(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】多孔質ポリイミドフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/28 20060101AFI20241008BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08J9/28 CFG
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2023569473
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2022046997
(87)【国際公開番号】W WO2023120549
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2021208826
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391059399
【氏名又は名称】株式会社アイ.エス.テイ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】目崎(藤井) 麻希
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-294704(JP,A)
【文献】特開2021-107484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/28
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくともピロメリット酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも4,4′-ジアミノジフェニルエーテルとを含む芳香族ジアミンとを重合反応させることにより得られるポリアミック酸と、
(b)前記ポリアミック酸に対して良溶媒である有機極性溶媒と、
(c)前記ポリアミック酸に対して貧溶媒であり前記有機極性溶媒に溶解すると共に、
同一の圧力下における沸点から前記有機極性溶媒の沸点を差し引いた値が15℃以上260℃以下の範囲内であり、logPが4.00以上6.00以下の範囲内である疎水性溶媒とを含む
ポリアミック酸溶液を乾燥した後に焼成して多孔質ポリイミドフィルムを得る
多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記疎水性溶媒は、1気圧における沸点が280℃以上350℃以下の範囲内である
請求項1に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミック酸溶液は、前記ピロメリット酸二無水物と前記4,4′-ジアミノジフェニルエーテルとを重合反応させたポリアミック酸を60質量%以上含む
請求項1または2に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法によって得られ、空孔率が70%超80%未満の範囲内であり、
少なくとも、
1気圧における沸点が280℃以上350℃以下の範囲内であると共にlogPが4.00以上6.00以下の範囲内である疎水性貧溶媒が残存している
多孔質ポリイミドフィルム。
【請求項5】
誘電率(10GHz)が1.0以上1.5未満の範囲内である
請求項4に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
【請求項6】
ピロメリット酸二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルエーテルを重合反応させたポリアミック酸から得られたポリイミド樹脂を少なくとも含み、
少なくとも、
1気圧における沸点が280℃以上350℃以下の範囲内であると共にlogPが4.00以上6.00以下の範囲内である疎水性貧溶媒が残存しており、
空孔率が70%超80%未満の範囲内である
多孔質ポリイミドフィルム。
【請求項7】
誘電率(10GHz)が1.0以上1.5未満の範囲内である
請求項
6に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板(FPC)等における電気絶縁膜や周波数選択膜等として好適に使用することができる多孔質ポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的強度などの物理的特性、耐熱性や耐薬品性などの化学的特性、および、低誘電率、低誘電正接などの電気的特性等に優れるポリイミド系樹脂の多孔質体が、その特性を生かした有用な素材として産業上の様々な用途へ利用されている。
【0003】
例えば、特開昭49-45152号公報には、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重合反応によって得られたポリアミック酸の溶液を液状の薄膜に流延し、該薄膜を貧溶媒中でイミド化しながら析出させて多孔質ポリイミド膜を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特開平9-100363号公報には、電子機器などのプリント配線基板や回転機のスロット絶縁などに用いられる耐熱性のある低誘電率プラスチック絶縁フィルムとして、空孔率が10vol%以上である多孔質なプラスチックを含み、耐熱温度が100℃以上で、かつ誘電率が2.5以下であることを特徴とする低誘電率プラスチック絶縁フィルムが開示されている。
【0005】
また、多孔質ポリイミドの製造方法としては、ポリイミド系樹脂を非プロトン性良溶媒などに溶解したポリマー溶液を、該非プロトン性良溶媒と相溶性を有する水などの貧溶媒と接触させることにより通常、乾湿式紡糸と称される方法で多孔質膜化する方法(例えば、特開平11-537号公報)や、ポリマー溶液に温度変化を与えることで多孔化させる熱誘起相分離法(例えば、特開平6-166116号公報)など、ポリマー溶液の相分離現象を用いる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭49-45152号公報
【文献】特開平9-100363号公報
【文献】特開平11-537号公報
【文献】特開平6-166116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような多孔質ポリイミドフィルムの製造方法などでは、比較的薄い多孔質ポリイミドフィルムを製造しようとしたとき、そのフィルムの空孔率を高めることが難しい。このような事情から、産業界では、比較的薄いが高い空孔率を有する多孔質ポリイミドフィルムの登場が望まれている。
【0008】
本発明の課題は、フレキシブル基板(FPC)等における電気絶縁膜や周波数選択膜等として好適に使用することができる、比較的薄いが高い空孔率を有する多孔質ポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1局面に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法では、
