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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】皮膚培養装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20241008BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241008BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241008BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241008BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
C12Q1/02
C12Q1/68
G01N33/50 Q
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021520930
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 GB2019052952
(87)【国際公開番号】W WO2020079431
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】1816911.0
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512316611
【氏名又は名称】クイーン マリー ユニバーシティ オブ ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハネン,ロザリンド フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】カストレジョン-ピタ,ホセ ラファエル
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030958(WO,A1)
【文献】特開2017-184659(JP,A)
【文献】特表2015-529817(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020970(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105368712(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャンバ、第2のチャンバ、バリア、および皮膚サンプルホルダを備える、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚を二相培養するように構成された皮膚培養装置であって、
前記第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ1%未満のCOを含むガス環境をもたらすように構成されており、
前記第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を用意するように構成されており、
前記皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容するように構成されており、
前記バリアは、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバを分離し、かつ前記皮膚サンプルホルダを受けるように構成されており、
使用中、
(i)前記第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ1%未満のCOを含むガス環境を含み、
(ii)前記第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、
(iii)前記皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容し、
(iv)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の第1の表面は、前記ガス環境に曝露されるが、前記組織培養培地には曝露されず、
(v)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の、前記第1の表面の反対にある第2の表面は、前記組織培養培地に曝露されるが、前記ガス環境には曝露されない、
皮膚培養装置。
【請求項2】
(A)(a)前記第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ1%未満のCOを含むガス環境を含み、
(b)前記第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃、およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、かつ/または、
(c)前記皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容する、および/または
(B)ex vivo哺乳動物皮膚の表皮もしくは哺乳動物代用皮膚の表皮同等物が、前記第1の表面を提供し、かつ/またはex vivo哺乳動物皮膚の真皮もしくは哺乳動物代用皮膚の真皮同等物が、前記第2の表面を提供する、および/または
(C)前記装置は、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚のサンプルを備え、および/または
(D)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、角質層、顆粒層、有棘層、および/または基底層を含み、および/または
(E)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、複数のex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚サンプルのうちの1つであり、前記複数のサンプルは、別々の皮膚サンプルホルダでアレイ形式に配置されている、および/または
(F)前記装置は、組織培養培地を前記第2のチャンバの中および/または外にポンピングする1つまたは複数のポンプを備え、および/または
(G)前記装置は、1つまたは複数のpHプローブ、温度プローブ、COセンサ、および/または湿度センサを備える、および/または
(H)使用中、前記組織培養培地は、前記第2のチャンバ内で制御された深さに維持される、および/または
(I)前記バリアは、ガスケット、またはOリングを含む、および/または
(J)前記第2のチャンバは、組織培養培地を含み、前記組織培養培地は、ヒーターの動作によって温度33.0~37.5℃に維持される、および/または
(K)前記装置は、培養培地のpH、湿度、および/または温度のモニタリングおよびフィードバック制御を行う、および/または
(L)前記装置は、前記第1および第2のチャンバを封入する収容部を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の1つまたは複数のサンプルを用意すること、ならびに、請求項1から2のいずれか一項に記載の装置を使用して、前記1つまたは複数のサンプルを培養することを含む、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法。
【請求項4】
(A)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法であって、前記方法は、
前記ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面を、1%未満のCOを含み、温度37℃未満および相対湿度90%未満のガス環境に維持すること、ならびに、
前記ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面を、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地に維持することを含み、
前記第1の表面は、前記組織培養培地に曝露されず、前記第2の表面は、前記ガス環境に曝露されない、および/または
(B)前記代用皮膚は、FT RHEまたはRHEである、および/または
(C)前記ガス環境は、
(a)0.02~0.05%のCOを含み、かつ/または、
(b)40~50%RHの相対湿度を有し、かつ/または、
(c)温度18~25℃であり、かつ/または、
(d)無菌である、および/または
(D)前記組織培養培地は、
(a)前記ex vivo皮膚の真皮または前記FT-RHEの真皮同等物の下を、1ml/分~45ml/分の範囲の流速で流れ、かつ/または、
(b)温度37℃であり、かつ/または、
(c)pH6.1~7.9に維持される、および/または
(E)(a)少なくとも5日間の培養後、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に免疫細胞が保持され、
(b)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞は、少なくとも3日間の培養後、正常な脂質プロファイルを保持し、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、正常な検出可能レベルでケラチノサイト分化マーカーを発現し、かつ/または、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現を有しない、および/または
(F)前記方法は、組織培養培地のpH、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよびフィードバック制御を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する化合物または組成物の効果を試験する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を前記化合物または組成物と接触させること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対する前記化合物または組成物の効果を決定すること
を含む、方法。
【請求項6】
(A)前記化合物または組成物は、
(i)治療用化合物もしくは治療用組成物、
(ii)医薬化合物もしくは医薬組成物、
(iii)化粧用化合物もしくは化粧用組成物、および/または
(iv)殺虫剤
である、および/または
(B)前記効果は、毛髪の成長の促進または抑制であり、
前記効果は、皮膚に関連する状態または疾患の治療または予防を含み、
前記効果は、有害な皮膚反応であり、かつ/または、
前記効果は、皮膚感作および/または皮膚刺激である、および/または
(C)ステップ(d)は、遺伝子発現レベルを測定することを含む、および/または
(D)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、疾患の状態または健康な皮膚生理の変化のモデルを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のバリア機能を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、
(d)前記化合物または組成物が、どの程度まで前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を通過し得るかを決定すること
を含む、方法。
【請求項8】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の免疫機能および/または炎症を評価する方法であって、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚をアレルゲンまたは免疫原と接触させること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の免疫応答または炎症が生じるかどうかを決定すること
を含む、方法。
【請求項9】
刺激に対するex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を評価する方法であって、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を刺激に曝露すること、ならびに、
(d)前記刺激に対する前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を決定すること
を含む、方法。
【請求項10】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム解析、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、リピドーム解析、および/またはプロテオーム解析を行う方法であって、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、ならびに、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対してゲノムアッセイ、トランスクリプトームアッセイ、メタボロームアッセイ、リピドームアッセイ、および/またはプロテオームアッセイを行うこと
を含む、方法。
【請求項11】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の真皮吸収を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、
(d)前記化合物または組成物が、どの程度まで前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚によって吸収されるかを決定すること
を含む、方法。
【請求項12】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚感作および/または皮膚刺激を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を化合物もしくは組成物と接触させること、または前記ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を刺激に曝露すること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚において皮膚感作および/または皮膚刺激が生じるかどうかを決定すること
を含む、方法。
【請求項13】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対するガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を試験する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)請求項3または4に記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を前記ガス、エアロゾル、または汚染因子と接触させること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対する前記ガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を決定すること
を含む、方法。
【請求項14】
(a)前記バリアは、プラスチックおよび/またはシリコンガスケットを含み、
(b)前記皮膚サンプルホルダは、メッシュを含み、
(c)前記皮膚サンプルホルダは、トランスウェルインサートであり、
(d)前記皮膚サンプルまたは皮膚同等物は、ゲルに包埋もしくは包囲されるか、ゲルに担持されるか、またはトランスウェルの中にあり、
(e)細胞は、少なくとも5日間にわたって代謝活性/生存性を保持し、
(f)pHおよび水分の表皮表面特性は、7日間にわたって維持され、
(g)前記組織培養培地は、0.01ml/分~45ml/分の範囲の流速で前記第2のチャンバを流れ、
(h)前記組織培養培地は、温度33~37℃であり、
(i)前記組織培養培地は、pH6.1~7.9に維持され、
および/または
(j)前記組織培養培地は、0.2~15%Oの酸素飽和レベルに維持され、
(k)前記装置は、前記ガス環境内のCO、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよび/またはフィードバック制御を行い
(l)前記第1の表面は、表皮角化層であり、かつ/または、前記第2の表面は、真皮および/もしくは皮下組織であり、
(m)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の前記表皮角化層の厚みは、前記装置における少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日間の培養の間、第0日の前記厚みと比べて一定または実質的に一定の状態を保ち、
および/または、
(n)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の前記表皮角化層の厚みは、前記装置における少なくとも7日間の培養の間、第0日の前記厚みと比べて一定の状態を保つ、
および/または
(o)前記装置は、皮膚の機能および生物学的アウトプットを評価するための1つまたは複数のセンサを含む、
