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特許7568297ランダムビットシーケンスを生成するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ランダムビットシーケンスを生成するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/58 20060101AFI20241008BHJP
   G09C 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   H01J 40/16 20060101ALI20241008BHJP
   H01J 29/36 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G06F7/58 680
G09C1/00 650B
H01J40/16
H01J29/36
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021542299
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2019058340
(87)【国際公開番号】W WO2020070641
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】102018000009064
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】523020796
【氏名又は名称】ランダム・パワー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ・イン・フォルマ・アッブレヴィアータ・ラップ!・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】RANDOM POWER SRL IN FORMA ABBREVIATA RAP S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ルイージ・マリア・カッチア
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツァ・パオルッチ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・マリンヴェルノ
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-075782(JP,A)
【文献】特開2000-276329(JP,A)
【文献】特開2017-049194(JP,A)
【文献】国際公開第2005/114386(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0156798(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0139132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 7/57- 7/72
H01J 29/36-29/45
H01J 31/08
H01J 31/26-33/04
H01J 40/00-49/48
G09C 1/00- 5/00
H04K 1/00- 3/00
H04L 9/00- 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダムビットシーケンスを生成するための装置(200)であって、
熱的に生成された電荷キャリアの衝突電離駆動型自己増幅の結果として内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)を生成するように構成された少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)であって、前記電荷キャリアにさらされうるシリコン光電子増倍管センサ(201)と、
上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)を受信し、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(I1)に基づいて、エンドユーザ(EU)に提供されるランダムビットシーケンス(S2)を決定するように構成されたデータ処理ユニット(202)とを備える、
装置(200)。
【請求項2】
上記データ処理ユニット(202)は、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)を受信するように構成された信号調節モジュール(203)を備え、
上記信号調節モジュール(203)は、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)の各パルスについて論理停止信号(STP)を決定するように構成される、
請求項1記載の装置(200)。
【請求項3】
上記データ処理ユニット(202)は、上記信号調節モジュール(203)によって決定された論理スタート信号(STR)及び各論理停止信号(STP)を受信するように構成された時間対ディジタル変換器モジュール(204)をさらに備え、
上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)は、各論理停止信号(STP)の到着時間と上記論理スタート信号(STR)の到着時間との間の時間間隔を測定するようにさらに構成される、
請求項2記載の装置(200)。
【請求項4】
上記データ処理ユニット(202)は、上記装置(200)の電源がオンされるとき、上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)に上記論理スタート信号(STR)を送信するように構成された制御モジュール(205)を備え、