(a)少なくともピロメリット酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも4,4′-ジアミノジフェニルエーテルとを含む芳香族ジアミンとを重合反応させることにより得られるポリアミック酸と、
(b)前記ポリアミック酸に対して良溶媒である有機極性溶媒と、
(c)前記ポリアミック酸に対して貧溶媒であり前記有機極性溶媒に溶解すると共に、同一の圧力下における沸点から前記有機極性溶媒の沸点を差し引いた値が15℃以上260℃以下の範囲内であり、logPが4.00以上6.00以下の範囲内である疎水性溶媒とを含む
ポリアミック酸溶液が乾燥された後に焼成されて多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
【0010】
なお、本発明の第1局面に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において、疎水性溶媒は、1気圧における沸点が280℃以上350℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第1局面に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において、ポリアミック酸溶液は、ピロメリット酸二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルエーテルとを重合反応させたポリアミック酸を60質量%以上含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の第2局面に係る多孔質ポリイミドフィルムは、ピロメリット酸二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルエーテルを重合反応させたポリアミック酸から得られたポリイミド樹脂を少なくとも含む。そして、この多孔質ポリイミドフィルムには少なくとも、1気圧における沸点が280℃以上350℃以下の範囲内であると共にlogPが4.00以上6.00以下の範囲内である疎水性貧溶媒が残存している。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多孔質ポリイミドフィルムは、比較的薄いが高い空孔率を有し、フレキシブル基板(FPC)等における電気絶縁膜や周波数選択膜等として好適に使用することができる。また、本発明に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法は、そのような多孔質ポリイミドフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1、実施例3、実施例4および比較例8で得られた多孔質ポリイミドフィルムを、示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置で室温から500℃まで昇温速度5℃/分で加熱した際に得られた測定チャートである。
【
図2】実施例1で得られた孔あけ加工後の多孔質ポリイミドフィルムのデジタルマイクロスコープ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法では、ポリアミック酸、有機極性溶媒および疎水性溶媒を含むポリアミック酸溶液が乾燥された後に焼成されて多孔質ポリイミドフィルムが得られる。なお、ここで、ポリアミック酸は、少なくともピロメリット酸二無水物を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも4,4′-ジアミノジフェニルエーテルとを含む芳香族ジアミンとを重合反応させることにより得られるポリアミック酸である。また、有機極性溶媒は、ポリアミック酸に対して良溶媒である。また、疎水性溶媒は、ポリアミック酸に対して貧溶媒であり、有機極性溶媒に溶解する。また、この疎水性溶媒は、同一の温度および圧力で有機極性溶媒よりも蒸発しにくい。また、この疎水性溶媒は、logPが4.00以上6.00以下の範囲内である。
【0016】
なお、本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において、疎水性溶媒は、その沸点が有機極性溶媒の沸点よりも高いことが好ましい。疎水性溶媒は、1気圧における沸点が280℃以上350℃以下の範囲内であることが好ましく、300℃以上350℃以下の範囲内であることがより好ましい。また、有機極性溶媒は、1気圧における沸点が60℃以上270℃以下の範囲内であることが好ましい。また、疎水性溶媒の沸点から有機極性溶媒の沸点を差し引いた値は、15℃以上260℃以下の範囲内であることが好ましく、50℃以上180℃以下の範囲内であることがより好ましく、70℃以上160℃以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0017】
また、本発明の実施の形態においてポリアミック酸は、有機極性溶媒と疎水性貧溶媒との混合溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが重合されることによって合成されてもよいし、また、有機極性溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが重合されることによって合成されてもよい。なお、後者の場合、疎水性貧溶媒は、得られたポリアミック酸溶液に添加される。
【0018】
本発明の実施の形態に係るポリアミック酸の合成では、本願発明の主旨を損なわない範囲で、ピロメリット酸二無水物以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物が用いられてもよい。そのような芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9-ビス[4-(3,4’-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等が挙げられる。ただし、疎水性溶媒への溶解性の観点や、高空孔率の多孔質ポリイミドフィルムを得る観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物の多くは、ピロメリット酸二無水物で占められるのが好ましい。
【0019】
本発明の実施の形態に係るポリアミック酸の合成では、本願発明の主旨を損なわない範囲で、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル以外の芳香族ジアミンが用いられてもよい。そのような芳香族ジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。ただし、疎水性溶媒への溶解性の観点や、高空孔率の多孔質ポリイミドフィルムを得る観点から、芳香族ジアミンの多くは、4,4′-ジアミノジフェニルエーテルで占められるのが好ましい。
【0020】
