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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】焼結体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/553 20060101AFI20241008BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C04B35/553
C04B35/50
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021503463
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003368
(87)【国際公開番号】W WO2020179296
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019041275
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592097244
【氏名又は名称】日本イットリウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 靖英
(72)【発明者】
【氏名】深川 直樹
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098143(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159713(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0017333(KR,A)
【文献】国際公開第2018/093414(WO,A1)
【文献】特開2016-211072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/553
C04B 35/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素のオキシフッ化物の相を主相とする焼結体であって、L*a*b*色度表示において、L*値が70以上90未満であり、a*値が-1以上3以下であり、b*値が-1以上3以下である、半導体製造装置の構成部材用焼結体。
【請求項2】
結晶粒の平均粒径が10μm以下である請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
相対密度が95%以上である請求項1又は2記載の焼結体。
【請求項4】
3点曲げ強度が100MPa以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の焼結体。
【請求項5】
酸素の含有量が13質量%以下である請求項1~4の何れか1項に記載の焼結体。
【請求項6】
ハロゲン含有ドライエッチング用ガス雰囲気中で使用される請求項1~の何れか1項に記載の焼結体。
【請求項7】
希土類元素及びフッ素を含む化合物を含む原料粉末を1200℃未満の温度でSPS焼結する請求項1に記載の焼結体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は希土類元素とフッ素とを含む化合物の相を有する焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、ドライエッチング装置などのハロゲン系ガス含有環境下で使用される部材は、ハロゲン系ガスとの接触により劣化し、劣化物が飛散して半導体上にパーティクルとして付着して半導体の歩留まりを低下させる。ハロゲン系ガスに対して一定の耐食性を有する材料として、希土類元素及びフッ素を含む化合物を、半導体装置の部材の表面に溶射する材料として用いたり(特許文献1)、半導体装置を構成する焼結体として用いたりする(特許文献2)ことが行われている。特許文献2には、希土類元素及びフッ素を含む化合物の焼結体が、希土類元素及びフッ素を含む化合物の溶射膜よりも緻密であり、半導体製造装置の構成部材として好適であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US2015/0096462A1
【文献】US2017/0305796A1
【発明の概要】
【0004】
しかし、希土類元素及びフッ素を含む化合物の焼結体は、ハロゲン系プラズマに対する耐食性についてなお改善の余地があった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、希土類元素及びフッ素を含む化合物の焼結体であって、従来よりもハロゲン系プラズマに対する耐食性に優れる焼結体を提供することにある。
【0006】
