IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ノズル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図1
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図2
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図3
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図4
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図5
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図6
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図7
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図8
  • 特許-不織布製造装置、及び不織布製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】不織布製造装置、及び不織布製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/08 20060101AFI20241008BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20241008BHJP
   D01D 1/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D01D5/08 C
D04H3/16
D01D1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023197453
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501078915
【氏名又は名称】日本ノズル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】關戸 大介
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/203932(WO,A1)
【文献】特開昭57-192436(JP,A)
【文献】特開2010-189792(JP,A)
【文献】特開昭63-199611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-5/42
D04H 3/00-3/16
B29B 11/10
B29C 48/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出するノズル列を有するダイと、
前記熱可塑性樹脂を溶融状態で前記ダイに供給する樹脂供給手段と、
前記ノズル列から吐出された前記熱可塑性樹脂に熱風を供給して繊維状に延伸する熱風供給手段と、
前記繊維状の熱可塑性樹脂をコンベアベルト上に集積させることにより不織布を生成するコレクタと、を備え、
前記樹脂供給手段は、前記熱可塑性樹脂を収容するシリンダと、該シリンダに外嵌される加熱手段と、該加熱手段により加熱されて溶融状態となった前記シリンダ内の前記熱可塑性樹脂を前記ダイに向けて押し出すピストンとを有し、
前記シリンダの内径が30mm以下である不織布製造装置。
【請求項2】
前記シリンダが、前記ダイに直接接続されている請求項1記載の不織布製造装置。
【請求項3】
前記樹脂供給手段は、前記ピストンを一定速度で駆動する電動アクチュエータを有している請求項1記載の不織布製造装置。
【請求項4】
前記ダイと前記コレクタとの間には、前記不織布生成用の空間部が形成されるとともに、該空間部を外部から遮蔽する遮蔽板が設けられている請求項1記載の不織布製造装置。
【請求項5】
前記シリンダの内径よりも小さな内径を有する予備成形金型と、
該成形金型内に収容されたペレット状の熱可塑性樹脂を軟化温度以上に加熱する加熱部と、
軟化状態となった前記熱可塑性樹脂を加圧して棒状に予備成形する加圧部と、を有する予備成形手段を更に備えている請求項1記載の不織布製造装置。
【請求項6】
一定量の熱可塑性樹脂を、内径30mm以下のシリンダ内に投入し、
該シリンダに外嵌された加熱手段により前記シリンダ内の前記熱可塑性樹脂を溶融状態とし、
