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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ナトリウム排出粒子
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20241008BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A23L29/256
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021522791
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2020020791
(87)【国際公開番号】W WO2020241650
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019099141
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513327333
【氏名又は名称】トイメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】竹下 英徳
(72)【発明者】
【氏名】前田 涼子
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013220(JP,A)
【文献】特開2019-010097(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038310(WO,A1)
【文献】特表2007-503293(JP,A)
【文献】特開昭60-130523(JP,A)
【文献】特開昭59-034853(JP,A)
【文献】特開2009-057343(JP,A)
【文献】米国特許第05695784(US,A)
【文献】特開2010-279354(JP,A)
【文献】国際公開第2017/182350(WO,A1)
【文献】辻啓介 他,食物繊維のナトリウム吸着能が高血圧自然発症ラットの血圧に及ぼす影響,日本家政学会誌,1988年,Vol.39, No.3,p.187-195
【文献】朝倉富子,食品由来の酸性バイオポリマーによる食塩吸収抑制効果の解析とその応用,公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団,平成22年度助成研究報告集 II 医学 食品科学編,2012年,p.99-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00 - 29/256
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸アンモニウムを有効成分とし,
前記アルギン酸アンモニウムがセラックと,HPMC若しくはzeinのいずれかとで被膜された粒子であって,
前記粒子の粒子径が80から250μmであり,
ナトリウム排出補助食品として,麺類,食肉加工品,練製品,パン,調味料のいずれかで用いられることを特徴とする食品用アルギン酸アンモニウム粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の食品用アルギン酸アンモニウム粒子を含んでなるナトリウム含有調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ナトリウム排出粒子に関する。さらに詳しく言うと本発明は,食品や食事(料理)に混合ないし付着させて用いることで,体内に摂取した後,消化管内においてナトリウムを吸着し,体外への排泄を促進するナトリウム排出粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析をはじめとして,腎機能に障害を持つ患者の多くは,非常に厳しい食事制限が課されている。特に食塩の過剰摂取は,健康に極めて悪い影響を及ぼすことから,基本的には無塩・減塩の食事となってしまう。結果として,患者の濃い味の食べ物に対する渇望は,健常者の想像を絶するものである。
また,医療の進歩により,高血圧による脳卒中や心筋梗塞などの血管性疾患の発症のリスクが明らかとなってきた。これに伴い,正常値とされる血圧の値が時代とともに低くなってきている。このことから,高血圧とならないための生活習慣が関心を集めており,その一つとしてナトリウム摂取を控えること(減塩)が重要であると認識されている。
このような事情から,体外への塩分排出を促進する組成物に関する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第6497764号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は,本願発明者らによる技術であり,アルギン酸アンモニウムを有効成分とし,体外へのナトリウム排出を促進する食品組成物に関する技術である。