本発明者は、ハロゲン系プラズマに対する耐食性を高めるための希土類元素及びフッ素を含む化合物の焼結体の構成を鋭意検討した。その結果、当該化合物の焼結体では、白色度を高めることで、ハロゲン系プラズマに対する耐食性を効果的に向上させることができることを見出した。
【0007】
本発明は、少なくとも希土類元素とフッ素を含む化合物の相を有する焼結体であって、L*a*b*色度表示において、L*値が70以上である焼結体を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1で得られた焼結体の走査型電子顕微鏡像である。
図2図2は、比較例1で得られた焼結体の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
(1)本発明の焼結体の組成
本発明の焼結体は、希土類元素及びフッ素を含む化合物(以下、単に「Ln及びFを含む化合物」ともいう。)の相を有することを特徴の一つとしている。
【0010】
希土類元素(Ln)としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の16種類の元素を挙げることができる。Ln及びFを含む化合物は、この16種類の希土類元素の少なくとも1種を含む。焼結体の耐熱性、耐摩耗性及び耐食性などを更に一層高める観点から、これらの元素のうち、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)及びイッテルビウム(Yb)から選択される少なくとも1種の元素を用いることが好ましく、とりわけイットリウム(Y)を用いることが好ましい。
【0011】
Ln及びFを含む化合物としては、希土類元素のフッ化物及び/又は希土類元素のオキシフッ化物が好ましく挙げられる。焼結体のハロゲン系プラズマに対する耐食性を高める点からLn及びFを含む化合物は、Ln、F及びOを含む化合物を含むことが好ましく、希土類元素のオキシフッ化物、又は希土類元素のオキシフッ化物及び希土類元素のフッ化物であることが特に好ましい。
【0012】
希土類元素のフッ化物はLnF3で表されることが好ましい。
【0013】
希土類元素のオキシフッ化物(以下「Ln-O-F」とも表記する)は希土類元素(Ln)、酸素(O)、フッ素(F)からなる化合物である。Ln-O-Fとしては、希土類元素(Ln)、酸素(O)、フッ素(F)のモル比がLn:O:F=1:1:1である化合物(LnOF)であってもよく、その他の形態の希土類元素のオキシフッ化物(Ln547、Ln769、Ln436等)であってもよい。オキシフッ化物の製造しやすさや耐食性が高いという本発明の効果がより高く奏される観点から、Ln-O-Fは、LnOxy(0.3≦x≦1.7、0.1≦y≦1.9)で表されることが好ましい。特に上記の観点から、上記式において、0.35≦x≦1.65であることがより好ましく、0.4≦x≦1.6であることが更に好ましい。また0.2≦y≦1.8であることがより好ましく、0.5≦y≦1.5であることが更に好ましい。また上記式において、2.3≦2x+y≦5.3、特に2.35≦2x+y≦5.1を満たすものも好ましく、とりわけ2x+y=3を満たすものが好ましい。
【0014】
本発明の焼結体はLn及びFを含む化合物の相を含むことが好ましく、Ln、F及びOを含む化合物の相を含むことが更に好ましい。焼結体がLn及びFを含む化合物の相を含むこと、及び、Ln、F及びOを含む化合物の相(例えばLn-O-Fの相)を含むことは、X線回折測定により確認できる。
【0015】
ハロゲン系プラズマに対する耐食性を高める観点から、本発明の焼結体は、Ln及びFを含む化合物の相を主相とすることが好ましい。主相とは、Cu-Kα線又はCu-Kα1線を用いたX線回折測定において2θ=10~90度に観察される全てのピークの中で、最もピーク高さが高い物質に由来する相を意味する。従って、本発明の焼結体がLn及びFを含む化合物の相を主相とすることは、Cu-Kα線又はCu-Kα1線を用いたX線回折測定において、2θ=10~90度の範囲で観察される全てのピークのうち最もピーク高さが高いピークがLn及びFを含む化合物のものであることにより確認できる。例えば、本発明の焼結体がLn、F及びOを含む化合物の相(例えばLn-O-Fの相)を主相とすることは、Cu-Kα線又はCu-Kα1線を用いたX線回折測定において、2θ=10~90度の範囲で観察される全てのピークのうち最もピーク高さが高いピークがLn、F及びOを含む化合物(例えばLn-O-Fの相)のものであることにより確認できる。本発明の焼結体は、Ln、F及びOを含む化合物の相を主相とすることが特に好ましく、Ln-O-Fの相を主相とすることが最も好ましい。Ln、F及びOを含む化合物の相を主相とする場合、他の結晶相を有していてもよく、有していなくてもよいが、有している場合、LnF3の相を副相とすることが好ましい。
【0016】
