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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】カテーテル挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20241008BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61M25/06 550
A61L29/16
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021573216
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 US2020036823
(87)【国際公開番号】W WO2020251947
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】62/859,515
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】マリア キム
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス ジェイ.ブリスボワ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア シー.ドーバースパイク
(72)【発明者】
【氏名】シェイル ジェイ.マック
(72)【発明者】
【氏名】オルソルヤ アイ.ラウトナー-コソルバ
(72)【発明者】
【氏名】カミラ カタルジーナ コノピンスカ
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー.マイヤーホフ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-518069(JP,A)
【文献】特表2005-500866(JP,A)
【文献】特表2005-503834(JP,A)
【文献】特表2016-514171(JP,A)
【文献】特表2019-506419(JP,A)
【文献】ELIZABETH J. BRISBOIS ET AL,IMPROVED HEMOCOMPATIBILITY OF MULTILUMEN CATHETERS VIA NITRIC OXIDE,APPLIED MATERIALS & INTERFACES,米国,ACS PUBLICATIONS,2016年10月13日,29720 - 29279
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 - 25/18
A61L 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む粉末組成物と;
ハウジングであって、
i)一酸化窒素を透過し、ii)非多孔性で、iii)水蒸気を透過する高分子壁と;、
前記高分子壁によって少なくとも部分的に規定される内管腔と、を含む前記ハウジングと、を含むカテーテル挿入器であって、
前記粉末組成物は、前記ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封されている、
カテーテル挿入器。
【請求項2】
前記粉末組成物がさらに吸水材料を含む、請求項1に記載のカテーテル挿入器。
【請求項3】
前記吸水材料が、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリペプチド、ポリイオン種、単糖、多糖、シリカ粒子及び塩からなる群から選択される、請求項2に記載のカテーテル挿入器。
【請求項4】
前記固相RSNOと前記吸水材料との重量比が1:1~10:1の範囲である、請求項2に記載のカテーテル挿入器。
【請求項5】
水蒸気への曝露後に前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速する固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤も又、前記ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封されている、請求項4に記載のカテーテル挿入器。
【請求項6】
前記固相添加剤は前記粉末組成物の成分であり、及び
前記粉末組成物は、0重量%~5.5重量%の前記固相RSNO、重量%~0重量%の前記固相添加剤、及び重量%~7.5重量%の前記吸水材料を含む、請求項5に記載のカテーテル挿入器。
【請求項7】
前記粉末組成物は、水蒸気への曝露後の前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤をさらに含み;及び
前記固相添加剤は、酸化亜鉛ナノ粒子、銅(II/I)-配位子錯体、銅ナノ粒子、アスコルビン酸、チオール、水素イオン前駆体、セレン種、有機セレン分子、有機テルリウム分子、ステンレス鋼ナノ粒子、金ナノ粒子、有機促進剤種が固定化された形態でコーティングされたシリカ又は高分子粒子、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、
請求項1に記載のカテーテル挿入器。
【請求項8】
前記粉末組成物が、5重量%~5重量%の前記固相RSNOと、重量%~5重量%の前記固相添加剤からなる、請求項7に記載のカテーテル挿入器。
【請求項9】
前記ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封された固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤が金属ワイヤーである、請求項1に記載のカテーテル挿入器。
【請求項10】
前記高分子壁が、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)(PVC)、シロキサン系ポリウレタンエラストマー、及び熱可塑性シリコーン-ポリカーボネート-ポリウレタンからなる群から選択される、請求項1に記載のカテーテル挿入器。
【請求項11】
前記高分子壁がチューブであり、前記ハウジングが、前記チューブに対向する端部に取り付けられたそれぞれのシーリング部材をさらに含む、請求項1に記載のカテーテル挿入器。
【請求項12】
テーテル挿入器であって
固相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む粉末組成物と;
挿入ハウジングであって、i)一酸化窒素を透過し、ii)非多孔性で、iii)水蒸気を透過する、高分子壁と、前記高分子壁によって少なくとも部分的に規定される内管腔と、を含み、前記粉末組成物、前記挿入ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封されている、前記挿入ハウジングと;
を含む前記カテーテル挿入器と、
カテーテルであって、
一酸化窒素を透過し、少なくとも1つの管腔を有するカテーテルチューブと;
前記カテーテルチューブの近位端に取り付けられ、前記カテーテルチューブの前記少なくとも1つの管腔に操作可能に接続される開口部を有するアダプターと、
を含む前記カテーテルと;
前記カテーテル挿入器を前記少なくとも1つの管腔内又は前記アダプター内の位置に固定する機構
を含む、キット。
【請求項13】
前記粉末組成物がさらに吸水材料を含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記吸水材料が、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリペプチド、ポリイオン種、単糖、多糖、シリカ粒子及び塩からなる群から選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記固相RSNOと前記吸水材料との重量比が1:1~10:1の範囲である、請求項13に記載のキット。
【請求項16】
前記挿入器が、水蒸気への曝露後に前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤も又、前記挿入ハウジング内の前記内管腔の中で完全に密封されている、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記固相添加剤は前記粉末組成物の成分であり、及び
前記粉末組成物は、0重量%~5.5重量%の前記固相RSNO、重量%~0重量%の前記固相添加剤、及び重量%~7.5重量%の前記吸水材料を含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記粉末組成物が、水蒸気への曝露後の前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤をさらに含み、及び
前記固相添加剤が、酸化亜鉛ナノ粒子、銅(II/I)錯体、銅ナノ粒子、アスコルビン酸、チオール、水素イオン前駆体、セレン種、有機セレン分子、有機-テルリウム種、ステンレス鋼ナノ粒子、金ナノ粒子、有機促進剤種が固定化された形態でコーティングされた、又はそれを有するシリカ又は高分子粒子、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項19】
前記粉末組成物が、5重量%~5重量%の前記固相RSNOと、重量%~5重量%の前記固相添加剤とからなる、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記挿入ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封された固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤が金属ワイヤーである、請求項12に記載のキット。
【請求項21】
前記高分子壁が、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)(PVC)、シロキサンベースのポリウレタンエラストマー、及び熱可塑性シリコーン-ポリプロピレン-ポリウレタンからなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項22】
前記カテーテルが、緊急カテーテル又は慢性的カテーテルである、請求項12に記載のキット。
【請求項23】
前記緊急カテーテルは、血管内カテーテルと尿道カテーテルからなる群から選択され;又は
前記慢性的カテーテルは、トンネル型透析カテーテル、非経口栄養カテーテル、及び薬物注入カテーテルからなる群から選択される、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記高分子壁が挿入チューブであり、前記挿入ハウジングが、前記挿入チューブに対向する端部に取り付けられたそれぞれのシール機構をさらに備える、請求項12に記載のキット。
【請求項25】
前記カテーテル挿入器の外径が.5mm~mmの範囲である、請求項12に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づき、2019年6月10日出願の米国仮出願第62/859515号の優先権を主張し、その内容のすべてを本明細書中に参照により援用する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、HL128337下、政府の支援を受けてなされ、国立衛生研究所により表彰された。政府は本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
カテーテルは、例えば、体腔、管、又は血管を介して人体に挿入することができる医療機器である。カテーテルは幅広い機能を果たすため、さまざまな医療用途で使用できる。カテーテルを使用できる用途の例には、心臓血管、泌尿器、胃腸、神経血管、及び眼に対して使用する用途が含まれる。カテーテルの機能は、液体の排出から、液体又はガスの投与、手術器具によるアクセスの有効化、カテーテルの種類に応じた他のタスクの有効化まで、様々な機能に及ぶ。カテーテルは、一時的カテーテル又はパーマネントカテーテルとして設計及び製造することができる。緊急カテーテルは一時的カテーテルの一例で、短期間の使用(例:最大7日)に適している。緊急カテーテルは、手術室、救急治療室、集中治療室でよく使用される。慢性的カテーテルは一時的カテーテルの別の例で、比較的短期間の使用(たとえば、7~30日)に適している。慢性的カテーテルは、非経口栄養注入、薬物注入、及び透析用によく使用される。パーマネントカテーテルは、長期間(例えば、数ヶ月から数年)使用するためのものであり、例えば、長期の栄養補給及びペースメーカーに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することによって明らかになり、同様の参照番号は、類似しているが、おそらく同一ではない成分に対応する。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが示される他の関連図面については説明されてもされなくてもよい。
【0005】
図1】対向する端部が完全に密封されていないカテーテル挿入器の一例の斜視概略図である。
【0006】
図2】患者に挿入されたカテーテル及びカテーテルに挿入されたカテーテル挿入器の概略図であり、挿入図は、カテーテル内部の挿入器の拡大図である。
【0007】
図3】カテーテルのハブアダプター内のカテーテル挿入器の概略図である。
【0008】
図4A図4Aは、20重量%ポリ(エチレングリコール)及びステンレス鋼ワイヤーを含むカテーテル挿入器をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たされたカテーテル内に挿入した場合の例について、左側のY軸に、1日目の一酸化窒素(NO)放出プロファイル(NO表面フラックス(x10-10mol・min-1cm-2)対時間(時間、h)に関して)を、右のY軸に、1日目の一酸化窒素生成の変調(NO ppbレベル対時間(h)に関して)を、示すグラフである。
図4B図4Bは、20重量%ポリ(エチレングリコール)及びステンレス鋼ワイヤーを含むカテーテル挿入器をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たされたカテーテル内に挿入した場合の例について、左側のY軸に、1日目の一酸化窒素(NO)放出プロファイル(NO表面フラックス(x10-10mol・min-1cm-2)対時間(時間、h)に関して)を、右のY軸に、1日目の一酸化窒素生成の変調(NO ppbレベル対時間(h)に関して)を、示すグラフである。
図4C図4Cは、20重量%ポリ(エチレングリコール)及びステンレス鋼ワイヤーを含むカテーテル挿入器をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たされたカテーテル内に挿入した場合の例について、左側のY軸に、2日目の一酸化窒素(NO)放出プロファイル(NO表面フラックス(x10-10mol・min-1cm-2)対時間(時間、h)に関して)を、右のY軸に、2日目の一酸化窒素生成の変調(NO ppbレベル対時間(h)に関して)を、示すグラフである。