上記制御モジュール(205)は、上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)によって測定された各時間間隔を処理し、各処理された時間間隔に基づいて、上記エンドユーザ(EU)に提供される上記ランダムビットシーケンス(S2)を生成するようにさらに構成される、
請求項3記載の装置(200)。
【請求項5】
上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)に対して高電圧電力を供給するように構成された高電圧電源モジュール(206)をさらに備え、
上記高電圧電源モジュール(206)は、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)の破壊電圧値に関する動作電圧及び超過バイアスの依存性を制御するようにさらに構成される、
請求項4記載の装置(200)。
【請求項6】
上記制御モジュール(205)は、上記高電圧電源モジュール(206)を介して上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)を制御するように構成され、
上記制御モジュール(205)は、上記信号調節モジュール(203)及び上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)をさらに制御するようにさらに構成される、
請求項記載の装置(200)。
【請求項7】
上記信号調節モジュール(203)は、
上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)の各電流パルスを、対応する電圧パルスに変換するように構成された電流対電圧変換モジュール(401)と、
各電圧パルスのレベルを適応化するように構成されたレベル適応化モジュール(402)と、
ディジタル・アナログ変換器モジュール(404)に機能的に接続され、上記ディジタル・アナログ変換器モジュール(404)によって提供される調整可能なしきい値と各電圧パルスを比較するように構成された比較器モジュール(403)とを備え、
上記比較器モジュール(403)は、実行された比較の結果に基づいて各論理停止信号(STP)を生成するようにさらに構成された、
先行する請求項~6のうちのいずれかに記載の装置(200)。
【請求項8】
上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)に機能的に関連付けられたペルティエセル(405)をさらに備え、
上記ペルティエセル(405)は、温度制御に基づいて、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)の温度変動を制御するように構成される、
先行する請求項~7のうちのいずれかに記載の装置(200)。
【請求項9】
上記ペルティエセル(405)は、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)をさらに一体化するパッケージに埋め込まれる、
請求項8記載の装置(200)。
【請求項10】
上記ペルティエセル(405)に機能的に接続されたバックDC-DC変換器モジュール(406)をさらに備え、
上記バックDC-DC変換器モジュール(406)は、上記ペルティエセル(405)にバイアスを印加するように構成され、上記バックDC-DC変換器モジュール(406)は、上記制御モジュール(205)によって制御される、
先行する請求項8及び9のうちのいずれかに記載の装置(200)。
【請求項11】
上記制御モジュール(205)は、エンドユーザ(EU)に提供される上記ランダムビットシーケンス(S2)を上記エンドユーザ(EU)に提供するように構成された出力インターフェース(407)を備える、
先行する請求項4~9のうちのいずれかに記載の装置(200)。
【請求項12】
ランダムビットシーケンスを生成するための方法(500)であって、
熱的に生成された電荷キャリアにさらされる少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)によって、上記電荷キャリアの衝突電離駆動型自己増幅の結果として内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)を生成(501)するステップと、
ランダムビットシーケンスを生成するための装置(200)のデータ処理ユニット(202)によって、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)を受信(502)するステップと、
上記データ処理ユニット(202)によって、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(I1)に基づいて、エンドユーザ(EU)に提供されるランダムビットシーケンス(S2)を決定(503)するステップとを含む、
方法(500)。
【請求項13】
上記決定(503)するステップは、上記データ処理ユニット(202)の信号調節モジュール(203)によって、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)の各電流パルスについて論理停止信号(STP)を決定(504)するステップをさらに含む、
請求項12記載の方法(500)。
【請求項14】
上記決定(503)するステップは、
上記データ処理ユニット(202)の時間対ディジタル変換器モジュール(204)によって、上記信号調節モジュール(203)で決定された論理スタート信号(STR)及び各論理停止信号(STP)を受信(505)するステップと、
上記データ処理ユニット(202)の上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)によって、各論理停止信号(STP)の到着時間と上記論理スタート信号(STR)の到着時間との間の時間間隔を測定(506)するステップとをさらに含む、
請求項13記載の方法(500)。
【請求項15】
上記決定(503)するステップは、上記データ処理ユニット(202)の制御モジュール(205)によって、上記装置(200)の電源がオンされるとき、上記データ処理ユニット(202)の上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)に上記論理スタート信号(STR)を提供(507)するステップをさらに含む、
