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  • 特許-研磨パッド及び研磨加工物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20241008BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20241008BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20241008BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241008BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241008BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20241008BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B49/04 Z
B24B37/24 Z
B24B49/16
H01L21/304 622F
H01L21/304 622S
C08G18/10
C08K3/01
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019179507
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053747
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 立馬
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】鳴島 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0255521(US,A1)
【文献】特開2004-345018(JP,A)
【文献】特開2012-223875(JP,A)
【文献】特開2005-277130(JP,A)
【文献】特表2005-517290(JP,A)
【文献】特表2017-519649(JP,A)
【文献】特許第5810802(JP,B2)
【文献】特許第6315246(JP,B2)
【文献】特許第5361299(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 37/24
B24B 49/04
H01L 21/304
C08G 18/10
C08K 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層と、該研磨層上に積層された基材層と、を有し、
前記基材層が、磁性体粒子を含み、
前記磁性体粒子の含有量が、前記基材層の総量に対して、0.01~30重量%であり、
前記磁性体粒子が、軟磁性体である、
渦電流式終点検出用の研磨パッド。
【請求項2】
前記研磨層は、磁性体粒子を含まない、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記磁性体粒子が、ソフトフェライト、パーマロイ、ケイ素鋼、からなる群より選ばれる少なくとも一種である、
請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、該研磨中に渦電流方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及び研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、絶縁膜成膜後の平坦化や金属配線の形成過程で化学機械研磨(CMP)が使用される。化学機械研磨に要求される重要な技術の一つとして、研磨プロセスが完了したかどうかを検出する研磨終点検出がある。例えば、目標とする研磨終点に対する過研磨や研磨不足は製品不良に直結する。そのため、化学機械研磨では、研磨終点検出により研磨量を厳しく管理する必要がある。
【0003】
化学機械研磨は複雑なプロセスであり、研磨装置の運転状態や消耗品(スラリー、研磨パッド、ドレッサー等)の品質や研磨過程における経時的な状態のばらつきの影響によって、研磨速度(研磨レート)が変化する。さらに、近年半導体製造工程で求められる残膜厚の精度、面内均一性はますます厳しくなっている。このような事情から、十分な精度の研磨終点検出はより困難となってきている。
【0004】
研磨終点検出の主な方法としては、光学式終点検出方式、トルク終点検出方式、渦電流終点検出方式などが知られている。
【0005】
光学式終点検出方式では、研磨パッド上に設けた透明な窓部材を通してウエハに光を照射し、反射光をモニタすることで終点検出を行う。しかしながら、研磨中に窓部材周辺からスラリーが漏れることがあり、それによって検出精度が低下する可能性がある。また、研磨パッド上に材料・物性の異なる窓部材を設ける必要があるため、窓部材を設けた部分において研磨が不均一となるなどの問題がある。
【0006】
また、渦電流終点検出方式では、磁力線が導電性の膜を通過する際にウエハ面上の導電性の膜に発生する渦電流を用いて終点検出を行う。このような渦電流終点検出方式に用いられる研磨パッドとしては、駆動及び感知コイルに対応するように研磨層の裏面にくぼみを設けた研磨パッドや(特許文献1)、研磨体中に研磨体と異なる材料で形成され研磨体裏面に対して後退された終点検出領域を備える研磨パッドが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2005-533667号公報
【文献】特表2013-539233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1や2に開示される研磨パッドは、いずれも膜厚検出センサ(コイル)に対応する箇所(以下、「終点検出領域」ともいう。)にくぼみを有したり、後退された部分を備えたりする。そのため、終点検出領域において被研磨物に係る研磨圧と終点検出領域以外の研磨面において被研磨物に係る研磨圧とが異なり、研磨の面内均一性が損なわれるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の発明は研磨層と別部材の終点検出領域を設けるため、その別部材周辺からスラリーが漏れることがあり、それによって検出精度が低下する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、適切な研磨性能を維持しつつ精度の高い渦電流式終点検出に用いることが可能な研磨パッド、及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、磁性体粒子を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
