(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】時計製造のためのインジケータデバイス、及びクロック
(51)【国際特許分類】
G04B 19/247 20060101AFI20241008BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G04B19/247 Z
G04B13/02 Z
(21)【出願番号】P 2021555075
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2020052790
(87)【国際公開番号】W WO2020201917
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】102019000004735
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521412618
【氏名又は名称】ラ ヴァレ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サッソ、ルチアーノ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-105783(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2813902(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計製造のためのインジケータデバイスであって、歯付き駆動ホイールと、前記歯付き駆動ホイールに連結された被駆動
プログラムホイールとを備え、
前記被駆動
プログラムホイールは、外歯および内歯を有する実質的に円形冠として構成され、
前記インジケータデバイスはさらに、前記被駆動
プログラムホイールの前記内歯とサイクロイドに係合する内部歯付きホイールを備えることにより、前記被駆動
プログラムホイール上に表示される情報は、前記内部歯付きホイールの位置と関連付けられ
前記被駆動プログラムホイールは、上歯の一帯を有し、前記上歯は、前記上歯が前記被駆動プログラムホイールの前記外歯の歯に対し位置揃えされる前進位置と、前記上歯が前記外歯に対し後退される後退位置との間で移動可能である、インジケータデバイス。
【請求項2】
前記移動可能な歯は、前記後退または前記前進の状態に戻るための弾性収縮手段に関連付けられる、請求項1に記載のインジケータデバイス。
【請求項3】
時計製造のためのインジケータデバイスであって、歯付き駆動ホイールと、前記歯付き駆動ホイールに連結された被駆動プログラムホイールとを備え、
前記被駆動プログラムホイールは、外歯および内歯を有する実質的に円形冠として構成され、
前記インジケータデバイスはさらに、前記被駆動プログラムホイールの前記内歯とサイクロイドに係合する内部歯付きホイールを備えることにより、前記被駆動プログラムホイール上に表示される情報は、前記内部歯付きホイールの位置と関連付けられ、
前記内部歯付きホイールは、前記被駆動
プログラムホイールに対し偏心
し、
前記内部歯付きホイールの偏心は、前記歯付き駆動ホイールおよび前記被駆動
プログラムホイールの回転中心を結ぶ直線沿いに向けられる、インジケータデバイス。
【請求項4】
時計製造のためのインジケータデバイスであって、歯付き駆動ホイールと、前記歯付き駆動ホイールに連結された被駆動プログラムホイールとを備え、
前記被駆動プログラムホイールは、外歯および内歯を有する実質的に円形冠として構成され、
前記インジケータデバイスはさらに、前記被駆動プログラムホイールの前記内歯とサイクロイドに係合する内部歯付きホイールを備えることにより、前記被駆動プログラムホイール上に表示される情報は、前記内部歯付きホイールの位置と関連付けられ、
前記歯付き駆動ホイールは、縦方向に低減された延伸を有する、または、いかなる場合においても前記歯付き駆動ホイール自体の厚みの一部にわたる複数の歯と、前記歯付き駆動ホイールの前記厚みにわたり延伸する少なくとも1つの完全歯とを有し、低減された延伸を持つ前記複数の歯は、予め定められた条件下において、前記被駆動
プログラムホイールと噛み合う、インジケータデバイス。
【請求項5】
時計製造のためのインジケータデバイスであって、歯付き駆動ホイールと、前記歯付き駆動ホイールに連結された被駆動プログラムホイールと、遊星ギアを備え、
