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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20241008BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20241008BHJP
   B62J 45/412 20200101ALI20241008BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J45/00
B62J45/412
B62J45/413
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020016406
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123175
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】島津 速人
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013624(JP,A)
【文献】特開2017-007644(JP,A)
【文献】特開2015-221641(JP,A)
【文献】特開2015-110402(JP,A)
【文献】特表平10-511621(JP,A)
【文献】米国特許第05599244(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/00-29/02
B62J 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
人力駆動車のクランクの回転速度に対する車輪の回転速度である変速比率を変更する変速機を制御するように構成される制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータと予め定める判定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御するように構成され、
前記クランクが1回転する間における前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更するように構成され
予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1期間は、前記クランクが1回転する期間以下であり、
前記制御部は、
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが前記予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を小さくするように制御するように構成され、
前記パラメータは、前記クランクの回転速度に応じた情報を検出するクランク回転センサ、または、前記車輪の回転速度に応じた情報を検出する車速センサによって検出されるパラメータを含む、制御装置。
【請求項2】
人力駆動車用の制御装置であって、
人力駆動車のクランクの回転速度に対する車輪の回転速度である変速比率を変更する変速機を制御するように構成される制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータと予め定める判定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御するように構成され、
前記クランクが1回転する間における前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更するように構成され
予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1期間は、前記クランクが1回転する期間以下であり、
前記制御部は、
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第2値よりも小さい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1値は、前記予め定める第2値よりも大きく、
前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが前記予め定める第2値よりも小さい場合、前記予め定める判定値を大きくするように制御するように構成され、
前記パラメータは、前記クランクの回転速度に応じた情報を検出するクランク回転センサ、または、前記車輪の回転速度に応じた情報を検出する車速センサによって検出されるパラメータを含む、制御装置。
【請求項3】
人力駆動車用の制御装置であって、
人力駆動車のクランクの回転速度に対する車輪の回転速度である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータと予め定める判定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御するように構成され、
予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが前記予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を小さくするように制御するように構成され、
前記パラメータは、前記クランクの回転速度に応じた情報を検出するクランク回転センサ、または、前記車輪の回転速度に応じた情報を検出する車速センサによって検出されるパラメータを含む、制御装置。
【請求項4】
人力駆動車用の制御装置であって、
人力駆動車のクランクの回転速度に対する車輪の回転速度である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータと予め定める判定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御するように構成され、
予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成され
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第2値よりも小さい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成され、
前記予め定める第1値は、前記予め定める第2値よりも大きく、
前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが前記予め定める第2値よりも小さい場合、前記予め定める判定値を大きくするように制御するように構成され、