該シリンダ内の前記熱可塑性樹脂をピストンにより溶融状態でダイに向けて一定量押出し、
該一定量の前記熱可塑性樹脂を前記ダイのノズル列から吐出させ、
該ノズル列から吐出される前記一定量の熱可塑性樹脂に熱風を供給して繊維状に延伸するとともに、該繊維状の熱可塑性樹脂を集積して不織布を生成する不織布製造方法。
【請求項7】
前記シリンダの内径よりも小さな内径を有する予備成形金型内にペレット状の前記熱可塑性樹脂を収容し、該熱可塑性樹脂を軟化温度以上に加熱するとともに、軟化状態となった前記熱可塑性樹脂を加圧して棒状に予備成形した後、該棒状の予備成形体を前記シリンダ内に投入する請求項記載の不織布製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイから溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出、延伸、集積して不織布を生成するメルトブロー方式の不織布製造装置、及び同不織布製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂を溶融状態として押し出す押出機と、異物を除去するフィルタと、定量の熱可塑性樹脂をダイに向けて連続的に送り出すギアポンプとを有する樹脂供給段により熱可塑性樹脂を溶融状態としてダイに供給し、ダイのノズルヘッドから押し出される熱可塑性樹脂に熱風を供給して繊維状に延伸することにより不織布を生成するメルトブロー不織布製造設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記熱可塑性樹脂の押出機には、従来、ヒータにより加熱されたシリンダ内に樹脂製の材料等を供給し、スクリューの回転により材料を混錬しつつ、溶融させてノズルに向けて移送するスクリュー式押出機が用いられている。
【0003】
上記スクリュー方式押出機は、一般的に樹脂材料を連続供給して大量生産を行う装置として設計され、シリンダ内に投入された樹脂材料をヒータにより加熱して溶融させながらスクリューの回転により順次、ダイに送り込むように構成されている。
【0004】
これに対し、例えば再生医療分野において不織布用の素材に生体吸収性樹脂を用いることが行われているが、この生体吸収性樹脂は、開発途中にあるものが多く、極めて高価で、且つ使用する量は限られている場合が多い。また、再生医療分野で使用される不織布は、生体組織との適正な関係性を追求するために、不織布の繊維径や空隙率等を適正にコントロールして均一化することが求められている。他の分野も含め、近年、このように高品質なものを多品種少量に生産することが求められる傾向にある。
【0005】
多品種少量生産をする際、上記したスクリュー方式押出機を用いると、種類を切り替える際に、押出機内に前に使用した樹脂材料が残っており、これを処分したり、スクリューを清掃する等の必要があり、樹脂材料の無駄や切り替えの作業時間が長くなるという問題があった。また、スクリュー方式押出機は内部に新たな樹脂材料が充満されるまで出てこないことから、本来の繊維化に必要な量以上の樹脂材料が必要となる。このように従来の装置で多品種少量生産するには、材料の無駄やコスト高になるという問題があった。
【0006】
また、上述のスクリュー方式の押出機では、条件によっては混錬不良が発生する虞があり、ダイに樹脂材料を適切に送り込むことができずに異音が発生したり、樹脂材料の供給不良が生じたりする心配もあった。さらに、使用する樹脂材料の物性を考慮してスクリューを特殊な形状に設計する必要もあり、装置の構造が複雑化することが避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-162915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、不織布の多品種少量生産に最適であり、樹脂材料の切り替えが容易で、材料の無駄を抑制することができ、コスト低減を図ることができ、さらには、製造時における異音の発生や材料の供給不良を容易に防止することができ、不織布の目付量や繊維径、空隙率等を容易に適正に均一化できる不織布製造装置、及び不織布の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶融状態の熱可塑性樹脂を吐出するノズル列を有するダイと、前記熱可塑性樹脂を溶融状態で前記ダイに供給する樹脂供給手段と、前記ノズル列から吐出された前記熱可塑性樹脂に熱風を供給して繊維状に延伸する熱風供給手段と、前記繊維状の熱可塑性樹脂をコンベアベルト上に集積させることにより不織布を生成するコレクタと、を備え、前記樹脂供給手段は、前記熱可塑性樹脂を収容するシリンダと、該シリンダ内の前記熱可塑性樹脂を前記ダイに向けて押し出すピストンとを有する不織布製造装置を提供する。
