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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20241008BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20241008BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H05K7/20 U
H05K7/20 G
H05K7/20 H
H05K7/14 S
G06F1/20 B
G06F1/20 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023025009
(22)【出願日】2023-02-21
(65)【公開番号】P2024118624
(43)【公開日】2024-09-02
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】立薗 宏樹
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-299861(JP,A)
【文献】特開平7-231186(JP,A)
【文献】特開2016-152406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 7/14
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状の電子部品を該電子部品の厚さ方向に互いに間隔をおいて筐体に収容した電子機器であって、
前記筐体内に設けられ、前記電子部品の上縁が挿入される溝を有する上部案内部材と、
該上部案内部材に対向して前記筐体内に設けられ、前記電子部品の下縁が挿入される溝を有する下部案内部材と、
前記電子部品の第1の面および第2の面との間にそれぞれ所定の間隔をおいて配置されて前記第1の面および第2の面に沿って前記筐体内の空気を案内する第1の固定ダクト板および第2の固定ダクト板と、
これら第1の固定ダクト板および第2の固定ダクト板の端部に設けられ、これらの固定ダクト板の面に沿う方向へ突出する方向へ付勢された、第1の可動ダクト板および第2の可動ダクト板と、
を有する電子機器。
【請求項2】
前記電子部品の第1の面と前記第1の固定ダクト板との間の隙間へ空気を流通させるファンを備える、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の可動ダクト板および第2の可動ダクト板は、前記電子部品とともに前記筐体へ挿入する方向へ移動するこれら第1の可動ダクト板および第2の可動ダクト板を前記突出する方向と反対方向へ移動させる傾斜部を備える、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の固定ダクト板と第1の可動ダクト板との間に設けられて、これらを互いに離間する方向へ付勢する弾性部材を備える、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記第1の固定ダクト板と第1の可動ダクト板との間に設けられてこれらの相対移動方向へ弾性変形するコイルばねである、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記第1の固定ダクト板と第1の可動ダクト板との間に設けられてこれらの相対移動方向へ弾性変形する板ばねである、
請求項4に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバー等の電子機器にあっては、回路パターン上に半導体チップ等の電子部品を搭載した様々な機能の回路基板(機能モジュール)を前記サーバーの機能や用途に応じて前記サーバーの筐体内のスロットに挿入し、これら複数の機能モジュールによって必要な性能のサーバーを構成して使用することが行われる。
また前記サーバーは、前記筐体内に向けたファンにより、前記スロットに挿入された機能モジュールの周囲へ空気を流通させることにより、前記電子部品等から発生した熱を適切に筐体の外へ排出して、前記電子部品等を適正な動作温度に管理している。
【0003】
本発明に関連する特許文献1には、筐体の背面から吸い込んだ空気をダクトによって案内して、モジュールとモジュールとの間の隙間に供給することにより、複数のモジュールを均一に冷却する技術が開示されている。
また本発明に関連する特許文献2には、一般のモジュールに加えて、冷却ファンを備えた冷却用モジュールを設けることにより、該冷却用モジュールに隣接する一般のモジュールを冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-131173号公報
