(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】造形欠陥の検出方法、3次元積層造形システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20241008BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20241008BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241008BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241008BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/153
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2023501965
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007420
(87)【国際公開番号】W WO2022180802
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2023年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「積層造形部品開発の効率化のための基盤技術開発事業」
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】青柳 健大
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晶彦
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514067(JP,A)
【文献】特開2017-146296(JP,A)
【文献】特開2017-145150(JP,A)
【文献】特開2019-101207(JP,A)
【文献】特開2009-238294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B29C 64/153
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B33Y 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理装置であって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得部と、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定部と、
を備え
、
前記欠陥判定部は、前記小領域内に未溶融の領域が含まれる場合、前記小領域内の造形表面のデータを用いて前記未溶融の領域の造形表面のデータを置き換えて、前記未溶融の領域が含まれる前記小領域に欠陥があるか否かを判定する情報処理装置。
【請求項2】
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理装置であって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得部と、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定部と、
前記欠陥判定部で欠陥があると判定された領域を再溶融するように指示する欠陥補修指示部と、
再溶融する回数が回数閾値を超えた場合に、積層造形の中止を指示する中止指示部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項3】
前記欠陥補修指示部は、再溶融する場合の溶融エネルギーを造形表面の状態に応じて制御する溶融エネルギー制御部を有する請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記欠陥判定部によって欠陥があると判定された場合に、前記欠陥に応じて次に造形する層の粉末の層厚と溶融エネルギーとの少なくともいずれかを制御するよう指示する造形制御指示部をさらに備えた請求項1から
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記所定寸法の小領域は、メルトプールの幅の5倍から10倍の寸法を有する領域である請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記溶融後の造形表面を撮像した表面画像データに基づいて、前記造形表面の粗さを取得する請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
パウダーベッド方式の3次元積層造形システムであって、
請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置による制御にしたがって、積層造形物を造形する積層造形装置と、
を備えた3次元積層造形システム。
【請求項8】
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理方法であって、
取得部が、溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
欠陥判定部が、前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
を含
み、
前記欠陥判定ステップは、前記小領域内に未溶融の領域が含まれる場合、前記小領域内の造形表面のデータを用いて前記未溶融の領域の造形表面のデータを置き換えて、前記未溶融の領域が含まれる前記小領域に欠陥があるか否かを判定する情報処理方法。
【請求項9】
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理方法であって、
取得部が、溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
欠陥判定部が、前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
欠陥補修指示部が、前記欠陥判定ステップで欠陥があると判定された領域を再溶融するように指示する欠陥補修指示ステップと、
中止指示部が、再溶融する回数が回数閾値を超えた場合に、積層造形の中止を指示する中止指示ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項10】
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理プログラムであって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
を
コンピュータに実行させ、
前記欠陥判定ステップは、前記小領域内に未溶融の領域が含まれる場合、前記小領域内の造形表面のデータを用いて前記未溶融の領域の造形表面のデータを置き換えて、前記未溶融の領域が含まれる前記小領域に欠陥があるか否かを判定する情報処理プログラム。
【請求項11】
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理プログラムであって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
前記欠陥判定ステップで欠陥があると判定された領域を再溶融するように指示する欠陥補修指示ステップと、
再溶融する回数が回数閾値を超えた場合に、積層造形の中止を指示する中止指示ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形欠陥の検出方法、3次元積層造形システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、積層造形部の表面全体の溶融前後を撮像して、造形異常を判定する技術する技術が開示されている。また、特許文献2には、寸法の小さな造形資料の撮像による欠陥判定に基づいてプロセスウインドウを生成する技術が開示されている。さらに、非特許文献1~4には、メルトプールの状態や造形表面全体の観察画像から欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-142101号公報
【文献】国際公開WO2020/039581号
【非特許文献】
【0004】
【文献】L. Scime, J. Beuth, “Using machine learning to identify in-situ melt pool signatures indicative of flaw formation in a laser powder bed fusion additive manufacturing process",Additive Manufacturing, 25 (2019), 151-165.
【文献】L. Scime, J. Beuth, “Anomaly detection and classification in a laser powder bed additive manufacturing process using a trained computer vision algorithm",Additive Manufacturing, 19 (2018), 114-126.
【文献】C.R. Pobel, C. Arnold, F. Osmanlic, Z. Fu, C. Korner, “Immediate development of processing windows for selective electron beam melting using layerwise monitoring via backscattered electron detection",Materials Letters,249 (2019) 70-72.