請求項14記載の方法(500)。
【請求項16】
上記決定(503)するステップは、
上記制御モジュール(205)によって、上記時間対ディジタル変換器モジュール(204)で測定された各時間間隔を処理(508)するステップと、
上記制御モジュール(205)によって、各処理された時間間隔に基づいて、上記エンドユーザ(EU)に提供される上記ランダムビットシーケンス(S2)を生成(509)するステップとをさらに含む、
請求項15記載の方法(500)。
【請求項17】
上記決定(503)するステップは、
上記信号調節モジュールの電流対電圧変換モジュール(401)によって、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンス(S1)の各電流パルスを、対応する電圧パルスに変換(510)するステップと、
上記信号調節モジュールのレベル適応化モジュール(402)によって、各電圧パルスのレベルを適応化(511)するステップと、
上記信号調節モジュール(203)の比較器モジュール(403)によって、上記装置(200)のディジタル・アナログ変換器モジュール(404)から提供される調整可能なしきい値と各電圧パルスを比較(512)するステップと、
上記信号調節モジュール(203)の上記比較器モジュール(403)によって、実行された比較の結果に基づいて各論理停止信号(STP)を生成(513)するステップとを含む、
先行する請求項13~16のうちのいずれかに記載の方法(500)。
【請求項18】
上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)に機能的に関連付けられた、上記装置(200)のペルティエセル(405)によって、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ(201)の温度変動を制御(514)するステップをさらに含む、
先行する請求項12~17のうちのいずれかに記載の方法(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乱数生成、すなわち、ランダムビットシーケンスを生成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既知であるように、乱数生成は、予測できない自然現象に関連するアルゴリズム又は観測量に基づくことができる。前者は、ソフトウェア又はファームウェアとして実装され、後者は、情報を収集するためのハードウェアシステムと、それを処理して一連の確率的な計算値を抽出する方法とを必要とする。
【0003】
アルゴリズムによるランダム生成は、確かに、計算パワー及び最適なプログラミングの恩恵を受けて、10Gb/sを大幅に超える極めて高いデータレートを達成する。
【0004】
しかしながら、それは、以下のような根本的かつ不可避的な欠点の影響を受ける。
- アルゴリズムは決定論的である。従って、生成されたシーケンスは偽似乱数である。それは、要件のほとんどに適合する期間を有しうるが、そのランダム特性において不可避的に制限を受ける。
- 生成されたシーケンスは、数値シードに依存して手順を初期化する。従って、それにアクセスすることは、一連の生成された計算値の全体にアクセスすることを意味するであろう。
【0005】
ハードウェア乱数生成は自然現象に基づくが、この自然現象は、古典的物理学によって記述されるか、自然の量子特性に基づく。
【0006】
古典的記述は決定論的である。
【0007】
システムの複雑性又はそのカオス的性質により、実際的な発生の予測不可能性の基礎をもたらすと仮定できたとしても、自然現象の本質は、いったん初期条件が既知になるか、制御された方法で再現されると、そのシステムの変化のパターンは明確になる(well defined)ということにある。
【0008】
一方、量子レベルにおける現象は、本質的に確率的であり、それ自体、予測不可能である。この理由により、それらは、真性乱数生成(True Random Number Generation:ここではTRNGという)のための理想的な基礎である。
【0009】
乱数生成器は、以下のような、多数の分野でのアプリケーションを有する。
コンピュータセキュリティ及び暗号学;
IoT(Internet of Things)装置、ここで、その一部は秘密に依存するサービスを提供することで、エンドユーザのプライバシーを保護し、かつ、侵入及びハッキングを回避する;
科学、産業(航空力学、熱力学、及び製造)、経済学、及び社会学のための複雑な現象の数値シミュレーション、ここで、ランダム計算値の品質が、シミュレーション結果の信頼性にとって不可欠なことが示されている;
混み合ったネットワークを介する通信の最適化;
賭博及びオンラインプラットフォームの開発。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
歴史上、最初の量子乱数生成器は、崩壊によりα、β、又はγ粒子を放射する、不安定な放射核に基づくものであった。
【0011】
放射は予測不可能な方法で発生し、予め定義された時間窓における崩壊の回数はポアソン分布に従う。
【0012】
言いかえると、2つの連続するイベント間の時間経過は、使用中の同位体及びその放射能に依存する崩壊定数で、指数関数的に崩壊する確率密度関数に従う。パルスは統計的に独立かつ非相関であり、ランダムビット生成は様々な方法で達成可能である。
【0013】
放射性崩壊は、今日においてなお、ランダムビットストリームを取得するための非常に頑健であり、かつ、適度に簡単な方法である。
【0014】
しかしながら、それらは、健康の保護、安全性、及びセキュリティに係る自明な問題点の影響を受け、このため、それらの大規模な採用は行われにくくなる。
【0015】
さらに、粒子検出器の特徴、特に、その不感時間及び放射線障害は、達成可能な処理能力を制限し、安定性を損なう。
【0016】
最後に、専用の場所においてさえ、放射源の取り扱い及び保存は、システムの経済的な競争力を損なう。
