(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】マイクロピペット用保持構造
(51)【国際特許分類】
B01L 9/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B01L9/00
(21)【出願番号】P 2024018854
(22)【出願日】2024-02-09
【審査請求日】2024-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇師
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0029040(US,A1)
【文献】中国実用新案第204276020(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0075635(US,A1)
【文献】中国実用新案第203220917(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 9/00 - 9/06
B01L 3/02
C12M 1/26
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業平面に自立可能なベース部と、
マイクロピペットに係合可能な係合部を有し、前記マイクロピペットを保持および静置する保持部と、
前記ベース部と前記保持部を接続する接続部と、
別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備え、
前記ベース部が自立した第1姿勢と、前記第1姿勢とは異なり、前記引っ掛け部を前記別の構造物に引っ掛けた第2姿勢との間で姿勢を変更可能であ
って、
前記引っ掛け部は、少なくとも前記接続部によって画定される第1引っ掛け部を有する、マイクロピペット用保持構造。
【請求項2】
前記第1引っ掛け部は、前記接続部が湾曲して画定する凹部で構成される、請求項
1に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項3】
前記別の構造物は、棒状部材であって、
前記棒状部材に前記凹部を被せて前記第1引っ掛け部を引っ掛ける、請求項
2に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項4】
作業平面に自立可能なベース部と、
マイクロピペットに係合可能な係合部を有し、前記マイクロピペットを保持および静置する保持部と、
前記ベース部と前記保持部を接続する接続部と、
別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備え、
前記ベース部が自立した第1姿勢と、前記第1姿勢とは異なり、前記引っ掛け部を前記別の構造物に引っ掛けた第2姿勢との間で姿勢を変更可能であって、
前記引っ掛け部は、前記ベース部に設けられた第2引っ掛け部を有する
、マイクロピペット用保持構造。
【請求項5】
前記第2引っ掛け部は、前記ベース部において、貫通した空間を画定する環状部分で構成される、請求項
4に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項6】
前記別の構造物は、突起であって、
前記突起を前記環状部分内に突出させて前記第2引っ掛け部を引っ掛ける、請求項
5に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項7】
作業平面に自立可能なベース部と、
マイクロピペットに係合可能な係合部を有し、前記マイクロピペットを保持および静置する保持部と、
前記ベース部と前記保持部を接続する接続部と、
別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備え、
前記ベース部が自立した第1姿勢と、前記第1姿勢とは異なり、前記引っ掛け部を前記別の構造物に引っ掛けた第2姿勢との間で姿勢を変更可能であって、
前記係合部が前記マイクロピペットと係合した状態で、前記第1姿勢での高さ方向から見たときに、前後方向は前記マイクロピペットの長手方向と一致し、前記ベース部は前記マイクロピペットのグリップ部の下方に位置する
、マイクロピペット用保持構造。
【請求項8】
前記係合部は、前記マイクロピペットの先端と前記グリップ部との間の部分と係合する、請求項
7に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項9】
前記係合部が前記マイクロピペットと係合した状態で、前記マイクロピペットの先端は、前記グリップ部よりも前側に位置し、
前記第1姿勢において、前記係合部は、前側に向かって前記作業平面に近づくように傾斜して配置される、請求項
7に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項10】
前記係合部は、前記マイクロピペットの周面を前記高さ方向と交差する幅方向に挟む、請求項
7に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項11】
前記係合部は、前記幅方向に間隔を有する一対の部分を有し、
前記間隔は、前側に向かって小さくなる、請求項
10に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項12】
前記保持部は、前記前後方向に沿って前記係合部よりも前側に延びる一対のアームをさらに有する、請求項
7に記載のマイクロピペット用保持構造。
【請求項13】
前記一対のアームの間隔は、前側に向かって大きくなる、請求項
12に記載のマイクロピペット用保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロピペットの保持および設置に適した容易に脱着可能なマイクロピペット用保持構造に関する。マイクロピペット用保持構造は例えば医学、薬学、生物学、農学および工学等、様々な実験分野で広く使用され得る。