図4D図4Dは、20重量%ポリ(エチレングリコール)及びステンレス鋼ワイヤーを含むカテーテル挿入器をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たされたカテーテル内に挿入した場合の例について、左側のY軸に、4日目の一酸化窒素(NO)放出プロファイル(NO表面フラックス(x10-10mol・min-1cm-2)対時間(時間、h)に関して)を、右のY軸に、4日目の一酸化窒素生成の変調(NO ppbレベル対時間(h)に関して)を、示すグラフである。
【0009】
図5A図5Aは、一酸化窒素(NO)放出プロファイル(保存期間の特定の日のNOフラックス(x10-10mol・min-1cm-2)に関して)を示すグラフであり、例えば、23℃で保存されたカテーテル挿入器を、初期保管期間として、1か月の保管期間、2か月の保管期間、及び3か月の保管期間保存し、各サンプルについて、保管期間の1日目に測定した。
図5B図5Bは、一酸化窒素(NO)放出プロファイル(保存期間の特定の日のNOフラックス(x10-10mol・min-1cm-2)に関して)を示すグラフであり、例えば、23℃で保存されたカテーテル挿入器を、初期保管期間として、1か月の保管期間、2か月の保管期間、及び3か月の保管期間保存し、各サンプルについて、保管期間の2日目に測定した。
図5C図5Cは、一酸化窒素(NO)放出プロファイル(保存期間の特定の日のNOフラックス(x10-10mol・min-1cm-2)に関して)を示すグラフであり、例えば、23℃で保存されたカテーテル挿入器を、初期保管期間として、1か月の保管期間、2か月の保管期間、及び3か月の保管期間保存し、各サンプルについて、保管期間の4日目に測定した。
【0010】
図6A図6Aは、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3 試験カテーテル)が用いられたポリウレタンカテーテルの外装面上における、及び3日間のバイオフィルム試験を経た、CDCバイオリアクター内のPEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼含有挿入器(n=3 対照(control)カテーテル)が用いられたポリウレタンカテーテルの外装面上における、緑膿菌に対する抗菌活性(コロニー形成単位(CFU)/cm2)を示すグラフである。
図6B図6Bは、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3 試験カテーテル)が用いられたポリウレタンカテーテルの外装面上における、及び3日間のバイオフィルム試験を経た、CDCバイオリアクター内のPEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼含有挿入器(n=3 対照カテーテル)が用いられたポリウレタンカテーテルの外装面上における、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性(コロニー形成単位(CFU)/cm2)を示すグラフである。
【0011】
図7A図7A及び7Bは、対照カテーテルの1つについての、緑膿菌の3日間のバイオフィルム試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図7B図7A及び7Bは、試験カテーテルの1つについての、緑膿菌の3日間のバイオフィルム試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0012】
図8A図8A及び8Bは、対照カテーテルの1つについての、黄色ブドウ球菌の3日間のバイオフィルム試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図8B図8A及び8Bは、試験カテーテルの1つについての、黄色ブドウ球菌の3日間のバイオフィルム試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0013】
図9図9は、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3の試験カテーテル)が用いられたポリウレタンカテーテルの外装面上における、及び5日間にわたるバイオフィルム試験を経たCDCバイオリアクター内の、PEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼含有挿入器(n=3 対照カテーテル)が用いられたポリウレタンカテーテルの外装面上における、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性(CFU)/cm2)を示すグラフである。
【0014】
図10A図10Aは、対照カテーテルの1つについての、黄色ブドウ球菌の5日間のバイオフィルム試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図10B図10Bは、試験カテーテルの1つについての、黄色ブドウ球菌の5日間のバイオフィルム試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0015】
図11A図11Aは、4日間にわたる分散試験(バイオフィルムをその外装部上で3日間成長させ、次にSNAPを含む又は対照(control)(SNAPを含まない)の挿入器を使ったポリウレタンカテーテルで1日間)を経たCDCバイオ反応器内における、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3の試験カテーテル)及びPEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼含有挿入器(n=3の対照カテーテル)を用いたポリウレタンカテーテルの外装面上における、緑膿菌に対する抗菌活性(CFU)/cm2)を示すグラフである。
図11B図11Bは、4日間にわたる分散試験(バイオフィルムをその外装部上で3日間成長させ、次にSNAPを含む又は対照(SNAPを含まない)の挿入器を使ったポリウレタンカテーテルで1日間)を経たCDCバイオ反応器内における、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3の試験カテーテル)及びPEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼含有挿入器(n=3の対照カテーテル)を用いたポリウレタンカテーテルの外装面上における、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性(CFU)/cm2)を示すグラフである。
【0016】
図12A図12Aは、対照カテーテルの1つについての、緑膿菌の4日間の分散試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図12B図12Bは、試験カテーテルの1つについての、緑膿菌の4日間の分散試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0017】
図13A図13Aは、対照カテーテルの1つについての、黄色ブドウ球菌の4日間の分散試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図13B図13Bは、試験カテーテルの1つについての、黄色ブドウ球菌の4日間の分散試験の結果を示し、着色された元の共焦点画像の白黒複製画像であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0018】
図14A図14A及び14Bは、5日間のバイオフィルム試験用のフローセルシステムにおける、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3つの試験カテーテル)及びPEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼を含む挿入器(n=3の対照カテーテル)を用いたポリウレタンカテーテルの内部表面上における、緑膿菌に対する抗菌活性(CFU)/cm2)を示すグラフである。
図14B図14A及び14Bは、5日間のバイオフィルム試験用のフローセルシステムにおける、SNAP-PEG(80/20重量%)ステンレス鋼含有カテーテル挿入器(n=3つの試験カテーテル)及びPEG(100重量%、不活性、SNAPなし)ステンレス鋼を含む挿入器(n=3の対照カテーテル)を用いたポリウレタンカテーテルの内部表面上における、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性(CFU)/cm2)を示すグラフである。
【0019】
図15】3つの実施例のカテーテル挿入器(S-ニトロソグルタチオン(GSNO)及び30μmの酸化亜鉛粒子又は30μmの酸化亜鉛粒子及びポリエチレングリコール(PEG))及び75重量%のS-ニトロソグルタチオン(GSNO)及び25重量%の不活性ヒュームドシリカ粒子(データは平均±標準偏差、n=3を表す))を含む対照挿入器についての、一酸化窒素(NO)放出プロファイル(NO表面フラックス(x10-10モル分-1cm-2)に関して)対時間(h)、を示すグラフである。
【0020】
図16】対照挿入器及び3つの実施例のカテーテル挿入器の生細胞(CFU /mL)を示す棒グラフである(データは、平均±標準偏差、n=3を表す)。
【0021】
図17A図17A~17Dは、挿入器なし(no insert)及び3つの実施例のカテーテル挿入器へ曝露した後に、模擬ハブの内管腔壁に付着した黄色ブドウ球菌細菌/バイオフィルムの蛍光顕微鏡画像である。
図17B図17A~17Dは、挿入器なし及び3つの実施例のカテーテル挿入器へ曝露した後に、模擬ハブの内管腔壁に付着した黄色ブドウ球菌細菌/バイオフィルムの蛍光顕微鏡画像である。
図17C図17A~17Dは、挿入器なし及び3つの実施例のカテーテル挿入器へ曝露した後に、模擬ハブの内管腔壁に付着した黄色ブドウ球菌細菌/バイオフィルムの蛍光顕微鏡画像である。
図17D図17A~17Dは、挿入器なし及び3つの実施例のカテーテル挿入器へ曝露した後に、模擬ハブの内管腔壁に付着した黄色ブドウ球菌細菌/バイオフィルムの蛍光顕微鏡画像である。
【0022】
図18】過酸化水素滅菌後の異なる日(1、7、及び56日)における、滅菌されていない挿入器及びNO放出挿入器の、GSNO(Y軸)の回収率を示すグラフである(データは平均±標準偏差、n=3を表す);
【0023】
図19】対照挿入器及び異なる浸漬条件に曝された2つの実施例の挿入器のZn漏れ(ppb、Y軸)を示すグラフである。
【0024】
図20】カテーテル、及び細菌/バイオフィルムを形成するのに試験された異なる領域の概略図である。
【0025】
図21】対照挿入器及び実験用カテーテル挿入器の生細胞(CFU/mL)を示す棒グラフである(データは、平均±標準偏差、n=4を表す)。
【0026】
図22A図22Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例:ヒツジ1)のハブ領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図22B図22Bは、挿入器が用いられたカテーテル例(実施例:ヒツジ2)の、ハブ領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0027】
図23A図23Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例:ヒツジ1)の、トンネル領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図23B図23Bは、挿入器が用いられたカテーテル例(実施例:ヒツジ2)の、トンネル領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0028】
図24A図24Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例:ヒツジ1)の、遠位先端部を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図24B図24Bは、挿入器が用いられたカテーテル例(実施例:ヒツジ2)の、遠位先端部を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0029】
図25】対照挿入器キャップ(比較例:ヒツジ3)についてと、実験挿入器キャップ(実施例:ヒツジ4)(データは平均±標準偏差、nは日により変わる、を表す)についての、生細胞(CFU/mL)を示す棒グラフである;
【0030】
図26】対照挿入器キャップ(比較例:ヒツジ3)についてと、及び実験挿入器キャップ(実施例:ヒツジ4)(データは平均±標準偏差、nはセグメントごとに異なる、を表す)の、異なる領域の生細胞(CFU/セグメント)を示す棒グラフである。
【0031】
図27A図27Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例:ヒツジ3)の、ハブ領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図27B図27Bは、挿入器が用いられた実施例のカテーテル(実施例:ヒツジ4)のハブ領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0032】
図28A図28Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例:ヒツジ3)の、トンネル領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図28B図28Bは、挿入器が用いられた実施例のカテーテル(実施例:ヒツジ4)のトンネル領域を描写する、着色された元の蛍光顕微鏡画像の白黒画像複製を示し、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0033】
図29A図29Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例:ヒツジ3)の、遠位血管内領域を描写する、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図29B図28Bは、挿入器(図29B)が用いられた実施例のカテーテル(実施例:ヒツジ4)の、遠位血管内領域を描写する、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0034】