【0017】
今日の時点で、大部分の量子乱数生成器は、さまざまなセットアップ及び装置において、単一の光子感度を有する、低い光源及び検出器に依存する。
【0018】
図1において、符号100で示す量子乱数発生器の例示的な図を概略的に示す。
【0019】
生成器100は、パルス光源101、ビームスプリッタ102、第1のセンサD0、及び第2のセンサD1を備える。
【0020】
パルス光源101は単一の光子を放射し、光子はビームスプリッタ102を通過する。
【0021】
パルス光源101が単一の光子を放射し、ビームスプリッタ102が完全であると仮定すると、すべてのパルスについて、第1のセンサD0及び第2のセンサD1は、光子を受ける等しい機会を有している。
【0022】
それらの効率が同じである限り、第1のセンサD0が光子を検出する場合、0値のビットが生成され、第2のセンサD1がそれをする場合、1値のビットが生成される。
【0023】
図1の量子ランダム生成器のセットアップは、抽出されたビットシーケンスの品質におそらくは影響する一連の弱点の影響を受ける。
【0024】
実際に、標準光源は、典型的にはポアソン分布に従って、光子/パルスの乱数を放射する。ランダム性がキー値になりうるか否かにかかわらず、図1のセットアップにおいて、それは制限的ファクターを表す。1つよりも多くの光子が放射される確率を10-8のレベルまで低減するという要件は、放射される光子/パルスの平均個数が数10-4を超過しないことを必要とし、達成可能なレートに影響する。
【0025】
さらに、ビームスプリッタ102における任意の欠陥は、0及び1を生成する確率に影響する。温度又は動作電圧の変動に対して、第1のセンサD0及び第2のセンサD1が光子検出確率及び安定性に関して同一でなければ、同じことが生じる。
【0026】
機器及びセットアップの弱点は、後処理アルゴリズムを用いて予測不可能な一連のビット値を生成する確率をバランスさせるシステム及び実装方法の適切なエンジニアリングによって克服可能であることに注意すべきである。
【0027】
それでも、メガビット毎秒(Mbps)のレートで高品質の一様なランダムビットを達成することができるが、システム複雑性の増大と、ランダムイベント毎の有用なビット数に関する低い効率とを代償とする。
【0028】
従来技術に属する他の解決方法によれば、セットアップの例は、単一の光子に敏感な検出器、おそらくは光子個数を解明するものに依存し、これにより、減衰したレーザ源及び発光ダイオード(LED)のいずれかによる非相関の単一の光子放射を検出し、時間によりタグ付けし、記録する。
【0029】
特に、光子の到着時間を利用する量子乱数生成器は、タイムスタンプが付与された、LED源からの単一の光子の検出に基づく。ここで、検出は、光電子増倍管(Photo-Multiplier Tube:PMT)を用いて行われ、ガイガー-ミュラー又はシリコンベースの検出器における放射源によるランダムパルスについて実施される手順を模倣したものである。
【0030】
従来技術のもう1つの解決方法によれば、光電子増倍管は、単一光子アバランシェフォトダイオード(Single Photon Avalanche Photodiode:SPAD)で置き換えられ、セットアップ全体は単一のチップに一体化されている。
【0031】
同じ原理の変形例は、光源によって予め定義された時間間隔で発生されたパルスであって、基礎をなす分布のポワソン特性に依存するパルスをカウントすることに基づく。
【0032】
従来技術に属する解決方法によれば、ランダムイベントは、単一光子方式においてパルス光源によって光又はその不在を検出することに対応する。ランダム性の抽出は、ランダムイベントを複数のブロックにクラスタリングし、ブロック長に対して多項式的に増大するリソースを必要とするアルゴリズムを適用することに基づく。これは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として実装される。
【0033】
従来技術のさらなる解決方法によれば、単一光子アバランシェフォトダイオード(SPAD)のアレイが、各画素において50%の機会で光子を検出するように完全に調節された時間間隔で光子のバーストを放射するLED源によって照射される。
【0034】
しかしながら、このセットアップの設計が、確かに、Gbpsレートでのランダムビット生成を原理的に可能にするその並列実装に係る関心対象であるか否かにかかわらず、その主な脆弱性は、パルス生成継続時間の「完全」な時間調節を必要とするということにある。
【0035】
従来技術のもう1つの解決方法は、その代りに、シリコン光電子増倍管、すなわち共通の出力を有する単一光子アバランシェフォトダイオード(SPAD)のアレイによるパルス毎の検出された光子の個数のポワソン分布の統計的特性に従って、2つのランダムビットストリングを生成することに基づく。
【0036】
しかしながら、繰り返して述べると、原理は重要であるが、実装は、検出された光子/パルスの個数の割り当てにおける完全な分離と、システムのエクトリーム制御と、シーケンス生成の前及び実行中における正確な較正とを必要とし、むしろ不十分である。
【0037】
まとめると、光パルスを用いて放射源による粒子の検出を模倣することに基づく解決方法のすべては、以下のことを呈する。
- 光源の特性と、デュアル源の検出器システムの要件とに起因するセットアップの複雑性;
- 温度及び電圧の変動に対する極値安定性の要件に関連した頑健さの欠如;
- 何らかの場合、イベント毎の抽出されたランダムビットの低いレート。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の目的は、従来技術を参照して上述した欠点を少なくとも部分的に解決することを可能にし、それほど複雑でないセットアップにより高い信頼性を有し、温度及び電圧の変動に対する高い安定性と、イベント毎にランダムビットを高いレートで抽出することとを保証する、ランダムビットシーケンスを生成する装置を発明して提供することにある。
【0039】
そのような目的は、請求項1に記載の装置によって達成される。
【0040】
上記装置の好ましい実施形態は従属請求項で定義される。