請求項1から2のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
(a)前記バリアは、プラスチックおよび/またはシリコンガスケットを含み、
(b)前記皮膚サンプルホルダは、メッシュを含み、
(c)前記皮膚サンプルホルダは、トランスウェルインサートであり、
(d)前記皮膚サンプルまたは皮膚同等物は、ゲルに包埋もしくは包囲されるか、ゲルに担持されるか、またはトランスウェルの中にあり、
(e)細胞は、少なくとも5日間にわたって代謝活性/生存性を保持し、
(f)pHおよび水分の表皮表面特性は、7日間にわたって維持され、
(g)前記組織培養培地は、0.01ml/分~45ml/分の範囲の流速で前記第2のチャンバを流れ、
(h)前記組織培養培地は、温度33~37℃であり、
(i)前記組織培養培地は、pH6.1~7.9に維持され、
および/または
(j)前記組織培養培地は、0.2~15%Oの酸素飽和レベルに維持され、
(k)前記方法は、前記ガス環境内のCO、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよび/またはフィードバック制御を含み、
(l)前記第1の表面は、表皮角化層であり、かつ/または、前記第2の表面は、真皮および/もしくは皮下組織であり、
(m)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の前記表皮角化層の厚みは、前記装置における少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日間の培養の間、第0日の前記厚みと比べて一定または実質的に一定の状態を保ち、
および/または、
(n)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の前記表皮角化層の厚みは、前記装置における少なくとも7日間の培養の間、第0日の前記厚みと比べて一定の状態を保つ、
および/または
(o)前記装置は、皮膚の機能および生物学的アウトプットを評価するための1つまたは複数のセンサを含む、
請求項3から13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を二相培養するように構成された皮膚培養装置に関する。また本発明は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養する方法にも関する。本発明はさらに、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する化合物または組成物の効果を試験する方法、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のバリア機能を評価する方法、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の免疫機能および/または炎症を評価する方法、ならびにex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を評価する方法に関する。また本発明は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の真皮吸収を評価する方法、皮膚感作および/または皮膚刺激を評価する方法、ならびにガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を試験する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に見て、皮膚疾患は、あらゆる非致死的疾患負荷の4番目に多い原因であり、英国では人口の54%が皮膚疾患を患っている。改善された皮膚モデルへの欲求は、化粧品業界によって、また、in vitroで増殖させた代用組織の移植を望む診療所によって推進されている。
【0003】
動物実験に対する規制圧力により、化粧品業界は、組換えヒト表皮(RHE)としても知られるヒトの3D皮膚同等物の開発を主に推進している。RHEは、ケラチノサイトのみを使用するものから、全層RHE(FT RHE)まで多岐にわたり、FT RHEは、典型的にはコラーゲンおよび皮膚線維芽細胞でできている真皮基質と、ケラチノサイトがその上に形成する表皮層とを含む。残念ながら、RHEは、in vivoの皮膚を良好に模倣するものではない。FT RHEも、in vivoのヒト皮膚の多くの特徴を正確に模倣することができない。FT RHEモデルの制約には、(1)手掌足底皮膚を除く健康な皮膚では発現しない過剰増殖マーカーであるサイトケラチン16(K16)の発現を含めた過剰増殖、(2)脂質異常に起因する不完全なバリア形成、(3)不完全なバリア形成の結果生じるバリア特性の低減による、薬理学的透過の不正確な推定、(4)皮膚付属器の欠如、(5)免疫細胞の組み込みの欠如/限定(ただし現在は、免疫細胞の組み込みに対処しようとするモデルがいくつか存在する)、(6)正常な皮膚機能の障害を示す、異物代謝酵素、例えばP450酵素の発現の低減などがある。現在、Scientific Committee on Consumer Safety(SCCS)のガイドラインでは、in vitroで再構成されるヒト皮膚モデルはすべて、化粧品成分の真皮吸収を評価するには不適当であるとみなされる。
【0004】
結果として、ex vivoヒト皮膚は、利便性が限られ、患者間のばらつきが生じやすいにもかかわらず、依然として皮膚試験の判断基準とみなされている。しかしながら、ex vivoヒト皮膚は培養下で急速に分解するため、OECDガイドライン(OECD 428)は、ex vivo皮膚の皮膚刺激源試験は24時間を超えてはならないと規定している。無傷で完全な皮膚は、急速にバリア機能(24~72時間以内)、細胞増殖(48~72時間)を失い、常在免疫細胞は、組織から急速に(2~4日)浸出する。その結果、抽出された完全な皮膚は、24時間から完全性を失い、スクリーニングおよび薬物試験に使用される能力に影響が及ぶ(OECD 428)。ex vivo皮膚培養を支持するためにGenoskinにより開発された商用の培養培地および基質(NativeSkin(登録商標))は、定量化は不十分であるものの、いくらかの常在免疫細胞を保持することができ、FT RHEモデルと比較して向上したバリア機能を有すると報告されている。しかしながら、このシステムは、患者間のばらつきがあるため、未だOECDによって認可されていない。健康なFT RHEとex vivo皮膚はいずれも、転写プロファイルおよびK16発現の活性化によって示される、部分的創傷プロファイルの特徴も呈する。よって、現在の方法は、健康な状態ではなく、半創傷状態を表すものである。したがって、ヒト試験プラットフォームを改善することが大いに必要とされている。報告によると、10種中9種の候補薬物が安全性および有効性の動物実験を通過しても、ヒトへの投与では不成功に終わることが示唆されている。
【0005】
先行技術のex vivoおよびRHE(FT RHEを含む)の皮膚培養法は、典型的に、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚が37℃、5~10%CO、および相対湿度90~100%に維持される標準的な組織培養インキュベータに依存する。いくつかの刊行物は、「空気-液体」界面におけるex vivo皮膚またはFT RHEの培養について記載しており、ここで、液体は組織培養培地であり、「空気」は、37℃の温度および90~100%の相対湿度を有し、かつ5~10%のCOを含む組織培養インキュベータの内部雰囲気である。このようなインキュベータのガス相に5~10%のCOが存在することにより、組織培養培地のpHがex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の培養に適切なレベルで維持されることが可能になる。いくつかの報告では、組織培養インキュベータの使用は説明されていないが、それはこの方法が標準的であると考えられるからである。実際、組織培養インキュベータが使用されない場合は、培養培地のpH調節がどのように達成されるかを説明するために、報告においてさらなる説明が必要になるであろう。
【0006】
ex vivo皮膚ならびにRHEおよびFT RHEなどの代用皮膚のいずれについても、標準的な皮膚培養の実践におけるこうした制限の多くを回避する皮膚培養法および皮膚培養装置が、薬学、化粧品、および学術的な状況において、あらゆる皮膚科学用途のための皮膚培養モデルを進歩させるのに必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、第1の態様において、第1のチャンバ、第2のチャンバ、バリア、および皮膚サンプルホルダを備える、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚を二相培養するように構成された皮膚培養装置であって、第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCOを含むガス環境をもたらすように構成されており、第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を用意するように構成されており、皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容するように構成されており、バリアは、第1のチャンバと第2のチャンバを分離し、かつ皮膚サンプルホルダを受けるように構成されており、使用中、(i)第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCOを含むガス環境を含み、(ii)第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、(iii)皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容し、(iv)ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面は、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、(v)ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面は、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されない、皮膚培養装置を提供する。
【0008】
本発明は、第2の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、ならびに、本発明の装置を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養することを含む、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法を提供する。また本発明は、当該方法に従って培養されたex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を提供する。
【0009】
本発明は、第3の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法であって、当該方法は、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面を、5%未満のCOを含み、温度37℃未満および相対湿度90%未満のガス環境に維持すること、ならびに、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面を、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地に維持することを含み、第1の表面は、組織培養培地に曝露されず、第2の表面は、ガス環境に曝露されない、方法を提供する。また本発明は、当該方法に従って培養されたex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を提供する。
【0010】
本発明は、第4の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する化合物または組成物の効果を試験する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明の方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対する化合物または組成物の効果を決定することを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明は、第5の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のバリア機能を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明の方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、(d)化合物または組成物が、どの程度までex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を通過し得るかを決定することを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、第6の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の免疫機能および/または炎症を評価する方法であって、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明の方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚をアレルゲンまたは免疫原と接触させること、ならびに、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の免疫応答または炎症が生じるかどうかを決定することを含む、方法を提供する。
【0013】
本発明は、第7の態様において、刺激に対するex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を評価する方法であって、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明の方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を刺激に曝露すること、ならびに、(d)当該刺激に対するex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を決定することを含む、方法を提供する。
【0014】
本発明は、第8の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム解析、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、リピドーム解析、および/またはプロテオーム解析を行う方法であって、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対してゲノムアッセイ、トランスクリプトームアッセイ、メタボロームアッセイ、リピドームアッセイ、および/またはプロテオームアッセイを行うことを含む、方法を提供する。
【0015】
本発明は、第9の態様において、第1のチャンバ、第2のチャンバ、バリア、および皮膚サンプルホルダを備える、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚を二相培養するように構成された皮膚培養装置であって、第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCOを含むガス環境をもたらすように構成されており、第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を用意するように構成されており、皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容するように構成されており、バリアは、第1のチャンバと第2のチャンバを分離し、かつ皮膚サンプルホルダを受けるように構成されており、使用中、(i)第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCOを含むガス環境を含み、(ii)第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、(iii)皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容し、(iv)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の第1の表面は、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、(v)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の、当該第1の表面の反対にある第2の表面は、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されない、皮膚培養装置を提供し、この装置は、(a)第1および第2のチャンバを封入する収容部、(b)第1のチャンバに圧縮空気もしくは医療用空気を供給するように構成された流入パイプ、(c)ガスの放出を可能にするように構成されたフィルタ流出口、(d)組織培養培地を第2のチャンバの中および/もしくは外に、例えば1~45ml/分の流速でポンピングする1つもしくは複数のポンプ、(e)第1のチャンバ内の1つもしくは複数のCOセンサ、温度プローブ、および/もしくは湿度センサ、(f)第2のチャンバ内の1つもしくは複数の温度プローブ、(g)組織培養培地を第2のチャンバ内で制御された深さに維持するための手段、ならびに/または(h)湿度、温度、および/もしくは組織培養培地pHのフィードバック制御を行うための手段を備える。
