(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】浴室
(51)【国際特許分類】
A47K 4/00 20060101AFI20241008BHJP
A47K 3/16 20060101ALI20241008BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20241008BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A47K4/00
A47K3/16
E04H1/12 301
A61H33/00 310C
(21)【出願番号】P 2020161565
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020120884
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭平
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-167012(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212602(JP,U)
【文献】特開2010-268890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02- 4/00
E04H 1/00- 1/14
A61H 33/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の幅方向の第1端位置と第2端位置との間で位置変更可能な浴槽と、
前記浴槽を受ける浴槽パンと、
前記浴槽パン上に敷設され、かつ前記浴槽が載置される敷設体と、
を備え、前記敷設体が、少なくとも前記第1端位置及び前記第2端位置に配置された複数のボードを含み、
前記浴槽が前記第1端位置に在るとき、前記第1端位置のボードに前記浴槽が被さり、かつ前記敷設体における前記浴槽から前記第2端位置側へはみ出した部分が、前記第2端位置のボードを含んで前記第1端位置のボードを除く1又は複数のボードによって構成され、
前記浴槽が前記第2端位置に在るとき、前記第2端位置のボードに前記浴槽が被さり、かつ前記敷設体における前記浴槽から前記第1端位置側へはみ出した部分が、前記第1端位置のボードを含んで前記第2端位置のボードを除く1又は複数のボードによって構成されていることを特徴とする浴室。
【請求項2】
前記敷設体の幅方向の中央部には、前記ボードが無い空き部分が設けられ、前記浴槽が、前記第1端位置に在るときも前記第2端位置に在るときも前記空き部分に被さっていることを特徴とする請求項1に記載の浴室。
【請求項3】
前記敷設体が、前記空き部分に配置された枠状のスペーサ部材を含むことを特徴とする請求項2に記載の浴室。
【請求項4】
前記浴槽パンにおける幅方向の中央部には、前記空き部分と面するボードの前記幅方向の位置を規制するガイドが設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の浴室。
【請求項5】
前記ボードの上面には、前記幅方向と直交する奥行方向に沿って洗い場とは反対の奥側へ向かって下がる勾配が形成されており、
前記浴槽の内底面には、前記浴槽の奥側の内壁面と作るコーナー部へ向かって下がる勾配が形成され、前記コーナー部には、排水栓が、前記浴槽の底部から下方かつ奥側へ斜めに突出されるように設けられていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の浴室。
【請求項6】
前記ボードの上面が、洗い場側の端部における前記勾配が相対的に急な急勾配部分と、前記急勾配部分の奥側に連なり、前記勾配が相対的に緩やかな緩勾配部分とを含み、前記浴槽が、前記緩勾配部分に載置されていることを特徴とする請求項5に記載の浴室。
【請求項7】
前記ボードの前記奥側の端部には上へ突出する凸部が形成され、前記凸部の上面が、前記ボードの洗い場側の端部の上面高さと同じ高さであることを特徴とする請求項5又は6に記載の浴室。
【請求項8】
前記ボードには、前記浴槽パンに当接する脚部が設けられ、前記ボードと前記浴槽パンとの間に前記脚部の高さ分のボード下空間が形成されていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の浴室。
【請求項9】
前記浴槽の水下の高さが、洗い場の水下の高さに10mm加算した高さより低いことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の浴室。
【請求項10】