【背景技術】
【0002】
マイクロピペットとは、計量する液体をマイクロリットル単位で調整することが可能な実験器具であり、医学、薬学、生物学、農学および工学等、様々な実験分野で日常的に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイクロピペットの構造がピペットの名称で開示されている。特許文献1に記載されたピペットは、先端に随時交換可能な使い捨てのピペットチップを有し、反対側の端部に実験従事者が把持するロッド状のグリップ部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、マイクロピペットの本体に関しては様々な改良が続けられているが、マイクロピペットの保持および設置の手段については、ユーザの使い勝手の観点から言えば、未だ十分な検討がなされていない。
【0006】
したがって本開示の目的は、ユーザの使い勝手が向上したマイクロピペット用保持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様のマイクロピペット用保持構造は、作業平面に自立可能なベース部と、マイクロピペットに係合可能な係合部を有し、マイクロピペットを保持および静置する保持部と、ベース部と保持部を接続する接続部と、別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備え、ベース部が自立した第1姿勢と、第1姿勢とは異なり、引っ掛け部を別の構造物に引っ掛けた第2姿勢との間で姿勢を変更可能である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、マイクロピペットを使用する際の保持および設置について、ユーザの使い勝手が向上したマイクロピペット用保持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る実施の形態1のマイクロピペット用保持構造の斜視図
【
図4】第1引っ掛け姿勢におけるマイクロピペット用保持構造の側面図
【
図5】第2引っ掛け姿勢におけるマイクロピペット用保持構造の側面図
【
図6】変形例1のマイクロピペット保持構造の側面図
【
図7】変形例2のマイクロピペット用保持構造の側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至った経緯)
マイクロピペットとは、使用者が指定した通りの液量を正確に吸引し、かつ正確に排出する機能を有する器具であり、生命科学をはじめとして、医学、薬学、生物学、農学および工学等、様々な分野の実験で日常的に用いられている。計量する液体をマイクロリットル単位で調整することが可能な手動式のマイクロピペットは1972年に開発され、それ以来半世紀以上に渡り利用され続けられているが、同マイクロピペットはロッド状のグリップ部を有していることから、一般にマイクロピペットと言えば、ロッド状のグリップ部を有し、極微量な計量の調整が可能な器具を指す。この為ロッド状のグリップ部を有する形状のマイクロピペットは今日世界中に広く普及しており、各分野の研究機関における実験従事者のほとんどは同形状のマイクロピペットを使用している。現在多数のマイクロピペットのメーカーが存在するが、各メーカーが製造する主要なマイクロピペットの形状は、多少の差異は認められるものの、前述のものとほぼ同様である。
【0011】
他にも例えばマイクロピペットのグリップ部分を直角に配置し、グリップ底部を平面にすることで、マイクロピペットが実験机上で自立できるユニークな形状の器具も存在するが、前述の形状のマイクロピペットと比較すると、利用者は少数である。
【0012】
マイクロピペットの改良は現在も続けられており、定量の正確さから、手動式ではなくデジタル式を採用したタイプや、人間工学に基づいたグリップの握り易さを求めたタイプ、長時間の作業の負担を軽減するために軽量化したタイプ等、様々な工夫を凝らした機種が考案されている。しかしながらその一方で、マイクロピペットを保持する器具や設置の手段については、マイクロピペット本体と比較して十分な検討がなされておらず、ユーザの使い勝手の観点から言えば、満足のいく製品や方法は未だ示されていない。
【0013】
また実験従事者は扱う液量の多寡に応じて大小のサイズのマイクロピペットを使い分けるが、不特定多数の者が同一のマイクロピペットを共有することで生じる、予期せぬマイクロピペット内部への汚染を避けるために、実験従事者は各人専用のピペットを使用することが一般的である。これらのことから、実験室の机上には常に複数種かつ複数本のマイクロピペットが存在しており、実験机上の多くのスペースをマイクロピペットが占有することになる。
【0014】
さらにマイクロピペットを実験で使用する際には、実験従事者は頻繁にマイクロピペット先端の使い捨てのピペットチップを新しいものと交換している。通常1つの実験過程においては複数の異なる液体や液状薬品が使用されるが、実験従事者は同一のマイクロピペットを用いてこれらを吸引・排出するため、異なる薬品を別の薬品に持ち込んで汚染させることは避けなければならない。他にも、もしピペットチップが実験机の作業平面等の滅菌されていない構造に触れてチップの先端が汚染された場合、そのまま使い続ければ取り扱う薬品に汚染物質を持ち込むことにより、薬品全体が汚染される。そのため、実験従事者はピペットチップを必ず新しいものと交換しなくてはならない。
【0015】