【0016】
本発明は、第10の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の真皮吸収を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、(d)化合物または組成物が、どの程度までex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚によって吸収されるかを決定することを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明は、第11の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚感作および/または皮膚刺激を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を化合物もしくは組成物と接触させること、または当該ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を刺激に曝露すること、ならびに、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚において皮膚感作および/または皮膚刺激が生じるかどうかを決定することを含む、方法を提供する。
【0018】
本発明は、第12の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対するガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を試験する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を当該ガス、エアロゾル、または汚染因子と接触させること、ならびに、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対する当該ガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を決定することを含む、方法を提供する。
【0019】
本発明は、第13の態様において、本発明の方法に従って培養されたex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を提供する。
【0020】
本発明は、第14の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する空気汚染および/または放射の効果を試験する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を培養すること、(c)環境/大気汚染源をex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚に送達すること、および/または哺乳動物皮膚および/もしくは哺乳動物代用皮膚を放射に曝露すること、ならびに、(d)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対するステップ(c)の効果を解析することを含み、任意選択で、当該放射は、電磁放射および/または電離放射である、方法を提供する。
【0021】
本発明は、第15の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する低酸素レベルの効果を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養することであって、ガス環境および/または組織培養培地における酸素レベルは、21%未満、任意選択で20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満に維持される、こと、(d)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する当該低酸素レベルの効果を解析することを含む、方法を提供する。
【0022】
本発明は、第16の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する医療美容デバイスおよび/または装着型医療デバイスの効果を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養することであって、当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に医療美容デバイスおよび/または装着型医療デバイスが使用される、こと、(e)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する当該医療美容デバイスまたは装着型医療デバイスの効果を解析することを含む、方法を提供する。
【0023】
本発明は、第17の態様において、皮膚インプラントの有効性および/または安全性を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該皮膚インプラントを哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に送達すること、(d)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する当該皮膚インプラントの効果を解析することを含み、任意選択で、当該インプラントは、マイクロチップ、例えば、NFCおよびRFIDチップ、化学物質センサまたは入れ墨センサ、局所センサおよび/または注射可能センサである、方法を提供する。
【0024】
本発明は、第18の態様において、化学物質、化合物、またはエアロゾルの反復投与試験を行う方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)化学物質、化合物、またはエアロゾルを、2回以上繰り返して、かつ/または24時間より長い期間にわたって、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に投与すること、ならびに、(d)化学物質、化合物、またはエアロゾルの反復投与への皮膚の曝露前、曝露中、および/または曝露後に、皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答を解析することを含む、方法を提供する。
【0025】
本発明は、第19の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の、創傷治癒などの破壊に対する応答を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮および/または真皮を、例えばパンチ生検、切断、または擦過によって破壊すること、ならびに、(d)皮膚の創傷治癒の応答前、応答中、および/または応答後に、皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答を解析することを含む、方法を提供する。
【0026】
本発明は、第20の態様において、皮膚マイクロバイオームおよび/または皮膚への細菌曝露、真菌曝露、ウイルス曝露の効果を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚における皮膚マイクロバイオームレベルを評価すること、(d)細菌、真菌、および/またはウイルスを装置に導入すること、(e)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する当該細菌、真菌、および/またはウイルスの効果を解析することを含む、方法を提供する。
【0027】
本発明は、第21の態様において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚透過性、腐食、色素沈着、および/または光感受性を評価する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化学物質、化合物、および/またはある種の傷害もしくは照射に曝露すること、ならびに、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚透過性、腐食、色素沈着、および/または光感受性を評価することを含む、方法を提供する。
【0028】
本発明は、第22の態様において、皮膚の機能および代謝のコンピュータ解析を展開する方法であって、当該方法は、(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、(b)本発明に係る方法を使用して、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、(c)皮膚の機能および代謝を評価すること、ならびに、(d)皮膚の機能および代謝の解釈および予測のために、データアウトプットのコンピュータ解析を行うことを含む、方法を提供する。
【0029】
第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、または第22の態様の実施形態は、以下の特徴を含む:
(i)(a)第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCOを含むガス環境を含み、任意選択で、当該ガス環境は、第1のチャンバへの圧縮空気もしくは医療用空気の流入によってもたらされ、かつ/または、(b)第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃、好ましくは約37℃、およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、かつ/または、(c)皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容し、
(ii)ex vivo哺乳動物皮膚の当該表皮もしくは哺乳動物代用皮膚の表皮同等物が、第1の表面を提供し、かつ/またはex vivo哺乳動物皮膚の真皮もしくは哺乳動物代用皮膚の真皮同等物が、第2の表面を提供し、
(iii)装置は、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚を備え、任意選択で、代用皮膚は、組換えヒト表皮(RHE)または全層RHE(FT RHE)であり、
(iv)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、角質層、顆粒層、有棘層、および/または基底層を含み、
(v)使用中、角質層は、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、かつ/または、基底層および/または真皮もしくは真皮同等物は、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されず、
(vi)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、複数のex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚サンプルのうちの1つであり、複数のサンプルは、別々の皮膚サンプルホルダでアレイ形式に配置されており、
(vii)装置は、組織培養培地を第2のチャンバの中および/または外にポンピングする1つまたは複数のポンプを備え、任意選択で、流速は1~45ml/分であり、
(viii)装置は、1つまたは複数のpHプローブ、温度プローブ、COセンサ、および/または湿度センサを備え、
(ix)使用中、組織培養培地は、第2のチャンバ内で制御された深さに維持され、
(x)バリアは、ガスケット、例えばシリコンガスケット、またはOリングを含み、
(xi)第2のチャンバは、組織培養培地を含み、当該組織培養培地は、ヒーターの動作によって温度33.0~37.5℃に維持され、
(xii)当該装置は、培養培地のpH、湿度、および/または温度のモニタリングおよびフィードバック制御を行い、
(xiii)装置は、第1および第2のチャンバを封入する収容部を備え、
(xiv)装置は、第1のチャンバにガスを供給するように構成された流入パイプを備え、任意選択で、当該ガスは、圧縮空気もしくは医療用空気を含み、かつ/または、収容部は、ガスの放出を可能にするように構成されたフィルタ流出口をさらに備える。
(xv)(a)少なくとも5日間の培養後、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に免疫細胞が保持され、かつ/または、(b)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞は、少なくとも3日間の培養後、正常な脂質プロファイルを保持し、かつ/または、(c)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、正常な検出可能レベルでケラチノサイト分化マーカーを発現し、かつ/または、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現を有さず、
(xvi)代用皮膚は、FT RHEまたはRHEであり、
(xvii)ガス環境は、(a)0.02~0.05%のCOを含み、かつ/または、(b)40~50%RHの相対湿度を有し、かつ/または、(c)温度18~25℃であり、かつ/または、(d)無菌であり、
(xviii)組織培養培地は、(a)ex vivo皮膚の真皮またはFT-RHEの真皮同等物の下を、1ml/分~45ml/分の範囲の流速で流れ、かつ/または、(b)温度37℃であり、
(xix)(a)少なくとも5日間の培養後、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に免疫細胞が保持され、(b)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞は、少なくとも3日間の培養後、正常な脂質プロファイルを保持し、(c)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、正常な検出可能レベルでケラチノサイト分化マーカーを発現し、かつ/または、(d)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現を有さず、
(xx)当該方法は、組織培養培地のpH、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよびフィードバック制御を含み、
(xxi)化合物または組成物は、(i)治療用化合物もしくは治療用組成物、例えば、抗がん化合物もしくは抗がん組成物、(ii)薬学的に許容できる担体を任意選択で含む、医薬化合物もしくは医薬組成物、(iii)化粧用化合物もしくは化粧用組成物、(iv)化学物質、および/または(v)殺虫剤である。
(xxii)当該効果は、毛髪の成長の促進または抑制であり、当該効果は、皮膚に関連する状態または疾患、例えば、皮膚炎または黒色腫の治療または予防を含み、当該効果は、有害な皮膚反応であり、例えば、当該方法は、当該有害な皮膚反応について化合物または組成物(例えば、化粧品化合物または化粧品組成物)の毒性を試験する方法であり、かつ/または、当該効果は、皮膚感作および/または皮膚刺激であり、
(xxiii)ステップ(d)は、遺伝子発現レベルを測定することを含み、
(xxiv)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、疾患の状態のモデルを含み、
(xxv)当該代用皮膚は、免疫細胞を含み、任意選択で、当該代用皮膚は、RHEまたはFT RHEであり、
(xxvi)当該装置は、マイクロフルイディクス(microfluidics)、および/またはポンプによって調節されない組織培養培地の流体運動を容易にする手段を備え、
(xxvii)使用中、皮下組織または脂肪組織は、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されず、
(xxviii)バリアは、プラスチックおよび/またはシリコンガスケットを含み、
(xxix)細胞は、少なくとも5日間にわたり、代謝的に活性な培養培地(例えば、MTTと反応して紫色のホルマザン塩を生じる培養培地)を必要とせずに、代謝活性/生存性を保持し、
(xxx)pHおよび水分の表皮表面特性は、7日間にわたって維持され、
(xxxi)ガス環境は、0.02~0.09%のCOを含み、
(xxxii)当該方法は、皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する化合物または組成物の効果を解析することを含み、
(xxxiii)組成物は、注射用組成物、例えば、ワクチン組成物、皮膚充填剤、PRP(多血小板血漿)、ボトックスなどを含み、
(xxxiv)バリアは、プラスチックガスケットを含み、
(xxxv)皮膚サンプルホルダは、メッシュを含み、任意選択で、ex vivo皮膚または代用皮膚は、当該メッシュ上に配置可能であり、
(xxxvi)皮膚サンプルホルダは、トランスウェルインサートであり、
(xxxvii)皮膚サンプルまたは皮膚同等物は、ゲルに包埋もしくは包囲されるか、ゲルに担持されるか、またはトランスウェルの中にあり、