【文献】M. Adnan, Y. Lu, A. Jones, F.T. Cheng, H. Yeung, “A New Architectural Approach to Monitoring and Controlling AM Processes", Applied Science, 10 (2020) 6616.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、メルトプールの状態や造形表面全体の観察画像から欠陥を検出するため、積層造形中に欠陥位置を確定して効率的に補修することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理装置は、
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理装置であって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得部と、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定部と、
を備え、
前記欠陥判定部は、前記小領域内に未溶融の領域が含まれる場合、前記小領域内の造形表面のデータを用いて前記未溶融の領域の造形表面のデータを置き換えて、前記未溶融の領域が含まれる前記小領域に欠陥があるか否かを判定する情報処理装置である。
上記目的を達成するため、本発明に係る他の情報処理装置は、
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理装置であって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得部と、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定部と、
前記欠陥判定部で欠陥があると判定された領域を再溶融するように指示する欠陥補修指示部と、
再溶融する回数が回数閾値を超えた場合に、積層造形の中止を指示する中止指示部と、
を備えた情報処理装置である。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理方法は、
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理方法であって、
取得部が、溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
欠陥判定部が、前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
を含み、
前記欠陥判定ステップは、前記小領域内に未溶融の領域が含まれる場合、前記小領域内の造形表面のデータを用いて前記未溶融の領域の造形表面のデータを置き換えて、前記未溶融の領域が含まれる前記小領域に欠陥があるか否かを判定する情報処理方法である。
上記目的を達成するため、本発明に係る他の情報処理方法は、
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理方法であって、
取得部が、溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
欠陥判定部が、前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
欠陥補修指示部が、前記欠陥判定ステップで欠陥があると判定された領域を再溶融するように指示する欠陥補修指示ステップと、
中止指示部が、再溶融する回数が回数閾値を超えた場合に、積層造形の中止を指示する中止指示ステップと、
を含む情報処理方法である。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理プログラムは、
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理プログラムであって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記欠陥判定ステップは、前記小領域内に未溶融の領域が含まれる場合、前記小領域内の造形表面のデータを用いて前記未溶融の領域の造形表面のデータを置き換えて、前記未溶融の領域が含まれる前記小領域に欠陥があるか否かを判定する情報処理プログラムである。
上記目的を達成するため、本発明に係る他の情報処理プログラムは、
パウダーベッド方式の積層造形を制御するための情報処理プログラムであって、
溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する取得ステップと、
前記造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、前記小領域ごとに前記粗さデータを所定の閾値と比較して、前記小領域に欠陥があるか否かを判定する欠陥判定ステップと、
前記欠陥判定ステップで欠陥があると判定された領域を再溶融するように指示する欠陥補修指示ステップと、
再溶融する回数が回数閾値を超えた場合に、積層造形の中止を指示する中止指示ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層造形中に欠陥位置を確定できるため効率的に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2A】第2実施形態に係る情報処理装置による欠陥検出の処理手順を示す図である。
