(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/03 20060101AFI20241008BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B29C45/03
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2021013838
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 義久
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 篤
(72)【発明者】
【氏名】大貫 雅弥
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177683(JP,A)
【文献】特開平06-091688(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124611(JP,U)
【文献】特開昭63-030167(JP,A)
【文献】特開2004-130676(JP,A)
【文献】特開平01-064819(JP,A)
【文献】特開2011-189511(JP,A)
【文献】特開2017-013337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型装置、第2金型装置、及び第3金型装置を上に載せて回転する回転テーブルと、
前記回転テーブルの上方に設けた上プラテンと、
前記回転テーブルの下方に設けた下プラテンと、
前記回転テーブルを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1金型装置、前記第2金型装置、及び前記第3金型装置のそれぞれに対して、第1位置、第2位置、及び、第3位置の順に配置されるよう、前記回転テーブルに対して回転制御を行う際に、所定方向に回転することで、前記第1金型装置を、前記第1位置から前記第2位置までの第1区間を移動させ、前記所定方向に回転することで、前記第1金型装置を、前記第2位置から前記第3位置までの第2区間を移動させ、前記所定方向と逆回転に回転させることで、前記第1金型装置を、前記第3位置から前記第1位置までの第3区間を移動させる、回転制御部と、
前記第1位置で前記第1金型装置に対して第1処理を開始して所定時間が経過してから、前記第1金型装置が前記第1区間を移動し、前記第2位置で前記第1金型装置に対する第2処理を開始するまでの第1時間と、前記第2位置で前記第1金型装置に対して前記第2処理を開始して前記所定時間が経過してから、前記第1金型装置が前記第2区間を移動し、前記第3位置で前記第1金型装置に対する第3処理を開始するまでの第2時間と、前記第3位置で前記第1金型装置に対する前記第3処理を開始して前記所定時間が経過してから、前記第1金型装置が前記第3区間を移動し、前記第1位置で前記第1金型装置に対する前記第1処理を開始するまでの第3時間と、の時間差を減少させる調整を行う調整部と、を備える、
射出成形機。
【請求項2】
前記所定時間は、
前記第1位置に配置された前記第1金型装置、前記第2金型装置、及び前記第3金型装置のうちいずれか一つの金型装置に対して行われる、前記上プラテンと、前記下プラテンと、の間を狭める制御の開始から、前記上プラテンと前記下プラテンとの間を広げる制御の終了までの間の処理を示した前記第1処理に要する時間と、
前記第2位置に配置された前記第1金型装置、前記第2金型装置、及び前記第3金型装置のうちいずれか一つの金型装置に対して行われる、予め定められた期間を待機させる処理を示した前記第2処理に要する時間と、
前記第3位置に配置された前記第1金型装置、前記第2金型装置、及び前記第3金型装置のうちいずれか一つの金型装置に対して行われる、エジェクタ装置の突き出し制御の開始から、当該エジェクタ装置の戻し制御の終了までの処理を示した前記第3処理に要する時間と、
のうち最も長い時間である、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記調整部は、前記時間差を減少させる調整として、前記第1金型装置が前記第1位置、前記第2位置、及び前記第3位置のうちいずれか一つに配置されている場合に前記所定時間の後から、前記回転テーブルの回転制御が開始されるまでの時間を調整する、
請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記調整部は、前記時間差を減少させる調整として、前記第1金型装置が移動する前記第1区間、前記第2区間、及び前記第3区間のうちいずれか一つ以上の前記回転テーブルの回転速度を調整する、
請求項1及び3のいずれか一つに記載の射出成形機。
【請求項5】
前記調整部は、前記時間差を減少させる調整として、前記第1金型装置が前記第1位置、前記第2位置、及び前記第3位置のうちいずれか一つに移動した後に、前記第1処理、前記第2処理、または前記第3処理を開始するまでの時間を調整する、
請求項1及び4のいずれか一つに記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、射出成形機において、3個以上の金型装置が配置された回転テーブルを回転制御するための技術が提案されている。例えば、特許文献1においては、120°の角度間隔で3個の金型装置が設けられた回転テーブルに対して、2度の一方向の120°回転と、1度の一方向と逆方向の240°回転と、をセットとして制御する技術が提案されている。
【0003】
具体的には、上述したセット単位で回転制御を行うことで、回転テーブルに固定される配線および配管の配置が元の配置に戻るので、配線および配管の取り回しが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示された技術では、回転テーブルの回転速度が一定の場合に、一方向の120°回転と、一方向と逆方向の240°回転と、では、回転時間が異なる。回転時間が異なると、金型装置毎に行われる工程に要する時間が異なる状況が生じる場合がある。
【0006】
例えば、回転テーブル上の3個の位置に、金型装置が順に配置される場合、2個目の位置が、金型装置を冷却させるための位置であって、1個目の位置で処理が完了してから3個目の位置で処理が開始されるまでが冷却期間とした場合に、金型装置毎に冷却期間が異なる。
【0007】
本発明の一態様は、金型装置毎に行われる工程間の時間差を低減することで、成形品の品質のばらつきを低減する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る射出成形機は、第1金型装置、第2金型装置、及び第3金型装置を上に載せて回転する回転テーブルと、前記回転テーブルの上方に設けた上プラテンと、前記回転テーブルの下方に設けた下プラテンと、前記回転テーブルを制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、回転制御部と、調整部と、を備える。前記回転制御部は、前記第1金型装置、前記第2金型装置、及び前記第3金型装置のそれぞれに対して、第1位置、第2位置、及び、第3位置の順に配置されるよう、前記回転テーブルに対して回転制御を行う際に、所定方向に回転することで、前記第1金型装置を、前記第1位置から前記第2位置までの第1区間を移動させ、前記所定方向に回転することで、前記第1金型装置を、前記第2位置から前記第3位置までの第2区間を移動させ、前記所定方向と逆回転に回転させることで、前記第1金型装置を、前記第3位置から前記第1位置までの第3区間を移動させる。前記調整部は、前記第1位置で前記第1金型装置に対して第1処理を開始して所定時間が経過してから、前記第1金型装置が前記第1区間を移動し、前記第2位置で前記第1金型装置に対する第2処理を開始するまでの第1時間と、前記第2位置で前記第1金型装置に対して前記第2処理を開始して前記所定時間が経過してから、前記第1金型装置が前記第2区間を移動し、前記第3位置で前記第1金型装置に対する第3処理を開始するまでの第2時間と、前記第3位置で前記第1金型装置に対する前記第3処理を開始して前記所定時間が経過してから、前記第1金型装置が前記第3区間を移動し、前記第1位置で前記第1金型装置に対する前記第1処理を開始するまでの第3時間と、の時間差を減少させる調整を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、金型装置毎の各工程間の時間差を低減できるため、成形品の品質のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機のプラテン開完了時の状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る射出成形機のエジェクタ装置を示す断面図である。
【
図5】
図5は、突き出しが行われている間のエジェクタ装置の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る制御装置の回転制御部によって回転制御される回転テーブル121の遷移を例示した図である。
【
図8】
図8は、時間調整していない場合における、回転テーブル121の状態毎に処理に要する時間を例示した図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る表示処理部により表示される、冷却期間の違いを低減させるための回転テーブルの回転制御に関する設定画面を例示した図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る制御装置において、回転制御に関する調整を行った場合における、回転テーブルの回転状態毎に処理に要する時間を例示した図である。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る射出成形機で行われる全体的な処理手順を示したフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例1に係る射出成形機で行われる全体的な処理手順を示したフローチャートである。
【
図13】
図13は、変形例3に係る回転テーブルにおける金型装置の配置を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0012】
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機のプラテン開完了時の状態を示す斜視図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機のプラテン開完了時の状態を示す断面図である。
