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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】経腸栄養バッグ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20241008BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61J1/10 335D
A61J1/10 335A
B65D33/00 C
B65D33/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018216003
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020081030
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】近藤 利充
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4869725(US,A)
【文献】国際公開第2014/002730(WO,A1)
【文献】特開2004-447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両側のシートの重ね合わせ面間に、開口部分を上部に有する液状体の収容領域が形成された経腸栄養バッグにおいて、
前記収容領域の下部には液状体の排出部が設けられている一方、
前記収容領域の前記開口部分には、幅寸法が大きな開口端側に位置して表裏両側の前記シートの両方において該シートの幅方向に延びる弾性部材が取り付けられていると共に、該開口部分における該シートの幅方向両縁部を互いに接近させる方向へ押圧する開口操作力の作用に際して、該弾性部材における該開口部分の開き方向への変形を補助する変形補助機構が設けられており、且つ、
該弾性部材が該シートの幅方向の一方の端部側だけで折り返されて連続した単一の部材からなる連続構造体とされており、該連続構造体によって前記変形補助機構が構成されていると共に、
該開口部分を繰り返し開閉可能にするチャック状封止部が前記開口端よりも下方で幅寸法が小さくされた位置に設けられており、
該チャック状封止部よりも上部において該弾性部材が該シートに取り付けられていると共に、
前記収容領域の前記開口部分において、表裏両側の前記シートの両方にはシート幅方向の全体にわたって別のシートが重ね合わされており、該弾性部材が、これら重ね合わされた2枚のシートの間に差し入れられて取り付けられている経腸栄養バッグ。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記2枚のシートのうちの少なくとも一方に密着状態で取り付けられている請求項に記載の経腸栄養バッグ。
【請求項3】
前記変形補助機構が、前記収容領域の前記開口部分における前記シートの幅方向の少なくとも一方の端縁部において、表裏両側の該シートが互いに重ね合わせ状態で固定されずに開放端とされていることによって構成されている請求項1又は2に記載の経腸栄養バッグ。
【請求項4】
前記連続構造体からなる前記弾性部材において、前記折り返された端部が、複数の折れ線を有する折返し構造とされている請求項1~3の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ。
【請求項5】
前記弾性部材が前記シートに沿って延びるプレート形状とされていると共に、前記折返し構造が2本の折れ線を有しており、該2本の折れ線の間において、前記開口操作力の作用面が設けられている請求項4に記載の経腸栄養バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野で用いられる経腸栄養バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、患者の鼻腔や口腔、瘻孔に挿し入れられたチューブを通じて栄養液や薬液を胃や腸などへ投与する経腸栄養法では、所定量の栄養液や薬液を収容しておく経腸栄養バッグが利用されている。
【0003】
このような経腸栄養バッグでは、一般に軟質合成樹脂製のシートが袋状に加工されて、液状体の収容領域が内部に形成されており、上側には開口部分が設けられている。
【0004】
ところで、経腸栄養バッグを使用する際には、液状の栄養液を開口部分から注ぎ入れる。この注入作業は、一般に一人で行われ、一方の手で経腸栄養バッグの開口部分を開いた状態に保ちつつ、他方の手で持ったカップ等の容器を傾けて、容器内に収容された液状体を経腸栄養バッグへ開口部分から注ぎ入れることによって行われる。
【0005】
ところが、経腸栄養バッグの袋本体が軟質の樹脂シートで形成されていることから、液状体を注ぎ入れる際に開口部分を充分に且つ一定に開いた状態に保ち難いという問題があった。
【0006】
なお、このような問題に鑑み、特開2011-78737号公報(特許文献1)には、開口部分を構成する2枚の樹脂シートの各外面にシート状の開閉操作部を固定して両樹脂シートの外側にそれぞれ指挿入用の孔を設けることにより、各開閉操作部に挿入した両方の指を互いに遠ざけるように開くことで開口部分を開口状態に保持できるようにした構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-78737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載の従来構造では、軟質の樹脂シートで形成された開口部分の形状を維持するのに各指を大きく広げ続けなければならない。特に1000ml程度の液状体の収容も想定される経腸栄養バッグにおいては、使用者は各指を広げた状態を維持し難く、また、液状体の重量が開口部分の樹脂シートに作用して開口部分が変形し易いことから、安定した開口形状を保持し続けることが難しいという、新規の問題を有していることが明らかとなった。
【0009】
本発明の解決課題とするところは、開口部分をより安定して開口し、更に開口状態に保持することができる、新規な構造の経腸栄養バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0013】
発明の第の態様は、表裏両側のシートの重ね合わせ面間に、開口部分を上部に有する液状体の収容領域が形成された経腸栄養バッグにおいて、前記収容領域の下部には液状体の排出部が設けられている一方、前記収容領域の前記開口部分には、幅寸法が大きな開口端側に位置して表裏両側の前記シートの両方において該シートの幅方向に延びる弾性部材が取り付けられていると共に、該開口部分における該シートの幅方向両縁部を互いに接近させる方向へ押圧する開口操作力の作用に際して、該弾性部材における該開口部分の開き方向への変形を補助する変形補助機構が設けられており、且つ、該弾性部材が該シートの幅方向の一方の端部側だけで折り返されて連続した単一の部材からなる連続構造体とされており、該連続構造体によって前記変形補助機構が構成されていると共に、該開口部分を繰り返し開閉可能にするチャック状封止部が前記開口端よりも下方で幅寸法が小さくされた位置に設けられており、該チャック状封止部よりも上部において該弾性部材が該シートに取り付けられていると共に、前記収容領域の前記開口部分において、表裏両側の前記シートの両方にはシート幅方向の全体にわたって別のシートが重ね合わされており、該弾性部材が、これら重ね合わされた2枚のシートの間に差し入れられて取り付けられているものである
発明の第の態様は、第の態様に記載された経腸栄養バッグにおいて、前記弾性部材が、前記2枚のシートのうちの少なくとも一方に密着状態で取り付けられているものである。