(xxxviii)細胞は、少なくとも5日間にわたって代謝活性/生存性を保持し、
(xxxix)pHおよび水分の表皮表面特性は、7日間にわたって維持され、
(xl)組織培養培地は、0.01ml/分~45ml/分、例えば0.01~10ml/分、0.02~10ml/分、0.03~10ml/分、0.05~10ml/分、0.06~10ml/分、0.1~10ml/分、0.5~10ml/分、0.5~1ml/分の範囲の流速で第2のチャンバを流れ、
(xli)組織培養培地は、温度33~37℃であり、
(xlii)組織培養培地は、pH6.1~7.9に維持され、かつ/または
(xliii)組織培養培地は、例えば、モニタリングおよび/またはフィードバック制御を使用して、0.2~15%Oの酸素飽和レベルに維持され、
(xliv)当該方法は、ガス環境内のCO、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよび/またはフィードバック制御を含み、かつ/または
(xlv)第1の表面は、表皮角化層であり、かつ/または、第2の表面は、真皮および/もしくは皮下組織であり、
(xlvi)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、皮膚の機能および生物学的アウトプットを評価するための1つまたは複数のセンサを含み、任意選択で、当該生物学的アウトプットは、皮膚バリアおよび/または組織生存性、経皮水分損失、皮膚表面pH、細胞内pHおよび細胞間pH、サイトカイン、ガス(組織酸素、一酸化窒素)、グルコース、低分子、ならびに/またはペプチド/タンパク質センサのインピーダンスを含み、
(xlvii)当該収容部は、UV放射を含む電磁放射および/または電離放射のすべてまたは一部の波長の通過を可能にするか、または遮断するように構成されており、
(xlviii)ガス環境は、80%未満、例えば75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%未満などの相対湿度を有し、
(xlix)ガス環境は、0.03~0.09%のCOを含み、
(l)ガス環境は、29℃未満の温度を有し、
(li)ガス環境は、医療用空気、大気、環境空気、汚染空気、エアロゾルなどを含み、
(lii)第1のチャンバは、湿度の調節を助ける乾燥剤を含み、
(liii)第1のチャンバへのガスの流れは、例えばガス交換を助けるために、オン/オフバルブ(例えば加圧ガス用)もしくはポンプ、ファン、および/またはバキューム(例えば非加圧ガス用)によって調節され、
(liii)装置は、ホットプレート、加熱要素、ヒートブロックおよび/または水浴であり得るヒーターを備え、
(liii)ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚は、健康な皮膚または疾患のある皮膚であってもよく、
(liv)ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、疾患の状態または健康な皮膚生理の変化、例えば、頭垢形成のモデルを含み、
(lv)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮角化層の厚みは、当該装置における少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日間の培養の間、第0日の当該厚みと比べて一定または実質的に一定(例えば、1、2、3、4、5%、7%、10%、15%、20%または25%以内)の状態を保ち、かつ、
(n)当該ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮角化層の厚みは、当該装置における少なくとも7日間の培養の間、第0日の当該厚みと比べて一定の状態を保つ。
【0030】
疑義を避けるために付言すると、本明細書に記載される実施形態は、文脈上特に明記されていない限り、組み合わせることができる。さらに、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、または第22の態様、およびそれらの実施形態は、文脈上特に明記されていない限り、本明細書の他の箇所で開示される他の任意選択の本発明の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1-1】ex vivo哺乳動物皮膚またはFT RHEを二相培養するように構成された皮膚培養装置の図である。図1A&B。1Aは、ラミナーフローフード流体皮膚培養デバイスのプラスチックウェアおよびアタッチメントの詳細な概略図である。1Bは、ラミナーフローフード流体皮膚培養デバイスの構成部品である。図1B&1D。pHが上がり過ぎた場合に開放してCOを流入させるバルブによってpH7.2~7.4に調節される培養培地pHの連続的モニタリングおよびフィードバック制御を有する、ex vivo皮膚培養およびFT-RHE皮膚培養のためのデバイスの概略図。流体培養培地の流速は、閉鎖ループシステムで3.3ml/分~41.67ml/分の範囲である。培養培地の温度は、ホットプレートで37℃(33~37℃)に調節される。シリコンガスケットおよび/またはOリングならびにプラスチックホルダは、皮膚組織の真皮側が曝露される流体組織培養培地相を、表皮の頂側膜側が曝露される大気相から分離する。シリコンガスケットおよび/またはOリングは、温度センサおよびpHセンサならびにサンプル支持体をガス相から隔離してもよい。システム全体は、無菌性を維持するためにラミナーフローフード内に配置され、大気は、室内/ラミナーフローフード内の周囲空気条件に依存する。図1C&1E。1.pH7.2~7.4に調節される培養培地pHの連続的モニタリングおよびフィードバック制御、2.湿度を40~45%RHに維持するための湿度モニタに接続した大気制御機能を備える、ex vivo皮膚培養およびFT-RHE皮膚培養のための自動調節式ベンチトップデバイス。pHの調節は、pHが塩基性に傾き過ぎると開放してCOガスを培養培地中に放出するCOバルブに、培養培地のpHを連続的にモニタリングするpHプローブを接続することによってなされる。短く大量にガスが放出され、その後、時間遅延によって培地/CO/pHを平衡させて、CO放出後の新たなpHが決定される。次いで、システムは、バルブを再度開放する必要があるかどうかを決定する。培地pHが十分に緩衝されていれば、COバルブは閉鎖したままである。流体培養培地の流速は、閉鎖ループシステムで3.3ml/分~41.67ml/分の範囲である。デバイス内の液体レベルは、インプットの流速よりも高い流速で培地を外にポンピングすることにより、液体アウトプットの高さで一定に保たれる。培養培地の温度は、ホットプレートで37℃(33~37℃)に調節される。大気コンパートメントでは、HEPAフィルタが圧力放出を可能にして、ガスの蓄積を防止すると共に、無菌性を維持する。さらに、COセンサが、湿度センサおよび温度プローブと共に、COレベルが健康な大気内部空間環境レベル以内(500ppm未満)に留まることを確認するために、空気相に含まれる。図1F:哺乳動物皮膚を維持するためのベンチトップデバイス。液相(培養培地pH、温度)およびガス相(CO、湿度、温度)の連続的モニタリングおよびフィードバック制御を有する、ex vivo皮膚培養およびFT-RHE皮膚培養のための自動調節式ベンチトップデバイス。皮膚の真皮が液相に曝露される一方で、表皮角化層の頂側膜側の大部分は、ガス相に曝露される。ガス相:最適な皮膚培養条件は、実験的解析において、30~50%RH、1000ppm未満のCO(0.1%COに相当)、温度29℃未満と決定された。ベンチトップシステム内のガスは医療用空気である。ガス相培養チャンバへのガスの流れは、オン/オフバルブ(加圧ガス用)もしくはポンプ、ファン、および/またはバキューム(非加圧ガス用)によって調節される。HEPAフィルタは、システムの無菌性が保たれることを確実にし、圧力の上昇を防止する流出口を設ける。ガスバルブの開放および閉鎖は、ガス相内に位置決めされた、連続的モニタリングおよびフィードバック制御を行うセンサによる、相対湿度および/またはCOによって調節される。ガスケットは、液相とガス相との間に、流体損失、湿度上昇、相間のCO交換および温度交換を制限するための封止部を設ける。液相:最適な皮膚培養条件は、実験的解析において、pH7.2~7.6、33~37℃と決定された。pHの調節は、pHが塩基性に傾き過ぎると開放してCOガスを培養培地中に放出するCOバルブに、培養培地のpHを連続的にモニタリングするpHプローブまたはセンサを接続することによってなされる。短く大量にガスが放出され、その後、時間遅延によって培地/CO/pHを平衡させて、CO放出後の新たなpHが決定される。次いで、システムは、バルブを再度開放する必要があるかどうかを決定する。培地pHが十分に緩衝されていれば、COバルブは閉鎖したままである。代替的には、培養培地のpHは、液体チャンバ内のCOレベルを、培養培地の緩衝能力に対して相対的に、典型的には5~10%COに維持することによって調節される。培養培地の温度は、液相内に位置決めされた熱電対からのフィードバック制御により、ホットプレートまたは加熱要素で37℃(33~37℃)に調節される。流体培養培地の流速は、閉鎖ループシステムで典型的には0.01ml/分~42ml/分の範囲であるが、必要に応じて、例えば培養培地サンプル収集では、単一パス/開放ループであってもよい。デバイス内の液体レベルは、インプットの流速よりも高い流速で培地を外にポンピングすることにより、液体アウトプットの高さで一定に保たれる。本システムは蠕動ポンプによって調節されるが、流体制御を媒介するには、任意のメカニズム、例えばシリンジ/圧力、バキューム、機械的力を利用できよう。培養培地(哺乳動物皮膚の成長および/または生存性を支持する任意の溶液と定義される)の流入口は、検出されたpHおよび/またはCOレベルに従って、流体制御によって調節され、COによって緩衝される。プローブ/センサは、指定されたガス相または液相内の任意の適切な場所に位置決めすることができる。追加のプローブ、センサ、モニタリングシステムを、システムに統合して、皮膚の機能、挙動、および生物学的応答の解析を行ってもよい。
図1-2】図1-1の続きである。
図1-3】図1-1の続きである。
図1-4】図1-1の続きである。
図1-5】図1-1の続きである。
図1-6】図1-1の続きである。
図2-1】空気条件下または標準TC条件下で培養されたex vivo皮膚のヘマトキシリン・エオシン(H&E)ならびに免疫蛍光組織化学(IFH)の図である。すべてのデータをベースライン(第0日)の皮膚(新鮮単離皮膚)と比較した。図2A。ex vivo皮膚のベースライン、空気培養時(第3日および第5日)、および標準TC時(第3日および第5日)におけるH&E画像。図2B。新鮮切除皮膚(ベースライン)のex vivo皮膚培養と、標準培養法(TCインキュベータ)を使用した場合と、新規皮膚培養法(図1Bに示したようにセットアップした空気培養)を使用した場合の、3日間の培養との差。組織サンプルを、免疫蛍光組織化学により、Ki67、K10、K16、フィラグリン(FLG)、CD3+T細胞(緑色)、K14(ベースライン画像で赤色)、コラーゲンIV(ベースライン画像で緑色)、アルファ6/ベータ4インテグリンについて解析した。図2C。新鮮切除皮膚(ベースライン)のex vivo皮膚培養と、標準培養法(TCインキュベータ)を使用した場合と、新規皮膚培養法(図1Bに示したようにセットアップした空気培養)を使用した場合の、5日間の培養との差。組織サンプルを、免疫蛍光組織化学により、Ki67、K10、K16、フィラグリン(FLG)、CD3+T細胞(緑色)、K14(ベースライン画像で赤色)、コラーゲンIV(ベースライン画像で緑色)、アルファ6/ベータ4インテグリンについて解析した。
図2-2】図2-1の続きである。
図2-3】図2-1の続きである。
図3】細胞増殖(Ki67)、過剰増殖(K16)、CD3+T細胞および表皮の厚みの免疫蛍光組織化学データ(図2に示してある)のInCellによる定量化の図である。
図4】ベースライン(第0日)の皮膚と比較した、空気または標準的TCインキュベータで培養したex vivo皮膚のLC/MSによる脂質定量化の図である。
図5】生理学的条件下の皮膚の異なる層における温度、酸素、二酸化炭素、および相対湿度の勾配を示す概略図である。温度が37℃に維持され、相対湿度が90%に維持され、CO濃度が5%に維持される標準的な組織培養インキュベータには、このような勾配は存在しない。本発明に係る方法では、生理学的に適切な温度、CO、および相対湿度の勾配が、皮膚または代用皮膚の各層に存在する。
図6】標準システム(TCインキュベータ)を使用した場合と、ベンチトップ型自動調節式デバイス(図1Fに示すとおり)を用いる新規空気システムを使用した場合との、皮膚バリア特性および皮膚組織生存性の図である。図6A:標準培養条件および新規空気培養条件下でのex vivo皮膚培養後、第0日、第1日、第3日、第5日、第7日(新規空気培養ではさらに第9日)に収集された組織切片のH&E画像から、角化層の厚みを測定した。図6B:標準培養条件および新規空気培養条件下でのex vivo皮膚培養後、第0日、第1日、第3日、第5日、第7日(新規空気培養ではさらに第9日)に、表皮表面の水分率%を測定した。図6C:標準培養条件および新規空気培養条件下でのex vivo皮膚培養後、第0日、第1日、第3日、第5日、第7日(新規空気培養ではさらに第9日)に、表皮表面のpHを測定した。図6D:ex vivo皮膚を標準培養条件および新規空気培養条件下で培養した場合の皮膚組織の代謝/生存性を評価するMTTアッセイ。空気相培養におけるCOレベルとRHレベルの両方の重要性を示すために、追加の条件に対する皮膚の応答を評価した。関連する場合、各図について、一元配置ANOVAまたはTuckeyのT検定を使用し、ベースライン(第0日のサンプル)に対する統計学的解析を行った。*≦P0.05、**≦P0.01、NSは有意差なし。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、既存の皮膚培養モデルの欠点の多くに対処する、新規の皮膚培養装置および皮膚を培養する方法を生み出した。基本的に、ex vivo皮膚または代用皮膚は、2つのチャンバを備える装置で培養され、ここで、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面は、例えば大気を含むガス環境で培養され、組織培養培地中で培養されることもなければ、標準的な組織培養インキュベータのガス環境(37℃、5~10%のCOおよび90~100%の相対湿度)に曝露されることもない。これにより、皮膚に特異的で生理学的に適切な天然環境が作られ、正常で健康な皮膚の機能が、標準的方法と比較して著しく向上するか、または保持される。さらに、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面は、組織培養培地中で培養され、ガス環境には曝露されない。
【0033】
本発明の装置および方法は、正常なケラチノサイトの基底増殖および分化プロファイルを保持しながら、K16を活性化させることなくex vivo皮膚および代用皮膚を培養することを可能にする。これが示すのは、この装置で培養された皮膚が、部分的創傷応答を活性化させるのではなく、正常で健康なケラチノサイトプロファイルを保持するということである。これは、皮膚培養においてはこれまでに一度も達成されていない。いくつかの実施形態では、少なくとも5日間の培養後、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に免疫細胞が保持される。免疫細胞のこうした保持は、現在の皮膚モデルにはない免疫応答が存在する可能性もあることを示し得る。これらのデータは、本発明の装置が皮膚細胞培養に著しい進歩をもたらし、薬学、化粧品、および基本的な研究試験に応用できることを示す。
【0034】
ガス環境は、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.045%、または0.04%未満のCOを含んでもよい。例えば、ガス環境は、0.02~0.05%または0.035~0.045%のCOを含み得る。ガス環境は、18~25%、18~24%、18~23%、19~23%、19~22%、20~22%、または約21%のOを含んでもよい。ガス環境は、約78%のN、および/または約1%のアルゴンを含んでもよい。ガス環境は、大気、圧縮空気、および/または医療用空気を含んでもよい。医療用空気は、無菌の圧縮空気を意味する場合があり、医療用空気は、大気と同様のガスの組成(例えば、およそ78%のNおよび21%のO)を有し得る。ガス環境は、健康な内部空間または生理学的条件を模倣し得る。
【0035】
ガス環境は、37℃未満、例えば10~36℃、12~32℃、14~29℃、15~25℃、18~25℃、19~24℃、または20~22℃の温度を有し得る。ガス環境は、90%未満、例えば0~89%、0~85%、10~80%、15~75%、20~74%、23~70%、25~65%、30~50%、35~50%、40~50%、または40~45%の相対湿度を有してもよい。
【0036】
組織培養培地は、温度33.0~37.5℃、例えば34~37.5℃、35~37.5℃、36~37.5℃、または約37℃であり得る。組織培養培地は、pH6.1~7.9、例えば6.2~7.7、6.3~7.7、6.4~7.7、6.5~7.7、6.6~7.7、6.7~7.6、6.8~7.6、6.9~7.6、7~7.6、7.1~7.6、7.1~7.5、または7.2~7.4であってもよい。組織培養培地は、2~10%、2~8%、3~7%、4~6%、または5%のCOを含み得る。