図30A図30Aは、挿入器が用いられなかった対照カテーテル(比較例のヒツジ3)の遠位先端を描写する、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図30B図30Bは、挿入器が用いられた実施例のカテーテル(実施例:ヒツジ4)の、遠位先端を描写する、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0035】
図31図31は、比較例の挿入器キャップ(クロルヘキシジンを含む)及び実施例の挿入器キャップ(NO放出組成を含む)(データは平均±標準偏差、nはセグメントごとに異なる、表す)の、異なる領域の生細胞(CFU/セグメント)を示す棒グラフである(データは平均±標準偏差、nはセグメントごとに異なる、表す);
【0036】
図32A図32Aは、比較例の挿入器キャップを用いた比較例のカテーテルの、ハブ領域を描写する、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存するバクテリアを示し、赤色(容易には見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図32B図32Bは、実施例の挿入器を用いた実施例のカテーテルのハブ領域を描写する、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存するバクテリアを示し、赤色(容易には見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0037】
図33A図33Aは、比較例の挿入器キャップを用いた比較カテーテルの、トンネル領域を描写した、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存するバクテリアを示し、赤色(容易には見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図33B図33Bは、実施例の挿入器で処理された実施例のカテーテルの、トンネル領域を描写した、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存するバクテリアを示し、赤色(容易には見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【0038】
図34A図34A及び35Bは、比較例の挿入器キャップを用いた比較カテーテルの、遠位血管内領域を描写した、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
図34B図34A及び35Bは、実施例の挿入器を用いた実施例のカテーテルの、遠位血管内領域を描写した、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑色の染色は生存する細菌を示し、赤色(容易には見えない)は死滅した細菌を示す。
【0039】
図35A図35Aは、比較例の挿入器キャップを用いた比較カテーテルの、遠位先端を描写した、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
図35B図35Bは、実施例の挿入器を用いた実施例のカテーテルの遠位先端を描写した、着色した元の蛍光顕微鏡画像の白黒複製であり、緑の染色は生存するバクテリアを示し、赤(容易に見えない)は死滅したバクテリアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書に開示されるのは、ロック溶液を含むカテーテルに少なくとも部分的に挿入されたときに、一酸化窒素(NO)を選択的に生成することができるカテーテル挿入器である。ロック溶液は、指定の医療用途(治療用注入、液体抽出など)に使用されていないときにカテーテルに導入される。ロック溶液は、主に、カテーテルの遠位端に血液溶液の界面が存在することを確認するために使用され、場合によっては、凝固を防ぐためにも使用される。
【0041】
本明細書に開示されるカテーテル挿入器は、少なくとも固相一酸化窒素ドナーを含む。ドナーは、非多孔質ハウジングの内管腔の中で完全に密封されているため、固相成分が挿入器から浸出(漏れ、拡散など)することはない。ただし、非多孔質のハウジングは、水蒸気とNOの両方に対しても透過性がある。挿入器がロック溶液と接触しているとき、水蒸気はハウジングを通って内管腔内に浸透することができ、水蒸気はそこに含まれる固相一酸化窒素ドナーを水和する。これにより、固相一酸化窒素ドナーの分解が開始され、NOが遊離する。NOは挿入器のハウジングを通ってカテーテルに浸透する可能性がある。したがって、本明細書に開示の実施例では、カテーテル挿入器は、カテーテルに送られるはずの治療薬を含まず、ロック溶液を含むカテーテルに挿入されるときに長期間にわたって治療薬(一酸化窒素)を生成する。これは、抗菌剤、抗生物質、又は他の治療薬をカテーテルに直接デリバリーする他のカテーテル消毒器とは異なる。
【0042】
NOは、抗菌/抗ウイルス活性を含むいくつかの重要な生理学的機能を有する。生成されてカテーテルに放出されたNOは、カテーテルの内壁への細菌数を減らすことができるため、消毒剤として機能することができる。NOは又、カテーテル内壁への細菌の付着とバイオフィルムの形成を防ぐことができる。さらに、生成されるNOのレベルは、カテーテルの外壁を介してNOが拡散できるほどの十分な量であり得る。カテーテルの外装側のNOは、抗菌及び/又は治療効果を発現することができ、例えば、感染を制御し、炎症及び線維症を最小限に抑え、局所的な血小板活性、凝固、及び/又は血栓形成を抑制し、細菌及びウイルスを殺すのを助長し、細菌によるバイオフィルム形成を妨害し、及び微生物のバイオフィルム形成を分散又は防止する(例えば、抗生物質耐性バイオフィルムを分散させる。)。これらの効果は、カテーテルに関連することが多い感染のリスクを大幅に減らし得る。
【0043】
カテーテル挿入器の例を図1に示す。カテーテル挿入器10は、固相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む粉末組成物12と;i)一酸化窒素に対して透過性であり、ii)非多孔性であり、そしてiii)水蒸気に対して透過性である高分子壁18と;ポリマー壁18によって少なくとも部分的に規定される内管腔20と、を含むハウジング16と、を含み、粉末組成物12は、ハウジング16の内管腔20の中で完全に密封されている。
【0044】
いくつかの例では、挿入器10は、水蒸気へ曝露後の固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤14をさらに含み、固相添加剤14も、ハウジングの内管腔の中で完全に密封される。一般に、固相添加剤14は、酸化亜鉛ナノ粒子、銅(II/I)-配位子錯体、金属ワイヤー、金属ナノ粒子、アスコルビン酸、チオール、水素イオン前駆体、セレン種、有機セレン分子、有機テルリウム分子、有機促進剤種が固定化された形態でコーティングされた、又はそれを有するシリカ又は高分子粒子、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。本明細書でさらに詳細に説明するように、固相添加剤14は、粉末組成物12の成分であるか、又は別個の成分(例えば、金属ワイヤー14’)として挿入器10に組み込まれてよい。
【0045】
粉末組成物12は、少なくとも固相一酸化窒素ドナーを含む。本明細書に開示の実施例において、固相一酸化窒素ドナーは、固相S-ニトロソチオール(RSNO)である。これは、RSNOが固体、たとえば粉末、ナノ粒子などの形態であることを意味する。S-ニトロソチオールのいくつかの特定の例は、S-ニトロソグルタチオン(GSNO、人体に元々存在する)、S-ニトロソ-システイン(CYSNO、人体に元々存在する)、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン(SNAP、薬物ペニシラミンに分解する)、S-ニトロソ-ペニシラミン、S-ニトロソ-ヒト血清アルブミン(元々人体に存在する)の群、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0046】
場合によっては、粉末組成物12は、100%(重量%)の固相RSNOを含む。これらの例では、粉末組成物12は、他の成分を含まない固相RSNOからなる。
【0047】
他の例では、粉末組成物12は、固相S-ニトロソチオール及び固相添加剤14(本明細書では固相促進剤とも呼ばれる)を含む。これらの例では、固相添加剤14は、粉末組成物12の一部であり;固相添加剤14は、酸化亜鉛ナノ粒子、銅(II/I)-配位子錯体、銅ナノ粒子、アスコルビン酸、チオール、水素イオン前駆体、セレン種、有機セレン分子、有機テルリウム分子、ステンレス鋼ナノ粒子、金ナノ粒子、有機促進剤種が固定化された形態でコーティングされた、又はそれらを有するシリカ又は高分子粒子、及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。これらの例では、粉末組成物12は、約15重量%~約95重量%の固相RSNOと、約5重量%~約85重量%の固相添加剤14を含む(又は成る)。他の例では、粉末組成物12は、約75重量%~約95重量%の固相RSNOと、約5重量%~約30重量%の固相添加剤14を含む(又は成る)。一例として、粉末組成物12は、約75重量%のGSNO及び25重量%のZnOナノ粒子を含む。固相RSNOの量が少ない粉末組成物12の例では、固相RSNOの量が多い粉末組成物12の例よりも、より少ない量のNOを、より短期間で放出される。例えば、挿入器10が頻繁に交換される場合、より少量の固相RSNOの方が望ましい場合がある。
【0048】
固相添加剤14として使用され得るナノ粒子のいずれも、約1nm~約900nmの範囲の粒子サイズ(例えば、体積加重平均直径)を有し得る。例えば、酸化亜鉛、銅、ステンレス鋼、又は金ナノ粒子は、約5nm~約800nmの範囲の粒子サイズを有し得る。
【0049】
銅(II)-配位子錯体又は銅(I)-配位子錯体を固相添加剤14として使用することができる。固相添加剤14として使用することができる好適な銅(II/I)-配位子錯体の例としては、Cu(II)-トリ(2-ピリジルメチル)アミン(CuTPMA)、Cu(II)-トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(CuMe6Tren)、Cu(II)-トリ(2-ピリジルメチル)ホスフィン(CuTPMP)、Cu(II)-1,4,7-トリメチル-1,4-7-トリアザシクロノナン(Cu(Me3TACN))、Cu(II)-1,4,7-トリエチル-1,4-7-トリアザシクロノナン(Cu(Et3TACN))、Cu(II)-1,4,7-トリプロピル-1,4-7-トリアザシクロノナン(Cu(Pr3TACN))、Cu(II)-1,4,7-トリイソプロピル-1,4-7-トリアザシクロノナン(Cu(iPr3TACN))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミン-N-エチレート)(Cu(BMPA-Et))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミン-N-プロパノエート)(Cu(BMPA-Pr))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミン-N-ブチレート)(Cu(BMPA-Bu))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルエチル)アミン-N-エチレート)(Cu(BEPA-Et))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルエチル)アミン-N-プロパノエート)(Cu(BEPA-Pr))、Cu(II)-(N,N-bis-(2-ピリジルエチル)アミン)-N-ブチレート(Cu(BEPA-Bu))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミン-N-メチル-フェノラート)(Cu(BMPA-MePhO))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミン-N-エチル-フェノラート)(Cu(BMPA-EtPhO))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミン-N-プロピル-フェノラート)(Cu(BMPA-PrPhO))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルエチル)アミン-N-メチル-フェノラート)(Cu(BEPA-MePhO))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルエチル)アミン-N-エチル-フェノラート)(Cu(BEPA-EtPhO))、Cu(II)-(N,N-ビス-(2-ピリジルエチル)アミン-N-プロピル-フェノラート)(Cu(BEPA-PrPhO))、Cu(II)-3-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)(ピリジン-2-イルメチル)アミノ)エチラート(Cu(PEMA-Et))、Cu(II)-3-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)(ピリジン-2-イルメチル)アミノ)プロパノエート(Cu(PEMA-Pr))、Cu(II)-3-((2-(ピリジン-2-イル)エチル)(ピリジン-2-イルメチル)アミノ)ブチレート(Cu(PEMA-Bu))、Cu(II)-2-(ピリジン-2-イル)-N,N-ビス(ピリジン-2-イルメチル)エタン-1-アミン(Cu(PMEA))、Cu(II)-2,2’-(2-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)ブタン-1,4-ジイル)ジピリジン(Cu(PMAP))、及びそれらの組み合わせから選択される、Cu(II)-配位子錯体が挙げられる。特定例として、Cu(II)-配位子錯体は、Cu(II)-トリ(2-ピリジルメチル)アミン(CuTPMA)、Cu(II)-トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(CuMe6Tren)、Cu(II)-トリ(2-ピリジルメチル)ホスフィン(CuTPMP)、及びそれらの組み合わせから選択することができる。Cu(II)-配位子錯体のいくつかの例が本明細書にて提供されているが、他の水溶性Cu(II)-錯体又はCu(I)錯体を使用してもよいことは理解されるべきである。銅(I)錯体は、酸素とすぐに反応してCu(II)を形成しないように、安定である必要がある。
【0050】
固相添加剤14として使用できるチオールの好適な例としては、グルタチオン及びシステインが挙げられる。
【0051】
固相添加剤14として使用できる水素イオン前駆体な例としては、ポリ(乳酸-共-グリコール酸)などの水素イオン(プロトン)を生成可能な任意の酸が挙げられる。
