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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】強化熱可塑性成形用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20241008BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241008BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08K7/00
【請求項の数】 29
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020072760
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2020180280
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】19169464.5
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510022808
【氏名又は名称】エーエムエス-パテント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ エプリ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069805(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141157(WO,A1)
【文献】特開2015-203113(JP,A)
【文献】特開2015-199959(JP,A)
【文献】特表2011-503307(JP,A)
【文献】国際公開第94/022942(WO,A1)
【文献】特表2010-510374(JP,A)
【文献】特開平08-281827(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109929243(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分
(A)28.0~64.9質量%の少なくとも1種のポリアミド、
(B)15.0~40.0質量%のガラス繊維、
(C)15.0~35.0質量%の、粒子厚さが0.3~2.0μmの範囲内のガラスフレーク、
(D)0.1~2.0質量%の熱安定剤、
(E)0~5.0質量%の添加剤
からなるポリアミド成形用組成物であって、
成分(B)および(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して35.0~65.0質量%の範囲内であり、成分(A)~(E)の合計が100質量%であることを条件とする、前記ポリアミド成形用組成物。
【請求項2】
成分(A)の割合が、分(A)~(E)の合計に対して、34.0~59.8質量%の範囲内あることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項3】
成分(A)の割合が、いずれの場合も成分(A)~(E)の合計に対して、38.2~57.8質量%または41.5~54.7質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項4】
分(A)が少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A1、A2)と少なくとも1種の非晶質または微結晶性ポリアミド(A3)の混合物でありならびに/あるいは
成分(A)が、結晶性脂肪族ポリアミド(A1)もしくは半結晶性半芳香族ポリアミド(A2)またはそれらの混合物からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項5】
成分(A)が少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A1、A2)と少なくとも1種の非晶質または微結晶性ポリアミド(A3)の混合物であり、ここで、成分(A)中の半結晶性ポリアミド(A1、A2)の割合が、いずれの場合も成分(A)全体に対して、30.0~98.0質量%、又は40.0~95.0質量%、又は50.0~90.0質量%の範囲内であり;ならびに/あるいは
成分(A)が、1.60~2.30の範囲内の相対粘度を有する、PA 66、PA 610、PA 612、PA 10T/6T、PA 66/6I/6T、PA 6T/66/BacT/Bac6、PA 6T/610/BacT/Bac10、PA 6T/612/BacT/Bac12、PA 6T/BacT/6I/BacI、及びそれらの混合物からなる群から選択される、半結晶性脂肪族ポリアミド(A1)もしくは半結晶性半芳香族ポリアミド(A2)またはそれらの混合物からなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項6】
成分(A)が、以下の混合物:
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A3)10~50質量%の、55~85mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および15~45モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する、非晶質半芳香族ポリアミド6I/6Tと
の混合物(ここで、(A1)と(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と
(A2)10~50質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド6T/66/BacT/Bac6、6T/6I/BacT/BacIまたは6T/66/6I/BacT/Bac6/BacI(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率のビス(アミノメチル)シクロヘキサンら選択され、且つジカルボン酸成分は64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、及び0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここでジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)
との混合物(ここで、(A1)と(A2)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A2)50~90質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド10T/6Tと、
(A3)10~50質量%の、55~85mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および15~45mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する、非晶質半芳香族ポリアミド6I/6Tと
の混合物(ここで、(A2)と(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A2)8~30質量%の半結晶性半芳香族ポリアミドPA6T/BacT/66/Bac6、6T/BacT/6I/BacIまたは6T/BacT/6I/BacI/66/Bac6(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率のビス(アミノメチル)シクロヘキサンら選択され、且つジカルボン酸成分は、64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、及び0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここで、ジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)と、
(A3)2~20質量%の非晶質ポリアミド6I/6T/612/MACMI/MACMT/MACM12
の混合物(ここで、(A1)、(A2)および(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)
のうちの1つからなることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項7】
成分(A)が、以下の混合物:
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と
(A2)10~50質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド6T/66/BacT/Bac6、6T/6I/BacT/BacIまたは6T/66/6I/BacT/Bac6/BacI(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択され、且つジカルボン酸成分は64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、及び0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここでジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)
の混合物(ここで、(A1)と(A2)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A2)8~30質量%の半結晶性半芳香族ポリアミドPA6T/BacT/66/Bac6、6T/BacT/6I/BacIまたは6T/BacT/6I/BacI/66/Bac6(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択され、且つジカルボン酸成分は、64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、及び0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここで、ジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)と、
(A3)2~20質量%の非晶質ポリアミド6I/6T/612/MACMI/MACMT/MACM12(ここで、組成物は、それぞれ18~30mol%の6Iおよび6T単位、12~26mol%の612単位、及びそれぞれ6~16mol%のMACM12、MACMIおよびMACMT単位を含み、すべてのPA単位の合計は100mol%になる)
の混合物(ここで、(A1)、(A2)および(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)
のうちの1つからなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項8】
成分(B)の割合が、分(A)~(E)の合計に対して、17.0~35.0質量%の範囲内あることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項9】