【0041】
また、本発明の目的は、ランダムビットシーケンスを生成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】従来技術に属する乱数生成器をブロック図により概略的に示す図である。
図2】本発明に係るランダムビットシーケンスを生成するための装置によって生成可能であるパルスシーケンスの時間的傾向をタイミングチャートによって概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るランダムビットシーケンスを生成するための装置をブロック図によって概略的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るランダムビットシーケンスを生成するための装置をブロック図によって概略的に示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るランダムビットシーケンスを生成するための方法をブロック図によって概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明に係る装置及び方法の別の特徴及び利点は、添付図面を参照して、表示する非限定的な例示によって与えられる、好ましい実施形態を示す後述の説明において明らかになるであろう。
【0044】
前述した図面を参照して、本発明に従って、ここでは、ランダムビットシーケンスを生成するための装置200について説明、以下では単に装置ともいう。
【0045】
図3及び図4の実施形態を特に参照すると、装置200は、熱的に生成された電荷キャリアの衝突電離駆動型自己増幅の結果として内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1を生成するように構成された少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201であって、前記電荷キャリアにさらされうるシリコン光電子増倍管センサ201を備える。
【0046】
この点では、破壊電圧を越えて動作させられるPN接合(セル)のアレイ、すなわち、シリコン光電子増倍管又はマルチ画素光子カウンタとして知られた装置において、確率的に生成された電荷キャリアに起因する自己増幅されたパルスを時間についてタグ付けすることによりランダムビットを生成する可能性に本願出願人が注目していることがわかる。
【0047】
この内因性機構は、量子効果に基づき、外因性パルス源に依存し、放射性及び光子源のいずれかである、現在の乱数生成器の複雑性及び弱点を克服すると期待される。
【0048】
半導体装置におけるエネルギー帯の量子的性質と、フェルミ-ディラック統計に従うエネルギー準位における電子の分布と、マイクロエレクトロニクス装置における高電界の影響とが、この機構をもたらす。
【0049】
実際に、トラップの支援を受け、熱的に駆動される、自由キャリアの確率的生成及び再結合は、シリコン及び他の間接半導体材料において支配的であり、それは、PN接合の空乏領域における生成電流の基礎となる物理的現象である。
【0050】
さらに、接合がアバランシェ方式で動作させられる場合、この機構はランダムパルスの発生の原因となる。
【0051】
本機構とは無関係に、本願出願人は、高密度の潜在的キャリアと、それらを伝導帯に移動させることのランダム発生と、アバランシェ降伏を誘導する確率論的蓋然性とが、ポワソン分布に従うと期待される一連の独立パルスをもたらし、従って、パルスは非相関であり、それらの発生は予測不可能である、ということがキーポイントであることに注目した。
【0052】
シリコン光電子増倍管(SiPM)は、現在、さまざまな生産者によって市場に提供され、最大で40 000セル/mm2[40]までの密度と、6x6mm2を超える面積と、従来技術の相互接続技術とを有し、これにより、大面積において等化されたセンサのモザイクを構成することを可能にする。
【0053】
SiPMでは、接合の容積における高電界は、70Vを超過しないバイアス電圧において最大で10までの利得を有して、衝突電離による電荷の増倍をもたらす。
【0054】
特に、SiPMは、本質的には、限定的かつ消滅型のガイガー-ミュラー方式で動作し、これにより、単一電荷キャリアは、破壊電圧の数ボルト上において、100%に近い確率でパルスをトリガすることができる。
【0055】
SiPMは、光子によって解放された単一電荷キャリアによってトリガされたなだれ(アバランシェ)に起因した極端な感度を有して、単一光子に対して感応性を有し、かつ、光子個数を解明する検出器として製品化される。
【0056】
しかしながら、アバランシェ成長は、1次キャリアを生成する機構を認識することができない。それは、光子であってもよく、温度又は電界マップに関連する任意の内因性確率過程であってもよい。
【0057】
このことは本発明の基礎となる原理であり、完全な暗所にパッケージ化されたSiPMからなり、ランダムに開始されたパルスを識別し、それらを時間についてタグ付けし、パルスのシーケンスを一連のビットに変換する。パルスの振幅、数十ナノ秒にわたる数百万個の電子により、それらの識別は頑健かつ完全なものになる。アバランシェ時間成長は、ナノ秒のレベルにおける信号の立ち上がりエッジを有して、時間によるタグ付けを極めて正確なものにする。内因性生成機構は、ランダム性を損なうことなくレートを変更すると期待される温度変動に対してもまた、処理を頑健にする。
【0058】
パルスのレートは、室温において、かつ、破壊よりも数ボルト高い電圧において、1mHz/mm2を達成することができ、非常にコンパクトな装置のエンジニアリングを行う可能性を提供する。
【0059】
図2において、図3及び図4の実施形態に係る少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201のようなSiPMにおいて確率的に生成されたパルスE1,E2,E3,E4の例示的な図を示す。
【0060】
パルス識別の後、図2の下段に示すように、基準タイミング原点torに関するその到着時間t(i=1,2,3,4…N)の記録を行う。
【0061】
