路
5 分岐搬送路
10 搬送方向切替部(紙幣搬送方向切替機構)
11A 第1搬送路
11B 第2搬送路
11C 第3搬送路
12A 第1ゲート部材
12B 第2ゲート部材
12C 第3ゲート部材
13A 第1回転軸
13B 第2回転軸
13C 第3回転軸
14 ギヤ機構
14A 第1ギヤ
14B 第2ギヤ
14C 第3ギヤ
15A 固定ガイド部材
15B 固定ガイド部材
16A 第1連通路
16B 第2連通路
16C 第3連通路
17 搬送ベルト
17A 第1搬送ベルト
17B 第2搬送ベルト
17C 第3搬送ベルト
17D 第4搬送ベルト
17E 第5搬送ベルト
18 プーリー