【0052】
固相添加剤14として使用できるセレン種の好適な例としては、セレノシスタミンが挙げられる。別の好適な有機セレン分子としては、その構造内にセレノシスタミンを有するグルタチオンペルオキシダーゼが挙げられる。有機テルリウム分子の好適な例としては、5,5’-ジテルロ-2,2’-ジツホフェンカルボン酸及び他の同様のジテルル種が挙げられる。
【0053】
ステンレス鋼ナノ粒子は、ステンレス鋼タイプ316、316L、317などの任意のグレードの粒子であってよい。いくつかの金属ナノ粒子がリストされているが、それらがRSNOの分解のトリガー及び/又は触媒として作用する限り、他の金属ナノ粒子を使用してもよいことを理解されたい。
【0054】
有機促進剤種(例えば、銅(II/I)-配位子錯体、有機セレン分子、有機テルリウム分子など)はいずれも、シリカ、金、ポリスチレン、又は他の高分子粒子(例えば、ポリウレタン粒子)などの固相粒子の表面に固定化又はコーティングすることができる。これらのコーティングされた粒子は、固相促進剤/添加剤14として(例えば、粉末組成物12において)使用され得る。
【0055】
本明細書に開示の実施例において、固相促進剤/添加剤14は、一酸化窒素ドナーの一酸化窒素への分解を誘発及び/又は触媒することができる。以下のいくつかの例にて、固相促進剤/添加剤14が、特にGSNOからの一酸化窒素の放出速度をどのように制御又は加速できるかを示す。一例では、酸化亜鉛ナノ粒子が生理学的温度に加熱されると、分極密度が低下し(ΔPs<0)、表面に非補償の電荷(正と負の両方)が発生する。負電荷はGSNOを減少させてNOとGSH(すなわちグルタチオン)を生成すると考えられている。GSHが生成された後、酸化亜鉛表面の正電荷はGSHを酸化してGSを形成することができる。次に、2つのGSを組み合わせることができて、ジスルフィドGSSGが形成される。別の例では、グルタチオンは、最初のN-ヒドロキシスルフェンアミド種(例えばGS-N(OH)-SG)の形成を介してGSNOからのNO放出速度を増加させ、次に別のGSNOと反応できるラジカルGSに変換し、NOを遊離し、GSSGジスルフィド種を形成する。さらに別の例では、アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩は容易に酸化して、より小さなスレオース構造(3つの炭素糖)を形成することもできる。アスコルビン酸塩の自発的酸化は、GSNOの還元と組み合わせて、NOとGSHを遊離させることができる。さらに、アスコルビン酸塩の酸化生成物、すなわち、より小さなスレオース構造も又、GSNOに電子を提供することができる還元剤であり、したがって、GSNOのNOへの直接還元にも寄与することができ得る。一例では、アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩を溶液中で最大5日間酸化させ、乾燥させ、次いで固相インサート粉末組成物12の一部として組み込むことができる。有機セレン種は、GSNOからのNO生成を触媒することができる。銅イオン(銅粒子、銅層、又は銅(II/I)錯体から)は、配合物に存在する微量の遊離チオールによって+1酸化状態に還元され、Cu(I)イオンはGSNOをNO及びGSHへ還元する。これらの例のいずれにおいても、RSNOからの生成物及び副生成物は、高分子壁18を透過することができる一酸化窒素を除いて、密封されたハウジング16に留まる。
【0056】
さらに他の例では、粉末組成物12は、固相S-ニトロソチオール及び吸水材料を含む。吸水材料は、挿入器10の管腔20への吸水を増強することができる。吸水材料の添加により、吸湿時に内部粘度が増加するはずであり、これにより、GSNOと共用される場合、ケージ効果がチイルラジカル/NOラジカルペアにもたらされ、再結合してGSNOを形成し、NO放出の速度が遅くなる。吸水材料は、少なくとも0.5重量%の吸水を有する任意のポリマー又は化学物質であってよい。吸水量は、次の式で計算できる。
吸水量(重量%)=(Wwet-Wdry)/Wdry x 100 (式1)
(ここで、WwetとWdryは、それぞれ吸水時及び乾水時の吸収材料の重量である。好適な吸水材料は、たとえば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリペプチド、ポリイオン種、単糖、多糖、シリカ粒子、及び塩からなる群から選択される。タンパク質を、吸水材料としても使用できる。ポリイオン種の好適な例としては、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、ポリリン酸塩、ポリ四級アンモニウム種などが挙げられる。ポリ(エチレングリコール)(PEG)は、約1,000g/mol~約50,000g/molの範囲の重量平均分子量を有し得る。一例では、ポリ(エチレングリコール)は、約4,000g/mol(又はダルトン)の重量平均分子量を有する。単糖の好適な例はグルコースである。多糖類の好適な例としては、スクロース、アミロースデンプンなどが挙げられる。塩の好適な例としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)などの、挿入器10により浸透圧を増加させて水を吸い上げることができるものすべてが挙げられる。
【0057】
これらの実施例では、固相RSNOと吸水材料との重量比は、1:1~19:1の範囲である。いくつかの例では、粉末組成物12は、約50重量%~約90重量%の固相RSNOと、約9重量%~約50重量%の吸水材料からなる。他の例では、粉末組成物12は、約70重量%~約95重量%の固相RSNOと、約5重量%~約30重量%の吸水材料からなる。一例として、粉末組成物12は、約80重量%のSNAP及び20重量%の固体PEG粒子(MW=4,000g/モル)(重量比=4:1)を含む。
【0058】
他の例では、粉末組成物12は、固相RSNO、固相添加剤14、及び吸水材料を含む。これらの例では、固相RSNOと吸水材料の重量比は1:1~10:1の範囲である。これらの例のいくつかでは、粉末組成物12は、固相RSNOの約40重量%~約85.5重量%、固相添加剤14の約5重量%~約20重量%、及び約8重量%~約47.5重量%の吸水材料からなる。
【0059】
粉末組成物12に、固相RSNOが単独で又は吸水材料と組み合わされて含まれる場合、挿入器10は、ハウジングの内管腔の中で完全に密封された固相添加剤をさらに含み得るが、ここで固相添加剤とは、金属ワイヤー14’のことである。一例では、別個の固相添加剤、すなわち、金属ワイヤー14’は、ステンレス鋼ワイヤー又は銅ワイヤーである。いくつかの金属ワイヤーがリストされているが、一酸化窒素ドナー(固相RSNO)の酸化窒素への分解を誘発及び/又は触媒できる他の金属ワイヤーも使用できることは、理解されたい。
【0060】
金属ワイヤー14'の長さは、ある程度、ハウジング16の内管腔20の寸法に依存し得る。いくつかの例では、金属ワイヤー14'は、内管腔20の全体にわたって延びていてもよく、及び他の例では、金属ワイヤー14'は、内管腔20の全長のうち部分的に延びていてもよい。金属ワイヤー14'の幅又は直径は、内管腔20の幅又は直径よりも小さいので、内管腔20は、金属ワイヤー14'と粉末組成物12の両方を収容することができる。一例では、金属ワイヤー14'は、約0.3mmの直径(外径)を有する。
【0061】
金属ワイヤー14’は、粉末組成物12(固相RSNOを含み、別の固相添加剤14及び/又は吸水材料を含む場合も含まない場合もある)とともにハウジング16内にそれに沿うように導入され得る。図1に示される例では、ハウジング16内に1本の金属ワイヤー14’が含まれ、粉末組成物12によって囲まれている。
【0062】
別個の固相添加剤(例えば、金属ワイヤー14’)も又、本明細書に開示の粉末組成物12の任意の例と共に使用され得ることが理解されるべきである。例えば、粉末組成物12は、固相RSNO、任意選択で吸水材料、及び任意選択で別の固相添加剤14(例えば、本明細書に開示の粒子形態のいずれか)を含み得る。
【0063】
ハウジング16は、i)一酸化窒素に対して透過性であり、ii)非多孔性であり、そしてiii)水蒸気に対して透過性である高分子壁18;及び少なくとも部分的に高分子壁18により規定される内管腔20を含む。高分子壁は、以下の特性を有する高分子チューブ材料であってよい。水蒸気に対する透過性は比較的低くてよく、例えば、吸水量は0.9重量%と低くてよい。ハウジング16の高分子壁18に使用することができる非多孔性、NO透過性、及び水蒸気透過性のポリマー材料の例は、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)、シロキサンベースのポリウレタンエラストマー、及び熱可塑性シリコーン-ポリカーボネート-ポリウレタンからなる群から選択することができる。一例では、シリコーンゴムのチューブが好適である、というのは、他の生物医学グレードのポリマーと比較してシリコーンゴムを通るNOの拡散性が高く、シリコーンゴムの硬度が比較的低く、さらに水分を壁から通過させて固相RSNOからNO放出を開始させるからである。
【0064】
ハウジング16は、粉末組成物12で満たされ、接着剤又は他の封止機構によって密封された、単一片のポリマー材料から形成され得る。ハウジング16は又、漏れ防止封止部材で、両端が塞がれているチューブ(図1に示されているような)であり得る。例えば、高分子壁18は挿入チューブであり、ハウジング16は、挿入チューブの反対の端部に取り付けられたそれぞれの封止機構をさらに備える。封止機構の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、その他の硬質プラスチックプラグ、又は挿入チューブと同じプラスチック製のプラグが挙げられる。プラグは、両端の所定の位置に溶剤で密封することができる。他の封止機構として、従来のシリコーンコーキングタイプの材料を上げることができる。
【0065】
ハウジング16の寸法は、カテーテル挿入器10が挿入されるカテーテル又はカテーテルの部分(図2の参照番号26を参照)に依存し得る。いくつかの例では、カテーテル挿入器10は、患者の皮膚線を越えているカテーテルチューブ22内に入り込み、患者の血管内にあるカテーテルチューブ22の部分に入り込むように構成され得る(例えば、図2に示されるように)。これらの例では、ハウジング16の長さはカテーテル26の長さよりも短く、ハウジング16の直径はカテーテルチューブ22の内径よりも小さい。いくつかの例では、カテーテル挿入器10は患者の皮膚線を通り過ぎて数センチメートル入り込み、患者の血管内にあるカテーテルチューブ22の部分に入る。他の例では(例えば、図3に示されるように)、カテーテル挿入器10は、カテーテルチューブ22の近位端に取り付けられ、カテーテルチューブ22と流体連通するアダプター24(例えば、ハブ)内に張り込むように構成され得る。これらの例では、カテーテル挿入器10は、患者の皮膚線を越えない、又はカテーテルチューブ22内に入り込まない。又、これらの例では、ハウジング16の長さは、アダプター24の長さよりも短く、そしてハウジング16の直径は、アダプター24の内径よりも小さい。例として、ハウジング16(したがって、カテーテル挿入器10)の外径は、約0.5mm~約3mmの範囲であり、ハウジング16の内径(したがって、内管腔20の直径)は、約0.1mm~約2.5mmの範囲であってよい。ハウジング16がカテーテルチューブ22内に入り込む場合、その長さは約2cm~約20cmの範囲であってよく、ハウジング16がアダプター24内に入り込む場合、長さは約1cm~約5cmの範囲であってよい。アダプター24と共用するのに適したカテーテル挿入器10の一例では、長さは約2cmである。
【0066】
カテーテル挿入器10を作製するための方法において、粉末組成物12が調製され、ハウジング16に導入され得る。そして、ハウジング16は、粉末組成物12がハウジング16から浸出するのを防ぐために塞がれる。
【0067】
粉末組成物12は、粉末配合物(例えば、乾燥状態)として、又は溶液中のものとして、ハウジング16に導入され得る。一例として、固相添加剤14を固相RSNOと混合し、そして吸水材料を添加し、及びその混合物をさらに混合することができる。別の例として、固相添加剤14又は吸水材料を固相RSNOと混合することができる。乾燥粉末の例のいずれも、好適な技術を使用してハウジング16に装填することができる。
【0068】
金属ワイヤー14'などの別個の固相添加剤14が使用される場合、これはハウジング16に存在する粉末組成物12の中に挿入されるか、又はこれは、粉末組成物12が添加される前にハウジング16に導入され得る。
【0069】
別の例として、均一な溶液を生成し、ハウジング16への充填を容易にするために、粉末組成物12を適切な溶媒に溶解することができる。溶媒は、粉末組成物12の成分に依存し得る。一例として、テトラヒドロフラン(THF)が適切な溶媒である。他の適切な溶媒として、エタノール及びアセトンが挙げられる。溶媒を使用する場合、ハウジング16を塞ぐ前に溶媒を除去する(例えば、完全に蒸発させる)ことを理解されたい。溶媒は、均質性を達成し、充填プロセスを単純化するために望ましい場合がある一方で、乾燥粉末組成物はRSNOをより安定させることができる。
【0070】
その後、ハウジング16を塞ぐことができる。封止用に接着剤又は機械的シーリング部材(例えば、キャップ、プラグなど)を含んでよい。
【0071】
本明細書に開示されるカテーテル挿入器10の任意の例は、キットの一部であり得る。キットの例を図2に示す。一例では、キットは、カテーテル挿入器10であって相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む粉末組成物12と、挿入ハウジング16であって、i)一酸化窒素に対して透過性であり、ii)非多孔性であり、iii)水蒸気に対して透過性である高分子壁18と、少なくとも部分的に高分子壁18によって規定される内管腔20であって、粉末組成物12がハウジング16の内管腔20の中で完全に塞がれる内管腔20と、を含む挿入ハウジング16と;を含むカテーテル挿入器10と、カテーテル26であって、一酸化窒素を透過し、少なくとも1つの管腔28を有するカテーテルチューブ22と、カテーテルチューブ22の近位端に取り付けられ、カテーテルチューブ22の管腔28の少なくとも1つに操作可能に接続される開口部を有するアダプター24と、を含むカテーテル26と;カテーテル挿入器10を少なくとも1つの管腔28内又はアダプター22内の所定の位置に固定する機構、を含む。
【0072】
粉末組成物12の任意の例をキットで使用することができる。
【0073】
カテーテル26は、緊急カテーテル又は慢性的カテーテルであり得る。一例では、緊急カテーテルは、血管内カテーテル及び尿道カテーテルからなる群から選択され、又は、慢性的カテーテルは、トンネル型透析カテーテル、非経口栄養カテーテル、及び薬物注入カテーテルからなる群から選択される。
【0074】