前記パラメータは、前記クランクの回転速度に応じた情報を検出するクランク回転センサ、または、前記車輪の回転速度に応じた情報を検出する車速センサによって検出されるパラメータを含む、制御装置。
【請求項5】
前記予め定める判定値は、第1判定値、および、前記第1判定値よりも大きい第2判定値を含む、請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記パラメータが前記第1判定値よりも小さくなった場合、前記変速比率が小さくなるように前記変速機を制御するように構成される、請求項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記パラメータが前記第2判定値よりも大きくなった場合、前記変速比率が大きくなるように前記変速機を制御するように構成される、請求項またはに記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いの大きさに応じて前記予め定める判定値を変更するように構成される、請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いは、予め定める期間において検出される複数の前記パラメータの分散値を含む、請求項からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人力駆動車が走行を開始してから予め定める第2期間が経過していない場合、前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記人力駆動車の傾斜角度が予め定める角度以上変化する場合、前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記人力駆動車の車速が予め定める車速以下の場合、前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記変速比率を変更するように前記変速機を制御してから予め定める第3期間が経過していない場合、前記パラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記パラメータは、前記クランクの回転速度を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記パラメータは、前記クランクの回転速度、または、前記人力駆動車の車速を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記パラメータは、前記クランクの回転速度、または、前記人力駆動車の車速を含み、
前記制御部は、前記パラメータのばらつきが、予め定める範囲内になるように前記予め定める判定値を変更するように構成される、請求項1から15のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、人力駆動車用の制御装置を開示する。特許文献1の人力駆動車用の制御装置は、所定の条件に応じて変速機を制御し、変速比率を変更させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平10-511621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、変速比率を好適に変更できる人力駆動車用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車のクランクの回転速度に対する車輪の回転速度である変速比率を変更する変速機を制御するように構成される制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータと予め定める判定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御するように構成され、前記クランクが1回転する間における前記パラメータの変化に応じて前記予め定める判定値を変更するように構成される。
上記第1側面の制御装置によれば、クランクが1回転する間におけるパラメータの変化に応じて予め定める判定値を変更するように構成されるため、変速比率を好適に変更できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、予め定める第1期間における前記パラメータの変化に応じて前記予め定める判定値を変更するように構成され、前記予め定める第1期間は、前記クランクが1回転する期間以下である。
上記第2側面の制御装置によれば、クランクが1回転する期間以下におけるパラメータの変化に応じて予め定める判定値を変更できる。
【0007】
記第2側面に従う第3側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成される。
上記第3側面の制御装置によれば、パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、予め定める判定値を変更できる。
【0008】
本発明の第4側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、人力駆動車のクランクの回転速度に対する車輪の回転速度である変速比率を変更する変速機を制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータと予め定める判定値との比較に応じて前記変速比率を変更するように前記変速機を制御するように構成され、予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成される。
上記第4側面の制御装置によれば、パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、予め定める判定値を変更できるため、変速比率を好適に変更できる。
【0009】
前記第3または第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが予め定める第2値よりも小さい場合、前記予め定める判定値を変更するように構成される。
上記第5側面の制御装置によれば、パラメータの変化度合いが予め定める第2値よりも小さい場合、予め定める判定値を変更できる。
【0010】
前記第3から第5側面のいずれか1つに従う第6側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが前記予め定める第1値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を小さくするように制御するように構成される。
上記第6側面の制御装置によれば、パラメータの変化度合いが予め定める第1値よりも大きい場合、予め定める判定値を小さくできる。
【0011】