成分(B)の割合が、いずれの場合も、成分(A)~(E)の合計に対して、18.0~32.0質量%または20.0~30.0質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項10】
成分(B)のガラス繊維が、E-ガラス繊維またはS-ガラス繊維である;および/あるいは
成分(B)が、円形断面有するガラス繊維から構成される、
および/あるいは
成分(B)のガラス繊維が、円形断面を有する繊維であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項11】
成分(B)が、5~20μm、5~13μm、または6~10μmの範囲内の直径を有する、円形断面を有するガラス繊維から構成される、
および/あるいは
成分(B)のガラス繊維が、非円形断面を有する繊維であり、ここで主断面軸の、それに垂直な二次断面軸に対する寸法比が、2.5より大きいか、または2.5~6または3~5の範囲内であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項12】
成分(C)の割合が、分(A)~(E)の合計に対して、16.0~33.0質量%の範囲内あることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項13】
成分(C)の割合が、いずれの場合も、成分(A)~(E)の合計に対して、18.0~32.0質量%または20.0~30.0質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項14】
成分(C)の平均粒径(d50)が、0~200μmの範囲内または0~170μmの範囲内である;および/または
成分(C)の粒子厚さが、0.4~1.7μmまたは0.5~1.5μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項15】
成分(B)と(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して、40.0~60.0質量%の範囲内あることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項16】
成分(B)と(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して、42.0~57.0質量%または45.0~55.0質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項17】
成分(D)の割合が、分(A)~(E)の合計に対して、0.2~2.0質量%範囲内であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項18】
成分(D)の割合が、いずれの場合も、成分(A)~(E)の合計に対して、0.2~1.8質量%または0.3~1.5質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項19】
成分(D)が有機安定剤含む;および/あるいは
成分(D)が、以下の群:
一価または二価銅の化合物
第二級芳香族アミンに基づく安定剤;
立体障害フェノールに基づく安定剤;
ホスファイトおよびホスホナイト;及び
前述の安定剤の混合物
から選択されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項20】
成分(D)が、Cu酸化物またはCu塩を含まない有機安定剤を含む;および/あるいは
成分(D)が、以下の群:
一価もしくは二価銅と無機もしくは有機酸または一価もしくは二価フェノールとの塩(例えば、ハロゲン化水素酸のCu(I)またはCu(II)塩(例えば、CuCl、CuBr、CuI、及びCuCl2)、シアン化水素酸のCu(I)またはCu(II)塩(例えば、CuCN)、脂肪族カルボン酸の銅塩(例えば、酢酸銅(II)及びステアリン酸銅(II))、及びCuSO4)、一価もしくは二価銅の酸化物(例えば、Cu2O及びCuO)、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物もしくはホスフィンとの錯化合物、あるいはこれらの化合物の混合物、
から選択され、ここで、これらの銅化合物は、それ自体で、または、濃縮物の形態で使用され、ここで、濃縮物は、銅塩を高濃度で含む、成分(A)と同じまたは実質的に同じ化学的性質のポリマーを指し、ここで、銅化合物は、さらなる金属ハロゲン化物(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、NaI、KI、NaBr、KBr))との組合せで使用されてもよく、ここで金属ハロゲン化物の銅に対するモル比は0.5~20、または1~10、または2~7である、
ことを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項21】
成分(E)が、成分(A)~(E)の合計に対して、0~4.0質量%の範囲内割合で存在することを特徴とする、請求項1~20のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項22】
成分(E)が、成分(A)~(E)の合計に対して、0~3.0質量%、0~2.0質量%、または0.1~2.0質量%の範囲内の割合で存在することを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項23】
成分(E)が、以下の群:結晶化促進剤または遅延剤、流動助剤、潤滑剤、離型剤、顔料、染料、タガント、加工助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、および重合プロセスからの残留物例えば、触媒、塩およびそれらの誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1~22のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物で作製され、または
請求項1~23のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物作製され少なくとも1つの領域もしくはコーティングを含む、
造形品
【請求項25】
射出成形、押出成形もしくは吹込成形によって製造される、請求項24に記載の造形品。
【請求項26】
外装パーツおよび/または目に見える筐体、カバーもしくはフレーム(例えば電気または電子部品のパーツ、筐体のパーツまたは筐体構成要素のパーツ)の分野の造形品である、請求項24又は25に記載の造形品。
【請求項27】
携帯型電子デバイスの筐体または筐体パーツ、パネルまたはカバー、家庭用品、家庭用機械、眼鏡フレーム、眼鏡縁取り、サングラス、カメラ、遠視用眼鏡、装飾品、遠隔通信及び家電用のデバイスおよび装置、自動車セグメントおよび他の輸送手段の分野の内装および外装部品、電気製品、家具、スポーツ、機械工学、公衆衛生および衛生、医療、エネルギーおよび推進技術(例えば、携帯電話、スマートフォン、システム手帳、ラップトップコンピューター、ノートパソコン、タブレットコンピューター、ラジオ、カメラ、計時器、計算機、センサー筐体、測定デバイス、音楽および/または動画の再生デバイス、ナビゲーションデバイス、GPSデバイス、電子写真フレーム、外部ハードドライブおよび他の電子ストレージ媒体)の分野の内装および外装部品の形態にある、
請求項24~26のいずれか1項に記載の造形品。
【請求項28】
請求項24~27のいずれか1項に記載の造形品を製造するための請求項1~23のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物の使用あって、
請求項1~23のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物が溶融形態で導入され、且つ、押出成形法、射出成形法または吹込成形法で、この成形用組成物から前記造形が形成されることを特徴とする、前記使用
【請求項29】
請求項24~27のいずれか1項に記載の造形品を製造する方法であって、
請求項1~23のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物が溶融形態で導入され、且つ、押出成形法、射出成形法または吹込成形法で、この成形用組成物から前記造形品が形成される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥状態および調整状態で良好な機械的特性および良好な表面特性を有するガラス繊維強化ポリアミド成形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
US3499955は、ガラス繊維およびガラスフレークを、架橋剤とともに部分熱可塑性成形用組成物に使用する可能性について記載している。目的は可能な限り蒸気を含まないことであり、マトリックスは後に架橋される。
WO-A-94/22942は、ガラス繊維およびガラスフレークと混合されたポリアミド成形用組成物について開示している。開示されたマトリックスは脂肪族ポリアミドのみであり、表面特性および機械的特性が報告されているが、乾燥状態と調整状態との間の比較は含まれない。
EP-A-0741762は、ポリアミド66とポリアミド6T/DTの混合物に部分的に基づいて構成されるガラス繊維強化ポリアミド成形用組成物を対象としている。機械的特性および表面特性はいずれも乾燥状態のものであり、調整状態との比較はない。
DE-A-10352319は、ガラス繊維、さらに粒子状充填剤を含み、耐候性があり漆黒度を有する、カーボンブラックで着色されたポリアミド成形用組成物について開示している。最小径が30μmの小型粒子状充填剤が好ましく使用されている。実施例が示すように、造形パーツの外観および耐候性は、使用されたカーボンブラックの特性によって実質的に判定されている。
US-A-2008/0119603は、ガラス繊維およびガラスフレークを含む、ポリアミドに基づく電話機筐体用材料について記載している。調整状態と比較した乾燥状態での表面挙動または機械的挙動に関するデータは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US3499955
【文献】WO-A-94/22942
【文献】EP-A-0741762
【文献】DE-A-10352319
【文献】US-A-2008/0119603
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、先行技術よりも改善されたポリアミド成形用組成物を提供することである。特に、目標は、好ましくは乾燥状態および調整状態で良好な機械的特性および良好な表面特性を実現することである。
成形用組成物は、多湿状態下を含め、好ましくは十分な剛性および強度とともに高い耐衝撃性を有し、さらに表面品質が良好である。これは詳細には、乾燥状態の引張弾性率が好ましくは少なくとも15000MPaであり、調整状態では1500MPa以下、または乾燥状態の値を1100MPaより大きく下回ることを意味する。追加的にまたは代替的に、乾燥状態の破断応力は、好ましくは少なくとも150MPa、好ましくは少なくとも200MPaであり、調整状態では50MPa以下または乾燥状態の値を40MPaより大きく下回る。さらに追加的にまたは代替的に、乾燥状態の耐衝撃性は、好ましくは少なくとも50kJ/m2または少なくとも60kJ/m2であり、調整状態では15kJ/m2以下または乾燥状態の値を12kJ/m2より大きく下回る。これらの引張弾性率、破断応力、および耐衝撃性に対する条件は、好ましくは同時に成立する。機械的特性との関連では、調整は、検体がそれぞれの測定の前に72℃および相対湿度62%で14日間保存されたことを意味する。追加的に、好ましくは乾燥状態において角度60°で(DAM)、および調整(80℃、相対湿度80%、120時間)後に測定される光沢は、少なくとも70%である。