図3は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す断面図である。
図4は、一実施形態に係る射出成形機のエジェクタ装置を示す断面図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が竪型である場合、Z軸方向が型締方向である。
【0013】
射出成形機10は、
図1~
図4に示すように、金型装置800A、800B、800Cを型締する型締装置100と、金型装置800A、800B、800Cで成形された成形品20を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800A、800B、800Cに成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800A、800B、800Cに対し射出装置300を昇降させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900と、を備える。フレーム900は、レベリングアジャスタ930を介して床面2に設置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0014】
(型締装置)
図1に示すように、型締装置100は、複数の金型装置800A、800B、800Cの型締を順番に行う。金型装置800Aは上金型810Aと下金型820Aとを含み、金型装置800Bは上金型810Bと下金型820Bとを含み、金型装置800Cは上金型810Cと下金型820Cとを含む。金型装置800A、800B、800Cは、同一の構成を有する。
【0015】
型締装置100は例えば竪型であって、型締方向が鉛直方向である。型締装置100は、複数の上金型810A、810B、810Cを順番に上方から押す上プラテン110と、下金型820A、820B、820Cが取付けられる回転テーブル121と、回転テーブル121を回転させる回転モータ122と、回転テーブル121を下方から支持する下プラテン120と、を備える。
【0016】
上プラテン110は、下プラテン120及び回転テーブル121の上方に配設され、フレーム900に対し昇降自在である。上プラテン110は、その下面で、回転テーブル121の上に載せている複数の上金型810A、810B、810Cを順番に上方から押す。
【0017】
一方、下プラテン120は、フレーム900に対し固定される。下プラテン120における上プラテン110との対向面(上面)には、回転テーブル121が回転自在に載置される。回転テーブル121の上面には、複数の下金型820A、820B、820Cが取付けられる。
【0018】
回転モータ122が回転テーブル121を回転させることで、複数の金型装置800A、800B、800Cの各々が第1位置P1、第2位置P2及び第3位置P3に順番に配置される。
図1では、金型装置800Aが第1位置P1に配置され、金型装置800Bが第2位置P2に配置され、金型装置800Cが第3位置P3に配置されている。
【0019】
第1位置P1は、例えば、型締及び射出が行われる成形位置である。第2位置P2は、成形品20の冷却が行われる冷却位置である。第3位置P3は、例えば成形品20の突き出しが行われるエジェクタ位置である。第3位置P3は、型開閉が行われる型開閉位置を兼ねてもよい。また、第3位置P3は、インサート材が下金型820A、820B、820Cにセットされるインサート位置を兼ねてもよい。
【0020】
なお、金型装置の停止位置(第1位置P1、第2位置P2及び第3位置P3を含む)で行われる工程は、上記の組み合わせには限定されない。また、金型装置の停止位置の数は、金型装置の数と同数であればよく、3つには限定されず、4つ以上でもよい。例えば、エジェクタ位置とインサート位置とは、別々に設定されてもよい。
【0021】
図2~
図3に示すように、型締装置100は、下プラテン120の下方に配置されるトグルサポート130と、上プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、下プラテン120とトグルサポート130との間に配置されるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、上プラテン110とトグルサポート130の間隔Lを調整する型厚調整機構180と、を備える。
【0022】
トグルサポート130は、下プラテン120の下方においてフレーム900に対し昇降自在である。トグルサポート130は、タイバー140によって上プラテン110と連結される。トグルサポート130を昇降させることにより、上プラテン110が昇降させられる。
【0023】
タイバー140は、上プラテン110とトグルサポート130とを型締方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば3本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型締方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0024】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0025】
トグル機構150は、下プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、下プラテン120に対しトグルサポート130を昇降させる。トグル機構150は、型締方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は下プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を相対的に昇降させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、下プラテン120に対しトグルサポート130が昇降させられる。
【0026】
なお、トグル機構150の構成は、
図2および
図3に示す構成に限定されない。例えば
図2および
図3では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0027】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を相対的に昇降させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、上プラテン110を昇降させる。型締モータ160は、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されるが、運動変換機構170に直結されてもよい。
【0028】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。ねじ軸はトグルサポート130に回転自在に支持され、ねじナットはクロスヘッド151に固定される。型締モータ160を駆動してねじ軸を回転させると、ねじナットやクロスヘッド151がトグルサポート130に対し相対的に昇降させられる。これにより、第1リンク152および第2リンク153が屈伸させられ、トグルサポート130が昇降させられる。
【0029】
なお、本実施形態の型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられるが、フレーム900に取付けられてもよい。この場合、ねじ軸の上端部はクロスヘッド151で回転自在に支持され、ねじ軸の下端部はフレーム900に回転自在に保持される回転部材にスプライン結合され、ねじナットはトグルサポート130に固定されてよい。型締モータ160を駆動して回転部材を回転させると、ねじ軸が回転しながら昇降し、クロスヘッド151がトグルサポート130に対し相対的に昇降させられる。これにより、第1リンク152および第2リンク153が屈伸させられ、トグルサポート130が昇降させられる。
【0030】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、プラテン閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、プラテン開工程、およびテーブル回転工程などを行う。プラテン閉工程は、上プラテン110を下降させ、上プラテン110を上金型810A、810B、810Cの上面にタッチさせる工程である。昇圧工程は、上プラテン110を更に下降させ、型締力を発生させる工程である。型締工程は、上プラテン110を停止させ、昇圧工程で発生させた型締力を維持する工程である。脱圧工程は、上プラテン110を上昇させ、昇圧工程で発生させた型締力を減少させる工程である。プラテン開工程は、上プラテン110を更に上昇させ、上プラテン110を上金型810A、810B、810Cから離間させる工程である。テーブル回転工程は、回転テーブル121を回転させる工程である。テーブル回転工程は、例えば、プラテン開工程の完了後、次のプラテン閉工程の開始前に行われる。
【0031】
プラテン閉工程では、型締モータ160を駆動してトグルサポート130に対しクロスヘッド151を設定移動速度でプラテン閉完了位置まで相対的に上昇させることにより、上プラテン110を下降させ、上プラテン110を上金型810A、810B、810Cの上面にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0032】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、上プラテン110の位置を検出する上プラテン位置検出器、および上プラテン110の移動速度を検出する上プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0033】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してトグルサポート130に対しクロスヘッド151をプラテン閉完了位置から型締位置までさらに相対的に上昇させることにより、上プラテン110を下降させ、型締力を生じさせる。
【0034】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、上金型810A、810B、810Cと下金型820A、820B、820Cとの間にキャビティ空間が形成される。例えば、
