(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】分布巻のコイル構造を有する固定子及びこれを備える三相交流電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20241008BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K3/28 J
(21)【出願番号】P 2020079787
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 高嗣
【審査官】北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037046(JP,A)
【文献】特開2017-118640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向の配置されたスロットのスロット数が極数の1.5倍より大きく、前記スロット数を前記極数で除算した値が既約分数になる分数スロット型の三相交流電動機の固定子であって、
渡り線によって互いに連結された複数個のコイルが前記スロット内の特定の箇所に配置されたコイル群を、6つ備え、
前記コイルとは、線材を使用して、閉じた輪の形状をつくり、同一形状で連結して束で重なっているものであり、
6つの前記コイル群の各々は、互いに同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有し、周方向に互いに60度ずれた位置に配置され、
前記6つのコイル群は、第1から第6のコイル群からなり、
前記第1のコイル群から周方向に60度ずれた位置に前記第2のコイル群が配置され、
前記第2のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第3のコイル群が配置され、
前記第3のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第4のコイル群が配置され、
前記第4のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第5のコイル群が配置され、
前記第5のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第6のコイル群が配置され、
前記第1のコイル群と前記第4のコイル群とから三相交流巻線のうちの第1相巻線が構成され、
前記第2のコイル群と前記第5のコイル群とから三相交流巻線のうちの第2相巻線が構成され、
前記第3のコイル群と前記第6のコイル群とから三相交流巻線のうちの第3相巻線が構成され、
前記極数は、2の奇数倍であり、
前記第1から第6のコイル群における各前記第1相巻線は第1の線対称軸に対して線対称に配置され、前記第1から第6のコイル群における各前記第2相巻線は第2の線対称軸に対して線対称に配置され、前記第1から第6のコイル群における各前記第3相巻線は第3の線対称軸に対して線対称に配置される、固定子。
【請求項2】
周方向の配置されたスロットのスロット数が極数の1.5倍より大きく、前記スロット数を前記極数で除算した値が既約分数になる分数スロット型の三相交流電動機の固定子であって、
渡り線によって互いに連結された複数個のコイルが前記スロット内の特定の箇所に配置されたコイル群を、6つ備え、
6つの前記コイル群の各々は、互いに同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有し、周方向に互いに60度ずれた位置に配置され、
前記6つのコイル群は、第1から第6のコイル群からなり、
前記第1のコイル群から周方向に60度ずれた位置に前記第2のコイル群が配置され、
前記第2のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第3のコイル群が配置され、
前記第3のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第4のコイル群が配置され、
前記第4のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第5のコイル群が配置され、
前記第5のコイル群から前記周方向と同一の方向に60度ずれた位置に前記第6のコイル群が配置され、
前記第1のコイル群と前記第4のコイル群とから三相交流巻線のうちの第1相巻線が構成され、
前記第2のコイル群と前記第5のコイル群とから三相交流巻線のうちの第2相巻線が構成され、
前記第3のコイル群と前記第6のコイル群とから三相交流巻線のうちの第3相巻線が構成され、
前記スロット数を前記極数で除算して得られる値である前記既約分数の分母は偶数であり、
前記第1から第6のコイル群における前記第1相巻線は偶数回の回転対称性を有するように配置され、前記第1から第6のコイル群における前記第2相巻線は偶数回の回転対称性を有するように配置され、前記第1から第6のコイル群における前記第3相巻線は偶数回の回転対称性を有するように配置される、固定子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固定子と、
前記固定子に対して径方向に対向配置された回転子と、
を備える三相交流電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布巻のコイル構造を有する固定子及びこれを備える三相交流電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三相交流電動機のコギングトルク及びトルクリップルを低減させることができる極とスロットの組み合わせとして、スロット数を極数で除算して得られた値が既約分数となる分数スロットを有する三相交流電動機が知られている。このような三相交流電動機は、「分数スロット三相交流電動機」とも称される。
【0003】
分数スロットを有する三相交流電動機では、極数とスロット数の最小公倍数を大きくするように、極数とスロット数を選定でき、また、高次の分布巻係数の値を小さくできることから、トルクリップルを減少させることができる。
【0004】
また、スロット数が、極数の1.5倍より大きい分数スロットを有する三相交流電動機においては、トルクリップルが小さくなる傾向があるものの、スロットに挿入する巻線のコイルピッチが1スロット(隣接するスロット間の距離)より大きくなるので、分布巻のコイル構造が必要となる。
【0005】
分布巻の巻線方法には大きく分けて、同心巻、重ね巻、及び波巻の3種類がある。このうち、重ね巻は、同一ピッチのコイルを重ねる巻き方である。重ね巻は、コイル間の干渉が少ないためコイルエンド(固定子に収納されないコイル端部)が小さく、また、重ね巻は、ほとんどの極数及びスロット数の三相交流電動機において、制約なく巻線配置できる利点がある。また、同心巻は、径方向に相ごとに順番にコイルを組み込む方法である。1重、2重、3重の同心コイル構造のため、インサータ方式の自動巻線機では工数が少なくて済み、また、制約なく巻線配置できる利点がある。ただし、コイルエンドが複雑に重ね合うためコイルエンドが大きくなる。
【0006】
例えば、同心巻コイルをスロットに挿入する場合に、最初に挿入されるU相の一極分のコイルをスロットの下側に挿入したのち、V相の一極分のコイルを2π/3P(Pは極数)ラジアンずれたスロットに、一方のコイル辺を先に挿入したコイルの上に重ねてスロットの上側に、他方のコイル辺をスロットの下側に挿入し、順次つぎのコイルを同様に2π/3Pラジアンずれたスロットに一方のコイル辺を先に挿入したコイルに重ね、他のコイル辺をスロット下側に挿入してゆき、スロット下側に挿入できないコイルは両辺を上側に挿入することを特長とする同心巻コイルの巻装方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
例えば、整数スロット巻の三相6極電機子巻線において、各極各相の巻線を互いにコイルピッチが相違するq個の同心巻コイルから成り(qは各極各相のスロット数)、6極を構成する基準となる相の6個の巻線のうち隣合わない3個の巻線を電気角で互いに180°ずつ隔て、%コイルピッチを100%(巻線の最小コイルピツチの内側に他相コイルの1極1相のコイル数に相当する量、q個のスロット数)として構成し、残りの二相の巻線は電気角で互いに180°ずつ隔たり且つ、全三相6極分の巻線を2組にグループ化して各スロット毎に1段のコイルが入るように配置し二層巻とすることを特徴とする三相6極電機子巻線が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭54-066406号公報