パルスが非相関かつ独立である場合、dT=ti+1-tであるとき、一対の相互到達時間間隔(dT,dT)において、dTがdTより長くなるか短くなる確率Pは互いに等しくなる。すなわち、次式が成り立つ。
【0062】
P(dT>dT)=P(dT<dT)=0.5
【0063】
記憶がないイベントのシーケンスのこの一般的な特性によれば、ビットは以下の手順によって抽出される。
【0064】
dT>dTi+2である場合、シーケンスにおけるi番目のビットは1に設定される。
【0065】
dT<dTi+2である場合、シーケンスにおけるi番目のビットは0に設定される。
【0066】
dT=dTi+2である場合、ビットは生成されない。
【0067】
図2の例示的な図では、
dT=t-t
dT=t-t
dT=t-t
dT<dTであり、
シーケンスにおける第1のビットは0に設定される。
【0068】
この手順は、最大で50%のビット抽出効率を保証するが、これは、おそらくは、均等な時間間隔の個数によって低減される。
【0069】
さらに、それは、バイアスなしであり(連続的なクロックによる時間スタンプ処理の潜在的な影響を含む)、実効ビットレートを低減する処理アルゴリズムを必要としない。
【0070】
シリコン光電子増倍管センサ201における少なくとも1つのシリコンは、エントロピーを集めるように構成され、また、既に上述したように、熱的に生成された電荷キャリア、すなわちアバランシェの衝突電離駆動型自己増幅(例えば利得10)によって内因性ランダム電流パルスのシーケンスを生成する。
【0071】
図3及び図4の実施形態を参照すると、装置200は、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスI1を受信するように構成され、また、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスI1に基づいて、エンドユーザEUに提供されるランダムビットシーケンスS2を決定するように構成されたデータ処理ユニット202をさらに備える。
【0072】
エンドユーザEUの例は、暗号キー生成装置、電子賭博マシン、ネットワークランダムコーディングシステムである。
【0073】
図3に示す実施形態によれば、装置200のデータ処理ユニット202は、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1を受信するように構成された信号調節モジュール203を備える。
【0074】
装置200の信号調節モジュール203は、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1の各電流パルスについて論理停止信号STPを決定するように構成される。
【0075】
信号調節モジュール203は、アナログフロントエンド(Analog Front-End:AFE)モジュールとみなすことができる。
【0076】
図3の実施形態によれば、装置200のデータ処理ユニット202は、信号調節モジュール203によって決定された論理スタート信号STR及び各論理停止信号STPを受信するように構成された時間対ディジタル変換器モジュール204をさらに備える。
【0077】
時間対ディジタル変換器モジュール204は、各論理停止信号STPの到着時間と論理スタート信号STRの到着時間との間の時間間隔を測定するようにさらに構成される。
【0078】
図3の実施形態によれば、装置200のデータ処理ユニット202は、装置200の電源がオンされるとき、時間対ディジタル変換器モジュール204に論理スタート信号STRを提供するように構成された制御モジュール205をさらに備える。
【0079】
本実施形態によれば、制御モジュール205は、時間対ディジタル変換器モジュール204によって測定された各時間間隔を処理し、各処理された時間間隔に基づいて、エンドユーザEUに提供されるランダムビットシーケンスS1を生成するようにさらに構成される。
【0080】
実施形態によれば、制御モジュール205はシステム・オン・チップ(System-On-Chip:SoC)モジュールである。
【0081】
制御モジュール205は、シリアルペリフェラルインターフェース(Serial Peripheral Interface:SPI)及び/又は集積回路間プロトコル(Inter-Integrated Circuit protocols(ICライン))を介して、装置200の他のモジュールと通信するように構成される。
【0082】
図3に示す実施形態によれば、装置200は、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201に対して高電圧電力を供給するように構成された高電圧電源モジュール206をさらに備える。
【0083】
高電圧電源モジュール206は、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201の破壊電圧値に関する動作電圧及び超過バイアスの依存性を制御するようにさらに構成される。
【0084】
実施形態によれば、以前のものと組み合わせて、制御モジュール205は、高電圧電源モジュール206を介して少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201を制御するように構成される。
【0085】
この実施形態によれば、制御モジュール205は、信号調節モジュール203及び時間対ディジタル変換器モジュール204をさらに制御するようにさらに構成される。
【0086】
上述したように、信号調節モジュール203は、アナログフロントエンド(AFE)モジュールとみなすことができる。
【0087】
この点で、図4に示す実施形態によれば、信号調節モジュール203は、内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1の各電流パルスを、対応する電圧パルスに変換するように構成された電流対電圧変換モジュール401を備える。
【0088】
電流対電圧変換モジュール401の一例は、トランスインピーダンス増幅器である。
【0089】