前記第1端位置及び前記第2端位置のボードの幅が、これらボードに対して前記幅方向の内側に隣接するボードの幅より大きいことを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の浴室。
【請求項11】
前記第1端位置のボード及び該ボードに対して前記幅方向の内側に隣接するボードどうしが突き当てられて第1の継ぎ目が形成され、かつ前記第2端位置のボード及び該ボードに対して前記幅方向の内側に隣接するボードどうしが突き当てられて第2の継ぎ目が形成されており、
前記第1の継ぎ目と前記第2の継ぎ目との間隔が、前記浴槽の幅より小さいことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に関し、特に浴槽の位置を変更可能な、浴槽位置可変式の浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や介助施設において、例えば要介助者が利用する浴室は、その身体機能や介助の仕方に合わせて、浴槽の位置を変更可能にしたものが知られている(特許文献1~3など参照)。この種の浴槽位置可変式浴室においては、浴槽の幅が、それを載せる浴槽パンの幅より小さい。このため、浴槽パンには、浴槽が載っていない非載置部分が出来る。たとえば、浴槽を浴槽パンの幅方向の中央部に配置した場合、浴槽パンの幅方向の両側部が非載置部分となる。
【0003】
ここで、仮に、浴槽パンの高さと洗い場の高さを揃えた場合、前記非載置部分と洗い場とは面一になるが、浴槽の内底面が洗い場より高くなる。特に、浴槽の底部に脚部が設けられていると、浴槽の内底面と洗い場との段差が大きくなり、入浴者が洗い場と浴槽の間を跨いだり移動したりする際に不安定になりやすい。
【0004】
そこで、特許文献1~3の浴槽位置可変式浴室においては、浴槽パンの高さを洗い場の高さより低くして、浴槽の内底面を洗い場の高さに合わせてある。このため、浴槽パンの前記非載置部分と洗い場との間には、段差が形成される。これを埋めるために、前記非載置部分に合わせた面積の複数枚のサイドボードが用意されている。1つの非載置部分に1又は複数枚のサイドボードが被せられる。各サイドボードは、洗い場と面一になるように設置されている。したがって、浴槽内と洗い場上とサイドボード上を行き来する際に、それらの間の段差を気にする必要が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-167012号公報
【文献】特開2004-173703号公報
【文献】特開2014-066011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲特許文献1~3の浴槽位置可変式浴室においては、浴槽の位置を変更する際、サイドボードの位置をも変える必要がある。例えば、浴槽を浴槽パンの幅方向の中央部から幅方向の一端部に位置変更するときは、前記一端部に配置されていたサイドボードを取り外したうえで、浴槽を移動させる。すると、該浴槽よりも幅方向の他端側に新たな非載置部分が出来る。この非載置部分に、前記一端部から取り外したサイドボードを設置する。かかるサイドボードの配置替え作業は煩雑である。
本発明は、上述の事情に鑑み、浴槽の位置を変更する際にサイドボードの配置替え作業が不要な浴槽位置可変式浴室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る浴室は、浴室の幅方向の第1端位置と第2端位置との間で位置変更可能な浴槽と、
前記浴槽を受ける浴槽パンと、
前記浴槽パン上に敷設され、かつ前記浴槽が載置される敷設体と、
を備え、前記敷設体が、少なくとも前記第1端位置及び前記第2端位置に配置された複数のボードを含み、
前記浴槽が前記第1端位置に在るとき、前記第1端位置のボードに前記浴槽が被さり、かつ前記敷設体における前記浴槽から前記第2端位置側へはみ出した部分が、前記第2端位置のボードを含んで前記第1端位置のボードを除く1又は複数のボードによって構成され、
前記浴槽が前記第2端位置に在るとき、前記第2端位置のボードに前記浴槽が被さり、かつ前記敷設体における前記浴槽から前記第1端位置側へはみ出した部分が、前記第1端位置のボードを含んで前記第2端位置のボードを除く1又は複数のボードによって構成されていることを特徴とする。
【0008】
当該浴室によれば、例えば要介護の入浴者の身体状況に応じて、浴槽の位置を変えることで、入浴介助をしやすくできる。浴槽は、ボードを含む敷設体上に常時配置されており、位置変更も敷設体上で行われるから、位置変更に先立ってボードを取り外したり、位置変更後にボードを再設置したりする必要がない。