図3に示すように、型締工程では、上金型810Aと下金型820Aとの間にキャビティ空間801Aが形成される。射出装置300がキャビティ空間に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品20(
図4参照)が得られる。
【0035】
キャビティ空間801Aの数は例えば複数であり、複数の成形品20が同時に得られる。キャビティ空間801Aの数は1つでもよい。また、キャビティ空間801Aの一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801Aの他の一部に成形材料が充填されてもよい。この場合、インサート材と成形材料とが一体化した成形品20が得られる。
【0036】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してトグルサポート130に対しクロスヘッド151を型締位置からプラテン開開始位置まで相対的に下降させることにより、上プラテン110を上昇させ、型締力を減少させる。プラテン開開始位置と、プラテン閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0037】
プラテン開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度でプラテン開開始位置からプラテン開完了位置までさらに相対的に下降させることにより、上プラテン110を上昇させ、上プラテン110を上金型810A、810B、810Cから離間させる。
【0038】
プラテン開工程の完了後、次のプラテン閉工程の開始前に、テーブル回転工程が行われる。テーブル回転工程では、回転テーブル121を回転し、金型装置800A、800B、800Cを回転させる。複数の金型装置800A、800B、800Cの各々が第1位置P1、第2位置P2及び第3位置P3に順番に配置される。回転テーブル121の回転方向は、第1方向と、第1方向とは逆方向の第2方向との間で切換えられてもよい。回転方向の切換によって、回転テーブル121に対して固定される配線又は配管の配置が元に戻るため、配線又は配管の取り回しが容易である。
【0039】
プラテン閉工程および昇圧工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、プラテン閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(プラテン閉開始位置、移動速度切換位置、プラテン閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。プラテン閉開始位置、移動速度切換位置、プラテン閉完了位置、および型締位置は、下側から上方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0040】
脱圧工程およびプラテン開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程およびプラテン開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(プラテン開開始位置、移動速度切換位置、およびプラテン開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。プラテン開開始位置、移動速度切換位置、およびプラテン開完了位置は、上側から下方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。プラテン開開始位置とプラテン閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、プラテン開完了位置とプラテン閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0041】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、上プラテン110の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッド151の位置(例えば型締位置)や上プラテン110の位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0042】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して上プラテン110に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0043】
金型装置800A、800B、800Cの交換又は温度変化などにより金型装置800A、800B、800Cの厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば上プラテン110が上金型810A、810B、810Cにタッチする時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、上プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0044】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、上プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えばプラテン開工程の完了後であって、次のプラテン閉工程の開始前である。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の下端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ昇降不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0045】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0046】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0047】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、上プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0049】
型締装置100は、金型装置800A、800B、800Cの温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800A、800B、800Cは、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800A、800B、800Cの流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800A、800B、800Cの温度を調節する。
【0050】
なお、本実施形態の型締装置100は、型締方向が鉛直方向である竪型であるが、型締方向が水平方向である横型でもよい。
【0051】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。
【0052】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200は、金型装置800A、800B、800Cから成形品20を突き出す。金型装置800A、800B、800Cは同一の構成を有するので、代表的に金型装置800Aから成形品20を突き出す動作について説明する。
【0053】
まず、
図4を参照して金型装置800Aの構造について説明する。金型装置800Aは、上金型810Aと、下金型820Aとを有する。下金型820Aは、回転テーブル121に取付けられる取付板821Aと、キャビティ空間801Aを形成する型板822Aと、取付板821Aと型板822Aとの間に空間824Aを形成する中間板823Aと、を含む。中間板823Aは、スペーサブロックとも呼ばれる。
【0054】
下金型820Aは、空間824Aに昇降自在に配置されるエジェクタプレート825Aと、エジェクタプレート825Aから上方に延びる棒状のエジェクタピン826Aと、を更に含む。エジェクタプレート825Aは、不図示のリターンバネによって下方に付勢され、取付板821Aに押し付けられる。
【0055】
エジェクタピン826Aは、型板822Aを鉛直方向に貫通するピン穴に昇降自在に挿入される。エジェクタプレート825Aが取付板821Aに押し付けられた状態で、エジェクタピン826Aの上端面はキャビティ空間801Aの壁面を形成し、成形品20と当接する。キャビティ空間801Aごとに、少なくとも1本のエジェクタピン826Aが設けられる。エジェクタピン826Aを上昇させることで、成形品20が突き上げられ、成形品20の突き出しが行われる。その後、エジェクタピン826Aは、下降させられる。
【0056】
下金型820Aは、取付板821Aと中間板823Aと型板822Aとを鉛直方向に貫通するピン穴に昇降自在に配置される型開閉ピン827Aを更に含む。型開閉ピン827Aが取付板821Aよりも下方に落下しないように、不図示のストッパが設けられる。型開閉ピン827Aを上昇させることで、上金型810Aが下金型820Aから押し上げられ、型開が行われる。一方、型開閉ピン827Aを下降させることで、上金型810Aが下金型820Aの上に載せられ、型閉が行われる。型開閉ピン827Aは、上金型810Aを安定して支持できるように3本以上(
図4には2本のみ図示)設けられる。
【0057】
エジェクタ装置200は、下プラテン120の下方にて昇降させられるエジェクタクロスヘッド210と、エジェクタクロスヘッド210を昇降させる駆動機構220と、を備える。駆動機構220は、エジェクタモータ221と、エジェクタモータ221の回転運動をエジェクタクロスヘッド210の直線運動に変換する運動変換機構222と、を有する。運動変換機構222は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットと、を含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0058】
エジェクタクロスヘッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータ221の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタクロスヘッド210の位置を検出するエジェクタクロスヘッド位置検出器、およびエジェクタクロスヘッド210の移動速度を検出するエジェクタクロスヘッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0059】