図4に示すこの実施形態によれば、信号調節モジュール203は、各電圧パルスのレベルを適応化するように構成されたレベル適応化モジュール402をさらに備える。
【0090】
レベル適応化モジュール402は、電流対電圧変換モジュール401の後段にある。
【0091】
レベル適応化モジュール402の一例は、信号をオフ設定するためのモジュールである。
【0092】
この実施形態によれば、信号調節モジュール203は、各電圧パルスを調整可能なしきい値と比較するように構成された比較器モジュール403をさらに備える。
【0093】
比較器モジュール403は、しきい値を超過する場合は常に、論理電圧レベル出力を提供するようにさらに構成される。
【0094】
実際に、この実施形態によれば、比較器モジュール403は、実行された比較の結果に基づいて各論理停止信号STPを生成するようにさらに構成される。
【0095】
比較器モジュール403は、異なる標準、例えば、標準TTL、標準NIM、標準CMOS、標準ECLなどに基づくことが可能である。
【0096】
比較器モジュール403は、レベルアダプタモジュール402の後段にある。
【0097】
この実施形態において、装置200は,比較器モジュール403に機能的に接続され、比較器モジュール403に調整可能なしきい値を提供するように構成されたディジタル・アナログ変換器モジュール404をさらに備える。
【0098】
ディジタル・アナログ変換器モジュール404は、制御モジュール205によって制御される。
【0099】
図4に示す別の実施形態によれば、前述した実施形態のうちの任意のものと組み合わせて、装置200は、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201に機能的に関連付けられたペルティエセル405をさらに備える。
【0100】
ペルティエセル405は、温度制御に基づいて、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201の温度変動を制御するように構成される。
【0101】
この点に関して、ランダム性が温度変動の影響を受けないか否かにかかわらず、温度に対する電流パルス周波数に関する研究は、エンドユーザにとって関心対象となりうる。
【0102】
実施形態によれば、ペルティエセル405は、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201をさらに一体化するパッケージに埋め込まれている。
【0103】
図4に示す実施形態によれば、装置200は、ペルティエセル405に機能的に接続されたバックDC-DC変換器モジュール406を備える。
【0104】
バックDC-DC変換器モジュール406は、ペルティエセル405にバイアスを印加するように構成される。
【0105】
バックDC-DC変換器モジュール406は、制御モジュール205によって制御される。
【0106】
図4に示す別の実施形態によれば、前述した実施形態のうちの任意のものと組み合わせて、制御モジュール205は、エンドユーザEUに提供されるランダムビットシーケンスS2をエンドユーザEUに提供するように構成された出力インターフェース407を備える。
【0107】
出力インターフェース407の例は、イーサネットタイプ、USBタイプ、又はWi-Fiタイプの通信ポートであってもよい。
【0108】
異なる実施形態によれば、装置の一体化又は集積化を、効率的であり、高度にカスタマイズ可能であり、かつ費用効率の高い方法で達成することができる。
【0109】
実際に、実施形態によれば、図面には図示しないが、前述した任意の実施形態と組み合わせて、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201は、トランジスタアウトライン(Transistor Outline:TO)パッケージに収容可能であり、ペルティエセル405をさらに埋め込むことができ、同時に、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201を外部光からマスクすることを容易化することができる。
【0110】
また、別の実施形態によれば、図面には図示しないが、前述した任意の実施形態と組み合わせて、時間の測定は異なるアーキテクチャを用いて実行可能であることに注意すべきである。
【0111】
一例として、55ピコ秒のレベルの分解能で2つの独立したソースからの時間をサブ/ドルのコスト/単位で測定する可能性と、24ビットを超える時間ディジタル化と、サイクル毎に最大で5つまでの論理停止信号を記録する可能性とを提供する、特定のチップを使用可能である。
【0112】
しかしながら、消費電力に関して、この実施形態が少なくとも数ワットを必要とすると期待され、また、25~100cmの典型的な面積にわたる典型的な多層構造物が想定されることに注意すべきである。
【0113】
サイズ及び消費電力の問題に関する限り、図面には図示しないが、前述した任意の実施形態と組み合わされる、別の実施形態を考慮することができる。
【0114】
この実施形態によれば、時間対ディジタル変換器モジュール204をフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)チップで実装することができ、ここで、多数のアーキテクチャが信頼できると証明される。
【0115】
この実施形態によれば、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201は温度制御されず、SMT(Surface Mount Technology:表面実装技術)パッケージングの基板に実装可能であり、ただし、過電圧安定化のための温度フィードバックを提供することができる。
【0116】
そのような実施形態は、数百mWの範囲の消費電力のために、数cmを超えない面積にあてはめ可能であるという優位点を有する。
【0117】
別の実施形態によれば、図面には図示しないが、前述した任意の実施形態と組み合わせて、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)において、小電力かつ小型の装置を構成することができ、LIDAR(Light Detection and Ranging:光検出及び測距)、高エネルギー物理学、及び医療のアプリケーションのために、マイクロエレクトロニクス装置の垂直集積化における進歩と、時間対ディジタル変換器モジュールの設計とから利益を得ることができる。