【文献】特開平4-289744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スロット数を極数で除算した値が既約分数となる三相交流電動機においては、分布巻による巻線の配置が複雑になることから、スロットに挿入する巻線のコイル数が多くなり、製造における巻線工程の自動化には不向きである。したがって、スロット数を極数で除算した値が既約分数となる三相交流電動機において、自動巻線可能な分布巻のコイル構造の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様によれば、周方向の配置されたスロットのスロット数が極数の1.5倍より大きく、スロット数を極数で除算した値が既約分数になる分数スロット型の三相交流モータの固定子は、渡り線によって互いに連結された複数個のコイルがスロット内の特定の箇所に配置されたコイル群を、6つ備え、コイルとは、線材を使用して、閉じた輪の形状をつくり、同一形状で連結して束で重なっているものであり、6つのコイル群の各々は、互いに同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有し、周方向に互いに60度ずれた位置に配置され、6つのコイル群は、第1から第6のコイル群からなり、第1のコイル群から周方向に60度ずれた位置に第2のコイル群が配置され、第2のコイル群から周方向と同一の方向に60度ずれた位置に第3のコイル群が配置され、第3のコイル群から周方向と同一の方向に60度ずれた位置に第4のコイル群が配置され、第4のコイル群から周方向と同一の方向に60度ずれた位置に第5のコイル群が配置され、第5のコイル群から周方向と同一の方向に60度ずれた位置に第6のコイル群が配置され、第1のコイル群と第4のコイル群とから三相交流巻線のうちの第1相巻線が構成され、第2のコイル群と第5のコイル群とから三相交流巻線のうちの第2相巻線が構成され、第3のコイル群と第6のコイル群とから三相交流巻線のうちの第3相巻線が構成され、極数は、2の奇数倍であり、第1から第6のコイル群における各第1相巻線は第1の線対称軸に対して線対称に配置され、第1から第6のコイル群における各第2相巻線は第2の線対称軸に対して線対称に配置され、第1から第6のコイル群における各第3相巻線は第3の線対称軸に対して線対称に配置される。
【0011】
また、本開示の一態様によれば、三相交流電動機は、上記固定子と、固定子に対して径方向に対向配置された回転子と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、スロット数を極数で除算した値が既約分数となる三相交流電動機において、自動巻線可能な分布巻のコイル構造を有する固定子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態による10極36スロットの三相交流電動機における固定子の断面図である。
【
図2】
10極36スロットの三相交流電動機における固定子の巻線配置の対称性を説明する断面図である。
【
図3】
図2に示した固定子における各コイル配置を説明する展開断面図である。
【
図4】8極30スロットの三相交流電動機における従来の固定子のコイル配置を示す展開断面図である。
【
図5】本開示の実施形態による8極30スロットの三相交流電動機における固定子の第1のコイル群(U相)の配置を示す展開断面図である。
【
図6】本開示の実施形態による8極30スロットの三相交流電動機における固定子の第1~第6のコイル群の配置を示す展開断面図である。
【
図7】本開示の実施形態による8極30スロットの三相交流電動機における巻線配置の回転対称性を説明する断面図であって、(A)は-U相巻線の配置の回転対称性を示し、(B)は-U相巻線及び+U相巻線の配置の回転対称性を示す。
【
図8】8極36スロットの三相交流電動機における従来の固定子のコイル配置を示す展開断面図である。
【
図9】本開示の実施形態による8極36スロットの三相交流電動機における固定子の第1のコイル群(U相)の配置を示す展開断面図である。
【
図10】本開示の実施形態による8極36スロットの三相交流電動機における固定子の第1~第6のコイル群の配置を示す展開断面図である。
【
図11】本開示の実施形態による8極36スロットの三相交流電動機における巻線配置の回転対称性を説明する断面図であって、(A)は-U相巻線の配置の回転対称性を示し、(B)は-U相巻線及び+U相巻線の配置の回転対称性を示す。
【
図12】本開示の実施形態による14極24スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【
図13】本開示の実施形態による14極48スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【
図14】本開示の実施形態による22極36スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【
図15】本開示の実施形態による22極72スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【
図16】本開示の実施形態による固定子を備える三相交流電動機の外観を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して、分布巻のコイル構造を有する固定子及びこれを備える三相交流電動機について説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された形態に限定されるものではない。
【0015】
以下の説明では、電流が流れる銅線などの線材または線材の束のことを「巻線」と称する。また、線材を使用して、閉じた輪の形状をつくり、同一形状で連結して束で重なっているものを「コイル」と称する。コイルは固定子のスロットに収容されている部分と、収容されていない部分とに分けられるが、各々を明確に分ける際は、前者を「巻線」、後者を「コイルエンド」と称する。また、固定子のスロットに収納されたコイルが跨ぐスロットの数を「コイルピッチ」と称する。スロットに収納されるコイルの巻線(プラス巻線及びマイナス巻線)の2つには、それぞれ位相が180度異なる電流が流れるため、コイルピッチは1極あたり電気角で180度程度、機械角換算で「180度÷極数」程度のコイルピッチが必要である。本開示の実施形態では、コイルピッチは、「スロット数÷極数の商」、または「スロット数÷極数の商+1」のいずれかで規定している。
【0016】
図1は、本開示の実施形態による10極36スロットの三相交流電動機における固定子の断面図である。また、
図2は
、10極36スロットの三相交流電動機における固定子の巻線配置の対称性を説明する断面図である。また、
図3は、
図2に示した固定子における各コイル配置を説明する展開断面図である。なお、
図1~
図3において、回転子の磁極については図示を省略している。また、
図1~
図3及びこれ以降に示す各図において、U、V、Wは三相交流の各相を表し、各々電気角で±120度の位相差を有している。また、「+」と「-」は電流の向きを示しており、その位相差は電気角で180度である。固定子1のコア3に設けられる各スロット2には、+U、-U、+V、-V、+W、-W相の合計6相帯のいずれかが2つずつ配置される。各配置には、銅線などの電流が流れる線材が、同じ数だけ挿入されている。固定子1は本来は円筒状であるが、ここでは説明を分かり易くするために、円筒状である固定子1を直線的に展開した展開断面図も用いて説明する。
【0017】
本開示の実施形態による三相交流電動機は、周方向の配置されたスロット2のスロット数が極数の1.5倍より大きく、スロット数を極数で除算して得られた値が既約分数になる分数スロット型の三相交流電動機であって、固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。三相交流電動機の回転子の極対数をPとしたとき、極数は2Pとなる。固定子1の巻線が挿入されるスロット数を6Nとしたとき、スロット数6Nを極数2Pで除算した値は、コイル4のスロットピッチを表す。スロット数6Nを極数2Pで除算した値が1.5より大きい三相交流電動機は、コイルのスロットピッチが2以上となり、分布巻のコイル構造となる。
【0018】
例えば10極36スロットの三相交流電動機は、スロット数36を極数10で除算した値が3.6であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数36を極数10で除算した値である18/5は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。
【0019】
本開示の実施形態による固定子1は、渡り線によって互いに連結された複数個のコイル4がスロット内の特定の箇所に配置されたコイル群を、6つ備える。6つのコイル群の各々は、互いに同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを有し、周方向に互いに60度ずれた位置に配置される。6つのコイル群の各々を、第1のコイル群、第2のコイル群、第3のコイル群、第4のコイル群、第5のコイル群、及び第6のコイル群と称する。
図1に示すように、U相、V相、及びW相のコイルの各々について、2つのグループに分けて固定子1のスロット2に挿入する。
【0020】
図1(A)に示すように、1層目として、U相巻線であるコイルU1、U2及びU3からなる第1のコイル群が配置される
。図2及び