カテーテルチューブ22は、ポリマー材料が使用されている用途に適した任意のポリマー材料で形成することができる。シリコーンゴム(SR)、ナイロン(ポリアミド)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ラテックス、熱可塑性エラストマーなど、さまざまなポリマーを使用できる。カテーテルチューブ22の壁が一酸化窒素に対して透過性である場合(図2に示されるように)、NOは又、管腔28及びカテーテルチューブ壁から好ましく分配され得る。カテーテルチューブ22に使用できるNO透過性材料の例として、シリコーンゴム、ポリウレタン、SRとPUのコポリマー、PUとポリカーボネートのコポリマー、及び他のNO透過性材料が挙げられる。カテーテルチューブ22が一酸化窒素に対して透過性である場合、NOは、カテーテル26の外装面全体にわたって放出され、細菌の付着、バイオフィルム形成、及びカテーテル外装面での凝固を少なくとも実質的に防止する。たとえば、生成NOのレベルの増加により治療が有効になり、細菌やウイルスを殺し、細菌のバイオフィルム形成を妨害し、微生物のバイオフィルム形成を分散又は防止するのに十分になる(たとえば、抗生物質耐性バイオフィルムを分散させる)。これと同時に、カテーテル26が複数の管腔を有するカテーテルである場合、カテーテル26の管腔28内のロック溶液中にさらに高いレベルのNOが存在し、これにより、その管腔内及び他の管腔内の感染が防止される。
【0075】
一例では、アダプター24は、トーイボースト(Thouy-Borst)アダプターである。別の例では、アダプター24は、トンネル型透析カテーテル(TDC)のハブ領域であってよい。アダプター24は、カテーテルチューブ22に固定されるか、又はカテーテルチューブ22から取り外し可能である。アダプター24は、挿入器10がアダプター24内に延びてもカテーテルチューブ22内には伸びないかどうかにかかわらず、又は挿入器10がアダプター24を通ってカテーテルチューブ22内に延びるかどうかにかかわらず、カテーテル挿入器10を受け入れるのに十分な幅を有する。アダプター24により、カテーテル26内へ血流を逆流し始めることなく、挿入器10をカテーテル26内に存在するロック溶液に挿入することができる。
【0076】
固定機構は、挿入器10をアダプター24に固定することができる任意の適切な装置であってよい。固定機構は、挿入器10の一端に取り付けてよい。一例として、固定機構は、挿入器10の近位端に配置されるねじのようなキャップであってよく、アダプター24の近位端に取り付けられ得る。一例として、固定機構は、アダプターの近位端で定められる雌スレッドと噛み合う雄スレッドを備えたキャップを含み得る。固定機構の他の例としては、クリップのような機構が挙げられる。この機構では、クリップを押してカテーテルの壁に圧力をかけ、内管腔を塞ぐことができる。これにより、材料の出入りが防止される。クリップは又、挿入器10に圧力をかけて所定の位置に固定することができる。
【0077】
カテーテル挿入器10を使用する方法には、カテーテル挿入器10を、カテーテル26の管腔28内、又はカテーテル26に操作可能に接続されたアダプター24内の所定の位置に固定することが含まれ、それにより、カテーテル挿入器10は、管腔28内又はアダプター24内のロック溶液と接触するように置かれる。任意のカテーテル挿入器10の例をこの方法において使用することができる。図2に示されるように、カテーテル挿入器10は、アダプター24の開口部に挿入され得る。次に、カテーテル挿入器10は、所定の位置にスライドされ、固定機構を介して固定され得る。
【0078】
カテーテル挿入器10を挿入する前に、この方法は、カテーテルロック溶液をカテーテル26の管腔28に導入することをさらに含んでよい。注射器(又は他の適切な器具)を使用して、カテーテルロック溶液(容器から)を吸い上げ、そしてカテーテルロック溶液を管腔28に導入する。
【0079】
乾燥状態では、粉末組成物12中のRSNOは、比較的安定している(例えば、少なくとも3ヶ月間)。カテーテル挿入器10がカテーテルロック溶液と接触すると、水蒸気がハウジング16の高分子壁18を透過し、一酸化窒素を生成するS-ニトロソチオールの分解を開始する。一酸化窒素は、高分子壁18を通ってカテーテル26の管腔28内に浸透する。カテーテル26の壁が一酸化窒素を透過する場合、NOは又、カテーテル26の外部にまで浸透することができる。固相添加剤14、14'の存在により、RSNOを水蒸気に曝露した後の一酸化窒素の放出速度を加速させることができ、吸水材料の存在により、水蒸気の量及び/又は水蒸気がカテーテル挿入器10に取り込まれる速度を増加させることができる。
【0080】
挿入器10は、比較的迅速に、例えば5分以内にNOを放出し始め、その後、長期間(例えば、少なくとも24時間、又は少なくとも48時間、又は少なくとも72時間)継続的に比較的高レベルでNOを放出する。
【0081】
発生するNOの量は、S-ニトロソチオールの重量パーセント、固相促進剤/添加剤14の重量パーセント、挿入壁18の厚さ、挿入壁18の透過性などを変えることによって正確に制御することができる。
【0082】
カテーテル挿入器10は、カテーテル26の種類に応じて、所定の時間、カテーテル26内に留まることができる。例えば、カテーテル挿入器10は、1時間~約3日(72時間)の範囲の任意の時間、カテーテル26内に留まることができる。一例では、各透析セッションの後に、トンネル型透析カテーテル内でカテーテル挿入器10を利用することが望ましい場合がある。この例では、約2~3日間、NOを放出するのが望ましい。
【0083】
本開示をさらに例示するために、本明細書にて例を示す。これらの例は、例示の目的で提供されており、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例
【0084】
実施例1
【0085】
NO放出挿入器
【0086】
例としてのカテーテル挿入器を調製した。粉末組成物には、80重量%のSNAP(固相S-ニトロソチオールとして)及び20重量%のPEG(MW=4,000g/mol)(吸水材料として)が含まれ、粉末組成物をTHFに溶解して均一な溶液を得た。溶液を外径0.94mm/内径0.51mmのシリコーンゴムチューブに加えた。0.3mmのステンレス鋼線(316L)(固相添加剤として)も各チューブ片に追加した。充填後のチューブをフード下で少なくとも24時間放置してTHFを完全に蒸発させ、内部成分が乾燥して固体の形になるようにした。次に、チューブをDOWSIL(商標)3140 RTV透明シリコーンコーティングMIL-A-46146で塞ぎ、硬化/完全封止した。
【0087】
NO放出プロファイル試験
【0088】
一例のカテーテル挿入器をリン酸緩衝生理食塩水に4日間浸し、放出された一酸化窒素を化学発光系の一酸化窒素分析器によって検出した。最初の8時間のNO放出プロファイル(左Y軸)を図4に、1日目(24時間)を図4に、2日目の1.25時間後を図4Cに、そして4日目の1.25時間後も図4Cに示す。これらのグラフでは、NOレベル(ppb)(右Y軸)も示される。1日目は、SNAPが最初に水和したときに発生するSNAPの「NOバースト」効果のために高いNO放出が認められた。かくたる効果はステンレス鋼によってさらに触媒活性化された。2日目と4日目の結果から、NO放出が時間の経過とともに徐々に増加することが示唆される。
【0089】
安定性試験
【0090】
3種の異なる安定期間において、3つの挿入器に対して23℃での安定性を試験した。安定期間には、1か月の保管後、2か月の保管後、及び3か月の保管後が含まれる。安定性の測定は、各安定期間の1、2、及び4日目に行われた。初期安定性測定(図5A図5Cでは「初期」と呼ばれる)も、挿入器が準備された日(1日目)、挿入器が準備された翌日(2日目)、及び挿入器が準備されてから3日(4日目)に行われた。安定性の測定は、化学発光系の一酸化窒素アナライザーを使用して行った。初期期間及び各安定期間の1日目の結果を図5Aに示し;初期期間及び各安定期間の2日目の結果を図5Bに示し、又初期期間と各安定期間の4日目の結果を図5Cに示す。尚、初期の1日目の測定では、2つの挿入器のみが試験されたことに注意されたい。図5Aに示す1日目では、SNAPが最初に水に曝されたため、挿入器から非常に大量のNOが放出された。SNAPの最初の水和により、NOバースト効果がもたらされる。さらに、シリコーンチューブの壁が非常に薄いため、最初に水に曝されると、シリコーンの外径/周囲に最も近いSNAP結晶が水和する。これにより、高いNOバースト及び放出が発生した。次に、水が挿入器の中心に向かって吸収され続けると、時間の経過とともにより多くのSNAPが水和して、NOが放出された。この結果からは、挿入器が少なくとも3か月間安定であることが示唆される。
【0091】
実施例2
【0092】
NO放出挿入器及び対照挿入器
【0093】
実施例1に記載の挿入器例を調製した。
【0094】
対照カテーテル挿入器も調製した。粉末組成物には、100重量%のPEGとステンレス鋼線が包含された(SNAPは含まれていなかった)。粉末組成物をTHFに溶解して均一な溶液を得た。溶液を外径0.94mm/内径0.51mmのシリコーンゴムチューブに加えた。0.3mmのステンレス鋼線(316L)も各チューブに追加した。充填されたチューブをフード下で少なくとも24時間放置してTHFを完全に蒸発させ、内部成分が乾燥して固体の形になるようにした。次に、チューブを「DOWSIL(商標)3140 RTV透明シリコーンコーティングMIL-A-46146」で塞ぎ、硬化/完全封止させた。
【0095】
バイオフィルム試験
【0096】
10%LB(溶原性ブロス)培地を含むCDCバイオフィルム反応器を使用した。外径1.96mm、内径1.14mm、壁厚0.41mmのポリウレタン(PU)カテーテルを使用した。CDCバイオフィルム反応器では、PUカテーテルチューブの一端をエポキシシーラントで塞ぎ、他端を培地に開放した。
【0097】
3日間のバイオフィルム試験を実施した。PUカテーテルの開放端を、緑膿菌又は黄色ブドウ球菌のいずれかに曝露した。24時間ごとに、実施例の挿入器又は対照挿入器をPUカテーテルに挿入した。PUカテーテルの外装面の全細菌数を測定した。
【0098】
3日間にわたるバイオフィルム試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=3)及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=3)の、緑膿菌に対する抗菌活性が図6Aに示されている。3日間にわたるバイオフィルム試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=3)及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=3)の、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を図6Bに示す。これらの結果から、NOを放出する実施例の挿入器がバイオフィルム形成を低減させることが明確に示されている。
【0099】
3日間のバイオフィルム試験後の緑膿菌を着色して得られた元の共焦点画像を白黒で複製された画像を図7A及び7Bに示す。図7A及び7Bは、それぞれ、対照挿入器の1つ及び実施例の挿入器の1つについてのものである。対照挿入器を使用したPUカテーテル(図7A)には、実施例の挿入器を使用したPUカテーテル(図7B)よりも多くの生菌が存在した。
【0100】
3日間のバイオフィルム試験後の黄色ブドウ球菌を着色して得られた元の共焦点画像を白黒で複製された画像を図8A及び8Bに示す。図8A及び8Bは、それぞれ、対照挿入器の1つ及び実施例の挿入器の1つについてのものである。対照挿入器を使用したPUカテーテル(図8A)には、実施例の挿入器を使用したPUカテーテル(図8B)よりも多くの生菌が存在した。
【0101】
黄色ブドウ球菌を用いて5日間のバイオフィルム試験を実施した。PUカテーテルの開放端を黄色ブドウ球菌に曝露した。24時間ごとに、実施例の挿入器又は対照挿入器をPUカテーテルに挿入した。PUカテーテルの外(外装)表面の全細菌数を測定した。
【0102】
5日間にわたるバイオフィルム試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=3)及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=3)の、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を図9に示す。これらの結果から、NOを放出する実施例の挿入器は、対照挿入器と比較した場合に、バイオフィルムの形成を低減することが明確に示される。
【0103】
5日間のバイオフィルム試験後の黄色ブドウ球菌を着色して得られた元の共焦点画像を白黒に複製した画像を図10A及び図10Bに示す。図10A及び図10Bは、それぞれ対照挿入器の1つ及び実施例の挿入器の1つについてのものである。対照挿入器を使用したPUカテーテル(図10A)には、実施例の挿入器を使用したPUカテーテル(図10B)よりも多くの生菌が存在した。
【0104】
分散試験
【0105】
10%LB培地を含むCDCバイオフィルム反応器を使用した。外径1.96mm、内径1.14mm、壁厚0.41mmのポリウレタン(PU)カテーテルを使用した。CDCバイオフィルム反応器では、PUカテーテルチューブの一端をエポキシシーラントで塞ぎ、他端を培地に開放した。緑膿菌又は黄色ブドウ球菌のいずれかを、PUカテーテルチューブの外装面で3日間成長させた。次に、実施例の挿入器又は対照挿入器を、4日目にPUカテーテルチューブに配置し、1日間(24時間)その中に置いた。PUカテーテルの外装面の全細菌数は5日目に測定した。
【0106】
3日間にわたる分散試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=3)の及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=3)の、緑膿菌に対する抗菌活性を図11Aに示す。3日間にわたる分散試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=3)及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=3)の、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を図11Bに示す。これらの結果は、NOを放出する実施例の挿入器が、対照挿入器よりもバイオフィルムをよりよく分散させることを明確に示している。
【0107】
3日間の緑膿菌の分散試験後に着色して得られた、元の共焦点画像を白黒で複製図を図12A及び12Bに示す。図12A及び12Bは、それぞれ、対照挿入器の1つ及び実施例の挿入器の1つについてのものである。対照挿入器を使用したPUカテーテル(図12A)には、実施例の挿入器を使用したPUカテーテル(図12B)よりも多くの生菌が存在した。
【0108】