【0024】
本発明の第の態様は、第1又は第2の態様に記載された経腸栄養バッグにおいて、前記変形補助機構が、前記収容領域の前記開口部分における前記シートの幅方向の少なくとも一方の端縁部において、表裏両側の該シートが互いに重ね合わせ状態で固定されずに開放端とされることによって構成されているものである。
本発明の第4の態様は、第1~3の何れか1つの態様に記載された経腸栄養バッグにおいて、前記連続構造体からなる前記弾性部材において、前記折り返された端部が、複数の折れ線を有する折返し構造とされているものである。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載された経腸栄養バッグにおいて、前記弾性部材が前記シートに沿って延びるプレート形状とされていると共に、前記折返し構造が2本の折れ線を有しており、該2本の折れ線の間において、前記開口操作力の作用面が設けられているものである。
【0025】
本態様の経腸栄養バッグでは、表裏両側のシートにおける幅方向の少なくとも一方の端縁部が、相互に固定されずに開放端とされていることにより、開口部分の開き方向への変形に対する抵抗力が解消される。これにより、開口操作力が作用する際に、シートの開口部分に取り付けられた弾性部材が、表裏のシートの固着によって拘束されることなく、開口部分の開き方向へ変形し易くなって、それに伴って開口部分が開き易くなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、経腸栄養バッグにおいて、開口部分をより安定して開口し、更に開口状態に保持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態としての経腸栄養バッグを示す正面図。
図2図1のII-II断面に相当する拡大図。
図3図1のIII-III断面に相当する拡大図。
図4図1に示す経腸栄養バッグの開口部分を開く操作について説明する図であって、(a)は開口部分が閉じた状態を、(b)は開口部分が開いた状態を、それぞれ示す。
図5】本発明の第2の実施形態としての経腸栄養バッグを示す断面図。
図6】本発明の第3の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図。
図7図6に示す弾性部材を備えた経腸栄養バッグの要部を示す正面図であって、(a)が表側を、(b)が裏側を、それぞれ示す。
図8図6に示す弾性部材を備えた経腸栄養バッグの要部を示す断面図であって、(a)が弾性部材の取付け完了状態を、(b)が弾性部材の取付け前の状態を、それぞれ示す。
図9】本発明の別の一実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1~3には、本発明の第1の実施形態としての経腸栄養バッグ10が示されている。この経腸栄養バッグ10は、図1中の上下方向に長い袋構造とされており、上部には開閉可能な開口部分12が設けられている一方、下部には外部チューブ14を接続可能な排出用ポートとしてのポート部16が設けられている。そして、内部に栄養液等の液状体が収容されて栄養剤補給用バッグとして用いられるようになっている。なお、図2図4における経腸栄養バッグ10の袋本体22(後述)は、理解しやすくするために厚さ方向(図2中の左右方向)の縮尺を他の方向に比して拡大して図示している。
【0032】
より詳細には、経腸栄養バッグ10は、シートとしての外側シート18,18が互いに重ね合わされて、周囲の固着部20において相互に固着された構造を有しており、袋状の袋本体22を備えている。固着部20は重ね合わされる表裏2枚の外側シート18,18の周囲の三方向に設けられており、固着されない上方(図1中の上方)に開口部分12が設けられている。なお、この固着部20における表裏の外側シート18,18の固着手段は、例えば接着剤による接着等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、好ましくは熱による溶着(ヒートシール)が採用される。そして、表裏の外側シート18,18を上方へ開口する袋状に構成することにより、袋本体22の内部、すなわち表裏の外側シート18,18の間には、液状体を収容する収容領域24が形成されている。
【0033】
さらに、収容領域24の上方である袋本体22の開口部分12には、袋本体22、換言すれば収容領域24を開閉可能とするチャック状封止部26が、表裏の外側シート18,18に設けられている。要するに、表裏の外側シート18,18がチャック状封止部26で開閉可能に重ね合わされることにより、開口部分12が形成されている。
【0034】
チャック状封止部26は、開口部分12を繰り返し開閉可能にするものであって、閉状態では収容領域24を外部から液密に密閉し得るようになっている。チャック状封止部26の具体的構造は限定されないが、例えば一方の外側シート18の内面に設けられて開口部分12の幅方向に延びる凹溝と、他方の外側シート18の内面に設けられて開口部分12の幅方向に延びる凸条とによって構成された樹脂製チャックなど、各種公知の構造が採用可能である。本実施形態のチャック状封止部26は、凹溝と凸条からなる樹脂製チャックであって、それら凹溝と凸条が互いに押し付けられて弾性的に凹凸嵌合されることによって閉じられる。
【0035】
なお、図1中において、チャック状封止部26を構成する凹凸嵌合部は、袋本体22の内部で、表裏の外側シート18,18の各内面に形成されているが、それら外側シート18,18が透明材料で形成されていることと、構造を理解し易くする趣旨から、チャック状封止部26を実線で図示している。また、チャック状封止部26は、開口部分12を密閉することができるように、開口部分12において外側シート18の幅方向(図1中の左右方向)の全長に亘って形成されている。
【0036】
さらに、袋本体22の上端部には、一対のフラップ状部28,28が形成されている。即ち、袋本体22を構成する表裏の外側シート18,18には、チャック状封止部26よりも上方(図1中の上方)へ延び出した一対のフラップ状部28,28が形成されており、相互に重ね合わされている。
【0037】
なお、本実施形態では一対のフラップ状部28,28は同形とされているが、一対のフラップ状部は形状が同一でなくても良い。例えば、一対のフラップ状部の少なくとも一方において、外方に突出する摘み片を設けて、かかる摘み片を手指で摘んで開く方向の外力を及ぼすことにより、一対のフラップ状部を開く操作をし易くすること等も可能である。
【0038】
袋本体22を構成する表裏の外側シート18,18の材料としては、液状体への耐性等を考慮して、従来公知である軟質の樹脂シートの材料が適宜に採用され得る。即ち、表裏の外側シート18,18は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の樹脂材から形成されて、好ましくは透明な可撓性樹脂シートとされる。なお、表裏の外側シート18,18は、同一の樹脂材により形成されることが好ましいが、互いに異なる樹脂材で形成されていても良い。また、袋本体22において、各外側シート18,18が全体に亘って同一の材料で形成されていても良いし、例えば、フラップ状部28と収容領域24を形成する部分とを異なる材料で形成する等、部分によって形成材料を異ならせても良い。
【0039】
また、一対のフラップ状部28,28における幅方向の一方(図1中の左方)の端部には、固着部20が上端まで延び出している。これにより、一対のフラップ状部28,28の一方の端部が、相互に固着された閉止端30とされている。
【0040】