前記の耐食性を更に一層高める観点から、本発明の焼結体は、Cu-Kα線又はCu-Kα1線を用いた2θ=10~90度のX線回折測定においてLn及びFを含む化合物に由来するメーンピークに対して、Ln及びFを含む化合物以外の成分に由来する最大高さのピークのピーク高さが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に一層好ましく、Ln及びFを含む化合物以外の成分に由来するピークが観察されないことが最も好ましい。ピーク高さの単位はcpsである。
【0017】
上記の事項は、Cu-Kα線及びCu-Kα1線のうち何れか一方のみを用いたX線回折測定によって該当すればよく、Cu-Kα線及びCu-Kα1線の両方を用いたX線回折測定において該当することまでを意味しない。本発明で用いるX線回折測定は粉末X線回折測定法による。
【0018】
本発明の焼結体は、希土類元素のフッ化物の相及び希土類元素のオキシフッ化物の相のうち、一方又は両方を有することが好ましい。本発明の焼結体が希土類元素のフッ化物の相及び希土類元素のオキシフッ化物の相を有する場合、いずれを主相としてもよいが、希土類元素のオキシフッ化物を主相とすることがハロゲン系プラズマへの耐食性の観点から好ましい。
【0019】
例えば、本発明の焼結体が希土類元素のフッ化物の相及び希土類元素のオキシフッ化物の相を有する場合、Cu-Kα線又はCu-Kα1線を用いた2θ=10~90度のX線回折測定において、希土類元素のオキシフッ化物の相のメーンピークに対して、希土類元素のフッ化物の(020)面に由来するピークのピーク高さが5%以上70%以下であることが好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましい。例えば、Cu-Kα線又はCu-Kα1線を用いたX線回折測定において、フッ化イットリウムの(020)面に由来するピークは、通常26.0付近、具体的には25.9~26.1度の範囲に観察される。例えば希土類元素がイットリウムである場合、フッ化イットリウムとオキシフッ化イットリウムとはそれらのメーンピーク位置が重なる場合があり、便宜上、ここでは希土類元素フッ化物について(020)面に由来するピークにてその存在を確認した。オキシフッ化イットリウムのうち、YOFのメーンピークは、28.0~29.0度に観察され、Y547のメーンピークは、通常27.5~28.5度に観察される。
【0020】
(2)L値
本発明の焼結体は、L*a*b*色度表示、すなわちL*a*b*系表色系色座標のL*値が70以上であることにより、ハロゲン系プラズマに対する耐食性が高い。これは以下の理由によると考えられる。Ln及びFを含む化合物は、焼結前は白色の粉体である。しかしこれを用いて焼結体を作製する場合、ホットプレス法などの一般的な焼結法において一定強度の焼結体を製造するには、通常1200℃以上で焼成することが必要である。1200℃の焼成では、粉末中のフッ素の移動や反応が活発になり、フッ素の脱離欠損等の組成変化が生じやすく、粉末が酸素を含有する場合には、酸素の脱離欠損が生じやすい。特に低酸素状態で1200℃以上で焼成すると、フッ素や酸素の脱離欠損が生じやすい。これらの欠損は、灰色または黒色の着色につながりやすい。
一方、1200℃未満で焼結させると、大気中でも低酸素状態で焼成しても原料粉末とほぼ同一の組成のままで焼結体が得られやすい。特に、プラズマ放電焼結(SPS)法、SPS法以外のパルス通電焼結法などを用いて希土類オキシフッ化物や希土類フッ化物を焼結させると、低温且つ比較的短時間で焼結させることが可能になり、欠損が少なく、白色を維持した焼結体を得ることができる。このような白色の焼結体は、フッ素や酸素の欠損が少ないため、ハロゲン系プラズマに対する耐食性が高いと考えられる。白色度は色差計で測定することができ、焼結体表面を測定したL*の値で判断できる。
【0021】
上記の観点から、より一層ハロゲン系プラズマ耐食性を高める点から、本発明の焼結体は、L*a*b*系表色系色座標のL*値が75以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。
また、焼結体の製造容易性の点から、L*a*b*系表色系色座標のL*値の上限としては、95以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましい。
【0022】
(3)a*値、b*値
Ln及びFを含む化合物の相を有する焼結体において、L*a*b*系表色系色座標のa*値は、一般に、-1以上3以下であり、0以上1以下であることが好ましい。Ln及びFを含む化合物の相を有する焼結体において、L*a*b*系表色系色座標のb*値は、一般に、-1以上3以下であり、0以上1以下であることが好ましい。a*値及びb*値が上記範囲内である焼結体は製造時の組成変化等による着色が抑制されており好ましい。