エジェクタ装置200は、エジェクタクロスヘッド210から上方に延びるエジェクタロッド230を更に備える。エジェクタロッド230は、下プラテン120を鉛直方向に貫通する固定穴123に昇降自在に配置される。エジェクタロッド230は、回転テーブル121を鉛直方向に貫通する回転穴124と、取付板821Aを鉛直方向に貫通する貫通穴828Aを通り、エジェクタプレート825Aに接触し、エジェクタプレート825Aを介してエジェクタピン826Aを上方に押す。
【0060】
また、エジェクタ装置200は、エジェクタクロスヘッド210から上方に延びる型開閉ロッド240を更に備える。型開閉ロッド240は、下プラテン120を鉛直方向に貫通する固定穴125に昇降自在に配置される。型開閉ロッド240は、回転テーブル121を鉛直方向に貫通する回転穴126を通り、型開閉ピン827Aに接触し、型開閉ピン827Aを上方に押す。型開閉ロッド240の本数は、型開閉ピン827Aの本数と同じであってよい。
【0061】
次に、
図4及び
図5を参照して、エジェクタ装置200の動作について説明する。
図4は、回転テーブルの回転停止時のエジェクタ装置の一例を示す。
図5(A)は、型開開始後であって突き出し開始前のエジェクタ装置の一例を示す断面図である。
図5(B)は、突き出し開始時のエジェクタ装置の一例を示す断面図である。
図5(C)は、型開完了時及び突き出し完了時のエジェクタ装置の一例を示す断面図である。
【0062】
図4に示すように、回転テーブル121の回転停止時に、下プラテン120の固定穴123と、回転テーブル121の回転穴124との位置が合わされ、且つ下プラテン120の固定穴125と、回転テーブル121の回転穴126との位置が合わされる。この時、エジェクタロッド230及び型開閉ロッド240は、回転テーブル121よりも下方で停止している。また、上金型810Aは、下金型820Aの上に載っている。
【0063】
次に、制御装置700は、エジェクタモータ221を駆動して、エジェクタクロスヘッド210を上昇開始位置から型開開始位置まで上昇させる。その結果、型開閉ロッド240が型開閉ピン827Aに当接する。続いて、制御装置700は、エジェクタモータ221を駆動して、エジェクタクロスヘッド210を更に上昇させ、型開工程を開始させる。型開工程では、
図5(A)に示すように、型開閉ロッド240で型開閉ピン827Aを押し上げ、上金型810Aを下金型820Aから押し上げる。
【0064】
続いて、制御装置700は、エジェクタモータ221を駆動して、エジェクタクロスヘッド210を突き出し開始位置まで更に上昇させる。その結果、
図5(B)に示すように、エジェクタロッド230がエジェクタプレート825Aに当接する。続いて、制御装置700は、エジェクタモータ221を駆動して、エジェクタクロスヘッド210を更に上昇させ、突き出し工程を開始させる。突き出し工程では、エジェクタプレート825Aを介してエジェクタピン826Aを押し上げ、成形品20を下金型820Aから突き上げる。
【0065】
続いて、制御装置700は、エジェクタモータ221を駆動して、エジェクタクロスヘッド210を上昇完了位置まで上昇させ、停止させる。その結果、型開工程及び突き出し工程が完了し、
図5(C)に示すように、成形品20が下金型820Aよりも上方に突き出される。その後、成形品20は、取出機などで取り出される。
【0066】
その後、制御装置700は、エジェクタモータ221を駆動して、エジェクタクロスヘッド210を下降開始位置から下降完了位置まで下降させ、停止させる。エジェクタロッド230及び型開閉ロッド240は回転テーブル121よりも下方で停止し、回転テーブル121が再び回転させられる。
【0067】
エジェクタクロスヘッド210の上昇速度や位置(上昇開始位置、上昇速度切換位置、型開開始位置、突き出し開始位置、および上昇完了位置を含む)などは、一連の設定条件として、まとめて設定される。上昇開始位置、上昇速度切換位置、型開開始位置、突き出し開始位置、および上昇完了位置は、下側から上方に向けてこの順で並び、上昇速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、上昇速度が設定される。上昇速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。上昇速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0068】
エジェクタクロスヘッド210の下降速度や位置(下降開始位置、下降速度切換位置、および下降完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。下降開始位置、下降速度切換位置、および下降完了位置は、上側から下方に向けて、この順で並び、下降速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、下降速度が設定される。下降速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。下降速度切換位置は、設定されなくてもよい。下降開始位置と上昇完了位置とは同じ位置であってよい。また、下降完了位置と上昇開始位置とは同じ位置であってよい。
【0069】
(射出装置)
射出装置300は、
図1に示す移動装置400によって上プラテン110に対し昇降させられる。射出装置300は、金型装置800A、800B、800Cにタッチし、金型装置800A、800B、800C内のキャビティ空間(例えばキャビティ空間801A)に成形材料を充填する。
図2~
図3に示すように、射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の下端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に昇降自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0070】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の上部に形成される。シリンダ310の上部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも下方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0071】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばZ軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0072】
ノズル320は、シリンダ310の下端部に設けられ、金型装置800A、800B、800Cに対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0073】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ昇降自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が下方に送られる。成形材料は、下方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の下方に送られシリンダ310の下部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が上昇させられる。その後、スクリュ330を下降させると、スクリュ330下方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800A、800B、800C内に充填される。
【0074】
スクリュ330の下部には、スクリュ330を下方に押すときにスクリュ330の下方から上方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が昇降自在に取付けられる。
【0075】
逆流防止リング331は、スクリュ330を下降させるときに、スクリュ330下方の成形材料の圧力によって上方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図3参照)までスクリュ330に対し相対的に上昇する。これにより、スクリュ330下方に蓄積された成形材料が上方に逆流するのを防止する。
【0076】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って下方に送られる成形材料の圧力によって下方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に下降する。これにより、スクリュ330の下方に成形材料が送られる。
【0077】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0078】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で昇降させる駆動源を有していてもよい。
【0079】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0080】
射出モータ350は、スクリュ330を昇降させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を昇降させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0081】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0082】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0083】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800A、800B、800Cの内部に設置される。
【0084】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程とも呼ぶ。
【0085】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を下方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の下方に送られシリンダ310の下部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が上昇させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0086】