これに対して、一対のフラップ状部28,28における幅方向の他方(図1中の右方)の端部では、固着部20が一対のフラップ状部28,28の上端までは延びていない。本実施形態では、右方の固着部20は一対のフラップ状部28,28の下端までしか延びておらず、これにより、一対のフラップ状部28,28の他方の端部は、重ね合わせ方向で互いに離れ得る開放端32とされている。要するに、開放端32において、一対のフラップ状部28,28の上下方向の長さに対して上端から半分以上の範囲で相互に固着されておらず、互いに引き離し可能に開放されている。なお、一対のフラップ状部28,28は、幅方向の両方の端部が開放端32とされていてもよいし、両方の端部が閉止端30とされていてもよいが、好適には少なくとも一方の端部が開放端32とされる。
【0041】
特に、本実施形態では、一対のフラップ状部28,28における閉止端30側の固着部20は、袋本体22の上端から下方(図1中の下方)へ行くに従って、閉止端30側から開放端32側(図1中の左方から右方)に傾斜している。このように一対のフラップ状部28,28の閉止端30側が傾斜して溶着されていることによって、傾斜案内部34が形成されている。そして、後述する各フラップ状部28,28を互いに引き離した開口状態において、開口部分12の幅方向(図1中の左右方向)での開口寸法が、傾斜案内部34によって、開口部分12の下端から上端へ向けて次第に大きくなっている。
【0042】
さらに、一対のフラップ状部28,28には、内側シート38,38が重ね合わされている。内側シート38,38は、外側シート18,18と同様の合成樹脂シートであって、一対のフラップ状部28,28の高さ方向(図1中の上下方向)および幅方向(図1中の左右方向)の中間部分において、それらフラップ状部28,28の内面側に重ね合わされている。そして、重ね合わされたフラップ状部28,28と内側シート38,38は、周囲の固着部36において相互に固着されている。これにより、一対のフラップ状部28,28には、内部に空間を有する収容部としての袋状部40がそれぞれ形成されている。なお、内側シート38,38が外側シート18,18の上端部分に固着されていることから、外側シート18,18における開口部分12が内側シート38,38によって補強されており、部分的な剛性の向上などが図られている。
【0043】
袋状部40は、略一定の上下寸法で幅方向(図1中の左右方向)に延びており、一方の端部が封止されていると共に、他方の端部が外側シート18のフラップ状部28に開口する差入口42を通じて外部に開放されている。袋状部40の周壁部は、固着部36において相互に固着された外側シート18のフラップ状部28と内側シート38とによって構成されている。本実施形態では、外側シート18,18の重ね合わせ面である内面に内側シート38,38を重ね合わせて固着することで、外側シート18,18の内面側に空間を備える収容部(袋状部40)が形成されている。これによれば、外側シート18と内側シート38の加熱溶着が容易になると共に、耐久性に優れた袋状部40を安価に得ることができる。尤も、例えば、外側シート18,18の外面に別のシートを重ね合わせて固着することで、外側シート18,18の外面側に空間を備える収容部(袋状部)を形成することも可能である。
【0044】
袋状部40を形成するための固着部36の固着手段は、前述の固着部20と同様であり、例えば接着剤による接着等が挙げられて、特に限定されるものではないが、熱溶着(ヒートシール)が好適に採用される。また、外側シート18の材料と内側シート38の材料は、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。
【0045】
差入口42は、外側シート18に設けられる切込みや窓状の切抜き、切欠きなどによって形成することができる。本実施形態の差入口42は、外側シート18に開口する矩形窓状の切抜きによって形成されており、袋状部40の周壁部において、内側シート38で構成される部分が、外側シート18で構成される部分よりも、幅方向の外側(図1中の右側)まで延び出している。そして、内側シート38において外側シート18に形成された切抜きを通じて外部に露出する部分が、差入口42へ続く案内面44とされている。
【0046】
なお、差入口42は、例えば、外側シート18にU字状などの切込みを入れて切片を形成し、この切片を外側シート18と内側シート38の重ね合わせ面間へ折り込むことによっても形成可能である。これによれば、切片によって外側シート18と内側シート38が互いに離れて、袋状部40の開口である差入口42が広げられることから、後述する弾性部材46の袋状部40への差し入れが容易になり得る。
【0047】
袋状部40,40には、それぞれ弾性部材46が挿入されている。弾性部材46は、金属や合成樹脂或いは複合材などで形成された長手板状の部材であって、図1中の左右方向となる長さ方向で湾曲する曲げ変形について弾性を有している。弾性部材46は、袋本体22よりも硬質とされて、曲げ方向の変形剛性が袋本体22よりも大きくされている。本実施形態の弾性部材46は、図3に示すように、長手方向(図1,3中の左右方向)において、外方に向かって凸となるカーブを描くように湾曲している。弾性部材46は、略一定の曲率半径で湾曲していても良いし、曲率半径が徐々に変化していても良いが、全体として後述する袋状部40への収容状態で外側シート18に向けて凸となっている。
【0048】
本実施形態では、板状の弾性部材46を例示するが、弾性部材は、例えば、ロッド状やシート状などであってもよく、外側シート18に対して変形剛性が大きくされた長手状の部材が採用される。なお、弾性部材46は、好適には合成樹脂製とされており、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ナイロン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、硬質塩化ビニル等によって形成される。
【0049】
そして、弾性部材46は、差入口42を通じて袋状部40へ差し入れられている。これにより、弾性部材46は、開口部分12において外側シート18に取り付けられて、外側シート18の幅方向へ延びている。本実施形態では、図2,3に示すように、表裏両側の外側シート18,18に対して、それぞれ弾性部材46が取り付けられている。なお、弾性部材46は、表裏何れか一方の外側シート18にのみ取り付けられていても良い。
【0050】
本実施形態の弾性部材46は、図1に示すように、外側シート18の幅方向において袋状部40よりも短くされて、全体が袋状部40に収容されているが、袋状部40以上の長さを有して、袋状部40から突出していても良い。また、袋状部40の壁部を構成する外側シート18と内側シート38を、差入口42側の端部において相互に固着することで、弾性部材46の袋状部40からの抜けを防ぐこともできる。また、差入口42が閉止端30側に設けられる場合には、外側シート18,18を袋状部40の差入口42側の端部で相互に固着することによって、弾性部材46の抜けを防ぐことが可能であり、内側シート38,38を固着する必要はない。なお、袋状部40における差入口42側の端部を固着する以外に、例えば、弾性部材の中間部分に穴や括れが設けられている場合には、当該穴や括れの形成部分で袋状部40の周壁部を固着することにより、弾性部材の穴や括れと袋状部40の固着部分との係止によって抜けを防ぐことができる。また、本実施形態の弾性部材46は、湾曲板状とされており、袋状部40に対する抜差し方向(図1,3中の左右方向)の両端部が、内側シート38側へ傾斜していることから、外側シート18に形成された差入口42からの抜けが生じ難い。
【0051】
湾曲板状の弾性部材46が袋状部40に収容状態で配されることにより、フラップ状部28,28には、弾性部材46の形状に基づいて、開口部分12を開く方向の力、換言すれば、フラップ状部28,28を互いに引き離す方向の力が及ぼされる。