a*値、b*値が上記範囲内である焼結体は、後述する好適な焼結体の製造方法により得ることができる。
【0023】
(4)結晶粒の平均粒径
本発明の焼結体は、結晶粒の平均粒径が小さいことが緻密な焼結体であり、ハロゲン系プラズマ耐食性の点から好ましい。結晶粒の平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。
結晶粒の平均粒径が上記上限以下である焼結体は、SPS(Spark Plasma Sintering)法により得ることができる。SPS法では、通常、焼結型へ粉末原料を充填し、DCパルス電流を印加して、電気エネルギーを直接投入された焼結型の自己発熱を、加圧とともに焼結駆動力として利用しながら焼結を行う。SPS法では一般に他の方法よりも低温且つ短時間で焼結が可能となる。低温且つ短時間での焼結を行うことで、SPS法により、粒成長を抑制できる。特に、SPS法では加熱部分が焼結型周辺とその内部のみになることから熱容量が小さくなり、高速加熱が可能となる。加圧しながら低温で急速昇温を行うことで一層粒成長を抑制できる。
これに対して後述する比較例1~3に示すように、ホットプレス法では、加圧は行うものの高温且つ長時間の焼結が必要になり、また昇温に時間がかかるため、粒成長が大きく、結晶粒の平均粒径を10μm以下に抑制できない。また、1200℃以上の高温で焼結する場合、一般に、粒成長しやすく結晶粒の平均粒径を10μm以下に抑制できない。
【0024】
本発明の焼結体の耐食性を一層高める点から、結晶粒の平均粒径は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが特に好ましい。焼結体の結晶粒の平均粒径は0.1μm以上であることが、焼結が進行しており、焼結体の強度が得られるため好ましい。焼結体の結晶粒の平均粒径は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
【0025】
(5)強度
本発明の焼結体は、強度が一定以上高いものであることが好ましい。これにより焼結体を、熱応力、熱衝撃、耐摩耗性、加工性の高いものとすることができる。具体的には、本発明の焼結体は3点曲げ強度が100MPa以上であることが好ましく、110MPa以上であることがより好ましい。焼結体の3点曲げ強度は高ければ高いほど好ましいが、上限としては、500MPa以下であることが、焼結体の製造の容易性等の観点から好ましい。上記の強度を有する焼結体は、真空雰囲気下でのSPS法を採用することで実現できる。上記の強度を有する焼結体は、具体的には本発明の焼結体を後述する好ましい製造方法で製造することにより得ることができる。3点曲げ強度は後述する実施例に記載の方法にて測定される。
【0026】
(6)酸素含有量
本発明の焼結体は、希土類元素及びフッ素のほかに、酸素を含んでいてもよく、その場合にはその含有量が13質量%以下であることが、ハロゲン系プラズマ及びハロゲン含有ガスに対する耐食性が高い点で好ましい。この観点から本発明の焼結体は、酸素の含有量が10質量%以下であることがより好ましく、9質量%以下であることが更に好ましい。焼結体の酸素含有量はゼロでもよいが、焼結体が希土類元素及びフッ素のほかに、酸素を含んでいる場合、0.3質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが酸素系プラズマ及び酸素含有ガスに対する耐食性が高い点でより好ましい。焼結体中の酸素含有量は、例えば(株)堀場製作所製の酸素・窒素測定装置であるEMGA-920によって測定することができる。上記の酸素含有量は、後述する焼結体の好適な製造方法において原料粉末中の酸素含有量を上記の焼結体の好ましい酸素含有量の範囲に調整することで達成できる。
【0027】
(7)相対密度
焼結体は、相対密度が95%以上であることも好ましい。相対密度とは、焼結体の実測密度を理論密度(計算密度ともいう)で除し、100を乗じた値である。焼結体の実測密度はアルキメデス法で測定される。焼結体の理論密度は組成によって異なる。Y547の理論密度は5.15g/cm3、YOFの理論密度は5.23g/cm3である。焼結体の相対密度は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上であると、耐食性が高くかつ強度の高い焼結体が得られる。同様の観点からY547を主相とする焼結体は、実測密度が4.80g/cm3以上であることが好ましく、4.90g/cm3以上であることがより好ましい。YOFを主相とする焼結体は、実測密度が4.85g/cm3以上であることが好ましく、4.95g/cm3以上であることがより好ましい。
【0028】
(8)厚さ