前記被駆動プログラムホイールは、外歯および内歯を有する実質的に円形冠として構成され、
前記インジケータデバイスはさらに、前記被駆動プログラムホイールの前記内歯とサイクロイドに係合する内部歯付きホイールを備えることにより、前記被駆動プログラムホイール上に表示される情報は、前記内部歯付きホイールの位置と関連付けられ、
前記遊星ギアは、前記内部歯付きホイールの回転軸と同軸であるセントラルギアまたはピニオンと係合する、インジケータデバイス。
【請求項6】
前記遊星ギアは、前記被駆動
プログラムホイールの上歯の一帯において、前記上歯を、前記上歯が前記被駆動
プログラムホイールの前記外歯の歯に対し位置揃えされる前進位置と、前記上歯が同一の前記外歯に対し後退される後退位置との間で変位させるために動作するよう適合される、請求項
5に記載のインジケータデバイス。
【請求項7】
前記内部歯付きホイールは、前記被駆動
プログラムホイールに関連付けられた表示されるべき前記情報に応じて、予め定められた円周上の点に配置された複数の歯を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載のインジケータデバイス。
【請求項8】
前記被駆動
プログラムホイールの前記外歯は31個の歯を有する一方、前記
歯付き駆動ホイールは、24時間で一回転するよう適合される、請求項1から
7のいずれか一項に記載のインジケータデバイス。
【請求項9】
前記
歯付き駆動ホイールは、特定の円周セクタに限定された24歯タイプ(必ずしも24ではない)の歯を有する、請求項
8に記載のインジケータデバイス。
【請求項10】
万年暦を備えるクロックであって、請求項1から
9のいずれか一項に記載の少なくとも1つのデバイスが存在する、クロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明のより一般的な態様において、メカニカル部材、例えば特に時計製造の用途を意図したメカニズムのコンポーネントの制御に関する。
【0002】
冒頭において、本発明は、一般に時計製造のためを意図しており、従って本発明は、ウォッチ/クロックのサイズまたは形状は問わないため、携帯可能なウォッチまたは懐中時計並びに卓上時計、壁時計または任意の他の適用の両方に適用されることを特記する。
【0003】
さらに、本発明はメカニカル部材の制御に関するものであるが、もっぱらメカニカルクロック、すなわち手動または自動のばね荷重のクロックに限定されるものと解釈されるべきではなく、本発明はまた、クオーツまたは他のシステムによって制御されるメカニカル部材を有するクロックにも拡張されてよい。
【0004】
従って、本明細書および後続の特許請求の範囲において、一般に時計製造にまたはクロックの形態に言及がなされる場合、このことは限定的に理解されてはならず、ここで言及することはまた、サイズ、使用、作動に関し異なるクロックの他の実施形態にも拡張されてよい。
【0005】
知られているように、腕時計、卓上時計または壁時計には、ユーザに指標を提供するために周期的に作動される針に加えて、複数の部材が存在する。
【0006】
これは、例えば、データ(dater)、カレンダー、年鑑、干支のケースが当てはまるが、クロックの負荷レベルまたはタイムゾーン、タイムカウンタ等のインジケータといった他の機能のインジケータのケースも当てはまる。
【0007】
これらのインジケータは通常、エスケープメントを回転させるギアトレインに接続されたギアトレインによって作動されるメカニズムで形成される。
【0008】
これらのインジケータおよび関連する時計製造メカニズムに関する重要な様相は、それらの機能に従い、これらのインジケータおよび関連する時計製造メカニズムは、様々な指標(indication)を提供する可能性を有する必要があるということ、すなわち、それらは、異なる周期性のサイクルの組み合わせであるということである。
【0009】
典型的にこのことは、カレンダーの月の日のケースに当てはまり、そこでは、31日を有する月、30日を有する他の月、28日を有する他の月が存在し、そしてうるう年では29日ですらある。
【0010】
一部のメカニカルばね荷重クロック、とりわけ卓上時計または壁時計では、負荷レベルのインジケータも存在し、それはすなわち、クロックが停止することを防ぐべく、ばね荷重が切れる前にどのくらい残っているかをシグナリングして、ユーザにばねを始動させる必要があることを警告するシステムである。
【0011】