加えて実験従事者は通常複数の実験操作を同時並行して行うが、マイクロピペットを用いない別の操作を行う折には、一時的にマイクロピペットを手放すことが頻繁にある。この際マイクロピペットに取り付けたチップの先端が作業平面等の未滅菌の物体に触れて汚染されることを避けるため、マイクロピペットの置き方には注意が求められ、実験従事者は様々な工夫をこらしている。具体的には、例えば作業机の端に、または作業机上の例えば箱状の物体の上に、ロッド状のグリップ部分のみを静置し、チップ先端側は机上から空中に遊離させることで、チップ先端が汚染した物体に触れない様にする。この際チップ内の液体がマイクロピペット内に流入し、マイクロピペットの本体内部が汚染されることを回避するため、マイクロピペットの先端側を常に下方に向けることが求められる。しかしながらこれらの置き方は非常に不安定であって、もしマイクロピペットが落下した場合、マイクロピペット先端のチップの汚染のみならず、マイクロピペット本体の破損に繋がる可能性が高い。さらに言えば、マイクロピペットの破損に伴いピペットチップ内の薬品が飛散した場合、実験室は広範囲に薬品により汚染されると共に、実験従事者自身にも危険が及ぶ恐れがある。そのため、不安定なマイクロピペットの置き方を避けることが望まれる。
【0016】
一方、作業机に固定され、マイクロピペットを手放す際にマイクロピペットを一時的に静置することが可能な、据え置きタイプの構造が知られている。据え置きタイプの構造については、マイクロピペットを同構造が固定された位置にまで運ぶ必要があり、実験従事者の望む任意の場所にマイクロピペットを置くことはできない。また作業机上に同構造を固定すると、広く実験作業スペースを確保することはますます困難となる。さらに据え置きタイプの構造の利用目的はマイクロピペットを静置することのみであり、その目的を達成する為の構造は安価に作製可能であるはずだが、実際に入手可能な製品の販売価格は、その構造や機構に比して高額な印象を実験従事者は受ける。しかしながら現在まで代わりとなる方法や製品が存在しないことから、実験従事者は前述の様な不安定な置き方をするか、同製品を用いるか選ばざるを得ない。この事実は、製品の価格の大小が実験従事者の安全を左右することを示している。
【0017】
またマイクロピペットの不使用時においても、実験机上の多数のマイクロピペットを効率的に収納することが求められる。その為の構造としては、例えば円筒状の外周にマイクロピペットのホルダーが配置され、複数のマイクロピペットの保持が可能な、カルーセル様の形状を有する、据え置きタイプのピペットホルダーが知られている。しかしながら同ピペットホルダーに不使用時のマイクロピペットを収納した場合でも、ピペットホルダー自体の設置場所は実験机上であるため、本構造の使用により実験を行う際に利用できる実験作業スペースは狭くなる。また販売価格に関しても、マイクロピペットの収納というその限定された使用目的に比して、非常に高額な印象を実験従事者は受ける。
【0018】
そこで、本発明者は、マイクロピペットを一時的に保持できる保持構造であって、ユーザである実験従事者の使い勝手が向上した保持構造を検討した。具体的には、本発明者は、保持構造の姿勢を変更することにより、実験従事者の望む実験の邪魔にならない任意の場所に設置できる保持構造を検討した。本発明者は、実験従事者がマイクロピペットを使用している場合および使用していない場合の両方において、任意の場所に設置できる保持構造を検討した。
【0019】
さらに、マイクロピペットの先端に取り付けたピペットチップが実験机の作業平面等未滅菌の構造に触れてチップ先端が汚染することを避けられる保持構造を検討した。さらに、薬品のピペット内への逆流防止の為にピペット先端側を下方に向けたまま保持可能であり、ピペットの落下や転倒等を生じせず安定した状態でピペットを静置できる保持構造を検討した。
【0020】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係るマイクロピペット用保持構造(以降、保持構造20)について説明する。
図1は、本開示に係る実施の形態1の保持構造20を示す斜視図である。
図2は、保持構造20の側面図である。
図3は、保持構造20の平面図である。
【0021】
図1から
図3において、保持構造20は、自立した自立姿勢で図示される。自立姿勢における鉛直方向を高さ方向Zとし、高さ方向Zに直交する水平方向を前後方向Kと幅方向Lとする。前後方向Kの一方の向きを前側K1として、前側K1と反対の向きを後側K2とする。
【0022】
保持構造20は、マイクロピペット80(
図2)を保持する構造である。マイクロピペット80を支えるため、保持構造20をマイクロピペット用架台構造と称してもよい。保持構造20は、マイクロピペット80の先端81を作業平面S1から浮かせた状態でマイクロピペット80を保持する。マイクロピペット80の先端81は、交換可能なピペットチップで構成されてもよい。
【0023】
図1に示すように、保持構造20は、ベース部2と、保持部3と、接続部4とを備える。実施の形態1では、後述の係合部6を除き、ベース部2と、保持部3と、接続部4との全体は、例えばステンレス等の金属やプラスチック等の樹脂により、フレーム状の構造で構成することが可能である。このような構成によって、保持構造20の構造を単純化し、安価なものにすることができる。
【0024】
ベース部2は、自立姿勢において、作業平面S1に自立可能な部材である。ベース部2が作業平面S1上で自立することで、保持構造20全体が作業平面S1上で自立する。
【0025】
実施の形態1では、ベース部2は、例えばループ状に曲げられたフレームの部分で構成される。ベース部2のフレームは、幅方向Lの一方側の先端2Aから後側K2に延びて、湾曲して幅方向Lの他方側の先端2Aまで前側K1に延びる。
【0026】
ベース部2のフレームは、作業平面S1に沿って延びて、作業平面S1と接触するが、物体が安定するのは3点支持であることから、ベース部2は作業平面S1に対して少なくとも3つの接触点を有する。例えばこのような構造によって、作業平面S1に突起や段差が設けられている場合においても、ベース部2が板状である場合と比較して、作業平面S1上でベース部2を安定的に自立させることができる。しかしながら重心の位置が同じである場合、支持点が作る面積が大きいほうが、物体が安定することは明白である為、ベース部2の形状は板状であっても良い。また上記の理由から、作業平面S1に接触する保持構造20の形状は平面であってもよい。