【0052】
袋本体22の上部には、貫通孔48が形成されている。貫通孔48は、2枚の外側シート18,18の開口部分12の上方(図1中の上方)に設けられている。本実施形態において、貫通孔48は、一対のフラップ状部28,28における閉止端30側(図1中の左方)に設けられた延出片50に形成されており、互いに重ね合わせ状態に固着された一対のフラップ状部28,28を貫通している。貫通孔48は、好適には、袋本体22の幅方向で袋状部40と並んで配置されて、上下方向で略同じ位置に設けられる。なお、貫通孔48は、必ずしも一対のフラップ状部28,28の重ね合わせ部分に形成する必要はなく、例えば一方のフラップ状部28だけに延出片50を形成し、かかる延出片50に貫通孔48を形成しても良い。また、例えば、貫通孔48を袋状部40の周壁部に形成して、貫通孔48を袋状部40の差入口42とすることも可能である。
【0053】
そして、この貫通孔48に図示しない吊下フック等を挿通させることにより、図示しない点滴スタンド等に対して、経腸栄養バッグ10を吊り下げ支持させることができるようになっている。また、貫通孔48は、手指を差し入れることが可能とされている。本実施形態の貫通孔48は、スタンドの吊下フックなどに経腸栄養バッグ10を引っ掛けるための掛止孔と、開口部分12を通じて収容領域24へ液状体を注入する作業を行う作業者(後述)が、経腸栄養バッグ10を片手で支持するための手指の挿入孔とを、兼ねている。
【0054】
袋本体22の底部には、収容領域24を内外に貫通するポート部16が設けられている。本実施形態では、ポート部16は、袋本体22の下端縁部において、貫通孔48と対角線方向で対向する角部に設けられている。ポート部16は、合成樹脂等の硬質材製とされており、好適には、袋本体22を構成する2枚の外側シート18,18より剛性が大きくされる。なお、ポート部16は、表裏の外側シート18,18間に挟まれて、両シート18,18の固着部20を貫通して配されており、例えば両シート18,18と一体的に溶着されたり、接着等によって固着されている。
【0055】
そして、ポート部16には、袋本体22の内部(収容領域24)に連通接続される内側開口部と反対の外側開口部に対して、図1に二点鎖線で示されているように外部チューブ14が接続可能とされている。この外部チューブ14は、従来公知のものが使用可能であって、本発明の構成要素でないから詳しい説明を省略するが、可撓性のチューブであり、必要に応じてチャンバー(点滴筒)やクレンメ(流量調整器)、コネクター等(何れも図示せず)が設けられて、鼻腔や瘻孔等から挿入されて胃や小腸等の患者体内(図示せず)に至っている。そして、収容領域24に収容される栄養液などの液状体が、この外部チューブ14を通じて患者の体内に投与される。
【0056】
袋本体22および収容領域24の高さ方向中間部分から下方は、幅方向において、上方より開放端32側(図1中の右方)に大きくされた拡幅部52とされており、幅方向の重心位置が開放端32側に偏倚している。また、図示しないスタンドの吊下フックに吊下げられた状態で支持点となる貫通孔48が、経腸栄養バッグ10の閉止端30側の上端部分に設けられている。これにより、経腸栄養バッグ10を図示しないスタンドに懸架する際に、経腸栄養バッグ10が図1の状態から貫通孔48を中心として右回りに傾斜して静置される。この結果、ポート部16が略鉛直方向に延びるように位置する。さらに、収容領域24におけるポート部16の周辺部分が狭幅となっていることから、経腸栄養バッグ10がスタンドに懸架された際に、収容領域24に収容された液状体がポート部16に流れ込みやすくなっており、液状体の収容領域24への残留量を軽減させることができる。
【0057】
このような構造とされた経腸栄養バッグ10によれば、作業者は、栄養液や薬液などの液状体を袋本体22の収容領域24へ入れる作業を行う際に、図4に示すように、開口部分12を片手で開いて保持することが可能となる。
【0058】
先ず、作業者は、図4(a)に示すように、親指54を経腸栄養バッグ10の貫通孔48に挿入すると共に、人差指56および中指58を経腸栄養バッグ10のフラップ状部28,28の開放端32側に当てる。或いは、人差指56又は中指58を貫通孔48に挿入すると共に、親指54をフラップ状部28,28の開放端32側に当てても良い。
【0059】
次に、作業者は、親指54と人差指56および中指58との距離を縮める方向で、経腸栄養バッグ10の開口部分12に幅方向の圧縮力である開口操作力を加える。これにより、経腸栄養バッグ10の開口部分12に設けられた弾性部材46,46に対して、外側シート18の幅方向(図4中の上下方向)の圧縮力が作用する。なお、作業者は、外側シート18,18よりも剛性の高い弾性部材46に開口操作力を加えることによって、経腸栄養バッグ10を片手で把持することができる。
【0060】
弾性部材46は、予め外側シート18の幅方向において湾曲した初期形状を有していることから、開口操作力によって圧縮されると、曲率を増すように弾性変形する。弾性部材46は、初期形状において、開口部分12の開き方向である外側シート18の外面側へ向けて凸となるように、袋状部40に配設されている。それ故、弾性部材46,46は、開口操作力の作用によって、相互に離れるように、開口部分12の開き方向に変形する。このように、本実施形態では、弾性部材46における開口部分12の開き方向への変形を補助する変形補助機構が、外側シート18の幅方向において弾性部材46が開口部分12の開き方向へ湾曲した初期形状とされることによって構成されている。
【0061】
開口部分12の壁部を構成する外側シート18,18は、弾性部材46,46に比して柔軟であることから、開口部分12において弾性部材46の変形に追従する。従って、図4(b)に示すように、弾性部材46,46が開口部分12の開き方向へ変形すると、開口部分12の外側シート18,18が追従して変形し、開口部分12が開口する。
【0062】
本実施形態では、弾性部材46を保持するフラップ状部28,28が、外側シート18の幅方向の一方の端縁部を開放端32とされている。それ故、弾性部材46,46の変形に伴う外側シート18,18の変形が、開放端32において拘束されることなく許容されて、開口部分12がより開き易くなる。このように、本実施形態では、フラップ状部28,28の幅方向一方の端縁部が開放端32とされていることによって、弾性部材46による開口部分12の開き方向への変形が補助されており、変形補助機構が開放端32によっても構成されている。なお、変形補助機構は、本実施形態のように2種類以上の複数が設けられていても良いが、1種類のみが設けられていても良い。
【0063】
チャック状封止部26におけるチャックの噛合力は、チャックの形状や大きさ等により調節可能であることから、チャックの噛合力を調節することで、開口操作力の作用によってチャックを閉状態から開状態へ切り替えることも可能である。チャックの信頼性を高めるためにチャックの噛合力を強く設定する場合には、予めチャック状封止部26を開状態としておけば良い。
【0064】
そして、開いた開口部分12に対して、図示しないカップから栄養液などの液状体を収容領域24へ注ぎ入れる。液状体を収容領域24へ注入した後に、開口操作力を解除すると共に、チャック状封止部26のチャックを閉状態とすることにより、収容領域24が密封状態とされる。これにより、経腸栄養バッグ10の開口部分12から液状体が漏出するのを防止できると共に、収容領域24内の液状体が細菌等に汚染されるおそれを低減させることができる。
【0065】
収容領域24に対する液状体の注入量が多くなるに従って、経腸栄養バッグ10を把持する手にはより大きな荷重が作用するが、本実施形態では、親指54が貫通孔48に挿通されていることから、液状体の重量を支え易くなっている。