【0010】
ここで、前記樹脂供給手段が、前記シリンダ内に収容された前記熱可塑性樹脂を溶融状態にする加熱手段を備えていることが好ましい。
【0011】
ここで、前記シリンダが、前記ダイに直接接続されていることが好ましい。
【0012】
ここで、前記樹脂供給手段は、前記ピストンを一定速度で駆動する電動アクチュエータを有していることが好ましい。
【0013】
ここで、前記シリンダの内径が30mm以下であることが好ましい。
【0014】
ここで、前記ダイと前記コレクタとの間には、前記不織布生成用の空間部が形成されるとともに、該空間部を外部から遮蔽する遮蔽板が設けられていることが好ましい。
【0015】
ここで、前記シリンダの内径よりも小さな内径を有する予備成形金型と、該成形金型内に収容されたペレット状の熱可塑性樹脂を軟化温度以上に加熱する加熱部と、軟化状態となった前記熱可塑性樹脂を加圧して棒状に予備成形する加圧部と、を有する予備成形手段を更に備えていることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る不織製造方法は、一定量の熱可塑性樹脂をシリンダ内に投入し、ピストンにより前記シリンダ内の前記熱可塑性樹脂を溶融状態でダイに向けて一定量押出し、該一定量の前記熱可塑性樹脂を前記ダイのノズル列から吐出させ、該ノズル列から吐出される前記一定量の熱可塑性樹脂に熱風を供給して繊維状に延伸するとともに、該繊維状の熱可塑性樹脂を集積して不織布を生成するものである。
【0017】
ここで、前記シリンダの内径よりも小さな内径を有する予備成形金型内にペレット状の前記熱可塑性樹脂を収容し、該熱可塑性樹脂を軟化温度以上に加熱するとともに、軟化状態となった前記熱可塑性樹脂を加圧して棒状に予備成形した後、該棒状の予備成形体を前記シリンダ内に投入することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不織布の多品種少量生産において、樹脂材料の切り替えが容易で、材料の無駄を抑制することができ、コスト低減を図ることができる。また、スクリュー方式の押出機を用いた場合のように、条件によって材料の混錬不良が発生したり、樹脂材料の送り込時に異音が発生したり、樹脂材料の供給不良が生じたりする虞がないとともに、装置の構造を簡略化することが可能である。
【0019】
また、樹脂供給手段が、前記シリンダ内に収容された前記熱可塑性樹脂を溶融状態にする加熱手段を備えた不織布製造装置によれば、別体の加熱部において加熱されて溶融状態となった熱可塑性樹脂をシリンダ内に投入する場合のように、シリンダの内壁面に熱可塑性樹脂が付着することがなく、熱可塑性樹脂の連続投入が可能である。
【0020】
更に、前記シリンダが、前記ダイに直接接続されたものでは、樹脂替え時等にシリンダをダイから容易に取り外してその清掃作業を容易に行うことができるとともに、接続管を介してシリンダをダイに接続した場合のように、樹脂替え時等に接続管内に熱可塑性樹脂が残存することがないので、材料の無駄を抑制することができる。
【0021】
また、前記樹脂供給手段が、前記ピストンを一定速度で駆動する電動アクチュエータを有するものでは、ピストンの駆動速度が変動してダイから吐出される熱可塑性樹脂の吐出流量が不安定になるのを容易かつ確実に防止して、熱可塑性樹脂の吐出流量を正確に制御して不織布の目付量を、より適正に均一化することができる。
【0022】
更に、シリンダの内径を30mm以下とした場合には、シリンダ内に収容された熱可塑性樹脂を容易かつ適正に加熱することが、不溶融状態の熱可塑性樹脂が中心部に残存した状態となるのを防止することができる。
【0023】
また、前記ダイと前記コレクタとの間に形成された不織布生成用の空間部を外部から遮蔽する遮蔽板が設けたものでは、ダイから吐出された溶融状態の熱可塑性樹脂が、コンベアベルト上に集積されるまでの間に、外部からの熱影響を受けて冷やされることにより不織布の側辺部における融着力が不足したり、あるいは外部から流入する空気流の影響を受けて不織布の側辺部における目付量が不足したりすることを効果的に防止することができる。
【0024】