かかる食品組成物は,好適には,アルギン酸アンモニウムとアルギン酸カルシウムを混合させ,アルギン酸アンモニウムを有効成分とするカプセル剤として用いられるものである。かかるカプセル剤により,アルギン酸アンモニウムが消化管内でナトリウムを吸着し,そのまま体外へ排出されることにより,ナトリウム吸収を抑制するものである。
【0005】
このようにアルギン酸アンモニウムは,優れたナトリウム排出能を有するが,食品に用いる場合には若干の課題を有していた。
すなわち,アルギン酸アンモニウムは,独特の臭いや風味を有することから,食品に混合ないし付着させて用いた場合,食品としての味や風味を損なってしまいかねない点である。加えて,アルギン酸アンモニウムを直接食品に混合すると,食品に含まれる塩分を吸着することで,食品としての塩味を損なってしまいかねない点である。
【0006】
上記事情を背景として本発明では,アルギン酸アンモニウムをはじめとするアルギン酸塩を有効成分とした新たな組成物の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは,鋭意研究の結果,アルギン酸アンモニウムを微粒子とするとともに,これを微小カプセル化することに想到し発明を完成させた。
すなわち,アルギン酸アンモニウムを有効成分として内部に含む微小カプセルとすることにより,食するときにはその風味を感じることなく食することが可能となり,食した後においては消化管においてカプセルを崩壊等させることでナトリウム排出能を発揮するものである。
【0008】
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,アルギン酸塩(ナトリウム塩を除く)を有効成分とし,
これを内部に含むことを特徴とする食品用アルギン酸塩含有微小カプセルである。
【0009】
本発明の第二の構成は,アルギン酸塩として,少なくともアルギン酸アンモニウムを含む第一の構成に記載の食品用アルギン酸塩含有微小カプセルである。
本発明の第三の構成は,微小カプセルの粒子径が,10から3,000μmである第一又は第二の構成に記載の食品用アルギン酸塩含有微小カプセルである。
本発明の第四の構成は,微小カプセルが,水溶性ポリマー又は腸溶性ポリマー,コポリマー,油脂,糖類,糖アルコール,樹脂のいずれか又は複数で被膜されている第一から第三の構成いずれかに記載の食品用アルギン酸塩含有微小カプセルである。
【0010】
本発明の第五の構成は,第一から第四の構成いずれかに記載の食品用アルギン酸含有微小カプセルを含んでなるナトリウム排出補助食品である。
本発明の第六の構成は,前記ナトリウム排出補助食品が,麺類,食肉加工品,練製品,パン,調味料である第五の構成に記載のナトリウム排出補助食品である。
本発明の第七の構成は,第一から第四の構成いずれかに記載の食品用アルギン酸含有微小カプセルを含んでなるナトリウム含有調味料である。
【0011】
本発明の第八の構成は,第一から第四の構成いずれかに記載の食品用アルギン酸含有微小カプセルを,食品に添加して用いることで,食品を食した際のナトリウム排出を促進するための使用方法である。
本発明の第九の構成は,第一から第四の構成いずれかに記載の食品用アルギン酸含有微小カプセルを,食品に付着して用いることで,食品を食した際のナトリウム排出を促進するための使用方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により,アルギン酸アンモニウムをはじめとするアルギン酸塩を有効成分とした新たな組成物の提供が可能となった。
すなわち,本発明における食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,食品内に含めたり,食品表面に付着させたりすることで,体内での塩分吸収を抑制するとともに体外への排出を促進するという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】食品用アルギン酸塩含有微小カプセルを模式的に示した図。
図2】食品用アルギン酸塩含有微小カプセルの実験例の外観を示した図。
図3】食品用アルギン酸塩含有微小カプセルと,食塩の外観を比較した図。
図4】食品用アルギン酸塩含有微小カプセルを拡大して示した図。
図5】食品用アルギン酸塩含有微小カプセルを拡大して示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の食品添加物用アルギン酸塩含有微小カプセルについて説明を行う。
【0015】
本発明の食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,アルギン酸塩(ナトリウム塩を除く)を有効成分とし,これを内部に含むことを特徴とする。