この目的は、請求項1に記載のポリアミド成形用組成物によって達成される。
【0005】
したがって、本発明の主題は、以下の成分
(A)28.0~64.9質量%の少なくとも1種のポリアミド、
(B)15.0~40.0質量%のガラス繊維、
(C)15.0~35.0質量%の、粒子厚さが0.3~2.0μm、特に0.4~1.7μmの範囲のガラスフレーク、
(D)0.1~2.0質量%の熱安定剤、
(E)0~5.0質量%の添加剤
からなるポリアミド成形用組成物であって、
成分(B)と(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して35.0~65.0質量%の範囲であることを条件とする、ポリアミド成形用組成物である。ここで、成分(A)~(E)の合計は100質量%である。
【0006】
成分(B)と(C)の合計は、好ましくは、いずれの場合も成分(A)~(E)の合計に対して40.0~60.0質量%の範囲、より好ましくは42.0~57.0質量%または45.0~55.0質量%の範囲である。
成形用組成物は、好ましくは耐衝撃性改良剤を含まない、すなわち、(E)は耐衝撃性改良剤を含まない。
成分(A):成分(A)は、少なくとも1種のポリアミド、好ましくは少なくとも1種の半結晶性の脂肪族または半芳香族ポリアミドで構成されるか、またはポリアミドの混合物、より好ましくは少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと少なくとも1種の非晶質もしくは微結晶性ポリアミドの混合物からなる。
ポリアミド成形用組成物は、いずれの場合も成分(A)~(E)の合計に対して好ましくは34.0~59.8質量%、特に好ましくは38.2~57.8または41.5~54.7質量%の、少なくとも1種のポリアミド(A)を含む。
ポリアミドおよびそれらのモノマーについて本明細書で使用される表記および略称は、ISO規格ISO 16396-1:2015に規定されている。したがって、とりわけ、ジアミンについて以下の略称が使用される:MXDはm-キシレンジアミン、MPMDは2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、MODは2-メチル-1,8-オクタンジアミン、MACMはビス(4-アミノ-3-メチル-シクロヘキシル)メタン、PACMはビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン、TMDCはビス(4-アミノ-3,5-ジメチル-シクロヘキシル)メタン、Bacは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、NDは2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、およびINDは2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンを表す。
【0007】
本発明は、カルボキシル基とアミノ基の末端基比が均衡したポリアミド、およびカルボキシル基とアミノ基の末端基比が均衡していない、すなわち、アミノ末端基またはカルボキシル末端基が過剰に存在するポリアミドの両方を包含する。特定の末端基構造を有するポリアミドを提供するために、例えば調製の際に過剰のジアミンまたはジカルボン酸を使用することが好ましく、特にジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.90~1.10、より好ましくは0.94~1.06の範囲、非常に好ましくは0.97~1.03の範囲である。したがって、ポリアミドの末端基を調節するために、アミンの一官能基付加物およびモノカルボン酸を使用することが好ましい。
モノマーの数量は、重縮合で使用されるモノマーの対応するモル比が、重縮合によってそれに応じて調製されたポリアミドにも見出されることを意味すると理解されるべきである。ラクタムまたはアミノカルボン酸が使用される場合、1つの成分が過剰であるということはない。代わりに、アミンまたはカルボン酸が慎重に出発原料に添加され、末端基比が調節される。
1つの好ましい実施形態では、少なくとも1種のポリアミド(A)は、半結晶性ポリアミドおよび非晶質ポリアミド、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
少なくとも1種のポリアミド(A)は、好ましくは半結晶性ポリアミドまたは半結晶性ポリアミドの混合物である。成分(A)を、半結晶性ポリアミドと非晶質ポリアミドの混合物として設計することも好ましい。少なくとも2種の非晶質ポリアミドの混合物もまた、成分(A)として好適である。
【0008】
本明細書で言及される半結晶性ポリアミドは、明白な融点(または溶融温度)を有する点で非晶質ポリアミドとは異なり、融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)を使用して融解物を加熱することによって決定することができる。半結晶性プラスチックは、例えば、10~80%の結晶画分を有してもよく、かつそれ未満の温度で非晶質相が凍結するガラス転移温度と、結晶相が溶解する溶融温度の両方を有してもよい。半結晶性ポリアミドの融点は、好ましくは160~330℃の範囲、より好ましくは170~300℃の範囲、より詳細には175~280℃の範囲であり、いずれの場合もISO 11357-3:2013に従い加熱速度20K/分で決定される。半結晶性ポリアミドは、好ましくはISO11357-3:2013に従って決定される>30J/gの融解エンタルピーを有する。
対照的に、本明細書で言及される非晶質ポリアミドは判定可能な融点を有さず、ガラス転移温度のみを有する。半結晶性ポリアミドは不透明であるが、非晶質ポリアミドは透明であるという点で半結晶性ポリアミドとは異なる。非晶質ポリアミドは、好ましくは加熱速度20K/分でのISO11357-3:2013に従った示差走査熱量測定(DSC)で5J/g未満の融解熱を示す。非晶質ポリアミドは、その非晶質性のために融点を有さない。
【0009】
本明細書で言及される微結晶性ポリアミドは、半結晶性ポリアミドと非晶質ポリアミドとの連結物とみなすことができる。微結晶性ポリアミドは半結晶性ポリアミドであり、したがって融点を有する。しかし、その形態は、結晶子の直径が非常に小さいため、製造されるプレートが厚さ2mmであってもなお透明である、すなわち、ASTM D 1003:2013に従って測定される光透過率が少なくとも75%であるようなものである。加熱速度20K/分でのISO 11357-3:2013に従った示差走査熱量測定(DSC)では、微結晶性ポリアミドは、好ましくは5~30J/gの融解熱を示す。ポリアミドが本明細書で微結晶性として言及される場合、実際、基本的には半結晶性であるが、上記に示される融解熱を有する。
非晶質または微結晶性ポリアミドのガラス転移温度は、加熱速度20K/分でISO 11357-2:2013に従って測定して好ましくは40~220℃、より好ましくは60~200℃、非常に好ましくは100~170℃である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態の目的では、一方では好ましい半結晶性ポリアミドが、また集合的には、好ましい非晶質および微結晶性ポリアミドが以下で考慮される。
例示的な特に好ましい半結晶性ポリアミド(A1:脂肪族、A2:半芳香族)は、本明細書では、PA 46、PA 49、PA 410、PA 411、PA 412、PA 413、PA 414、PA 415、PA 416、PA 418、PA 436、PA 56、PA 510、PA 66、PA 69、PA 610、PA 611、PA 612、PA 613、PA 614、PA 615、PA 616、PA 617、PA 618、PA 1010、PA 1011、PA 1012、PA 1013、PA 1014、PA 1015、PA 1016、PA 66/6、PA 6/66/610、PA 6/66/12、PA 6/12、PA 11、PA 12、PA 912、PA 1212、PA MXD6、PA MXD9、PA MXD10、PA MXD11、PA MXD12、PA MXD13、PA MXD14、PA MXD15、PA MXD16、PA MXD17、PA MXD18、PA MXD36、それらのコポリアミドまたはそれらの混合物、配合物または合金、4Tの繰り返し単位を有するポリアミド、5Tの繰り返し単位を有するポリアミド、6Tの繰り返し単位を有するポリアミド、8Tの繰り返し単位を有するポリアミド、9Tの繰り返し単位を有するポリアミド、10Tの繰り返し単位を有するポリアミド、PA 4T/6T、PA 4T/8T、PA 6T/8T、PA 4T/MPMDT、PA 4T/4I、PA 5T/5I、PA 6T/6I、PA 9T、PA 9T/MODT、PA 9T/9I、PA 10T、PA 10T/6T、PA 10T/610、PA 10T/612、PA 10T/11、PA 10T/12、PA 10T/6T/10I/6I、PA 12T、PA MPMDT/6T、PA 6T/6I(>50mol% 6T)、PA 10T/10I、PA 12T/12I、PA 4T/6T/8T、PA 4T/6T/10T、PA 4T/8T/10T、PA6T/8T/10T、PA 4T/6T/MPMDT、PA 6T/6、PA 6T/66、PA 4T/66、PA 5T/66、PA 6T/6I/6、PA 66/6I/6T、PA 10T/6T/1012/612、PA 6T/BacT/Bac6/66、PA 6T/610/BacT/Bac10、PA 6T/612/BacT/Bac12、PA 6T/BacT/6I/BacI、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド、およびそれらの混合物またはコポリマーからなる群から選択される。
【0011】
上記の意味でのコポリアミドは、複数の述べられたモノマー単位を有するポリアミドを指す。
半結晶性ポリアミド(A1)および(A2)の相対粘度は、ISO 307:2013に従い、20℃でm-クレゾール100ml中0.5gのポリアミド溶液で測定して、好ましくは1.40~2.70、より好ましくは1.50~2.40、非常に好ましくは1.60~2.20である。
【0012】