研磨層と、該研磨層上に積層された基材層と、を有し、
前記基材層が、磁性体粒子を含む、
研磨パッド。
〔2〕
前記研磨層は、磁性体粒子を含まない
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
前記磁性体粒子の含有量が、前記基材層の総量に対して、0.01~30重量%である、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
前記磁性体粒子が、軟磁性体である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔5〕
前記磁性体粒子が、ソフトフェライト、パーマロイ、ケイ素鋼、からなる群より選ばれる少なくとも一種である、
〔4〕に記載の研磨パッド。
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、該研磨中に終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、適切な研磨性能を維持しつつ精度の高い渦電流式終点検出に用いることが可能な研磨パッド、及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の研磨パッドの概略断面図である。
図2】CMPに搭載する膜厚制御システムを示す概略図である。
図3】渦電流方式の終点検出の測定原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0016】
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、研磨層と、該研磨層上に積層された基材層と、を有し、前記基材層が、磁性体粒子を含む。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、終点検出領域も他の箇所と同様の厚みの研磨層11と基材層12を備える。そのため、例えば、くぼみや後退部を用いるような場合と比較して、研磨の面内均一性の確保やスラリーの漏れの抑制など所望の研磨性能を維持することが可能となり、適切な研磨性能を維持しつつ精度の高い渦電流式終点検出に用いることが可能な研磨パッドを提供することができる。以下、詳細な構成について、説明する。
【0018】
〔研磨層〕
研磨層11は、被研磨物を研磨する研磨面11aを備える。研磨層の構成は、特に制限されないが、例えば、樹脂の発泡成形体、樹脂の無発泡成形体、樹脂含侵基材などが挙げられる。
【0019】
ここで、樹脂の発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は、特に制限されないが、例えば、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡、あるいは、各気泡が部分的に連結した連続気泡などが挙げられる。
【0020】
また、樹脂の無発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される無発泡体をいう。無発泡体とは、上記のような気泡を有しないものをいう。本実施形態においては、フィルムなどの基材の上に、硬化性組成物を付着させて硬化させたようなものも樹脂の無発泡成形体に含まれる。より具体的には、ラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等により形成された樹脂硬化物も樹脂の無発泡成形体に含まれる。
【0021】
さらに、樹脂含侵基材とは、繊維基材に樹脂を含浸させて得られるものをいう。ここで、繊維基材としては、特に制限されないが、例えば、織布、不織布、編地などが挙げられる。
【0022】
(樹脂)
研磨層を構成する上記樹脂としては、湿式凝固可能な樹脂、乾式凝固可能な樹脂、その他硬化性樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ここで、「湿式凝固」とは、樹脂を溶解させた樹脂溶液を繊維基材に含浸し、これを凝固液(樹脂に対して貧溶媒である水等。)の槽に浸漬することにより、含浸した樹脂溶液中の樹脂を凝固再生させる方法をいう。また、樹脂を溶解させた樹脂溶液をフィルムなどに塗布し、これを凝固液の槽に浸漬することにより、繊維基材を含まない樹脂の成形体を得てもよい。この湿式凝固では、樹脂溶液中の溶媒と凝固液とが置換されることにより樹脂溶液中の樹脂が凝集して凝固される。なお、樹脂が凝集凝固した部分以外の箇所には、気泡が形成される。形成される気泡の形状は、特に制限されないが、主に涙形状のものとなりやすい。
【0024】
また、「乾式凝固」とは、プレポリマーと硬化剤とを含む液を繊維基材に含侵し、プレポリマーと硬化剤を反応させて樹脂を形成させる方法をいう。また、プレポリマーと硬化剤とを含む液をフィルムなどに塗布し、プレポリマーと硬化剤を反応させて繊維基材を含まない樹脂の成形体を得てもよい。この湿式凝固では、プレポリマーと硬化剤との反応によって気体が発生する場合や発泡剤等を用いる場合には発泡体が得られ、それ以外の場合には、無発泡体が得られる。なお、発泡形状は特に制限されないが、主に球状や略球状のものとなりやすい。
【0025】
以下、各樹脂の具体例について例示するが、本実施形態の研磨層を構成する樹脂は以下に限定されるものではない。
【0026】
湿式凝固可能な樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系樹脂;ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0027】
このなかでも、ポリウレタン系樹脂を含むことが好ましい。ポリウレタン系樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。このような樹脂を用いることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。
【0028】
乾式凝固可能な樹脂を構成するプレポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物;2,4-トリレンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの付加物;トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物;トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;及びイソシアヌル酸とヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物が挙げられる。プレポリマーは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