すなわち,アルギン酸塩を含む微小カプセルとすることにより,食品に付着ないし添加して用いた際に,舌に直接,アルギン酸塩が接触することがないため,アルギン酸塩,特にアルギン酸アンモニウムの独特の臭いや風味を感じることなく,食品を食することができる。また,食品において,アルギン酸塩による直接的な塩分吸着を防ぐことにより,塩味を損なうことなく食すことが可能となる。加えて,消化管内において微小カプセルが崩壊し,アルギン酸塩としてのナトリウム吸着能を発揮することで,ナトリウム排出を促進するものである。
このように本発明のアルギン酸塩含有微小カプセルは,これを食品内に含めたり,食品表面に付着させたりすることで,体内でのナトリウム吸収を抑制するとともに体外への排出を促進するという使用方法を提供するものである。
【0016】
アルギン酸は,(C6H8O6)nで表される化合物であり,カプセル内に含む有効成分として用いる限り特に限定する必要はない。
すなわち,藻類などに含まれる天然由来のものを用いてもよいし,化学的に合成したものを用いてもかまわない。また,アルギン酸は,ナトリウム吸着という本発明の趣旨を損なわない限り,化学構造の一部を置換ないし修飾したものを用いても構わない。
【0017】
アルギン酸塩は,ナトリウム排出の役割を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の分子量のものを用いることができる。
アルギン酸塩の粘度平均分子量として,典型的には,100から1,000万のものを用いることができ,より好ましくは1,000から900万,さらに好ましくは1万から900万,特に好ましくは10万から900万,最も好ましくは10万から800万のものを用いることができる。
【0018】
アルギン酸塩は,微小カプセルの形成が可能である限り特に限定する必要はなく,湿潤状態のものを用いてもよいし,乾燥状態のものを用いてもよい。
すなわち,微小カプセル製造工程において,湿潤状態のまま被膜化を行い最終製品化してもよいし,湿潤状態のものを被膜化後に乾燥させて最終製品化してもよいし,初めから乾燥状態のものを被膜化して最終製品化してもよく,適宜,選択して用いることができる。
【0019】
アルギン酸塩は,粘度の観点から種々のものを用いることができる。すなわち,アルギン酸塩そのものは同一の分子量を有するものでは通常ないことから,原料として用いる場合に粘度によりこれを特定するものである。
アルギン酸塩の粘度として,典型的には,20℃での1%(w/v)濃度における粘度が10から1000mPa・sのもの,又は20℃での10%(w/v)濃度における粘度が10から3000mPa・sのものを用いればよく,より好ましくは20℃での1%(w/v)濃度における粘度が20から900mPa・s,さらに好ましくは100から900mPa・s,特に好ましくは100から400mPa・s,最も好ましくは300から400mPa・sのものを用いることができる。
【0020】
アルギン酸塩としては,ナトリウム塩でない限り特に限定する必要はなく,種々の塩とすることができる。このような塩として,例えば,有機カチオン塩,カルシウム塩,マグネシウム塩,鉄塩,亜鉛塩などが挙げられる。
なお,本発明におけるアルギン酸塩はナトリウム塩を除外するものであるが,技術的な制限から,微量が混入することまでを排除する趣旨ではない。すなわち,アルギン酸塩は,アルギン酸ナトリウムを原料として,塩の置換反応により化学的に製造される場合があることから,この場合に微量に含まれるナトリウム塩までをも排除する趣旨ではない。
【0021】
アルギン酸塩として,有機カチオン塩を用いることが好ましい。これにより,有効成分からの金属塩の放出を抑制することが可能となり,腎機能に障害を持つ患者などにも安全に適用しうるという効果を有する。
有機カチオン塩としては,アルギン酸塩の形成が可能であり,かつ,安全性を担保しうる限り特に限定する必要はなく,種々の有機カチオンを用いることができる。
【0022】
有機カチオン塩は,アンモニウム塩(アルギン酸アンモニウム)とすることが好ましい。
これにより,他のアルギン酸塩などと比較して,本発明の食品組成物のナトリウム排出能を,顕著に優れたものとできる効果を有する。加えてアルギン酸アンモニウムは,湿潤状態においては高すぎない適度な粘性を有するものであり,乾燥状態においては粒子径の調整によるマイクロカプセル化が比較的容易であることから,取扱性や成形性に優れるという効果を有する。
【0023】
アルギン酸アンモニウムを用いる場合,典型的には,20℃での1%(w/v)濃度における粘度が,20から900mPa・sのものを用いればよい。また,アルギン酸アンモニウムとして,より好ましくは20℃での1%(w/v)濃度における粘度が100から400mPa・s,さらに好ましくは300から400mPa・sのものを用いることできる。