【
図2B】第2実施形態に係る情報処理装置による欠陥検出の処理手順を示す図である。
【
図2C】第2実施形態に係る情報処理装置による欠陥検出および欠陥補修の処理手順を示す図である。
【
図2D】第2実施形態に係る情報処理装置による欠陥検出を説明する図である。
【
図3】第2実施形態に係る欠陥検出の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4A】第2実施形態に係る情報処理装置を含む3次元積層造形システムの構成を示すブロック図である。
【
図4B】第2実施形態に係る積層造形部の構成を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6A】第2実施形態に係る欠陥判定部の機能構成を示すブロック図である。
【
図6B】第2実施形態に係る欠陥判定部で使用するデータの構成を示す図である。
【
図6C】第2実施形態に係る欠陥判定部で欠陥を検出するために用いるテーブルの構成を示す図である。
【
図7A】第2実施形態に係る欠陥補修部の機能構成を示すブロック図である。
【
図7B】第2実施形態に係る欠陥補修部で欠陥を補修するために用いるテーブルの構成を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態に係る欠陥補修部の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第4実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】第4実施形態に係る欠陥補修部の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】第4実施形態に係る欠陥補修部の他の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての情報処理装置100について、
図1を用いて説明する。情報処理装置100は、パウダーベッド方式の積層造形を制御するための装置である。
【0015】
図1に示すように、情報処理装置100は、取得部101と、欠陥判定部102と、を含む。取得部101は、溶融後の造形表面の粗さを示す粗さデータを取得する。欠陥判定部102は、造形表面を所定寸法の小領域に領域分割し、小領域ごとに粗さデータ121を所定の閾値122と比較して(123)、小領域に欠陥があるか否かを判定する。
【0016】
本実施形態によれば、造形表面を所定寸法の小領域に領域分割して小領域ごとに欠陥があるか否かを判定するので、積層造形中に欠陥位置を確定できるため効率的に補修することができる。
【0017】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る情報処理装置を含む3次元積層造形システムについて説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、各層の溶融後の表面画像を撮像して、表面画像から溶融後の造形欠陥を検出する。造形欠陥の検出は、表面画像から溶融領域を抽出した後、溶融領域を所定寸法に分割して小領域を生成し、小領域ごとの粗さデータに基づいて造形欠陥を判定する。この場合に、溶融領域の境界部分の小領域においては、非溶融領域の粗さデータを溶融領域の粗さデータに置き換えて(補完して)、造形欠陥を判定する。なお、造形欠陥の判定は、各積層の表面の粗さのみでなく、各積層の表面直下に埋もれた欠陥も検出可能である。
【0018】
欠陥が検出された小領域は、所定の照射エネルギー(出力および/または走査速度、ビーム径)による再溶融によって補修される。なお、再溶融の回数が所定回数の上限閾値を超えると、造形を中止する。
【0019】
<欠陥検出の処理手順>
以下、
図2A~
図3を参照して、本実施形態に係る情報処理装置による欠陥検出の処理手順を説明する。
【0020】
図2Aは、本実施形態に係る欠陥検出における溶融領域(造形層断面)の領域分割を示す図である。たとえば、1層の溶融後に、撮像された造形表面画像から造形層断面210を切り出す。造形層断面210の切り出しは、造形表面画像におけるコントラストの違いから造形層断面210の境界を見つければ容易に切り出すことができる。たとえば、溶融領域は非溶融領域よりも平坦であり、非溶融領域の粉末粒によるコントラストも現れない。
【0021】
次に、造形層断面210を含む領域を欠陥判別単位の小領域221(たとえば5mm×5mm)に分割する(220)。小領域221は、領域全体が造形層断面210の溶融領域である非境界領域222と、一部領域が造形層断面210の溶融領域である境界領域223と、を含む。
【0022】
なお、欠陥判別単位の小領域のサイズは、表面直下に埋もれた欠陥を判別するのに必要な広さを有する。たとえば、本実施形態においては、小領域として、メルトプールの幅の5倍から10倍の寸法を有する領域である5mm×5mmの矩形領域を用いた。なお、この小領域のサイズが小さすぎると、埋もれた欠陥の影響を受けた特徴量が得られず、表面に露出した欠陥が強調されることになる。
【0023】