【0027】
ベース部2のフレームは、後端部分において、ループ状に曲げられ環状部分9を有する。環状部分9は、内側に高さ方向Zに貫通した空間R1を画定する。例えば実験室内に設置されるクリーンベンチやドラフトチャンバーの内部における壁面に設けられたフックや突起等、作業平面S1とは別の構造物を環状部分9の後方突出部分の内側の空間R1に突出させる。別の構造物を空間R1に突出させることで、環状部分9を当該構造物に安定して引っ掛けることができる。そのため、環状部分9を引っ掛け部(第2引っ掛け部)と称してもよい。本構造により作業平面S1のような平面へのマイクロピペットの二次元的な設置のみならず、高さ方向Zに延びる壁面への三次元的な設置が可能となる。
【0028】
保持部3は、マイクロピペット80を保持および静置する部材である。保持部3は、ベース部2に対して高さ方向Zに離れて設けられている。そのため、保持部3は、マイクロピペット80をベース部2、即ち作業平面S1に対して高さ方向Zに離して保持できる。
【0029】
保持部3は、係合部6と、一対のアーム7とを有する。一対のアーム7は、係合部6を下方から保持する。
【0030】
図2に示すように、係合部6は、マイクロピペット80に係合可能な部分である。係合部6は、マイクロピペット80において、先端81とグリップ部82との間の接続部83と係合する。接続部83は、ピペットチップの交換の際に、使用済みのピペットチップをマイクロピペット80から脱離させるエジェクタで構成されてもよい。係合部6は、接続部83の周面を幅方向Lに挟んで、マイクロピペット80に係合する。
【0031】
係合部6がマイクロピペット80の接続部83と係合すると、マイクロピペット80の長手方向M(軸方向)は、保持構造20の前後方向Kに沿っている。
図3に示すように、高さ方向Zから見たときに、マイクロピペット80の長手方向Mは、前後方向Kと一致してもよい。マイクロピペット80においてグリップ部82から先端81に向かう向きは、前側K1の向きである。
【0032】
係合部6は、一対のアーム7の上部に固定される。一対のアーム7は、前後方向Kに沿って、係合部6よりも前側K1に突出するように延びる。一対のアーム7は幅方向Lに間隔G1を有し、間隔G1は前側K1に向かって漸増する。
【0033】
図2に戻って、自立姿勢において、一対のアーム7は、前側K1に向かって作業平面S1に近づくように傾斜している。一対のアーム7に固定された係合部6も、前側K1に向かって作業平面S1に近づくように傾斜している。そのため、保持部3は、グリップ部82から先端81に向かって下方に傾斜した状態でマイクロピペット80を保持できる。
【0034】
実施の形態1では、係合部6および一対のアーム7は、ベース部2よりも前側K1に突出するように設けられている。なお、高さ方向Zから見たときに、係合部6の一部または全部は、ベース部2と重なってもよい。
【0035】
接続部4は、ベース部2と保持部3とを高さ方向Zに接続する部材である。実施の形態1では、接続部4は、ベース部2の先端2Aから湾曲して保持部3に接続される。
【0036】
図2に示すように、幅方向Lから見たときに、接続部4は、後側K2に向かって窪んだ凹部5を画定する。突起や棒状部材等、作業平面S1とは別の構造物に凹部5を被せることで、凹部5を当該構造物に引っ掛けることができる。そのため、凹部5を引っ掛け部(第1引っ掛け部)と称してもよい。
【0037】
実施の形態1では、接続部4は、ベース部2を構成するフレームの部分と連続するフレームの部分によって構成される。保持部3のアーム7は、接続部4を構成する部分と連続するフレームの部分によって構成される。
【0038】
ここで、
図3を参照しながら、係合部6の構造についてより詳細に説明する。
【0039】
図3に示すように、係合部6は、幅方向Lに対向し、前後方向Kに沿って延びる一対の壁部6A、6Bを有する。壁部6A、6Bは、幅方向Lに間隔G2を有して配置される。マイクロピペット80が間隔G2内に配置されると、一対の壁部6A、6Bは、マイクロピペット80の外周面を幅方向Lから挟み、保持する。
【0040】
間隔G2は、高さ方向Zから見たときに、前側K1に向かって漸減し、テーパを形成する。そのため、先端81に向かって傾斜したマイクロピペット80を安定的に保持できる。
【0041】
実施の形態1では、一対の壁部6A、6Bは一体的に構成される。一対の壁部6A、6Bの下部が互いに接続され、前後方向Kから見たときに、係合部6は上向きに開口したU字形状を有する。なお、係合部6は、他の構造を有してもよく、上部が開放可能なクリップであってもよい。
【0042】
上述の構成を有する保持構造20は、
図2に示す自立姿勢と、
図4及び
図5に示す引っ掛け姿勢との間で姿勢を変えることができる。
図4は、第1引っ掛け姿勢における保持構造20の側面図である。
図5は、第2引っ掛け姿勢における保持構造20の側面図である。
【0043】
図2に示す自立姿勢は、保持構造20を、作業台やテーブル等の作業平面S1に載置して使用するための姿勢である。言い換えれば、自立姿勢は、保持構造20を自立させたスタンドとして使用するための姿勢である。実験従事者が利用中のマイクロピペット80をいったん手放す際に、自立姿勢の保持構造20により、水平に延びる作業平面S1のような平面に対してマイクロピペット80を二次元的に設置できる。
【0044】
自立姿勢では、保持構造20のベース部2は、作業平面S1に対して自立している。保持部3は、作業平面S1から高さ方向Zに離れて、水平に対して傾斜して延びる。即ち、係合部6は、水平に対して傾斜している。
【0045】
マイクロピペット80の接続部83が自立姿勢における係合部6と係合すると、マイクロピペット80は、作業平面S1の上方で、長手方向Mが水平に対して傾斜した状態で保持される。具体的には、マイクロピペット80は、先端81がグリップ部82よりも下方に傾斜した状態で保持される。一方で、マイクロピペット80の先端81は、作業平面S1から上方に離れている。