これにより,アルギン酸アンモニウムの取扱性や成形性をさらに向上させることができ,本発明の剤形化をより容易にできる効果を有する。
【0024】
本発明においてアルギン酸有機カチオンに加えて,さらにアルギン酸無機カチオン(アルギン酸金属塩;ナトリウムを除く)を含有することができる。
これにより,粘度特性の異なるアルギン酸有機カチオンとアルギン酸無機カチオンを組み合わせ食品組成物に対応した粘度特性としつつ,ナトリウム吸着能を保持することが容易となり,本発明の食品組成物の取扱性や成形性を向上させる効果を有する。
アルギン酸有機カチオンとアルギン酸無機カチオンについては,食品組成物の態様により,種々の比率とすることができるが,アルギン酸有機カチオン塩に対するアルギン酸無機カチオンの重量比(アルギン酸無機カチオン重量/アルギン酸有機カチオン重量)を,典型的には,0.05から10,より好ましくは0.1から10,さらに好ましくは0.1から1.0とすることができる。
【0025】
用いるアルギン酸無機カチオンは,ナトリウム塩でない限り特に限定する必要はなく,種々の金属塩を用いることができるが,典型的には,カリウム塩,カルシウム塩,マグネシウム塩,鉄塩,亜鉛塩などから1種もしくは2種以上を選択することができる。
アルギン酸無機カチオンとして,カリウム塩を除くことが好ましい。これにより,本発明の食品組成物摂取後のカリウム放出を防ぐことができ,腎機能に障害を持つ患者などにも安全に適用しうるという効果を有する。
また,アルギン酸無機カチオンとして,多価カチオン塩とすることが好ましい。これにより,アルギン酸塩における金属イオンの含量を少ないままナトリウム排出保持能を維持することが可能となり,本発明の食品組成物摂取後の金属放出を低減することにより,腎機能に障害を持つ患者や高血圧が懸念される健常者などにも安全に適用しうるという効果を有する。
さらに,アルギン酸無機カチオンとして,カルシウム塩を用いることが好ましい。アルギン酸カルシウムは,粘性が特に低いことから,前述の有機カチオン塩と組み合わせることにより,食品組成物としての形成性を向上させ,ナトリウム吸着能を保持しつつ,最適な剤形化を図ることができるという効果を有する。
【0026】
本発明の食品用アルギン酸塩含有微小カプセルにおいて「微小」とは,食品に用いる添加物として,十分に小さいものとして定義される。
すなわち,本発明の食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,食品に付着ないし添加して用いることを基本とする。そのため,食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,用いる際に,食品としての味や食感を損なわない程度の大きさとする必要があり,使用する食品においてその大きさは変わりうることから,大きさを厳密に定義しうるものではない。
このような食品用アルギン酸塩含有微小カプセルとしてマイクロカプセルとすることができ,粒径を数μmから数百μm,もしくは数μmから数千μmに調製するなどすればよい。このようなマイクロカプセルの粒径として例えば,10から3000μm,好ましくは10から2500μm,より好ましくは20から2500μm,特に好ましくは30から2500μm,最も好ましくは40から2000μmとするなどである。
【0027】
食品用アルギン酸塩含有微小カプセルをマイクロカプセルとする場合(以下,単に,「アルギン酸塩含有マイクロカプセル」という),芯物質としてアルギン酸塩を用い,カプセル壁としては可食可能な被膜材料(以下,単に「被膜材料」という)を用いればよい。
被膜材料としては,アルギン酸塩としての有効性を損なうことなく,かつ,消化管でのアルギン酸塩放出を可能とする限り特に限定する必要はなく,種々の観点から選択することができる。このような被膜材料としては,水溶性ポリマー又は腸溶性ポリマー,コポリマー,油脂,糖類,糖アルコール,樹脂を用いればよく,これらを単独もしくは二種以上を混合して用いることができる。このような被膜材料の具体的な化合物として,例えば,エチレン・酢酸ビニル共重合体,アクリル酸エチル・メタクリル酸共重合体,アミノアルキルメタクリレート共重合体,ポリエチレン,ポリアミド,エチルセルロース,エチルセルロース水分散液,ポリメチルメタクリレート,アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液,アセチルグリセリン脂肪酸エステル,アミノアルキルメタクリレートコポリマーE,アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS,アラビアゴム,アラビアゴム末,オクチルデシルトリデリセリド,オパドライAMB,オパドライOY-6950,オパドライOY-S-7135,オパドライOY-S-8471,オパドライOY-S-9607,オパドライOY-S-22829,オパドライOY-S-22835,オパドライOY-