図2Bは、本実施形態に係る欠陥検出における境界領域223の取り扱いを示す図である。境界領域223は、溶融領域と非溶融領域とを含んでいる。この場合、非溶融領域の粉末粒は粗さがあるとして溶融欠陥と誤判定される可能性が高い。したがって、非溶融領域の粗さデータを溶融領域の粗さデータによって置き換える。そして、補完領域225の粗さデータによって欠陥を判定する。
【0024】
図2Cは、本実施形態に係る欠陥検出および欠陥補修の処理手順を示す図である。
図2Bに示した境界小領域の補完によって、造形層断面210を含む領域の欠陥判定データ230が得られる。そして、各小領域について、欠陥があるか否かが判定される(240)。1つでも欠陥のある小領域があれば、その小領域について再溶融を含む欠陥補修の処理がされる。欠陥のある小領域がなければ、次の層の積層造形に移行する。なお、一般的に、溶融領域の粗さデータは凹凸の平均値などであるため、置き換えによってデータ補完された境界領域223は欠陥なしと判定されることが多いが、造形された溶融領域の欠陥判定にはほとんど影響を与えることはない。
【0025】
図2Dは、本実施形態に係る欠陥検出を説明する図である。
図2Dの入熱過多(High energy)261においては、粉末層が深くまで溶融して表面に凹凸ができ、その凹部分に次の粉末が入り込み、その結果、造形物内に未溶融粉末が残り微細な形状ができず表面に凹凸ができる。また、レーザ溶融法では気泡が残存するキーホール型の欠陥になる。
図2Dの入熱不足(Low energy)263においては、粉末層の表面に溶融しない粉末が残り、その上に次の粉末が積層され、その結果、溶融が不完全となって表面に凹凸ができる。そして、入熱過多(High energy)の試料形状と、入熱不足(Low energy)の試料形状との間に、入熱最適(Optimum energy)262があり、微細な形状ができ表面が平になるとして、本実施形態においては好適な評価結果が得られるように欠陥修復(再溶融)が繰り返される。
【0026】
(欠陥検出の処理手順)
図3は、本実施形態に係る欠陥検出の処理手順を示すフローチャートである。ステップS301において、各層の溶融後の造形表面を撮像した表面画像を取得する。ステップS303において、表面画像から溶融された溶融領域を抽出する。ステップS305において、溶融領域を所定寸法の小領域に分割する。そして、ステップS307において、小領域の表面画像の粗さから、小領域ごとに欠陥があるか否かを判定する。
【0027】
<3次元積層造形システム>
図4Aおよび
図4Bを参照して、本実施形態に係る情報処理装置を含む3次元積層造形システムの構成について説明する。
【0028】
(システム構成)
図4Aは、本実施形態に係る情報処理装置410を含む3次元積層造形システム400の構成を示すブロック図である。
【0029】
3次元積層造形システム400は、本実施形態の情報処理装置410と、積層造形装置420と、表面画像撮像部430と、を備える。なお、表面画像撮像部430は、積層造形装置420に内蔵されていても、別途設置されていてもよい。
【0030】
情報処理装置410は、積層造形部422による積層造形物の造形を指示する造形制御指示部411と、溶融後に欠陥があると判定された場合に欠陥補修の制御を行う欠陥補修制御部412と、を有する。
【0031】
積層造形装置420は、情報処理装置410からの指示にしたがって積層造形物を造形するため、積層造形部422を制御する造形制御部421と、造形制御部421の制御にしたがって積層造形物を造形する積層造形部422と、を有する。
【0032】
表面画像撮像部430は、積層造形物の各層の溶融後に表面を撮像する。なお、表面画像撮像部430は、積層造形物の切断などの加工なしに内部構造を撮像可能なX線カメラなどであってもよい。
【0033】
(積層造形部)
図4Bは、本実施形態に係る積層造形部422の構成を示す図である。
【0034】
図4Bの積層造形部441は、レーザ溶融法を用いるパウダーベッド法の積層造形部であり、レーザ積層造形(SLM:Selective Laser Melting)と称される。一方、
図4Bの積層造形部442は、電子ビーム溶融法を用いるパウダーベッド法の積層造形部であり、電子ビーム積層造形(EBM:Electron Beam Melting)と称される。本実施形態においては、電子ビーム積層造形(EBM)を例に説明するが、レーザ積層造形(SLM)に対して適用でき、同様の効果を奏する。なお、
図4Bに示した積層造形部441、442の構成は、一例でありこれらに限定されるものではない。たとえば、積層造形部442の粉末供給は、積層造形部441のような構成であってもよい。
【0035】
<情報処理装置の機能構成>
図5は、本実施形態に係る情報処理装置410の機能構成を示すブロック図である。
【0036】
情報処理装置410は、通信制御部501と、撮像制御部502と、データベース503と、造形制御指示部504と、を備える。また、情報処理装置410は、表面画像取得部505と、欠陥判定部506と、欠陥補修部507と、造形中止指示部508と、を備える。
【0037】
通信制御部501は、積層造形装置420および表面画像撮像部430との通信を制御する。なお、積層造形装置420や表面画像撮像部430を、入出力インタフェースを介してバスやケーブルで接続してもよい。撮像制御部502は、表面画像撮像部430による溶融後の造形表面の撮像を制御する。データベース503は、情報処理装置410で使用されるデータやパラメータなどを格納する。データベース503は、造形制御指示部504が積層造形にために使用する積層造形データ531を格納する。また、データベース503は、欠陥判定部506が欠陥を判定するために使用する造形領域判定データ532、領域分割サイズ533、および、欠陥判定用データ534を格納する。また、データベース503は、欠陥補修部507が欠陥補修のために使用する欠陥補修用データ535を記憶する。なお、図示はしないが、データベース503に表面画像を格納してもよい。