浴槽が位置変更されると、それまで浴槽が配置されていた部分が新たに浴槽の非載置部分となり、そこに配置されたボードが新たな外観部として現れ、利用者が踏み込み可能となる。
各ボードは、浴槽パンから着脱可能であることが好ましい。ボードを取り外すと、普段は敷設体又は浴槽で隠れている浴槽パンを露出させて洗浄することができる。ボードを撤去して、他の浴槽と置換することも可能である。
【0009】
前記敷設体の幅方向の中央部には、前記ボードが無い空き部分が設けられ、前記浴槽が、前記第1端位置に在るときも前記第2端位置に在るときも前記空き部分に被さっていることが好ましい。これによって、浴槽の位置変更に拘わらず、前記空き部分が常に浴槽によって隠れるようにできる。浴槽パンの幅方向の全域にボードを設けなくても済む。
【0010】
前記敷設体が、前記空き部分に配置された枠状のスペーサ部材を含むことが好ましい。これによって、幅方向の両側のボードが動かないように押さえることができる。
【0011】
前記浴槽パンにおける幅方向の中央部には、前記空き部分と面するボードの前記幅方向の位置を規制するガイドが設けられていることが好ましい。前記ガイドによって、前記空き部分と面するボードの位置決めを行うことができる。かつ前記ボードを拘束して空き部分側へ位置ずれするのを防止できる。浴槽を移動させる際は、ボードががたつくのを防止できる。
【0012】
前記ボードの上面には、前記幅方向と直交する奥行方向に沿って洗い場とは反対の奥側へ向かって下がる勾配が形成されていることが好ましい。前記勾配を緩やかにすることによって、浴槽を位置変更しやすくでき、かつ浴槽を安定的に設置できる。ボード上の水は、奥側へ流れて排水される。ボードの洗い場側端部と洗い場との間の段差を抑制できる。
前記浴槽の内底面には、前記浴槽の奥側の内壁面と作るコーナー部へ向かって下がる勾配が形成され、前記コーナー部には、排水栓が、前記浴槽の底部から下方かつ奥側へ斜めに突出されるように設けられていることが好ましい。
浴槽内の水は、コーナー部の排水栓から排出される。コーナー部に排水栓を配置することで、排水栓を斜めに設置できる。排水栓を斜めにすることで、浴槽の底部とボードとの間隔を狭くしても、排水栓とボードの干渉を避けることができる。浴槽の底部とボードとの間隔を狭くすることで、浴槽の内底面の高さを抑えることができ、浴槽の内底面と洗い場との段差を極力小さくできる。このため、入浴者が洗い場と浴槽の間を跨いだり移動したりする際に不安定になるのを防止できる。
【0013】
前記ボードの上面が、洗い場側の端部における前記勾配が相対的に急な急勾配部分と、前記急勾配部分の奥側に連なり、前記勾配が相対的に緩やかな緩勾配部分とを含み、前記浴槽が、前記緩勾配部分に載置されていることが好ましい。これによって、浴槽の載置面の勾配を緩やかにできる。浴槽の底部にリブ(脚部)を設けることで、浴槽とボードの間に隙間を形成し、その隙間に浴槽洗浄や噴流用のノズルに連なるチューブを配管できる。
【0014】
前記ボードの前記奥側の端部には上へ突出する凸部が形成され、前記凸部の上面が、前記ボードの洗い場側の端部の上面高さと同じ高さであることが好ましい。
これによって、例えば洗い場と前記凸部に介助補助台などを水平に架け渡すことができる。洗い場とボードとの高さのずれによるガタツキを防ぐことができる。
【0015】
前記ボードには、前記浴槽パンに当接する脚部が設けられ、前記ボードと前記浴槽パンとの間に前記脚部の高さ分のボード下空間が形成されていることが好ましい。
これによって、浴槽からの排水をボード下空間に一時的に溜めることができる。それにより、浴槽の湯を早く空にすることができる。介護施設においては利用者ごとに湯を入れ替えることが多い為、入れ替え時間を短縮して、次の利用者がすぐに入浴することができる。
前記脚部はボードの補強リブとなり、ボードが浴槽の荷重に耐えることができる。
【0016】
前記浴槽の水下の高さが、洗い場の水下の高さに10mm加算した高さより低いことが好ましい。これによって、浴槽の内底面と洗い場との段差を極力小さくできる。
【0017】
前記第1端位置及び前記第2端位置のボードの幅が、これらボードに対して前記幅方向の内側に隣接するボードの幅より大きいことが好ましい。これによって、浴槽の幅寸法及び配置との組み合わせにより、ボードどうしの継ぎ目が浴槽によって隠れるようにできる。
【0018】