機能の数を増やすことで、克服されるべき困難さも増えることは明らかである。なぜならば、その動作のために特定のエネルギーを必要とするだけでなく(故に時間および分の針を作動させるためのエネルギーから減じられる)、摩擦および摩耗を低減するべく潤滑油も必要とするラチェット、レバートランスミッション、カム等の一連の非常に多くのメカニカル部材を作動させる必要があるからである。
【0012】
さらに、メカニズムの複雑さおよび/または数が増えると必然的に、クロックのサイズ並びにその組み立てコストおよび製造コストも増大する。
【0013】
この理由のため、上記の禁忌事項を持つカムメカニズム、ラチェットおよびばねの存在を低らすまたはなくすギアトレインおよびギアを含む、プログラムホイールとしても知られる永久メカニズムが過去に開発された。
【0014】
このタイプのメカニズムの例は、EP1 351 104の公開欧州特許出願に説明されている。
【0015】
それは、一連の遊星ギアトレインで形成されるメカニズムであり、そこでは、予め定められた数(この場合、一日の時間に対応する24個)の歯を持つ歯付きプログラムホイールが、カスケード式に駆動されるギアを制御し、ギアの一部は遊星タイプである。
【0016】
これらのギアの1または複数は、針および/または同心円盤若しくは同心リングに関連付けられており、後者は、日、月および年の指標(名前および/または数)を有する。実際には、ギアトレインが同心円盤の位置を変更して、特定の日、月、年に関するめいめいの指標を放射状配置にもたらし、その結果、放射状に延びるクロック針は、対応する総観情報を提供できる。
【0017】
このプログラムホイールを用いた解決策は、正確且つ信頼性のある万年暦を提供するにおいて効果的であるが、メカニズムを簡素化し、メカニズムのサイズを低減させるという観点では最適ではないようである。
【0018】
実際、ギアトレインの使用にはシステムの一定の機能的硬直性が必然的に伴う。なぜならば、ギアトレインは、固定の伝達比を有するコンポーネントであり、従って必要とされるカレンダー情報の各々のために対応するギアトレインが提供される必要があるからである。
【0019】
また、当該情報の表示のために、指標を読むための針を備えたダイアルを有する必要があり、コンポーネントの数が増えることによって、カレンダーの読み取りの迅速性を低減させる。理由はダイアルの同心円盤の運動によって依然として当該情報の総観表示を提供しており、これは常に正確なわけではないからである。
【0020】
換言すると、針は、週の日および月の日のため、月のため、並びに年のためのインジケータとして同時に動作する必要があり、これらは、ダイアル上で放射状に位置合わせされ、この情報の位置は経時的に変動し、従って、またそれらの位置合わせおよび結果的な読み取りは必然的に完全に正確ではない構成によって影響を受ける。
【0021】
従って、この状況に鑑み、本発明の根底にある技術的課題は、検討した技術水準に関し既に概説した制約を克服するための構造および動作の特性を備えた、プログラムホイールタイプの時計製造で利用可能なメカニカルデバイスを作成することである。
【0022】
換言すると、本発明の目的は、少なくとも部分的に、EP1 351 104で公知のプログラムホイールメカニズムを簡素化して、プログラムホイールのコンポーネント部品の低減を可能にし、引いては、このメカニズムを含む万年暦の製造を容易にすることである。
【0023】
この技術的課題を解決する思想は、少なくとも1つのサイクロイドサテライトギアを使用することにあり、サイクロイドサテライトギアは、予め定められた伝達比で、好ましくは、万年暦の例えば、週および/または月の日、または月、年等といったものの情報のコンテキスト表示と共に低減した運動を作動させることが可能である。
【0024】
本発明の特性は、本明細書に添付した特許請求の範囲により具体的に記載されている。
【0025】
これらの特性、それによりもたらされる結果および本発明により達成される効果は、以下に記載される本発明の好ましい非限定的実施形態の説明からより明らかとなろう。当該実施形態は、非限定的な例として提供される添付図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明によるメカニカルデバイスの斜視図を示す。
【
図2】それぞれの動作条件における前のデバイスの背面図を示す。
【
図3】それぞれの動作条件における前のデバイスの背面図を示す。
【0027】
上記の図面について、これら図面は、全体として参照符号Dで示される、本発明によるプログラムホイールを持つ万年暦メカニズムを示す。