【文献】特開2020-052870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された電子機器にあっては、筐体内の全ての(図示例では6基の)スロットを埋めるようにモジュールが挿入されていることによって各モジュールの間に均等に冷却空気が分配される構成であることから、各モジュールと、これらを抜き差し可能に支持するためにレール状のガイドブロックとの間に設けた隙間を埋めて空気の漏洩を防止している。具体的には、モジュールの端部に設けたシールキャップの両面にガイドブロックの溝の内面の第1、第2のリップを弾性変形させながら基板の側面に密着させるシール構造が採用されている。
【0006】
また特許文献2に記載された電子機器にあっては、当該電子機器に要求される仕様を満たす一般のモジュールに加えて、別途冷却ファンを備えたモジュールを準備し、一部のスロットに一般のモジュールに代えて装着しなければならないという課題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、電子機器のスロットに挿入されるモジュールに冷却空気を効率良く供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明にかかる電子機器は、複数の板状の電子部品を該電子部品の厚さ方向に互いに間隔をおいて筐体に収容した電子機器であって、前記筐体内に設けられ、前記電子部品の上縁が挿入される溝を有する上部案内部材と、該上部案内部材に対向して前記筐体内に設けられ、前記電子部品の下縁が挿入される溝を有する下部案内部材と、前記電子部品の第1の面および第2の面との間にそれぞれ所定の間隔をおいて配置されて前記第1の面および第2の面に沿って前記筐体内の空気を案内する第1の固定ダクト板および第2の固定ダクト板と、これら第1の固定ダクト板および第2の固定ダクト板の端部に設けられ、これらの固定ダクト板の面に沿う方向へ突出する方向へ付勢された、第1の可動ダクト板および第2の可動ダクト板とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体内の電子部品へ空気を案内して冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の最小構成例の斜視図である。
図2】一実施形態の比較例を示し(A)は筐体内部の斜視図、(B)は電子部品の支持部の拡大図である。
図3】前記比較例における筐体内部の気流の説明図である。
図4】前記比較例における筐体内の要部の縦断面図である。
図5】本発明の一実施形態の筐体内の電子部品周辺部分の縦断面図である。
図6図5の要部の詳細図である。
図7】一実施形態の可動ダクト板の付勢部材の斜視図である。
図8図7に示す可動ダクト板の変形例の斜視図である。
図9】一実施形態の電子部品の電子部品の挿入前状態の側面図である。
図10】一実施形態の可動ダクト板の動作説明図で、(A)は挿入途中、(B)は挿入後の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電子機器の冷却装置の最小構成例を図1を参照して説明する。
すなわち図1に示す電子機器は、複数の板状の電子部品1を該電子部品の厚さ方向に互いに間隔をおいて筐体2に収容した電子機器であって、前記筐体2内に設けられ、前記電子部品の上縁が挿入される溝3を有する上部案内部材4と、該上部案内部材4に対向して前記筐体2内に設けられ、前記電子部品1の下縁が挿入される溝3を有する下部案内部材5と、前記電子部品1の第1の面6および第2の面7との間にそれぞれ所定の間隔をおいて配置されて前記第1の面6および第2の面7に沿って前記筐体2内の空気を案内する第1の固定ダクト板8および第2の固定ダクト板9と、これら第1の固定ダクト板8および第2の固定ダクト板9の端部に設けられ、これらの固定ダクト板8、9の面に沿う方向へ突出する方向へ付勢された、第1の可動ダクト板8aおよび第2の可動ダクト板9aとを有する。
【0012】
上記構成によれば、筐体2に吸い込まれた空気が前記第1の面6と第1の固定ダクト板8との間、および、前記第2の面7と第2の固定ダクト板9との間を通って前記電子部品1に最も近い経路を通過することができる。また前記第1の可動ダクト板8aと第2の可動ダクト板9aとが付勢されているので、前記第1の固定ダクト板8と第2固定ダクト板9との上縁、下縁等の隙間から漏れる空気の漏れを防止して、前記第1の面6と第1の固定ダクト板8との間、および、前記第2の面7と第2の固定ダクト板9との間の経路に空気を確実に案内することができる。