ところで、上述の芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから得られるポリアミック酸は、ピロメリット酸二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルエーテルを重合反応させたポリアミック酸を60質量%以上含むことが好ましい。本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において、ポリアミック酸がゲル化せず、多孔質ポリイミドフィルムがその形状を良好に維持することができるからである。
【0021】
本発明の実施の形態に係るポリアミック酸溶液の固形分濃度は、多孔質ポリイミドフィルムの製造に適した粘度範囲となる固形分濃度であれば特に限定されないが、例えば、5質量%以上30質量以下の範囲内であることが好ましく、5質量%以上27質量%以下の範囲内であることがより好ましく、5質量%以上25質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0022】
また、本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において用いられる疎水性溶媒としては、(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール(沸点308℃、logP4.96)、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール(沸点324.5℃、logP4.48)、3-[2,3,3-トリメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-イル]シクロヘキサノール(沸点312℃、logP4.47)、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ―2,5,5-トリメチル-2-ナフトール(沸点280.1℃、logP4.07)などが挙げられる。
【0023】
なお、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(沸点339℃、logP2.04)、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド(沸点290℃、logP2.78)、4,4’-ビシクロヘキサノール(沸点324℃、logP2.49)等の疎水性溶媒も、本発明の主旨を損なわない範囲で上述の疎水性溶媒と併用することができる。
【0024】
上述の通り、疎水性溶媒のlogPが4.00以上6.00以下の範囲内である。なお、このlogPは、既知の計算方法により算出される。具体的には、logPは、定量的構造活性相関アルゴリズムを用いた市販ソフト等による計算によって求められる。そのような市販ソフトとしては、例えば、ChemdrawPro12.0等を挙げることができる。また、logPの算出には、http://www.vcclab.org/lab/alogps/start.htmlのオンラインサイトを利用することもできる。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において用いられる有機極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(沸点215℃)、ジメチルイソ酪酸アミド(沸点175℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点202℃)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(沸点233℃)等のアミド系溶媒、ガンマブチロラクトン(沸点204℃)等のエステル系溶媒、1,2-ジメトキシエタン(沸点85℃)、ジグライム(沸点162℃)、トリグライム(沸点216℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、1,3-ジオキソラン(沸点74℃)、1,4-ジオキサン(沸点101℃)等のエーテル系溶媒、シクロペンタノン(沸点131℃)等のケトン系溶媒、テトラメチル尿素(沸点176.5℃)、N,N-ジメチルエチルウレア(沸点262℃)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(沸点225℃)等の尿素系溶媒が挙げられる。なお、この有機極性溶媒は、ポリアミック酸に対する溶解性や、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応性を良好に維持すること等から、尿素系溶媒およびアミド系溶媒であることが好ましく、アミド系溶媒であることがより好ましい。アミド系溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が特に好ましい。なお、これらの有機極性溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、この有機極性溶媒にトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が混合されてもよい。
【0026】
得られたポリアミック酸溶液はそのまま多孔質ポリイミドフィルムの製造に使用することもできるが、必要に応じてポリアミック酸溶液に溶媒を除去してあるいは添加してから多孔質ポリイミドフィルムの製造に使用してもよい。
【0027】
また、本発明の実施の形態に係るポリアミック酸溶液には、必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などが加えられてもよい。
【0028】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN-オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられる。特に1,2-ジメチルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、5-メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、4-n-プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどが好適に用いられ得る。イミド化触媒は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01~2倍当量添加されることが好ましく、0.02~1倍当量添加されることがより好ましい。なお、ポリアミック酸溶液にイミド化触媒を添加することによって、得られる多孔質ポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上することがある。
【0029】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミン塩中のアミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0030】