図3に示すように、コイルU1は、スロット識別番号1のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号4のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号1及び4のスロットに配置される。コイルU2は、スロット識別番号8のスロットに配置される巻線とスロット識別番号11のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号8及び11のスロットに配置される。コイルU3は、スロット識別番号15のスロットに配置される巻線とスロット識別番号18のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号15及び18のスロットに配置される。
【0021】
図1(B)に示すように、2層目として、第1のコイル群から周方向(
図1に示す例では時計回り)に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV1、V2及びV3からなる第2のコイル群が配置される
。図2及び
図3に示すように、コイルV1は、スロット識別番号
7のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号
10のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
7及び
10のスロットに配置される。コイルV2は、スロット識別番号
14のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
17のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
14及び
17のスロットに配置される。コイルV3は、スロット識別番号
21のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
24のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
21及び
24のスロットに配置される。
【0022】
図1(C)に示すように、3層目として、第2のコイル群から周方向(
図1に示す例では時計回り)に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に
、W相巻線であるコイルW1、W2及びW3からなる第3のコイル群が配置される。
図2及び図3に示すように、コイルW1は、スロット識別番号
13のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号
16のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
13及び
16のスロットに配置される。コイルW2は、スロット識別番号
20のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
23のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
20及び
23のスロットに配置される。コイルW3は、スロット識別番号
27のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
30のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
27及び
30のスロットに配置される。
【0023】
図1(D)に示すように、4層目として、第3のコイル群から周方向(
図1に示す例では時計回り)に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、U相巻線であるコイルU4、U5及びU6からなる第4のコイル群が配置される
。図2及び
図3に示すように、コイルU4は、スロット識別番号19のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号22のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号19及び22のスロットに配置される。コイルU5は、スロット識別番号26のスロットに配置される巻線とスロット識別番号29のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号26及び29のスロットに配置される。コイルU6は、スロット識別番号33のスロットに配置される巻線とスロット識別番号36のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号33及び36のスロットに配置される。
【0024】
図1(E)に示すように、5層目として、第4のコイル群から周方向(
図1に示す例では時計回り)に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV4、V5及びV6からなる第5のコイル群が配置される
。図2及び
図3に示すように、コイルV4は、スロット識別番号
25のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号
28のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
25及び
28のスロットに配置される。コイルV5は、スロット識別番号
32のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
35のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
32及び
35のスロットに配置される。コイルV6は、スロット識別番号
3のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
6のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
3及び
6のスロットに配置される。
【0025】
図1(F)に示すように、6層目として、第5のコイル群から周方向(
図1に示す例では時計回り)に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に
、W相巻線であるコイルW4、W5及びW6からなる第6のコイル群が配置される。
図2及び図3に示すように、コイルW4は、スロット識別番号
31のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号
34のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
31及び
34のスロットに配置される。コイルW5は、スロット識別番号
2のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
5のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
2及び
5のスロットに配置される。コイルW6は、スロット識別番号
9のスロットに配置される巻線とスロット識別番号
12のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号
9及び
12のスロットに配置される。
【0026】
コイルU1、U2及びU3からなる第1のコイル群と、コイルV1、V2及びV3からなる第2のコイル群と、コイルW1、W2及びW3からなる第3のコイル群と、コイルU4、U5及びU6からなる第4のコイル群と、コイルV4、V5及びV6からなる第5のコイル群と、コイルW4、W5及びW6からなる第6のコイル群とは、同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する。
【0027】
第1のコイル群内のコイルU1、U2及びU3並びに第4のコイル群内のコイルU4、U5及びU6は、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内のコイルV1、V2及びV3並びに第5のコイル群内のコイルV4、V5及びV6は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。また、第3のコイル群内のコイルW1、W2及びW3並びに第6のコイル群内のコイルW4、W5及びW6は、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。10極36スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0028】
特に回転子の極数が2の奇数倍である場合、6つのコイル群の配置には線対称性が成り立つ。
図1~
図3に示した10極36スロットの三相交流電動機の場合、極数10は、2の5倍(すなわち奇数倍)であるので、線対称性が成り立つ。より詳しくは、U相巻線に係る第1のコイル群と第4のコイル群とは、周平面上における第1の対称軸100Uに対して線対称に配置される。V相巻線に係る第2のコイル群と第5のコイル群とは、周平面上における第2の対称軸100Vに対して線対称に配置される。W相巻線に係る第3のコイル群と第6のコイル群とは、周平面上における第3の対称軸100Wに対して線対称に配置される。第1の対称軸100Uと、第2の対称軸100Vと、第3の対称軸100Wとは、互いに60度ずれて配置される。