前記第1端位置のボード及び該ボードに対して前記幅方向の内側に隣接するボードどうしが突き当てられて第1の継ぎ目が形成され、かつ前記第2端位置のボード及び該ボードに対して前記幅方向の内側に隣接するボードどうしが突き当てられて第2の継ぎ目が形成されており、前記第1の継ぎ目と前記第2の継ぎ目との間隔が、前記浴槽の幅より小さいことが、より好ましい。これによって、浴槽を少なくとも前記幅方向の中央に配置したとき、第1、第2の継ぎ目が浴槽によって確実に隠れるようにできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る浴槽位置可変式浴室によれば、浴槽の位置を変更する際にサイドボードの配置替え作業が不要であり、簡易に位置変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る浴室の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う、前記浴室の側面断面図である。
【
図3】
図3(a)は、前記浴室を、浴槽及び敷設体を省略して示す斜視図である。
図3(b)は、前記浴室を、浴槽を省略して示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、浴槽が中央位置に在る前記浴室の斜視図である。
図4(b)は、浴槽が左端位置(第1端位置)に在る前記浴室の斜視図である。
図4(c)は、浴槽が右端位置(第2端位置)に在る前記浴室の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態の係る浴室の側面断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第3実施形態の係る浴室を、浴槽を省略して示す平面図である。
図6(b)は、前記第3実施形態の係る浴室を、浴槽を中央位置にして示す平面図である。
図6(c)は、前記第3実施形態の係る浴室を、浴槽を左端位置(第1端位置)にして示す平面図である。
図6(d)は、前記第3実施形態の係る浴室を、浴槽を右端位置(第2端位置)にして示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4実施形態に係る浴室を、浴槽を二点鎖線にして示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第5実施形態に係る浴室を、浴槽を二点鎖線にして示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図4)>
図1に示すように、浴室1は、洗い場2と、浴槽3を備えている。浴室1の幅方向と直交する奥行方向の手前側(
図1において下)に洗い場2が配置され、奥側(
図1において上)に浴槽3が配置されている。洗い場2には、防水構造の洗い場パン20が設けられている。洗い場パン20の上面には、水下25へ向かって緩やかに下がる勾配が付けられている。水下25は、例えば洗い場2の奥側の端部(浴槽側端部)における幅方向(
図1において左右)の中央部に設定されている。水下25に排水栓26が設けられている。
なお、水下25及び排水栓26の位置は、前記に限られない。
【0022】
図1~
図3(a)に示すように、浴槽3の下部には、防水構造の浴槽パン4が設けられている。浴槽パン4は、平面視で長方形に形成され、浴室1の幅方向に延びている。
図2に示すように、浴槽パン4の上面は、洗い場パン20の上面より低い。かつ浴槽パン4の上面には、手前側(洗い場2側)へ向かって下がる勾配が付与されている。浴槽パン4の手前側の端部が、洗い場パン20と液密に接続されている。
【0023】
図2に示すように、浴槽パン4上に後記敷設体5を介して浴槽3が支持されている。
図1に示すように、浴槽3の幅は、浴槽パン4の幅より小さい。
図4に示すように、浴槽3は、浴室1の幅方向の左端位置(第1端位置、
図4(b))と右端位置(第2端位置、
図4(c))との間で位置変更可能である。
【0024】
図2に示すように、浴槽3は、バスタブ30と、化粧カバー31を含む。
図4(a)に示すように、化粧カバー31が、バスタブ30の前面(洗い場2を向く面)及び左右両側面を覆っている。
【0025】
図2に示すように、バスタブ30の内底面32aには、奥側の内壁面33aと作るコーナー部34へ向かって緩やかに下がる勾配が形成されている。コーナー部34の幅方向の中央部に、浴槽3の水下35が設定されている。好ましくは、浴槽3の水下35の高さは、洗い場2の水下25の高さに10mm加算した高さより低い。より好ましくは、浴槽3の水下35と洗い場2の水下25はほぼ同一高さに位置している。
【0026】
図2に示すように、浴槽3の水下25すなわちコーナー部34の幅方向の中央部には、排水栓6が設けられている。排水栓6の排水口6aは、内底面32aから内壁面33aへ跨るように斜めに配置されている。排水栓6は、浴槽3の底部から下方かつ奥側へ斜めに突出されている。
【0027】
図1及び