無機微粒子としては、二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、これらの無機微粒子をポリアミック酸溶液に均一に分散させる方法としては、公知の方法を利用することができる。
【0031】
次に、本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、ピロメリット酸二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルエーテルを重合反応させたポリアミック酸から得られたポリイミド樹脂を少なくとも含む。そして、この多孔質ポリイミドフィルムには少なくとも疎水性溶媒が残存している。なお、この多孔質ポリイミドフィルムにおいて、疎水性溶媒はその孔内に残存しているものが多い。このため、多孔質ポリイミドフィルムの吸水が抑えられ、多孔質ポリイミドフィルムの膨張による寸法変化等を抑制することができる。
【0032】
また、本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、ピロメリット酸二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルエーテルを重合反応させたポリアミック酸から得られたポリイミド樹脂を少なくとも含む。そして、この多孔質ポリイミドフィルムは、昇温速度5℃/分で示差熱・熱重量(TG/DTA)を測定した際に350℃から450℃までの温度領域において発熱ピークを有する。なお、同温度領域において多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は0.5%以上3.0%以下の範囲内であることが好ましく、0.5%以上2.5%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0033】
本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、熱伝導率が0.2以下であることが好ましく、0.17以下であることがより好ましい。熱伝導率の下限値は特に限定されないが、空気の熱伝導率よりも大きい。熱伝導率が低いほど、多孔質ポリイミドフィルムの断熱性が高くなり好ましい。
【0034】
本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、誘電率(10GHz)が1.00以上2.5以下の範囲内であることが好ましく、1.4以上2.0以下の範囲内であることがより好ましい。また、誘電正接(10GHz)が0.0001以上0.02以下の範囲内であることが好ましく、0.005以上0.015以下の範囲内であることがより好ましい。誘電特性(誘電率、誘電正接)が低いほど、高周波における通信特性が高くなり好ましい。
【0035】
本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、空孔率が50%以上80%未満の範囲内であることが好ましく、50%以上70%未満の範囲内であることがより好ましく、60%以上70%未満の範囲内であることがさらに好ましい。空孔率が上述の範囲内であると、熱伝導率や誘電特性等と、機械的強度とバランスが良好に維持されるからである。
【0036】
なお、本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムでは、大気に接触する表面側から基材に接触する表面側に向かって孔径が次第に大きくなるように独立孔が形成されているのが好ましいが、部分的に連続孔が存在してもよい。
【0037】
特に、本発明の実施形態にかかる多孔質ポリイミドフィルムは、少なくとも基材フィルム(金属層を形成するための基材フィルム)として好適に使用され得る。多孔質ポリイミドフィルムの剛性や電気絶縁性を向上させる目的で、多孔質ポリイミドフィルムを積層してもよい。多孔質ポリイミドフィルムを積層する方法は特に限定されないが、多孔質ポリイミドフィルムが直接的に積層されていてもよいし、接着層(接着剤層)を介して多孔質ポリイミドフィルムと多孔質ポリイミドフィルムとが積層され(貼り合わせられ)てもよい。
【0038】
なお、上述の接着層を構成する接着成分としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。
【0039】
上述の金属層(金属箔)を形成する金属としては、特に限定されないが、例えば、銅およびその合金、ステンレス鋼およびその合金、ニッケルおよびその合金、ならびに、アルミニウムおよびその合金などが挙げられる。なお、上述の金属のうち特に好ましいのは銅およびその合金である。銅合金としては、例えば、ニッケル、亜鉛、鉄、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン、バナジウム、ベリリウム、チタン、スズ、マンガン、アルミニウム、燐、珪素等のうち少なくとも1種以上の金属と銅とを含む銅合金が挙げられる。なお、銅およびその合金は、回路加工上好まれて使用され得る。なお、銅およびその合金の回路加工方法としては、例えば、圧延法や、電解メッキ法、スパッタリング法が挙げられる。
【0040】
上述の金属層と多孔質ポリイミドフィルムとを積層することで、金属箔張り積層体が得られる。すなわち、本発明の実施の形態にかかる多孔質ポリイミドフィルムは、金属箔張り積層体の基材フィルムに好適に用いられ得る。なお、金属箔の表面に防錆層や耐熱層(例えば、クロム、亜鉛等のメッキ処理)、シランカップリング剤層等を形成してもよい。
【0041】
金属層の厚みは特に限定されないが、例えば、1~150μm(例えば、3~50μm)程度である。
【0042】
金属箔張り積層体は、本発明の実施形態にかかる多孔質ポリイミドフィルムおよび金属層を備えている限り、その積層の形態は特に限定されない。本発明の実施形態にかかる多孔質ポリイミドフィルムの使用目的(基材フィルムとしての使用であるか、カバーレイとしての使用であるかなど)などにもよるが、例えば、本発明の実施形態にかかる多孔質ポリイミドフィルムと金属層とが直接的に積層されていてもよく、接着層(接着剤層)を介して本発明の実施形態にかかる多孔質ポリイミドフィルムと金属箔とが積層され(貼り合わせられ)てもよい。
【0043】
なお、上述の接着層を構成する接着成分としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。
【0044】
ところで、金属箔張り積層体は、多孔質ポリイミドフィルム内の空孔が比較的小さいためスルーホール加工することができる。金属箔張り積層体の金属層をエッチングして所望のパターン配線を形成することにより、各種の小型化、高密度化された部品をそのパターン配線上に実装することができる。もちろん、本発明の実施の形態に係る金属箔張り積層体は、上述の用途のみならず、種々の用途に利用することができる。また、この金属箔張り積層体は、多孔質ポリイミドフィルムの存在により誘電特性に優れるため、多機能携帯電話やタブレット端末等の移動体情報通信機器等の部品として有効である。より具体的には、超高速大容量、低遅延、多数同時接続などの要求に対応し得る5G用端末用の部品としての利用、自動車の高速スイッチング電源、衝突防止ミリ波レーダー装置、先進運転支援システム、人工知能等の部品への応用が期待される。