計量工程では、スクリュ330の急激な上昇を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。荷重検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで上昇し、スクリュ330の下方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0087】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、下側から上方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0088】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で下降させ、スクリュ330の下方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800A、800B、800C内のキャビティ空間(例えばキャビティ空間801A)に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0089】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、上側から下方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0090】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。荷重検出器360の検出値が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で下降される。一方、荷重検出器360の検出値が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、荷重検出器360の検出値が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で下降される。
【0091】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速下降または微速上昇が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0092】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を下方に押し、スクリュ330の下端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800A、800B、800Cに向けて押す。金型装置800A、800B、800C内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。荷重検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0093】
保圧工程では金型装置800A、800B、800C内のキャビティ空間(例えばキャビティ空間801A)の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0094】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ昇降不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ昇降自在に配設される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが昇降自在に配設される。
【0095】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が鉛直方向である竪型であるが、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であってもよい。横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。同様に、竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。
【0096】
(移動装置)
図1に示すように、移動装置400は、上プラテン110に対して射出装置300を昇降させる。また、移動装置400は、金型装置800A、800B、800Cに対してノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、例えば複数本の油圧シリンダ401、402を含む。複数本の油圧シリンダ401、402は、ノズル320を中心に対称に配置される。
【0097】
移動装置400が金型装置800A、800B、800Cからノズル320を離間させた状態で、型締装置100が回転テーブル121と共に金型装置800A、800B、800Cを回転させる。その後で、移動装置400が、金型装置800A、800B、800Cに対してノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。
【0098】
なお、本実施形態では移動装置400は油圧シリンダ401、402を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、移動装置400は、油圧シリンダ401、402の代わりに、上プラテン110又は射出装置300に対して固定される射出装置移動モータと、射出装置移動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構と、を含んでもよい。
【0099】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図2~
図3に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。例えば、制御装置700は、回転テーブル121を制御する。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0100】
制御装置700は、金型装置800A、800B、800Cごとに、第1位置P1で行われる工程と、テーブル回転工程と、第2位置P2で行われる工程と、テーブル回転工程と、第3位置P3で行われる工程と、テーブル回転工程とを繰り返し行うことにより、成形品20を繰り返し製造する。成形品20を得るための一連の動作、例えばプラテン閉工程の開始から次のプラテン閉工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0101】
一回の成形サイクルは、例えば、第1位置P1で行われる工程と、テーブル回転工程と、第2位置P2で行われる工程と、テーブル回転工程と、第3位置P3で行われる工程と、テーブル回転工程と、をこの順番で有する。
【0102】
第1位置P1では、例えば、プラテン閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、脱圧工程、およびプラテン開工程が行われる。プラテン閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、脱圧工程、及びプラテン開工程は、この順番で開始される。型締工程の開始は、充填工程の開始と一致してもよい。充填工程および保圧工程は、型締工程の間に行われる。脱圧工程の終了は、プラテン開工程の開始と一致する。
【0103】
第2位置P2では、例えば、冷却工程が行われる。なお、冷却工程は、脱圧工程の開始から、突き出し工程の開始まで行われる。それゆえ、冷却工程は、第2位置P2だけではなく、第1位置P1及び第3位置P3でも行われる。
【0104】
第3位置P3では、例えば、型開工程、突き出し工程、および型閉工程が行われる。型開工程、突き出し工程、および型閉工程は、この順番で開始される。型開工程の終了は、突き出し工程の終了と一致してもよい。突き出し工程の終了後、型閉工程が開始される。
【0105】
第3位置P3で各種の工程が行われる間に、第1位置P1では、次の成形サイクルの準備として、計量工程が行われる。
【0106】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0107】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0108】
図6は、一実施形態に係る制御装置700の構成要素を機能ブロックで示す図である。
図6に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図6に示すように、制御装置700は、入力受付部711と、表示処理部712と、回転制御部713と、取得部714と、調整部715と、を有する。入力受付部711は、入力インターフェース703を介して、操作装置750からのユーザによる入力操作を受け付ける。表示処理部712は、操作装置750における入力操作に応じた表示画面を、表示装置760に表示制御を行う。回転制御部713は、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cのそれぞれに対して、型締、射出を行う第1位置P1(型締、射出ステージとも称す)、冷却を行う第2位置P2(冷却ステージとも称する)、成形品の取り出しを行う第3位置P3(取出ステージとも称する)の順に配置されるよう、回転テーブル121に対して回転制御を行う。取得部714は、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cの各々の冷却期間を設定するために、回転制御に関する時間情報を取得する。調整部715は、取得した時間情報に基づいて、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cの各々の冷却期間の時間差を減少させる調整を行う。なお、各構成の具体的な説明について後述する。
【0109】
回転制御部713は、回転テーブル121の回転制御を行う。
図7は、回転制御部713によって回転制御される回転テーブル121の遷移を例示した図である。
【0110】