前記第5側面に従う第7側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いが前記予め定める第2値よりも大きい場合、前記予め定める判定値を大きくするように制御するように構成される。
上記第7側面の制御装置によれば、パラメータの変化度合いが予め定める第2値よりも大きい場合、予め定める判定値を大きくできる。
【0012】
前記第から第7側面のいずれか1つに従う第8側面の制御装置において、前記予め定める判定値は、第1判定値、および、前記第1判定値よりも大きい第2判定値を含む。
上記第8側面の制御装置によれば、第1判定値および第2判定値の少なくとも1つを変更できる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定めるパラメータが前記第1判定値よりも小さくなった場合、前記変速比率が小さくなるように前記変速機を制御するように構成される。
上記第9側面の制御装置によれば、予め定めるパラメータが第1判定値よりも小さくなった場合、変速比率を小さくできる。
【0014】
前記第8または第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定めるパラメータが前記第2判定値よりも大きくなった場合、前記変速比率が大きくなるように前記変速機を制御するように構成される。
上記第10側面の制御装置によれば、予め定めるパラメータが第2判定値よりも大きくなった場合、変速比率を大きくできる。
【0015】
前記第から第10側面のいずれか1つに従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いの大きさに応じて前記予め定める判定値を変更するように構成される。
上記第11側面の制御装置によれば、パラメータの変化度合いの大きさに応じて予め定める判定値を変更できる。
【0016】
前記第から第11側面のいずれか1つに従う第12側面の制御装置において、前記予め定める第1期間における前記パラメータの変化度合いは、前記予め定める期間において検出される複数の前記パラメータの分散値を含む。
上記第12側面の制御装置によれば、予め定める期間において検出される複数のパラメータの分散値に応じて、予め定める判定値を変更できる。
【0017】
前記第1から第12側面のいずれか1つに従う第13側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が走行を開始してから予め定める第2期間が経過していない場合、前記予め定めるパラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される。
上記第13側面の制御装置によれば、人力駆動車が走行を開始してから予め定める第2期間が経過するまでのパラメータの変化が予め定める判定値の変更に反映されることを抑制できる。
【0018】
前記第1から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の傾斜角度が予め定める角度以上変化する場合、前記予め定めるパラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される。
上記第14側面の制御装置によれば、人力駆動車の傾斜角度が予め定める角度以上変化する場合のパラメータの変化が予め定める判定値の変更に反映されることを抑制できる。
【0019】
前記第1から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の車速が予め定める車速以下の場合、前記予め定めるパラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される。
上記第15側面の制御装置によれば、人力駆動車の車速が予め定める車速以下の場合のパラメータの変化が予め定める判定値の変更に反映されることを抑制できる。
【0020】
前記第1から第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、前記制御部は、前記変速比率を変更するように前記変速機を制御してから予め定める第3期間が経過していない場合、前記予め定めるパラメータの変化度合いに応じて前記予め定める判定値を変更しないように構成される。
上記第16側面の制御装置によれば、変速比率を変更するように変速機を制御してから予め定める第3期間が経過するまでのパラメータの変化が予め定める判定値の変更に反映されることを抑制できる。
【0021】
前記第1から第16側面のいずれか1つに従う第17側面の制御装置において、前記パラメータは、前記クランクの回転速度を含む。
上記第17側面の制御装置によれば、クランクの回転速度の変化度合いに応じて予め定める判定値を変更できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、変速比率を好適に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
図2】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の電気的な構成を示すブロック図。
図3図2の制御部によって実行され、判定値に応じて変速機を制御する処理のフローチャート。
図4】変速比率とクランクの回転速度との関係を示すグラフ。
図5図2の制御部によって実行され、変化度合いを算出するための複数のパラメータを設定する処理のフローチャート。
図6図2の制御部によって実行され、判定値を変更する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態>
図1から図6を参照して、実施形態の人力駆動車用の制御装置50について説明する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力Hによって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力Hのみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力Hだけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0025】
人力駆動車10は、人力駆動力Hが入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、車輪14と、車体16と、を、さらに備える。車輪14は、後輪14Aと、前輪14Bと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム12Bとを含む。各クランクアーム12Bには、一対のペダル20がそれぞれ連結される。後輪14Aは、クランク12が回転することによって駆動される。後輪14Aは、フレーム18に支持される。クランク12は、駆動機構22によって後輪14Aと連結される。駆動機構22は、クランク軸12Aに連結される第1回転体24を含む。クランク軸12Aは、第1回転体24と一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0026】