図2に示すように、浴槽3の底部には、リブ37(脚部)が設けられている。リブ37は、例えばバスタブ30の幅方向の両側に配置され、奥行方向へ延びている。リブ37の高さは、20mm程度以下であることが好ましい。そうすることで、洗い場2と浴槽内底面32aとの段差を極力小さく設定できる。
【0028】
図2に示すように、浴槽パン4上に敷設体5が敷設されている。敷設体5上に浴槽3が載置されている。浴槽3のリブ37が、敷設体5に当接されている。敷設体5が浴槽3の荷重を受けている。
【0029】
図3(b)に示すように、敷設体5は、複数(ここでは4つ)のボード50を含む。各ボード50は、長手方向を奥行方向へ向けた長方形(四角形)に形成されている。
これらボード50を互いに区別するときは、それぞれボード51,52,53,54と表記する。浴槽パン4の上に幅方向に沿って左側からボード51、ボード52、ボード53、ボード54の順に並べられている。
【0030】
左側の2つのボード51,52は互いに当接又は近接している。ボード51が左端位置(第1端位置)に配置されている。右側の2つのボード53,54は互いに当接又は近接している。ボード54が左端位置(第1端位置)に配置されている。
幅方向の内側のボード52,53どうしは離れて配置されている。これによって、敷設体5の幅方向の中央部は、ボード50が無い空き部分5bとなっている。
各ボード50(51~54)は、浴槽パン4から着脱可能である。
【0031】
図2に示すように、ボード50の上面50aには、手前側端部における洗い場2とほぼ面一をなす高さから奥行方向に沿って奥側へ向かって緩やかに下がる勾配が形成されている。ボード50の上面50aの手前側端部と洗い場2とは、完全に面一に限らず、洗い場2とボード50を跨ぐ際に支障の無い数mm程度の段差は許容される。
上面50aの勾配は、ボード50の手前側端部から後記凸部55まで一定の傾斜になっている。排水性の観点に加えて、浴室1の利用者がボード50を踏んだりボード50に乗ったりする際の安定性の観点から、勾配の値は10/1000~50/1000程度が望ましく、30/1000程度がより望ましい。
【0032】
図2に示すように、ボード50の奥側端部には、凸部55が、上へ突出するように形成されている。凸部55の上面55aは、ボード50の手前側(洗い場側)の端部の上面高さとほぼ同じ高さである。凸部55の前側面55fは、緩やかな斜面をなしてボード上面50aと滑らかに連なっている。
【0033】
図3(b)に示すように、ボード51~54によって凸部55の形状が異なっている。左右両端のボード51,54の凸部55は、当該ボード51,54の幅方向の全長にわたって延びている。左右内側のボード52,53の凸部55は、当該ボード52,53の幅方向の両側に分かれて形成されている。
なお、ボード52,53の凸部55が、幅方向の全長にわたって延びていてもよい。ボード51,54の凸部55が幅方向に分割されていてもよい。
【0034】
図2に示すように、ボード50の底部には、複数(図では3つ)の脚部56が一体に設けられている。複数の脚部56は、ボード50の奥行方向に並んで配置されている。これら脚部56は、奥行方向の手前側のものほど高さが大きくなっている。各脚部56の下端部が浴槽パン4に当接されている。これによって、ボード50が浴槽パン4に支持されている。脚部56どうしの高さの違いによって、ボード50が奥側へ向かって下がるように傾斜され、ひいてはボード上面50aに前記勾配が付与されている。
【0035】
ボード50の裏面50bは、上面50aとほぼ平行になるよう傾斜されている。ボード裏面50bと浴槽パン4の上面との間には、脚部56の高さ分のボード下空間5dが形成されている。ボード下空間5dは、奥行方向の全域にわたって空き部分5bと連なるとともに、排水栓26に連なっている。
【0036】
図4(a)~(c)に示すように、複数のボード50からなる敷設体5は、浴槽3の位置変更可能な範囲の全域において、浴槽3と浴槽パン4との間に介在されるよう、浴室1の幅方向に延在されている。
図1及び
図4(a)に示すように、浴槽3が中央位置に在るとき、該浴槽3は、敷設体5の空き部分5bの直近両側のボード52,53に跨り、これら空き部分5b及びボード52,53に被さっている。浴槽3の一対のリブ37がそれぞれボード52,53に当接されている。
【0037】
中央位置の浴槽3の左右外側に、敷設体5の左右両端のボード51,54が現れている。すなわち、浴槽3が中央位置に在るとき、敷設体5における浴槽3の幅方向の両側にはみ出した部分は、ボード51,54によって構成されている。ボード51,54によって、浴槽3から幅方向の両側へはみ出した浴槽パン4が隠蔽されている。
【0038】