S-22961,オリブ油,カオリン,カカオ脂,カゴソウ,カスターワックス,カラメル,カルナウバロウ,カルボキシビニルポリマー,カルボキシメチルエチルセルロース,カルボキシメチルスターチナトリウム,カルメロースカルシウム,カルメロースナトリウム,含水二酸化ケイ素,乾燥水酸化アルミニウムゲル,乾燥乳状白ラック,乾燥メタクリル酸コポリマーLD,寒梅粉,魚鱗箔,金箔,銀箔,クエン酸トリエチル,グリセリン,グリセリン脂肪酸エステル,ケイ酸マグネシウム,軽質無水ケイ酸,軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース,軽質流動パラフィン,鯨ロウ,結晶セルロース,硬化油,合成ケイ酸アルミニウム,合成ワックス,高ブドウ糖水アメ,硬ロウ,コハク化ゼラチン,小麦粉,コムギデンプン,コメデンプン,酢酸セルロース,酢酸ビニル樹脂,酢酸フタル酸セルロース,サランミツロウサラシミツロウ,酸化チタン,酸化マグネシウム,メチルメタクリレート,ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー,ジメチルポリシロキサン(内服用),ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物,焼セッコウ,ショ糖脂肪酸エステル,ジンコウ末,水酸化アルミニウムゲル,水素添加ロジングリセリンエステル,ステアリルアルコール,セトステアリルアルコール,ステアリン酸,ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸ポリオキシル40,ステアリン酸マグネシウム,精製ゼラチン,精製セラック,精製白糖,ゼイン,セスキオレイン酸ソルビタン,セタノール,セッコウ,ゼラチン,セラック,ソルビタン脂肪酸エステル,D-ソルビトール,D-ソルビトール液,第三リン酸カルシウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,単シロップ,中金箔,沈降炭酸カルシウム,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース,テルペン樹脂,デンプン(溶性),トウモロコシシロップ,トウモロコシ油,トリアセチン,乳酸カルシウム,乳糖,濃グリセリン,白色セラック,白糖,ハチミツ,パラフィン,パール末,バレイショデンプン,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート,ピペロニルブトキシド,ヒマシ油,フタル酸ジエチル,フタル酸ジブチル,ブチルフタリルブチルグリコレート,ブドウ糖,フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910混合物,プルラン,プロピレングリコール,ベントナイト,ポビドン,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60,ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール,ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール,ポリソルベート80,ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート,D-マンニトール,水アメ,ミツロウ,ミリスチルアルコール,無水ケイ酸水加物,無水フタル酸,無水リン酸水素カルシウム,メタクリル酸コポリマーL,メタクリル酸コポリマーLD,メタクリル酸コポリマーS,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム,メチルセルロース,メチルアクリレート,2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー,モクロウ,モノステアリン酸アルミニウム,モノステアリン酸グリセリン,モノラウリン酸ソルビタン,モンタン酸エステルワックス,薬用炭,ラウロマクロゴール,硫酸カルシウム,流動パラフィン,DL-リンゴ酸,リン酸一水素カルシウム,リン酸水素カルシウム,リン酸水素ナトリウム,リン酸二水素カルシウム,ロジン,ヒドロキシプロピルセルロース(HPC),ヒプロメロース(HPMC),カルボキシビニルポリマー,架橋ポリヒドロキシエチルメタクリレート,ポリビニルアルコール,多糖類(デンプン,デキストラン,アルギン酸,キトサン),アルブミン,フィブリノーゲン,コラーゲン,ゼラチン,ポリ乳酸・グリコール酸共重合体,ポリオルソエステルなどを用いることができ,これらを単独もしくは二種以上を混合して用いることができる。
【0028】
アルギン酸塩含有マイクロカプセルの製造方法は,その製造が可能である限り特に限定する必要はなく,種々の製造方法を用いることができる。すなわち,芯物質と被膜材料の種類に応じて,適宜,化学的製造方法,物理化学的製造方法,機械的製造方法などから選択して用いることができる。