第2回転体26は、後輪14Aに連結される。第2回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体26と後輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転した場合に、後輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転した場合に、第2回転体26と後輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0027】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Bが取り付けられている。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結されている。本実施形態では、後輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0028】
好ましくは、人力駆動車10は、バッテリ36をさらに含む。バッテリ36は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ36は、制御装置50に電力を供給するように構成される。バッテリ36は、好ましくは、制御装置50の制御部52と有線または無線によって通信可能に接続される。バッテリ36は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部52と通信可能である。
【0029】
人力駆動車10は、変速機38を備える。変速機38は、人力駆動車10のクランク12の回転速度Nに対する車輪14の回転速度NWである変速比率Rを変更する。変速比率Rは、クランク12の回転速度Nに対する駆動輪の回転速度の比率である。本実施形態では、駆動輪は後輪14Aである。変速機38は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラ、および、内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機38が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、後輪14Aのハブに設けられる。変速機38は、アクチュエータ38Aによって動作するように構成される。アクチュエータ38Aは、電気アクチュエータを含む。アクチュエータ38Aは、例えば、電気モータを含む。
【0030】
制御装置50は、制御部52を備える。制御部52は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部52は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制御装置50は、記憶部54をさらに含む。記憶部54には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部54は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0031】
好ましくは、人力駆動車10は、検出部40をさらに含む。検出部40は、人力駆動車10の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータPを検出する。例えば、パラメータPは、クランク12の回転速度Nを含む。パラメータPは、人力駆動車10の車速Vを含んでいてもよい。パラメータPは、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hを含んでいてもよい。パラメータPがクランク12の回転速度Nを含む場合、検出部40は、クランク回転センサ42を含む。パラメータPが車速Vを含む場合、検出部40は、車速センサ44を含む。パラメータPが人力駆動力Hを含む場合、検出部40は、人力駆動力検出部46を含む。パラメータPが傾斜角度Aを含む場合、検出部40は、傾斜検出部48を含む。
【0032】
好ましくは、検出部40は、予め定める期間TAにおいて、パラメータPを2回以上検出するように構成される。予め定める期間TAは、例えば、クランク12が1回転する期間、車輪14が1回転する期間、および、予め定める時間TBである。予め定める時間TBは、例えば、一般的なライダが人力駆動車10の平道を走行する場合にクランク12が1回転する時間よりも短い時間が設定される。検出部40は、予め定める期間TAにおいて、パラメータPを1回検出するように構成されてもよい。
【0033】
クランク回転センサ42は、クランク12の回転速度Nに応じた情報を検出するように構成される。クランク回転センサ42は、例えば、人力駆動車10のフレーム18に設けられる。クランク回転センサ42は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸12A、クランク軸12Aに連動して回転する部材、または、クランク軸12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク回転センサ42は、クランク12の回転速度Nに応じた信号を出力する。磁石は、クランク軸12Aから第1回転体24までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、クランク軸12Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、磁石は、クランク軸12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ42は、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ42は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、クランク回転センサ42は、クランク12が1回転する間において、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。クランク回転センサ42は、車速センサを含んで構成されていてもよい。クランク回転センサ42が車速センサを含む場合、例えば、制御部52は、車速センサによって検出される車速と、変速比率Rとに応じてクランク12の回転速度Nを算出するように構成される。
【0034】