図4(b)に示すように、浴槽3が左端位置に在るとき、該浴槽3は、敷設体5における左側の2つのボード51,52と空き部分5bに被さっている。さらに、左端位置の浴槽3の右端部が、空き部分5bの直近右側のボード53の左端部に被さっている。
【0039】
左端位置の浴槽3の右外側に、前記ボード53の左端部を除く部分と、右端のボード54とが現れている。すなわち、浴槽3が第1端位置(左端位置)に在るとき、敷設体5における浴槽3から第2端位置側(右端位置側)へはみ出した部分は、第2端位置のボード54を含んで第1端位置のボード51を除く複数のボード53,54によって構成されている。これらボード53,54によって、浴槽3から第2端位置側(右端位置側)へはみ出した浴槽パン4が隠蔽されている。
【0040】
図4(c)に示すように、浴槽3が右端位置に在るとき、該浴槽3は、敷設体5における右側の2つのボード53,54と空き部分5bに被さっている。さらに、右端位置の浴槽3の左端部が、空き部分5bの直近左側のボード52の右端部に被さっている。
【0041】
右端位置の浴槽3の左外側に、前記ボード52の右端部を除く部分と、左端のボード51とが現れている。すなわち、浴槽3が第2端位置(右端位置)に在るとき、敷設体5における浴槽3から第1端位置側(左端位置側)へはみ出した部分は、第1端位置のボード51を含んで第2端位置のボード54を除く複数のボード51,52によって構成されている。これらボード51,52によって、浴槽3から第1端位置側(左端位置側)へはみ出した浴槽パン4が隠蔽されている。
【0042】
浴槽3は、浴室1の幅方向の中央位置(
図4(a))に在るときはもちろん、左端位置(第1端位置、
図4(b))に在るときも、右端位置(第2端位置、
図4(c))に在るときも、空き部分5bに被さっている。したがって、空き部分5bは、浴槽3の位置変更に拘わらず常時、浴槽3によって隠蔽されている。かつ浴槽3から幅方向にはみ出した浴槽パン4は、ボード50によって隠蔽されている。
【0043】
かかる構造の浴槽位置可変式浴室1によれば、例えば要介護の入浴者の身体状況に応じて、浴槽3の位置を変えることで、入浴介助をしやすくできる。
浴槽3は、ボード50を含む敷設体5の上側に配置されており、位置変更も敷設体5上で行われるから、位置変更に先立ってボード50を取り外したり、位置変更後にボード50を再設置したりする必要がない。要するに、浴槽3の位置変更の際にボードの配置替え作業が不要であり、簡易に位置変更できる。
【0044】
浴槽3が位置変更されると、それまで浴槽3が配置されていた部分が新たに浴槽3の非載置部分となる。その新たな非載置部分における浴槽パン4はボード50によって隠蔽されている。該ボード50が新たな外観部として現れ、利用者が踏み込み可能となる。
少なくとも前記非載置部分のボード50は簡単に着脱可能である。これによって、普段は敷設体5又は浴槽3で隠れている浴槽パン4を露出させて、洗浄することができる。
浴槽3の位置変更に拘わらず、空き部分5bが常に浴槽3によって隠れる。したがって、浴室1の美観を確保できる。また、浴槽パン4の幅方向の全域にボード50を設けなくても済む。
【0045】
浴槽3のコーナー部34に排水栓6を配置することで、排水栓6を斜めに設置できる。排水栓6を斜めにすることで、浴槽3の底部とボード50との間隔を狭くしても、排水栓6とボード50の干渉を避けることができ、浴槽3の移動に支障を来すのを防止できる。
浴槽3の底部とボード50との間隔を狭くすることで、浴槽3の内底面32aの高さを抑えることができ、浴槽3の内底面32aと洗い場2との段差を極力小さくできる。このため、入浴者が洗い場2と浴槽3の間を跨いだり移動したりする際に不安定になるのを防止できる。
凸部55の上面55aが洗い場2と同じ高さであるため、例えば洗い場2と凸部55に介助補助台を水平に架け渡すことができ、介助補助台上で安定的に作業を行うことができる。
【0046】
脚部56はボード50の補強リブとなる。ボード50は、浴槽3の荷重に耐えることができる。
浴槽3内の水(湯)は排水栓6から排出される。排水は、ボード50上から空き部分5bへ流れ落ち、そこからボード下空間5d内に広がるとともに、排水栓26から排出される。ボード下空間5dに浴槽3からの排水を一時的に溜めることができるから、浴槽3の湯を短時間で空にすることができる。
介護施設においては利用者ごとに湯を入れ替えることが多い為、入れ替え時間を短くして、次の利用者がすぐに入浴でき、時間あたりの入浴人数を増やすことができる。
【0047】
次に本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を適宜省略する。
<第2実施形態(