化学的製造方法は,化学反応を利用してカプセル壁を形成し,マイクロカプセルを作製する方法であり,界面重合法やin-site重合法などが挙げられる。
物理化学的製造方法は,凝固や析出など,化学反応によらないでマイクロカプセルを作製する方法であり,液中乾燥法やコアセルベーション法などが挙げられる。
機械的製造方法は,機械を用いてマイクロカプセルを作製する方法であり,噴霧乾燥法や乾式混合法などが挙げられる。
【0029】
アルギン酸塩含有マイクロカプセルを製造する一連の流れを説明する。
まず,芯物質として,所定の平均粒子径のアルギン酸塩を用いる。かかる場合,使用目的に応じて,アルギン酸塩の平均粒子径を適宜調整することができる。例えば,調味料としてアルギン酸塩含有マイクロカプセルを含有させる場合は,芯物質であるアルギン酸塩の平均粒子径を,500μm以下を目安として調整すればよい。平均粒子径の調整は,メッシュフィルターを用いて調整すればよい。これらのアルギン酸塩の選択と平均粒子径の調整は,通常の技術常識として行うことができる。
アルギン酸塩としては,取扱性と経済性の観点から,単一成分のものを用いることが好ましい。また,アルギン酸塩としては,アルギン酸塩を用いることが好ましい。
【0030】
芯物質を選択した後は,これを覆うための皮膜材料の選択を行う。
皮膜材料については,皮膜方法や使用目的に応じて,適宜選択することができる。例えば,皮膜材料を噴霧してコーティングする際には,噴霧に適した皮膜材料を選択することができ,このような皮膜材料として,HPMCやzein,shellacなどを用いることができる。
芯物質に,皮膜材料を噴霧してコーティングを行う方法については,当業者が使用する通常の機器を用いることで行うことができる。
【0031】
食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,食品に付着ないし添加して用いることができる。好適には,アルギン酸塩含有マイクロカプセルは,食品材料の一つとして添加・混合し,必要に応じてこれを熱処理などの加工を行い,食品とするものである。かかる食品は,食する際に,舌に直接,アルギン酸塩が接触することがないため,アルギン酸塩,特にアルギン酸アンモニウムの独特の臭いや風味を感じることなく,食することができるものである。また,食品内において,アルギン酸塩による直接的な塩分吸着を防ぐことにより,塩味を損なうことなく食すことが可能となる。加えて,消化管内において微小カプセルが崩壊し,アルギン酸塩としてのナトリウム吸着能を発揮することで,ナトリウム排出を促進するものである。
食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,かかる役割を果たす限り特に限定する必要はなく,種々の食品に添加して用いることができる。このような食品はナトリウム排出補助食品として構成されるものであり,このようなものとして,例えば,麺類,食肉加工品,練製品,パン,調味料などが挙げられる。
【0032】
食品用アルギン酸塩含有微小カプセルは,好適には,粉末状調味料に含有する態様で用いることができる。すなわち,ナトリウムを含む調味料に,食品用アルギン酸塩含有微小カプセルを所定量含ませる。この食品用アルギン酸塩含有微小カプセル含有粉末状調味料は,食品表面にまぶして使用することができ,かつ,ナトリウム吸収を抑制した調味料として用いることができる。
また,粉末状調味料においては,必ずしもナトリウムを含有することを必須とするものではない。すなわち,調味料そのものはナトリウムを含まなくても,食品そのものが塩分を含有するものであれば,食品用アルギン酸塩含有微小カプセル含有粉末状調味料をまぶして使用することで,ナトリウム吸収を抑制することが可能となる。
【0033】
図1に,食品用アルギン酸塩含有微小カプセルを模式的に表した図面を示す。
図1のとおり,芯物質が,カプセル壁内部に含有されている。かかる構成における芯物質として,アルギン酸塩は含まれるものである。アルギン酸塩は,単独で芯物質としてもよいし,複数種のアルギン酸塩の組み合わせや他の物質を組み合わせて芯物質としてもよい。カプセル壁についても同様であり,単一の化合物を用いたり,複数種の化合物を組み合わせてカプセル壁を構成してもよい。また,カプセル壁は,図1の左に示すように単層のカプセル壁としてもよいし,右に示すように複数層のカプセル壁としてもよい。
【実施例
【0034】
本発明のアルギン酸塩含有微小カプセルについて,詳細に説明を行う。
【0035】
<<I.実験方法>>
アルギン酸アンモニウムを原料として,表に示したサンプルの作製を行った。なお,表中の製造方法の概略は,下記のとおりである。
<製造法1.スプレードライ法>
[使用装置]窒素ガス密閉循環型スプレードライヤ(大川原化工機,サークレックスCL-8i)