【0045】
本発明の実施の形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、透気度が1500sより高いことが好ましい。透気度が1500sより高いと、連続気泡ではなく独立気泡が形成されていることを確認することができるからである。
【0046】
<ポリアミック酸溶液の製造>
上述の通り、本発明の実施の形態においてポリアミック酸は、有機極性溶媒と疎水性貧溶媒との混合溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが重合されることによって合成されてもよいし、また、有機極性溶媒中で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとが重合されることによって合成されてもよい。なお、後者の場合、疎水性貧溶媒は、得られたポリアミック酸溶液に添加される。
【0047】
ここで、有機極性溶媒および疎水性溶媒としては、上述のものが用いられる。
【0048】
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとは略等モルで重合されることが好ましい。その重合温度は、好ましくは約100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは0~60℃、特に好ましくは20~60℃の温度である。また、その重合時間は、好ましくは約0.2時間以上、より好ましくは0.3~60時間である。
【0049】
ポリアミック酸溶液の粘度は、多孔質ポリイミドフィルムの成形対象や、成形方法(塗工、流延等)や、製造目的に応じて適宜調整すればよい。ポリアミック酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)は、作業性の観点から、30℃で測定した回転粘度が約0.1~5000ポイズを示すことが好ましく、0.5~2000ポイズを示すことがより好ましく、1~2000ポイズを示すことがさらに好ましい。したがって、得られるポリアミック酸溶液が上述の粘度を示す程度にまで上述の重合反応を実施するか、得られたポリアミック酸溶液を希釈するか濃縮するかして粘度が調整されることが好ましい。
【0050】
<ポリアミック酸溶液からの多孔質ポリイミドフィルムの成形>
ポリアミック酸溶液から多孔質ポリイミドフィルムを成形する方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。より具体的にはポリアミック酸溶液またはポリアミック酸溶液組成物を支持体上に流延塗布した後にそれを加熱して、支持体上より剥離することができる程度にまで成形することによって多孔質ポリイミドフィルムが製造される。多孔質ポリイミドフィルム成形時の加熱温度および加熱時間は適宜決めることができる。なお、加熱温度および加熱時間の組み合わせの好ましい一例として、温度100~180℃で1~60分間などが挙げられる。
【0051】
支持体としては、ポリアミック酸溶液を流延することができるものであれば特に限定されないが、平滑な基材を用いることが好ましい。そのような基材としては、例えば、ステンレスなどの金属製のドラムやベルトなどが挙げられる。
【0052】
同方法では、支持体上より剥離することができる程度にまで溶媒が除去されていればよい。イミド化は、支持体から剥離される前に行われてもよいし、支持体から剥離された後に行われてもよい。なお、後者の場合、例えば、得られたフィルムの幅方向の両端をテンター装置で把持しながら搬送すると共に加熱してイミド化を行うことができる。かかる場合の加熱温度は、ポリイミドフィルムの強靭化と多孔質化を促進する観点や、疎水性溶媒をできるだけ除去する観点から、疎水性溶媒の沸点以上であることが好ましい。加熱時間は適宜決めることができるが、同様にポリイミドフィルムの強靭化と多孔質化を促進する観点や、疎水性溶媒をできるだけ除去する観点から、0.5時間以上5時間以下の範囲内であることが好ましい。
【0053】
以下、多孔質ポリイミドフィルムを製造する一例を示す。先ず、ポリアミック酸溶液を適当な支持体の表面上に流延して、約10~2000μm(より好ましくは20~1000μm程度)の均一な厚さのポリアミック酸溶液を液膜状に形成する。次いで、その液膜状のポリアミック酸溶液を熱風、赤外線等の熱源を利用して80℃から150℃で10分から1時間乾燥させた後に、支持体上に形成されたフィルムを支持体からはがしてそのフィルムをテンターなどに固定した状態で、そのフィルムを150℃から300℃まで30分から3時間で昇温させ、さらにそのフィルムを300℃から400℃で20分から1時間かけて焼成して多孔質ポリイミドフィルムが形成される。なお、かかる場合、イミド化は、最後の焼成中に進行する。
【0054】
<実施例および比較例>
以下、実施例および比較例を用いて本願発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
1.ポリアミック酸溶液の調製
N-メチル-2-ピロリドン91g中に芳香族ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を7.46g、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)を7.96g加えて撹拌し、ポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分14.5質量部)を得た。次に、そのポリアミック酸溶液に、疎水性貧溶媒として(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール(沸点308℃、logP4.96)30.4gを加えて攪拌し、目的のポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分11.2質量部)を得た。
【0056】
2.多孔質ポリイミドフィルムの成形
上述のポリアミック酸溶液をガラス基板上に流延してポリアミック酸溶液の塗膜を形成した後、その塗膜が形成されたガラス板を130℃のオーブンに入れて、その塗膜を30分間乾燥させた。次に、オーブンからガラス板を取り出し、ガラス基板上に形成されたフィルムをガラス基板から剥離してテンターに固定した後、そのフィルムをオーブンに入れて150℃から350℃まで2時間かけて昇温させた。そして、オーブンの温度が350℃に達してからその温度を20分間維持してフィルムを焼成し、目的の多孔質ポリイミドフィルムを得た。なお、その多孔質ポリイミドフィルムの厚みは105.5μmであった。
【0057】
3.物性評価
(1)熱伝導率の測定