【0038】
造形制御指示部504は、積層造形データ531を用いて、積層造形装置420に対して積層造形データ531に対応する積層造形物の造形指示を行う。なお、図示しないが、造形制御指示部504が積層造形装置420の動作状態を監視チェックする。また、欠陥判定部506からの欠陥なしの通知があると、次の層の積層造形を開始する。表面画像取得部505は、表面画像撮像部430が撮像した、積層造形部422による各層ごとあるいは所定n層ごとの溶融後の積層表面の画像を取得する。欠陥判定部506は、造形領域判定データ532と領域分割サイズ533と欠陥判定用データ534とを用いて、溶融後の積層表面の画像から、領域分割された小領域ごとの欠陥の有無を判定する。欠陥判定部506は、欠陥のあった小領域を欠陥補修部507に知らせる。また、欠陥判定部506は、欠陥が見つからない場合あるいは欠陥が補修された場合は、造形制御指示部504に対して次の層の造形を開始させる。また、欠陥判定部506は、欠陥補修が不可能な欠陥があると判定すると、造形中止指示部508に通知する。
【0039】
欠陥補修部507は、欠陥判定部506からの欠陥ありの通知に応じて、造形制御指示部504に対して欠陥補修用データ535を用いて欠陥補修を指示する。また、欠陥補修部507は、欠陥補修によっても欠陥が補修できないと判定すると、造形中止指示部508に対して造形中止の指示をさせる。造形中止指示部508は、欠陥判定部506からの補修が不可能な欠陥の通知や、欠陥補修部507からの補修ができなかった通知により、積層造形装置420に対して造形中止を指示する。
【0040】
(欠陥判定部)
図6Aは、本実施形態に係る欠陥判定部506の機能構成を示すブロック図である。
【0041】
欠陥判定部506は、造形領域抽出部661と、領域分割部662と、境界部分抽出部663と、境界部分補完部664と、小領域欠陥判定部665と、を有する。
【0042】
造形領域抽出部661は、造形領域判定データ532を用いて、表面画像取得部505からの得た表面画像から造形領域(溶融領域)を抽出する。領域分割部662は、領域分割サイズ533を用いて、造形領域(溶融領域)を含む領域を小領域に分割する。境界部分抽出部663は、領域分割部662で分割した小領域のうち、造形領域抽出部661が抽出した造形領域(溶融領域)の境界を含む境界部分の小領域を抽出する。そして、境界部分補完部664は、境界部分の小領域に対して、
図2Bに示したような補完を行う。
【0043】
小領域欠陥判定部665は、非境界部分の小領域と、境界部分の補完された小領域とに欠陥があるか否かを表面粗さに基づいて判定する。そして、補修が不可能な程の欠陥であれば、造形中止指示部508にその旨を通知する。また、補修可能な欠陥があると判定すれば、欠陥補修部507に欠陥補修を指示する。また、欠陥がないと判定すれば、造形制御指示部504に対して次の層の造形を開始させる。
【0044】
図6Bは、本実施形態に係る欠陥判定部506で使用するデータの構成を示す図である。
【0045】
造形領域判定データ532は、造形領域抽出部661が取得した画像によって造形領域(溶融領域)か否か612を判定するためのデータである。造形領域判定データ532は、たとえば、表面画像のコントラスト611が、閾値以上であれば非溶融領域と判定し、閾値未満であれば溶融領域と判定する。なお、造形領域(溶融領域)か否かの判定は、これに限定されるものではない。
【0046】
領域分割サイズ533は、領域分割部662が造形領域を小領域に分割するための小領域のサイズである。領域分割サイズ533は、本実施形態においては、メルトプール幅621が0.5mm~1.0mmであれば、メルトプール幅の凹凸が表面粗さに影響しない寸法として、メルトプール幅の倍数622を5~10として、領域分割サイズ623が5mm×5mmと設定されている。しかし、これらの数値は限定れない。特に、メルトプール幅の凹凸が表面粗さに影響しない寸法が選定される。
【0047】
欠陥判定用データ534は、小領域欠陥判定部665が、小領域に欠陥があるか否かを判定するためのデータである。欠陥判定用データ534は、たとえば、直接的には、表面凹凸大小631や粉末残多少632などが用いられる。ここで、表面凹凸大小631は輝度のパラツキや奥行き毎の表面相違などから評価され、粉末残多少632は、表面諧調の変化(周波数)や表面の凹凸の細かさなどから評価される。
【0048】
なお、小領域内で表面性状データ、温度データ、スパッタ量データ、メルトプールデータ等の特徴量が解析されて、欠陥の有無が評価されてもよい。
【0049】
図6Cは、本実施形態に係る欠陥判定部506で欠陥を検出するために用いる欠陥判定用テーブル650の構成を示す図である。
【0050】