【0029】
ここで、回転子の極数が2の奇数倍である場合における巻線配置の線対称性について、より詳細に説明する。
【0030】
±U、±V、±Wの6相帯の各々について、固定子のコイルに発生する誘起電圧の波形が正弦波に近づくように巻線の配置を最適化すると、各々の相帯の巻線は、等分布になるように、かつ、360÷極対数Pの値に近いスロットピッチで配置されるため、巻線は正P角形(ただし、Pは極対数)に近づくように配置される。
【0031】
一般的に極対数Pが奇数の場合、正P角形はP回の回転対称性を有するほか、各頂点、及びその頂点の対辺の中心を垂直に通る線を対称軸にした線対称性も有する。
【0032】
±U、±V、±Wの6相帯のうち、1相分の巻線を分数スロット型固定子のスロットに配置すると、奇数であるP個の頂点を持つ正P角形に近づくように巻線は配置される。巻線の配置は回転対称性を持つことはできないが、「P-1」は必ず偶数となるため、P個ある頂点のうち、ある1つの頂点を除き、連続する(P-1)/2個の頂点と、その隣に続く(P-1)/2個の頂点は、線対称となるように配置される。また、その線対称線は残りの1つの頂点を通る。
【0033】
例えば、
図2の巻線配置を持つ10極36スロットの場合で説明する。Uの巻線はU1、U2、U3、U4、U5、U6の合計6個であり、U1とU6を一塊と考えると6個の-U相の巻線配置は正5角形に近い形を成している。
【0034】
-U相の巻線回転子の極対数が5であるため、電気角360度となる1極対の周期は機械角で換算すると360÷5=72度となる。一方で、スロット数は36スロットなので、1つのスロットピッチは360÷36=10度である。あるU相のコイルから隣の-Uのコイルまでのコイル間のピッチは、電気角1周期分の機械角72度が望ましい。しかしながら、U6とU1のスロットピッチで1スロット分の10度、U1とU2、U2とU3、U3とU4、U4とU5、及び、U5とU6の各々のスロットピッチで、72度に近い7スロット分の70度しか取れない。また、巻線の等分布性から、6個のU相のコイルのうち、2個のコイル(U2、U3)と続く2個のコイル(U4、U5)は100Uを軸として、線対称に配置される。さらに100Uの線はU1とU6のコイルの線対称軸でもあるため、結果として、100Uは6個のU相のコイルを2分する線対称軸である。同様の理由で、残りの各5相帯のコイル配置も、回転対称性を持たないが、線対称となる軸を有する。
【0035】
各相の線対称軸は、各相の全コイルを等配分で2つに分けるため、線対称軸を境に同一のコイルピッチ、及び、同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を1群として、1相を2つのコイル群に等配分に分けることができる。また、残りの2相についても、同様に線対称軸を境に同一のコイルピッチ、及び、同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を1群として、1相を2つのコイル群に等配分に分けることができるため、結局のところ、3相は合計6つの群に分けることができる。
【0036】
このように、10極36スロットの三相交流電動機の場合、スロット数を極数で割った値が既約分数である分数スロット型の三相交流電動機となるので、コイルピッチ(=スロット数÷極数の商または商+1)が小さくなりコイルエンドが短くなる。したがって、コイルエンドが重ならない部分が存在することから、従来のようなコイルの入れ替え作業が不要であるので、巻線作業の自動化が容易となり、また、相間紙も挿入しやすい。また分数スロット型の三相交流電動機であるので、コギングトルク及びトルクリップルが非常に小さい。
【0037】
図4は、8極30スロットの三相交流電動機における従来の固定子のコイル配置を示す展開断面図である。
図4において、参照番号1001は固定子を示し、参照番号1002はスロットを示し、参照番号1003は固定子のコアを示し、参照番号1004はコイル(巻線)を示す。8極30スロットの三相交流電動機は、スロット数30を極数8で除算した値である15/4は既約分数であるので分数スロット型である。極対数4は偶数である。三相交流電動機のスロット数は3の倍数となるため、+U、-U、+V、-V、+W、-W相の合計6相帯(偶数個)を一層のみで均等に30スロットに配置することができない。したがって、従来の固定子1001は、
図4に示すように、6相帯を1層目と2層目とに分けて配置していた。
【0038】
図5は、本開示の実施形態による8極30スロットの三相交流電動機における固定子の第1のコイル群(U相)の配置を示す展開断面図である。また、
図6は、本開示の実施形態による8極30スロットの三相交流電動機における固定子の第1~第6のコイル群の配置を示す展開断面図である。例えば8極30スロットの三相交流電動機は、スロット数30を極数8で除算した値が3.75であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数30を極数8で除算した値である15/4は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。また、既約分数15/4の分母が偶数であるので、1層巻のみで全スロットを巻くことができず、2層巻となる。例えばU相巻線であるコイルU1、U2及びU3からなる第1のコイル群を、
図5に示すように配置する。さらに、第1のコイル群と同様の同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する第2~第6のコイル群を形成し、
図6に示すように第1~第6のコイル群の各々を、周方向に60度(5スロットピット)ずつずらして配置する。より詳しくは、U相巻線である第1のコイル群については、スロット識別番号1、4、8、11、12及び15にコイルを配置する。V相巻線である第2のコイル群については、第1のコイル群から周方向に60度(5スロットピット)ずれたスロット識別番号6、9、13、16、17及び20にコイルを配置する。W相巻線である第3のコイル群については、第2のコイル群から周方向に60度(5スロットピット)ずれたスロット識別番号11、14、18、21、22及び25にコイルを配置する。U相巻線である第4のコイル群については、第3のコイル群から周方向に60度(5スロットピット)ずれたスロット識別番号16、19、23、26、27及び30にコイルを配置する。V相巻線である第5のコイル群については、第4のコイル群から周方向に60度(5スロットピット)ずれたスロット識別番号21、24、28、1、2及び5にコイルを配置する。W相巻線である第6のコイル群については、第5のコイル群から周方向に60度(5スロットピット)ずれたスロット識別番号26、29、3、6、7及び10にコイルを配置する。第1のコイル群内の各コイル及び第4のコイル群内の各コイルは、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内の各コイル及び第5のコイル群内の各は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。また、第3のコイル群内の各コイル及び第6のコイル群内の各コイルは、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。8極30スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0039】
ここで、回転子の極数が2の偶数倍である場合における巻線配置の回転対称性について説明する。本開示の実施形態においては、回転子の極数が2の偶数倍である場合、巻線配置は2回以上の偶数回(例えば180度、90度、60度、45度、・・・)の回転対称性を有する。
【0040】
±U、±V、±Wの6相帯の各々について、固定子のコイルに発生する誘起電圧の波形が正弦波に近づくように巻線の配置を最適化すると、各々の相帯の巻線は、等分布になるように、かつ、360÷極対数Pの値に近いスロットピッチで配置されるため、巻線は正P角形(ただし、Pは極対数)に近づくように配置される。
【0041】
一般的に極対数Pが偶数の場合、正P角形はP回の回転対称性を有するほか、2頂点を結ぶ線を対称軸にした線対称性も有する。
【0042】
±U、±V、±Wの6相帯のうち、1相分の巻線を分数スロット型固定子のスロットに配置すると、偶数であるP個の頂点を持つ正P角形に近づくように巻線は配置される。ただし、分数スロット型固定子でありなおかつPが偶数である場合(すなわちスロット数を極数で除算して得られる値である既約分数の分母が偶数である場合)は、1層巻のみで全スロットを巻くことができず、2層巻となる。これは1層目のみでは「-U」と「+U」、「-V」と「+V」、「-W」と「+W」の6相帯全てを、同じ数で埋めることができないためである。例えば、