非晶質および/または微結晶性ポリアミド(A3)の場合、これらは、PA 6I、PA 6I/6T(>50mol% 6I)、PA 6I/6T/6N、PA MXDI/6I、PA MXDI/MXDT/6I/6T、PA MXDI/12I、PA MXDI、PA MXDI/MXD6、PA MACM10、PA MACM12、PA MACM14、PA MACM18、PA NDT/INDT、PA TMDC10、PA TMDC12、PA TMDC14、PA TMDC18、PA PACM12、PA PACM14、PA PACM18、PA PACM10/11、PA PACM10/12、PA PACM12/612、PA PACM12/PACM14/612/614、PA MACMI/12、PA MACMT/12、PA MACMI/MACM12、PA MACMI/MACMN、PA MACMT/MACM12、PA MACMT/MACMN、PA MACM36、PA TMDC36、PA MACMI/MACM36、PA 6I/MACMI/12、PA MACMT/MACM36、PA MACMI/ MACMT/12、PA 6I/6T/MACMI/MACMT、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/12、PA MACM6/11、PA MACM6/12、PA MACM10/11、PA MACM10/12、PA MACM10/1010、PA MACM12/1012、PA MACM12/1212、PA MACM14/1014、PA MACM14/1214、PA MACM18/1018、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/MACM12/612、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/MACM12、PA MACMI/MACMT/MACM12/12、PA MACMI/MACMT/MACM12、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/12、PA 6I/6T/6N/ MACMI/MACMT/MACMN、PA TMDC12/TMDCT/TMDC36、PA TMDC12/TMDCI、PA TMDC12/TMDCI/TMDC36およびPA TMDC12/TMDCTならびにこれらの混合物またはコポリマー(ここでMACMが完全に、好ましくは50mol%までのMACMが、より詳細には最大35mol%までのMACMが、PACMおよび/またはTMDCによって置き換えられていてもよく、ならびに/またはラウロラクタムが全体的にまたは部分的に、カプロラクタムによって置き換えられていてもよい)からなる群から選択されると好ましい。
上述の系PA 6T/6I(A2、半結晶性)およびPA 6I/6T(A3、非晶質)は、前者のポリアミドでは6Tの繰り返し単位の割合が6Iの繰り返し単位の割合より大きく、後者のポリアミドには逆のことが当てはまるという点で異なっている。
【0013】
ポリアミド66、610、612、10T/6T、66/6I/6T、6T/66/BacT/Bac6、6I/6T、さらにX=10~16であるMACMXおよびPACMX、さらにポリアミド11および12が特に好ましい。PA 66、PA 66/6I/6T、PA 6T/66/BacT/Bac6、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/MACM12/612およびPA 10T/6Tが非常に特に好ましい。
非晶質または微結晶性ポリアミドA3の相対粘度は、ISO 307:2013に従い、20℃でm-クレゾール100ml中0.5gのポリアミド溶液で測定して、好ましくは1.35~2.20、より好ましくは1.40~2.10、非常に好ましくは1.45~2.00、特に好ましくは1.50~1.90である。
成分(A)はまた、半結晶性ポリアミド(A1)および/または(A2)ならびに非晶質および/または微結晶性ポリアミド(A3)の混合物を含んでもよい。この場合、成分(A)の半結晶性ポリアミドの割合は、いずれの場合も成分(A)全体に対して、好ましくは30.0~98.0質量%、より好ましくは40.0~95.0質量%の範囲、非常に好ましくは50.0~90.0質量%の範囲である。
【0014】
これらの半結晶性ポリアミド(A1)および/または(A2)と非晶質または微結晶性ポリアミド(A3)の混合物は、好ましくは、PA 66とPA 6I/6Tの混合物、PA66と PA 6T/66/BacT/Bac6の混合物、PA66とPA 6I/6T/MACMI/MACMT/MACM12/612の混合物、PA 66/6I/6TとPA 6I/6Tの混合物、PA 66/6I/6TとPA 6T/66/BacT/Bac6の混合物、PA12とPA MACM12の混合物、PA12とPA PACM12の混合物、ならびにPA66とPA 6T/66/BacT/Bac6およびPA 6I/6T/MACMI/MACMT/MACM12/612の混合物からなる群から選択される。
本発明のポリアミド成形用組成物の別の特に好ましい実施形態では、成分(A)は、ジアミンである1,6-ヘキサンジアミンおよびビス(アミノメチル)シクロヘキサン、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに基づく、さらにジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸および/または6~18個の炭素を有する2種以上の脂肪族ジカルボン酸に基づく、少なくとも1種の半結晶性脂肪族ポリアミド(A1)と少なくとも1種の半結晶性半芳香族ポリアミド(A2)の混合物を含む。特に好ましい脂肪族ポリアミド(A1)はPA66、PA610およびPA612であり、特に好ましい半芳香族ポリアミド(A2)は6T/66/BacT/Bac6、6T/610/BacT/Bac10、6T/612/BacT/Bac12および6T/BacT/6I/BacIである。
【0015】
本発明のポリアミド成形用組成物の別の特に好ましい実施形態では、成分(A)は、半結晶性ポリアミド(A1)もしくは(A2)またはそれらの混合物を含む。相対粘度が1.60~2.30の範囲のポリアミドPA 66、PA 610、PA 612、PA 10T/6T、PA 66/6I/6T、PA 6T/66/BacT/Bac6、PA 6T/610/BacT/Bac10、PA 6T/612/BacT/Bac12、6T/BacT/6I/BacI、さらにそれらの混合物が特に好ましい。
本発明のポリアミド成形用組成物の別の特に好ましい実施形態では、成分(A)は、半結晶性ポリアミド(A1)および/または(A2)と非晶質または微結晶性ポリアミド(A3)の混合物を含む。この場合、半結晶性ポリアミド(A1)として、相対粘度が1.60~2.30の範囲のPA 66、PA 610、PA 612、PA 616、PA12が、またポリアミド(A2)として、PA 10T/6TおよびPA 66/6I/6Tが、さらに非晶質または微結晶性ポリアミド(A3)として、PA 6I/6T、PA 6I/6T/MACMI/MACMT/MACM12/612、PA MACM12およびPA PACM12が特に好ましい。
【0016】
したがって、本発明によると、成分(A)のポリアミドとして、特に以下のポリアミド混合物が好ましい:
混合物(i):
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A3)10~50質量%の、55~85mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および15~45mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する、非晶質半芳香族ポリアミド6I/6Tと
の混合物(ここで、(A1)と(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)。
【0017】
混合物(ii):
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と
(A2)10~50質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド6T/66/BacT/Bac6、6T/6I/BacT/BacIまたは6T/66/6I/BacT/Bac6/BacI(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率のビス(アミノメチル)シクロヘキサン、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択され、ジカルボン酸成分は64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、さらに0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここでジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)
との混合物(ここで、(A1)と(A2)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)。
混合物(iii):
(A2)50~90質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド10T/6Tと、
(A3)10~50質量%の、55~85mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および15~45mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する、非晶質半芳香族ポリアミド6I/6Tと
の混合物(ここで、(A2)と(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)。
【0018】
混合物(iiii):
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A2)8~30質量%の半結晶性半芳香族ポリアミドPA6T/BacT/66/Bac6、6T/BacT/6I/BacIまたは6T/BacT/6I/BacI/66/Bac6(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率のビス(アミノメチル)シクロヘキサン、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択され、ジカルボン酸成分は、64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、さらに0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここでジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)との混合物、
(A3)2~20質量%の非晶質ポリアミド6I/6T/612/MACMI/MACMT/MACM12(ここで、組成には、好ましくはそれぞれ18~30mol%の6Iおよび6T単位、12~26mol%の612単位、さらにそれぞれ6~16mol%のMACM12、MACMIおよびMACMT単位が含まれ、ここですべてのPA単位の合計は100mol%になる)と
の混合物(ここで、(A1)、(A2)および(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)。
【0019】
ポリアミド成形用組成物は、成分(B)の形態で、少なくとも15.0質量パーセントから多くて40.0質量パーセントの割合で、ガラス繊維形態の繊維強化物質を必然的に含む。
1つの好ましい実施形態によれば、ポリアミド成形用組成物は、成分(B)が、成分(A)~(E)の合計に対して、17.0~35.0質量%の範囲、好ましくは18.0~32.0質量%、または20.0~30.0質量%の範囲の割合で存在することを特徴とする。
この場合、ガラス繊維(B)は、円形断面、特に好ましくは直径が5~20μmの範囲、もしくは5~13μmもしくは6~10μmの範囲の円形断面、または非円形断面を有してもよく、非円形断面の場合、主断面軸のそれに垂直な二次断面軸に対する寸法比は、優先的には2.5より大きく、特に好ましくは2.5~6もしくは3~5の範囲である。