図5)>
図5に示すように、第2実施形態においては、ボード50の上面50aが、洗い場側の急勾配部分50cと、その奥側の緩勾配部分50dを有している。急勾配部分50cは、ボード50の洗い場側の端部から奥側(
図5において右側)へ向かって相対的に急勾配で下がっている。急勾配部分50cの勾配は、好ましくは1/5~1/10程度、より好ましくは1/8程度である。急勾配部分50cの奥行方向(
図5の左右)の寸法は、好ましくは30mm~100mm程度、より好ましくは50mm程度である。
【0048】
急勾配部分50cの奥側に緩勾配部分50dが続いている。緩勾配部分50dは、奥側(
図5において右側)へ向かって相対的に緩やかな勾配で下がっている。緩勾配部分50dの勾配は、第1実施形態と同様、好ましくは10/1000~50/1000程度、より好ましくは30/1000程度である。緩勾配部分50cの奥側に凸部55の前側面55fが滑らかに連なっている。
【0049】
ボード50の裏面50bは、ほぼ水平になっている。
ボード50の複数の脚部56は、互いにほぼ同等の高さになっている。厳密には、浴槽パン4の上面が奥側へ向かって上へ傾斜されているのに合わせて、奥側の脚部56であるほど高さ寸法が短くなっている。
【0050】
浴槽3が緩勾配部分50dに載置されている。浴槽3の底部のリブ37(脚部)は、急勾配部分50cより奥側に離れて配置され、緩勾配部分50dに当接されている。緩勾配部分50dのレベルが第1実施形態の上面50aより低い分だけ、リブ37の高さ寸法が第1実施形態のものより大きくなっている。それだけ、バスタブ30の底板部32とボード50との間の浴槽下隙間3bが広くなっている。
バスタブ30の内底面32aと洗い場2との段差は極力小さくなっている。
【0051】
広い浴槽下隙間3bを利用して、バスタブ30の底板部32の中央部には、洗浄液や噴流用のノズル70が設けられている。浴槽下隙間3bが広いために、ノズル70がボード50と干渉するのを避けることができる。かつ浴槽下隙間3b内には、ノズル70に連なるチューブ71が配管されている。チューブ71の上流端は、浴室1の奥側の壁1wを貫通して、給水・給湯部(図示せず)に接続されている。
【0052】
バスタブ30の奥壁部33には、段差状の肘置き33dが形成されている。このため、奥壁部33と奥側壁1wとの間には、奥側スペース1sが形成されている。なお、この点は、第1実施形態(
図2)も同様である。
奥側スペース1sに洗浄液タンク72が収容されている。詳細な図示は省略するが、洗浄液タンク72からの洗浄液供給路がチューブ71に合流されている。
図示しない制御部の操作によって、給水・給湯部からの水(湯)に洗浄液を混ぜて、ノズル70からバスタブ30内に噴射したり、給水・給湯部からの水(湯)だけをノズル70からバスタブ30内に噴射したりできる。
【0053】
浴室のサイズによって、ボードの枚数及び配置を変えてもよい。
<第3実施形態(
図6)>
図6(a)に示すように、第3実施形態においては、敷設体5が、2つのボード50と、スペーサ部材57を有している。2つのボード50(51,54)が、互いに離れて、浴槽パン4の左右の両端部に配置されている。これらボード51,54どうしの間の空き部分5bには、スペーサ部材57が設けられている。スペーサ部材57は、一対の縦枠材57aと、2つ(複数)の横架材57bを含む枠状に形成されている。一対の縦枠材57aは、奥行方向へ延びるとともに互いに左右に離れて配置さている。各縦枠材57aが、対応するボード51,54の側部に添えられている。横架材57bが、一対の縦枠材57aに架け渡されている。
スペーサ部材57によって、両側のボード50が動かないように押さえることができる。
スペーサ部材57の材質は金属であるが、これに限らず樹脂であってもよい。
【0054】
図6(b)に示すように、浴槽3が中央位置に在るとき、該浴槽3の中央部がスペーサ部材57に被さっている。かつ浴槽3の左右両端部が、左右の各ボード51,54の約半分(一部)にそれぞれ被さっている。中央位置の浴槽3の左右外側に、左右のボード51,54の残り約半分が現れている。すなわち、敷設体5における浴槽3の幅方向の両側にはみ出した部分は、ボード51,54によって構成されている。ボード51,54によって、浴槽3から幅方向の両側へはみ出した浴槽パン4が隠蔽されている。
【0055】
図6(c)に示すように、浴槽3が左端位置(第1端位置)に在るとき、該浴槽3は左側のボード51及びスペーサ部材57の全域に被さっている。かつ浴槽3の右端部が、右側のボード54の一部分に被さっている。