さらに、シリンダの内径よりも小さな内径を有する予備成形金型内にペレット状の熱可塑性樹脂を収容し、該熱可塑性樹脂を軟化温度以上に加熱するとともに、軟化状態となった前記熱可塑性樹脂を加圧して棒状に予備成形した後、該棒状の予備成形体を前記シリンダ内に投入するように構成した不織製造装置及び及び不織製造方法によれば、熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱されたシリンダの内壁面に熱可塑性樹脂が付着して、以後の投入作業が阻害されるという問題を生じることなく、シリンダ内に適正量の熱可塑性樹脂をスムーズに収容させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る不織布製造装置の全体構成を示す説明図。
図2】同不織布製造装置の要部を示す断面図。
図3】同不織布製造装置の要部を示す側面図。
図4】同不織布製造装置の要部を示す斜視図。
図5】熱可塑性樹脂の予備成形手段を示す断面図。
図6】同予備成形手段の変形例を示す分解斜視図。
図7】同予備成形手段の変形例を示す一部断面図。
図8】本発明に係る不織布製造装置の別の実施形態を示す断面図。
図9】樹脂供給手段に設けられる分配板の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
図1図4に示すように、本発明の実施形態に係る不織布製造装置1は、溶融状態の熱可塑性樹脂を糸状に押し出すノズルヘッド20を有するダイ2と、熱可塑性樹脂Cを溶融状態としてダイ2に供給する樹脂供給手段3と、ノズルヘッド20に設けられたノズル列21から糸状に吐出される熱可塑性樹脂(糸状樹脂)Dに熱風を供給して細い繊維状に延伸する熱風供給手段4と、該繊維状の熱可塑性樹脂を集積して不織布50を生成するコレクタ5と、生成された不織布50を巻き取る巻取り手段6と、を備えている。
【0028】
ダイ2は、樹脂供給手段3により供給された熱可塑性樹脂Cをノズルヘッド20のノズ

ル列21に向かって均一に分配するT-ダイである。ダイ2の断面に直角な方向(図2の紙面と直交する方向)に複数のノズル孔が並んで配列されることによりノズル列21が形成されている。該ノズル列21を間に挟んでその前後(コレクタ5の搬送方向前後)に隣接する位置には、ノズル列21に沿って平行に延びるスリット状の熱風吹出口22、22が開口している。
【0029】
ダイ2には、熱風供給手段4から供給された熱風を熱風吹出口22に導出する熱風導出流路23が設けられている。なお、本実施形態では、ノズル列21を一列とした例が図示されているが、複数列であっても勿論よい。また、熱風吹出口22もスリット状のもの以外に互いに間隔をあけた複数の孔の列を前記ノズル列21と平行に設けたものでもよい。また、ダイ2には、樹脂供給手段3から供給された溶融状態の熱可塑性樹脂Cをノズル列21に供給する樹脂供給通路24と、ノズル列21に供給される熱可塑性樹脂Cの圧力を検出する圧力計25と、ノズル列21に供給される熱可塑性樹脂Cの温度を検出する温度計26と、が設けられている。
【0030】
ノズルヘッド20のノズル列21から糸状に吐出された熱可塑性樹脂からなる糸状樹脂D(図1及び図3参照)は、熱風吹出口22から吹き出る高速の熱風によって延伸されることにより細い繊維状となったうえで、コレクタ5のコンベアベルト53上に集積されてシート状の不織布50を形成する。
【0031】
樹脂供給手段3は、図2等に示すように、一定量の熱可塑性樹脂Cを収容するシリンダ31と、該シリンダ31に外嵌される後述のバンドヒータ又は図略のコイル状ヒータ等からなる加熱手段と、この加熱手段により加熱されて溶融状態となったシリンダ31内の熱可塑性樹脂Cを押し出すピストン32と、該ピストン32の上部に連設されたピストンロッド33を一定速度で昇降駆動する電動アクチュエータ30と、を有している。
【0032】
シリンダ31は、30mm以下の内径を有するシリンダ本体34と、その下端部に設けられた樹脂供給部35と、を有している。この樹脂供給部35には、ダイ2の樹脂供給通路24に連通する樹脂導出通路36が形成されている。また、樹脂供給部35の下部外周面には、ダイ2の上部に形成された雌ねじ部に螺着される雄ねじ部が形成されている。そして、樹脂供給部35の雄ねじ部がダイ2の雌ねじ部に螺着されることにより、シリンダ31の樹脂導出通路36と、ダイ2の樹脂供給通路24と、が直接接続されてなる溶融樹脂の流路が形成されている。なお、図2において、符号27は、樹脂供給通路24と樹脂導出通路36との接続部をシールするパッキンである。
【0033】
電動アクチュエータ30は、ピストンロッド33の上端部を保持した状態で、図略の支持フレームに沿って一定速度で昇降変位することにより、シリンダ31内の熱可塑性樹脂Cをダイ2に向けて押し出すようにピストン32を駆動するものであり、その駆動機構は公知の機構を広く採用できる。