本発明の焼結体の形状は問わないが、例えば、その厚さとしては、0.1~500mm程度、より好ましくは0.5~100mm程度、更に好ましくは1~30mm程度であることが、上述した種々の用途に好適に用いることができる点で好ましい。ここでいう厚さとは、焼結体が板状や膜状であることを必須とするものではなく、焼結体の形状に関わらず、焼結体をその水平投影面積が最も大きくなる状態で水平面上に載置したときにおける高さを意味する。
【0029】
(9)好適な製造方法
次に、本発明の焼結体の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、Ln及びFを含む化合物を含む原料粉末をSPS法により1200℃未満の温度で焼結するものであることが好ましく、当該原料粉末を真空雰囲気下、SPS法により800℃以上1200℃未満で焼結するものであることがより好ましく、特に当該原料粉末を真空雰囲気下、SPS法により800℃以上1200℃未満、20MPa以上100MPa以下の圧力で焼結するものであることが好ましい。
【0030】
焼結体の原料に用いるLn及びFを含む化合物は通常粉末状である。ここでいう粉末状には顆粒状も含まれる。焼結体の原料に用いるLn及びFを含む化合物としては、目的とする焼結体の組成に対応する組成を有するものを用いることが好ましい。従って焼結体の原料に用いるLn及びFを含む化合物として、希土類元素のフッ化物及び/又は希土類元素のオキシフッ化物を用いることが好ましい。例えば、希土類元素のフッ化物の相のみを有する焼結体を得ようとする場合は、希土類元素のフッ化物からなる原料粉末を用いればよい。希土類元素のオキシフッ化物の相を有する焼結体を得ようとする場合は、目的とする焼結体の相を構成する希土類元素のオキシフッ化物の原料粉末を用いることが、均一な組成の焼結体を得る観点から好ましい。従って、LnOF相のみを有する焼結体を得ようとする場合は、LnOFからなる原料粉末を用いることが好ましく、Ln547の相のみを有する焼結体を得ようとする場合は、Ln547からなる原料粉末を用いることが好ましい。同様に、希土類元素のフッ化物の相及び希土類元素のオキシフッ化物の相を有する焼結体を得ようとする場合も、希土類元素のフッ化物及び希土類元素のオキシフッ化物を含む原料粉末を用いることが、均一な組成の焼結体を得る観点から好ましい。前記の各原料粉末は顆粒であってもよい。例えば、希土類元素のフッ化物の相と希土類元素のオキシフッ化物の相とを有する焼結体を得ようとする場合には、希土類元素のオキシフッ化物100質量部に対し、希土類元素のフッ化物を10質量部以上1020質量部以下用いることがハロゲン系プラズマに対する耐食性に特に優れた焼結体を得る観点から好ましく、希土類元素のオキシフッ化物100質量部に対し、希土類元素のフッ化物を20質量部以上250質量部以下用いることが一層好ましい。なお希土類元素のオキシフッ化物の相を有する焼結体を得る場合、希土類元素の酸化物Ln23及び希土類元素のフッ化物LnF3を混合させた原料粉末を用いてもよい。またLn粉末とLnF粉末の混合比は、両者の混合物の酸素含有量が0.3質量%以上10質量%以下となるように調整されることが好ましく、1質量%以上9質量%以下となるように調整されることがより好ましい。上記の焼結体の好ましい酸素含有量、Ln3及びLnF3を混合させた後に、これを焼成することにより、希土類元素のオキシフッ化物を含む粉末を作製してもよい。焼成温度としては、希土類元素のオキシフッ化物を首尾よく生成する点から600℃以上1100℃以下が望ましく、800℃以上1000℃以下がより好ましい。焼成雰囲気としてはアルゴンなどの不活性雰囲気及び大気等の酸化性雰囲気が挙げられる。
【0031】
緻密且つ耐食性等の好ましい物性の焼結体を得る点から、原料粉末に含有されるLn及びFを含む化合物の粉末は、これが造粒顆粒でない場合、平均粒子径は10μm以下が好ましい。原料となるLn及びFを含む化合物の粉末の平均粒子径の下限は、例えば0.1μm以上であることが、原料入手の容易性や充填性、成形性、組成安定性の点で好ましい。また、緻密且つ耐食性等の好ましい物性の焼結体を得る点から、原料粉末に含有されるLn及びFを含む化合物の粉末の平均粒子径は、0.5μm以上8μm以下が好ましく、0.7μm以上5μm以下がより好ましい。一方、Ln及びFを含む化合物の粉末は造粒顆粒である場合、その平均粒子径は、緻密且つ耐食性等の好ましい物性の焼結体を得る点から、10μm以上50μm以下が好ましく、20μm以上48μm以下がより好ましい。なお、Ln及びFを含む化合物を含む原料粉末の平均粒子径も上記のLn及びFを含む化合物の粉末の平均粒子径の好ましい範囲内であることが好ましい。上記Ln及びFを含む化合物の粉末及び原料粉末の平均粒子径は、体積基準の積算分率における50%径(以下、単に「D50」ともいう)であり、レーザ回折・散乱式粒度分布測定法により測定される。具体的な測定方法は以下の通りである。下記方法の平均粒子径の測定では、造粒顆粒については前処理として超音波処理は行わないが、造粒顆粒以外の粉末については、前処理として300W、5分の超音波処理を行う。