ガラス繊維(B)は、例えば、短繊維(例えば、長さ0.2~20mmのチョップドガラス)または連続フィラメント繊維(ロービング)の形態で使用され得る。ガラス繊維(B)は様々な断面を有し得、円形断面(丸繊維)および非円形断面(扁平繊維)のガラス繊維が好ましい。
【0020】
円形断面のガラス繊維、すなわち丸ガラス繊維は、直径が優先的には5~20μmの範囲、好ましくは5~13μmの範囲、より好ましくは6~10μmの範囲である。このガラス繊維は、好ましくは短ガラス繊維(長さ0.2~20mm、好ましくは2~12mmのチョップドガラス)の形態で使用される。
扁平ガラス繊維、すなわち非円形断面を有するガラス繊維の場合、主断面軸の、それに垂直な二次断面軸に対する寸法比が2.5より大きい、好ましくは2.5~6の範囲、特に3~5の範囲のガラス繊維が優先的に使用される。これらのいわゆる扁平ガラス繊維は、卵形、楕円形、単一または複数のくびれのある楕円形(いわゆるコクーン繊維)、多角形、矩形、またはほぼ矩形の断面を有する。使用される扁平ガラス繊維のさらなる好ましい特徴的な構成は、主断面軸の長さが、好ましくは6~40μmの範囲、特に15~30μmの範囲であり、二次断面軸の長さが、3~20μmの範囲、特に4~10μmの範囲であることである。それと同時に、扁平ガラス繊維は極めて高い充填密度を有するが、これはガラスの断面が仮想の矩形を満たし、ガラス繊維の断面を可能な限り正確に、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも85%の程度まで取り囲むことを意味する。
【0021】
本発明の成形用組成物を強化するために、円形断面のガラス繊維と非円形断面のガラス繊維の混合物を使用することも可能であり、この場合、扁平ガラス繊維の割合が優先的には優勢であり、すなわち繊維全体の質量の50質量%より多くを占める。
好ましくは、成分(B)は以下からなる群から選択される:E-ガラス繊維(ASTM D578-00により、52~62%の二酸化ケイ素、12~16%の酸化アルミニウム、16~25%の酸化カルシウム、0~10%のホウ砂、0~5%の酸化マグネシウム、0~2%のアルカリ金属酸化物、0~1.5%の二酸化チタン、および0~0.3%の酸化鉄からなり、好ましくは密度が2.58±0.04g/cm3、引張弾性率が70~75GPa、引張強度が3000~3500MPa、破断点伸びが4.5~4.8%である)、A-ガラス繊維(63~72%の二酸化ケイ素、6~10%の酸化カルシウム、14~16%の酸化ナトリウムおよびカリウム、0~6%の酸化アルミニウム、0~6%の酸化ホウ素、0~4%の酸化マグネシウム)、C-ガラス繊維(64~68%の二酸化ケイ素、11~15%の酸化カルシウム、7~10%の酸化ナトリウムおよびカリウム、3~5%の酸化アルミニウム、4~6%の酸化ホウ素、2~4%の酸化マグネシウム)、D-ガラス繊維(72~75%の二酸化ケイ素、0~1%の酸化カルシウム、0~4%の酸化ナトリウムおよびカリウム、0~1%の酸化アルミニウム、21~24%の酸化ホウ素)、玄武岩繊維(およそ以下の組成を有する鉱物繊維:52%のSiO2、17%のAl2O3、9%のCaO、5%のMgO、5%のNa2O、5%の酸化鉄、さらに他の金属酸化物)、AR-ガラス繊維(55~75%の二酸化ケイ素、1~10%の酸化カルシウム、11~21%の酸化ナトリウムおよびカリウム、0~5%の酸化アルミニウム、0~8%の酸化ホウ素、0~12%の二酸化チタン、1~18%の酸化ジルコニウム、0~5%の酸化鉄)ならびにこれらの混合物。
【0022】
成分(B)の1つの好ましい実施形態は、二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウムの三成分系または二酸化ケイ素-酸化アルミニウム-酸化マグネシウム-酸化カルシウムの四成分系に基づく高強度ガラス繊維であり、ここで二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムの量の合計は、ガラス組成物全体に対して少なくとも78質量%、好ましくは少なくとも87%、より好ましくは少なくとも92%である。
例えば、58~70質量%の二酸化ケイ素(SiO2)、15~30質量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、5~15質量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~10質量%の酸化カルシウム(CaO)および0~2質量%のさらなる酸化物、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ホウ素(B2O3)、二酸化チタン(TiO2)または酸化リチウム(Li2O)の組成が特に好ましく使用される。別の実施形態では、高強度ガラス繊維は、60~67質量%の二酸化ケイ素(SiO2)、20~28質量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、7~12質量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~9質量%の酸化カルシウム(CaO)、さらに0~1.5質量%のさらなる酸化物、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ホウ素(B2O3)、二酸化チタン(TiO2)、酸化リチウム(Li2O)など、の組成を有する。
【0023】
特に、高強度ガラス繊維が以下の組成を有することが好ましい:62~66質量%の二酸化ケイ素(SiO2)、22~27質量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、8~12質量%の酸化マグネシウム(MgO)、0~5質量%の酸化カルシウム(CaO)、0~1質量%のさらなる酸化物、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ホウ素(B2O3)、二酸化チタン(TiO2)、酸化リチウム(Li2O)など。
高強度ガラス繊維は、3700MPa以上、好ましくは少なくとも3800または4000MPaの引張強度、少なくとも4.8%、好ましくは少なくとも4.9または5.0%の破断点伸び、および75GPaより大きい、好ましくは78または80GPaより大きい引張弾性率を有し、これらのガラス特性は、温度23℃および相対湿度50%で、直径10μmおよび長さ12.7mmである個々の繊維(元の単一フィラメント)を用いて決定される。成分(B1)のこれらの高強度ガラス繊維の具体例は、Owens Corning製の、995サイズのS-ガラス繊維、Nittobo製のT-ガラス繊維、3B製のHiPertex、Sinoma Jinjing Fiberglass製のHS4-ガラス繊維、Vetrotex製のR-ガラス繊維、ならびにAGY製のS-1-およびS-2-ガラス繊維である。
【0024】
ロービングの形態で使用されるガラス繊維(連続フィラメント繊維)は、例えば、優先的には、6~20μm、好ましくは12~18μmの直径(丸ガラス繊維の場合)または二次断面軸(扁平ガラス繊維の場合)を有し、ガラス繊維の断面は、丸、卵形、楕円形、単一または複数のくびれのある楕円形、多角形、矩形、またはほぼ矩形であり得る。断面軸の比、すなわち主断面軸の二次断面軸に対する比が2.5~5である、いわゆる扁平ガラス繊維が特に好ましい。連続フィラメント繊維は、上述の様々なガラスから製造することができ、E-ガラスおよび様々な高強度ガラスに基づく連続フィラメント繊維が好ましい。これらの連続フィラメント繊維は、細長い長繊維強化ペレットを製造するための公知の方法によって、特に引抜成形法によって本発明のポリアミド成形用組成物に組み込まれ、引抜成形法では、連続フィラメント繊維ストランド(ロービング)がポリマー溶融物で完全に飽和され、次いで冷却および細断される。好ましくはペレット長が3~25mm、特に4~12mmである、このようにして得られた細長い長繊維強化ペレットは、通例の加工方法(例えば、射出成形、圧縮成形など)によって、造形パーツへとさらに加工することができる。
【0025】
成分(B)としては、非円形断面を有し(扁平繊維)、主断面軸の二次断面軸に対する軸比が少なくとも2.5であるE-ガラスのガラス繊維、および/または円形もしくは非円形断面を有する高強度ガラス繊維、ならびに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウム成分に実質的に基づき、酸化マグネシウム(MgO)の割合が5~15質量%であり、酸化カルシウムの割合が0~10質量%であるガラス複合体が好ましい。
扁平E-ガラス繊維の形態では、成分(B)のガラス繊維は、好ましくは密度が2.54~2.62g/cm3、引張弾性率が70~75GPa、引張強度が3000~3500MPa、破断点伸びが4.5~4.8%であり、これらの機械的特性は、23℃および相対湿度50%で、直径10μmおよび長さ12.7mmの個々の繊維を用いて決定される。
【0026】
成分(B)としては、円形断面(丸繊維)を有し、直径が6~10μmの範囲のE-ガラスのガラス繊維が特に好ましい。
本発明のガラス繊維は、アミノシランまたはエポキシシラン化合物に基づく接着促進剤を含む熱可塑性樹脂、特にポリアミドに好適なサイズで提供されてもよい。
ポリアミド成形用組成物は、好ましくは、いずれの場合も成分(A)~(E)の合計に対して、16.0~33.0質量%、より好ましくは18.0~32.0質量%、より好ましくは20.0~30.0質量%のガラスフレーク(成分(C))を含む。
成分(C)のガラスフレークの粒子厚さは、好ましくは0.4~1.7μmの範囲、より好ましくは0.5~1.6μmの範囲、特に好ましくは0.5~1.5μmの範囲である。ガラスフレークの粒子厚さは、好ましくは平均粒子厚さを意味する。この平均粒子厚さは、少なくとも100の個々のガラスフレークを用いて、走査電子顕微鏡法によって厚さを判定することによる算術平均として得られる。粒子厚さの変動幅に関しては、少なくとも50質量%、特に少なくとも70質量%のガラスフレークが、平均粒子厚さの半分(0.5×平均粒子厚さ)から平均粒子厚さの1.5倍(1.5×平均粒子厚さ)までの粒子厚さ範囲内に含まれるとさらに好ましい。したがって、平均粒子厚さが0.3~2.0μmの範囲、より好ましくは0.4~1.7μmの範囲、より好ましくは0.5~1.6μmの範囲、特に好ましくは0.5~1.5μmの範囲の成分(C)のガラスフレークが好ましい。
【0027】
ガラスフレークは、幅広い粒度分布および高いアスペクト比(平均粒径の粒子厚さに対する比)を有する、薄く、透明で、形が不規則である板状のガラス片である。1種のガラスフレークの粒子厚さのばらつきは最小限である。個々のガラス粒子の粒度は通例10~2000または10~4000μmであり、平均粒径(D50)は20~300、30~300、または15~600μmの範囲である。この寸法および上記に先述した寸法は、出発原料および/または成形用組成物中のガラスフレークに基づくものであると理解されるべきである。主に塗料または防食用もしくは強化プラスチック用コーティングで使用される従来のガラスフレークは、3~7μmの厚さを有する。ガラスフレークは、例えば、ガラス気泡を破壊することによって、または遠心分離機で液体ガラス溶融物を破砕し、続いてリボン状のガラス片を粉砕することによって製造される。ガラスフレークは、粒度分布、平均粒径、およびガラス粒子の厚さに基づいて特徴付けられる。さらに、ガラスフレークは、種々の異なるガラス、例えば、E-ガラス、S-ガラス、ECR-ガラスおよびC-ガラスなどから製造され得る。厚ガラスフレークの典型的な代表例は、粒度分布が以下の通りであるNGF Europe製のMicroglas REF-160Aである:ガラス粒子の10%が直径300~1700μmであり、65%が直径45~300μmの範囲であり、25%が粒子径45μm未満である。ここで、厚さは5μmである。使用されるガラスの種類はE-ガラスである。ガラスフレークは、例えばアミノシランまたはエポキシシランなどを用いて種々のサイズで表面コーティングし、ポリマーマトリックスへの付着を改善することができる。