3日間の分散試験後の黄色ブドウ球菌を着色して得られた元の共焦点画像の白黒複製図を図13A及び13Bに示す。図13A及び13Bは、それぞれ、対照挿入器の1つ及び実施例の挿入器の1つについてのものである。対照挿入器を使用したPUカテーテル(図13A)には、実施例の挿入器を使用したPUカテーテル(図13B)よりも多くの生菌が存在した。
【0109】
内管腔抗菌試験
【0110】
この5日間の試験では、フローセルシステムを使用した。PUカテーテルの内管腔に細菌(緑膿菌又は黄色ブドウ球菌)を接種した。未使用の培地の流れを1日3回、1時間発生させ、その日の残りの時間は流れを停止した。実施例のNO放出挿入器又は対照挿入器は、内管腔の内側に配置した。挿入器をその内側に配置したとき、媒体は内管腔に残っていた。これは、一部には汚染無しに洗い流すことが困難だったことによる。カテーテルの一端は空気に開放されおり;もう一方の端は、媒体流のコネクターシステムのピペット端に接続していた。毎日未使用の挿入器を使用した。
【0111】
5日間にわたる内管腔バイオフィルム試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=4)及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=4)の、緑膿菌に対する抗菌活性を図14Aに示す。5日間にわたる内管腔バイオフィルム試験における、PUカテーテル中の実施例の挿入器(n=4)及びPUカテーテル中の対照挿入器(n=4)の、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を図14Bに示す。これらの結果は、NOを放出する実施例の挿入器が、対照挿入器と比較した場合、バイオフィルム形成を低減させることを明確に示している。
【0112】
実施例2のすべての結果からは、固相添加剤としてのステンレス鋼ワイヤーの存在が、一酸化窒素の効果を著しく増強することが示唆される。
【0113】
実施例3
【0114】
NO放出挿入器及び対照挿入器
【0115】
NO放出挿入器の寸法は、一般的に使用される血液透析カテーテルのハブ寸法に基づいて設計された。
【0116】
カテーテル挿入器のすべては、直射日光が当たらない状態で調製した。
【0117】
シリコーンチューブ(内径(ID)0.058”、外径(OD)0.077”)を約3cmのセグメントに切断し、各セグメントの一端を接着剤「DOWSIL(商標)3140 RTV透明シリコーンコーティングMIL-A-46146」を使用して塞ぎ、約24時間乾燥させた。そして、12±0.2mgの目的の乾燥粉末製剤をそれぞれのチューブセグメントにガラス漏斗ピペットを使用して分注した。使用した乾燥粉末組成には、(実施例A)75重量%GSNO:25重量%の30nmサイズのZnOナノ粒子;(実施例B)25重量%GSNO:75重量%の30nmサイズのZnOナノ粒子;(実施例C)60重量%GSNO:20重量%の30nmサイズのZnOナノ粒子:20重量%固体ポリエチレングリコール(MW=3,350)(PEG);(比較例D)75重量%GSNO:25重量%ヒュームドシリカ、が包含された。使用前に、GSNOを乳鉢と乳棒を使用して粉砕し、約1分間乱流状態にしながら他の成分と混合し、均一な乾燥粉末混合物を得た。チューブに目的の粉末製剤(約12mg≒1.8cmの充填長さ)を充填した後で、チューブセグメントを充填するのに使ったその一端を切断して、充填粉末の上に約0.2cmのヘッドスペースを得た。接着剤を使用して開放端を塞ぎ、約24時間乾燥させた。各挿入器の最終的な長さは約2.0cmだった。
【0118】
NO放出プロファイル試験
【0119】
NO放出挿入器(実施例A~C、比較例D)からの一酸化窒素の放出は、化学発光系の一酸化窒素分析器(NOA)を使用して測定した。まずNOAの校正は、NOAゼロエアフィルターを通過するN2ガスとN2ガス中のNO濃度が44.3ppmの標準ガスを使った2点校正によって校正した。
【0120】
生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)は、18.2MΩの脱イオン水を使用して作製した。NOAサンプルセルに11mLの生理食塩水を充填し、NO放出挿入器を、浮いた状態のポリプロピレン製の障壁の下に配置して、挿入器を常時完全に沈めた状態に保った。生理食塩水リザーバーをN2ガスで50mL/minの流量でバブリングして、GSNOから生成したNOを溶液から逃がし、N2掃引ガスによってNOAに移送した。すべてのNOAサンプルセルは、サンプルが光に曝されるのを保護するためにアルミホイルで包んだ。NOの放出を室温(24℃)で72時間継続的に監視した。
【0121】
この試験の条件として、血液透析カテーテルハブが実条件をシミュレートするように選択した。血液透析治療は通常2~3日ごとに行われ、透析セッションごとにNO放出挿入器を交換できるようにするため、測定は72時間にわたって行われた。カテーテルハブは体の外側にあり、不透明で、生理食塩水ロック溶液を用いてロックされていることに応じて他の条件を選択した。
【0122】
結果を図15に示す。実施例Aは、最初の24時間にわたって大きなNOバーストを生じ、72時間を示すマーカーに達するまで漸減した。実施例Bでは、GSNOとZnOの割合が例Aとは逆になっている。実施例Bは、実施例Aと比較して同様のNO放出プロファイルを示したが、最初のバーストは12時間しか続かず、最初に存在するGSNO量が少ないため、その後大幅に減少した。実施例Bの結果から、長期の放出にはより多くのRSNOが必要であることが示された。
【0123】
実施例AのNO放出プロファイルを平準化/平滑化するために、試みとして、実施例Cでは、ポリエチレングリコール(MW=3,350)(PEG)を用いて調製した。挿入器の内部成分(GSNO及びZnO)の粘度を上げるためにPEGを追加した。図15に示すように、平準化/平滑化効果が達成され、72時間にわたってより一貫したNO放出率が得られた。
【0124】
実施例A、B及びCのそれぞれにおいて、ZnOによりNO放出が増強されたことを証明するために、比較例Dにおいて、ZnOをフューズドシリカ粒子に換えた。フューズドシリカ粒子はGSNOと反応せず、不活性剤であった。比較例DのNO放出プロファイルは、72時間にわたって最小のNO放出量を示す。このデータから、ZnOはシリコーンゴムチューブ内に含まれるGSNOからのNO放出を促進することが示唆される。
【0125】
生体内シミュレートカテーテルハブ試験
【0126】
実施例A、B、及びCでは、72時間にわたって固有のNO放出プロファイルが示された。したがって、シミュレートしたハブ抗菌実験を使用して、それぞれの殺菌効果を試験した。この実験では、実際の血液透析カテーテルハブの状態をシミュレートするように設計した。
【0127】
カテーテルのハブ領域をシミュレートするために、3cmのシリコーンチューブ(ID 0.125”、OD 0.250”)を使用した。10%LBブロス中で一晩増殖させた0.3mLの細菌培養液(1×108CFU/mL)を、一端を固定した模擬ハブに移した。次に、NO放出挿入器を模擬ハブの内部に配置し、もう一方の端をクランプで閉じた。対照サンプルの場合、NO放出挿入器は追加しなかった。各サンプルを、室温(24℃)、暗所で72時間、低速のシェーカーでインキュベートした。72時間のインキュベーション後、20μLの細菌培養液を各模擬ハブから回収し、10倍希釈した。各希釈液の50μLをLB寒天プレートに広げ、コロニー形成単位(CFU)をカウントするために37℃で一晩インキュベートした。模擬ハブも小さな断片にスライスし、その内部を暗所で15分間、BacLight Live/Dead染色キットで染色して、バイオフィルム形成の程度を評価した。顕微鏡画像は、適切なフィルターセット(SYTO-9の場合は488/520nm、ヨウ化プロピジウムの場合は493/636nm)を用いて、蛍光顕微鏡を使用して取得した。
【0128】
各NO放出挿入器組成(実施例A~C)においては、各模擬ハブの液体ブロスに存在するすべての細菌が死滅し、対照(NO放出挿入器なし)と比較して、細菌の6.4の対数減少値がもたらされた。これらの結果を図16に示す。このデータから、実施例A~Cは、模擬カテーテルハブ領域の液体ブロス内の黄色ブドウ球菌細菌細胞を死滅させることができることが示される。
【0129】
各模擬ハブの内管腔壁の蛍光顕微鏡画像が撮影され、着色済みの元画像を白黒で表現した複製画像が図17A図17Dにかけて描かれている。対照(control)(図17A)並びに実施例B(図17C)及びC(図17D)には、模擬ハブの内管腔壁に付着した黄色ブドウ球菌の細菌/バイオフィルムの証拠が示されている。これに対して、実施例A(図17B)では、黄色ブドウ球菌の細菌/バイオフィルムの有意な付着の証拠は示されなかった。
【0130】
よって、実施例Aからのデータからは、最初の24時間にわたって大きなNOバーストがもたらすことが、バイオフィルムの形成を防ぐ上で望ましいことが示唆される。したがって、実施例Aの組成(75%GSNO:25%の30nm ZnOナノ粒子)を、追加の試験に使用した。
【0131】
滅菌及び安定性試験
【0132】
動物試験の前に、NO放出挿入器の滅菌を実施した。GSNOは、光、熱、金属イオン、及び水の存在下で自然に反応してNOを放出する。したがって、さまざまな滅菌方法を試験して、GSNOの安定性に悪影響があるかどうかを確認した。
【0133】
これらの試験のために、追加のNO放出挿入器を実施例Aと同様に調製した。これらの挿入器のうちの3つをまとめて実施例Eと称し、他の3つをまとめて実施例Fと称す。これらをそれぞれ包装し別々のポーチに入れて、ミシガン大学病院の滅菌施設に送り、エチレンオキシド(EO)又は過酸化水素(H22)処理を行った。
【0134】
EO処理のために、NO放出挿入器(実施例E)を、1時間の前処理及び加湿プロセス(54℃、湿度40~80%)にかけ、続いて、同様の温度と湿度下で、エチレンオキシドガスに3時間曝した。次に、2時間のエチレンオキシドガス排出工程を行い、続いて12時間の空気洗浄を行った。
【0135】
22処理(STERRAD(登録商標)システムを使用する)は、合計で約45分かかった。真空下で、59%(公称)のH22水溶液を気化させて、NO放出挿入器を覆った。ガス状のH22が、圧力を低減している間に拡散し、無線周波数(RF)エネルギーがかけられた後に、低温H22ガスプラズマが生成した。生成したH22ガスプラズマにより、NO放出挿入器を滅菌した(実施例F)。
【0136】
3つの対照NO放出挿入器(まとめて、比較例Gと称す)が、比較例Dと同様に調製された。ただし比較例Dのものは、滅菌されていない。
【0137】
対照挿入器(比較例G)について、0日目のGSNOの量を測定した。又、0日目に、残りのNO放出挿入器をEO処理(実施例E)又はH22処理(実施例F)することにより滅菌した。
【0138】
各インサート内のGSNOの量/安定性は、紫外線(UV)光及びNOAを使用して、放出されたNOの総量を検出/定量化することで測定した。具体的には、2mLの精製水をNOAサンプルセルに追加した。安定したベースラインが得られた後、NO放出挿入器の1つを切り開き、別の2mLの精製水を使用して、粉末充填物をサンプルセルに移した。さらに1mLの精製水を使用して、NOAサンプルセルの壁に残っているすべての粉末をバルク溶液(合計5mLの精製水)に洗い流した。GSNO/ZnO含有溶液を、50mL/分の流量でN2ガスバブリングして溶液からガスを追い出し、N2掃引ガスによってNOAへと移送した。GSNOからNO放出がなくなり、元のベースラインに戻るまでUV光を使用してサンプルを照射した。各NO放出挿入器から放出されるNOの量は、モル比が1:1であるため、GSNOに直接変換した。3つのNO放出対照挿入器(滅菌されていない)から測定されたGSNOの最大量を、GSNO回収率100%と仮定し、これから、他のすべてのサンプル(滅菌及び非滅菌)についてこの値に規格化した。かくして、100%を超えるGSNO回収率が可能となった。表1は、実施例E、実施例F、及び比較例G(それぞれn=3)の結果を示す。
【0139】
これらの結果(より低い標準偏差及びより迅速な転換率)に基き、追加試験にはH22処理を選択した。
【表1】
【0140】
次に、NO放出挿入器内のGSNOの長期安定性を分析した。追加のNO放出挿入器は、実施例Aと同様に調製され、H22法を使用して滅菌した(総称して実施例Hと称す)。これらの追加の挿入器のうち3つは滅菌されておらず、対照(control)として使用した(総称して比較例Iと称す)。各対照挿入器中のGSNOの量は、本明細書に記載の方法を使用して0日目に測定した。残りの挿入器(例H)のH22滅菌を0日目に完了した後、それらを個々の滅菌ポーチに残し、さらに使用するまで暗所、室温(24℃)で乾燥剤の入った密封ガラスジャーにて保管した。3つの挿入器のGSNOは1日目に測定した。他の3つの挿入器のGSNOは7日目に測定した。さらに他の3つの挿入器のGSNOは56日目に測定した。結果を図18に示す。数ヶ月の保管(56日目)で、挿入器内部のGSNOは平均で4.3%劣化することが分かった。したがって、GSNOは、室温でシリコーン挿入器内にZnOナノ粒子を入れて乾燥状態で保管した場合、比較的安定している。
【0141】
浸出試験
【0142】
挿入器を溶液に浸漬したときに、挿粉末組成物成分のいずれかが挿入器から漏れるかどうかを確かめるための試験を実施した。実施例Aと同様の挿入器に、開放端を通して粉末を充填し、次に開放端を塞ぐことも含め、本明細書に記載されるとおりにして調製した。3つの挿入器の塞がれた端を、各試験ボトルのそれぞれのキャップで固定した。
【0143】
これらの試験では、3つの対照挿入器には、シリコーンチューブ及び接着剤のみが含まれ、GSNO又はZnOは存在しなかった。
【0144】
所定の期間浸漬後に浸出液中の亜鉛検出に使用する誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)は、生理食塩水中の高濃度の塩によって損傷する可能性があるため、浸漬溶液として精製脱イオン水を使用した。
【0145】
浸出試験のために、2つの異なる浸漬条件を採用した。すべての挿入器を、試験ボトル内の所定量(10mL)の精製脱イオン水の中に置いた。3つの対照挿入器及び粉末組成物を含む3つの挿入器(まとめて実施例Jと称す)を完全に沈めたので、挿入器の両端は試験ボトル内の溶液に浸された。粉末組成物(まとめて実施例Kと称す)を含む他の3つの挿入器は、部分的に溶液に沈めた。部分的に沈める際に、挿入器にキャップを使用してこれを固定した。これらの挿入器はそれぞれの試験ボトルのキャップで固定されたため、粉末組成物の導入後に塞がれた端部は、試験ボトル内の溶液に曝されなかった。
【0146】
24時間(1日)の浸漬後、挿入器を取り外し、完全に洗浄し、乾燥させ、そして再び完全に又は部分的に未使用の精製脱イオン水に沈めた。このプロセスを2日目と3日目に繰り返した。それぞれの溶液を回収した後、ICP-MSを使用してそれぞれの亜鉛含有量を測定した。結果を図19に示す。