【0034】
図1に示すように、熱風供給手段4は、空気を圧縮して吐出するコンプレッサ41と、該コンプレッサ41から吐出された圧縮空気を加熱する加熱器42と、この加熱器42により加熱された圧縮空気からなる熱風をダイ2の熱風導出流路23(図3参照)に供給する熱風供給管43と、を有している。
【0035】
コレクタ5は、コンベアローラ51、52により搬送駆動されるメッシュ状のコンベアベルト53と、吸引ブロア54の吸引力によりコンベアベルト53の上面側の空気を裏面側から吸引するサクションボックス55と、を有している。そして、ダイ2のノズル列21から吐出された糸状樹脂Dが、熱風吹出口22から吹き出される熱風により細い繊維状に延伸された状態で、コレクタ5のコンベアベルト53上に集積されて不織布50が形成されるようになっている。この不織布50は、図略のカレンダーロールを経た後、巻取り手段6によりロール状に巻き取られる。
【0036】
ダイ2の下面とコレクタ5の上面との間には、図3に示すように、不織布生成用の空間部80が形成されている。また、ダイ2の左右両側面には、図3及び図4に示すように、不織布生成用の空間部80を外部から遮蔽することにより、外部からの熱影響や、空気の流入を抑制する遮蔽板8、8が取り付けられている。
【0037】
図5は、有底円筒状の予備成形金型71と、該予備成形金型71内に収容されたペレット状の熱可塑性樹脂Aを軟化温度以上で、好ましくは溶融温度以下に加熱する後述のバンドヒータ又は図略のコイル状ヒータ等からなる加熱部と、予備成形金型71内において軟化状態となった熱可塑性樹脂Aを加圧する加圧ピストンを備えた加圧部72と、を有する予備成形手段7を示している。予備成形金型71の内径は、樹脂供給手段3のシリンダ31の内径よりも小さい値、例えば25mm程度、好ましくは14mm程度に形成されている。
【0038】
そして、予備成形金型71内に投入された一定量の熱可塑性樹脂Aを、加熱部により加熱して軟化させるとともに、この軟化状態となった一定量の熱可塑性樹脂Aを加圧部72により加圧して一体化させるように構成されている。このようにして予備成形金型71内に投入された一定量の熱可塑性樹脂Aが一体されることにより、予備成形金型71内において棒状の予備成形体Bが形成される。この棒状の予備成形体Bは、予備成形金型71から取り出された後、樹脂供給手段3のシリンダ31内に投入される。
【0039】
なお、予備成形金型71内に収容されたペレット状の熱可塑性樹脂Aが溶融温度よりも高い温度に加熱されると、予備成形体Bの表面が溶融状態となって予備成形金型71の内面、及びシリンダ31の内面に張り付き易くなり、予備成形体Bの取出し作業、及び投入作業が困難になる。このため、予備成形手段7の加熱部による加熱温度は、熱可塑性樹脂の軟化温度以上、溶融温度以下とすることが好ましい。
【0040】
以下、不織布製造装置1を用いた製造方法について説明する。
【0041】
まず、予備成形手段7により一定量の熱可塑性樹脂Aからなる棒状の予備成形体Bを形成した後、これを樹脂供給手段3のシリンダ31内に投入して、溶融温度以上に加熱することにより熱可塑性樹脂Cを溶融状態とする。この溶融状態の熱可塑性樹脂Cをピストン32によりダイ2に向けて一定量押出し、該一定量の熱可塑性樹脂をダイ2のノズル列21から糸状に吐出させる。そして、該ノズル列21から吐出される糸状樹脂Dに、熱風供給手段4から供給された熱風を吹き付けることにより細い繊維状に延伸するとともに、該繊維状の熱可塑性樹脂をコレクタ5のコンベアベルト53上に集積させて不織布50を生成する。
【0042】
以上の不織布製造装置1によれば、使用される樹脂材料を変更する樹脂替えを行う際に、スクリュー式押出機のように前の樹脂が残存していることはなく、材料の無駄を抑制することができ、シリンダ等の清掃もスクリュー式押出機に比べて格段に容易であり、樹脂替え作業を迅速且つ容易に行うことができる。また、スクリュー式押出機のように出てくるまでに内部に樹脂を充満させる必要がなく、その分の無駄も省略でき、効率的である。構造もスクリュー式押出機に比べて簡易であり、コストが低減する。さらに、スクリュー式押出機のように異音が発生したり、材料の供給不良が生じたりする心配が無く、不織布50の目付量や、繊維径、及び空隙率等を容易かつ適正に均一化することが容易である。
【0043】