回転テーブル121においては、回転穴124を中心とした円周上に、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cが120°毎に配置されている。そして、回転テーブル121は、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cを上に載せた状態で回転する。本実施形態では、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cのうち、任意の金型装置を示す場合には、金型装置800と示す。また、本実施形態では、任意の金型装置800に含まれる構成を、上金型810と下金型820と示す。
【0111】
本実施形態の射出成形機10は、金型装置800の各々を処理するために停止する位置有している。本実施形態では、金型装置800が停止する位置を、第1位置P1、第2位置P2、及び第3位置P3とする。第1位置P1、第2位置P2、及び第3位置P3は、回転テーブル121の回転穴124を基準とした円周上に、120°間隔で配置されている。次に、金型装置800が停止する位置について説明する。
【0112】
第1位置P1は、金型装置800に対して、プラテン閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、脱圧工程、およびプラテン開工程を行うため位置であって、型締、射出ステージとも称する。プラテン閉工程は、金型装置800の型締めのために、上プラテン110と、下プラテン120と、の間を狭める制御を行う工程とする。また、プラテン開工程は、上プラテン110と、下プラテン120と、の間を広げる制御を行う工程も含んでいる。つまり、型締、射出ステージでは、第1位置P1(型締、射出ステージ)に配置された金型装置800(第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cのうちいずれか一つの金型装置)に対して行われる、型締めとして上プラテン110と、下プラテン120と、の間を狭める制御の開始から、昇圧、充填・保圧の後、脱圧とともに上プラテン110と下プラテン120との間を広げる制御の終了まで(第1処理の一例)が行われる。
【0113】
第2位置P2は、金型装置800に対して、冷却工程を行うための位置であって、冷却ステージとも称する。冷却ステージでは、第2位置P2に配置された金型装置800(第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cのうちいずれか一つの金型装置)に対して、短くとも冷却設定時間を待機させる処理(第2処理の一例)が行われる。冷却設定時間は、金型装置800を冷却させる期間として、予め定められた期間とする。冷却設定時間は、設定情報721に含まれている。
【0114】
実際の冷却期間は、第2位置P2で停止している期間ではなく、第1位置P1の型締、射出ステージにおいてプラテン開工程で上プラテン110の上昇制御を開始してから、第3位置P3の取出ステージにおいて型開工程でエジェクタ装置200の突き出し制御を開始するまでの期間とする。
【0115】
第3位置P3は、エジェクタ装置200の制御に基づいて、成形品の取出のために、型開工程、突き出し工程、及び型閉工程を行うための位置であって、取出ステージとも称する。取出ステージでは、第3位置P3に配置された金型装置800(第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cのうちいずれか一つの金型装置)から成形品を取り出すために、金型装置800のうち下金型820に対して行われる、エジェクタ装置200の突き出し制御の開始によって金型装置800の上金型810が上昇する型開工程が開始され、さらなるエジェクタ装置200の突き出し制御によって成形品20が突き出される突き出し工程が行われ、当該突き出し後に当該成形品が取り出され、エジェクタ装置200の戻し制御で上金型810を下降制御させる型閉工程の終了まで(第3処理の一例)行われる。
【0116】
図7の(A)で示される例は、回転テーブル121が回転していない状態(以下、基準状態とも称する)であって、第1位置P1(型締、射出ステージ)に、第1金型装置800Aが配置され、第2位置P2(冷却ステージ)に、第2金型装置800Bが配置され、第3位置(取出ステージ)に、第3金型装置800Cが配置されている。金型装置800A~800Cに対する全ての処理が終了した後、回転制御部713は、回転テーブル121を、右方向に120°回転させる制御を行う。本実施形態では、右方向(所定方向の一例)に120°回転させる際の回転時間は、1.5秒となる。
【0117】
図7の(B)で示される例は、
図7の(A)で示される位置から、120°右方向に回転した状態(以下、120°回転状態とも称する)を示している。第1位置P1(型締、射出ステージ)に、第3金型装置800Cが配置され、第2位置P2(冷却ステージ)に、第1金型装置800Aが配置され、第3位置P3(取出ステージ)に、第2金型装置800Bが配置されている。金型装置800A~800Cに対する全ての処理が終了した後、回転制御部713は、回転テーブル121を、さらに、右方向に120°回転させる制御を行う。本実施形態では、当該回転させる際の回転時間は、1.5秒となる。
【0118】
図7の(C)で示される例は、
図7の(A)で示される位置から、240°右方向に回転した状態(以下、240°回転状態とも称する)を示している。第1位置P1(型締、射出ステージ)に、第2金型装置800Bが配置され、第2位置P2(冷却ステージ)に、第3金型装置800Cが配置され、第3位置P3(取出ステージ)に、第1金型装置800Aが配置されている。金型装置800A~800Cに対する全ての処理が終了した後、回転制御部713は、回転テーブル121を、さらに、左方向(所定方向と逆回転の一例)に240°回転させる制御を行う。本実施形態では、左方向に240°回転させる際の回転時間は、3秒となる。
【0119】
図7の(D)で示される例は、
図7の(C)で示される位置から、240°左方向に回転した状態を示している。これにより、
図7の(A)と同様の配置となる。回転テーブル121に固定される配線および配管の配置が元の配置に戻るので、配線および配管の取り回しが容易となる。このように、本実施形態では、上述した回転制御を行うことで、配線および配管の取り回しが容易となるが、回転テーブル121の回転状態に応じて回転時間が異なる。
【0120】
なお、本実施形態は、2回右方向に120°回転制御した後に、1回左方向に240°回転制御する手法に制限するものではない。例えば、2回左方向(所定方向の一例)に120°回転制御した後に、1回右方向(所定方向と逆回転の一例)に240°回転制御する手法を用いてもよい。また、本実施形態は、回転角度を120°と240°とに制限するものではなく、実施態様に応じて任意の回転角度を設定すればよい。
【0121】
図8は、時間調整していない場合における、回転テーブル121の回転状態毎に処理に要する時間を例示した図である。
図8に示される例では、回転テーブル121が基準状態(0°回転状態)に存在する場合に、第1金型装置800Aが、第1位置P1(型締、射出ステージ)に位置し、第2金型装置800Bが、第2位置P2(冷却ステージ)に位置し、第3金型装置800Cが、第3位置P3(取出ステージ)に位置する。
【0122】
図8に示されるように、回転テーブル121が基準状態(0°回転状態)において、第1金型装置800Aに第1位置P1(型締、射出ステージ)で行われる処理と、第2金型装置800Bに第2位置P2(冷却ステージ)で行われる処理と、第3金型装置800Cに第3位置P3(取出ステージ)で行われる処理と、を同時に開始した後、予め定められた成形時間が経過した後に、回転テーブル121の回転制御を開始する。
【0123】
成形時間とは、型締、射出ステージで行われる処理に要する時間と、冷却ステージで行われる処理に要する時間と、取出ステージで行われる処理に要する時間と、のうち最も長い時間とする。
図8で示した例は、型締、射出ステージで行われる処理が、3ステージのうち最も長い時間を要する場合を示したものであるが、このような場合に制限するものではなく、他の2つのステージのうち、いずれかが最も長い時間を要する場合も含まれる。
【0124】
回転テーブル121は、基準状態から120°右方向に回転した後、120°回転状態となる。この場合、第1金型装置800Aが、第2位置P2(冷却ステージ)に位置し、第2金型装置800Bが、第3位置P3(取出ステージ)に位置し、第3金型装置800Cが、第1位置P1(型締、射出ステージ)に位置する。なお、基準状態から120°右方向に回転して、120°回転状態となるまでの回転区間を、第1区間と称する。
【0125】
120°回転状態において、第1金型装置800Aに第2位置P2(冷却ステージ)で行われる処理と、第2金型装置800Bに第3位置P3(取出ステージ)で行われる処理と、第3金型装置800Cに第1位置P1(型締、射出ステージ)で行われる処理と、を同時に開始した後、上記の成形時間が経過した後に、回転制御部713による回転テーブル121の回転制御を開始する。
【0126】
そして、回転テーブル121は、120°回転状態から120°右方向に回転した後、240°回転状態となる。第1金型装置800Aが、第3位置P3(取出ステージ)に位置し、第2金型装置800Bが、第1位置P1(型締、射出ステージ)に位置し、第3金型装置800Cが、冷却ST2に位置する。なお、120°回転状態から120°右方向に回転して、240°回転状態となるまでの回転区間を、第2区間と称する。
【0127】
240°回転状態において、第1金型装置800Aに第3位置P3(取出ステージ)で行われる処理と、第2金型装置800Bに第1位置P1(型締、射出ステージ)で行われる処理と、第3金型装置800Cに第2位置P2(冷却ステージ)で行われる処理と、を同時に開始した後、上記の成形時間が経過した後に、回転制御部713による回転テーブル121の回転制御を開始する。
【0128】
その後、回転テーブル121は、240°回転状態から240°左方向に回転した後、基準状態に戻る。第1金型装置800Aが、第1位置P1(型締、射出ステージ)に位置し、第2金型装置800Bが、第2位置P2(冷却ステージ)に位置し、第3金型装置800Cが、第3位置P3(取出ステージ)に位置する。なお、240°回転状態から240°左方向に回転して、基準状態(0°回転状態)となるまでの回転区間を、第3区間と称する。
【0129】
図8に示される例では、回転時間は、第1区間から第3区間まで順に、1.5秒、1.5秒、3秒となる。上述したように、金型装置800の冷却期間は、第1位置P1(型締、射出ステージ)においてプラテン開工程で上プラテン110の上昇制御が開始してから、第3位置P3(取出ステージ)において型開工程でエジェクタ装置200の突き出し制御が開始するまでの期間である。したがって、回転時間の違いから、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cの間で、冷却期間に違いが生じる。冷却期間に違いが生じる場合には、成形品の品質のばらつきに影響が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、冷却期間の違いを低減させる制御を行う。