【0066】
図4では、左手で経腸栄養バッグ10を把持している状態が示されているが、例えば、右手で経腸栄養バッグ10を把持して、左手で液状体を収容領域24に注ぎ入れることも可能である。作業者が右利きの場合、図4のように左手で経腸栄養バッグ10を把持すれば、利き手によって液状体を収容領域24へ高精度に注ぎ入れることができる。あるいは、右手で経腸栄養バッグ10を把持すれば、経腸栄養バッグ10の開口部分12をより確実に開口状態に維持することができる。従って、経腸栄養バッグ10は表裏対称であることが好適である。
【0067】
なお、収容領域24に適量の液状体が収容された経腸栄養バッグ10は、図示しないスタンドの吊下フックが貫通孔48に挿通されて、ポート部16が下側となる向きで吊下げられる。そして、収容領域24内の液状体が重力によってポート部16から流出して、外部チューブ14を通じて患者の体内へ注入される。
【0068】
本実施形態では、経腸栄養バッグ10をスタンドの吊下フックに吊下げる前に、開口部分12を開いて液状体を注ぎ入れる場合について説明したが、例えば、吊下フックに空の経腸栄養バッグ10を吊下げた状態で、開口操作力を及ぼして開口部分12を開口させ、吊下げられた状態の経腸栄養バッグ10に液状体を注ぎ入れるようにしても良い。この場合には、親指54を貫通孔48に挿入する代わりに、親指54を吊下フックに添えることで、親指54に当てられた吊下フックと人差指56および中指58との間に開口操作力を及ぼすことができる。これによれば、経腸栄養バッグ10が予めスタンドで支持されることから、液状体の注入による経腸栄養バッグ10の重量の増加が問題になり難い。
【0069】
このように、経腸栄養バッグ10によれば、開口部分12に弾性部材46が取り付けられていることにより、開口部分12の開き方向と略直交する幅方向で内向きの開口操作力を及ぼすことによって、弾性部材46を開口部分12の開き方向に曲げ変形させることができる。それ故、親指54と人差指56および中指58との間で開口部分12を幅方向に潰すように変形させる簡単な操作によって、開口部分12を開くことができる。
【0070】
手指を伸ばす方向に動かすことで開口操作力を及ぼす特許文献1のような構造に比して、手指を曲げる方向に動かすことで開口操作力を及ぼす本発明に係る経腸栄養バッグ10は、開口操作力をより自然な動作によって効率的に及ぼすことが可能となる。従って、特許文献1に開示された従来構造に比して、より大きな開口操作力を及ぼすことが可能であると共に、開口操作力をより精度よく調節することも容易になる。
【0071】
しかも、経腸栄養バッグ10に液状体を注ぎ入れる作業者は、開口操作力を開口部分12に対して外側から及ぼすことで、開口部分12の開口変形を容易に且つ安定して実現できる。それ故、作業者は、液状体に接し得る外側シート18,18および内側シート38,38の内面側に触れる必要がなく、液状体の汚染などを回避することができる。
【0072】
さらに、弾性部材46に対して開口操作力を持続的に及ぼすことで、開口部分12を開状態に保持することも容易である。経腸栄養バッグ10は、片手で把持することが可能であり、把持した手で開口操作力を及ぼして開口部分12を開口させることができると共に、開口操作力を持続的に及ぼすことで、経腸栄養バッグ10の開状態を維持することができる。このため、もう一方の手で液状体を収容領域24へ注入することができる。したがって、収容領域24へ液状体を入れる作業の従事者が1人でも、十分に高精度および高効率な作業が実施可能となる。
【0073】
また、弾性部材46は、差入口42から袋状部40に差し入れることで、開口部分12の外側シート18,18に対して簡単に取り付けることができる。
【0074】
さらに、袋状部40の周壁部の一部を構成する内側シート38が、袋状部40の周壁部の他の部分を構成する外側シート18よりも幅方向の外方へ延び出して、差入口42へ続く案内面44を構成している。そして、弾性部材46を内側シート38の案内面44に対して接触状態で摺動させることにより、弾性部材46が内側シート38に沿って差入口42へ案内される。これにより、弾性部材46を差入口42から袋状部40へ差し入れる作業が容易になる。なお、弾性部材46は、外側シート18における案内面44よりも幅方向の開放端32側に位置する部分の外面に沿って、案内面44まで案内され得る。
【0075】
また、一対のフラップ状部28,28の一方端に閉止端30が設けられて、他方端に開放端32が設けられており、開放端32側から一対のフラップ状部28,28を離隔させて開口部分12を拡開させることから、フラップ状部28,28の両端が封止されている場合に比較して、開口部分12を大きく拡開させることができる。これにより、液状体を収容領域24へ注入する作業者は、作業を容易に行うことが可能であり、作業者の精神的および労力的な負担が軽減され得る。
【0076】
特に、本実施形態では、一対のフラップ状部28,28の閉止端30側の端縁部分が傾斜案内部34とされており、一対のフラップ状部28,28の拡開時において、開口部分12の開口面積が液状体を注ぎ込む上端側に向けて次第に大きくなっている。これにより、収容領域24に対する液状体の注入口が大きくされており、液状体を零すことなく収容領域24へ容易に注ぎ入れることができる。
【0077】
ところで、弾性部材の具体的な構造は、第1の実施形態の例示によって限定的に解釈されるものではない。以下に、別構造の弾性部材の例を幾つか示す。以下の説明において、他の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0078】
図5には、本発明の第2の実施形態としての経腸栄養バッグ60の要部を示す。経腸栄養バッグ60は、袋状部40に弾性部材62が差し入れられた構造を有している。弾性部材62は、上下方向(図5中の上下方向)で傾斜角度が変化する湾曲板形状とされており、外側シート18,18の幅方向(図5中の紙面直交方向)に延びている。この弾性部材62は、袋状部40に挿入された状態において、外側シート18,18の外面側(図5中の左右外側)に向けて凸となる向きで配設されている。なお、図5では、理解を容易にするために、各部材の厚さが誇張されていると共に、弾性部材62の曲率が大きく示されている。
【0079】
このような本実施形態に従う構造とされた経腸栄養バッグ60の弾性部材62によれば、外側シート18の幅方向で作用する圧縮力が開口操作力として入力されると、中間部分において弾性部材62が折れ曲がるように弾性変形して、経腸栄養バッグ60の開口部分12に開き方向の変形が生ぜしめられる。これにより、経腸栄養バッグ60は、第1の実施形態の経腸栄養バッグ10と同様に、開口部分12を容易に開口させることができると共に、開口部分12の開口状態を安定して維持することができる。
【0080】
特に本実施形態の弾性部材62は、開口部分12の開き方向(図5中の左右外側方向)に向けて凸となる湾曲断面形状を有していることから、弾性部材62が外側シート18の幅方向に作用する開口操作力によって圧縮される際に、変形方向が断面形状に基づいて開口部分12の開き方向に誘導される。要するに、本実施形態では、弾性部材62における開口部分12の開き方向への変形を補助する変形補助機構が、弾性部材62が外側シート18の外面側に凸となる湾曲断面形状をもって外側シート18の幅方向に延びる形状とされることによって構成されている。それ故、開口部分12の意図しない方向への変形や歪な変形などが防止されて、開口部分12を安定して開くことができる。
【0081】