【0028】
特に、理解され得るように簡素化および明確性のために、設けられることが意図されるメカニズムおよびクロックの残部に対し、図面は必要な要素のみを示し、あるいは、いずれの場合においても本発明の理解に有用な要素を示す。上記公開EP1351104に説明されているものを含め、本技術分野で一般に知られているものについて言及がなされ得る。
【0029】
従って、当業者は、以下に説明される内容に基づき、可能性として、当業者の一般的技術ノウハウに属する情報の寄与と併せて本発明を実施可能である。
【0030】
一般的見地から、時計製造のためのメカニカルデバイスDの動作は、偏心タイプ1のギアのサイクロイド運動に基づくということが言える。偏心タイプ1のギアのおかげで、デバイスDは、万年暦の典型的機能を実行可能であり、すなわち、年の月の異なる長さ(28、30および31日)およびうるう年の2月の長さ(29日)の差を考慮する。
【0031】
デバイスDは、コンポーネント自体に直接情報を表示させることを可能にする。例えば、
図4には、うるう年の2月28日が表示されている。特に、日付の数字(28)が、2つの歯付きホイールまたはギア2および3の回転中心を結ぶ垂直方向(
図4に対する)の直線上に示される。
【0032】
他方、月の名前は、数字1の下方の地点または参照符号23の箇所に位置するもの(この例では2月)であり、これに対し、うるう年の指標は、ウィンドウ24内に視認可能なものであり、そこでは、文字Lが"うるう年(Leap Year)"を表わす(言語、慣習、クロックサイズおよびその他あらゆることに応じ、最も適切に指標を提供するために他のシンボルおよび/または文字が用いられてよいことは明らかである)。
【0033】
前述の通り、デバイスまたはぜんまいメカニズムDは、互いに噛み合う被駆動ホイールまたはギア2およびモータホイールまたはギア3を有し、前者はプログラムホイール機能の実行に寄与する一方、二番目のものは、クロックのエスケープメントからの運動トルクまたは駆動トルクを受け取り、これ自体は公知であるので、図面に図示していない。プログラム可能なシステムは、ギア1,2,4,5,6および7で構成される。
【0034】
特に、モータギア3は、24歯の歯車であり、簡潔さのため、そのうち7個のみが図面に示されている。モータギアは、1日当たり、すなわち24時間で1サイクル回る。
【0035】
実際、ホイール2は、外歯20および内歯21を備えた円形歯冠であり、図面に示される好ましい実施形態によると、外歯20は31個の歯(1月の日のように)を有する一方、内歯21は26個の歯を有する。
【0036】
外歯20は以下により良く示されるように、駆動ホイール3と噛み合う一方、内歯21は内部ホイール1により係合される。内部ホイール1は、ホイール2の軸に対し、固定の偏心回転軸を有し、偏心"2e"は、ホイール2および3の回転軸を結ぶ直線Y沿いである。
【0037】
偏心ホイール1は、ホイール2の歯冠の内歯21に対するハイポサイクロイド回転運動を有し、好ましい実施形態によると、偏心ホイール1は、24歯のギアから得られ、図面中において、そのうち18個が除去され、6個のみが1a、1b、1c、1d、1e、1fのように視認可能に残されている。
【0038】
これらの歯1a~1fは、ホイール2の内歯21(26個の歯)と噛み合い、この伝達比では、ホイール2の各周期において、偏心ギア1は、ホイール2に対し2つの歯分前進する。
【0039】
ホイール2の外歯20は、より低位の31全歯(月の日を表わす)、および、ホイール2の上面に配置された参照符号4、5、6で示されるより高位の3つの他のすべり歯を有する。
【0040】
このように形成されたギアトレインは、駆動ホイール3(図に不図示の時間のギアトレインに接続された。時間のギアトレインから駆動ホイールはその運動を得る)によって作動され、駆動ホイール3は24個の歯(必ずしも24個である必要はないが)を有するように設計されており、そのうち連続する7個の歯9、10、11、12、13、14、15のみが示され、駆動ホイール3は24時間で一周する。7個の歯9、10、11、12、13、14、15のうち、中央の歯9のみが完全であり、すなわち、この歯はギア3のバンドの厚みに等しい厚みを有する一方、他の歯10、11、12、13、14、15は、ギア自体の厚みの半分のみ、またはいかなる場合においても、当該厚みの一部にわたり延伸する。
【0041】