【0037】
組織培養培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RM+ケラチノサイト培養培地、EpiLife、KGM Goldケラチノサイト増殖培地Bullet Kit、KGM Goldケラチノサイト基礎培地、KGM-CD Goldケラチノサイト増殖用合成培地、DMEM:F12、MCDB 153培地、ケラチノサイトSFM、KCM、Cloneticsのケラチノサイト培地製品、EMEM、ウィリアムE培地、ならびに/またはケラチノサイトおよび/もしくは皮膚線維芽細胞の増殖を支持する培養培地を含み得る。様々な実施形態において、組織培養培地は、DMEMを含む。組織培養培地は、10%(v/v)ウシ胎児血清、1%(v/v)ペニシリン、1%(v/v)ストレプトマイシン、および/または1%(v/v)グルタミンを含み得る。いくつかの実施形態では、組織培養培地は、0.6~10、1~8、2~6、3.0~4.5、3.5~4、または約3.7g/mLの炭酸水素ナトリウムを含む。
【0038】
皮膚培養装置は、ex vivo皮膚または哺乳動物代用皮膚の二相培養のために構成されている。二相培養は、2つのチャンバ、すなわち、本明細書において定義されるガス環境を含む第1のチャンバと、本明細書において定義される組織培養培地を含む第2のチャンバとを用意することによって達成することができ、ここで、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面は、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面は、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されない。図7に示すように、二相培養は、温度、CO、および相対湿度の生理学的に適切な勾配を皮膚または代用皮膚にもたらすことを可能にする。例えば、上記に定義したように、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面を、標準的な組織培養培地条件(例えば、およそ37℃の温度および/またはおよそ5%のCO濃度)に曝露してもよく、一方で、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面を、大幅に低い相対湿度、温度、およびCO濃度を有するガス環境に曝露してもよい。よって、本発明の装置および方法は、皮膚サンプルホルダ内に収容されたex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の各層に、温度、CO、および/または相対湿度の勾配をもたらすことを容易にし得る。
【0039】
本発明は、標準的方法と比較して、正常で健康な皮膚の機能の保持、例えば、ex vivo皮膚もしくは代用皮膚におけるK16の活性化の回避、正常なケラチノサイトの基底増殖および分化プロファイルの保持、ならびに/または常在免疫細胞の保持をより長く可能にし得る。
【0040】
様々な実施形態において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現を有しない。K16発現のかかるベースラインレベルは、本発明の装置における、または本発明の方法に従う培養の直前、例えば、培養第0日のK16発現レベルを意味し得る。
【0041】
様々な実施形態において、ガス環境は無菌である。本明細書で使用する「無菌」という用語は、細菌または他の生きた微生物を含まない、または実質的に含まないことを意味する。例えば、無菌とは、装置がミクロゾルおよび/またはエタノールで清浄にされていることを意味し得る。
【0042】
本明細書で使用する「皮膚」という用語は、(1)身体の内部臓器を外部環境から保護するバリア、ならびに/または(2)身体の内部臓器を化学的傷害、物理的傷害、生物学的傷害、UV傷害から保護する臓器、ならびに/または(3)身体の脱水を防ぐ臓器、ならびに/または(4)発汗(体温を下げるため)もしくは毛嚢の隆起(空気を取り込んで熱損失を防ぐため)もしくは脂肪挙動の変化によって体温調節を助け得る臓器、ならびに/または(5)内部臓器、筋肉、および骨への物理的外傷に対するクッションとして機能する臓器を意味し得る。皮膚は、表皮層、真皮層、皮下層を含む場合があり、表皮層は、(1)角質層、(2)顆粒層、(3)有棘層、および(4)基底層に細分される。特定の身体部位(例えば手掌足底皮膚)は、淡明層を含む場合もある。
【0043】
本明細書で使用する場合、「健康な皮膚」とは、水分を含み、創傷がなく、かつ/または実質的に無病である皮膚を意味し得る。いくつかの実施形態では、皮膚は、無傷なバリア、ならびに/または正常な速度および/もしくは増殖のパターンおよび/もしくは分化をもたらす。増殖中の細胞は基底層(手掌足底皮膚を除く)に保持され得、かつ/または、角化層は無傷の状態を保つ(すなわち破壊されない)。いくつかの実施形態では、マーカーが次の明確な領域において、すなわち、ケラチン1/ケラチン10がすべての基底上層で、ケラチン5/ケラチン14が基底層で、かつ/またはロリクリンが顆粒層および角化層で発現される。
【0044】
表皮層は、主にケラチノサイトからなるが、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞、幹細胞、および免疫細胞、ならびに主にタンパク質および脂質からなる角化層も含み得る。皮膚付属器の要素、例えば毛嚢が、表皮を横断する場合もある。真皮層は、血管、神経、毛嚢、エクリン汗腺、皮脂腺、免疫細胞、皮膚線維芽細胞およびコラーゲンを含む真皮基質を含み得る。皮下層(または皮下組織)は、脂肪組織、血管、神経、および免疫細胞を含み得る。
【0045】
様々な実施形態において、ex vivo哺乳動物皮膚は、ex vivoのげっ歯類(例えばマウスまたはラット)、ウサギ、ブタ、霊長類、またはヒトの皮膚である。ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の(例えば、ガス環境に曝露される)直径は、1~500mm、1~400、1~300、1~200、1~100、1~50、2~45、3~40、4~35、5~30、6~25、7~20、8~18、9~16、10~15、12~14または約13mmであり得る。
【0046】
本明細書で使用する場合、「代用皮膚」という用語は、皮膚との解剖学的および/または機能的な類似性を有する物質を意味し得る。いくつかの実施形態では、代用皮膚は、哺乳動物代用皮膚である。例えば、代用皮膚は、げっ歯類(例えばマウスまたはラット)、ウサギ、ブタ、霊長類、またはヒトの代用皮膚であり得る。代用皮膚としては、生体工学による皮膚同等物、組織工学による皮膚、組織工学による皮膚構築物、生物学的代用皮膚、生体工学による代用皮膚、代用皮膚バイオコンストラクト、生体皮膚置換物、真皮-表皮複合体、および生体工学による代替組織が挙げられるが、これらに限定されない。代用皮膚は、(1)外部環境へのバリアを提供し、かつ/または(2)化学的傷害、物理的傷害、生物学的傷害、UV傷害からの防御をもたらし、かつ/または(3)下層にある物質の脱水を防ぎ、かつ/または(4)下層にある物質への物理的外傷に対するクッションとして機能することができる。代用皮膚は、初代細胞および/または不死化細胞であり得るケラチノサイトを含んでもよい。当該ケラチノサイトは、3Dシステムに再構成され、かつ/または膜もしくは真皮基質上で培養されてもよい。
【0047】
本明細書で使用する組換えヒト表皮(RHE)は、(1)培養されたケラチノサイトがヒト表皮を表す3Dシステムに再構成されているシステム、および/または(2)ケラチノサイト(初代細胞または不死化細胞)が3Dで膜上に培養されるシステムを意味し得る。本明細書で使用する全層組換えヒト表皮(FT RHE)は、(1)培養された皮膚細胞がヒト皮膚を表す3Dシステムに再構成されているシステム、および/または(2)ケラチノサイト(初代細胞または不死化細胞)が真皮基質上で培養されるシステムを意味し得る。
【0048】
真皮基質は通常、コラーゲン(ヒドロゲルを含む他の物質でできている場合もある)、および皮膚線維芽細胞から形成されている。ケラチノサイトと真皮基質/線維芽細胞のこうした組み合わせでは、FT-RHEの生存可能な成分がわずかにしか生じないが、他の皮膚細胞/皮膚細胞の組み合わせ(例えば免疫細胞、メラノサイト)がFT-RHEに含まれる場合もある。FT-RHEは、3D器官型皮膚/表皮培養物、人工皮膚、皮膚同等物または表皮同等物と表現される場合もある。
【0049】
いくつかの企業が商用目的のRHEを生産している。こうしたRHEモデルには、Phenion(Henkel)、EpiSkin(L’Oreal)、EpiDerm(MatTek)、epiCS(CellSystems)、LabCyte(J-TEC)、LabSkin 3Dヒト皮膚同等物、およびEmulateがある。さらに、NativeSkin(Genoskin)は研究目的のex vivoヒト皮膚を提供しており、「Skin-on-a-chip」がTissUse GmbHによって商用開発されている。細胞培養のための基本的な流体デバイス(例えばKirkstall)は利用可能である。しかしながら、上記製品はいずれも、標準的な組織培養インキュベータ内で培養される。標準的な組織培養インキュベータでは、CO濃度は約5%~10%であり、相対湿度はおよそ90~100%であり、温度は37℃である。さらに、標準的な組織培養インキュベータは、ガス環境を含む第1のチャンバを、組織培養培地を含む第2のチャンバから分離するバリアを欠いている。
【0050】
空気の「雰囲気」は、温度および湿度を最大の変数として、場所/気象によって変化し得る。本明細書に記載される技術は、ヒトの健康に最適と考えられる理想的な室内雰囲気/健康な室内空気質に基づき、これは次のように規定されている:湿度-Environmental Protection Agencyの示すところによれば、ヒトの健康に理想的な相対湿度は30~60%であるが、好ましくは40~50%である;温度-室温は15~25℃の間で変動し得るが、American dictionaryの定義による室温は20~22℃が好ましい;CO-大気中のCOは変動し得、1000ppm未満であるべきだが、好ましくは0.035~0.045%、350~450ppm相当であるべきであり、これが本発明の試験で使用された範囲であった。
【0051】
本発明の装置は、組織培養培地を第2のチャンバの中および/または外にポンピングすることができる1つまたは複数のポンプを備え得る。例えば、装置は、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のポンプを備えていてもよい。ポンプは蠕動ポンプであってもよい。組織培養培地の流速は、1~200、1~100、1~50、1~45、1~42、1~30、1~20または1~10ml/分であり得る。Ardiuno Unoなどのマイクロコントローラボードを使用して、CO緩衝/pHおよびポンプによる流速を制御してもよい。組織培養培地は、第2のチャンバ内で制御された深さに維持され得る。例えば、組織培養培地は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日またはそれ以上にわたるex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の培養過程にわたり、所定の深さの5、4、3、2、1、0.5cm以内の深さに維持され得る。この深さは、組織培養培地流出口の高さに対して相対的な組織培養培地流入口の高さ、および/または1つもしくは複数のポンプの効果によって調節され得る。
【0052】
第2のチャンバ内の組織培養培地の温度は、ヒーターの動作によって維持することができ、ヒーターは、第2のチャンバの温度を、例えば33~37.5℃に調節するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、装置は、組織培養培地の温度を、例えば33~37.5℃、34~37.5℃、35~37.5℃、36~37.5℃、または36.5~37.5℃に維持するために、ヒーターのフィードバック制御を可能にする温度プローブを備える。ヒーターは、ホットプレート、ヒートブロック、および/または水浴であってもよい。
【0053】
皮膚培養装置は、第1のチャンバと第2のチャンバを分離するバリアを備える。バリアは、第1のチャンバを第2のチャンバから遮断することにより、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面は、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面は、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されないようにし得る。バリアは、組織培養培地および/またはガス環境を透過させないものであり得る。バリアは、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流体および/または液体の連通を防止し得る。バリアは、第1のチャンバと第2のチャンバとの間のガス交換を防止し得る。例えば、バリアは、組織培養培地からガス環境へのCOの拡散を防止し得る。
【0054】
バリアは、皮膚サンプルホルダを受けるように構成されていてもよい。例えば、バリアは、皮膚サンプルホルダを収容するように構成された1つまたは複数の開口部を備えていてもよい。バリアは、1つまたは複数のアクリルシートからできていてもよい。バリアは、例えば、培養培地からガス環境へのCOの放出を防止するために、第1のチャンバを第2のチャンバから遮断するための手段を含み得る。当該手段は、ガスケット、例えばシリコンガスケット、および/またはOリングの形態であってもよい。
【0055】
皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容するように構成されている。皮膚サンプルホルダは、バリアによって受けられてもよい。例えば、皮膚サンプルホルダは、バリアの開口部内に配置可能であり得る。皮膚サンプルホルダは、使用中、ex vivo哺乳動物皮膚もしくは代用皮膚の第1の表面が、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、かつ/またはex vivo哺乳動物皮膚もしくは代用皮膚の第2の表面が、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されないように構成されていてもよい。このようにして、皮膚サンプルホルダは、皮膚または代用皮膚の二相培養を容易にすることができる。例えば、皮膚サンプルホルダは、使用中、角質層が、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、かつ/または、基底層および/または真皮もしくは真皮同等物が、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されないように構成されていてもよい。これは、液体界面の高さの制御および/または皮膚サンプルホルダの場所の位置決めによって達成され得る。例えば、トランスウェル/インサートは、トランスウェルの底部が液体に接するが、液体が溢れたり、表皮/表皮同等物の上部を浸したりすることはないように位置決めされ得る。
【0056】
代替的には、角質層が、ガス環境に曝露されるが、組織培養培地には曝露されず、かつ/または、基底層および/または真皮もしくは真皮同等物が、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されないように、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚が載るメッシュと、クローニングリングによって形成される封止部が位置決めされてもよい。いくつかの実施形態では、皮膚サンプルまたは皮膚同等物は、ゲルに包埋もしくは包囲され、かつ/または、Oリングを上に有し、かつ/または、トランスウェルの中にある。ゲルは、コラーゲンおよび/またはヒドロゲルであり得る。
【0057】
皮膚サンプルホルダは、側壁を備えていてもよく、かつ/または、バリアの開口部に差し込まれるインサートもしくはカップの形態であってもよい。いくつかの実施形態では、皮膚サンプルホルダは、トランスウェルインサートまたはリング、例えばクローニングリングである。皮膚サンプルホルダは、メッシュ、例えばワイヤメッシュを含んでもよく、ex vivo皮膚または代用皮膚は、メッシュ上に配置可能であってもよい。いくつかの実施形態では、ex vivo皮膚または代用皮膚は、第2のチャンバの基部に載るプラットフォーム上に配置されない。皮膚サンプルホルダは、プラスチック製または金属製であってもよい。
【0058】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、液体透過性基部、例えばワイヤメッシュ、または細孔を含むプラスチックの上に配置されてもよい。この構成において、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面は、使用中、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面が組織培養培地に曝露されるように、液体透過性基部上に配置され得る。
【0059】
装置は、収容部を欠いていてもよく、すなわち、第1のチャンバが周囲環境に曝露されるようになっていてもよい。装置は、無菌性を維持するためにラミナーフローフード内に配置されてもよい。大気モニタを使用して、ガス環境内の条件をモニタリングしてもよい。