また、弾性部材62は、湾曲断面形状を有していることにより、平板形状に比して高い変形剛性を有している。それ故、曲がり始めるまでは十分な形状安定性やそれに伴う抵抗力を有しているが、弾性部材の断面形状によって弾性部材の変形剛性を調節して、開口部分12の開き易さを調節することもできる。なお、弾性部材62の中間部分に上下方向の長さを部分的に小さくしたり、中間部分に肉抜穴を形成したり等することにより、弾性部材62を中間部分で曲がり易くして、弾性部材62が曲がり始めるまでに必要とされる開口操作力を小さく設定することもできる。
【0082】
しかも、開口操作力の作用に際して、開口部分12を開く中間部分での折れ曲がりに加えて、折れ曲がり部分における断面形状の変化を生じる。より具体的には、弾性部材62は、折れ曲がり部分において、曲率が小さくなるように断面形状が変化する。これにより、十分に大きな開口操作力によって弾性部材46を変形させると、変形部分における弾性部材62の剛性が、断面形状の変化によって小さくなる。その結果、弾性部材62の変形状態を開口部分12を開くために必要な力よりも小さな力で維持することが可能であり、開口部分12の開口状態を安定して維持することができる。
【0083】
図6には、本発明の第3の実施形態としての経腸栄養バッグを構成する弾性部材70を示す。弾性部材70は、表裏両側の外側シート(後述)に取り付けられる一対の挿入片72,72が、折返部74によって相互につながれた連続構造体とされている。
【0084】
挿入片72は、袋状部(後述)に差し入れられるなどして外側シートに取り付けられる部分であって、本実施形態では略平板形状とされている。挿入片72は、第1の実施形態の弾性部材46のような湾曲板形状であっても良いし、第2の実施形態の弾性部材62のような湾曲断面で延びる板状であっても良い。
【0085】
折返部74は、略半円筒形状とされており、両端部分が一対の挿入片72,72の基端部につながっている。折返部74は、厚さ方向に弾性変形可能とされていることから、弾性部材70は、折返部74の弾性変形によって、一対の挿入片72,72の相対的な傾斜角度を変化させることが可能とされている。一対の挿入片72,72は、外力が作用していない弾性部材70の初期形状において、折返部74と反対側の端部が相互に離隔していることが望ましい。より好適には、初期形状において、一対の挿入片72,72は全体が相互に離れて対向位置している。なお、一対の挿入片72,72の折返部74と反対側の端部が、初期形状において相互に当接していると共に、後述する袋状部への挿入によって相互に離れるようにしても良い。
【0086】
例えば、長手状の平板を長さ方向の一部で厚さ方向に折り返すように加工することで、一対の挿入片72,72と折返部74を一体的に備える弾性部材70を得ることができる。尤も、一対の挿入片72,72と折返部74を別体で形成して組み合わせることにより、弾性部材70を得るようにしても良い。
【0087】
そして、弾性部材70は、一対の挿入片72,72が図7に示す経腸栄養バッグ80或いは図8に示す経腸栄養バッグ90の袋状部40,40に差し入れられることにより、それら一対の挿入片72,72が外側シート18,18の幅方向に延びるように配されて、表裏の外側シート18,18に取り付けられている。
【0088】
弾性部材70は、一対の挿入片72,72が相互につながっていることから、一対の挿入片72,72を同時に挿入しようとすると、作業が難しくなるおそれがある。そこで、図7に示す経腸栄養バッグ80の袋状部40,40は、表側の差入口42aと裏側の差入口42bが弾性部材70の差入方向で互いにずれた位置に設けられている。すなわち、図7(a)に示す外側シート18の端縁部から表側の差入口42aまでの距離L1と、図7(b)に示す外側シート18の端縁部から裏側の差入口42bまでの距離L2が、相互に異なっており、本実施形態ではL1<L2とされている。
【0089】
これにより、弾性部材70の一方の挿入片72を表側の差入口42aに差し入れた後、他方の挿入片72を裏側の差入口42bに差し入れることができる。それ故、一対の挿入片72,72を表裏の袋状部40,40へ入れ易くなって、弾性部材70の外側シート18,18への取付作業が容易になる。
【0090】
このような構造とされた弾性部材70を採用すれば、折返部74に入力される開口操作力が、一対の挿入片72,72にモーメントとして作用して、一対の挿入片72,72が各外側シート18の外面側に向けて凸となるように変形する。これにより、開口部分12が開状態とされる。このように、本実施形態の変形補助機構は、弾性部材70が一対の挿入片72,72を折返部74によって連続させた構造とされて、弾性部材70が一方の端部において折り返された連続構造体とされていることにより構成されている。
【0091】
図7では、分かり易さのために、弾性部材70の折返部74が袋状部40,40から露出して、外部から見えるように配されているが、弾性部材70を外部から見えにくいように設けても良い。これによれば、外部から見える部分の略全体を外側シート18,18で構成して、経腸栄養バッグ80の見栄えを良くすることができる。例えば、弾性部材70の差入口42a,42bを、外側シート18,18ではなく、外側シート18,18の内面側に重ね合わされる図示しない内側シートに形成することで、弾性部材70を外部から見えにくくすることが可能である。
【0092】
なお、例えば、外側シート18の端縁部から表側の差入口42aまでの距離と外側シート18の端縁部から裏側の差入口42bまでの距離が同じであっても、弾性部材70の一方の挿入片72と他方の挿入片72の長さを相互に異ならせることにより、一対の挿入片72,72を表裏の差入口42a,42bへ順に差し入れることができる。
【0093】
また、図8に示す構造を採用すれば、弾性部材70の一対の挿入片72,72を表裏の差入口42a,42bに同時に差し入れ易くなる。
【0094】
すなわち、図8(a)に示す経腸栄養バッグ90では、表側の差入口92aが、表側の外側シート18aに形成されていると共に、裏側の差入口92bが、裏側の外側シート18bではなく、裏側の外側シート18bに固着された裏側の内側シート38bに形成されている。これにより、表側の差入口92aと裏側の差入口92bが何れも経腸栄養バッグ90の正面側(図8中の下側)の面に開口している。
【0095】
さらに、袋状部40の周壁部において、表側の内側シート38aが表側の外側シート18aよりも開放端32側(図8中右側)まで延び出しており、表側の内側シート38aにおける表側の差入口92aよりも開放端32側の端部によって、第1案内面94が構成されている。また、袋状部40の周壁部において、裏側の外側シート18bが裏側の内側シート38bよりも開放端32側(図8中右側)まで延び出しており、裏側の外側シート18bにおける裏側の差入口92bよりも開放端32側の端部によって、第2案内面96が構成されている。
【0096】
そして、弾性部材70の一対の挿入片72,72を表裏の差入口92a,92bに差し入れる際に、図8(b)に示すように、一方の挿入片72を第1案内面94に押し付けながら、他方の挿入片72を第2案内面96に押し付けることが可能とされている。これにより、一方の挿入片72を第1案内面94に沿わせて表側の差入口92aに差し入れながら、他方の挿入片72を第2案内面96に沿わせて裏側の差入口92bに差し入れることができる。
【0097】
なお、第1,第2案内面94,96よりも開放端32側には、表側の外側シート18aの外面(図8中の下面)によって第1挿入補助面98が構成されていると共に、裏側の内側シート38bの内面(図8中の下面)によって第2挿入補助面99が構成されている。そして、弾性部材70の一方の挿入片72が第1挿入補助面98に接しながら摺動することで、第1案内面94へ案内されると共に、弾性部材70の他方の挿入片72が第2挿入補助面99に接しながら摺動することで、第2案内面96へ案内される。これにより、弾性部材70の一対の挿入片72,72を、差入口92a,92bへより差し入れ易くなっている。