【0028】
本発明で使用されるガラスフレークは、好ましくはおよそ上記の平均粒径および粒度分布を有するにもかかわらず、アスペクト比が比較的大きいため、粒子厚さがはるかに小さい。本発明のガラスフレークの厚さはわずか0.3~2.0μmである。この非常に薄いガラスフレークは、現在、化粧品の分野のみで、かつ事実上は車両用顔料コーティングに使用されている。この種の非常に薄いガラスフレークの例は、一つは平均粒径(d50)が160μm、厚さが0.7μmであり、かつガラス粒子の20%が2000~1400μmの範囲、60%が150~1400μmの範囲、および20%が150μmより小さい粒度分布を有し、3-アミノプロピルトリエトキシシランでコーティングされた、Nippon Sheet Glass Co.(日本)製のE-ガラスタイプMEG160FY-M03であり、またはもう一つは、平均粒径が160μmであり、ガラス粒子の80%が150~1700μmの範囲、20%が150μmより小さい粒度分布を有し、粒子厚さが1.0~1.3μmであり、3-アミノプロピルトリエトキシシランでコーティングされた、Glass Flake Ltd.製のE-ガラスフレークタイプGF100E-Aである。同様に好適なものは、平均粒径が120μmであり、ガラス粒子の10%が300~1000μmの範囲、65%が50~300μmの範囲、および25%が50μmより小さい粒度分布を有し、粒子厚さが1.0~1.3μmであり、3-アミノプロピルトリエトキシシランでコーティングされた、Glass Flake Ltd.製のECR-ガラスフレークタイプGF100MECR-Aである。
【0029】
本明細書では、ガラスフレークがE-、S-、C-またはECR-ガラスからなると好ましく、E-ガラスのガラスフレークが特に好ましい。
ガラスフレークは、粉砕されるか、微粉状化されるかまたは未粉砕であるかに応じて粒度が異なってもよい。20~300μm、より好ましくは50~200μm、特に好ましくは80~170μmの平均粒径(D50)が好ましい。ガラスフレークについて述べられた平均粒径は、使用される原料(成分(C))および/または完成成形用組成物に基づくものであり、レーザー回折式粒度分析を用いて決定された。
使用されるガラスフレークは、好ましくはアミノシラン、ビニルシラン、エポキシシランまたはアクリロシランに基づくコーティングが施されており、アミノシランによる表面コーティングが特に好ましい。シランの量は、ガラスフレークの量に対して、好ましくは0.1~1.0質量%、より好ましくは0.3~0.9質量%である。
【0030】
ポリアミド成形用組成物は、成分(D)の形態で、他の構成成分(B)、(C)および(E)とは異なり、0.1~2.0質量パーセントの割合で、熱安定剤をさらに含む。成分(D)は、優先的には、成分(A)~(E)の合計に対して0.2~2.0質量%の範囲、特に好ましくは0.2~1.8または0.3~1.5質量%の範囲の割合で存在する。
1つの好ましい実施形態によると、成分(D)は以下の群から選択することができる:
・一価または二価銅の化合物、特に一価もしくは二価銅と無機もしくは有機酸または一価もしくは二価フェノールの塩、一価もしくは二価銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物もしくはホスフィンの錯化合物、好ましくはハロゲン化水素酸の、シアン化水素酸のCu(I)もしくはCu(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩、非常に好ましくは一価銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCu2O、さらに二価銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)、またはこれらの化合物の混合物、ここで、これらの銅化合物は、それ自体で、または優先的には、濃縮物の形態で使用される。本明細書では、濃縮物は銅塩または銅化合物を高濃度で含む、好ましくは成分(A)と同じまたは実質的に同じ化学的性質を有するポリマーを指す。特に、優先的には、銅化合物は、アルカリ金属ハロゲン化物を含むさらなる金属ハロゲン化物、例えばNaI、KI、NaBr、KBrとの組合せで使用され、ここで金属ハロゲン化物の銅に対するモル比は0.5~20、好ましくは1~10、より好ましくは2~7である;
・第二級芳香族アミンに基づく安定剤;
・立体障害フェノールに基づく安定剤;
・ホスファイトおよびホスホナイト;さらに
・前述の安定剤の混合物。
【0031】
したがって、優先的には、目的の化合物は一価または二価銅の化合物であり、例としては一価もしくは二価銅と無機もしくは有機酸または一価もしくは二価フェノールの塩、一価もしくは二価銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物もしくはホスフィンの錯化合物、好ましくはハロゲン化水素酸の、シアン化水素酸のCu(I)もしくはCu(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩がある。一価銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCu2O、さらに二価銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)が特に好ましい。
銅化合物は、それ自体で、または、濃縮物の形態で使用されてもよい。この文脈での濃縮物は、銅塩を高濃度で含む、好ましくは成分(A)と同じ化学的性質を有するポリマーである。銅化合物は、有利には、他の金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物、例えばNaI、KI、NaBr、KBrとの組合せで使用され、ここで金属ハロゲン化物の銅に対するモル比は0.5~20、好ましくは1~10、より好ましくは2~7である。CuIとKIの組合せを、成形用組成物に対して、0.1~0.7質量%、特に0.2~0.5質量%の総濃度で使用することが好ましい。
【0032】
同様に、第二級芳香族アミンに基づく安定剤も考えられ、この場合、この安定剤は、好ましくは、0.2~2、好ましくは0.2~1.5質量%の量で存在する。
さらに、立体障害フェノールに基づく安定剤が考えられ、この場合、この安定剤は、好ましくは0.1~1.5、より好ましくは0.2~1.0質量%の量で存在する。また、ホスファイトおよびホスホナイトも考えられる。
同様に、上述の熱安定剤の混合物が考えられる。
本発明で使用することができ、第二級芳香族アミンに基づく安定剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンとアセトンの付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノレンの付加物、Naugard 445、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、またはそれらの2種以上の混合物である。
【0033】
本発明で使用することができ、立体障害フェノールに基づく安定剤の好ましい例は、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、グリコールビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブタノエート)、2,1’-チオエチルビス-(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、4-4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、またはこれらの安定剤の2種以上の混合物である。
【0034】
好ましいホスファイトおよびホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトである。トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)フェニル-5-メチル]フェニルホスファイトおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Clariant、Baselの市販品Hostanox(登録商標)PAR24)が特に好ましい。
【0035】
熱安定剤の好ましい実施形態は、Irgatec NC 66(BASFから入手可能)と、CuIおよびKIに基づく銅安定剤の組合せである。CuIおよびKIのみに基づく熱安定剤が特に好ましい。
有機熱安定剤および/または銅もしくは銅化合物の使用を除いて、周期表のVB、VIB、VIIBおよび/またはVIIIB族のさらなる遷移金属またはさらなる遷移金属化合物の使用は好ましくは排除される。
さらに好ましい実施形態によると、成分(D)の熱安定剤は、フェノール系熱安定剤、ホスファイト系熱安定剤、アミン系熱安定剤、またはそれらの混合物もしくは組合せの群から選択され、成分(D)は特に好ましくは以下の群から選択される:トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、またはそれらの混合物。
【0036】
好ましい有機安定剤は、フェノール化合物および/またはホスファイト化合物、例えば、Irganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、Hostanox PAR 24またはIrgafos 168などである。成分(D)としては、7:3の比のIrganox 1010(CAS 6683-19-8、フェノール系酸化防止剤)およびAnox 20(CAS 6683-19-8、フェノール系酸化防止剤)の混合物10質量部と、さらにHostanox PAR24(CAS:31570-04-4、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)2質量部との混合物が好ましく、濃度は、成分(A)~(E)の合計に対して0.3~1.5質量%である。
ポリアミド成形用組成物は、成分(E)の形態で、他の構成成分(A)~(D)とは異なり、好ましくは多くても4質量パーセントの割合でさらなる助剤および/または添加剤を含んでもよい。
1つの好ましい実施形態によると、成分(E)は、成分(A)~(E)の合計に対して0~4.0質量%の範囲、より好ましくは0~3.0質量%の範囲、特に好ましくは0~2.0または0.1~2.0質量%の範囲の割合で存在する。
成分(E)は、以下の群から優先的に選択される:結晶化促進剤または遅延剤、流動助剤、潤滑剤、離型剤、顔料、染料、タガント、加工助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、重合プロセスからの残留物、例えば、触媒、塩およびそれらの誘導体。優先的には、成分(E)はポリアミド、特に半結晶性、半芳香族、脂肪族、微結晶性または非晶質ポリアミドを含まず、耐衝撃性改良剤を含まない。