さらに、見てわかるように、歯9はその他の歯に対し中央の位置にあり、歯9は駆動ホイール3の回転方向(図面に矢印で示される)において歯10、11、12よりも先行する一方、歯9は残りの歯13、14、15に後行する。
【0042】
上記歯10~12および13~15は、ホイール上のすべり歯4、5、6と同じ高さに位置付けられている。ホイール2上のガイドされる後者の3つは、駆動ホイール3の歯9~12と、それらが外側に押されるときにのみ噛み合い、図示される例において、弾性収縮手段(ここに表されない)によって正常に後退位置に戻される。
【0043】
これらの伸縮手段(図示される例における)は、ばね17で構成され、それぞれは、歯4、5、6の内部に収容され、ホイール2の内歯21の箇所において半径方向に突出する。
【0044】
ガイドシステムと一体化されたこれらの歯は異なるように設計されて、ばねの使用をなくしてよい。説明の簡素化のために限り、図示される構成を示すことが選択された。
【0045】
万年暦デバイスDはさらに、8歯の遊星ギア7を有し、そのうち3つのみが完全であり、すなわち3つは完全なインボリュートプロファイルを有し、遊星ギアは、偏心ホイール1上で旋回され、遊星ギア7は、10歯のセントラルギアまたはピニオン8と係合し、当該ピニオンは、ハイポサイクロイドホイール1の回転の偏心軸と同軸である。
【0046】
本発明による万年暦デバイスDの動作は、以下のように行われる。
【0047】
一日に一回、駆動ホイール3の一循環が完了すると、歯9がホイール2と噛み合い、ホイール2を1歯分前進させ、これは、カレンダーの観点から見た1日の前進に等しい。このようにして、ホイール2は、月の最大長を考慮して31日で一回転する。
【0048】
しかしながら、デバイスが、30日の長さを有する年の月のうちの1つ(例えば、4月、6月、9月または11月)を表わす必要がある場合、駆動ホイール3の歯の通過時に、ホイール2は2歯分(すなわち2日)前進可能である必要がある。すなわち、ホイール2は、30日を表わす歯から、1日を表わす歯へと直接通過する必要がある。
【0049】
本発明による万年暦デバイスDにおいては、これは、偏心ホイール1のサイクロイド運動のおかげで可能となり、偏心ホイール1は、プログラムホイール2の内歯21と噛み合うその6個の歯のうちの1つが、ホイール2の回転方向(
図3および4において時計回り)において遭遇する後者の1番目のすべり歯4を外側に押し出すことを可能にする。
【0050】
このようにして、すべり歯4は、駆動ホイール3の中央の完全歯9に隣接する歯10と噛み合って、被駆動ホイール2を、2歯分前進させることで、歯30から歯1への通過を作動させる。これは、一年に4回、正確には4月、6月、9月および11月の月において生じる。
【0051】
今度は特定のケースである2月の月(
図3)についてであるが、そこでは、歯(日)28から歯(日)1への通過、すなわち4歯の前進がなされる。これは、サテライトギア7の運動とホイール1のサイクロイド運動の組み合わせのおかげで可能になる。
【0052】
実際、サテライトギア7は、8個の歯を有し、そのうち71、72、73として示される3つのみが完全であり、それらはそれぞれ、2月の月が28日の長さである通常のまたはうるう年ではない年(すなわち365日)に対応する1、2および3の数字を有する。歯71、72、73を用いて、移動可能な歯のうち3番目の歯6を外側に押して、歯6を駆動ホイール3と噛み合わうようにさせる。
【0053】
一年に一回、偏心ホイール1の2つの隣接する歯が、プログラムホイール2の歯4および5と噛み合い、それらを外側へ押す。
【0054】
この状況下で、同時に、サテライトホイール7の1つの完全歯が、すべり歯6を外側へ押す。
【0055】
このようにして、ホイール3の完全歯9が、ホイール2を、歯28(同日に対応)から歯(日)29へと押す間に、歯10、11、12とそれぞれ噛み合う歯6、5および4が、被駆動ホイール2を3つの位置分、前進させる。故に、得られる全体的な変位は、2月28日から3月1日への4歯分(すなわち日)である。
【0056】
年がうるう年である場合は、2月29日に、サテライトホイール7は歯L(Leap(うるう年)の略語)を表わし、歯Lは先端を有さず、歯6を外側に押さない。このようにして、駆動ホイール3は、ホイール2を、2月29日から3月1日までの通過に対応する3歯分のみ前進させる。
【0057】
この目的のため、他の2つの歯4および5とは異なり、移動可能な歯6はレバーアーム6a上に形成されることが好ましく、レバーアーム6aはカムとして動作して、遊星ギア7が完全一周に対応する位置(