【0032】
(平均粒子径の測定方法)
日機装株式会社製マイクロトラックHRAにて測定する。測定の際には、分散媒として2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、マイクロトラックHRAの試料循環器のチャンバーに試料を適正濃度であると装置が判定するまで添加する。
【0033】
本製造方法では、原料粉末を焼結型に充填した後、圧縮成形を行う。圧縮成形としては、例えば一軸加圧により行うことができるが、これに限定されない。DCパルス電流の焼結型への通電は、圧縮成形と同時に行ってもよいし、圧縮成形後に行ってもよい。圧縮成形及び通電時の加圧の圧力はいずれも、結晶粒の平均粒径を上記の上限以下としやすい点で、20MPa以上であることが好ましく、25MPa以上であることがより好ましい。また圧縮成形及び通電時の加圧の圧力は、100MPa以下であることがプレス型の破損を抑える等の点で好ましく、60MPa以下であることがより好ましい。
【0034】
パルス通電焼結は、真空雰囲気下で行うことが結晶粒の粒成長を一層効果的に抑制できる。真空雰囲気下の絶対圧は10Pa以下であることが好ましく、8Pa以下であることが特に好ましい。
【0035】
焼結温度は、1200℃未満であることが、結晶粒のL*値を上記上限以下としやすい点、及び結晶粒の平均粒径を上記上限以下とする点で好ましく、1100℃以下であることがより好ましく、1000℃以下であることが特に好ましい。焼結温度は800℃以上であることが緻密な焼結体を得られる点で好ましく、900℃以上であることがより好ましい。ここでいう焼結温度は最高焼結温度を指す。
【0036】
上記最高焼結温度での焼結時間は、好ましくは、60分以下であることが、粒成長を抑制する点、及び着色を防止する点等で好ましく、30分以下であることがより好ましく、10分以下であることが特に好ましい。
【0037】
パルス通電時の昇温速度は、2℃/分以上であることが、加熱時間を短縮して粒成長を効果的に防止する点で好ましく、4℃/分以上であることがより好ましく、10℃/分以上であることが特に好ましい。ここでいう昇温速度は、常温から最高焼結温度までの昇温速度が一定でない場合、全ての昇温時における平均の昇温速度を指す。
【0038】
また、昇温時において、常温から最高焼結温度に到達するまで上記圧力での加圧を行うことが、粒成長を抑制する点で好ましい。特に、常温から最高焼結温度に到達し、更に、最高焼結温度での一定の保持時間を設定する場合には、その保持時間の終了まで上記圧力での加圧を行うことが、粒成長を抑制する点で好ましい。
【0039】
1回のパルスの通電時間は、10ミリ秒以上100ミリ秒以下であることが均一な焼結体が得られる観点から好ましく、20ミリ秒以上50ミリ秒以下であることがより好ましい。
【0040】
このようにして得られた焼結体は、ハロゲン含有ドライエッチング用ガス雰囲気中で使用されることが、ハロゲンに対する耐食性を発揮できる点で好ましい。ハロゲン含有ドライエッチング用ガス雰囲気中で使用される焼結体の用途としては、耐エッチング装置における真空チャンバーのほか、該チャンバー内における試料台やチャック、シャワーヘッド、ウェハーホルダー、フォーカスリング、エッチングガス供給口、露光装置といった、半導体製造装置における、各種の構成部材が挙げられる。ハロゲン含有ドライエッチング用ガスの具体例としては、CHF、CF、C、CF、CCl、BCl、Cl、HCl、H、Ar等を挙げることができ、必要に応じてこれらのガスを組み合わせて使用される。
また本発明の焼結体は半導体製造装置の構成部材以外にも各種プラズマ処理装置、化学プラントの構成部材の用途に用いることができる。なお焼結体はその用途から、スパッタリングターゲット等の成膜用材料を除くものであってもよい。
【実施例
【0041】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。以下の実施例及び比較例における粉末の平均粒子径は上述したD50を指す。
【0042】
〔実施例1〕(SPS焼結によるY547及びYF3を含む焼結体の製造)
2粉末(平均粒子径3μm)及びYF粉末(平均粒子径6μm)を質量比4:9で混合した粉を大気中、1000℃で5時間焼成してYとYFからなる混合相の粉末を作製した。得られた混合相の粉末をスラリー化した後、粉砕し、噴霧乾燥機で顆粒状に造粒するとともに乾燥し、更に大気中で600℃で6時間焼成して平均粒子径45μmの顆粒を得た。この顆粒について粉末X線回折測定を行ったところ、結晶相の主相としてY547が、副相としてYF3が観察された。当該X線回折測定において、2θ=27.5~28.5度に観察されるY547のメーンピークに対して、2θ=26.0度付近に観察されるYF3の(020)面に由来するピーク高さ比が16%であった。Y547及びYF3以外の成分に由来するピークは観察されなかった(X線回折測定の測定方法は後述する焼結体粉末についてXRD測定方法と同様とした)。