【0046】
自立姿勢における保持構造20に保持された状態において、接続部83の後側K2にはグリップ部82が位置する。係合部6の後側K2にはベース部2が位置する。そのため、グリップ部82に位置するマイクロピペット80の重心Cは、ベース部2の上方に位置する。このような配置関係によって、保持構造20は、マイクロピペット80を安定的に保持することができる。
【0047】
なお、係合部6およびベース部2の位置は、マイクロピペット80の重心Cが位置するグリップ部82の直下にあってもよいが、マイクロピペット80の形態と重心Cはメーカーおよび製品によりそれぞれ異なるため、これに限定されない。
【0048】
接続部83が係合部6と係合するため、グリップ部82には他の部材が係合しておらず、開放されている。そのため、実験従事者はグリップ部82を容易に把持して、マイクロピペット80を保持構造20と共に容易に持ち上げることができる。なお、実験従事者はマイクロピペット80を単独で持ち上げてもよい。また接続部83は、グリップ部82と比較して、異なるメーカーによる寸法の違いがあるものの、形状についてはほぼ同様であり、緩やかなテーパ状を呈する。そのため、係合部6のテーパ状の形状によって、異なるメーカーのマイクロピペットであっても保持することが可能となる。以上のことから、係合部6をマイクロピペット80の接続部83に係合させることは、様々なマイクロピペットを保持する上で合目的であり、ユニバーサルなデザインと言える。
【0049】
図4に示す第1引っ掛け姿勢は、保持構造20を、棚10の上に設置されて水平に延びる落下防止用のバー11等の棒状部材に引っ掛けて使用するための姿勢である。棚10とは例えば実験台上の実験棚を指して、バー11とは例えば実験棚におけるバーを指す。
【0050】
実験棚とは実験に利用する薬品等を収納するための棚であり、基本的には世界中の研究機関における実験室の実験台の上に、同一の規格のものが設置されている。なお実験棚が設置される実験台についても、基本的には全世界で同一の規格のものが用いられている。実験棚は実験従事者と対面になるよう実験台の中央に設置されるが、同時に実験棚には薬品等の落下を防止する目的で、棚板と水平に延びる直径1cmのステンレス製のバーが標準装備されている。
【0051】
従って言い換えれば、第1引っ掛け姿勢は、保持構造20を別の構造物に引っ掛けたホルダーとして3次元的にマイクロピペット80を静置または収納するための姿勢である。
【0052】
第1引っ掛け姿勢では、保持構造20の凹部5は、バー11に被さって、バー11に引っ掛けられており、バー11が凹部5内に位置する。ベース部2は、棚10から高さ方向Zに離れて、高さ方向Zに沿って延びて、実施形態では高さ方向Zに対して傾斜して延びる。保持部3は、バー11から下方に延びる。バー11の下方かつ前側には、棚10の前壁S2が位置する。保持部3は、棚10の前壁S2に当接する。保持部3の2つのアーム7が間隔G1を有するため、保持部3は、幅方向L(
図4の紙面方向)に離れた2点において棚10の前壁S2に当接する。保持部3と棚10との接触によって、バー11周りの保持構造20の回転が抑制され、マイクロピペット80を安定的に保持できる。
【0053】
第1引っ掛け姿勢における保持構造20に保持されたマイクロピペット80は、長手方向Mが高さ方向Zに沿うように保持される。マイクロピペット80の先端81は、棚10の前壁S2から離れている。
【0054】
図5に示す第2引っ掛け姿勢は、保持構造20を、鉛直方向に延びる壁S3から水平方向に突出したフック12等の突起に引っ掛けて使用するための姿勢である。言い換えれば、第2引っ掛け姿勢は、保持構造20を別の構造物に引っ掛けたホルダーとして使用するための姿勢である。壁S3は鉛直方向に延びる。
【0055】
第2引っ掛け姿勢では、保持構造20の環状部分9は、フック12に引っ掛けられている。言い換えれば、フック12が環状部分9の内側の空間R1に突出している。ベース部2は、フック12からぶら下がり、下方に延びる。ベース部2の先端2Aは、壁S3に当接する。ベース部2の先端2Aと壁S3との接触によって、マイクロピペット80の先端81が壁S3に接触することを抑制できる。
【0056】
なお、各構成の長さや角度を調整することで、アーム7の先端7A等、保持構造20の他の部分が壁S3に当接するようにしてもよい。保持構造20の他の部分がマイクロピペット80の先端81より先に壁S3に当接するようにすればよい。
【0057】
第2引っ掛け姿勢における保持構造20に保持されたマイクロピペット80は、長手方向Mが鉛直方向に沿うように保持される。マイクロピペット80の先端81は、壁S3から離れている。
【0058】
上述より、自立姿勢、第1引っ掛け姿勢、第2引っ掛け姿勢のそれぞれにおける保持構造20の姿勢、および保持構造20に保持されたマイクロピペット80の姿勢は異なる。なお、第1引っ掛け姿勢、第2引っ掛け姿勢における保持構造20の姿勢は同じであってもよい。
【0059】
なお、保持構造20はマイクロピペット80への脱着が容易な構造であるのに加え、保持構造20をマイクロピペット80に装着したまま、マイクロピペットの収納に広く利用される既存のカルーセル様の形状のピペットホルダーに、マイクロピペット80を収納することが可能である。
【0060】
[まとめ]
上記の説明をまとめて、本開示の特徴を述べる。
【0061】
実施の形態1に係る保持構造20は、自立姿勢と2つの引っ掛け姿勢との間で姿勢を変更することができる。保持構造20は、それぞれの姿勢においてマイクロピペット80を保持することができる。
【0062】