【0037】
上記で先に既に明らかにした通り、提案されるポリアミド成形用組成物は、特に、好ましくは射出成形または押出成形によって造形品へと加工された場合、特に自動車および電気/電子機器分野での用途に好適であることを特徴とする。
したがって、本発明はまた、好ましくは射出成形または押出成形によって上述のポリアミド成形用組成物から製造された、または上述のポリアミド成形用組成物の少なくとも1つの領域またはコーティングを有する造形品に関する。
本発明の熱可塑性成形用組成物およびそれから製造された造形品は、それぞれ、乾燥状態および調整状態での良好な機械的特性および良好な表面特性でのために注目に値する。造形品は、多湿状態下を含め十分な剛性および強度とともに良好な耐衝撃性を有し、さらに表面品質が良好である。目的の造形品は、好ましくは、良好な表面品質が重要であるものである。より詳細には、造形品は、外装パーツおよび/または目に見える筐体、カバーもしくはフレームからなる群から選択される。これらの造形品は、複数の方法、例えば射出成形もしくは射出圧縮成形によって、または押出成形によって製造することができる。また、造形品のさらなる機械加工、例えば切削、穿孔、粉砕、レーザー刻印、レーザー溶接、またはレーザー切断などを行うこともできる。
【0038】
本発明のポリアミド成形用組成物は、造形品、特に電気または電子部品のパーツ、筐体のパーツまたは筐体構成要素のパーツ、好ましくは携帯型電子デバイスの筐体または筐体パーツ、パネルまたはカバー、家庭用品、家庭用機械、眼鏡フレーム、眼鏡縁取り、サングラス、カメラ、遠視用眼鏡、装飾品、遠隔通信および家電用のデバイスおよび装置、自動車セグメントおよび他の輸送手段の分野の内装および外装部品、電気製品、家具、スポーツ、機械工学、公衆衛生および衛生、医療、エネルギーおよび推進技術の分野における、好ましくは運搬または機械的機能を備えた内装および外装部品、特に好ましくは携帯電話、スマートフォン、システム手帳、ラップトップコンピューター、ノートパソコン、タブレットコンピューター、ラジオ、カメラ、計時器、計算機、センサー筐体、測定デバイス、音楽または動画の再生デバイス、ナビゲーションデバイス、GPSデバイス、電子写真フレーム、外部ハードドライブおよび他の電子ストレージ媒体の製造において用途を見出す。
さらなる実施形態は従属請求項に示される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好ましい実施形態を、実施例を参照して以下に記載するが、実施例は単に例示となるものであり、制限を課すものと解釈されるべきではない。
成形用組成物および試験体の製造:
下の表1および2の通りの構成を有する成形用組成物を、Werner u. Pfleiderer製のZSK25二軸押出機を用いて製造した。種々のポリアミドペレットを安定剤および添加剤と混合し、吸入ゾーンに量り入れた。充填剤(ガラス繊維、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、中空ガラスビーズおよびガラスフレーク)を、金型前方のサイドフィーダー3バレルユニットを介してポリマー溶融物に量り入れた。バレル温度は290℃までの上昇プロファイルとして設定した(PA-4およびPA-5については320℃まで)。200rpmで配合を行い、スループットは15kg/時間であった。押出ストランドを水浴で冷却した後ペレット化し、得られたペレットを100℃で24時間乾燥させた。
シリンダー温度を275~280℃(PA-4およびPA-5については310℃まで)に設定し、スクリュー速度を250rpmに設定したArburg Allrounder 320-210-750射出成形ユニットを用いて試験体を製造した。成形温度は100℃であった(PA-4およびPA-5については130℃)。
【0040】
特性の測定:
以下の基準に従い、以下の試験体を用いて測定を行った:
射出成形後の乾燥状態の試験体を、乾燥環境、すなわちシリカゲル上で少なくとも48時間室温で保存する。
光沢測定用の試験体を除く調整試験体を、DIN EN ISO 1110:1998に従い72℃および相対湿度62%で14日間保存する。
熱挙動、融点(Tm)、融解エンタルピー(ΔHm)およびガラス転移温度(Tg)を、ペレットを用いてISO規格11357-1、-2および-3(2013-04)に従い測定した。20K/分の加熱速度で示差走査熱量測定(DSC)を行った。
DIN EN ISO 307(2013-08)に従い、温度20℃で、m-クレゾール100mlに溶解した0.5gのポリマー溶液を用いて相対粘度(ηrel)を決定した。試料はベレット形態で使用した。
【0041】
ISO 527(2012-06)に従い、1mm/分の引張り速度(引張弾性率)または5mm/分の引張り速度(破断応力、破断点伸び)で、ISO/CD 3167(2014-11)規格の、タイプA1、170×20/10×4mmのISO引張試験片を用いて、温度23℃で、乾燥および調整状態において引張弾性率、破断応力および破断点伸びを決定した。
ISO 179/2*eU(1997、*2=機器装備)に従い、23℃で、ISO/CD 3167(2003)規格に従い製造されたISO試験片、タイプB1(大きさ80×10×4mm)を用いて、乾燥および調整状態においてシャルピー耐衝撃性を決定した。
寸法60×60×2mmのプレートを用いて、Minolta Multi Gloss 268機器を使用し、角度60°および温度23℃で、ISO 2813(2015-02)に従って光沢を決定した。光沢値は、無次元光沢単位(GU)で報告する。乾燥状態の試験体を、射出成形後、乾燥環境、すなわちシリカゲル上で、室温で48時間保存した。調整のために、プレートを85℃および相対湿度85%で120時間保存した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
結果の考察:
本発明による組成物を用いた実施例B1-B8は、乾燥状態と調整状態との差が小さく、一貫して良好な機械的特性を示す(弾性率、破断応力、破断点伸び、耐衝撃性)。また、良好な特性は特に光沢においてはっきりと示されており、光沢は結果的に、乾燥状態であるか調整状態であるかにはほとんど影響されない。これらの特性は、様々なガラス繊維含有量について、ならびに丸断面を有するガラス繊維(タイプB)および扁平断面を有するガラス繊維(タイプA)について実証されている。扁平ガラス繊維は、特に光沢に関してより良好な特性を示す。実施例では様々なポリアミドマトリックス組成物についても特性が実証されており、組成物によってわずかに異なる特性が得られる。特に良好な調整状態での光沢値は非晶質6I/6Tと10T/6T(B7)の混合物で得られ、特に良好な乾燥状態での光沢値は、66/6I/6T(B6)のみのマトリックスで得られる。加えて、特性は様々なガラスフレーク含有量について実証されている。ガラスフレークを高比率で使用すると弾性率および破断応力、さらに光沢を増大させることができる。破断点伸びおよび耐衝撃性は保持されるにとどまる(B2とB4、およびB1とB5を比較)。
【0046】
VB1~VB4では、成分(C)または(B)と(C)に対して代替の充填剤を使用する。VB1およびVB2では、本質的にB3と同じ組成物から出発して、ガラスフレークをそれぞれカオリンおよび炭酸カルシウムで、実質的に同じ比率で置き換える。結果として、機械的特性は一貫して悪化し、調整状態での光沢も劣化する。実施例VB3の場合、実施例B3から出発し、ガラス繊維およびガラスフレークをガラスビーズで置き換える。結果として、機械的特性と光沢は悪化する。VB4の場合、B2から出発して、ガラスフレークをマイカで置き換えるが、ここでも得られる機械的特性は一貫して悪化し、得られる光沢も悪化する。VB5の場合、B3から出発し、ガラスフレークをガラス繊維で置き換える。結果として、弾性率および破断応力の値は向上するが、破断点伸びの値は悪化し、耐衝撃性の値はほぼ同じである。特に光沢、とりわけ調整状態の光沢は非常に不良である。比較例VB6をB7と比較する(B7の丸ガラス繊維およびガラスフレークは扁平ガラス繊維で置き換える)と、ここでも結果として弾性率および破断応力の値は向上し、破断点伸びの値は悪化し、耐衝撃性の値はほぼ同じである。光沢は乾燥状態では良好であるが、調整状態では許容されるものではない。したがって、これらの比較例VB1~VB4のすべてにおいて、実施例B1~B5と比較して、剛性(弾性率)、強度(破断応力)および耐衝撃性は顕著に低下する。一方、光沢は特に乾燥状態では全体的に満足のいくものであり得るが、調整状態では一部の場合で値が顕著に降下する。ガラス繊維のみを充填剤として使用したVB5~VB7は、破断点伸びがこれらの場合で低いことのみを除き機械的特性が良好であるため、注目に値する。対照的に、光沢値は検体が調整されると大幅に変化する。
【0047】
VB8およびVB9では、ガラス繊維に加え、本発明のものではない粒子厚さが5μmのガラスフレークを使用する。B2とVB8を比較すると、VB8では機械的特性、特に耐衝撃性が一貫して悪化することが明白である。調整後の光沢も著しく降下する。ここで、本発明の薄ガラスフレークがプラスの影響を有することが明らかになる。VB9のように耐衝撃性改良剤を追加的に使用すると、耐衝撃性を含む機械的特性が大幅に低減する。光沢もまた、この使用によって許容されないレベルまで降下する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕以下の成分
(A)28.0~64.9質量%の少なくとも1種のポリアミド、
(B)15.0~40.0質量%のガラス繊維、
(C)15.0~35.0質量%の、粒子厚さが0.3~2.0μmの範囲内のガラスフレーク、
(D)0.1~2.0質量%の熱安定剤、
(E)0~5.0質量%の添加剤
からなるポリアミド成形用組成物であって、
成分(B)および(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して35.0~65.0質量%の範囲内であり、成分(A)~(E)の合計が100質量%であることを条件とする、前記ポリアミド成形用組成物。
〔2〕成分(A)の割合が、いずれの場合も、成分(A)~(E)の合計に対して、34.0~59.8質量%の範囲内、好ましくは38.2~57.8質量%または41.5~54.7質量%の範囲内であることを特徴とする、前記〔1〕に記載のポリアミド成形用組成物。
〔3〕成分(A)が、半結晶性脂肪族ポリアミド(A1)、半結晶性半芳香族ポリアミド(A2)、ならびに非晶質および/もしくは微結晶性ポリアミド(A3)、またはこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは成分(A)が少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A1、A2)と少なくとも1種の非晶質または微結晶性ポリアミド(A3)の混合物であり、より好ましくは成分(A)中の半結晶性ポリアミド(A1、A2)の割合が、いずれの場合も成分(A)全体に対して30.0~98.0質量%、より好ましくは40.0~95.0質量%の範囲内、非常に好ましくは50.0~90.0質量%の範囲内である;ならびに/あるいは