図4に示す8極30スロットの三相交流電動機では、「-U」、「+V」及び「-W」の巻線の数は6個であり、「+U」、「-V」及び「+W」の巻線の数は4個である。逆に、2層目では、「-U」、「+V」及び「-W」の巻線の数は4個であり、「+U」、「-V」及びと「+W」の巻線の数は6個である。1層目と2層目を合計すると、6相帯は各々合計10個ずつとなる。このような1層目及び2層目における不均一な分布より、正P角形と比較すると、P個の頂点に相当する巻線の配置が1層巻であるところと2層であるところが隣り合って混同するため、線対称性を持つことができない。その代わりに回転対称性のみ有し得る。
図7は、本開示の実施形態による8極30スロットの三相交流電動機における巻線配置の回転対称性を説明する断面図であって、(A)は-U相巻線の配置の回転対称性を示し、(B)は-U相巻線及び+U相巻線の配置の回転対称性を示す。例えば8極30スロットの三相交流電動機において、-U相の巻線は、1極、1相当たり、1.25(=30÷8÷3)スロットずつ配置される。1極、1相当たり1.25スロットなので、1層分のスロットが巻線で埋まるところが2か所あり、2層分のスロットが巻線で埋まるところが4か所ある。つまり、-U相の巻線は4極対で5スロット分埋まる。+U相の巻線についても、同様であり、1極、1相当たり1.25スロットなので、1層分のスロットが巻線で埋まるところが2か所あり、2層分のスロットが巻線で埋まるところが4か所ある。
図7(A)及び
図7(B)に示すように軸100U’を境に、-U相及び+U相のコイルの組を2つに等配分で分けることができる。これは8極30スロットの三相交流電動機が4極15スロットの2周期分(スロット識別番号1~15のスロットとスロット識別番号16~30のスロットとは同じ巻線配置)であるためでもある。このように、8極30スロットの三相交流電動機においては、2回の回転対称性を有する。
【0043】
以上説明したように、回転子の極数が2の偶数倍である場合における巻線配置は、各相を2つに等配分で分けることができ、結果として、各相のコイルは合計6つの群に分けることができる。
【0044】
図8は、8極36スロットの三相交流電動機における従来の固定子のコイル配置を示す展開断面図である。
図8において、参照番号1001は固定子を示し、参照番号1002はスロットを示し、参照番号1003は固定子のコアを示し、参照番号1004はコイル(巻線)を示す。8極36スロットの三相交流電動機は、スロット数36を極数8で除算した値である9/2は既約分数であるので分数スロット型である。極対数4は偶数である。三相交流電動機のスロット数は3の倍数となるため、+U、-U、+V、-V、+W、-W相の合計6相帯(偶数個)を一層のみで均等に30スロットに配置することができない。したがって、従来は、
図8に示すように、6相帯を1層目と2層目とに分けて配置していた。
【0045】
図8は、本開示の実施形態による8極36スロットの三相交流電動機における固定子の第1のコイル群(U相)の配置を示す展開断面図である。また、
図10は、本開示の実施形態による8極36スロットの三相交流電動機における固定子の第1~第6のコイル群の配置を示す展開断面図である。例えば8極36スロットの三相交流電動機は、スロット数36を極数8で除算した値が4.5であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数36を極数8で除算した値である9/2は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。また、既約分数9/2の分母が偶数であるので、1層巻のみで全スロットを巻くことができず、2層巻となる。例えばU相巻線であるコイルU1、U2及びU3からなる第1のコイル群を、
図8に示すように配置する。さらに、第1のコイル群と同様の同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する第2~第6のコイル群を形成し、
図10に示すように第1~第6のコイル群の各々を、周方向に60度(6スロットピット)ずつずらして配置する。より詳しくは、U相巻線である第1のコイル群については、スロット識別番号1、2、5、6、10、11、14及び15にコイルを配置する。このうち、スロット識別番号1、6、10及び15については、同一スロットに配置される2重同心巻とする。V相巻線である第2のコイル群については、第1のコイル群から周方向に60度(6スロットピット)ずれたスロット識別番号7、8、11、12、16、17、20及び21にコイルを配置する。このうち、スロット識別番号7、12、16及び21については、同一スロットに配置される2重同心巻とする。W相巻線である第3のコイル群については、第2のコイル群から周方向に60度(6スロットピット)ずれたスロット識別番号13、14、17、18、22、23、26及び27にコイルを配置する。このうち、スロット識別番号13、18、22及び27については、同一スロットに配置される2重同心巻とする。U相巻線である第4のコイル群については、第3のコイル群から周方向に60度(6スロットピット)ずれたスロット識別番号19、20、23、24、28、29、32及び33にコイルを配置する。このうち、スロット識別番号19、24、28及び33については、同一スロットに配置される2重同心巻とする。V相巻線である第5のコイル群については、第4のコイル群から周方向に60度(6スロットピット)ずれたスロット識別番号25、26、29、30、34、35、2及び3にコイルを配置する。このうち、スロット識別番号25、30、34及び3については、同一スロットに配置される2重同心巻とする。W相巻線である第6のコイル群については、第5のコイル群から周方向に60度(6スロットピット)ずれたスロット識別番号31、32、35、36、4、5、8及び9にコイルを配置する。このうち、スロット識別番号31、32、4及び9については、同一スロットに配置される2重同心巻とする。第1のコイル群内の各コイル及び第4のコイル群内の各コイルは、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内の各コイル及び第5のコイル群内の各は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。また、第3のコイル群内の各コイル及び第6のコイル群内の各コイルは、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。8極36スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0046】
図11は、本開示の実施形態による8極36スロットの三相交流電動機における巻線配置の回転対称性を説明する断面図であって、(A)は-U相巻線の配置の回転対称性を示し、(B)は-U相巻線及び+U相巻線の配置の回転対称性を示す。例えば8極36スロットの三相交流電動機において、-U相の巻線は、1極、1相当たり、1.5(=36÷8÷3)スロットずつ配置される。1極、1相当たり1.5スロットなので、1層分のスロットが巻線で埋まるところが4か所あり、2層分のスロットが巻線で埋まるところが4か所ある。+U相の巻線についても、同様であり、1極、1相当たり1.5スロットなので、1層分のスロットが巻線で埋まるところが4か所あり、2層分のスロットが巻線で埋まるところが4か所ある。
図11(A)及び
図11(B)に示すように2つの軸100U’を境に、-U相及び+U相のコイルの組を4つに等配分で分けることができる。これは8極36スロットの三相交流電動機が2極9スロットの2周期分(スロット識別番号1~9のスロットとスロット識別番号10~18のスロットとスロット識別番号19~27のスロットとスロット識別番号27~36のスロットとは同じ巻線配置)であるためでもある。このように、8極36スロットの三相交流電動機においては、4回の回転対称性を有する。
【0047】
続いて、14極24スロットの三相交流電動機における固定子について説明する。
【0048】
図12は、本開示の実施形態による14極24スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【0049】
14極24スロットの三相交流電動機は、スロット数24を極数14で除算した値が約1.7であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数24を極数14で除算した値である12/7は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。
【0050】
例えばU相巻線であるコイルU1及びU2からなる第1のコイル群を、
図12に示すように配置する。さらに、第1のコイル群と同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する第2~第6のコイル群を形成し、第1~第6のコイル群の各々を、周方向に60度(4スロットピッチ)ずつずらして配置する。
【0051】