【0147】
図19に示されるように、最初の24時間の浸漬期間後、2つの異なる浸漬条件について溶液中で検出された亜鉛の濃度は、極端に異なっていた(例えば、実施例J(完全な水没)の1394.3ppbと対比して、実施例K(部分的な水没)の76.8ppb。)。上記のように、2つの浸漬方法間の相違は、完全に水没させると、GSNO/ZnO粉末を充填した後に塞がれたシリコーンチューブの端が溶液に直接曝される一方、部分的な水没では、端はキャップの内側にあり、溶液に曝されてなかったことによる。したがって、チューブの一端は塞がれる前(例えば、充填中)に直接ZnOに曝されたので、ZnOは、第2端が塞がれたシリコーンチューブのその一端から漏れ出ることができたのに対して、ZnOに曝される前に予備的に塞がれていたシリコーンチューブの一端は塞がれ、かつ乾燥していた(より強固な閉塞が形成されていた)からである、という結論を下すことができる。さらに、実施例K(完全に水没した挿入器)が大きなエラーバーを示すことにより、この現象を間接的に解すことができる、というのは挿入器が手作業で作成されているため、2番目に塞がれた端のエッジの近くに存在し得るZnOの量が挿入器ごとに大幅に変わる可能性があるためである。
【0148】
全体として、図19のデータから、亜鉛はNO放出挿入器のシリコーンチューブの壁からは浸出していないことが示される。
【0149】
試験管内カテーテルハブ試験
【0150】
NO放出挿入器を実施例Aと同じ方法で調製し、H22滅菌法によって事前に滅菌した。実際の血液透析カテーテルハブにおけるこれらのNO放出挿入器の抗菌効果は、グラム陽性菌とグラム陰性菌、黄色ブドウ球菌と緑膿菌のそれぞれに対して試験した。
【0151】
この試験に利用したカテーテルは、28cmの長さのPERMCATH(商標)小児用シリコーン慢性二重管腔楕円形カテーテル(Covidien/Medtronic製)であった。カテーテルのハブ領域上を締め具で留め、10%LBブロスに0.3mLの一晩増殖させた細菌培養液(1×108CFU/mL)を加えた。NO放出挿入器をカテーテルハブの内側に挿入し、キャップで密封した。
【0152】
対照サンプルについては、NO放出挿入器は使わなかった。
【0153】
各カテーテルを、室温(24℃)で、暗所で、72時間、低速のシェーカー上でインキュベートした。72時間のインキュベーション後、20μLの細菌培養液を各ハブ領域から回収し、10倍希釈した。各希釈液の50μLをLB寒天プレートに広げ、コロニー形成単位(CFU)をカウントするために、37℃で一晩インキュベートした。対照挿入器と比較して、実施例の挿入器は黄色ブドウ球菌と緑膿菌に対してそれぞれ6.6及び6.7の対数減少値をもたらした。このデータは、実施例Aの組成(75%GSNO/25%ZnOナノ粒子)を含むNO放出挿入器により、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方を死滅させるのに非常に効果的であることが示唆される。
【0154】
生体内-ヒツジ試験
【0155】
一般的な手順
【0156】
これらの試験の各々には、ミシガン大学の動物の使用及び管理に関する委員会によって承認され、大学及び連邦の規制に準拠した、動物の取り扱い及び外科的処置(フェンタニル経皮パッチ100μg/hを用いた24時間の絶食及び術前鎮痛)が含まれる。
【0157】
体重45~50kgの成羊を利用した。一般的な麻酔状態下で、長さ28cm(カフから近位先端まで13cm)PERMCATH(商標)小児用シリコーン慢性二重管腔楕円形カテーテルを、セルディンガーワイヤー法を使用して、左右の頸静脈(鎖骨下静脈から約3cm~約5cm))の中に配置し、RA-SVC接合部に近位端を配置できるようにした。この際、血管を露出させたり手で触ったりしないように注意した。カテーテルを皮膚に固定し、滅菌包帯で覆った。カテーテル配置後、ヒツジは麻酔から回復し、納屋に収容した(非滅菌状態)。
【0158】
すべてのカテーテルをキャップし、管腔の遠位端を介して注入した2000Uのヘパリン化生理食塩水(2mL)を充填した。ヒツジの試験に使用されたNO放出挿入器は、実施例Aの組成(75%GSNO:25%の30nmサイズのZnOナノ粒子)を使用して作成した。DOWSIL(登録商標)接着剤を使用して、NO放出挿入器をオスのルアーロック注射部位キャップ(Qosina)に取り付け、24時間乾燥させた。各NO放出挿入器キャップは個別に包装され、本明細書に記載のH22滅菌を使用して滅菌した。滅菌後のNO放出挿入器キャップは室温(24℃)で保管し、使用するまで遮光した。
【0159】
剖検の前(各試験の14日目)に、ヘパリンの10,000Uボーラスを、橈側皮静脈血管カテーテルを介して投与し、続いて、FatalPlus IV注射を行なった。各カテーテルは、滅菌技術を使用して調達した。各カテーテルの外装面は、70%エタノール溶液で拭くことによって滅菌した。カテーテルの各セクションから1cmの長さのセクションを切り取った。各セクションを、ホモジナイザー(OMNI TH、OMNI International、ジョージア州ケネソー、GA)を使用して、15mLチューブ内の1×PBS(10mM、pH7.2)の2mL中で全速で懸濁し、内管腔壁に付着したすべての細菌/バイオフィルムを除去し、得られた溶液のうち指定量(たとえば、20μL)を10倍希釈した。指定量の各希釈液(例えば、5μL)をLB寒天プレートに広げ、CFUカウント用に37℃で一晩インキュベートした。
【0160】
さらに、カテーテルの各セクションから長さ>0.5cmのセクションを切り取り、内管腔表面を、暗所で15分間、BacLitght Lev/Ded染色キットで染色した。顕微鏡画像は、適切なフィルターセット(SYTO-9の場合は488/520nm、ヨウ化プロピジウムの場合は493/636nm)を備えた蛍光顕微鏡を使用して取得した。
【0161】
図20は、ヒツジ試験で使用したカテーテル、並びに調査した様々な領域の概略図である。それらの領域には、ハブ領域、トンネル領域、遠位血管内領域、及び近位先端が含まれていた。
【0162】
ヒツジ試験#1
【0163】
ヒツジ試験#1の間に2匹の成羊を調べた。1頭のヒツジ(比較例 ヒツジ1)を対照として用意し(n=4 カテーテルハブ合計;NO放出挿入器なし)、もう1頭のヒツジ(実施例 ヒツジ2)を実験用(n=4 カテーテルハブ合計;O放出挿入器キャップを使用)として用意した。術後0、2、4、7、9、11、及び14日目に、キャップを変更した。この手順では、各管腔から3.5mLの血液を採取し、管腔を2,000Uのヘパリン化生理食塩水(2mL)でロックし、NO放出挿入器キャップと対照キャップの両方をそれぞれ新しいキャップに交換した。術後14日目に、各カテーテル内管腔のハブ領域から50μLの液体を採取し、LB寒天プレートに広げた。コロニー形成単位(CFU)をカウントするために、プレートを37℃で一晩インキュベートした。結果を図21に示す。当図に示されているように、挿入器を用いた実施例のヒツジ2のカテーテルを、挿入器が用いらなかったヒツジ1の比較例のカテーテルと比較した場合、生細胞が>3 log単位以上の減少が示された。
【0164】
Live/Dead染料染色を使用して、ハブの内管腔壁、トンネルチューブ、及びカテーテルの遠位領域の蛍光顕微鏡画像を撮影した。元のカラー画像では、緑色の染色は生存するバクテリアを、赤は死滅後のバクテリアを表す。
【0165】
図22A及び22Bでは、それぞれ、比較例のヒツジ1のカテーテルにおける1つのハブ領域の、及び実施例のヒツジ2のカテーテルの1つのハブ領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ1のカテーテルのハブ領域には生存するバクテリアのバイオフィルムが認められたが、実施例のヒツジ2のカテーテルのハブ領域には最小限の単一細胞(死滅か生存)が認められた。
【0166】
図23A及び23Bでは、それぞれ、比較例のヒツジ1のカテーテルの1つのトンネル領域及び実施例のヒツジ2のカテーテルの1つのトンネルハブ領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ1のカテーテルのトンネル領域には生存する細菌の複数の単一細胞が認められたが、実施例のヒツジ2のカテーテルのトンネル領域には最小限の単一細胞(死滅か生存)が認められた。
【0167】
図24A及び24Bには、それぞれ、比較例のヒツジ1のカテーテルにおける1つの遠位先端及び実施例のヒツジ2のカテーテルにおける1つの遠位先端の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ1のカテーテルの遠位先端は、生存するバクテリアと死滅したバクテリアのバイオフィルムが認められた。図24B(実施例のヒツジ1のカテーテルの遠位先端)の着色バージョンでは、赤及び緑が複数認められた。ただし、これらの赤と緑の縞模様は、細菌ではなく表面のテクスチャからのものであると、より高い倍率の画像から判定した。実際、実施例のヒツジ2のカテーテルの遠位端には、最小限の単一細胞(死滅か生存)が認められた。
【0168】
ヒツジ試験#2
【0169】
ヒツジ試験#2の間に2匹の成羊を調べた。1頭のヒツジ(比較例のヒツジ3)を対照として用意し(n=4 カテーテルハブ合計;NO放出挿入器なし)、もう1頭のヒツジ(実施例ヒツジ4)を実験用(n=4 カテーテルハブ合計;NO放出挿入器キャップを使用)として用意した。術後0、2、4、7、9、11、及び14日目に、各カテーテル内管腔のハブ領域から50μLの液体をCFUカウント用に採取した。次に、各管腔から3.5mLの血液を採取し、管腔を2,000Uのヘパリン化生理食塩水(2mL)でロックし、NO放出挿入器キャップと対照キャップの両方をそれぞれ新しいキャップに交換した。対照及び実験用キャップを2~3日ごとに交換し、透析治療と血液曝露の間の平均時間をシミュレートするために、各管腔から採血した。14日後、試験を終了し、各血液透析カテーテルのカテーテル中の4つの別々の領域の内側壁に存在する細菌/バイオフィルムの量を評価した(図20)。
【0170】
CFUカウントのために、20μL(50μLのうち)をPBS緩衝液で10倍希釈した。各希釈液5μLをLB寒天プレートに移し、コロニー数を数えるためにプレートを一晩インキュベートした。ハブ領域内の液体から2~3日ごとに採取した細菌数の結果を図25にまとめた。7日目や11日目などの特定の日には、予期しない状況に陥り、各ハブ領域から適切な液体サンプルが取得できなかった。ただし、データとしては一貫性を保っており、比較例のヒツジ3(カテーテルにNO放出挿入器キャップを使っていない)は4日後に有意な細菌数を示し、実施例のヒツジ4(カテーテルにNO放出挿入器キャップを使用)はどの日にも細菌を示さなかったため、毎日の試験後には、検出限界(220CFU/mL、図25の破線で確認)に達した。実施例のヒツジ4と比較例のヒツジ3の対比では、対数減少値3.88が、4日目までにすでに観察され、14日目までに5.42に増加した。このデータから、NO放出挿入器キャップが、実世界の条件下におけるハブ領域の液体中に存在するバクテリアに対して有意な抗菌効果を持っていることが示唆される。
【0171】
14日間の研究の完了時に、各カテーテルの4つの領域(図20に示される)において、内管腔壁に付着した細菌/バイオフィルムに対する試験を行った。この試験の実施は、最初にカテーテルの外側を滅菌し、特定のセクションを切り取り、ホモジナイザーを使用して、細菌数のカウント(前述したように)のために内管腔壁から、付着した細菌/バイオフィルムをすべて除去することによって行った。この試験の結果を図26に要約した。比較例のヒツジ3のカテーテルについて、カテーテルの4つの領域すべてに、かなりの量の細菌/バイオフィルムが存在していた。実施例のヒツジ4(実験用のNO放出挿入器キャップ付き)のカテーテルでは、4つの領域のいずれにも細菌は検出されなかった。興味深いことに、細菌/バイオフィルムの形成が、ハブ領域(NOが局所的に放出される場所)だけでなく、カテーテルのすべての領域で阻害されることが観察された。このデータから、細菌がハブ領域からカテーテルの近位領域に移動する可能性があり、NO放出挿入器キャップが実世界の条件下でカテーテルのすべての領域にわたって有意な抗菌/抗バイオフィルム性を持っていることが定量的に示唆される。
【0172】
Live/Dead染料染色を使用して、カテーテルの各領域の内管腔壁の蛍光顕微鏡画像を撮影した。元のカラー画像では、緑の染色は生存するバクテリアを、赤は死滅したバクテリアを表している。
【0173】
図27A及び27Bには、それぞれ、比較例のヒツジ3のカテーテルにおける1つのハブ領域及び実施例のヒツジ4のカテーテルにおける1つのハブ領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ3のカテーテルのハブ領域には生存するバクテリアのバイオフィルムに認められ、実施例のヒツジ4のカテーテルのハブ領域には最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0174】
図28A及び28Bには、それぞれ、比較例のヒツジ3からのカテーテルの1つのトンネル領域、及び実施例のヒツジ4からのカテーテルの1つのトンネル領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ3からのカテーテルのトンネル領域には生存するバクテリアのバイオフィルムが認められ、実施例のヒツジ4からのカテーテルのトンネル領域には最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0175】
図29A及び29Bには、それぞれ、比較例のヒツジ3からのカテーテルの1つの遠位血管内領域及び実施例のヒツジ4からのカテーテルの1つの遠位血管内領域、の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ3からのカテーテルの遠位血管内領域には生存するバクテリアと死滅したバクテリアのバイオフィルムが認められた。実施例のヒツジ4からのカテーテルの遠位血管内領域には、最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0176】
図30A及び30Bには、それぞれ、比較例のヒツジ3からのカテーテルの1つの遠位先端及び実施例のヒツジ4からのカテーテルの1つの遠位先端、の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。比較例のヒツジ3からのカテーテルの遠位先端には生存するバクテリアと死滅したバクテリアのバイオフィルムが認められた。実施例のヒツジ4からのカテーテルの遠位先端には、最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0177】
このデータからは、NO放出挿入器キャップが、実際の条件下で各カテーテル領域における細菌/バイオフィルムの形成を防止することが定性的に示唆される。
【0178】
ヒツジ試験#3