左端位置の浴槽3の右外側に、ボード54の前記一部分を除く部分が現れている。すなわち、浴槽3が第1端位置(左端位置)に在るとき、敷設体5における浴槽3から第2端位置側(右端位置側)へはみ出した部分は、第2端位置のボード54によって構成されている。該ボード54によって、浴槽3から第2端位置側(右端位置側)へはみ出した浴槽パン4が隠蔽されている。
【0056】
図6(d)に示すように、浴槽3が右端位置(第2端位置)に在るとき、該浴槽3は右側のボード54及びスペーサ部材57の全域に被さっている。かつ浴槽3の左端部が、左側のボード51の一部分に被さっている。
右端位置の浴槽3の左外側に、ボード51の前記一部分を除く部分が現れている。すなわち、浴槽3が第2端位置(右端位置)に在るとき、敷設体5における浴槽3から第1端位置側(左端位置側)へはみ出した部分は、第1端位置のボード51によって構成されている。該ボード51によって、浴槽3から第1端位置側(左端位置側)へはみ出した浴槽パン4が隠蔽されている。
【0057】
浴槽3は、浴室1の幅方向の中央位置(
図6(b))に在るときはもちろん、左端位置(第1端位置、
図6(c))に在るときも、右端位置(第2端位置、
図6(d))に在るときも、スペーサ部材57に被さっている。したがって、スペーサ部材57は、浴槽3の位置変更に拘わらず常時、浴槽3によって隠蔽されている。かつ浴槽3から幅方向にはみ出した浴槽パン4は、ボード50によって隠蔽されている。
浴槽3の位置変更時に、ボードを取り外して配置替えする必要がない。
【0058】
<第4実施形態(
図7)>
図7に示すように、第4実施形態の浴室1Dにおいては、浴槽パン4の幅方向の中央部に一対のガイド42,43が設けられている。各ガイド42,43が浴槽パン4の上面から突出されている。2つのガイド42,43は互いに左右に離間して配置されている。その離間距離は、空き部分5bの幅と対応している。空き部分5bの幅方向の両端部と対応する位置にそれぞれガイド42,43が配置されている。
左側のガイド42は、空き部分5bの左側に面するボード52の幅方向の位置を規制している。右側のガイド43は、空き部分5bの右側に面するボード53の幅方向の位置を規制している。
【0059】
ボード50(51~54)からなる敷設体5を浴槽パン4上に敷設する際は、左側のガイド42によってボード52の幅方向の位置決めを行うことができる。かつ、右側のガイド43によってボード53の幅方向の位置決めを行うことができる。
さらに、
図7において仮想線で示す浴槽3を移動させる際は、ガイド42,43によってボード52,53を拘束することで、これらボード52,53を含む敷設体5のガタツキを防止できる。
【0060】
<第5実施形態(
図8)>
図8に示すように、第5実施形態の浴室1Eにおいては、左右両端(第1端位置及び第2端位置)のボード51,54の幅W
51,W
54が、これらボード51,54に対して幅方向の内側に隣接するボード52,53の幅W
52,W
53より大きい(W
51>W
52、W
54>W
53)。これによって、
図8において仮想線で示す浴槽3の幅寸法W
3及び配置との組み合わせによっては、ボードどうしの継ぎ目59a,59bが浴槽3によって隠れるようにできる。
【0061】
詳しくは、ボード51,52どうしが突き当てられて第1の継ぎ目59aが形成され、ボード53,54どうしが突き当てられて第2の継ぎ目59bが形成されている。これら第1の継ぎ目59aと第2の継ぎ目59bとの間隔D59は、浴槽3の幅W3より小さい(D59<W3)。これによって、浴槽3を少なくとも浴室1の幅方向の中央に配置したとき、継ぎ目59a,59bが浴槽3によって確実に隠れるようにできる。
【0062】
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、ボード50の数は、4つ(
図1)又は2つ(
図6)に限らず、3つでもよく、5つ以上でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば介助施設における浴槽に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 浴室
2 洗い場
20 洗い場パン
25 水下
26 排水栓
3 浴槽
30 バスタブ
31 化粧カバー
32a 内底面
33a 内壁面
34 コーナー部
35 水下
37 リブ
4 浴槽パン
42,43 ガイド
5 敷設体
5b 空き部分
5d ボード下空間
50 ボード
50a 上面
50c 急勾配部分
50d 緩勾配部分
51 左端位置(第1端位置)のボード
52,53 ボード
54 右端位置(第2端位置)のボード
55 凸部
55a 上面
56 脚部
57 スペーサ部材
59a 第1の継ぎ目
59b 第2の継ぎ目
6 排水栓