[概略]アルギン酸アンモニウムにHPMCを噴霧して,9%(w/w)コーティングした粉末を作製した。平均粒子径は,60μmほどに調整した。
<製造法2.流動層造粒コーティング>
[使用装置]流動層造粒コーティング装置(フロイント産業,フローコーターFL-LABO)
[概略]アルギン酸アンモニウムに,各種コーティング物質を噴霧して,コーティングした粉末を作製した。平均粒子径は,115から240μmほどに調整した。
<製造法3.転動流動層造粒コーティング>
[使用装置]転動流動層造粒コーティング機(パウレック,FD-MP-01D)
[概略]アルギン酸アンモニウムに,各種コーティング物質を噴霧してコーティングした粉末を作製した。平均粒子径は,80から250μmほどに調整した。
【0036】
【表1】
【0037】
<<II.実験結果>>
1.図2に,作製された粉末の外観を示す。なお,比較例については,それぞれ比較例1が80メッシュで処理したアルギン酸アンモニウム粉末であり実験例6から9の原料粉末,比較例2が150メッシュで処理したアルギン酸アンモニウム粉末であり実験例2から5ならびに10から13の原料粉末である。また,実験例1の原料粉末は,アルギン酸アンモニウム粉末(平均粒子径10μm,不図示)を用いている。
(1) 実験例1について,全体的に細かな粒子であり,さらさらのパウダー状であった。
(2) 実験例2から9についても,全体的に細かな粒子であり,サラサラのパウダー状であった。
(3) 実験例10から13についても,全体的に細かな粒子であり,サラサラのパウダー状であった。
(4) いずれの製造方法においても,特段の違いは認められず,良好な外観と性状であった。
(5) 加えて,比較例においては多少のにおいがあるのに対し,実験例においては,そのにおいが減少したり,なくなったりしていた。特に,実験例6から8,実験例12,13において,その効果が顕著であった。
【0038】
2.図3に,作製された粉末(実験例9)と,市販されている食塩ならびに塩コショウを並べて比較した写真を示す。図中,Aが食塩,Bが実験例9の粉末,Cが塩コショウである。実験例いずれにおいても市販されている食塩の外観と大きな違いはなかった。このことから,作製された粉末を,一般的な調味料に混合して用いても支障がないことが分かった。
【0039】
2.走査電子顕微鏡を用いて,各実験例を観察した結果を図4図5に示す。
(1) 図4において,比較例と比べて,実験例においては,表面上にコーティング物質が付着しており,その表面も滑らかに覆われていることが確認された。
(2) 図5においても,比較例と比べて,実験例においては,表面上にコーティング物質が付着しており,その表面も滑らかに覆われていることが確認された。
【0040】
3.各サンプルのナトリウム吸着能を評価した結果を表2から4に示す。これらの実験は,各試験液1mL中にそれぞれのサンプル50mgを加え,ナトリウム濃度を経時的に測定した結果である。
【0041】
(1) 実験例1では,比較例1と比べて全体的にやや高めの塩分濃度を示したものの,経時的な塩分濃度の低下が確認された。
【表2】
【0042】
(2) 実験例2から9において,比較例1と比べて全体的にやや高めの塩分濃度を示したものの,経時的な塩分濃度の低下が確認された。
(3) 実験例3においては,比較例1と同程度の塩分濃度を示し,経時的な塩分濃度の低下が確認された。
【表3】
【0043】
(4) 実験例10から13において,比較例1と比べて全体的にやや高めの塩分濃度を示したものの,経時的な塩分濃度の低下が確認された。
【表4】
【0044】
(5) これらの結果から,実験例における,比較例と比べて全体的にやや高めの塩分濃度と経時的な塩分濃度の低下は,アルギン酸アンモニウム原料粉末のコーティングの効果であると考えられた。
(6) また,コーティングの種類や比率などにより,それらの傾向が異なることから,コーティングを調整することにより,塩分吸着の傾向をコントロールしうることが分かった。
【0045】
4.表5に,各サンプルの粘度を測定した結果を示す。粘度の測定は,各溶媒100mLに,各サンプル0.2gを加え500rpmにて攪拌しながら,振動式粘度計(VISCOMATE, VM-10A)を用いて測定を行った。なお,表中,比較例2は実験例2から5の原料粉末であり,比較例3は実験例1の原料粉末であり,10μmのアルギン酸アンモニウム粉末である。
(1) 比較例と比べて,実験例においては時間経過に従って粘度が増す傾向がみられた。また,この傾向については,溶媒によって差が生じており,コーティングに起因すると考えられた。
(2) HPMCを用いた実験例1から3のpH6.8においては,zeinを用いた実験例4ないし5と比べて,1分後から比較的粘度の高い傾向であった。これより,HPMCそのものが,粘度に影響を与えていることが示唆された。
【表5】


図1
図2
図3
図4
図5