【0118】
この実施形態によれば、装置200は、少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201以外に、追加のシリコン光電子増倍管センサを備えることができる。
【0119】
図5をさらに参照すると、ここでは、本発明に係るランダムビットシーケンスを生成する方法500が説明される。
【0120】
方法500は、開始ステップのシンボルSTを含む。
【0121】
方法500は、熱的に生成された電荷キャリアにさらされる少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201によって、電荷キャリアの衝突電離駆動型自己増幅の結果として内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1を生成501するステップをさらに含む。
【0122】
方法500は、ランダムビットシーケンスを生成するための装置200のデータ処理ユニット202によって、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1を受信502するステップをさらに含む。
【0123】
方法500は、データ処理ユニット202によって、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスI1に基づいて、エンドユーザEUに提供されるランダムビットシーケンスS2を決定503するステップをさらに含む。
【0124】
方法500は、終了ステップのシンボルEDにおいて終わる。
【0125】
図5において点線で示す実施形態によれば、上記決定503するステップは、上記データ処理ユニット202の信号調節モジュール203によって、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201から受信された上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1の各電流パルスについて論理停止信号STPを決定504するステップをさらに含む。
【0126】
図5において点線で示す実施形態によれば、前述した実施形態と組み合わせて、決定503するステップは、
上記データ処理ユニット202の時間対ディジタル変換器モジュール204によって、上記信号調節モジュール203で決定された論理スタート信号STR及び各論理停止信号STPを受信505するステップと、
上記データ処理ユニット202の上記時間対ディジタル変換器モジュール204によって、各論理停止信号STPの到着時間と論理スタート信号STRの到着時間との間の時間間隔を測定506するステップと
をさらに含む。
【0127】
図5において点線で示す実施形態によれば、前述した実施形態と組み合わせて、上記決定503するステップは、上記データ処理ユニット202の制御モジュール205によって、上記装置200の電源がオンされるとき、上記データ処理ユニット202の上記時間対ディジタル変換器モジュール204に上記論理スタート信号STRを提供507するステップをさらに含む。
【0128】
図5において点線で示す実施形態によれば、前述した実施形態と組み合わせて、決定503するステップは、
上記制御モジュール205によって、上記時間対ディジタル変換器モジュール204で測定された各時間間隔を処理508するステップと、
上記制御モジュール205によって、各処理された時間間隔に基づいて、エンドユーザEUに提供される上記ランダムビットシーケンスS1を生成509するステップと
を含む。
【0129】
図5において点線で示す実施形態によれば、決定504するステップは、
上記信号調節モジュール203の電流対電圧変換モジュール401によって、上記内因性ランダム電流パルスのシーケンスS1の各電流パルスを、対応する電圧パルスに変換510するステップと、
上記信号調節モジュール203のレベル適応化モジュール402によって、各電圧パルスのレベルを適応化511するステップと、
上記信号調節モジュール203の比較器モジュール403によって、上記装置200のディジタル・アナログ変換器モジュール404から提供される調整可能なしきい値と各電圧パルスを比較512するステップと、
上記信号調節モジュール203の上記比較器モジュール403によって、実行された比較の結果に基づいて各論理停止信号STPを生成513するステップと
を含む。
【0130】
図5において点線で示す実施形態によれば、前述した任意の実施形態と組み合わせて、方法500は、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201に機能的に関連付けられた、上記装置200のペルティエセル405によって、上記少なくとも1つのシリコン光電子増倍管センサ201の温度変動を制御514するステップをさらに含む。
【0131】
本発明に係る装置及び方法は、いくつかの利点、すなわち以下の利点を有する。
a)量子性質のランダムパルスの内因性性質に起因する最小の複雑性;
b)小消費電力;
c)温度及び電源の変動に対する頑健さ;
d)シリコン技術に起因する低コスト;
e)高効率(ビットレート/パルス)(白色化アルゴリズムを含む後処理を必要としない);
f)コストについて効果的;
g)適度に高いビットレート(1Mbps/mm2のセンサを超える);
h)スケーラビリティ。
【0132】
当業者は、添付された特許請求の範囲から外れることなく、ランダムビットシーケンスを生成する装置及び方法の上述の実施形態に対して変更及び適応化を行うことができ、又は、偶発的な必要性を満たすために構成要素を機能的に等価な他のもので置き換えることができる。可能な1つの実施形態に属するものとして説明した特徴のそれぞれは、説明した他の実施形態に関わりなく実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5