車速センサ44は、人力駆動車10の車輪14の回転速度NWに応じた情報を検出するように構成される。車速センサ44は、例えば、人力駆動車10の車輪14に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ44は、車輪14の回転速度NWに応じた信号を出力する。制御部52は、車輪14の回転速度NWと、車輪14の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の車速Vを算出できる。記憶部54には車輪14の周長に関する情報が記憶される。車速センサ44は、例えばリードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子を含む。車速センサ44は、人力駆動車10のフレーム18のチェーンステイに取り付けられ、後輪14Aに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク30に設けられ、前輪14Bに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。車速センサ44は、車輪14に設けられる磁石を検出する構成に限らず、例えば、光学センサなどを含んで構成されてもよい。車速センサ44は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、車速センサ44は、例えば、車輪14が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。本実施形態において、車速センサ44は、車輪14が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を2回以上検出するように構成される。
【0035】
人力駆動力検出部46は、例えば、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサは、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサは、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、クランク軸12A、クランク軸12Aと第1回転体24との間において人力駆動力Hを伝達する部材、クランクアーム12B、または、ペダル20である。トルクセンサは、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。人力駆動力検出部46は、人力駆動力Hに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル20に与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。好ましくは、トルクセンサは、クランク12が1回転する間において、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。
【0036】
傾斜検出部48は、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Aを検出するように構成される。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Aは、人力駆動車10の進行方向における傾斜角度によって検出できる。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Aは、人力駆動車10の傾斜角度と対応する。傾斜検出部48は、一例では、傾斜センサを含む。傾斜センサの一例は、ジャイロセンサまたは加速度センサである。別の例では、傾斜検出部48は、GPS(Global positioning system)受信部を含む。制御部52は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、記憶部54に予め記録されている地図情報に含まれる路面勾配とに応じて、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Aを演算してもよい。傾斜検出部48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部52に接続される。好ましくは、傾斜検出部48は、予め定める時間TBにおいて、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、2以上である。好ましくは、予め定める回数は、4以上である。予め定める回数は、好ましくは4の倍数である。好ましくは、予め定める回数は、8、12、または、16である。
【0037】
制御部52は、変速機38を制御するように構成される。制御部52は、人力駆動車10の走行環境および走行状態の少なくとも1つに関するパラメータPと予め定める判定値Qとの比較に応じて変速比率Rを変更するように変速機38を制御するように構成される。
【0038】
好ましくは、判定値Qは、第1判定値Q1、および、第1判定値Q1よりも大きい第2判定値Q2を含む。例えば、制御部52は、パラメータPが第1判定値Q1以上かつ第2判定値Q2以下の範囲に含まれるように変速機38を制御する。
【0039】
例えば、制御部52は、予め定めるパラメータPが第1判定値Q1よりも小さくなった場合、変速比率Rが小さくなるように変速機38を制御するように構成される。例えば、制御部52は、予め定めるパラメータPが第2判定値Q2よりも大きくなった場合、変速比率Rが大きくなるように変速機38を制御するように構成される。この場合、予め定めるパラメータPがライダの負荷が大きい場合に小さくなるパラメータPであると、予め定めるパラメータPが第1判定値Q1以上かつ第2判定値Q2以下の範囲に含まれるように変速機38を制御することによって、ライダの負荷を好適な状態にできる。ライダの負荷が大きい場合に小さくなるパラメータPは、例えば、クランク12の回転速度Nおよび車速Vが挙げられる。この場合、予め定めるパラメータPがライダの負荷が大きい場合に大きくなるパラメータPであると、ライダが、例えば、スプリント等で高速で走行するために負荷を上昇させた場合、または、停車するために負荷を減少させた場合、ライダの走行意思に応じた変速比率Rに変更できる。ライダの負荷が大きい場合に大きくなるパラメータPは、例えば、人力駆動力Hおよび傾斜角度Aが挙げられる。
【0040】
図3を参照して、変速機38を制御する処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部52は、図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0041】