乾式凝固可能な樹脂を構成する硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[3-(イソプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルペンチルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス(3,5-ジアミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6-ジアミノ-4-メチルフェノール、トリメチルエチレンビス-4-アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド-ジ-p-アミノベンゾネート等のアミン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びトリメチロールメタン等の多価アルコール化合物が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
その他硬化性樹脂を構成する組成物としては、特に制限されないが、例えば、光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性組成物、熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂、2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性組成物であってもよい。また、硬化性組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤を含んでもよい。
【0031】
上記重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2'-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
【0033】
上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0034】
上記UV硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが挙げられ、アクリル(メタクリル)系エステルやそのウレタン変性物、チオコール系化合物等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。
【0035】
また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができる。
【0036】
研磨層は直接被研磨物と接触するため、特に半導体の研磨においては、磁性体粒子が半導体に悪影響を与える恐れがあるため、磁性体粒子を含めない方が好ましい。
【0037】
〔基材層〕
本実施形態の研磨パッドは、研磨層の研磨面とは反対側に基材層を有する。基材層を有することにより、被研磨物への追従性がより向上する他、被研磨物への研磨圧の均一性もより向上する傾向にある。
【0038】
基材層としては、特に制限されないが、例えば、樹脂を含浸してなる含浸不織布や樹脂発泡体などが挙げられる。含浸不織布としてはポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系等の不織布に、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系、アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系、ポリアミド系及びポリスチレン系などの樹脂を含浸したものが挙げられる。樹脂発泡体としては、ポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、ポリスチレン系発泡体、フェノール系発泡体、合成ゴム系発泡体、シリコーンゴム系発泡体などが挙げられる。
【0039】
(磁性体粒子)
基材層は、磁性体粒子を含む。磁性体粒子としては、特に制限されないが、例えば、保磁力が小さく透磁率が大きい軟磁性体、保磁力が大きい硬磁性体、磁界をかけると電気抵抗が変化する磁気抵抗体などが挙げられる。このなかでも、ソフトフェライト、パーマロイ、ケイ素鋼、等の軟磁性体が好ましい。このような磁性体粒子を用いることにより、渦電流式終点検出の精度がより向上する傾向にある。研磨層と異なり、基材層は被研磨物と直接接触しないので、磁性体粒子を含めても研磨に悪影響を与える可能性が低い。
【0040】
磁性体粒子の含有量は、基材層の総量に対して、好ましくは0.01~30重量%であり、より好ましくは0.05~20重量%であり、さらに好ましくは0.1~10重量%である。磁性体粒子の含有量が上記範囲内であることにより、渦電流式終点検出の精度がより向上する傾向にある。また、磁性体粒子の平均粒子径は、好ましくは3.5~200μmであり、より好ましくは5~150μmであり、さらに好ましくは10~100μmである。
【0041】
〔研磨パッドの製造方法〕
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、研磨層と基材層とを貼り合わせる方法や、基材層上に研磨層を形成する方法など、公知の方法が挙げられる。
【0042】
研磨層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記湿式凝固法、上記乾式凝固法、または硬化性樹脂を硬化させる方法などが挙げられる。
【0043】
基材層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記各発泡体を公知の方法により形成する方法が挙げられる。なお、本実施形態において基材層に磁性体粒子を含ませる場合には、発泡体を形成する段階で、発泡体のマトリックス樹脂に磁性体粒子を混合することができる。
【0044】
〔研磨加工物の製造方法〕
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、該研磨中に終点検出を行う終点検出工程と、を有する。
【0045】
〔研磨工程〕