欠陥判定用テーブル650は、表面画像取得部505から渡された撮像表面データ651と、造形領域抽出部661で抽出された造形境界652および溶融領域データ653を記憶する。また、欠陥判定用テーブル650は、領域分割部662によって小領域に分割された小領域データ654を記憶する。小領域データ654は、造形表面の小領域の位置データと小領域の撮像データとを含む。また、欠陥判定用テーブル650は、小領域が境界部分抽出部663で抽出された境界小領域か、その他の非境界小領域かのデータ655と、非境界小領域の評価対象データ656である撮像データと、境界小領域の評価対象データ656である補完データとを記憶する。そして、欠陥判定用テーブル650は、非境界小領域の撮像データから導出した粗さデータ657と、境界領域の補完データから導出した粗さデータ657とを記憶する。最後に、欠陥判定用テーブル650は、欠陥判定の閾値658による評価結果659を記憶する。粗さデータ657が閾値658以上の小領域は欠陥ありと判定され、粗さデータ657が閾値658未満の小領域は欠陥なしと判定される。
【0051】
なお、上記欠陥判定には単純な方法を記載したが、機械学習(深層学習、CNN、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、ナイーブベイズ、など)を用いてよい(特許文献2参照)。
【0052】
(欠陥補修部)
図7Aは、本実施形態に係る欠陥補修部507の機能構成を示すブロック図である。
【0053】
欠陥補修部507は、補修回数カウンタ771と、補修回数判定部772と、欠陥補修指示部773と、を有する。補修回数カウンタ771は、補修である再溶融を何回行ったかをカウントするカウンタである。補修回数判定部772は、欠陥補修用データ535に含まれる回数閾値と、補修回数カウンタ771がカウントした補修回数とを比較して、閾値以上であれば、補修できないとして造形中止指示部508に通知する。一方、閾値未満であれば、欠陥補修指示部773に積層造形装置420への指示を要請する。欠陥補修指示部773は、補修回数判定部772からの要請に従い、欠陥補修用データ535に含まれる溶融エネルギーによる再溶融を指示する。なお、欠陥補修用データ535に含まれる溶融エネルギーは1つであっても、複数の溶融エネルギーから選択されてもよい。また、溶融エネルギーは、レーザ出力と走査速度、ビーム径との少なくともどれか一つによって設定される。
【0054】
図7Bは、本実施形態に係る欠陥補修部507で欠陥を補修するために用いる欠陥補修用テーブル710の構成を示す図である。
【0055】
欠陥補修用テーブル710は、補修回数カウンタ771がカウントした補修回数カウント711と、欠陥補修用データ535からの回数閾値712と、補修回数カウント<回数閾値の場合713には欠陥補修処理を記憶し、補修回数カウント≧回数閾値の場合714には造形中止処理を記憶する。そして、欠陥補修処理に紐付いて、積層造形装置420に送られる、欠陥補修用データ535からの欠陥補修指示コマンド731と設定溶融エネルギー(出力、走査速度、ビーム径)732とが記憶される。
【0056】
<情報処理装置のハードウェア構成>
図8は、本実施形態に係る情報処理装置410のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0057】
図8で、CPU(Central Processing Unit)810は演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図5、
図6Aおよび
図7Aの構成要素を実現する。CPU810は1つであっても複数であってもよい。ROM(Read Only Memory)820は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびプログラムを記憶する。ネットワークインタフェース830は、ネットワークを介して、造形制御部421や表面画像撮像部430との通信を制御する。
【0058】
RAM(Random Access Memory)840は、CPU810が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM840には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。造形表面画像データ841は、表面画像取得部505が取得した画像データである。溶融領域画像データ(溶融領域境界データ)842は、造形領域抽出部661が抽出したデータである。非境界小領域データ843は、分割された小領域のなかで非境界にある小領域のデータである。非境界小領域欠陥有無844は、非境界にある小領域の欠陥有無を示すデータである。境界小領域データ845は、分割された小領域のなかで境界にある小領域のデータである。境界小領域補完データ846は、非溶融領域が溶融領域のデータに置き換えられたデータである。境界小領域欠陥有無847は、境界にある小領域の補完データに基づく欠陥有無を示すデータである。欠陥補修指示メッセージ848は、
図7Bに示した欠陥補修指示コマンド731と設定溶融エネルギー732とを示す。送受信データ849は、ネットワークインタフェース830を介して、積層造形装置420や表面画像撮像部430と送受信されるデータである。
【0059】
ストレージ850は、CPU810が使用する、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ850は、データベースとして、積層造形データ531、造形領域判定データ532、領域分割サイズ533、欠陥判定用データ534および欠陥補修用データ535を格納する。