【0060】
代替的には、装置は、第1および第2のチャンバを封入する収容部を備えていてもよい。収容部は、周囲環境への第1のチャンバの曝露を防止して、例えば、装置がラミナーフローフードの外側で使用され得るようにすることができる。よって、装置は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の培養のための安定かつ/または一貫した条件を提供し得る閉鎖システムであってもよい。このような装置では、第1のチャンバが周囲環境に曝露される装置と比べて、温度、湿度、および/またはガス組成の変動が低減し得る。装置は、第1のチャンバにガスを供給するように構成された流入パイプを備えていてもよい。このガスは、ガス環境を構成し得る。様々な実施形態において、当該ガスは、大気、圧縮空気、および/または圧縮された医療用空気である。収容部は、フィルタ流出口、例えば、HEPAフィルタ流出口を含み得る。フィルタ流出口は、ガスの放出を可能にして、例えば圧力の上昇を防止すると共に、装置内の無菌性を維持するように構成されていてもよい。
【0061】
装置は、1つまたは複数のpHプローブ、温度プローブ、COセンサ、および/または湿度センサを備えていてもよい。例えば、第1のチャンバは、ガス環境内の条件をモニタリングするために、COセンサ、湿度センサ、および/または温度プローブを備えていてもよい。装置は、第2のチャンバ内に、組織培養培地の条件をモニタリングするための温度プローブおよび/またはpHセンサを備えていてもよく、任意選択で、当該センサは、組織培養培地に曝露されるが、ガス環境には曝露されない。例えば、シリコンガスケットおよび/またはOリングは、温度センサおよび/またはpHセンサをガス環境から隔離し得る。ガス環境および組織培養培地の温度、COレベル、湿度および/またはpHは、さらなる解析のために、経時的に記録されてもよい。いくつかの実施形態では、pHプローブ、温度プローブ、COセンサ、および/または湿度センサは、コンピュータまたは携帯電話のアプリケーションに読取り値を送信する。ガス環境および/または組織培養培地のセンサならびに制御機能は、これらのパラメータが既に制御可能または既知である環境、すなわちインキュベータにおける操作を簡略化するために取り外してもよい。
【0062】
装置は、ガス環境および/または組織培養培地における条件を維持するために、ガス環境および/または組織培養培地のモニタリングおよびフィードバック制御を行い得る。当該モニタリングおよび/またはフィードバック制御は、連続的であってもよいし、または短い時間間隔をおいてもよい(例えば、10分毎、5分毎、1分毎、30秒毎、20秒毎、10秒毎、または5秒毎)。例えば、ある条件(例えばCO濃度、相対湿度、pH、および/または温度)が閾値を超えた場合、装置は、この条件を閾値未満に戻すように構成されていてもよい。例えば、装置は、組織培養培地にpHプローブを備えていてもよく、pHが閾値を超えると、バルブが開放して、COを組織培養培地に流入させることにより、組織培養培地のpHを下げることができる。その後、組織培養培地のpHが閾値未満に下がれば、バルブを閉じて、組織培養培地のpHのさらなる低下を防止することができる。同様に、装置は、ガス環境に湿度プローブを備えていてもよく、湿度が閾値を超えると、バルブが開放して、圧縮空気を組織培養培地に流入させることにより、ガス環境の湿度を下げることができる。その後、ガス環境の湿度が閾値未満に下がれば、バルブを閉じて、ガス環境の湿度のさらなる低下を防止することができる。
【0063】
装置は、CO供給源、および開放可能なクロージャー、例えばバルブを備えていてもよい。開放可能なクロージャーは、例えば、組織培養培地のpHが閾値pHを超えると開放して、COを組織培養培地に流入させることができる。
【0064】
本発明の装置および/または方法は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚が、正常なバリア、表皮細胞の脂質プロファイル、免疫細胞の増殖および/または保持を、少なくとも3日間にわたって保持することを可能にし得る。
【0065】
様々な実施形態において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現(K16は、皮膚創傷の際に誘導される過剰増殖のマーカーである)を有しない。この観察は、先行技術のケラチノサイト細胞培養法では観察されていない。よって、本発明の装置および方法は、部分的創傷または過剰増殖の挙動ではなく、健康なケラチノサイトの正常な生理的挙動の保持を可能にし得る。K16発現のかかるベースラインレベルは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の任意の所与のサンプルの、本発明の装置における、または本発明の方法に従う培養の直前、例えば、培養第0日のK16発現レベルを意味し得る。
【0066】
ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞は、少なくとも3日間の培養後、正常な脂質プロファイルを保持し得る。例えば、いくつかの実施形態では、脂質プロファイルは、ベースラインの読取り値と実質的に異ならない。かかるベースラインの読取り値は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の任意の所与のサンプルの、本発明の装置における、または本発明の方法に従う培養の直前、例えば、培養第0日の脂質プロファイルを意味し得る。例えば、各脂質型のレベルは、第0日におけるそのレベルの±50%、40%、30%、25%、20%、または15%以内であり得る。脂質プロファイルは、C12:0、C13:0、C14:0、13Me-C15:0、C15:0.12Me-C15:0、C16:1、C16:0、15Me-C17:0、14Me-C17:0、C18:2、C18:0、C19:0、C20:1、C20:0、C21:0、C22:0、C23:0、C24:0、C25:0、C26:0、スクアレン、ビタミンE、コレステロール、および/またはC14:1の存在量を意味し得る。様々な実施形態において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞におけるスクアレン(および/または前述の脂質のいずれか)の存在量は、3日間の培養後、ベースラインレベルまたは実質的にベースラインレベル付近(例えば、ベースラインレベルの±50%、40%、30%、25%、20%、または15%以内)に維持され得る。
【0067】
様々な実施形態において、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、例えば、ベースラインレベルと比べて、正常な検出可能レベルでケラチノサイト分化マーカーを発現する。よって、いくつかの実施形態では、ケラチノサイト分化マーカーの発現レベルは、ベースライン発現レベルと実質的に異ならない。かかるベースラインの読取り値は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の任意の所与のサンプルの、本発明の装置における、または本発明の方法に従う培養の直前、例えば、培養第0日のケラチノサイト分化マーカーの発現レベルを意味し得る。例えば、各ケラチノサイト分化マーカーのレベルは、第0日におけるそのレベルの±50%、40%、30%、25%、20%、または15%以内であり得る。
【0068】
また本発明は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法であって、当該方法は、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面を、5%未満のCOを含み、温度37℃未満および相対湿度90%未満のガス環境に維持すること、ならびに、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面を、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地に維持することを含み、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面は、組織培養培地に曝露されず、ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面は、ガス環境に曝露されない、方法を提供する。
【0069】
ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1および第2の表面は、それぞれ、ガス環境および組織培養培地中に、1~15、1~13、1~11、1~9、1~7、1~5、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6、3~13、3~11、3~9、または3~7日間にわたって維持され得る。
【0070】
また本発明は、皮膚または哺乳動物代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を評価する方法を提供する。係る方法は、皮膚細胞、免疫細胞、ケラチノサイト、および/または真皮細胞に適用され得る。例えば、係る方法は、皮膚細胞、免疫細胞、ケラチノサイト、および/または真皮細胞における遺伝子発現の変化を決定するために使用され得る。
【0071】
本発明の試験方法のすべて(例えば、上述の、化合物または組成物の効果を試験する方法、バリア機能を評価する方法、免疫機能および/または炎症を評価する方法、ゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を評価する方法、真皮吸収を評価する方法、皮膚感作および/または皮膚刺激を評価する方法、ならびにガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を試験する方法)は、本発明に従って培養されたex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に適用され得る。いくつかの実施形態では、これらの方法は、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する能動的なステップを含まない。
【実施例
【0072】
[実施例1]
皮膚試料:正常ヒト皮膚試料をインフォームドコンセントと共に、常法による美容手術中に取得した。The East London and City Health Authority Research Ethics Committeeは、余剰のヒト皮膚の使用を許可した(LREC番号09/HO704/69)。
【0073】
ex vivo哺乳動物皮膚またはFT RHEを二相培養するように構成された皮膚培養装置(図1)を作製して、皮膚またはRHEの基底側真皮側が、37℃、pH7.2~7.4(COガス緩衝により制御)に調節された培養培地に完全に浸漬され、表皮/RHEの頂側膜側が、無菌大気(18~23℃、0.03~0.05%CO、30~50%RH(相対湿度)に曝露される、流体二相皮膚培養システムを維持した。このデバイスは、CO緩衝/pHおよび蠕動ポンプによる流速を調節するArdiuno Uno(RS Systems)によって制御され、ex vivo皮膚またはFT RHEサンプルを含む培養デバイスタンクが、内部チャンバの培養培地の温度を33~37℃に調節するためのヒートブロックの上にある。システム全体は、無菌性を維持するためにラミナーフローフード内にある。
【0074】
ex vivoヒト皮膚培養:脂肪組織を除去し、2cmの小片に切り分けることにより、皮膚を調製した。皮膚をワイヤメッシュ上に真皮側を下向きにして配置し、組織培養培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、1%(v/v)ペニシリン、1%(v/v)ストレプトマイシン、1%(v/v)グルタミンを含むダルベッコ改変イーグル培地、DMEM)が皮膚試料の下を流れるようにして、デバイスのタンクに入れた。ステンレス鋼製クローニングリング(内径130mm)を各皮膚サンプルの上に配置して、皮膚の縁、培養培地および大気の間に封止部を形成した。プラスチックインサートとシリコーンガスケットにより、基底側の流体システムを頂側膜側の大気環境から遮断した。二相培養制御を用いない(すなわち培養培地の流れのみを用いる)追加の単純な流体システムを、標準的な組織培養インキュベータ(5%CO、37℃、90~100%RH)にセットアップして、標準培養法と新規大気培養法との直接比較を行った。0時点の皮膚サンプルを受け渡し地点で収集して、すべてのアッセイのベースラインの読取り値を得て、各ドナーに特異的な、培養期間全体にわたって維持する必要があった特定の皮膚生理を同定した。
【0075】
[実施例2]
免疫蛍光組織化学:凍結した5μmの皮膚切片を20分間、室温で解凍し、次いで、氷冷した1:1(v/v)メタノール:アセトン(Sigma-Aldrich、Poole、UK)で10分間、-20℃で固定および透過化処理した。すべての組織切片を、3%(v/v)ロバ血清(Sigma-Aldrich、Poole、UK)で1時間、室温でブロックした。陰性対照は、一次抗体の代わりに、非免疫血清、PBS-Tween 20と3%(v/v)ロバ血清(Sigma-Aldrich、Poole、United Kingdom)と共にインキュベートした切片からなった。他の切片はすべて、4℃で一晩、一次抗体および3%(v/v)ロバ血清と共にインキュベートした。関連する宿主IgG(各々2μg/ml)に対するAlexa Fluor 488、547、608を1時間室温で適用することにより、一次抗体の結合を検出した。DNA結合色素の4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI、Sigma-Aldrich、Poole、United Kingdom)を使用して、皮膚切片中の細胞核を可視化した。免疫蛍光封入剤(DakoCytomation、Glostrup、Denmark)を使用して切片をマウントした。蛍光画像をINCA2200(GE)自動顕微鏡で取得し、Developer Toolbox(GE v 1.9.2)を使用して定量的に解析した。
【0076】
脂質解析:表皮を皮膚の小片(およそ6mm)から、Dispase II(Sigma-Alridch、Poole、UK)に45分間37℃で浸漬させることにより、第0日および第3日に分離した。各生検および時点について、表皮を三連で収集し、PBSで3回洗浄し、乾燥させ、秤量した。脂質含有量をGC/MSおよびLC/MSによって解析した。
【0077】
[実施例3]
FT RHE培養:Phenion FT RHE(Henkel)および/またはEpiderm(MatTek)および/またはNative Skin(登録商標)(Genoskin)を、1、2、3、4、5、6または7日間、空気槽で培養する。対応するFT RHE/Native Skin(登録商標)を標準的な組織培養インキュベータ(対応する流体デバイス内)に入れ、2つの培養法の直接比較を行う。また、追加のFT RHEサンプルおよび/またはNative Skin(登録商標)を、供給業者のプロトコールに従って培養して、空気デバイスに対する標準的方法の比較例とする。すべてのFT RHEおよび/またはNative Skin(登録商標)を、供給業者によって提供された培養培地を使用して培養する。また、FT RHEおよび/またはNative Skin(登録商標)を、新鮮単離したヒト皮膚組織と比較して、正常な皮膚生理が保持されているかどうかを検査する。
【0078】
1mMルシファーイエローを表皮の上面に6時間および/または24時間加えることにより、バリア機能を評価する。皮膚サンプルをOCTに包埋し、5μm切片に切り分ける。皮膚切片を横断するルシファーイエローの画像を波長488nmで収集し、InCell 2200解析によって数量化する。
【0079】
結果
新規空気システム(図1)で培養されたex vivo皮膚の基本的な生理を、標準培養条件下の均等なデバイス、すなわち、空気と同じ構成にマッチする同一の流体デバイス(ベンチトップデバイス[図1Cおよび図1E]またはラミナーフローフードデバイス[図1Bおよび図1D])だが、雰囲気および培地pHが組織培養インキュベータ環境によって調節され(例えば、5%CO、37℃、90~100%RH)、無菌性がガス交換用のHEPAフィルタを含む蓋によって維持されるデバイスに対して比較した。その理由は、流体のみを含めることで細胞培養が向上する場合があり、装置の寸法/構成が皮膚生理に影響を及ぼし得るからである。このセットアップにより、大気培養と標準的組織培養環境の差を区別することができる。また、すべての培養サンプルを、第0日、すなわち、培養下で保持することが望まれる理想的な生理学的ベースライン機能を表す、同じドナー由来の新鮮単離皮膚組織とも比較した。初代ヒト皮膚線維芽細胞および不死化NEB1ケラチノサイトを用いて作られたFT RHEも構築し、新規空気システムにおいて標準的培養に対して試験した。細胞増殖、分化、バリア機能、および免疫細胞保持のアウトプットを試験した。
【0080】
図2AのH&E解析の示すところによれば、標準的方法では、ex vivo皮膚の角化層の複数の領域が第3日に断片化し始めたが、新規空気培養法では明確な層を保持し、第0日と同様であった。第5日までには(図2A)、ex vivo皮膚の角化層は、標準的方法では完全に分離し破壊されたが、新規空気法では密で明確な層を保持し、第0日と同様であった。また、第5日には、標準培養法では表皮全体が、空気法による第5日および第0日のサンプルと比較して、肥大した細胞によって肥厚したように見えた。表皮の厚みの測定により、第3日および第5日において、標準培養法では全体の厚みが著しく増加したが、空気培養では正常な表皮の厚みが保持されたことが確認された。第0日と比較した第3日および第5日の空気サンプルにおいて、表皮の厚みに有意差はなく、表皮のベースラインの厚みが空気培養条件下ではより良好に維持されることが示された。