より詳しくは、U相巻線である第1のコイル群について、コイルU1は、スロット識別番号2のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号4のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号2及び4のスロットに配置される。コイルU2は、スロット識別番号9のスロットに配置される巻線とスロット識別番号11のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号9及び11のスロットに配置される。
【0052】
第1のコイル群から周方向に60度(4スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV1及びV2からなる第2のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV1は、スロット識別番号22のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号24のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号22及び24のスロットに配置される。コイルV2は、スロット識別番号5のスロットに配置される巻線とスロット識別番号7のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号5及び7のスロットに配置される。
【0053】
第2のコイル群から周方向に60度(4スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW1及びW2からなる第3のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW1は、スロット識別番号18のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号20のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号18及び20のスロットに配置される。コイルW2は、スロット識別番号1のスロットに配置される巻線とスロット識別番号3のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号1及び3のスロットに配置される。
【0054】
第3のコイル群から周方向に60度(4スロットピッチ)ずれた位置に、U相巻線であるコイルU3及びU4からなる第4のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルU3は、スロット識別番号14のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号16のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号14及び16のスロットに配置される。コイルU4は、スロット識別番号21のスロットに配置される巻線とスロット識別番号23のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号21及び23のスロットに配置される。
【0055】
第4のコイル群から周方向に60度(4スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV3及びV4からなる第5のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV3は、スロット識別番号10のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号12のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号10及び12のスロットに配置される。コイルV4は、スロット識別番号17のスロットに配置される巻線とスロット識別番号19のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号17及び19のスロットに配置される。
【0056】
第5のコイル群から周方向に60度(4スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW3及びW4からなる第6のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW3は、スロット識別番号6のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号8のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号6及び8のスロットに配置される。コイルW4は、スロット識別番号13のスロットに配置される巻線とスロット識別番号15のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号13及び15のスロットに配置される。
【0057】
コイルU1及びU2からなる第1のコイル群と、コイルV1及びV2からなる第2のコイル群と、コイルW1及びW2からなる第3のコイル群と、コイルU3及びU4からなる第4のコイル群と、コイルV3及びV4からなる第5のコイル群と、コイルW3及びW4からなる第6のコイル群は、同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する。
【0058】
第1のコイル群内のコイルU1及びU2並びに第4のコイル群内のコイルU3及びU4は、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内のコイルV1及びV2並びに第5のコイル群内のコイルV3及びV4は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。また、第3のコイル群内のコイルW1及びW2並びに第6のコイル群内のコイルW3及びW4は、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。U相巻線に係る第1のコイル群と第4のコイル群とは、周平面上における第1の対称軸100Uに対して線対称に配置される。V相巻線に係る第2のコイル群と第5のコイル群とは、周平面上における第2の対称軸100Vに対して線対称に配置される。W相巻線に係る第3のコイル群と第6のコイル群とは、周平面上における第3の対称軸100Wに対して線対称に配置される。第1の対称軸100Uと、第2の対称軸100Vと、第3の対称軸100Wとは、互いに60度ずれて配置される。14極24スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0059】
続いて、14極48スロットの三相交流電動機における固定子について説明する。
【0060】
図13は、本開示の実施形態による14極48スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【0061】
14極48スロットの三相交流電動機は、スロット数48を極数14で除算した値が約3.4であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数48を極数14で除算した値である24/7は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。
【0062】
例えばU相巻線であるコイルU1、U2、U3及びU4からなる第1のコイル群を、
図13に示すように配置する。さらに、第1のコイル群と同様の同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する第2~第6のコイル群を形成し、第1~第6のコイル群の各々を、周方向に60度(8スロットピッチ)ずつずらして配置する。
【0063】
より詳しくは、U相巻線である第1のコイル群について、コイルU1は、スロット識別番号1のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号4のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号1及び4のスロットに配置される。コイルU2は、スロット識別番号7のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号11のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号7及び11のスロットに配置される。コイルU3は、スロット識別番号14のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号18のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号14及び18のスロットに配置される。コイルU4は、スロット識別番号21のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号24のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号7及び11のスロットに配置される。