【0098】
また、図9に示す弾性部材100のように、折返部102の外側面を、開口操作力が入力される作用面としての押圧面104とすることもできる。弾性部材100は、弾性部材70と同様に、一対の挿入片72,72と、それら一対の挿入片72,72を一方の端部において相互につなぐ折返部102とを備えており、部分的に折り返されたトング状の連続構造体とされている。また、一対の挿入片72,72と折返部102の接続部分には、折れ線106が形成されている。この折れ線106は、必ずしも角状をなす屈折の稜線に限定されず、曲げの稜線であっても良い。
【0099】
弾性部材100の折返部102は、平板形状又は外側へ向けて凹となる湾曲断面形状とされている。これにより、折返部102には、平面乃至は凹面の押圧面104が、一対の挿入片72,72の延び出し方向と反対側に設けられている。このように折返部102に押圧面104を設けることにより、弾性部材100に手指で開口操作力を及ぼす際に、手指で面(押圧面104)を押すことによって、開口操作力を安定して及ぼすことができる。
【0100】
図9の弾性部材100では、一対の挿入片72,72が、外側に向けて凸となる湾曲断面形状を有していると共に、折返部102の押圧面104が凹状の湾曲断面形状を有している。要するに、本実施形態の弾性部材100は、折返部102の外面である押圧面104が、一対の挿入片72,72の厚さ方向の表面とは逆向きの湾曲断面形状とされている。このように、一対の挿入片72,72と折返部102が何れも湾曲断面形状とされており、且つ一対の挿入片72,72の湾曲方向と折返部102の湾曲方向が互いに逆向きとされていることにより、開口操作力の入力時に一対の挿入片72,72が厚さ方向外方へ向けて凸となるように変形し易い。それ故、一対の挿入片72,72の変形態様の安定化や、開口操作力の作用に対する折返部102の変形剛性の確保などが実現され得る。
【0101】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、弾性部材の形状は特に限定されない。例えば、図6では一対の挿入片72,72の一端だけが折返部74によって連続した構造の弾性部材70を例示したが、弾性部材は、一対の挿入片72,72の両端がそれぞれ折返部74でつながれた環状の連続構造体であっても良い。なお、弾性部材が環状の連続構造体である場合には、外力の作用しない弾性部材の初期形状において、一対の挿入片72,72の中間部分が相互に離れた形状であることが望ましい。
【0102】
弾性部材は、一定の断面形状で延びるものに限定されず、断面形状が部分的に或いは全体的に変化していても良い。具体的には、例えば、部分的に上下方向の寸法が小さく或いは大きくされていても良いし、図5に示すような湾曲断面形状を有する弾性部材において、部分的に非湾曲断面形状の部分、即ち平板状の部分が設けられていても良い。このように弾性部材の断面形状を部分的に変化させることにより、開口操作力の作用状態における弾性部材の湾曲形態を制御することも可能となる。
【0103】
弾性部材46は、必ずしも袋状部40に差し入れられることで外側シート18に取り付けられる構造に限定されず、例えば、外側シート18に接着などの手段で固着されるなどして取り付けられ得る。この場合には、袋状部40が不要であることから、内側シート38を設ける必要はなく、外側シート18の外面と内面の少なくとも一方に対して、弾性部材46が直接固着され得る。
【0104】
前記実施形態では、収容部として、外側シート18の幅方向で一方の端部が開口しているとともに他方の端部が封止された袋状部40を例示したが、収容部は、袋状の構造に限定されない。具体的には、例えば、外側シート18の幅方向で両方の端部が開口した筒状部によって、収容部を構成することもできる。また、収容部の開口は、必ずしも外側シート18の幅方向の端部に形成されるものに限定されず、例えば、収容部の開口が上側に設けられて、弾性部材が当該開口を通じて上側から差し入れられるようになっていても良い。また、収容部の周壁は、必ずしも全体に亘って連続的に設けられた筒状に限定されず、例えば、外側シート18と内側シート38が、固着部36において、外側シート18の幅方向の複数箇所で部分的に固着されていても良い。
【0105】
また、収容部は、必ずしも2枚のシートを重ね合わせて固着することで形成されるものに限定されない。具体的には、例えば、収容部は、1枚のシートを筒状に丸めたり、折り返して両端部を固着することで形成しても良い。収容部は、外側シート18に一体形成されていても良いし、別体で形成した収容部を袋本体22の上端部分に固着しても良い。
【0106】
また、前記実施形態の収容部は、略一定の断面形状で外側シート18の幅方向に延びた袋状部40とされていたが、収容部は、外側シート18の幅方向において断面形状が全体的に或いは部分的に変化していても良い。具体的には、例えば、収容部は、差入口42に向けて上下方向の寸法が徐々に大きくなっていても良い。これによれば、差入口42において大きな開口寸法を確保して、弾性部材46を挿入し易くなると共に、差入口42から離れた上下寸法の小さい部分では、弾性部材46が上下方向で位置決めされる。
【0107】
貫通孔48は、例えば、親指以外の4本の指を差し入れることが可能な長孔とされていても良い。また、前記実施形態の貫通孔48は、開口部分12を開口させる際に手指を差し入れるための手指の挿入孔と、液状体を患者の体内へ送入する際にスタンドの吊下フックに引っ掛けるための掛止孔とを兼ねているが、何れか一方の用途でのみ使用される貫通孔を設けることも可能である。この場合には、手指の挿入孔と掛止孔とを独立してそれぞれ設けても良い。なお、液状体の注入時に経腸栄養バッグ10を支えるために手指を挿入する挿入孔は、開口部分12を開きながら手指を挿入可能な位置に設けられていれば良く、例えば、外側シート18の上端部に突片を設けて、その突片に挿入孔を形成することもできる。
【0108】
手指の挿入孔を外側シート18における弾性部材46の取付部分の幅方向両側に形成して、それぞれに手指を差し入れた状態で開口操作力を及ぼすようにしても良い。具体的には、例えば、外側シート18の幅方向一方側に親指を挿入する手指の挿入孔を設けると共に、他方側に他の4指を挿入する長孔状の手指の挿入孔を設けることにより、経腸栄養バッグ10の開口部分12を把持し易くなる。これにより、液状体を収容して重くなった経腸栄養バッグ10をより支持し易くなると共に、開口操作力を弾性部材46に近い位置から作用させて、弾性部材46を効率的に変形させることもできる。
【0109】
さらに、例えば、弾性部材46が配される部分よりも下側において、幅方向寸法が部分的に小さくされた外側シート18,18を採用すれば、作業者が経腸栄養バッグを把持し易くなると共に、幅寸法の大きな部分が手に引っ掛かることで経腸栄養バッグを支持し易くなる。しかも、例えば、経腸栄養バッグの幅狭部分を手の全体で掴みながら、親指と人差指によって開口部分12に開口操作力を及ぼすことも可能になる。
【0110】
液状体を収容した経腸栄養バッグ10を作業者が手で支持し易くするための手指の挿入孔は、必ずしも外側シート18を貫通して形成される前記実施形態の貫通孔48のごとき態様に限定されず、外側シート18の幅方向外側に帯状体を固着することで、外側シート18と帯状体の間に手指の挿入孔を形成することもできる。
【0111】
また、例えば、外側シート18の外面に両端部を固着された帯状体を設けて、外側シート18の幅方向に延びる支持孔を外側シート18と帯状体の間に形成しても良い。そして、作業者は、当該支持孔に手を通した状態で経腸栄養バッグ10を支持することにより、経腸栄養バッグ10を帯状体で支持しながら、開口部分12に開口操作力を及ぼすことができる。