【0081】
細胞増殖をKi67のIFH染色から数量化した(図2B図2C、および図3)。ex vivo皮膚におけるKi67陽性細胞の数には、ベースラインと第3日の空気培養物との間で変化はなかった。対照的に、標準培養法では、第3日までにKi67+細胞の数が著しく低減した。第5日までには、標準培養では検出可能なKi67+細胞がほとんどなかったが、空気培養を使用した場合は、少数ではあったが、いくつかのKi67+細胞が依然として保持されていた。このことは、空気培養が、ex vivo培養皮膚の表皮において、正常な細胞増殖をより長く、少なくとも3日間保持できたことを示す。また、標準培養の第3日に観察された表皮の厚みの増加が、過剰増殖ではなく組織浮腫に起因した可能性が高いことも示唆される。
【0082】
細胞培養におけるK16の活性化は、標準的な皮膚組織およびケラチノサイト細胞の培養において、有害な問題であり続けてきた。in vivoにおいて、K16は、正常な手掌足底皮膚、創傷治癒中、および乾癬のような過剰増殖性の皮膚条件でのみ高値である。よって、標準培養中に観察されたK16の活性化は、皮膚および皮膚細胞が身体から除去されてin vitro培養される際に生じると報告されている半創傷皮膚細胞状態と整合する。注目すべきことに、K16は、空気培養下のex vivo皮膚では、5日の期間全体にわたって高値ではなかったが、標準培養法を使用した場合、第5日までに著しく上昇した(図2C図3)。
【0083】
ex vivo皮膚を大気中で培養することにより、常在免疫皮膚細胞をより良好に保持することもできた。定量的IFHは、標準的な細胞培養下では、第3日および第5日のCD3+細胞が大きく失われたことを示した(図2B図2C図3)。対照的に、CD3+細胞の空気培養では、常在免疫細胞が大きく保持されたことが、第3日および第5日にIFHによって観察された(図2B図2C図3)。
【0084】
健康なケラチノサイトの分化は、表皮角質層の適正な形成、ひいてはバリア機能のために必須である。ケラチン10(K10)は初期分化マーカーを表し、フィラグリン(FLG)は後期分化マーカーである。K10およびFLGは空気培養法とインキュベータ培養法の両方で良好に保持されたが、第5日の標準培養では(図2C)、H&Eの観察(図2A)と一致して、ex vivo皮膚の角化層におけるK10およびFLGの発現プロファイルに明らかな乱れがあった。対照的に、空気培養下のex vivo皮膚では、ベースラインのパターンと似た、明確なK10およびFLGのプロファイルが維持された(図2C)。
【0085】
タンパク質分化プロファイルに加えて、表皮脂質が皮膚バリアの維持に必須である。標準培養下のex vivo皮膚およびRHEのタンパク質分化マーカーはin vivo皮膚に忠実であるが、脂質比は培養下で適正に維持されない。LC/MSを使用したところ、スクアレンは、空気培養下のex vivo皮膚ではベースラインレベルに維持されたが、標準培養では著しく低減した。C24:0(リグノセリン酸)およびC26:0(セロチン酸)は、標準培養下では上昇傾向を呈したが、空気培養ではベースラインレベルにより近かった(図4)。
【0086】
表皮を真皮に結合させる基底膜タンパク質のα6β4インテグリンおよびコラーゲン4は、第5日の空気培養と標準培養の両方のex vivo皮膚を含め、すべてのex vivo培養サンプルで良好に維持された(図2C)。
【0087】
[実施例4]
皮膚試料:実施例1のとおりに取得および培養したが、ただし、培養装置は、液相の条件が37℃、pH7.2~7.4に維持され、空気/ガス相の条件が30~50%RHおよび0.03~0.05%COに維持されるように、液相とガス相の両方が連続的にモニタリングされ、自動的に調節される、ベンチトップシステム(図1Fのとおり)とした。
【0088】
ex vivoヒト皮膚培養:HEPAフィルタ、COモニタ、ガス(医療用空気/大気)のガス流入口および流出口、RHモニタを含んだ装置(図1Fに示すとおり)の上に蓋を配置したことを除いては、実施例1のとおりに皮膚を調製した。
【0089】
組織代謝/生存性:皮膚サンプルをMTTアッセイによって測定して、皮膚サンプル中の細胞が代謝的に活性であり、したがって生存性があるかどうかを評価した。皮膚小片(10mg~60mg)を第0日から第10日まで三連で収集し、秤量し、より小さな切片に切り分けた。皮膚サンプルを0.5mg/mlのチアゾリルブルーテトラゾリウムブルー(MTT)溶液に2時間、37℃、5%COで浸漬させ、次いで、PBSで3回洗浄し、0.4mlのイソプロパノールに一晩浸漬させた。サンプルをボルテックスし、2×175μlのイソプロパノール画分を96ウェルプレートに移し、比色吸光度を570nmで測定した。
【0090】
皮膚バリア特性:SKIV Digital Skin Moisture Detector(Sonew)プローブを使用して皮膚水分を測定し、pH電極InLab Surfaceプローブ(Mettler Toledo)を使用して皮膚表面pHを測定した。H&E染色した皮膚切片の画像のImage J解析を使用し、角化層の厚みを測定することにより、角化層の厚みを評価した。
【0091】
結果
ヒト皮膚の主要機能として、皮膚サンプルの表皮水分率、表面pH、および角化層の厚み(H&E画像のImage Jにより測定)を評価した。標準培養条件下では、表皮の厚みが第0日のベースラインから、第5日以降に著しく増加した。第7日までには、表面pH、水分率、および角化層は、標準培養条件下ではベースラインから著しく増加していた。対照的に、表面pH、水分率、および角化層の厚みは、新規空気システムを使用した場合、少なくとも7日間にわたり、ベースライン(第0日)レベルに効果的に維持された(図6)。
【0092】
組織の生存性および代謝を維持する能力は、皮膚細胞機能を維持するのに重要である。MTTアッセイを使用して、標準的システムと新規空気システムの両方で培養後の皮膚組織が代謝的に活性であるかどうか(したがって生存性があるかどうか)を評価した。皮膚組織の生存性を調節するにはCOと湿度の両方の相互依存が重要であることを示すために、追加の解析を展開した。図6Dは、標準培養COインキュベータ法と比較して、皮膚が、第0日に対して90%超の組織生存性で、少なくとも5日間維持され得ることを示す。対照的に、組織生存性は、新規空気システム(COは0.03~0.05%であり、RHは30~50%であった)を除くすべての培養条件下(例えば、ガス相のCOおよび/または湿度が高い場合)で、第1日から次第に減少した。このことは、適正なCOレベルと適正な湿度レベルの両方が、哺乳動物皮膚の代謝プロファイルを維持するのに重要であることを示す。
【0093】
[実施例5]
皮膚試料:実施例1のとおりに収集した。
【0094】
ex vivo哺乳動物皮膚またはFT RHEの維持におけるCOおよび湿度の関連した重要性を示すために、ヒト皮膚の頂側膜側のCOおよび湿度レベルを様々に変えて構成した皮膚培養装置を作製した(図1F)。皮膚またはRHEの基底側真皮側が、37℃、pH7.2~7.4(COガス緩衝により制御)に調節された培養培地に完全に浸漬され、表皮/RHEの頂側膜側が、(a)無菌医療用空気0.03~0.05%CO、30~50%RH、または(b)80%RH、0.03~0.05%CO、または(c)30%~50%RH、5%CO、または(d)90~100%RHおよび5%COに曝露される、流体二相皮膚培養システムである。このデバイスは、CO緩衝/pHおよび蠕動ポンプによる流速を調節するArdiuno Uno(RS Systems)によって制御され、ex vivo皮膚またはFT RHEサンプルを含む培養デバイスタンクが、内部チャンバの培養培地の温度を33~37℃に調節するためのヒートブロックの上にある。また、所望のRHレベルを維持するように空気/ガス交換器に接続したバルブの開放および閉鎖を制御するArdiuno Uno(RS Systems)により、ガス相を調節した。COレベルは、5%COまたは医療用空気を含むガスキャニスタを購入することによって維持した。
【0095】
ex vivoヒト皮膚培養:皮膚を実施例1に記載したように調製した。
【0096】
組織代謝/生存性:皮膚サンプルをMTTアッセイによって測定して、皮膚サンプル中の細胞が代謝的に活性であり、したがって生存性があるかどうかを評価した。皮膚小片(10mg~60mg)を第0日から第10日まで三連で収集し、秤量し、より小さな切片に切り分けた。皮膚サンプルを0.5mg/mlのMTT溶液に2時間、37℃、5%COで浸漬させ、次いで、PBSで3回洗浄し、0.4mlのイソプロパノールに一晩浸漬させた。サンプルをボルテックスし、2×175μlのイソプロパノール画分を96ウェルプレートに移し、比色吸光度を570nmで測定した。
【0097】
[実施例6]
皮膚試料:実施例1のとおりに収集する。
【0098】
皮膚培養装置は、ヒト皮膚の頂側膜側の空気相を0.03~0.05%CO、30~50%RHとして構成し、皮膚またはRHEの基底側真皮側は、37℃、pH7.2~7.4(COガス緩衝により制御)、および0.2~15%O(培養培地中に収容されたO2センサを用いる連続的モニタリングおよびフィードバック解析により制御;液相チャンバおよび/または培養培地槽内のO飽和度を大気レベルの21%未満に低下させるため、バキュームを培地に適用し、抽出された空気/ガスを、アルゴンおよび/または窒素および/またはCOと平衡した0.2~15%Oで置換する)に調節された培養培地に完全に浸漬させる。
【0099】
本明細書において引用される特許出願、特許、および印刷刊行物はすべて、参照することにより全体として本明細書に組み込まれるが、定義、主題範囲の限定修正または否認がある場合、および、組み込まれる内容が本明細書の開示内容と矛盾する場合にはこの限りではなく、その場合は本開示の文言が優先する。
【0100】
前述の発明は、明確に理解できるように実例および例によってある程度詳細に説明したものだが、当業者には、特定の若干の変更および改変が行われることが明らかであろう。したがって、上記説明および例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.第1のチャンバ、第2のチャンバ、バリア、および皮膚サンプルホルダを備える、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚を二相培養するように構成された皮膚培養装置であって、
前記第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCO を含むガス環境をもたらすように構成されており、
前記第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を用意するように構成されており、
前記皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容するように構成されており、
前記バリアは、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバを分離し、かつ前記皮膚サンプルホルダを受けるように構成されており、
使用中、
(i)前記第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCO を含むガス環境を含み、
(ii)前記第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、
(iii)前記皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容し、
(iv)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の第1の表面は、前記ガス環境に曝露されるが、前記組織培養培地には曝露されず、
(v)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の、前記第1の表面の反対にある第2の表面は、前記組織培養培地に曝露されるが、前記ガス環境には曝露されない、
皮膚培養装置。
2.(a)前記第1のチャンバは、90%未満の相対湿度を有し、かつ5%未満のCO を含むガス環境を含み、任意選択で、前記ガス環境は、前記第1のチャンバへの圧縮空気の流入によってもたらされ、
(b)前記第2のチャンバは、温度33.0~37.5℃、好ましくは約37℃、およびpH6.1~7.9の組織培養培地を含み、かつ/または、
(c)前記皮膚サンプルホルダは、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を収容する、
上記1に記載の装置。
3.ex vivo哺乳動物皮膚の表皮もしくは哺乳動物代用皮膚の表皮同等物が、前記第1の表面を提供し、かつ/またはex vivo哺乳動物皮膚の真皮もしくは哺乳動物代用皮膚の真皮同等物が、前記第2の表面を提供する、上記1または上記2に記載の装置。
4.前記装置は、ex vivo哺乳動物皮膚または哺乳動物代用皮膚のサンプルを備え、任意選択で、前記代用皮膚は、組換えヒト表皮(RHE)または全層RHE(FT RHE)である、上記1から3のいずれかに記載の装置。
5.前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、角質層、顆粒層、有棘層、および/または基底層を含む、上記1から4のいずれかに記載の装置。
6.使用中、
前記角質層は、前記ガス環境に曝露されるが、前記組織培養培地には曝露されず、かつ/または、
前記基底層および/または前記真皮もしくは真皮同等物は、前記組織培養培地に曝露されるが、前記ガス環境には曝露されない、
上記5に記載の装置。
7.前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、複数のex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚サンプルのうちの1つであり、前記複数のサンプルは、別々の皮膚サンプルホルダでアレイ形式に配置されている、上記1から6のいずれかに記載の装置。
8.前記装置は、組織培養培地を前記第2のチャンバの中および/または外にポンピングする1つまたは複数のポンプを備え、任意選択で、流速は1~45ml/分である、上記1から7のいずれかに記載の装置。
9.前記装置は、1つまたは複数のpHプローブ、温度プローブ、CO センサ、および/または湿度センサを備える、上記1から8のいずれかに記載の装置。
10.使用中、前記組織培養培地は、前記第2のチャンバ内で制御された深さに維持される、上記1から9のいずれかに記載の装置。
11.前記バリアは、ガスケット、例えばシリコンガスケット、またはOリングを含む、上記1から10のいずれかに記載の装置。
12.前記第2のチャンバは、組織培養培地を含み、前記組織培養培地は、ヒーターの動作によって温度33.0~37.5℃に維持される、上記1から11のいずれかに記載の装置。
13.前記装置は、培養培地のpH、湿度、および/または温度のモニタリングおよびフィードバック制御を行う、上記1から12のいずれかに記載の装置。
14.前記装置は、前記第1および第2のチャンバを封入する収容部を備える、上記1から13のいずれかに記載の装置。
15.(a)前記装置は、前記第1のチャンバにガスを供給するように構成された流入パイプを備え、任意選択で、前記ガスは、圧縮空気を含み、かつ/または、
(b)前記収容部は、ガスの放出を可能にするように構成されたフィルタ流出口をさらに備える、
上記14に記載の装置。
16.(a)少なくとも5日間の培養後、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に免疫細胞が保持され、かつ/または、
(b)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞は、少なくとも3日間の培養後、正常な脂質プロファイルを保持し、かつ/または、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、正常な検出可能レベルでケラチノサイト分化マーカーを発現し、かつ/または、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現を有しない、
上記1から15のいずれかに記載の装置。
17.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の1つまたは複数のサンプルを用意すること、ならびに、上記1から16のいずれかに記載の装置を使用して、前記1つまたは複数のサンプルを培養することを含む、ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法。
18.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を培養する方法であって、前記方法は、
前記ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第1の表面を、5%未満のCO を含み、温度37℃未満および相対湿度90%未満のガス環境に維持すること、ならびに、
前記ex vivo哺乳動物皮膚または代用皮膚の第2の表面を、温度33.0~37.5℃およびpH6.1~7.9の組織培養培地に維持することを含み、