JIS R2616を参考にして多孔質ポリイミドフィルムの熱伝導率を測定した。具体的には、多孔質ポリイミドフィルムを2cm×2cm片に切り取った後、そのフィルム片の一方の面に熱伝導グリスを介してトランジスタを貼り付け、その反対の面に熱伝導グリスを介してヒートシンク(アルミ製)を貼り付けた。次に、トランジスタの温度が60℃になるまでトランジスタに電流をかけて昇温させて、60℃に到達したトランジスタで3分間、多孔質ポリイミドフィルムを加熱し、トランジスタ側の多孔質ポリイミドフィルムの表面温度Aと、ヒートシンク側の多孔質ポリイミドフィルムの表面温度Bを、熱電対を用いて測定した。また、その際、トランジスタの消費電力を測定し、各表面の温度A,Bとトランジスタの消費電力を用いて、以下に示される式から熱抵抗を算出した。
【0058】
熱抵抗=(表面温度A(℃)-表面温度B(℃))/消費電力(W)
【0059】
また、上式で算出した熱抵抗を用いて、以下に示される式から熱伝導率を算出したところ、その熱伝導率は0.14W/mKであった。
【0060】
熱伝導率=多孔質ポリイミドフィルムの膜厚/(トランジスタの断面積×熱抵抗)
【0061】
(2)誘電率(10GHz)の測定
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名:ベクトルネットワークアナライザE8363C)及びスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)を用いて、周波数10GHzにおける多孔質ポリイミドフィルムの誘電率(ε)および誘電正接を測定した結果、誘電率は1.68であり、誘電正接は0.0083であった。
【0062】
(3)空孔率の測定
所定の大きさに切取った多孔質ポリイミドフィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から多孔質ポリイミドフィルムの空孔率を、以下に示される式によって求めたところ、その空孔率は53.7%であった。
【0063】
空孔率=(1-w/(S×d)/D)×100
上式中、Sは多孔質ポリイミドフィルム片の面積であり、dは多孔質ポリイミドフィルム片の膜厚であり、wは多孔質ポリイミドフィルム片の測定質量であり、Dはポリイミドの密度である。なお、ポリイミドの密度は1.43g/cm3とした。
【0064】
(4)熱重量分析
株式会社島津製作所製の示差熱・熱重量(TG/DTA)同時測定装置「DTG-60」を用いて、多孔質ポリイミドフィルムを空気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度5℃/分で加熱して、多孔質ポリイミドフィルムの熱重量分析を行ったところ、370℃で発熱ピークが確認されたと共に(
図1参照)、350℃~450℃における重量減少率が0.9%であった。
【0065】
なお、上述の重量減少率は(350℃時の重量(g)-450℃時の重量(g))/350℃時の重量(g)×100で計算される。
【0066】
(5)液体クロマトグラフ(HPLC)質量分析
多孔質ポリイミドフィルムをメタノールに漬けた後、そのメタノールを日立製作所製高速液体クロマトグラフChromasterで分析したところ、(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]へプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールが検出された。なお、上述の高速液体クロマトグラフChromasterにおいて、カラムとしてダイセル製CHIRALPAK IB(粒子径5μm、内径4.6mm、長さ150mm)を用い、移動相としてTHFを用い、検出器としてフォトダイオードアレイ検出器を用いた。フォトダイオードアレイ検出器は、紫外可視スペクトルを検知する。また、移動相の流速は1mL/分とされた。
【0067】
(6)透気度の測定
JIS P8117(ガーレー試験法)に基づいて多孔質ポリイミドフィルムの透気度を測定したところ、多孔質ポリイミドフィルムは1500sより高い透気度を示すことが確認された。
【0068】
(7)孔あけ加工
直径0.3mmのドリルを用いて、多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
図2に、ハイロックス社製のデジタルマイクロスコープKH-1300を用いて孔あけ加工した多孔質ポリイミドフィルムを拡大倍率50倍で観察した写真を示す。
【実施例2】
【0069】
(1,7,7-トリメチルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールの添加量を36.5gに変更した以外は実施例1と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。なお、このとき、ポリアミック酸溶液の固形分は10.1質量部であった。また、得られた多孔質ポリイミドフィルムの厚みは107.9μmであった。
【0070】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.13W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.58であり、誘電正接(10GHz)は0.0075であり、空孔率は66.8%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは370℃で発熱ピークが確認され、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は1.0%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【実施例3】
【0071】
(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール30.4gを4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノール(沸点324.5℃、logP4.48)30.4gに変更した以外は実施例1と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。なお、このとき、ポリアミック酸溶液の固形分は11.2質量部であった。また、得られた多孔質ポリイミドフィルムの厚みは48.7μmであった。
【0072】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.13W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.92であり、誘電正接(10GHz)は0.0118であり、空孔率は50.0%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは380℃で発熱ピークが確認され(
図1参照)、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は0.8%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)シクロヘキサノールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【実施例4】
【0073】