【0179】
ヒツジ試験#3の間に2匹の成羊を調べた。この試験では、抗菌剤としてクロルヘキシジンを使用した市販の抗菌キャップを比較に使用した。
【0180】
ヒツジ5については、右頸静脈に埋め込んだカテーテルに市販のクロルヘキシジンキャップを用意し、左頸静脈に埋め込んだカテーテルにNO放出挿入器キャップを用意した。ヒツジ6については、指定が逆で、右頸静脈にNO放出挿入器キャップを用意し、左頸静脈に埋め込んだカテーテルにクロルヘキシジンキャップを用意した。合計で、クロルヘキシジンキャップの場合はn=4のカテーテルハブがあり、NO放出挿入器キャップの場合もn=4のカテーテルハブがあった。術後0、2、3、6、8、10、12、及び14日目に、各カテーテルチューブ腔のハブ領域から50μLの液体をCFUカウント用に採取した。次に、3.5mLの血液を各管腔から採取し、2,000Uのヘパリン化生理食塩水(2mL)でロックし、NO放出挿入器キャップとクロルヘキシジンキャップの両方をそれぞれ新しいキャップに交換した。
【0181】
14日後、試験を終了し、各血液透析カテーテルについて、カテーテルの4つの別個の領域の内壁に存在する細菌/バイオフィルムの量を評価した(図20)。この試験では、最初にカテーテルの外側を滅菌し、特定のセクションを切り取り、ホモジナイザーを使用して、細菌数のカウントのために内管腔壁から、付着した細菌/バイオフィルムをすべて除去して実施した。この試験の結果は図31にまとめた。実験用カテーテルでは、ハブとトンネル領域で最小限の細菌が検出され、遠位血管内領域と近位先端で細菌は検出されなかった。クロルヘキシジンカテーテルでは、4つの領域すべてで細菌/バイオフィルムが検出された。カテーテルのトンネル領域では、実験用カテーテル対クロルヘキシジンカテーテルで、細菌の対数減少値として最大3.82が認められた。全体として、このデータからは、NO放出挿入器キャップが、市販のクロルヘキシジンキャップと比較して、血液透析カテーテルの4つの領域すべてにおいて、細菌/バイオフィルムの形成を際立って防止することが示唆される。
【0182】
Live/Dead染料染色を使用して、カテーテルの各領域の内管腔壁の蛍光顕微鏡画像を撮影した。元のカラー画像では、緑の染色は生存するバクテリアを、赤は死滅したバクテリアが示される。
【0183】
図32A及び32Bでは、それぞれ、クロルヘキシジンカテーテルの1つのハブ領域及び実験用カテーテルの1つのハブ領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。ハブ領域では両方とも最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0184】
図33A及び33Bでは、それぞれ、クロルヘキシジンカテーテルの1つのトンネル領域及び実験カテーテルの1つのトンネル領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。クロルヘキシジンカテーテルのトンネル領域には生存する細菌のバイオフィルムが認められ、実施例の実験用カテーテルのトンネル領域には最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0185】
図34A及び34Bでは、それぞれ、クロルヘキシジンカテーテルの1つの遠位血管内領域及び実験用カテーテルの1つの遠位血管内領域の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。クロルヘキシジンカテーテルの遠位血管内領域には、生菌と死菌のバイオフィルムが形成されていた。実施例の実験用カテーテルの遠位血管内領域には、最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0186】
図35A及び35Bには、それぞれ、クロルヘキシジンカテーテルの1つの遠位先端及び実験用カテーテルの1つの遠位先端の蛍光顕微鏡画像(黒及び白で)が描写されている。クロルヘキシジンカテーテルと実施例の実験用カテーテルの遠位端には、それぞれ最小限の単一細胞(死滅か生存か)が認められた。
【0187】
クロルヘキシジンカテーテルでは、トンネル領域の内管腔壁に付着した有意な細菌/バイオフィルムが認められ、これは、トンネル領域から得られた細菌/バイオフィルム数の増加に対応する。実験用カテーテル(NO放出挿入器キャップ)では、4つの領域すべての内管腔壁に付着した細菌は最小限又は全く存在しないが示される。このデータから、NO法出挿入器キャップが、市販のクロルヘキシジンキャップと比較して、各カテーテル領域でより多くの細菌/バイオフィルム形成を防止することが示唆される。
【0188】
本明細書で提供される範囲とは、あたかも記載の範囲内の値又はサブ範囲が明示的に記載されたかのように、記載の範囲及び記載の範囲内の任意の値又はサブ範囲を含むことを理解されたい。例えば、約1nm~約900nmの範囲は、約1nm~約900nmの明示的に示された上下限を含むだけでなく、約3.7nm、約45nm、約100nm、約520.5nm、650nm、799nmなどの個々の値も含むと解釈されるべきであり、及び約395nm~約595nmなどのサブ範囲も含まれる。さらに、「約」をある値を表すために使用する場合、この値は記載されている値からのわずかな変動(最大+/-10%)含むことを意味する。
【0189】
本明細書全体を通して、「一例」、「別の例」、「例」などに関して言及すると、これらは、該当する例に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が本明細書に記載される少なくとも1つの例に含まれ、そして他の例には存在する場合も存在しない場合もあることを意味する。さらに、任意の例で説明された要素については、文脈上、他に明らかに指示されていない限り、様々な例において、これを任意の好適な方法により組み合わせることができることを理解されたい。
【0190】
本明細書に開示の例を説明及びクレームする際に、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、他のことが明らかに示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0191】
いくつかの例を詳細に説明してきたが、開示の例は修正され得ることを理解するべきである。したがって、前述の説明は非限定的であると見なされるべきである。
なお、本発明の実施態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
固相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む粉末組成物と;
ハウジングであって、
i)一酸化窒素を透過し、ii)非多孔性で、iii)水蒸気を透過する高分子壁と;、
前記高分子壁によって少なくとも部分的に規定される内管腔と、を含む前記ハウジングと、を含むカテーテル挿入器であって、
前記粉末組成物は、前記ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封されている、
カテーテル挿入器。
[態様2]
前記粉末組成物がさらに吸水材料を含む、態様1に記載のカテーテル挿入器。
[態様3]
前記吸水材料が、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリペプチド、ポリイオン種、単糖、多糖、シリカ粒子及び塩からなる群から選択される、態様2に記載のカテーテル挿入器。
[態様4]
前記固相RSNOと前記吸水材料との重量比が1:1~10:1の範囲である、態様2に記載のカテーテル挿入器。
[態様5]
水蒸気への曝露後に前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速する固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤も又、ハウジングの内管腔の中で完全に密封されている、態様4に記載のカテーテル挿入器。
[態様6]
前記固相添加剤は前記粉末組成物の成分であり、及び
前記粉末組成物は、約40重量%~約85.5重量%の前記固相RSNO、約5重量%~約20重量%の前記固相添加剤、及び約8重量%~約47.5重量%の前記吸水材料を含む、態様4に記載のカテーテル挿入器。
[態様7]
前記粉末組成物は、水蒸気への曝露後の前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤をさらに含み;及び
前記固相添加剤は、酸化亜鉛ナノ粒子、銅(II/I)-配位子錯体、銅ナノ粒子、アスコルビン酸、チオール、水素イオン前駆体、セレン種、有機セレン分子、有機テルリウム分子、ステンレス鋼ナノ粒子、金ナノ粒子、有機促進剤種が固定化された形態でコーティングされたシリカ又は高分子粒子、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、
態様1に記載のカテーテル挿入器。
[態様8]
前記粉末組成物が、約15重量%~約95重量%の前記固相RSNOと、約5重量%~約85重量%の前記固相添加剤からなる、態様7に記載のカテーテル挿入器。
[態様9]
前記ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封された固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤が金属ワイヤーである、態様1に記載のカテーテル挿入器。
[態様10]
前記高分子壁が、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)(PVC)、シロキサン系ポリウレタンエラストマー、及び熱可塑性シリコーン-ポリカーボネート-ポリウレタンからなる群から選択される、態様1に記載のカテーテル挿入器。
[態様11]
前記高分子壁がチューブであり、前記ハウジングが、前記チューブに対向する端部に取り付けられたそれぞれのシーリング部材をさらに含む、態様1に記載のカテーテル挿入器。
[態様12]
カテーテル挿入器を含むキットであって、
前記カテーテル挿入器は、
固相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む粉末組成物と;
挿入ハウジングであって、i)一酸化窒素を透過し、ii)非多孔性で、iii)水蒸気を透過する、高分子壁と、
前記高分子壁によって少なくとも部分的に規定される内管腔と、を含み、前記粉末組成物は、前記挿入ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封されている、前記挿入ハウジングと;
カテーテルであって、
一酸化窒素を透過し、少なくとも1つの管腔を有するカテーテルチューブと;
前記カテーテルチューブの近位端に取り付けられ、前記カテーテルチューブの前記少なくとも1つの管腔に操作可能に接続される開口部を有するアダプターと、を含む前記カテーテルと;
前記カテーテル挿入器を前記少なくとも1つの管腔内又は前記アダプター内の位置に固定する機構、
を含む、キット。
[態様13]
前記粉末組成物がさらに吸水材料を含む、態様12に記載のキット。
[態様14]
前記吸水材料が、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリペプチド、ポリイオン種、単糖、多糖、シリカ粒子及び塩からなる群から選択される、態様13に記載のキット。
[態様15]
前記固相RSNOと前記吸水材料との重量比が1:1~10:1の範囲である、態様13に記載のキット。
[態様16]
前記挿入器が、水蒸気への曝露後に前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤も又、前記ハウジング内の前記内管腔の中で完全に密封されている、態様15に記載のキット。
[態様17]
前記固相添加剤は前記粉末組成物の成分であり、及び
前記粉末組成物は、約40重量%~約85.5重量%の前記固相RSNO、約5重量%~約20重量%の前記固相添加剤、及び約8重量%~約47.5重量%の前記吸水材料を含む、態様16に記載のキット。
[態様18]
前記粉末組成物が、水蒸気への曝露後の前記固相RSNOからの一酸化窒素の放出速度を加速するための固相添加剤をさらに含み、及び
前記固相添加剤が、酸化亜鉛ナノ粒子、銅(II/I)錯体、銅ナノ粒子、アスコルビン酸、チオール、水素イオン前駆体、セレン種、有機セレン分子、有機-テルリウム種、ステンレス鋼ナノ粒子、金ナノ粒子、有機促進剤種が固定化された形態でコーティングされた、又はそれを有するシリカ又は高分子粒子、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、態様12に記載のキット。
[態様19]
前記粉末組成物が、約15重量%~約95重量%の前記固相RSNOと、約5重量%~約85重量%の前記固相添加剤とからなる、態様18に記載のキット。
[態様20]
前記ハウジングの前記内管腔の中で完全に密封された固相添加剤をさらに含み、前記固相添加剤が金属ワイヤーである、態様12に記載のキット。
[態様21]
前記高分子壁が、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)(PVC)、シロキサンベースのポリウレタンエラストマー、及び熱可塑性シリコーン-ポリプロピレン-ポリウレタンからなる群から選択される、態様12に記載のキット。
[態様22]
前記カテーテルが、緊急カテーテル又は慢性的カテーテルである、態様12に記載のキット。
[態様23]
前記緊急カテーテルは、血管内カテーテルと尿道カテーテルからなる群から選択され;又は
前記慢性的カテーテルは、トンネル型透析カテーテル、非経口栄養カテーテル、及び薬物注入カテーテルからなる群から選択される、態様22に記載のキット。
[態様24]
前記高分子壁が挿入チューブであり、前記ハウジングが、前記挿入チューブに対向する端部に取り付けられたそれぞれのシール機構をさらに備える、態様12に記載のキット。
[態様25]
前記カテーテル挿入器の外径が約0.5mm~約3mmの範囲である、態様12に記載のキット。
[態様26]
カテーテル挿入器を、カテーテルの管腔内又は前記カテーテルに操作可能に接続されたアダプター内の位置に固定し、それにより、前記カテーテル挿入器を、前記管腔内又は前記アダプター内のロック溶液と接触するように配置することを含む方法であって、
前記カテーテル挿入器は、
i)一酸化窒素を透過し、ii)非多孔性であり、iii)水蒸気を透過する高分子壁を含む挿入ハウジング;及び
前記挿入ハウジング内で完全に密封された粉末組成物で固相S-ニトロソチオール(RSNO)を含む、
方法。
[態様27]
前記カテーテル挿入器を、約1時間~約3日の期間、前記カテーテルの前記管腔内又は前記アダプター内に留まらせることをさらに含む、態様26に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31
図32A
図32B
図33A
図33B
図34A
図34B
図35A
図35B