【0013】
図2図4を参照して、本発明の一実施形態の特徴を備えていない比較例の構成を説明する。
図2に示すように、筐体11内に、所定の機能を備えたカード型モジュール等の電子部品(機能カード)12をスライド移動に格納するプラグイン構造の装置では、サブラック11’(前記筐体11内に設けられ、内部の空間を仕切る板状部材と、前記機能カード12等を支持する機構等を含む構造をいう)に設けられたガイドレール13に沿って必要な電子部品12を着脱可能に挿入した構成を有する構成を有する。また前記筐体11は、図3に示すように、前記筐体11内に空気を吸入し、サーバールーム等の室内に排出するファン14を用いて冷却する構造である場合が多い。このファン14は、消費電力や騒音の観点からも低回転数(低流量)で運用することが望ましく、必要な流量を機能カード1の冷却デバイスに効率よく流すことが要求される。
【0014】
そのため、サブラック11’側の前記ファン14と前記機能カード12との間の流路を効率よく実現することが課題である。しかしながら、前記機能カード12は、抜き差し可能な構成であることから、前記サブラック11’等との間にクリアランスが必要であり、また、機能カード12に実装された基板部品との干渉(例えば、抜き差しに伴う機能カード12の移動軌跡と重なって配置されることによる接触)等を考慮し、前記機能カード12は、サブラック内の前記ガイドレール13の周囲のスロット区画に対して小さくする必要がある。そのため、図3に矢印Aで示すように、外気を取り込んで前記機能カード(詳細には、機能カードの発熱部品および発熱部品に取り付けられた放熱フィン)12へ冷却空気として案内しようとすると、一の機能カード12とサブラック11’との間や隣接する他の機能カード12’との間には、冷却部品が未実装の冷却空気の流通が不要な領域が存在し、前記ファン14により発生した冷却空気の流量の一部が機能カード12、12’の表面に沿う矢印Bで示すような流れのみならず、機能カード12、12’表面から離れた不要な空間に流れてしまう、エアフローのショートカット(図4に矢印Cで示す)が発生する。したがって、取り込まれた冷却空気の一部が冷却に寄与することなく排出されてしまい、有効利用することができない。
【0015】
上記比較例における不具合を考慮した一実施形態について、図5図10を参照して説明する。なお、図中図1図4と共通の構成については同一符号を付し、説明を簡略化する。
一実施形態にかかる機能カード12Aは、図5図6とに示すように、回路基板(およびこれに実装された半導体チップ等の電子部品)20の一方の面と他方の面とにそれぞれ取り付けた固定ダクト板21A、21Bと、これらの固定ダクト板21A、21Bとの間にそれぞれ弾性部材22A、22Bを介して連結された可動ダクト板23A、23Bとで構成される。前記可動ダクト板23A、23Bは、前記弾性部材22A、22Bが弾性変形しながら伸縮することによって上下方向に移動することができる。すなわち前記可動ダクト板23A、23Bは、電子部品12Aを図5の紙面と交差する方向へ抜き差しする際に周囲に必要とされるクリアランスに対応する寸法だけ、図5の上下方向へ移動可能に移動可能に支持されている。
【0016】
前記弾性部材22A(22B)と前記可動ダクト板23A(23B)との構成について、図6、7を参照してより詳細に説明する。
前記弾性部材22A(22B)は、前記固定ダクト板21A(21B)の面方向(図5図6の上下方向)に伸縮することにより、前記可動ダクト板23A(23B)をそれぞれの固定ダクト板21A(21B)から突起させて平面部に接触することにより、その弾性力により可動ダクト板23A(23B)上方へ付勢しながら下がることができる。前記弾性部材22A(22B)は、図示例のようなコイルばねの場合は、前記固定ダクト板21A(21B)に同図の上下方向へ軸24を設け、該軸24を中心として上下に弾性変形させることによって安定した伸縮が期待することができる。
すなわち、前記可動ダクト板23A(23B)から側方へ突出させて設けた操作板25によって前記弾性部材22A(22B)を押し下げながら弾性へ変形させることにより、前記可動ダクト板23A(23B)が上下動することができる。
【0017】
また、可動ダクト板23A(23B)の一端(挿入方向前方側の端部)は、図9、10に示すように、傾斜部26を有する。該傾斜部26は、前記サブラック11’の一部と接触することにより、電子部品12Aの挿入に伴う水平方向への力を下方への力に変換し、前記弾性部材22A(22B)を弾性変形させながら前記可動ダクト板23A(23B)を押し下げる。
【0018】