自立姿勢において、ベース部2を作業平面S1に自立させて、保持構造20をマイクロピペット80のスタンドとして使用できる。第1引っ掛け姿勢において、凹部5をバー11に引っ掛けて、保持構造20をマイクロピペット80のホルダーとして使用できる。第2引っ掛け姿勢において、環状部分9をフック12に引っ掛けて、第1引っ掛け姿勢とは異なる形態で、保持構造20をマイクロピペット80のホルダーとして使用できる。即ち保持構造20は、1つの構造で、マイクロピペット80のスタンド機能とホルダー機能との異なる機能を実現できる。
【0063】
なお、実施の形態1では、保持構造20が、2つの異なる引っ掛け姿勢を有する例について説明したが、これに限定されない。保持構造20は、凹部5または環状部分9の一方を有して、対応する1つの引っ掛け姿勢のみを有してもよい。
【0064】
異なる姿勢において、マイクロピペット80を安定的に保持できるように、係合部6は、前側K1に向かって間隔G2が狭くなる一対の壁部6A、6Bを有する。自立姿勢および引っ掛け姿勢において、重力が作用してマイクロピペット80が付勢される方向に間隔G2が狭くなるため、係合部6は、マイクロピペット80を強固に挟み込むことができる。
【0065】
すなわちマイクロピペット80がその自重により重力の作用する方向に移動すればするほど、係合部6はマイクロピペット80を強固に挟み込むため、より安定した保持が可能となる。
【0066】
[効果]
実施の形態1に係る保持構造20によれば、以下の効果を奏することができる。
【0067】
実施の形態1の保持構造20(マイクロピペット用保持構造)は、作業平面S1に自立可能なベース部2と、マイクロピペット80を保持および静置する保持部3と、ベース部2と保持部3を接続する接続部4と、別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備える。保持部3は、マイクロピペット80に係合可能な係合部6を有する。保持構造20は、ベース部2が自立した自立姿勢(第1姿勢)と、自立姿勢とは異なり、引っ掛け部を別の構造物に引っ掛けた引っ掛け姿勢(第2姿勢)との間で姿勢を変更可能である。
【0068】
このような構成によって、保持構造20の姿勢を、作業平面S1に対して自立した自立姿勢と、別の構造物に引っ掛かった引っ掛け姿勢との間で変更することができる。そのため、マイクロピペット80を使用する際の保持および設置について、実験従事者にとって保持構造20の使い勝手が向上する。また、保持構造20が単純な構造で構成されるため、安価に作製可能である。
【0069】
実施の形態1の保持構造20において、引っ掛け部は、少なくとも接続部4によって画定される第1引っ掛け部を有する。
【0070】
このような構成によって、接続部4を別の構造物に引っ掛けて、第1引っ掛け姿勢を実現できる。
【0071】
実施の形態1の保持構造20において、第1引っ掛け部は、接続部4が湾曲して画定する凹部5で構成される。
【0072】
このような構成によって、凹部5を別の構造物に引っ掛けて、第1引っ掛け姿勢を実現できる。
【0073】
実施の形態1の保持構造20において、別の構造物は、バー11(棒状部材)であって、バー11に凹部5を被せて第1引っ掛け部を引っ掛ける。
【0074】
このような構成によって、凹部5をバー11に被せて、第1引っ掛け姿勢を実現できる。
【0075】
実施の形態1の保持構造20において、引っ掛け部は、ベース部2に設けられた第2引っ掛け部を有する。
【0076】
このような構成によって、ベース部2を別の構造物に引っ掛けて、第2引っ掛け姿勢を実現できる。
【0077】
実施の形態1の保持構造20において、第2引っ掛け部は、ベース部2において、貫通した空間を画定する環状部分9で構成される。
【0078】
このような構成によって、環状部分9を別の構造物に引っ掛けて、第2引っ掛け姿勢を実現できる。
【0079】
実施の形態1の保持構造20において、別の構造物は、フック12(突起)であって、フック12を環状部分9内に突出させて第2引っ掛け部を引っ掛ける。
【0080】
このような構成によって、環状部分9内にフック12を突出させて、第2引っ掛け姿勢を実現できる。
【0081】
実施の形態1の保持構造20において、係合部6がマイクロピペット80と係合した状態で、自立姿勢での高さ方向Zから見たときに、前後方向Kはマイクロピペット80の長手方向Mと一致し、ベース部2はマイクロピペット80のグリップ部82の下方に位置する。
【0082】
このような構成によって、自立姿勢において、グリップ部82に位置するマイクロピペット80の重心Cをベース部2の上方に配置することが容易になる。そのため、自立姿勢において、マイクロピペット80を安定的に保持できる。
【0083】
実施の形態1の保持構造20において、係合部6は、マイクロピペット80の先端81とグリップ部82との間の接続部83(部分)と係合する。
【0084】
このような構成によって、係合部6が接続部83と係合することで、接続部83よりも外径が大きいグリップ部82と係合する場合と比較して、マイクロピペット80を安定的に保持できる。また、接続部83は、グリップ部82と比較して、異なるメーカーによる寸法の違いがあるものの、その形状はほぼ同様であり、緩やかなテーパ状を呈する。そのため、係合部6によって、異なるメーカーのマイクロピペットであっても保持することが可能となる。
【0085】
実施の形態1の保持構造20において、係合部6がマイクロピペット80と係合した状態で、マイクロピペット80の先端81は、グリップ部82よりも前側に位置する。自立姿勢において、係合部6は、前側K1に向かって作業平面S1に近づくように傾斜して配置される。
【0086】
このような構成によって、自立姿勢において、マイクロピペット80の先端81を下方に傾斜させた状態で保持および静置できる。そのため、マイクロピペット80内の逆流を抑制できる。
【0087】
実施の形態1の保持構造20において、係合部6は、マイクロピペット80の周面を高さ方向Zと交差する幅方向Lに挟む。
【0088】