成分(A)が、好ましくは1.60~2.30の範囲内の相対粘度を有する、PA 66、PA 610、PA 612、PA 10T/6T、PA 66/6I/6T、PA 6T/66/BacT/Bac6、PA 6T/610/BacT/Bac10、PA 6T/612/BacT/Bac12、PA 6T/BacT/6I/BacI、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される、半結晶性脂肪族ポリアミド(A1)もしくは半結晶性半芳香族ポリアミド(A2)またはそれらの混合物からなることを特徴とする、前記〔1〕または〔2〕に記載のポリアミド成形用組成物。
〔4〕成分(A)が、以下の混合物:
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A3)10~50質量%の、55~85mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および15~45モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する、非晶質半芳香族ポリアミド6I/6Tと
の混合物(ここで、(A1)と(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と
(A2)10~50質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド6T/66/BacT/Bac6、6T/6I/BacT/BacIまたは6T/66/6I/BacT/Bac6/BacI(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率のビス(アミノメチル)シクロヘキサン、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択され、且つジカルボン酸成分は64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、及び0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここでジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)
との混合物(ここで、(A1)と(A2)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A2)50~90質量%の半結晶性半芳香族ポリアミド10T/6Tと、
(A3)10~50質量%の、55~85mol%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位および15~45mol%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する、非晶質半芳香族ポリアミド6I/6Tと
の混合物(ここで、(A2)と(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する);
または
(A1)50~90質量%の半結晶性脂肪族ポリアミド66と、
(A2)8~30質量%の半結晶性半芳香族ポリアミドPA6T/BacT/66/Bac6、6T/BacT/6I/BacIまたは6T/BacT/6I/BacI/66/Bac6(ここで、ジアミン成分は65~85モル分率の1,6-ヘキサンジアミンおよび15~35モル分率のビス(アミノメチル)シクロヘキサン、特に1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから選択され、且つジカルボン酸成分は、64~100モル分率のテレフタル酸、0~18モル分率のイソフタル酸、及び0~18モル分率の、6~18個の炭素を有する1種以上の脂肪族ジカルボン酸からなり、ここで、ジアミン成分とジカルボン酸成分のそれぞれの合計は100モル分率である)と、
(A3)2~20質量%の非晶質ポリアミド6I/6T/612/MACMI/MACMT/MACM12(ここで、組成には、好ましくはそれぞれ18~30mol%の6Iおよび6T単位、12~26mol%の612単位、及びそれぞれ6~16mol%のMACM12、MACMIおよびMACMT単位が含まれ、ここで、すべてのPA単位の合計は100mol%になる)と
の混合物(ここで、(A1)、(A2)および(A3)の画分は100質量%のポリアミド混合物(A)を構成する)
のうちの1つからなることを特徴とする、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔5〕成分(B)の割合が、いずれの場合も、成分(A)~(E)の合計に対して、17.0~35.0質量%の範囲内、好ましくは18.0~32.0質量%または20.0~30.0質量%の範囲内であることを特徴とする、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔6〕成分(B)のガラス繊維が、E-ガラス繊維またはS-ガラス繊維である;および/あるいは
成分(B)が、円形断面、特に好ましくは5~20μmの範囲内、または5~13μmもしくは6~10μmの範囲内の直径の円形断面を有するガラス繊維から構成される、
および/あるいは
成分(B)のガラス繊維が、主断面軸の、それに垂直な二次断面軸に対する寸法比が優先的には2.5より大きい、特に好ましくは2.5~6または3~5の範囲内の非円形断面を有する繊維であることを特徴とする、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔7〕成分(C)の割合が、いずれの場合も成分(A)~(E)の合計に対して、16.0~33.0質量%の範囲内、好ましくは18.0~32.0または20.0~30.0質量%の範囲内であることを特徴とする、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔8〕成分(C)の平均粒径(d50)が、20~300μmの範囲内、より好ましくは50~200μmの範囲内または特に好ましくは80~170μmの範囲内である;および/または
成分(C)の粒子厚さが、0.4~1.7、特に好ましくは0.5~1.5μmの範囲内であることを特徴とする、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔9〕成分(B)と(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して、40.0~60.0質量%の範囲内、好ましくは42.0~57.0質量%または45.0~55.0質量%の範囲内であることを特徴とする、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔10〕成分(D)の割合が、いずれの場合も成分(A)~(E)の合計に対して、0.2~2.0質量%、好ましくは0.2~1.8または0.3~1.5質量%の範囲内であることを特徴とする、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔11〕成分(D)が有機安定剤、好ましくはCu酸化物またはCu塩を含まない有機安定剤を含む;および/あるいは
成分(D)が、以下の群:
一価または二価銅の化合物、特に一価もしくは二価銅と無機もしくは有機酸または一価もしくは二価フェノールとの塩、一価もしくは二価銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物もしくはホスフィンとの錯化合物、好ましくはハロゲン化水素酸の、シアン化水素酸のCu(I)またはCu(II)塩、または脂肪族カルボン酸の銅塩、非常に好ましくは一価銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCNおよびCu2O、及び二価銅化合物CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)またはステアリン酸銅(II)、あるいはこれらの化合物の混合物(ここで、これらの銅化合物は、それ自体で、または優先的には、濃縮物の形態で使用され、ここで、濃縮物は、銅塩を高濃度で含む、成分(A)と同じまたは実質的に同じ化学的性質を好ましくは有するポリマーを指し、ここで、特に優先的には、銅化合物は、アルカリ金属ハロゲン化物を含むさらなる金属ハロゲン化物、例えばNaI、KI、NaBr、KBrとの組合せで使用され、ここで金属ハロゲン化物の銅に対するモル比は0.5~20、好ましくは1~10、より好ましくは2~7である);
第二級芳香族アミンに基づく安定剤;
立体障害フェノールに基づく安定剤;
ホスファイトおよびホスホナイト;及び
前述の安定剤の混合物
から選択されることを特徴とする、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔12〕成分(E)が、成分(A)~(E)の合計に対して、0~4.0質量%の範囲内、好ましくは0~3.0質量%の範囲内、特に好ましくは0~2.0または0.1~2.0質量%の範囲内の割合で存在することを特徴とする、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔13〕成分(E)が、以下の群:結晶化促進剤または遅延剤、流動助剤、潤滑剤、離型剤、顔料、染料、タガント、加工助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、重合プロセスからの残留物、例えば、触媒、塩およびそれらの誘導体から選択されることを特徴とする、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物。
〔14〕前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物で作製された、または前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物から作製された少なくとも1つの領域もしくはコーティングを含み、好ましくは射出成形、押出成形もしくは吹込成形によって製造される造形品であって、
好ましくは外装パーツおよび/または目に見える筐体、カバーもしくはフレーム、特に電気または電子部品のパーツ、筐体のパーツまたは筐体構成要素のパーツ、好ましくは携帯型電子デバイスの筐体または筐体パーツ、パネルまたはカバー、家庭用品、家庭用機械、眼鏡フレーム、眼鏡縁取り、サングラス、カメラ、遠視用眼鏡、装飾品、遠隔通信及び家電用のデバイスおよび装置、自動車セグメントおよび他の輸送手段の分野の内装および外装部品、電気製品、家具、スポーツ、機械工学、公衆衛生および衛生、医療、エネルギーおよび推進技術の分野における、好ましくは運搬または機械的機能を備えた内装および外装部品、特に好ましくは携帯電話、スマートフォン、システム手帳、ラップトップコンピューター、ノートパソコン、タブレットコンピューター、ラジオ、カメラ、計時器、計算機、センサー筐体、測定デバイス、音楽および/または動画の再生デバイス、ナビゲーションデバイス、GPSデバイス、電子写真フレーム、外部ハードドライブおよび他の電子ストレージ媒体の分野の造形品である、
前記造形品。
〔15〕前記〔14〕に記載の造形品を製造するための前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のポリアミド成形用組成物の使用、又は前記〔14〕に記載の造形品を製造する方法であって、
前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の成形用組成物が溶融形態で導入され、且つ、押出成形法、射出成形法または吹込成形法で、この成形用組成物から前記造形パーツが形成されることを特徴とする、前記使用又は方法。