本実施形態では、シリンダ31の下端部に設けられた樹脂供給部35の雌ねじ部をダイ2に形成された雌ねじ部に螺合する等により、シリンダ31をダイ2に直接接続するように構成したため、樹脂替え時等にシリンダ31をダイ2から容易に取り外してその清掃作業を容易に行うことができる。しかも、図外の接続管を介してシリンダ31をダイ2に接続した場合のように、樹脂替え時等に接続管内に熱可塑性樹脂が残存することもないため、材料の無駄を最小限に抑制することができる。
【0044】
また、樹脂供給手段3のピストン32を一定速度で駆動する電動アクチュエータ30を省略し、例えば手動操作でピストン32を駆動することも可能であるが、熱可塑性樹脂Cの吐出流量を正確に制御して不織布50の目付量を、より均一化するためには、上述のようにピストン32を一定速度で駆動する電動アクチュエータ30を設けた構成とすることが好ましい。また、シリンダ31の内径が大きすぎる場合、シリンダ31内に投入された熱可塑性樹脂Cの全てを適正温度に加熱できずに、不溶融状態の熱可塑性樹脂が中心部に残存した状態となる虞がある。したがって、シリンダ31内に投入された熱可塑性樹脂Aを適正温度に加熱して、その全てを適正状態でダイ2に供給するためには、シリンダ31の内径を上述のように30mm以下、好ましくは16mm程度に設定することが好ましい。
【0045】
ダイ2の下面とコレクタ5の上面との間に形成された不織布生成用の空間部80の左右両側方部が開放されている場合、条件によっては、ダイ2から吐出された溶融状態の熱可塑性樹脂が、コンベアベルト53上に集積されるまでの間に、外部からの熱影響を受けて冷やされることにより不織布50の側辺部における融着力が不足したり、あるいは外部から流入する空気流の影響を受けて不織布50の側辺部における目付量が不足したりする虞もある。そこで、図3及び図4に示すように、ダイ2の下面とコレクタ5の上面との間に形成された不織布生成用の空間部80を外部から遮蔽する遮蔽板8、8を設けて、外部からの熱影響や空気流の侵入を抑制することにより、耳部の生成を抑制することが望ましい。
【0046】
また、シリンダ31の内径よりも小さな内径を有する予備成形金型71と、該予備成形金型71内に収容された熱可塑性樹脂を加熱して軟化させる加熱部と、軟化状態となった熱可塑性樹脂を加圧する加圧ピストンを備えた加圧部72と、を有する予備成形手段7により棒状の予備成形体Bを形成して、これを樹脂供給手段3のシリンダ31内に投入するように構成することが好ましい。これにより、シリンダ31の内壁面への熱可塑性樹脂の付着を防止できるとともに一定量の熱可塑性樹脂Cをスムーズにシリンダ31内に収容できるという利点がある。
【実施例
【0047】
上述の予備成形手段7により所定量のポリプロピレン樹脂からなる棒状の予備成形体Bを成形した後、これを樹脂供給手段3によりダイ2に供給してノズル列21から吐出させ、これに熱風を供給して繊維状に延伸するとともに、該繊維状の熱可塑性樹脂をコレクタ集積して150mmの幅寸法と0.46mmの厚みとを有する不織布50を生成した実施例を以下に説明する。
【0048】
原材料のポリプロピレン樹脂としては、サンアロマー社製の商品名「PWH00N」を使用した。また、予備成形手段7として、14mmの内径を有する予備成形金型71を使用し、これに5gのポリプロピレン樹脂を投入して200°Cの温度で10分間加熱することにより、棒状の予備成形体Bを成形した。
【0049】
樹脂供給手段3のシリンダ31として、16mmの内径と、150mmのシリンダ長を有するものを使用し、ピストン32による押出速度は1mm/秒とした。熱風供給手段4により供給される熱風の温度は230°Cとし、熱風の風量は340L/秒とした。ダイ2の温度は、230°Cとし、ダイ2と、コレクタ5のコンベアベルト上面と、の離間距離からなる溶融樹脂の吐出距離は、250mmとした。コレクタ5のサンクション負圧は、0.4Mpaとし、コレクタ速度は、1m/分とした。
【0050】
以上の条件で不織布50を製造したところ、51.3g/mの目付量と、10.6μmの平均線径と、約1m程度の長さと、を有する不織布50が形成された。また、棒状の予備成形体Bを樹脂供給手段3によりダイ2に連続して供給することにより、上述の不織布50を連読して形成できることが確認された。
【0051】
図6及び図7は、複数個の予備成形体Bを同時に成形することが可能な予備成形手段9を示している。この予備成形手段9は、5個の樹脂投入孔90が形成された金型本体91と、その下端部に取り付けられるエア抜きブロック92と、このエア抜きブロック92に形成されたエア抜き孔93に図略のエア抜きパイプを介して接続される吸引ブロア(図示せず)と、金型本体91に外嵌されてこれを加熱するバンドヒータ94からなる加熱部と、樹脂投入孔90の上部に挿入されて熱可塑性樹脂Aを加圧する圧縮ピストン95と、樹脂投入孔90の下部に挿入されるエア抜きプレート96と、金型本体91とエア抜きブロック92との連結部をシールするパッキン97と、を有している。