【0064】
第1のコイル群から周方向に60度(8スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW1、W2、W3及びW4からなる第2のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW1は、スロット識別番号41のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号44のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号41及び44のスロットに配置される。コイルW2は、スロット識別番号47のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号3のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号47及び3のスロットに配置される。コイルW3は、スロット識別番号6のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号10のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号6及び10のスロットに配置される。コイルW4は、スロット識別番号13のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号16のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号13及び16のスロットに配置される。
【0065】
第2のコイル群から周方向に60度(8スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV1、V2、V3及びV4からなる第3のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV1は、スロット識別番号33のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号36のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号33及び36のスロットに配置される。コイルV2は、スロット識別番号39のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号43のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号39及び43のスロットに配置される。コイルV3は、スロット識別番号46のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号2のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号46及び2のスロットに配置される。コイルV4は、スロット識別番号5のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号8のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号5及び8のスロットに配置される。
【0066】
第3のコイル群から周方向に60度(8スロットピッチ)ずれた位置に、U相巻線であるコイルU5、U6、U7及びU8からなる第4のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルU5は、スロット識別番号25のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号28のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号25及び28のスロットに配置される。コイルU6は、スロット識別番号31のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号35のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号31及び35のスロットに配置される。コイルU7は、スロット識別番号38のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号42のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号38及び42のスロットに配置される。コイルU8は、スロット識別番号45のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号48のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号45及び48のスロットに配置される。
【0067】
第4のコイル群から周方向に60度(8スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW5、W6、W7及びW8からなる第5のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW5は、スロット識別番号17のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号20のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号17及び20のスロットに配置される。コイルW6は、スロット識別番号23のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号27のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号23及び27のスロットに配置される。コイルW7は、スロット識別番号30のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号34のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号30及び34のスロットに配置される。コイルW8は、スロット識別番号37のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号40のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号37及び40のスロットに配置される。
【0068】
第5のコイル群から周方向に60度(8スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV5、V6、V7及びV8からなる第6のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV5は、スロット識別番号9のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号12のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号9及び12のスロットに配置される。コイルV6は、スロット識別番号15のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号19のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号15及び19のスロットに配置される。コイルV7は、スロット識別番号22のスロットに配置される巻線と4コイルピッチずれたスロット識別番号26のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号22及び26のスロットに配置される。コイルV8は、スロット識別番号29のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号32のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号29及び42のスロットに配置される。
【0069】
コイルU1、U2、U3及びU4からなる第1のコイル群と、コイルW1、W2、W3及びW4からなる第2のコイル群と、コイルV1、V2、V3及びV4からなる第3のコイル群と、コイルU5、U6、U7及びU8からなる第4のコイル群と、コイルW5、W6、W7及びW8からなる第5のコイル群と、コイルV5、V6、V7及びV8からなる第6のコイル群は、同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する。
【0070】