【0060】
ストレージ850には、以下のプログラムが格納される。情報処理プログラム851は、情報処理装置410全体を制御するプログラムである。積層造形指示モジュール852は、積層造形装置420への積層造形指示を制御するモジュールである。表面画像取得モジュール853は、表面画像撮像部430から造形表面の画像を取得するモジュールである。欠陥判定モジュール854は、造形表面の画像から溶融領域を抽出し、領域分割して、境界部分は補完をして、小領域ごとの欠陥を判定するモジュールである。欠陥補修モジュール855は、欠陥がある場合に再溶融により欠陥を補修するモジュールである。造形中止指示モジュール856は、欠陥判定モジュール854が、補修が不可能な欠陥を検出した場合、あるいは、欠陥補修モジュール855が欠陥補修しても欠陥が補修されない場合に、造形を中止させるモジュールである。
【0061】
なお、情報処理装置410に入出力機器としての表示部や操作部などを接続する場合、あるいは、表面画像撮像部430を入力機器として接続する場合には、入出力インタフェースを設けてもよい。
【0062】
なお、
図8のRAM840やストレージ850には、情報処理装置410が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関連するプログラムやデータは図示されていない。
【0063】
<情報処理装置の処理手順>
図9は、本実施形態に係る情報処理装置410の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図8のCPU810がRAM840を使用して実行し、
図5、
図6Aおよび
図7Aの構成要素を実現する。
【0064】
情報処理装置410は、ステップS901において、装置およびシステムの初期化を行う。情報処理装置410は、ステップS903において、1層(n層)の積層造形を指示する。ここで、n層の場合は、n層ごとに欠陥判定および補修を行うことになる。
【0065】
情報処理装置410は、ステップS905において、表面画像撮像部430からの造形表面画像の受信を待つ。造形表面画像の受信があると、情報処理装置410は、ステップS907において、表面画像データを取得する。そして、情報処理装置410は、ステップS909において、表面画像データに基づいて溶融領域と非溶融領域との境界を抽出する。情報処理装置410は、ステップS911において、溶融領域を分割して小領域を生成する。
【0066】
情報処理装置410は、ステップS913において、小領域が溶融領域と非溶融領域との境界にあるか否かを判定する。小領域が溶融領域と非溶融領域との境界にある場合、情報処理装置410は、ステップS915において、非溶融領域のデータを溶融領域のデータで補完(置き換え)する。そして、情報処理装置410は、ステップS917において、溶融領域の小領域と非溶融領域の補完された小領域とにおいて、欠陥があるか否かを判定する。欠陥がなく、ステップS919の判定で造形終了でなければ、情報処理装置410は、ステップS903に戻って、次の層(n層)の積層造形を行う。
【0067】
欠陥があれば、情報処理装置410は、ステップS921において、補修処理として欠陥のあった小領域に対して再溶融を行う。なお、造形品質が比較的低くてよければ、小領域単位の補修でなく、溶融領域全体、あるいは、欠陥小領域を含む所定領域の再溶融であってもよい。情報処理装置410は、ステップS923において、再溶融回数を回数閾値と比較して、再溶融回数が回数閾値未満であれば、ステップS905に戻って、再溶融を繰り返す。一方、再溶融回数が回数閾値以上になれば、情報処理装置410は、ステップS925において、造形を停止する。なお、
図9においては、ステップS917における補修が不可能な欠陥の発生の場合を記載していないが、その場合、情報処理装置410は、ステップS925において、造形を停止する。
【0068】
本実施形態によれば、造形表面を所定寸法の小領域に領域分割して小領域ごとに欠陥があるか否かを判定するので、積層造形中に欠陥位置を確定できるため効率的に補修することができる。また、各層の断面を欠陥判定の小領域に分割するので、任意の形状の積層造形物に対しても適用可能である。再溶融による補修回数を制限し、補修できなければ造形を中止するので、無駄な積層造形を防ぐことができる。
【0069】
さらに、任意の形状の造形材に対し、造形表面より下に埋もれた造形欠陥を補修し、偶発的な造形欠陥をなくすことで、積層造形材の品質と歩留まりを向上させることができる。たとえば、造形条件を最適化しても、装置の動作条件の安定性の影響や、造形材断面形状の微妙な違いによって偶発的に造形欠陥が入ることがあり、造形材の品質および歩留まりに影響する。この偶発的な欠陥は、造形材サイズによってはX線CTなどの造形後非破壊検査で検出できないことが多い。一般的に、積層造形技術では任意の形状のものを自由に造形することが多いため、任意の断面形状に対して偶発的な欠陥発生をインプロセスで検出し、補修するための技術が必要とされている。表面から溶融されるため、表面モニタリングデータに観測されている場所だけでなく、観測されていない場所の直下にも欠陥が隠れている可能性が高く、物体検出技術のように表面に露出しているものを検出し補修する方式では、表面直下に埋もれている偶発的な欠陥を消すことはできない。また、凝固反応はメルトプールの底からだけでなくメルトプール表面からも進行する。そのため、表面温度が融点以上の領域を計測して得られるメルトプールの状態に関するデータは、表面直下の溶融領域の情報含んでいない。したがって、左記の従来技術のように表面メルトプールモニタリングによる方式では、表面直下に埋もれた欠陥の発生を検出できない可能性が高い。したがって、任意形状の部材に対して、造形表面直下に埋もれた欠陥も検出し補修する技術の開発が課題であった。