前記第1の表面は、前記組織培養培地に曝露されず、前記第2の表面は、前記ガス環境に曝露されない、方法。
19.前記代用皮膚は、FT RHEまたはRHEである、上記17または上記18に記載の方法。
20.前記ガス環境は、
(a)0.02~0.05%のCO を含み、かつ/または、
(b)40~50%RHの相対湿度を有し、かつ/または、
(c)温度18~25℃であり、かつ/または、
(d)無菌である、
上記17から19のいずれかに記載の方法。
21.前記組織培養培地は、
(a)前記ex vivo皮膚の真皮または前記FT-RHEの真皮同等物の下を、1ml/分~45ml/分の範囲の流速で流れ、かつ/または、
(b)温度37℃であり、かつ/または、
(c)pH6.1~7.9に維持される、
上記17から20のいずれかに記載の方法。
22.(a)少なくとも5日間の培養後、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に免疫細胞が保持され、
(b)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮細胞は、少なくとも3日間の培養後、正常な脂質プロファイルを保持し、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、正常な検出可能レベルでケラチノサイト分化マーカーを発現し、かつ/または、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の細胞は、少なくとも5日間の培養後、ベースラインレベルと比べて高いK16発現を有しない、
上記17から21のいずれかに記載の方法。
23.前記方法は、組織培養培地のpH、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよびフィードバック制御を含む、上記17から22のいずれかに記載の方法。
24.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する化合物または組成物の効果を試験する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を前記化合物または組成物と接触させること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対する前記化合物または組成物の効果を決定すること
を含む、方法。
25.前記化合物または組成物は、
(i)治療用化合物もしくは治療用組成物、例えば、抗がん化合物もしくは抗がん組成物、
(ii)薬学的に許容できる担体を任意選択で含む、医薬化合物もしくは医薬組成物、
(iii)化粧用化合物もしくは化粧用組成物、および/または
(iv)殺虫剤
である、上記24に記載の方法。
26.前記効果は、毛髪の成長の促進または抑制であり、
前記効果は、皮膚に関連する状態または疾患、例えば、皮膚炎または黒色腫の治療または予防を含み、
前記効果は、有害な皮膚反応であり、例えば、前記方法は、前記有害な皮膚反応について化合物または組成物の毒性を試験する方法であり、かつ/または、
前記効果は、皮膚感作および/または皮膚刺激である、
上記24または25に記載の方法。
27.ステップ(d)は、遺伝子発現レベルを測定することを含む、上記24から26のいずれかに記載の方法。
28.前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、疾患の状態または健康な皮膚生理の変化、例えば、頭垢形成のモデルを含む、上記24から26のいずれかに記載の方法。
29.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のバリア機能を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、
(d)前記化合物または組成物が、どの程度まで前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を通過し得るかを決定すること
を含む、方法。
30.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の免疫機能および/または炎症を評価する方法であって、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚をアレルゲンまたは免疫原と接触させること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の免疫応答または炎症が生じるかどうかを決定すること
を含む、方法。
31.刺激に対するex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を評価する方法であって、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を刺激に曝露すること、ならびに、
(d)前記刺激に対する前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚のゲノム応答、トランスクリプトーム応答、メタボローム応答、リピドーム応答、および/またはプロテオーム応答を決定すること
を含む、方法。
32.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚のゲノム解析、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、リピドーム解析、および/またはプロテオーム解析を行う方法であって、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対してゲノムアッセイ、トランスクリプトームアッセイ、メタボロームアッセイ、リピドームアッセイ、および/またはプロテオームアッセイを行うこと
を含む、方法。
33.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の真皮吸収を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化合物または組成物と接触させること、ならびに、
(d)前記化合物または組成物が、どの程度まで前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚によって吸収されるかを決定すること
を含む、方法。
34.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚感作および/または皮膚刺激を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を化合物もしくは組成物と接触させること、または前記ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚を刺激に曝露すること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚において皮膚感作および/または皮膚刺激が生じるかどうかを決定すること
を含む、方法。
35.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対するガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を試験する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を前記ガス、エアロゾル、または汚染因子と接触させること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に対する前記ガス、エアロゾル、または汚染因子の効果を決定すること
を含む、方法。
36.上記17から23のいずれかに記載の方法に従って培養されたex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚。
37.前記代用皮膚は、免疫細胞を含み、任意選択で、前記代用皮膚は、RHEまたはFT RHEである、上記36に記載の哺乳動物代用皮膚。
38.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する空気汚染および/または放射の効果を試験する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)環境/大気汚染源を前記ex vivo哺乳動物皮膚および/もしくは代用皮膚に送達すること、および/または前記哺乳動物皮膚および/もしくは哺乳動物代用皮膚を放射に曝露すること、ならびに、
(d)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対するステップ(c)の効果を解析すること
を含み、
任意選択で、前記放射は、電磁放射および/または電離放射である、方法。
39.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する低酸素レベルの効果を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養することであって、前記ガス環境および/または組織培養培地における酸素レベルは、21%未満、任意選択で20%未満に維持される、こと、
(d)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する前記低酸素レベルの効果を解析すること
を含む、方法。
40.ステップ(d)は、皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する前記化合物または組成物の効果を解析することを含み、かつ/または、
前記組成物は、注射用組成物、例えば、ワクチン組成物、皮膚充填剤、PRP(多血小板血漿)、ボトックスなどを含む、
上記24に記載の方法。
41.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に対する医療美容デバイスおよび/または装着型医療デバイスの効果を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養することであって、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚に医療美容デバイスおよび/または装着型医療デバイスが使用される、こと、ならびに、
(e)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する前記医療美容デバイスまたは装着型医療デバイスの効果を解析すること
を含む、方法。
42.皮膚インプラントの有効性および/または安全性を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記皮膚インプラントを哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に送達すること、
(d)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する前記皮膚インプラントの効果を解析すること
を含み、
任意選択で、前記インプラントは、マイクロチップ、例えば、NFCおよびRFIDチップ、化学物質センサまたは入れ墨センサ、局所センサおよび/または注射可能センサである、方法。
43.化学物質、化合物、またはエアロゾルの反復投与試験を行う方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)化学物質、化合物、またはエアロゾルを、2回以上繰り返して、かつ/または24時間より長い期間にわたって、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚に投与すること、ならびに、
(d)化学物質、化合物、またはエアロゾルの反復投与への前記皮膚の曝露前、曝露中、および/または曝露後に、前記皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答を解析すること
を含む、方法。
44.ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の、創傷治癒などの破壊に対する応答を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の表皮および/または真皮を、例えばパンチ生検、切断、または擦過によって破壊すること、ならびに、
(d)前記皮膚の創傷治癒の応答前、応答中、および/または応答後に、前記皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答を解析すること
を含む、方法。
45.皮膚マイクロバイオームおよび/または皮膚への細菌曝露、真菌曝露、ウイルス曝露の効果を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚における皮膚マイクロバイオームレベルを評価すること、
(d)細菌、真菌、および/またはウイルスを前記装置に導入すること、
(e)皮膚の免疫、炎症、毒性、生存性、代謝、バリア機能、遺伝子応答、エピジェネティック応答、プロテオーム応答、またはリピドーム応答に対する前記細菌、真菌、および/またはウイルスの効果を解析すること
を含む、方法。
46.(a)前記バリアは、プラスチックおよび/またはシリコンガスケットを含み、
(b)前記皮膚サンプルホルダは、メッシュを含み、任意選択で、前記ex vivo皮膚または代用皮膚は、前記メッシュ上に配置可能であり、
(c)前記皮膚サンプルホルダは、トランスウェルインサートであり、
(d)前記皮膚サンプルまたは皮膚同等物は、ゲルに包埋もしくは包囲されるか、ゲルに担持されるか、またはトランスウェルの中にあり、
(e)細胞は、少なくとも5日間にわたって代謝活性/生存性を保持し、
(f)pHおよび水分の表皮表面特性は、7日間にわたって維持され、
(g)前記組織培養培地は、0.01ml/分~45ml/分の範囲の流速で前記第2のチャンバを流れ、
(h)前記組織培養培地は、温度33~37℃であり、
(i)前記組織培養培地は、pH6.1~7.9に維持され、かつ/または
(j)前記組織培養培地は、例えば、モニタリングおよび/またはフィードバック制御を使用して、0.2~15%O の酸素飽和レベルに維持され、
(k)前記方法は、前記ガス環境内のCO 、湿度、温度、および/または流速のモニタリングおよび/またはフィードバック制御を含み、
(l)前記第1の表面は、表皮角化層であり、かつ/または、前記第2の表面は、真皮および/もしくは皮下組織であり、
(m)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の前記表皮角化層の厚みは、前記装置における少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日間の培養の間、第0日の前記厚みと比べて一定または実質的に一定(例えば、1、2、3、4、5%、7%、10%、15%、20%または25%以内)の状態を保ち、かつ/または、
(n)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚の前記表皮角化層の厚みは、前記装置における少なくとも7日間の培養の間、第0日の前記厚みと比べて一定の状態を保つ、
上記1から16のいずれかに記載の装置、または上記17から45のいずれかに記載の方法。
47.前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚は、皮膚の機能および生物学的アウトプットを評価するための1つまたは複数のセンサを含み、
任意選択で、前記生物学的アウトプットは、皮膚バリアおよび/または組織生存性、経皮水分損失、皮膚表面pH、細胞内pHおよび細胞間pH、サイトカイン、ガス(組織酸素、一酸化窒素)、グルコース、低分子、ならびに/またはペプチド/タンパク質センサのインピーダンスを含む、
上記1から16のいずれかに記載の装置、または上記17から46のいずれかに記載の方法。
48.ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚透過性、腐食、色素沈着、および/または光感受性を評価する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を化学物質、化合物、および/またはある種の傷害もしくは照射に曝露すること、ならびに、
(d)前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚の皮膚透過性、腐食、色素沈着、および/または光感受性を評価すること
を含む、方法。
49.前記収容部は、UV放射を含む電磁放射および/または電離放射のすべてまたは一部の波長の通過を可能にするか、または遮断するように構成されている、上記14に記載の装置。
50.皮膚の機能および代謝のコンピュータ解析を展開する方法であって、前記方法は、
(a)ex vivo哺乳動物皮膚および/または哺乳動物代用皮膚を用意すること、
(b)上記17から23のいずれかに記載の方法を使用して、前記ex vivo哺乳動物皮膚および/または代用皮膚を培養すること、
(c)皮膚の機能および代謝を評価すること、ならびに、
(d)皮膚の機能および代謝の解釈および予測のために、データアウトプットのコンピュータ解析を行うこと
を含む、方法。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
【図 】
図3
図4
図5
図6