上記のように構成された機能カード12をサブラック11’に取り付け、取り外す操作における、前記可動ダクト板23A(23B)の動きについて、図9図10を参照して説明する。
前記可動ダクト板23A(23B)は、図9あるいは図10の初期位置では、機能カード12が挿入されるスロット領域(上下のガイドレール13の間およびその両側の領域)を超える上方位置まで突出した状態となる。
この状態の機能カード12Aを前記サブラック11’に挿入すると、図10(A)に示すようにサブラック11’の一部に傾斜部26が接触する。前記可動ダクト板23A(23B)の傾斜部26は、前記機能カード12Aを挿入するに伴う矢印Hで示す水平方向の挿入力を、前記弾性部材22A(22B)を縮めて前記可動ダクト板23A(23B)を矢印V方向へ移動させる駆動力に変換する(詳細には、矢印V’方向への力の垂直分力が発生する)。
前記可動ダクト板23A(23B)の下方への移動後は、図10(B)に示すように、前記弾性部材22A(22B)は常に縮んだ状態のため、前記可動ダクト板23A(23B)が前記サブラック11’に押し付けられる方向にダクト可動力(矢印V)が働き、前記機能カード12の周囲に生じるクリアランスとなる部位を塞ぎ、不要なエアフローが筐体の内部でショートカットする流路の発生を抑制することができる。
【0019】
前記機能カード12を取り外す場合は、前記機能カード12を矢印Hと反対方向へ引き出せば良く、この操作により、前記機能カード12がガイドレール13に沿って移動して行き、図10(B)の状態から同(A)の状態へ移動するに際し、図9に示すように、前記傾斜部26がサブラック11’に接触しながら矢印Hと反対方向へ移動し、この移動に伴い、前記弾性部材22A(22B)が延びながら前記可動ダクト板23A(23B)を押し上げ、図10(A)の位置へ戻る。
【0020】
上記一実施形態で採用されたコイルばね状の弾性部材22A(22B)に代えて、図8に示すような板ばね状の弾性部材27A(27B)を採用しても良い。
すなわち、図8に示すように、固定ダクト板21A(21B)の側方に突出するように支持板28を設け、この支持板28と前記可動ダクト板23A、23Bの操作板25との間で側面視Z字状をなす弾性部材27A(27B)を弾性変形させることによって、コイルばねの場合と同様に可動ダクト板23A(23B)を上下動させることができる。
また前記弾性部材を構成するばねとして、上記コイルばね、板ばねに代えてねじりばねを採用しても良い。
【0021】
上記の操作によって機能カード12を着脱することができることから、一実施形態の装置は下記の効果を奏する。
・固定ダクト板21A(21B)と可動ダクト板23A(23B)とにより構成されたダクト構造によって筐体11内の冷却に寄与しない不要な空気の流路を塞ぐことにより、エアフローのショートカットを抑制し、前記ファン14による気流を前記筐体11内の機能カード12の冷却に有効利用することができる。
・エアフローのショートカットを低減することにより、装置の冷却に必要な冷却空気の内、冷却に寄与しない流れを削減して流量を最適化し、ファン回転数の低減、およびこれに伴う騒音の低減と消費電力の低減とを図ることができる。
・エアフローのショートカットを低減することにより、ファンを搭載した放熱用の機能カードが必要な箇所へも冷却空気の流量を増加させて、機能カードの放熱性能を向上することができる。
【0022】
前記弾性部材を構成するばねの方式、数、固定ダクト板、可動ダクト板への取り付け構造は図示の実施形態に限定されるものではなく、機能カードの構造に応じて変更しても良い。
例えば、固定ダクト板と可動ダクト板とのいずれか一方に案内溝を設け、いずれか他方に設けた突起を案内溝内でスライドできる構成とすることにより、可動ダクト板の上下動をより円滑にすることも有効である。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、電子機器の冷却装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1電子部品
2 筐体
3 溝
4 上部案内部材
5 下部案内部材
6 第1の面
7 第2の面
8 第1の固定ダクト板
8a 第1の可動ダクト板
9 第2の固定ダクト板
9a 第2の可動ダクト板
11 筐体
11’ サブラック
12、12A 電子部品(機能カード)
13 ガイドレール
14 ファン
20 回路基板
21A、21B 固定ダクト板
22A、22B 弾性部材
23A、23B 可動ダクト板
24 軸
25 操作板
26 傾斜部
27A、27B 弾性部材
28 支持板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10