図2)、すなわち4年ごと、に到達したとき、歯6を半径方向の外側に押すことが可能となることに留意されたい。
【0058】
これは実際、ピニオン8の周りのサテライトギア7の回転周囲であり、この目的のため、後者は偏心ホイール1と同軸の位置に、ホイール2からピニオンに対し半径方向に延在するアーム19によって支持されている。有利には、アーム19の終端は、ピニオン8の上面から突出するペグ8aが係合する溝19aを有し、その結果、ホイールの回転をピニオン8に伝達するグリフメカニズムを実質的に形成する。
【0059】
溝19aは、回転中の、回転の偏心によって生じるアーム19とピニオン8との間の相対運動を補償することを可能にし、第1にプログラムホイール2と一体化され、第2にプログラムホイール2に対し偏心するハイポサイクロイドホイール1と一体化される。
【0060】
偏心ホイール1を覆うブリッジとして構成されるアーム19は、その下を遊星ギア7が通過することを可能にする。
【0061】
ここまで説明したことから、本発明によるデバイスDが、根底にある技術的課題を解決可能であることが理解可能である。
【0062】
実際、本発明が事実上どのように駆動ホイール3および被駆動ホイール2を備えるギアトレインで構成されるかの理解は難しくなく、駆動ホイール2に偏心ホイール1が内部的に関連付けられている。これら3つの主要コンポーネントおよびピニオン8と遊星ギア7の追加をもって、限定数の部品を持つコンパクトなサイズの万年暦を得ることが可能であることが導かれ、従って当該万年歴は、卓上時計または壁時計に加え腕時計に使用可能である。
【0063】
実際、歯4、5、6は、コンプライアントメカニズムのコンセプトを用いて、ホイール2の本体と一体化されてよい。
【0064】
本発明によるデバイスにより得られるさらなる結果は、本発明は、日、月またはうるう年を示すための追加の針または円盤を必要とせず、その代わりに、本発明は、情報の即時表示を可能とし、従ってより読みやすくするという点である。
【0065】
実際、わかるように、日および月の指標は、偏心ホイール1のホイール2に対する位置から直接導びき出される一方で、年の指標は、偏心ホイールに関連付けられた遊星ギア7の運動によりもたらされる間接的な導出である。可能な好ましい実施形態により、月はハイポサイクロイドホイール1上に示される。
【0066】
さらにより好ましくは、この指標は、タグ、プレート、カバーまたは表面25上に報告されてよく、また、ホイール1の、ギア7およびピニオン8が配置される側に対する反対側に全体的または部分的に透明に適用されてもよい。この表面はまた1または複数の開口部24を有してもよく、当該開口部を通して、対応する情報、例えば
図4に表示されるケースでは年が表示されてよいが、またそれ以外でもよい。
【0067】
この原理は、時計製造において使用可能な、週の日、月相、十二宮シンボルまたは色若しくはその他といったすべての指標により広範且つ一般的に適用されてよいことをまた強調すべきである。このような場合、被駆動ホイール1および2上にも必要な指標を表示することが可能であり、または、追加のギアを制御すべく、そこに示される7個の歯9~15を用いることも可能である。
【0068】
この文脈において、本発明の根底にある顕在化される原理を用いて、例えばクロックの負荷レベル等、クロックの他の機能も示してよいことに留意されたい。
【0069】
負荷レベルは、例えば、英数字(例えば、1/4、1/2、3/4若しくは完全を表わすP、中間を表わすMおよび低を表わすBまたは同様のもの)を用いて、または色(例えば、緑、黄、赤)、組み合わせた解決策およびあらゆるものと共に、様々なタイプのインデックスを用いて表示されてよい。
【0070】
このように創出されたデバイスDは、いかなる場合においても、本技術分野で知られるコンポーネントと比較して限られた数のコンポーネントを有する信頼性のあるものであり、本質的に歯の結合は形状タイプのものであり、強い摩擦を生じさせないので、潤滑油を必要としない。
【0071】
この目的のために、図面に示されるギアの歯側のプロファイルは、円周におけるインボリュートタイプであり、このことが、摩擦を低減させることでトルク伝達を促進することに留意されたい。しかしながら、例えば偏心ホイール1に他のプロファイルが使用されてよく、偏心ホイール1の歯はプロファイルにおいてサイクロイドであり得る。しかしながら、すべてのこれらの変形例は、以降の特許請求の範囲に属する。