制御部52は、ステップS11において、予め定めるパラメータPが第1判定値Q1よりも小さくなったか否かを判定する。具体的には、クランク12の回転速度Nが第1判定値Q1よりも小さくなったか否かを判定する。制御部52は、予め定めるパラメータPが第1判定値Q1よりも小さい場合、ステップS12に移行する。制御部52は、ステップS12において、変速比率Rが小さくなるように変速機38を制御し、処理を終了する。制御部52は、ステップS12において、例えば、現在の変速比率Rが最小の場合、変速比率Rを変更せずに終了する。
【0042】
制御部52は、ステップS11において、予め定めるパラメータPが第1判定値Q1よりも小さくなっていない場合、ステップS13に移行する。制御部52は、ステップS13において、予め定めるパラメータPが第2判定値Q2よりも大きくなったか否かを判定する。具体的には、クランク12の回転速度Nが第2判定値Q2よりも大きくなったか否かを判定する。制御部52は、予め定めるパラメータPが第2判定値Q2よりも大きくなった場合、ステップS14に移行する。制御部52は、ステップS14において、変速比率Rが大きくなるように変速機38を制御し、処理を終了する。制御部52は、ステップS14において、例えば、現在の変速比率Rが最大の場合、変速比率Rを変更せずに終了する。
【0043】
制御部52は、ステップS13において、予め定めるパラメータPが第2判定値Q2よりも大きくなっていない場合、処理を終了する。
【0044】
図4の二点鎖線LAは、ライダにとって好適な変速比率Rが選択されている場合のクランク12の回転角度とクランク12の回転速度との関係を示す。二点鎖線LAに示されるように、上死点および下死点においてクランク12の回転速度Nは最小速度となり、上死点および下死点からそれぞれ90度進んだあたりにおいてクランク12の回転速度Nは最大速度となる。ライダにとって好適な変速比率Rであったとしても、クランク12が1回転する間における最大速度と最小速度との差は生じ、クランク12の回転速度Nには好適なばらつきが存在する。図4の実線LBは、ライダにとって好適な変速比率Rよりも選択されている変速比率Rが小さい場合のクランク12の回転角度とクランク12の回転速度との関係を示す。図4の破線LCは、ライダにとって好適な変速比率Rよりも選択されている変速比率Rが大きい場合のクランク12の回転角度とクランク12の回転速度Nとの関係を示す。ライダにとって好適な変速比率Rが選択されている場合よりも変速比率Rが小さい場合、クランク12が1回転する間におけるクランク12の回転速度Nの最大速度と最小速度との差が大きくなる傾向にあるため、ばらつきが大きくなる。ライダにとって好適な変速比率Rが選択されている場合よりも変速比率Rが大きい場合、クランク12が1回転する間におけるクランク12の回転速度Nの最大速度と最小速度との差が小さくなる傾向にあるため、ばらつきが小さくなる。クランク12の回転速度N以外のライダの走行負荷と関連するパラメータPであっても、ライダにとって好適な変速比率Rよりも選択されている変速比率Rが小さい場合、ばらつきは好適なばらつきよりも大きくなり、ライダにとって好適な変速比率Rよりも選択されている変速比率Rが大きい場合、ばらつきが好適なばらつきよりも小さくなる。
【0045】
制御部52は、クランク12が1回転する間におけるパラメータPの変化に応じて判定値Qを変更するように構成される。好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化に応じて判定値Qを変更するように構成され、予め定める第1期間T1は、クランク12が1回転する期間TX以下である。好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDに応じて判定値Qを変更する。好ましくは、制御部52は、パラメータPのばらつきが、予め定める範囲PX内になるように、変速比率Rが変更されるように判定値Qを変更する。
【0046】
好ましくは、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDは、予め定める期間TXにおいて検出される複数のパラメータPの分散値を含む。好ましくは、変化度合いDは、予め定める期間TXにおいて検出される複数のパラメータPの分散値の平均値を含む。例えば、制御部52は、検出部40によって検出されたパラメータPを記憶部54に記憶する。例えば、制御部52は、記憶部54に記憶される複数のパラメータPのうちの予め定める第1期間T1におけるパラメータPを用いて分散値を算出する。制御部52は、記憶部54に記憶される複数のパラメータPのうちの予め定める数のパラメータPを用いて分散値を算出してもよい。制御部52は、例えば、最新のパラメータPを記憶部54に記憶した場合、最新のパラメータPを含む直近の複数回のパラメータPを、分散値を算出するためのパラメータPとして設定する。好ましくは、分散値を算出するためのパラメータPには、クランク12が1回転する期間TX内において検出される複数のパラメータPが含まれる。
【0047】
図5を参照して、変化度合いDを算出するためのパラメータPの設定処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して図5に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部52は、図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0048】
制御部52は、ステップS21において、パラメータPの保存タイミングか否かを判定する。制御部52は、例えば、予め定める制御周期に応じてパラメータPの保存タイミングか否かを判定する。予め定める制御周期は、例えば、検出部40のパラメータPの検出周期と等しい。制御部52は、パラメータPの保存タイミングでない場合、処理を終了する。制御部52は、パラメータPの保存タイミングの場合、ステップS22に移行する。制御部52は、ステップS22において、最新のパラメータPを記憶部54に記憶し、ステップS23に移行する。最新のパラメータPは、例えば、検出部40から出力される直近の信号に含まれるパラメータPである。制御部52は、ステップS23において、変化度合いDを算出するための複数のパラメータPを設定し、処理を終了する。例えば、制御部52は、人力駆動車10の走行を開始してから記憶部54に記憶されるパラメータPの数が予め定める数以下の場合、人力駆動車10の走行を開始してから記憶部54に記憶される全てのパラメータPを、変化度合いDを算出するための複数のパラメータPとして設定する。例えば、制御部52は、人力駆動車10の走行を開始してから記憶部54に記憶されるパラメータPの数が予め定める数よりも多い場合、最新のパラメータPから新しい順に予め定める数のパラメータPを、変化度合いDを算出するための複数のパラメータPとして設定する。好ましくは、制御部52は、人力駆動車10の走行が停止した場合、記憶部54に記憶されるパラメータPを記憶部54から削除する。好ましくは、パラメータPは、揮発性メモリに記憶される。好ましくは、制御部52は、記憶部54に記憶されるパラメータPの数が予め定める数のパラメータPよりも多い場合、変化度合いDの算出に用いられないパラメータPを記憶部54から削除する。