【0112】
チャック状封止部26は、必須ではなく、例えば、液状体の漏れなどが生じない場合に省略することもできる。また、弾性部材46をチャック状封止部26よりも下側(収容領域24側)に設けることも可能であるが、好適には、弾性部材46は、チャック状封止部26よりも上側に設けられる。
【0113】
また、図5に示された弾性部材62は断面湾曲形状とされていたが、中央部分で屈曲された山形断面形状等であっても略同様な効果が発揮される。更にまた、図9に示された弾性部材100は、折返部102が2本の折れ線106,106を有しており、それら2本の折れ線106,106の間に開口操作力の作用面である押圧面104が形成されていたが、例えば3本以上の折れ線をもって折返部102が形成されていても良い。
また、本発明は、もともと以下(i)~(viii)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 表裏両側のシートの重ね合わせ面間に、開口部分を上部に有する液状体の収容領域が形成された経腸栄養バッグにおいて、前記収容領域の前記開口部分には、表裏両側の前記シートの少なくとも一方において該シートの幅方向に延びる弾性部材が取り付けられていると共に、該開口部分における該シートの幅方向両縁部を互いに接近させる方向へ押圧する開口操作力の作用に際して、該弾性部材における該開口部分の開き方向への変形を補助する変形補助機構が設けられている経腸栄養バッグ、
(ii) 前記収容領域の前記開口部分には、表裏両側の前記シートの両方において該シートの幅方向に延びる前記弾性部材が取り付けられていると共に、
前記変形補助機構が、該弾性部材が該シートの幅方向の少なくとも一方の端部において折り返された連続構造体とされることによって構成されている(i)に記載の経腸栄養バッグ、
(iii) 前記連続構造体からなる前記弾性部材において、前記折り返された端部が、複数の折れ線を有する折返し構造とされている(ii)に記載の経腸栄養バッグ、
(iv) 前記弾性部材が前記シートに沿って延びるプレート形状とされていると共に、前記折返し構造が2本の折れ線を有しており、該2本の折れ線の間において、前記開口操作力の作用面が設けられている(iii)に記載の経腸栄養バッグ、
(v) 前記変形補助機構が、前記弾性部材が前記シートの外面側に凸となるように湾曲又は屈曲した断面形状をもって該シートの幅方向に延びる形状とされることによって構成されている(i)~(iv)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(vi) 前記変形補助機構が、前記シートの幅方向において前記弾性部材が前記開口部分の開き方向へ湾曲した初期形状とされることによって構成されている(i)~(v)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(vii) 前記変形補助機構が、前記収容領域の前記開口部分における前記シートの幅方向の少なくとも一方の端縁部において、表裏両側の該シートが互いに重ね合わせ状態で固定されずに開放端とされていることによって構成されている(i)~(vi)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
(viii) 前記シートには該シートの幅方向に延びる収容部が設けられており、該収容部へ前記弾性部材が収容されることで、該弾性部材が該シートに取り付けられている一方、該収容部における該シートの幅方向一方の側には差入口が設けられていると共に、該収容部の周壁部が該差入口の周方向で部分的に外方に延び出して、該収容部に差し入れられる前記弾性部材の先端を該差入口へ案内する案内面が設けられている(i)~(vii)の何れか一項に記載の経腸栄養バッグ、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、手指による掴む方向の力を利用して、変形補助機構で変形方向を外方に向けた弾性部材を変形させることで、開口部分を容易に開口させることができると共に、開口状態を安定した形状で保つことが可能になる。即ち、開くよりも閉じる方が格段に大きな力を発揮する手指による掴む力を利用することで、弾性部材で剛性を高めて変形の形状を安定化させた開口部分を容易に且つ安定した開口形状をもって開き且つ保持することができる。それ故、栄養液や薬液などの液状体を、開口部分を通じて収容領域へ入れ易く、且つ、液状体の重量が大きくなっても、開口部分が意図せずに変形したり閉じてしまうなどの不具合を防ぐことができる。
上記(ii)に記載の発明では、表裏のシートに取り付けられた弾性部材が少なくとも一端において相互につながっていることから、弾性部材の両端部間に対して幅方向内向きの開口操作力が入力されると、弾性部材のシートに取り付けられた部分には、開口部分の開き方向に向けて凸となるような変形を導くモーメントが作用する。それ故、表裏のシートの両方に対して折り返された弾性部材が取り付けられていることにより、開口操作力が作用する際に、弾性部材が開口部分の開き方向へ変形して、開口部分を安定して開口させる。
上記(iii)に記載の発明では、折れ線の間に開口操作力の作用部を設けることが可能となり、開口操作性の向上が図られ得る。
上記(iv)に記載の発明では、開口操作力を、弾性部材の各シートに取り付けられた部分に対して、各折れ線を介して、開口方向へ伝達しやすくなる。特に、2本の折れ線の間に形成される作用面に及ぼされる押圧力による撓みを、折れ線を介して、弾性部材の各シートに取り付けられた部分を外方に広げる方向の曲げ力として伝達して開口部分を開くことができる。なお、2本の折れ線の間に形成される作用面は、略平坦面の他、2本の折れ線を湾曲又は屈曲させて中央部分が内方に凹んだ湾曲面などとしても良い。
上記(v)に記載の発明では、弾性部材が外面側に凸となる断面形状とされることで、開口部分の内方へ膨らむよりも外方へ膨らむ方向に曲がりやすくされている。その結果、開口操作力によって弾性部材が外方に膨らむように弾性変形して、開口部分が安定して開口され得る。
上記(vi)に記載の発明では、初期形状において弾性部材の中立軸が外方に湾曲していることで、弾性部材の両端から圧縮方向に加えられる開口操作力が弾性部材を外方に湾曲させる曲げモーメントを生ずることとなる。その結果、開口操作力によって弾性部材の曲率が大きくなるように外方へ弾性変形して、開口部分が安定して開口され得る。
上記(vii)に記載の発明では、表裏両側のシートにおける幅方向の少なくとも一方の端縁部が、相互に固定されずに開放端とされていることにより、開口部分の開き方向への変形に対する抵抗力が解消される。これにより、開口操作力が作用する際に、シートの開口部分に取り付けられた弾性部材が、表裏のシートの固着によって拘束されることなく、開口部分の開き方向へ変形し易くなって、それに伴って開口部分が開き易くなる。
上記(viii)に記載の発明では、弾性部材をシートの収容部へ差し入れることで、弾性部材をシートに簡単に取り付けることができる。また、弾性部材を案内面に沿わせて移動させることで、弾性部材が収容部の差入口へ案内されることから、弾性部材の収容部への差入作業も容易になる。
【符号の説明】
【0114】
10,60,80,90:経腸栄養バッグ、12:開口部分、18:外側シート(シート)、24:収容領域、32:開放端、40:袋状部、42,92:差入口、44:案内面、46,62,70,100:弾性部材、74,102:折返部、94:第1案内面、96:第2案内面、104:押圧面(作用面)、106:折れ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9