このような構成によって、係合部6が高さ方向Zに開放されているため、高さ方向Zに沿ったマイクロピペット80の出し入れが容易になる。係合部6が筒状であって、マイクロピペット80を前後方向Kに出し入れする場合と比較して、マイクロピペット80の出し入れの手間が少なく、マイクロピペット80の先端81が係合部6に触れて汚染されるリスクが小さくなる。
【0089】
実施の形態1の保持構造20において、係合部6は、幅方向Lに間隔G2を有する一対の壁部6A、6B(部分)を有し、間隔G2は、前側K1に向かって小さくなる。
【0090】
このような構成によって、重力が作用してマイクロピペット80が付勢される向き(前側K1)に間隔G2が狭くなるため、係合部6からのマイクロピペット80の脱落を抑制できる。すなわちマイクロピペット80がその自重により重力の作用する方向に移動すればするほど、係合部6はマイクロピペット80を強固に挟み込むため、より安定した保持よび静置が可能となる。また、間隔G2が一定である場合と比較して、係合部6は、寸法の異なる接続部83を持つマイクロピペットであっても係合しやすくなる。
【0091】
実施の形態1の保持構造20において、保持部3は、前後方向Kに沿って係合部6よりも前側K1に延びる一対のアーム7をさらに有する。
【0092】
このような構成によって、第1引っ掛け姿勢において、アーム7をバー11が設けられた前壁S2に当てることができる。そのため、バー11周りでの保持構造20の回転を抑制できて、マイクロピペット80を安定的に保持および静置できる。また、アーム7が係合部6より前側K1に突出するため、係合部6が前壁S2に当たる前にアーム7を前壁S2に当てることができる。そのため、係合部6が前壁S2に当たってマイクロピペット80が係合部6から脱落するリスクが小さくなる。
【0093】
実施の形態1の保持構造20において、一対のアーム7の間隔G1は、前側K1に向かって大きくなる。
【0094】
このような構成によって、第1引っ掛け姿勢において、アーム7をより安定的に前壁S2に当てることができる。
【0095】
なお、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0096】
なお、実施の形態1では、引っ掛け部の例として凹部5や環状部分9について説明したが、これに限定されない。保持構造20は、引っ掛け部として、別の構造物に引っ掛けることができる他の構造を有してもよい。例えば、保持構造20は、引っ掛け部として、貫通孔を有してもよく、開口と係合可能な突起を有してもよい。
【0097】
なお、実施の形態1では、ベース部2がフレームで構成される例について説明したが、これに限定されない。ベース部2は、板状の部材であってもよい。この場合、ベース部2は、後端部分において、環状部分9の代わりに貫通孔を有してもよい。ベース部2は、トライポッド構造を有してもよい。
【0098】
なお、実施の形態1では、接続部4がベース部2の先端2Aに接続される例について説明したが、これに限定されない。例えば、変形例1および変形例2で示すように、接続部4は、先端2Aよりも後側K2の位置でベース部2に接続されてもよい。
【0099】
なお、実施の形態1では、自立姿勢においてベース部2が作業平面S1に沿っている例について説明したが、これに限定されない。例えば、変形例2に示すように、ベース部2は、作業平面から浮いている部分を有してもよい。
【0100】
なお、実施の形態1では、保持部3が係合部6と一対のアーム7とを有する例について説明したが、これに限定されない。保持部3は、接続部4が直接接続した係合部6のみを有してもよい。
【0101】
なお、実施の形態1では、係合部6の上部が開放されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、係合部6は筒状の部材であってもよい。
【0102】
(変形例1)
図6は、変形例1の保持構造30の側面図である。
図6に示すように、変形例1における保持構造30は、接続部34の構造において、実施の形態1に係る保持構造20と異なる。変形例1においては、実施の形態1と重複する説明を省略し、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付する。
【0103】
保持構造30の接続部34は、ベース部2の先端2Aよりも後側K2の位置P1から高さ方向Zに延びて、湾曲して保持部3に接続される。位置P1より前側K1に位置するベース部2の部分は、上方に位置する接続部34と対向する。
【0104】
接続部34は、ベース部2との間で後側K2に向かって窪んだ凹部35を画定する。凹部35は、接続部34と、接続部34と対向するベース部2の部分との間で画定される。作業平面S1とは別の突起や棒状部材等の構造物に凹部35を被せることで、凹部35を当該構造物に引っ掛けることができる。
【0105】
(変形例2)
図7は、変形例2の保持構造40の側面図である。
図7に示すように、変形例2における保持構造40は、ベース部42の構造において、実施の形態1に係る保持構造20と異なる。変形例2においては、実施の形態1と重複する説明を省略し、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付する。
【0106】
保持構造40のベース部42は、先端42Aと、後端42Bよりも前側K1の部分42Cとにおいて、作業平面S1と接触する。先端42Aと部分42Cとの間におけるベース部42は、作業平面S1から浮いている。
【0107】
保持構造40の保持部43は、マイクロピペット80の接続部83に沿った形状を有する。具体的には、保持部43のアーム47は、高さ方向Zに立ち上がって、前後方向Kに面した接続部83の端部を受ける段差47Bを有する。そのため、接続部83は、段差47Bに引っ掛かり、マイクロピペット80は、保持部43に安定的に保持される。
【0108】
なお、ベース部42の先端42Aは、保持部43よりも前側K1に位置してもよい。
【0109】