【0049】
好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きい場合、予め定める判定値Qを変更するように構成される。好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDが予め定める第2値D2よりも小さい場合、予め定める判定値Qを変更するように構成される。好ましくは、第1値D1は、第2値D2よりも大きい。判定値Qが第1判定値Q1および第2判定値Q2を含む場合、制御部52は、判定値Qを変更する場合、第1判定値Q1および第2判定値Q2の少なくとも1つを変更する。判定値Qが第1判定値Q1および第2判定値Q2を含む場合、好ましくは、制御部52は、第1判定値Q1および第2判定値Q2の両方を変更する。予め定める第1値D1は、予め記憶部54に記憶される。予め定める第1値D1は、予め実験等を通じて決定される人力駆動車10の走行に好適な値が設定される。予め定める第1値D1は、変更可能に記憶部54に記憶されてもよい。予め定める第2値D2は、予め記憶部54に記憶される。予め定める第2値D2は、予め実験等を通じて決定される人力駆動車10の走行に好適な値が設定される。予め定める第2値D2は、変更可能に記憶部54に記憶されてもよい。変化度合いDが複数のパラメータPの分散値の場合、例えば、予め定める第1値D1は、45以上かつ50以下である。変化度合いDが複数のパラメータPの分散値の場合、例えば、予め定める第2値D2は、20以上かつ25以下である。
【0050】
好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きい場合、予め定める判定値Qを小さくするように制御するように構成される。制御部52は、変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きい場合、第1判定値Q1を小さくする。制御部52は、変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きい場合、第2判定値Q2を小さくする。
【0051】
好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDが予め定める第2値D2よりも大きい場合、予め定める判定値Qを大きくするように制御するように構成される。制御部52は、変化度合いDが予め定める第2値D2よりも大きい場合、第1判定値Q1を大きくする。制御部52は、変化度合いDが予め定める第2値D2よりも大きい場合、第2判定値Q2を大きくする。
【0052】
好ましくは、制御部52は、変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きい場合、予め定める判定値Qが第1変化量QXだけ小さくなるように変更し、変化度合いDが予め定める第2値D2よりも小さい場合、予め定める判定値Qが第2変化量QYだけ大きくなるように変更する。好ましくは、第1変化量QXは、第2変化量QYとは異なる。好ましくは、第1変化量QXは、第2変化量QYよりも大きい。第1変化量QXを、第2変化量QYよりも大きくすることによって、変速比率Rが大きくなりにくい。
【0053】
好ましくは、制御部52は、予め定める第1期間T1におけるパラメータPの変化度合いDの大きさに応じて予め定める判定値Qを変更するように構成される。例えば、制御部52は、変化度合いDが大きいほど、判定値Qの変更量が大きくなるように判定値Qを変更するように構成される。例えば、制御部52は、変化度合いDが大きいほど、第1判定値Q1が大きくなるように第1判定値Q1を変更するように構成される。例えば、制御部52は、変化度合いDが大きいほど、第2判定値Q2が大きくなるように第2判定値Q2を変更するように構成される。例えば、制御部52は、変化度合いDが小さいほど、第1判定値Q1が小さくなるように第1判定値Q1を変更するように構成される。例えば、制御部52は、変化度合いDが小さいほど、第2判定値Q2が小さくなるように第2判定値Q2を変更するように構成される。
【0054】
好ましくは、制御部52は、人力駆動車10の走行状態が、パラメータPのばらつきが安定しにくい状態の場合、判定値Qを変更しないように構成される。パラメータPのばらつきが安定しにくい状態は、例えば、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過するまで、人力駆動車10の傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化する場合、人力駆動車10の車速Vが予め定める車速VX以下の場合、および、変速比率Rを変更するように変速機38を制御してから予め定める第3期間T3が経過していない場合の少なくとも1つを含む。
【0055】
好ましくは、制御部52は、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過していない場合、予め定めるパラメータPの変化度合いDに応じて判定値Qを変更しないように構成される。
【0056】
好ましくは、制御部52は、人力駆動車10の傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化する場合、予め定めるパラメータPの変化度合いDに応じて判定値Qを変更しないように構成される。
【0057】
好ましくは、制御部52は、人力駆動車10の車速Vが予め定める車速VX以下の場合、予め定めるパラメータPの変化度合いDに応じて判定値Qを変更しないように構成される。予め定める車速VXは、例えば、時速13キロメートルである。
【0058】
好ましくは、制御部52は、変速比率Rを変更するように変速機38を制御してから予め定める第3期間T3が経過していない場合、予め定めるパラメータPの変化度合いDに応じて判定値Qを変更しないように構成される。
【0059】
図6を参照して、判定値Qの変更処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して図6に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部52は、図6のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS31からの処理を繰り返す。
【0060】