【0130】
制御装置700の記憶媒体702には、設定情報721を備えている。設定情報721は、回転テーブル121の回転制御に関して、冷却期間の違いを低減させるように設定可能な情報を含んでいる。例えば、設定情報721は、回転テーブル121の基準状態(0°回転状態)、120°回転状態、240°回転状態の各々について、金型装置800の成形時間経過後(全てのステージで処理が行われた後)に、回転テーブル121が回転開始するまでの待機時間を含んでいる。また、設定情報721は、回転テーブル121の0°~120°まで(第1区間)の回転速度、120°~240°まで(第2区間)の回転速度、240°~0°まで(第3区間)の回転速度を含んでいる。さらに、設定情報721は、冷却ステージで停止している時間を示した冷却設定時間を含んでいる。
【0131】
取得部714は、第1金型装置800A、第2金型装置800B、及び第3金型装置800Cの間の冷却期間の設定のために必要な時間情報として、回転テーブル121の回転時間の情報を取得する。例えば、本実施形態の取得部714は、基準状態(0°回転状態)から120°右方向への回転時間"1.5秒"と、120°回転状態から120°右方向への回転時間"1.5秒"と、240°回転状態から240°左方向への回転時間"3秒"と、を取得する。
【0132】
表示処理部712は、設定情報721の設定を行うための設定画面を表示する。
図9は、本実施形態に係る表示処理部712により表示される、回転テーブル121の回転制御に関する設定画面を例示した図である。当該設定画面は、金型装置800間における冷却期間の違いを低減させる設定を行うために用いられる。
【0133】
図9に示されるように、表示処理部712は、0°~120°(第1区間)の実績値欄1101と、120°~240°(第2区間)の実績値欄1102と、240°~0°(第3区間)の実績値欄1103と、を表示する。0°~120°の実績値欄1101には、第1区間の回転時間"1.5秒"が示される。120°~240°の実績値欄1102には、第2区間の回転時間"1.5秒"が示される。240°~0°の実績値欄1103には、第3区間の回転時間"3秒"が示される。ユーザは、区間ごとに回転時間が異なることを視認することで、冷却期間にずれが生じていることを認識できる。
【0134】
表示処理部712は、冷却設定時間欄1104と、基準状態の待機時間欄1105と、120°回転状態の待機時間欄1106と、240°回転状態の待機時間欄1107と、0°~120°(第1区間)の速度欄1108と、120°~240°(第2区間)の速度欄1109と、240°~0°(第3区間)の速度欄1110と、を表示する。冷却設定時間欄1104は、冷却ステージで待機する時間を設定するための欄とする。
【0135】
基準状態(0°回転状態)の待機時間欄1105は、基準状態で成形時間が経過した(各ステージの全ての処理が完了した)後の待機時間を設定するための欄とする。120°回転状態の待機時間欄1106は、120°回転状態で成形時間が経過した後の待機時間を設定するための欄とする。240°回転状態の待機時間欄1107は、240°回転状態で成形時間が経過した後の待機時間を設定するための欄とする。
【0136】
0°~120°の速度欄1108は、回転テーブル121の第1区間を右方向に回転制御する際の回転速度を設定するための欄とする。120°~240°の速度欄1109は、回転テーブル121の第2区間を右方向に回転制御する際の回転速度を設定するための欄とする。240°~0°の速度欄1110は、回転テーブル121の第3区間を左方向に回転制御する際の回転速度を設定するための欄とする。
【0137】
本実施形態の入力受付部711は、待機時間欄1105~1107、及び速度欄1108~1110に入力された値を受け付ける。換言すれば、入力受付部711は、ユーザから、実績値欄1101~1103に表示された値に基づいて、冷却期間の差を狭めるための値の入力を受け付ける。また、入力受付部711は、冷却設定時間欄1104に入力された値を受け付ける。
【0138】
例えば、入力受付部711は、基準状態の待機時間欄1105に"1.5"秒、120°回転状態の待機時間欄1106に"1.5"秒、240°回転状態の待機時間欄1107に"0"秒の入力を受け付ける。
【0139】
調整部715は、回転制御部713による回転テーブル121の回転制御を調整する。例えば、調整部715は、第1位置P1(型締、射出ステージ)で第1金型装置800Aに対して第1処理を開始(例えば、プラテン閉工程における上プラテン110の下降制御を開始)して成形時間が経過してから、第1金型装置800Aが第1区間を移動し、第2位置P2(冷却ステージ)で第1金型装置800Aに対する第2処理を開始(例えば、冷却設定時間の待機を開始)するまでの時間(第1時間の一例)と、第2位置P2(冷却ステージ)で、第1金型装置800Aに対して第2処理を開始して成形時間が経過してから、第1金型装置800Aが第2区間を移動し、第3位置P3(取出ステージ)で、第1金型装置800Aに対する第3処理を開始(例えば、型開工程におけるエジェクタ装置200の突き出し制御を開始)するまでの時間(第2時間の一例)と、第3位置P3(取出ステージ)で、第1金型装置800Aに対する第3処理を開始して成形時間が経過してから、第1金型装置800Aが第3区間を移動し、第1位置P1(型締、射出ステージ)で、第1金型装置800Aに対する第1処理を開始するまでの時間(第3時間の一例)と、の時間差を狭めるよう、回転制御部713による回転テーブル121の回転制御を調整する。本実施形態では、時間差を狭めるための回転テーブル121の回転制御として、例えば、成形時間経過後の待機時間の調整や、回転テーブル121の回転速度の調整を行う。
【0140】
例えば、調整部715は、入力受付部711が入力を受け付けたパラメータに基づいて、設定情報721に、基準状態(0°回転状態)の待機時間"1.5"秒、120°回転状態の待機時間"1.5"秒、240°回転状態の待機時間"0"秒を設定することで、回転テーブル121の回転制御を調整する。また、調整部715は、入力受付部711が冷却設定期間欄への入力を受け付けたパラメータに基づいて、設定情報721に、冷却設定期間を設定してもよい。
【0141】
図10は、本実施形態に係る制御装置において、回転制御に関する調整を行った場合における、回転テーブル121の回転状態毎に処理に要する時間を例示した図である。
【0142】
図10で示されるように、回転テーブル121が基準状態の場合に、成形時間が経過した(全てのステージの処理が終了した)後、回転制御部713は、第1区間の回転制御を開始する前に、"1.5"秒待機する。その後に、回転制御部713は、第1区間において、"1.5"秒の回転制御を行う。
【0143】
回転テーブル121が120°回転状態の場合に、成形時間が経過した(全てのステージの処理が終了した)後、回転制御部713は、第2区間の回転制御を開始する前に、"1.5"秒待機する。その後に、回転制御部713は、第2区間において、"1.5"秒の回転制御を行う。
【0144】
また、回転テーブル121が240°回転状態の場合に、成形時間が経過した(全てのステージの処理が終了した)後、回転制御部713は、第3区間の回転制御を開始する前には待機せず("0"秒待機の後)、第3区間において、"3"秒の回転制御を行う。
【0145】
これにより、本実施形態は、待機時間の調整で、任意の処理が終了してから、次の処理が開始するまでの所要時間が等しくなる。これにより金型装置800A、800B、800C全ての冷却期間一致させることができる。なお、本実施形態は、冷却期間を一致させる場合について説明したが、冷却期間を一致させるように制御する手法に制限するものではなく、冷却期間の時間差を減少させるだけでもよい。冷却期間の時間差を減少させることで、成形品の品質のばらつきを抑えることができる。
【0146】
なお、本実施形態は、待機時間の調整の代わりに、回転速度を調整してもよい。例えば、入力受付部711が受け付けた設定に従って、調整部715が第1区間の回転速度"50%"、第2区間の回転速度"50%"、第3区間の回転速度"100%"と調整してもよい。このような調整手法を用いた場合でも、回転時間が等しくなるため、冷却期間の差を低減できる。
【0147】
次に、本実施形態に係る射出成形機10で行われる全体的な処理手順について説明する。
図11は、本実施形態に係る射出成形機10で行われる全体的な処理手順を示したフローチャートである。
【0148】
回転制御部713は、第1区間、第2区間、及び第3区間の各々を移動させるために、回転テーブル121の回転制御を行う(S1501)。
【0149】
取得部714は、冷却期間を設定するための時間情報として、S1501において第1区間、第2区間、及び第3区間の各々を移動させるために回転テーブル121の回転時間の情報を取得する(S1502)。
【0150】
表示処理部712が、回転テーブル121の回転制御に関する設定画面を表示する(S1503)。当該設定画面には、S1502で取得した時間情報が実績値として表されている(例えば、
図9参照)。
【0151】
入力受付部711が、金型装置800間の冷却期間の差を狭めるように、設定画面に表示された各欄に入力された値を受け付ける(S1504)。
【0152】
調整部715は、S1504で入力された値で設定情報721を更新する(S1505)。当該更新によって、回転テーブル121の回転制御が調整される。
【0153】
回転制御部713は、設定情報721に従って待機時間や回転速度を調整した上で、金型装置800の各々について、第1位置P1(型締、射出ステージ)、第2位置P2(冷却ステージ)、及び第3位置P3(取出ステージ)の順に配置されるよう、回転テーブル121の回転制御を行う(S1506)。
【0154】
本実施形態は、金型装置800が停止する位置として、第1位置P1(型締、射出ステージ)、第2位置P2(冷却ステージ)、及び第3位置P3(取出ステージ)を有する旨を説明した。しかしながら、金型装置800が停止する位置を、これらのステージに制限するものではない。例えば、第3位置P3を、取出ステージの代わりに取出・インサートステージとしてもよい。
【0155】