研磨工程は、一次ラッピング研磨(粗ラッピング)であってもよく、二次ラッピング(仕上げラッピング)であってもよく、一次ポリッシング(粗ポリッシング)であってもよく、二次ポリッシング(仕上げポリッシング)であってもよく、これら研磨を兼ねるものであってもよい。なお、ここで、「ラッピング」とは粗砥粒を用いて比較的に高いレートで研磨することを言い、「ポリッシング」とは微細砥粒を用いて比較的に低いレートで表面品位を高くするために研磨することを言う。
【0046】
このなかでも、本実施形態の研磨パッドは化学機械研磨に用いられることが好ましい。以下、化学機械研磨を例に本実施形態の研磨物の製造方法を説明するが、本実施形態の研磨物の製造方法は以下に限定されない。
【0047】
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラス、ハードディスクやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。特に、W(タングステン)やCu(銅)などの金属配線を有する半導体デバイスが挙げられる。
【0048】
研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、まず、研磨パッドと対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面側へ押し付けると共に、外部からスラリーを供給しながら、研磨パッド及び/又は保持定盤を回転させる。研磨パッドと保持定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転しても、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0049】
スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤などの化学成分、添加剤、砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al23、CeO2)等を含んでいてもよい。
【0050】
〔終点検出工程〕
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、上記研磨工程において、渦電流方式で終点検出を行う終点検出工程を有する。渦電流方式による終点検出方法としては、具体的には従来公知の方法を用いることができる。図2に、渦電流方式の終点検出方法の模式図を示す。この模式図は、トップリング21で保持したウエハWをテーブル22上に貼られた研磨パッド10上にスラリー(不図示)を流しながら押し付けてウエハW表面の凹凸膜を削り平坦化する化学機械研磨プロセスを示す。研磨装置20は平坦化と同時に所定の膜厚を終点検出して精度良くプロセスを終了させるため、膜厚をモニタする膜厚検出センサ23をテーブル22に搭載している。モニタする膜には、金属膜と絶縁膜があり、金属膜検出用に渦電流方式の膜厚検出センサ23が搭載されている。
【0051】
図3に示すようにテーブル22のウエハW中心を通過する位置に設けられた膜厚検出センサ23から、テーブル22を貫く方向に磁力線H1が発生しており、ウエハW上に導電性の膜W1が存在すると、磁力線が導電性の膜W1を通過する際にウエハW面上に渦電流Cが発生する。渦電流が流れると膜厚検出センサ23からの磁力線と逆方向の磁力線H2が発生する。渦電流は、金属膜W1の厚さによって抵抗が変化するため、この逆方向の磁力線H2の強度を測ることで、研磨中の金属膜W1の厚さを特定することができ、終点検出を行うことができる。
【0052】
渦電流方式により測定可能な膜は、Cu、Wなどの金属膜である。図3に、渦電流の発生イメージを示す。ウエハWの研磨が進行すると、ウエハW面上の金属膜W1が減少する。これに伴って渦電流式センサ23の出力が変化することで膜厚変化量を測定し、金属膜W1を完全に除去した終点を検出しているのが確認できる。
【実施例
【0053】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
(研磨層Aの作製)
2,4-トリレンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの付加物を含むプレポリマーに、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを加え、硬化させることで研磨層Aを形成した。
【0055】
(基材層aの作製)
ポリエチレン繊維からなる不織布に、ポリウレタン樹脂溶液を含浸させた後に湿式凝固させ、乾燥させることで、磁性体粒子を含まない基材層aを得た。
【0056】
(基材層bの作製)
基材層aのポリウレタン樹脂溶液に、磁性体粒子として基材層の総量に対して5重量%となる様に平均粒子径30μmのNi-Zn-Cuフェライト粉末を添加したこと以外は、基材層aと同様の方法により基材層bを得た。
【0057】
(基材層cの作製)
基材層aのポリウレタン樹脂溶液に、磁性体粒子として基材層の総量に対して10重量%となる様に平均粒子径30μmのNi-Zn-Cuフェライト粉末を添加したこと以外は、基材層aと同様の方法により基材層cを得た。
【0058】
(透磁率の測定)
ネットワークアナライザ(例えばアジレント社製E5071C)に、透磁率測定用の治具(例えばアジレント社製16454A)を接続し、外径7mm,内径3mmに打ち抜いたドーナツ状サンプルを上記治具にセットし、所定のプログラムにて透磁率を測定した。研磨層A及び基材層a~cの透磁率は以下の表1及び表2に示すとおりであった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
(実施例及び比較例)
下記表3に示すとおり、研磨層と基材層とを組み合わせて、実施例及び比較例の研磨パッドを作製した。また、比較例2の研磨パッドとしては、従来公知の研磨パッドIC1000(ニッタ・ハース社製)を用いた。各実施例及び比較例について研磨パッドの厚み方向の透磁率μallを測定した。
【表3】
【0062】
実施例1及び2はいずれも、透磁率μallが1桁以上高くなり、精度良く渦電流式終点検出を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の研磨パッドは、半導体ウエハの上に導電層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられるパッドとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0064】
10:研磨パッド、11:研磨層、11a:研磨面、12:基材層、20:研磨装置、21:トップリング、22:テーブル、23:膜厚検出センサ、W:ウエハ、W1:金属膜、H1、H2:磁力線、C:渦電流
図1
図2
図3