制御部52は、ステップS31において、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過したか否かを判定する。制御部52は、例えば、人力駆動車10の車速Vが0から0よりも大きくなった時刻からの経過時間が予め定める時間以上になった場合、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過したと判定する。制御部52は、例えば、クランク12の回転が開始してからのクランク12の回転角度が予め定める角度以上になった場合、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過したと判定する。制御部52は、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過していない場合、処理を終了する。制御部52は、人力駆動車10が走行を開始してから予め定める第2期間T2が経過した場合、ステップS32に移行する。
【0061】
制御部52は、ステップS32において、人力駆動車10の傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化したか否かを判定する。制御部52は、例えば、予め定める期間内において傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化した場合、人力駆動車10の傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化したと判定する。制御部52は、人力駆動車10の傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化した場合、処理を終了する。制御部52は、人力駆動車10の傾斜角度Aが予め定める角度AX以上変化していない場合、ステップS33に移行する。
【0062】
制御部52は、ステップS33において、人力駆動車10の車速Vが予め定める車速VX以下か否かを判定する。制御部52は、人力駆動車10の車速Vが予め定める車速V以下の場合、処理を終了する。制御部52は、人力駆動車10の車速Vが予め定める車速V以下ではない場合、ステップS34に移行する。
【0063】
制御部52は、ステップS34において、変速比率Rを変更するように変速機38を制御してから予め定める第3期間T3が経過したか否かを判定する。制御部52は、変速比率Rを変更するように変速機38を制御してから予め定める第3期間T3が経過していない場合、処理を終了する。制御部52は、変速比率Rを変更するように変速機38を制御してから予め定める第3期間T3が経過した場合、ステップS35に移行する。
【0064】
制御部52は、ステップS35において、変化度合いDを取得し、ステップS36に移行する。例えば、制御部52は、図5のフローチャートのステップS23において設定された複数のパラメータPを用いて、パラメータPの分散値を算出する。変化度合いDは、予め定める期間TXにおいて検出される複数のパラメータPの分散値の平均値を含む場合、制御部52は、複数の異なる期間において設定される複数のパラメータPのそれぞれの分散値を平均した値を変化度合いDとして取得する。制御部52は、例えば、6つの異なる期間において設定される複数のパラメータPの分散値を平均した値を変化度合いDとして取得する。
【0065】
制御部52は、ステップS36において、変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きいか否かを判定する。制御部52は、変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きい場合、ステップS37に移行する。制御部52は、ステップS37において、予め定める判定値Qを小さくし、処理を終了する。
【0066】
制御部52は、ステップS36において、変化度合いDが予め定める第1値D1よりも大きくない場合、ステップS38に移行する。制御部52は、ステップS38において、変化度合いDが予め定める第2値D2よりも小さいか否かを判定する。制御部52は、変化度合いDが予め定める第2値D2よりも小さい場合、ステップS39に移行する。制御部52は、ステップS39において、予め定める判定値Qを大きくし、処理を終了する。制御部52は、ステップS38において、変化度合いDが予め定める第2値D2よりも小さくない場合、処理を終了する。
【0067】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用の制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用の制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
・制御部52は、予め定めるパラメータPが第1判定値Q1よりも小さくなった場合、変速比率Rが大きくなるように変速機38を制御するように構成されてもよい。予め定めるパラメータPが、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクである場合、好ましくは、制御部52は、トルクが第1判定値Q1よりも小さくなった場合、変速比率Rが大きくなるように変速機38を制御するように構成される。予め定めるパラメータPが、傾斜角度Aである場合、好ましくは、制御部52は、トルクが第1判定値Q1よりも小さくなった場合、変速比率Rが大きくなるように変速機38を制御するように構成される。
【0069】
・制御部52は、予め定めるパラメータPが第2判定値Q2よりも大きくなった場合、変速比率Rが小さくなるように変速機38を制御するように構成されてもよい。予め定めるパラメータPが、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクである場合、好ましくは、制御部52は、トルクが第2判定値Q2よりも大きくなった場合、変速比率Rが小さくなるように変速機38を制御するように構成される。予め定めるパラメータPが、傾斜角度Aである場合、好ましくは、制御部52は、トルクが第2判定値Q2よりも大きくなった場合、変速比率Rが小さくなるように変速機38を制御するように構成される。
【0070】
・変化度合いDは、予め定める期間TXにおいて検出される複数のパラメータPの最大値と最小値との差であってもよい。要するに、パラメータPのばらつきと相関する値であれば、変化度合いDは、適宜変更できる。
【0071】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0072】
10…人力駆動車、12…クランク、14…車輪、38…変速機、50…制御装置、52…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6