この混合相の顆粒2500gを、直径260mmの円筒形の金型に入れ、パルス通電加圧焼結装置 LABOX-650F(最大パルス電流出力5000A、最大荷重60kN)にて加圧焼結した。チャンバー内は加圧開始時から6Pa以下の真空雰囲気とした。1回のパルスの通電時間は40ミリ秒であった。加圧条件は、30MPaとした。加圧と通電は同時に開始した。昇温速度20℃/分で室温から980℃まで昇温した後、当該温度で5分間保持した。その後、通電及び加圧を同時に終了し、100℃まで冷却した後、厚さ約10mmの焼結体を取り出した。焼結体について下記条件の粉末X線回折測定を行った結果を表1に示す。当該X線回折測定において、2θ=27.5~28.5度に観察されるY547のメーンピークに対して、2θ=26.0度付近に観察されるYF3の(020)面に由来するピークのピーク高さ比が17%であった。Y547及びYF3以外の成分に由来するピークは観察されなかった。
【0043】
<焼結体粉末のXRD測定>
焼結体の一部を、磁製乳鉢と乳棒を用いて被粉砕物が完全に浸漬する量のエタノールを滴下して10分粉砕して粉末を得、この粉末について150μmの篩で分級し、篩下について下記条件にてX線回折測定を行った。
・装置:UltimaIV(株式会社リガク製)
・線源:CuKα線
・管電圧:40kV
・管電流:40mA
・スキャン速度:2度/min
・ステップ:0.02度
・スキャン範囲:2θ=10度~90度
【0044】
〔実施例2〕(SPS焼結によるYOFを含む焼結体の製造)
547及びYF3の混合相の顆粒の代わりに、YOF粉末(平均粒子径0.8μm)を用いた。このYOF粉末6gを、直径20mmの円筒形の金型に入れ、実施例1と同じ装置で加圧焼結した。チャンバー内は加圧開始時から6Pa以下の真空雰囲気とした。1回のパルスの通電時間は40ミリ秒であった。加圧条件は、30MPaとした。加圧と通電は同時に開始した。昇温速度10℃/分で室温から1000℃まで昇温した後、5分間当該温度で保持した。次いで通電及び加圧を同時に終了し、100℃まで冷却した後、厚さ約4mmの焼結体を得た。焼結体について上記条件のX線回折測定を行ったところ、YOF以外の成分に由来するピークは観察されなかった。
【0045】
〔実施例3〕(SPS焼結によるY547を含む焼結体の製造)
547及びYF3の混合相の顆粒の代わりに、Y547粉末(平均粒子径1.1μm)を用いた。また温度条件は900℃まで4℃/分昇温し、900℃から950℃まで2℃/分昇温した後、5分間当該温度で保持した。その点以外は実施例1と同様にして、厚さ約10mmの焼結体を得た。焼結体について上記条件のX線回折測定を行ったところ、Y547以外の成分に由来するピークは観察されなかった。
【0046】
〔比較例1〕(HP焼結によるY547及びYF3を含む焼結体の製造)
直径76.2mmの円筒形の金型に、実施例1で用いたY547及びYF3の混合相の顆粒を約200g入れ、前記の金型と同じサイズのカーボン製のホットプレス型に入れ、ホットプレスにより焼結した。Ar流(流速2リットル/分)中下、昇温速度30℃/minで900℃まで昇温し、更に10℃/minで1200℃まで昇温後、1200℃で2時間保持している間に2.94MPaの圧力で一軸加圧した。これにより焼結体を得た。
【0047】
〔比較例2〕(HP焼結によるYOFを含む焼結体の製造)
特許文献2の実施例2と同様の方法で焼結体を製造した。すなわち、縦35mm、横35mmの四角形の金型に、YOF粉末(平均粒子径0.8μm)を約20g入れ、油圧プレスにより、18.4MPaの圧力で一次成形をした。これを前記の角型と同じサイズのカーボン製のホットプレス型に入れ、ホットプレスにより焼結した。Ar流中(流速2リットル/分)下、30℃/minで1200℃まで昇温し、更に10℃/minで1600℃まで昇温し、1600℃で1時間保持した後、10℃/minで 1200℃まで降温し、その後 30℃/min で降温した。1600℃で1時間保持している間に36.7MPaの圧力で一軸加圧した。これにより焼結体を得た。
【0048】
〔比較例3〕(HP焼結によるY547を含む焼結体の製造)
特許文献2の実施例4と同様の方法で焼結体を製造した。すなわち、縦35mm、横35mmの四角形の金型に、Y547粉末(平均粒子径1.1μm)を約20g入れ、油圧プレスにより、18.4MPaの圧力で一次成形をした。これを前記の角型と同じサイズのカーボン製のホットプレス型に入れ、ホットプレスにより焼結した。Ar流中(流速2リットル/分)下、30℃/minで1200℃まで昇温し、更に10℃/minで1400℃まで昇温した後 10℃/minで1200℃まで降温し、その後30℃/minで降温した。1400℃での保持時間は0時間であった。温度が1200℃以上である間に36.7MPaで一軸加圧した。これにより焼結体を得た。