取出・インサートステージでは、エジェクタ装置200の制御に基づいて、成形品の取出のために、型開工程、突き出し工程、成形材料と一体化する部材(例えば、プレス品等)を金型装置800に挿入する挿入工程、及び及び型閉工程を行う。具体的な取出・インサートステージでは、金型装置800のうち下金型820を介してエジェクタ装置200の突き出し制御の開始によって金型装置800の上金型810が上昇する型開工程が行われ、さらなるエジェクタ装置200の突き出し制御によって成形品20が突き出される突き出し工程が行われ、当該成形品が取り出された後、成形材料と一体化する部材の挿入する挿入工程が行われる。その後、取出・インサートステージでは、上金型810を下降制御させる型閉工程によって、エジェクタ装置200の戻し制御の終了まで行う。
【0156】
本実施形態においては、各ステージの処理が開始してから成形時間経過した後に、回転制御または待機する場合について説明した。なお、本実施形態は、各位置での処理が開始してから回転制御を行うまでの所定時間が、成形時間の場合について説明したが、例えば、所定時間は、成形時間より長い時間であってもよい。
【0157】
本実施形態に係る射出成形機10は、上述した構成を備えることで、複数の金型装置が成形品を生成する際に生じる工程間の時間差を低減できる。当該時間差を低減させることで、例えば、金型装置800毎の冷却期間等の時間差が低減されるので、成形品の品質のばらつきを抑止できる。
【0158】
(変形例等)
以上、射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0159】
(変形例1)
上記実施形態では、ユーザから入力された値に従って、回転制御を調整する例について説明した。しかしながら、回転制御の調整をユーザから入力された値に制限するものではなく、射出成形機10で自動的に行ってもよい。そこで変形例1として、制御装置700が自動的に、冷却期間の時間差を狭めるように、回転制御を調整する例について説明する。なお、本変形例の制御装置700は、実施形態と同様の構成を備えるものとして説明を省略する。
【0160】
次に、変形例1に係る射出成形機10で行われる全体的な処理手順について説明する。
図12は、変形例1に係る射出成形機10で行われる全体的な処理手順を示したフローチャートである。
【0161】
回転制御部713は、第1区間、第2区間、及び第3区間の各々を移動させるために、回転テーブル121の回転制御を行う(S1601)。
【0162】
取得部714は、冷却期間を特定するための時間情報として、S1601において第1区間、第2区間、及び第3区間の各々を移動させるために回転テーブル121の回転時間の情報を取得する(S1602)。
【0163】
調整部715は、取得部714が取得した回転時間の情報に基づいて、冷却期間の時間差が小さくなるように、設定情報721を更新することで、回転テーブル121の回転制御を調整する(S1603)。例えば、取得部714が、第1区間の回転時間"1.5秒"、第2区間の回転時間"1.5秒"、第3区間の回転時間"3秒"を取得した場合に、調整部715は、第1区間と第2区間に待機時間"1.5"秒設定し、第3区間に待機時間"0"秒を設定する。これにより、調整部715は、回転時間と、待機時間と、の和を等しくできる。
【0164】
回転制御部713は、設定情報721に従って待機時間や回転速度を調整した上で、金型装置800の各々について、第1位置P1(型締、射出ステージ)、第2位置P2(冷却ステージ)、及び第3位置P3(取出ステージ)の順に配置されるよう、回転テーブル121の回転制御を行う(S1604)。
【0165】
本変形例では、金型装置800毎の冷却期間等の時間差が低減されるので、成形品の品質のばらつきを抑止できる。また、回転制御の調整が自動的に行われるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0166】
また、本変形例では、予め計測された回転時間に基づいて、待機時間を設定する手法に制限するものではない。例えば、取得部714が、射出成形機10において実際の成形時の回転時間の実績値を取得して、回転制御部713が、当該回転時間の実績値に基づいて時間差を低減するように自動的に待機時間を調整(更新)する制御を行ってもよい。
【0167】
(変形例2)
上述した実施形態、及び変形例では、冷却期間等の時間差を軽減するために、形成期間経過後の待ち時間、及び回転テーブル121の回転速度を調整する場合について説明した。しかしながら、冷却期間等の時間差を軽減する手法としては、形成期間経過後の待ち時間、及び回転テーブル121の回転速度の調整に制限するものではない。そこで、本変形例では、回転制御の後に各ステージの処理を行う前の待機時間を設定する場合について説明する。
【0168】
本変形例では、調整部715が、設定情報721に、基準状態(0°回転状態)、120°回転状態、及び240°回転状態の各々について、回転制御の後で、各ステージの処理を行う前の待機時間を設定する。
【0169】
制御装置700は、回転制御部713による回転制御の後、設定情報721に回転制御の後の待機時間が設定されている場合に、待機時間を待機した後に、各ステージの処理を開始するように制御する。例えば、第1区間の回転制御に"1.5秒"、第2区間の回転制御に"1.5秒"、第3区間の回転制御に"3秒"要した場合には、調整部715は、120°回転状態で各ステージの処理を開始する前に"1.5"秒の待機時間、240°回転状態で各ステージの処理を開始する前に"1.5"秒の待機時間、基準状態で各ステージの処理を開始する前に"0"秒の待機時間を、設定情報721に設定する。これにより、冷却期間等の時間差を軽減できるので、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0170】
(変形例3)
上述した実施形態及び変形例は、回転テーブル121に金型装置800が3個設けられた例について説明した。しかしながら、上述した実施形態及び変形例は、回転テーブル121に設ける金型装置800の数を制限するものではなく、4個以上であってもよい。そこで、変形例3では、回転テーブル121に金型装置800を4個設けた場合について説明する。
【0171】
図13は、本変形例に係る回転テーブル121における金型装置800の配置を例示した図である。
図13に示されるように、回転テーブル121には、第1金型装置800A、第2金型装置800B、第3金型装置800C、及び第4金型装置800Dが、90°毎に配置されている。
【0172】
本変形例では、金型装置800が配置可能な位置として、第1位置P1(型締、射出ステージ)、第2位置P2(第1冷却ステージ)、第3位置P3(第2冷却ステージ)、及び第4位置P4(取出ステージ)が存在する。第1位置P1(型締、射出ステージ)、及び取出ステージST4は、上述した実施形態と同様とする。
【0173】
第2位置P2(第1冷却ステージ)、及び第3位置P3(第2冷却ステージ)は、金型装置800を冷却するための位置とする。冷却期間は、第1位置P1(型締、射出ステージ)においてプラテン開工程で上プラテン110の上昇制御が開始してから、第4位置P4(取出ステージ)において型開工程でエジェクタ装置200の突き出し制御が開始するまでの期間とする。本変形例では、冷却ステージを2個設けることで、長い冷却期間が必要な成形品であっても対応することが可能となる。
【0174】
図12に示されるように、回転制御部713は、基準状態(0°回転状態)から90°回転状態までの右方向に第1区間1701の回転制御と、90°回転状態から180°回転状態までの右方向に第2区間1702の回転制御と、180°回転状態から270°回転状態までの右方向に第3区間1703の回転制御と、270°回転状態から基準状態(0°回転状態)までの左方向に第4区間1704の回転制御と、を行う。
【0175】
第1区間1701の回転制御と、第2区間1702の回転制御と、第3区間1703の回転制御と、の各々の回転時間は、例えば"1秒"とする。第4区間1704の回転制御による回転時間は、例えば"3秒"とする。
【0176】
このような場合には、調整部715は、基準状態(0°回転状態)と、90°回転状態と、180°回転状態と、の成形時間の後に、"2秒"の待機時間を設けるように、設定情報721を更新する。
【0177】
これにより、回転テーブル121の回転状態の各々において、回転時間、及び待機時間の合計時間が"3秒"となる。換言すれば、冷却期間の時間差を軽減できるので、成形品の品質のばらつきを抑止できる。
【0178】
(変形例4)
変形例3は、4個の金型装置800が配置可能な位置として、第1位置P1(型締、射出ステージ)、第2位置P2(第1冷却ステージ)、第3位置P3(第2冷却ステージ)、及び第4位置(取出ステージ)が存在する例について説明した。しかしながら、変形例3は、金型装置800が4個ある場合のステージ態様を制限するものではない。そこで、変形例4では、ステージの別態様について説明する。
【0179】
本変形例では、金型装置800が配置可能な位置として、第1位置P1(インサートステージ)、第2位置P2(型締、射出ステージ)、第3位置P3(冷却ステージ)、及び第4位置(取出ステージ)が存在する。型締、射出ステージ、冷却ステージ、及び取出ステージは、上述した実施形態と同様とする。
【0180】
第1位置P1のインサートステージでは、成形材料と一体化する部材(例えば、プレス品等)を金型装置800への挿入が行われる。インサートステージで行われる具体的な処理は、金型装置800のうち下金型820を介してエジェクタ装置200の突き出し制御の開始によって金型装置800の上金型810が上昇する型開工程が開始され、金型装置800の上金型810を上昇させた後、成形材料と一体化する部材を挿入する挿入工程が行われ、エジェクタ装置200の戻し制御で上金型810を下降させる型閉工程の終了まで行われる。
【0181】
本変形例は、回転時間は変形例3と同様とする。このため、調整部715は、基準状態(0°回転状態)と、90°回転状態と、180°回転状態と、の成形時間の後に、"2秒"の待機時間を設けるように、設定情報721を更新する。これにより、回転時間、及び待機時間の合計時間が"3秒"となる。換言すれば、冷却期間の時間差を軽減できるので、成形品の品質のばらつきを抑止できる。
【0182】
上述した実施形態及び変形例においては、上述した構成を備えることで、回転テーブルに配置された位置に基づいた、各金型装置における工程間の時間差を低減できるため、成形品の品質のばらつきを抑止できる。
【符号の説明】
【0183】
10 射出成形機
700 制御装置
702 記憶媒体
711 入力受付部
712 表示処理部
713 回転制御部
714 取得部
715 調整部