(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール30.4gを1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ―2,5,5-トリメチル-2-ナフトール(沸点280.1℃、logP4.07)30.4gに変更した以外は実施例1と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。なお、このとき、ポリアミック酸溶液の固形分は11.2質量部であった。また、得られた多孔質ポリイミドフィルムの厚みは86.1μmであった。
【0074】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.15W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.84であり、誘電正接(10GHz)は0.0116であり、空孔率は55.1%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは375℃で発熱ピークが確認され(
図1参照)、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は2.1%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ―2,5,5-トリメチル-2-ナフトールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【実施例5】
【0075】
N-メチル-2-ピロリドン91g中に芳香族ジアミンとしてパラフェニレンジアミン(PPD)を4.22g、芳香族テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を11.26g加えて撹拌し、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分14.5質量部)を得た。次に、実施例1で得られたポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分14.5質量部)63.6g、上述のポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分14.5質量部)42.4g、および、疎水性貧溶媒としての(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール(沸点308℃、logP4.96)30.4gを混ぜて攪拌し、目的のポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA:BPDA/PPD=6:4(質量比率),固形分11.2質量部)を得た。そして、実施例1と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。その多孔質ポリイミドフィルムの厚みは118.2μmであった。
【0076】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.17W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.87であり、誘電正接(10GHz)は0.0101であり、空孔率は65.6%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは370℃で発熱ピークが確認され、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は1.0%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【実施例6】
【0077】
N-メチル-2-ピロリドン91g中に芳香族ジアミンとして,4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を6.36g、芳香族テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を9.07g加えて撹拌し、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/ODA,固形分14.5質量部)を得た。次に、実施例1で得られたポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分14.5質量部)63.6g、上述のポリアミック酸溶液(組成BPDA/ODA,固形分14.5質量部)42.4g、および、疎水性貧溶媒としての(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール(沸点308℃、logP4.96)30.4gを混ぜて攪拌し、目的のポリアミック酸溶液(組成:PMDA/ODA:BPDA/ODA=6:4(質量比率),固形分11.2質量部)を得た。そして、実施例1と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。その多孔質ポリイミドフィルムの厚みは115.3μmであった。
【0078】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.16W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.77であり、誘電正接(10GHz)は0.0069であり、空孔率は54.2%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは370℃で発熱ピークが確認され、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は1.0%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【実施例7】
【0079】
厚み253.7μmの多孔質ポリイミドフィルムを得た以外は実施例2と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。
【0080】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.13W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.59であり、誘電正接(10GHz)は0.0070であり、空孔率は63.8%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは370℃で発熱ピークが確認され、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は1.0%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【実施例8】
【0081】
N-メチル-2-ピロリドンをN,N-ジメチルアセトアミドに変更した以外は実施例1と同様の方法で多孔質ポリイミドフィルムを得た。なお、このとき、ポリアミック酸溶液の固形分は11.2質量部であった。また、得られた多孔質ポリイミドフィルムの厚みは48μmであった。
【0082】