【0070】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態と比べると、再溶融による欠陥補修時に溶融エネルギーを適切に調整する点で異なる。溶融エネルギーの調整は、たとえば、溶融表面温度などの溶融状態を検出して、出力調整と走査速度、ビーム径との少なくともどれか一つを調整する。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0071】
(欠陥補修部)
図10は、本実施形態に係る欠陥補修部1007の機能構成を示すブロック図である。なお、
図10において、
図7Aと同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。
【0072】
欠陥補修部1007は、溶融エネルギー制御部1074を有する。溶融エネルギー制御部1074は、溶融表面の現在の状態、たとえば、検出された造形表面温度に対応して、欠陥補修用データ535からの溶融エネルギーを制御する。たとえば、造形表面温度が高ければ溶融エネルギーを低減させ、造形表面温度が低ければ溶融エネルギーを増加させる。なお、溶融エネルギーの制御の要因や制御方法はこの例に限定されない。
【0073】
本実施形態によれば、他の実施形態の効果に加えて、造形欠陥をより効率的に補修することができる。
【0074】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る情報処理装置について説明する。本実施形態に係る情報処理装置は、上記第2実施形態および第3実施形態と比べると、造形欠陥の状況に応じて、次積層における層厚や溶融エネルギーの少なくともいずれかを制御する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0075】
<情報処理装置の機能構成>
図11は、本実施形態に係る情報処理装置1110の機能構成を示すブロック図である。なお、
図11において、
図5と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。
【0076】
情報処理装置1110は、造形制御指示部1104と、欠陥補修部1107とを備える。造形制御指示部1104は、欠陥補修部1107からの欠陥補修時の情報に基づいて、以降の層形成時のパラメータ、たとえば、層厚や溶融エネルギーを調整する。欠陥補修部1107は、欠陥補修時の情報、たとえば補修回数や欠陥率などに基づいて、造形制御指示部1104にパラメータ設定のフィードバックを行う。
【0077】
(欠陥補修部)
図12は、本実施形態に係る欠陥補修部1107の機能構成を示すブロック図である。
図12において、
図7A同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。
【0078】
欠陥補修部1007は、膜厚/溶融エネルギー調整部1275を有する。膜厚/溶融エネルギー調整部1275は、補修回数カウンタ771のカウント回数に対応する膜厚と溶融エネルギーとの少なくともいずれかの調整を造形制御指示部1104に対して行う。たとえば、補修回数が多い場合は、そもそも層厚が厚すぎたり、溶融エネルギーが小さ過ぎたりすると判断して、層厚を薄く、あるいは、溶融エネルギーを高く調整する。なお、層厚で調整するか溶融エネルギーで調整するかは、造形物の品質や造形速度、粉体材料などを考慮して選択される。なお、補修回数が少なければ、補修が無駄なく行われていると判断できる。
【0079】
(欠陥補修部の他例)
図13は、本実施形態に係る欠陥補修部1107の他の機能構成を示すブロック図である。
図12において、
図7Aおよび
図12と同様の構成要素には同じ参照番号を付して、重複する説明を省略する。
【0080】
欠陥補修部1007は、さらに、欠陥比率算出部1376を有する。欠陥比率算出部1376が算出した欠陥比率に基づいて、膜厚/溶融エネルギー調整部1275が膜厚と溶融エネルギーとの少なくともいずれかの調整を造形制御指示部1104に対して行う。たとえば、全小領域中の欠陥小領域の割合などの大小も、層厚や溶融エネルギーが適切か否かを判断する要因となる。全小領域中の欠陥小領域の割合が高ければ、膜厚や溶融エネルギーが不適切と判定して調整する。一方、全小領域中の欠陥小領域の割合が低ければ、初期溶融時のあるいは再溶融時の膜厚や溶融エネルギーが適切と判定する。
【0081】
本実施形態によれば、他の実施形態の効果に加えて、造形欠陥の発生をより効率的に抑制することができる。
【0082】
[他の実施形態]
なお、本実施形態においては、欠陥補修として再溶融を説明したが、溶融前の撮像画像や溶融後の画像において、前の造形層が露出していることが検出された場合には、欠陥補修として粉末床の敷き直しを行ってもよい。
【0083】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。