【0049】
実施例及び比較例で得た焼結体について、上記の方法で相対密度及び酸素含有量を測定した。また結晶粒の平均粒径及びL*値、a*値、b*値、3点曲げ強度を下記方法で測定した。結果を表1に示す。表1には、X線回折測定の結果も併せて示す。実施例1の焼結体の実測密度は4.96g/cmであった。
【0050】
<結晶粒の平均粒径(結晶粒径)>
インターセプト法を用いて結晶粒の平均粒径を測定した。インターセプト法は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で直線を引き、1つの線が1つの粒子を横切る長さを結晶粒径とし、この平均値を結晶粒の平均粒径とするものである。SEM画像(写真)上に、対角線方向に5本の直線を平行に引く。5本の直線は、矩形状のSEM画像(写真)における前記の対角線方向に互いに向き合う二つの角部の間の距離を6等分する位置に引くものとする。前記の直線は、画像の一方の端に最も近い粒界から、当該画像の他方の端に最も近い粒界まで引くものとする。これを異なる2視野分行う。2視野における計10本の直線それぞれの長さの合計と、粒界との交点の数から下記式1にて計算する。ただし、この交点の数には、直線の両端は含まないものとする。
(式1)結晶粒の平均粒径=2視野分の計10本の直線の長さの合計/(2視野分の直線の総本数+2視野分の計10本の直線における粒界との交点の総数)
SEM画像の倍率は、当該画像中に観察される結晶粒の数が、10個~30個となる倍率とする(ただし、ここでカウントする結晶粒には、一の結晶粒全体が画像中に観察されるもののみを含め、一部が切れて見えないものは含めないものとする)。
サンプルは破断して断面を切り出した後、断面を鏡面研磨し、次いでアルゴン雰囲気下で焼成し、サーマルエッチングした。焼成温度は焼結体の融点に基づき、実施例1及び比較例1は830℃、実施例2及び比較例2は1400℃、実施例3及び比較例3は900℃とした。保持時間は1時間とした。次いでエッチングした面をSEMで撮影して画像を得た。
実施例1及び比較例1の結晶粒の平均粒径を測定した際に用いたSEM画像を図1及び図2として示す。図1及び図2を比較すると、実施例1の焼結体は比較例1の焼結体に比して明らかに欠陥が少ない。
【0051】
<3点曲げ強度の測定方法>
焼結体を切断し、断面を鏡面研磨することにより、厚さ1.5~3.0mm、幅約4mm、長さ約35mmの短冊形の試験片を作製する。これをSiC製治具上に置き、万能材料試験機(1185型、INSTRON製)で3点曲げ試験を行う。条件は、支点間距離30mm、クロスヘッドスピード0.5mm/minとし、試験片本数は5本とする。JIS R1601に基づき、以下の式を用いて3点曲げ強度 [MPa]を算出する。3点曲げ強度=(3×Pf×L)/(2×w×t2) (MPa)
ここで、Pfは試験片が破断した時の荷重 [N]、Lはスパン距離 [mm]、wは試験片の幅[mm]、tは試験片の厚さ[mm]である。
【0052】
<L*値、a*値、b*値>
コニカミノルタ社製の分光色差計CR100を用いて測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
<パーティクルの発生数の評価方法>
焼結体に対し、プラズマエッチングを行った。プラズマエッチングを行うに際しては、チャンバー内には直径3インチのシリコンウエハーを載置しておいた。エッチング作用によって削られて飛散し、シリコンウエハーの表面に付着したパーティクルのうち、粒径が約0.2μm以上のものの数を、拡大鏡を用いて計測した。プラズマエッチング条件は以下のとおり、フッ素系プラズマとした。
・雰囲気ガス CHF3:Ar:O2=80:160:100mL/min
・高周波電力:1300W
・圧力:4Pa
・温度:60℃
・エッチング時間:100時間
また、雰囲気ガスのCHF3をHClに変更して塩素系プラズマとした場合についても同様の計測を実施した。
結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
上記の通り、実施例1の焼結体では、実施例1と同様に主相がY547で副相がYF3である比較例1の焼結体に比して、フッ素系及び塩素系の何れのプラズマ条件下においても、パーティクル発生数が2分の1以下となった。同様に、YOF焼結体である実施例2の焼結体は比較例2に比して、Y547焼結体である実施例3の焼結体は比較例3に比してそれぞれパーティクル発生数が大幅に減少した。以上より、L*値が特定値以下の本発明の焼結体が優れたハロゲン系プラズマ耐食性を有することは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、希土類元素及びフッ素を含む化合物の相を有する焼結体であって従来よりもハロゲン系プラズマに対する耐食性に優れる焼結体を提供することができる。
図1
図2