得られた多孔質ポリイミドフィルムの物性を実施例1と同様の方法で測定したところ、熱伝導率は0.13W/mKであり、誘電率(10GHz)は1.70であり、誘電正接(10GHz)は0.0078であり、空孔率は58.7%であった。また、熱重量分析の結果、この多孔質ポリイミドフィルムでは370℃で発熱ピークが確認され、多孔質ポリイミドフィルムの重量減少率は1.0%であった。また、HPLC質量分析により多孔質ポリイミドフィルムから(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オールが検出された。また、この多孔質ポリイミドフィルムの透気度は1500sより高いことが確認された。また、直径0.3mmのドリルを用いて多孔質ポリイミドフィルムに孔あけ加工を行ったところ、問題なく孔あけ加工することができた。
【0083】
(比較例1)
1.ポリアミック酸溶液の調製
N-メチル-2-ピロリドン91g中に芳香族ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を7.46g、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)を7.96g加えて撹拌し、ポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分14.5質量部)を得た。次に、そのポリアミック酸溶液に、貧溶媒としてグリセリン(沸点290℃、logP-1.96)13.1gを加えて攪拌し、目的ポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分12.7質量部)を得た。
【0084】
2.多孔質ポリイミドフィルムの成形
上述のポリアミック酸溶液をガラス基板上に流延してポリアミック酸溶液の塗膜を形成した後、その塗膜が形成されたガラス板を130℃のオーブンに入れて、その塗膜を30分間乾燥させた。次に、オーブンからガラス板を取り出し、ガラス基板上に形成されたフィルムをガラス基板から剥離してテンターに固定した後、そのフィルムをオーブンに入れて150℃から350℃まで2時間かけて昇温させた。そして、オーブンの温度が350℃に達してからその温度を20分間維持してフィルムを焼成したが、フィルムとして成形することができなかった。
【0085】
(比較例2)
グリセリンをシクロヘキサノール(沸点161℃、logP1.35)に変更し、ポリアミック酸溶液の固形分が11.5質量部となるようにポリアミック酸溶液にシクロヘキサノールを添加した以外は、比較例1と同様の方法で目的のポリアミック酸溶液を得ると共にポリイミドフィルムを得た。なお、得られた多孔質ポリイミドフィルムの厚みは39.0μmであった。
【0086】
得られたポリイミドフィルムの空孔率を実施例1と同様の方法で測定したところ、空孔率は0%であり、ポリイミドフィルムは多孔質体にはなっていなかった。
【0087】
(比較例3)
グリセリンをエチレングリコール(沸点198℃、logP-1.53)に変更し、ポリアミック酸溶液の固形分が9.8質量部となるようにポリアミック酸溶液にエチレングリコールを添加した以外は、比較例1と同様の方法で目的のポリアミック酸溶液を得て、ポリイミドフィルムの成形を行ったが、フィルムとして成形することができなかった。
【0088】
(比較例4)
ポリアミック酸溶液の固形分が11.2質量部となるようにポリアミック酸溶液にエチレングリコールを添加した以外は、比較例3と同様の方法で目的のポリアミック酸溶液を得て、ポリイミドフィルムの成形を行ったが、フィルムとして成形することができなかった。
【0089】
(比較例5)
グリセリンをテトラグライム(沸点275℃、logP-0.12)に変更し、ポリアミック酸溶液の固形分が11.5質量部となるようにポリアミック酸溶液にテトラグライムを添加した以外は、比較例1と同様の方法で目的のポリアミック酸溶液を得ると共にポリイミドフィルムを得た。なお、得られた多孔質ポリイミドフィルムの厚みは45.0μmであった。
【0090】
得られたポリイミドフィルムの空孔率を実施例1と同様の方法で測定したところ、空孔率は0%であり、ポリイミドフィルムは多孔質体にはなっていなかった。
【0091】
(比較例6)
グリセリンを(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)シクロヘキサン-1-オール(沸点308℃、logP4.96)に変更し、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)をパラフェニレンジアミン(PPD)に代えると共にその添加量を4.24gに代え、また、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)に代えると共にその添加量を11.20gに代えた以外は、比較例1と同様の方法でポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分20.9質量部)を得た。また、そのポリアミック酸溶液を用いて比較例1と同様の方法でポリイミドフィルムの成形を行ったが、フィルムとして成形することができなかった。
【0092】
(比較例7)
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)の添加量を6.36gに代え、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)に代えると共にその添加量を9.07gに代えた以外は、比較例1と同様の方法でポリアミック酸溶液(組成BPDA/ODA、固形分11.2質量部)を得た。また、そのポリアミック酸溶液を用いて比較例1と同様の方法でポリイミドフィルムの成形を行ったが、フィルムとして成形することができなかった。
【0093】
(比較例8)
N-メチル-2-ピロリドン84.7g中に芳香族ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を7.44g、芳香族テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)を7.98g加えて撹拌し、ポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.3質量部)を得た。
【0094】
得られたポリイミドフィルムの空孔率を実施例1と同様の方法で測定したところ、空孔率は0%であり、ポリイミドフィルムは多孔質体にはなっていなかった。また、得られたポリイミドフィルムに対して実施例1と同様の方法で熱重量分析を行ったところ、350℃から450℃の間で発熱ピークは確認されなかった(
図1参照)。また、ポリイミドフィルムの重量減少率は0.3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法では、安価でありながら比較的薄くしても空孔率50%以上の高い空孔率を保持する多孔質ポリイミドフィルムを得ることができる。また、その多孔質ポリイミドフィルムは、フレキシブル基板(FPC)等における電気絶縁膜や周波数選択膜等として好適に使用することができる。