【0052】
バンドヒータ94は、例えば耐熱マイカにて絶縁されたニクロムリボン線を発熱体とし、その外周を耐熱金属板にて被覆保護したものであり、その構造は周知であるため、詳細な説明は省略する。圧縮ピストン95に外周面には、樹脂投入孔90の内周面に当接して樹脂投入孔90の上部をシールするシールリング98が設けられている。また、エア抜きプレート96には、熱可塑性樹脂Aの落下を防止しつつ、樹脂投入孔90とエア抜きブロック92のエア抜き孔93とを連通させる不複数の透孔99(図6参照)が形成されている。
【0053】
上述の構成において、金型本体91の各樹脂投入孔90内に所定量のペレット状の熱可塑性樹脂Aを投入して収容させるとともに、その上部に圧縮ピストン95を挿入した状態で、バンドヒータ94に通電して熱可塑性樹脂Aを、その軟化温度以上で溶融温度以下の温度に加熱するとともに、吸引ブロアを作動させて樹脂投入孔90内の空気を外部に排出する。この結果、各樹脂投入孔90の内部が負圧になって圧縮ピストン95が下方に吸引され、各樹脂投入孔90内において軟化状態となった熱可塑性樹脂Aが圧縮ピストン95により加圧され、複数の棒状の予備成形体Bが同時に形成される。これらの予備成形体Bが樹脂供給手段3のシリンダ31に順次、投入されることにより、一定量の熱可塑性樹脂が連続してダイ2に供給される。
【0054】
図8及び図9は、本発明の不織布製造装置の別の実施形態を示している。当実施形態では、シリンダ31内に投入された熱可塑性樹脂Aの温度を測定する熱電対等からなる温度測定手段37がシリンダ31の上部に着脱可能に設けられている。また、シリンダ31の下方部には、複数の透孔38が外周部に形成された分配板39が設けられている。
【0055】
そして、熱可塑性樹脂Aの中央部が適正温度に加熱されて溶融状態となったことが温度測定手段37において確認された時点で、温度測定手段37をシリンダ31から取り外した後、ピストン32をシリンダ31内に挿入して熱可塑性樹脂Cをダイ2に押し出すことにより、適正に溶融した熱可塑性樹脂Cを供給することができる。また、上述の分配板39をシリンダ31の下方部に設けることにより、シリンダ31内の中央部に位置するに溶融状態の熱可塑性樹脂Cがダイ2に供給されることを防止できる等の利点がある。
【符号の説明】
【0056】
1 不織布製造装置
2 ダイ
3 樹脂供給手段
4 熱風供給手段
5 コレクタ
6 巻取り手段
7,9 予備成形手段
8 遮蔽板
20 ノズルヘッド
21 ノズル列
22 熱風吹出口
23 熱風導出流路
24 樹脂供給通路
25 圧力計
26 温度計
27 パッキン
30 電動アクチュエータ
31 シリンダ
32 ピストン
33 ピストンロッド
34 シリンダ本体
35 樹脂供給部
36 樹脂導出通路
37 温度測定手段
38 透孔
39 分配板
41 コンプレッサ
42 加熱器
43 熱風供給管
50 不織布
51、52 コンベアローラ
53 コンベアベルト
54 吸引ブロア
55 サクションボックス
71 予備成形金型
72 加圧部
80 空間部
90 樹脂投入孔
91 金型本体
92 エア抜きブロック
93 エア抜き孔
94 バンドヒータ(加熱部)
95 圧縮ピストン
96 エア抜きプレート
97 パッキン
98 シールリング
99 透孔
【要約】
【課題】不織布の多品種少量生産に最適であり、樹脂材料の切り替えが容易で、材料の無駄を抑制することができ、コスト低減を図ることができ、製造時における異音の発生や材料の供給不良を防止でき、不織布の目付量や繊維径、空隙率等を容易かつ適正に均一化することができる不織布製造装置、及び不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】溶融状態の熱可塑性樹脂Cを吐出するノズル列21を有するダイ2と、熱可塑性樹脂Cを溶融状態でダイ2に供給する樹脂供給手段3と、前記ノズル列21から吐出された熱可塑性樹脂に熱風を供給して繊維状に延伸する熱風供給手段4と、繊維状の熱可塑性樹脂をコンベアベルト53上に集積させることにより不織布を生成するコレクタ5と、を備え、樹脂供給手段3は、熱可塑性樹脂Cを収容するシリンダ31と、該シリンダ31内の熱可塑性樹脂Cを前記ダイ2に向けて押し出すピストン32とを有している不織布製造装置。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9