第1の態様におけるマイクロピペット用保持構造は、作業平面に自立可能なベース部と、マイクロピペットに係合可能な係合部を有し、マイクロピペットを保持および静置する保持部と、ベース部と保持部を接続する接続部と、別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備え、ベース部が自立した第1姿勢と、第1姿勢とは異なり、引っ掛け部を別の構造物に引っ掛けた第2姿勢との間で姿勢を変更可能である。
【0110】
第2の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第1の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、引っ掛け部は、少なくとも接続部によって画定される第1引っ掛け部を有する。
【0111】
第3の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第2の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、第1引っ掛け部は、接続部が湾曲して画定する凹部で構成される。
【0112】
第4の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第3の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、別の構造物は、棒状部材であって、棒状部材に凹部を被せて第1引っ掛け部を引っ掛ける。
【0113】
第5の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第1から第4の態様のいずれかにおけるマイクロピペット用保持構造において、引っ掛け部は、ベース部に設けられた第2引っ掛け部を有する。
【0114】
第6の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第5の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、第2引っ掛け部は、ベース部において、貫通した空間を画定する環状部分で構成される。
【0115】
第7の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第6の態様におけるマイクロピペット用保持構造において別の構造物は、突起であって、突起を環状部分内に突出させて第2引っ掛け部を引っ掛ける。
【0116】
第8の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第1から第7の態様のいずれかにおけるマイクロピペット用保持構造において、係合部がマイクロピペットと係合した状態で、第1姿勢での高さ方向から見たときに、前後方向はマイクロピペットの長手方向と一致し、ベース部はマイクロピペットのグリップ部の下方に位置する。
【0117】
第9の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第8の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、係合部は、マイクロピペットの先端とグリップ部との間の部分と係合する。
【0118】
第10の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第8または第9の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、係合部がマイクロピペットと係合した状態で、マイクロピペットの先端は、グリップ部よりも前側に位置し、第1姿勢において、係合部は、前側に向かって作業平面に近づくように傾斜して配置される。
【0119】
第11の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第8から第10の態様のいずれかにおけるマイクロピペット用保持構造において、係合部は、マイクロピペットの周面を高さ方向と交差する幅方向に挟む。
【0120】
第12の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第11の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、係合部は、幅方向に間隔を有する一対の部分を有し、間隔は、前側に向かって小さくなる。
【0121】
第13の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第8から第12の態様のいずれかにおけるマイクロピペット用保持構造において、保持部は、前後方向に沿って係合部よりも前側に延びる一対のアームをさらに有する。
【0122】
第14の態様におけるマイクロピペット用保持構造として、第13の態様におけるマイクロピペット用保持構造において、一対のアームの間隔は、前側に向かって大きくなる。
【0123】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示のマイクロピペット用保持構造は、実験従事者への安全を配慮しつつ、異なる姿勢でマイクロピペットを実験従事者が望む任意の場所に保持できる構造として有用である。
【符号の説明】
【0125】
2 ベース部
2A 先端
3 保持部
4 接続部
5 凹部
6 係合部
7 アーム
9 環状部分
20 保持構造
【要約】
【課題】マイクロピペットを使用する際の保持および設置について、ユーザの使い勝手が向上したマイクロピペット用保持構造を提供する。
【解決手段】本開示に係るマイクロピペット用保持構造は、作業平面に自立可能なベース部と、マイクロピペットに係合可能な係合部を有し、マイクロピペットを保持および静置する保持部と、ベース部と保持部を接続する接続部と、別の構造物に引っ掛け可能な引っ掛け部と、を備え、ベース部が自立した第1姿勢と、第1姿勢とは異なり、引っ掛け部を別の構造物に引っ掛けた第2姿勢との間で姿勢を変更可能である。
【選択図】
図1