第1のコイル群内のコイルU1、U2、U3及びU4並びに第4のコイル群内のコイルU5、U6、U7及びU8は、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内のコイルW1、W2、V3及びW4並びに第5のコイル群内のコイルW5、W6、W7及びW8は、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。また、第3のコイル群内のコイルV1、V2、V3及びV4並びに第6のコイル群内のコイルV5、V6、V7及びV8は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。U相巻線に係る第1のコイル群と第4のコイル群とは、周平面上における第1の対称軸100Uに対して線対称に配置される。W相巻線に係る第2のコイル群と第5のコイル群とは、周平面上における第2の対称軸100Wに対して線対称に配置される。V相巻線に係る第3のコイル群と第6のコイル群とは、周平面上における第3の対称軸100Vに対して線対称に配置される。第1の対称軸100Uと、第2の対称軸100Wと、第3の対称軸100Vとは、互いに60度ずれて配置される。14極48スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0071】
続いて、22極36スロットの三相交流電動機における固定子について説明する。
【0072】
図14は、本開示の実施形態による22極36スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【0073】
22極36スロットの三相交流電動機は、スロット数36を極数22で除算した値が約1.6であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数36を極数22で除算した値である18/11は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。
【0074】
例えばU相巻線であるコイルU1、U2及びU3からなる第1のコイル群を、
図14に示すように配置する。さらに、第1のコイル群と同様の同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する第2~第6のコイル群を形成し、第1~第6のコイル群の各々を、周方向に60度(6スロットピッチ)ずつずらして配置する。
【0075】
より詳しくは、U相巻線である第1のコイル群について、コイルU1は、スロット識別番号2のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号4のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号2及び4のスロットに配置される。コイルU2は、スロット識別番号7のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号9のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号7及び9のスロットに配置される。コイルU3は、スロット識別番号12のスロットに配置される巻線と5コイルピッチずれたスロット識別番号17のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号12及び17のスロットに配置される。
【0076】
第1のコイル群から周方向に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV1、V2及びV3からなる第2のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV1は、スロット識別番号8のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号10のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号8及び10のスロットに配置される。コイルV2は、スロット識別番号13のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号15のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号13及び15のスロットに配置される。コイルV3は、スロット識別番号18のスロットに配置される巻線と5コイルピッチずれたスロット識別番号23のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号18及び23のスロットに配置される。
【0077】
第2のコイル群から周方向に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW1、W2及びW3からなる第3のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW1は、スロット識別番号14のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号16のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号14及び16のスロットに配置される。コイルW2は、スロット識別番号19のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号21のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号19及び21のスロットに配置される。コイルW3は、スロット識別番号24のスロットに配置される巻線と5コイルピッチずれたスロット識別番号29のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号24及び29のスロットに配置される。
【0078】
第3のコイル群から周方向に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、U相巻線であるコイルU4、U5及びU6からなる第4のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルU4は、スロット識別番号20のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号22のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号20及び22のスロットに配置される。コイルU5は、スロット識別番号25のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号27のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号25及び27のスロットに配置される。コイルU6は、スロット識別番号30のスロットに配置される巻線と5コイルピッチずれたスロット識別番号35のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号30及び35のスロットに配置される。
【0079】
第4のコイル群から周方向に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV4、V5及びV6からなる第5のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV4は、スロット識別番号26のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号28のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号26及び28のスロットに配置される。コイルV5は、スロット識別番号31のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号33のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号31及び33のスロットに配置される。コイルV6は、スロット識別番号36のスロットに配置される巻線と5コイルピッチずれたスロット識別番号5のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号36及び5のスロットに配置される。
【0080】
第5のコイル群から周方向に60度(6スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW4、W5及びW6からなる第6のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW4は、スロット識別番号31のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号33のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号31及び33のスロットに配置される。コイルW5は、スロット識別番号1のスロットに配置される巻線と2コイルピッチずれたスロット識別番号3のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号1及び3のスロットに配置される。コイルW6は、スロット識別番号6のスロットに配置される巻線と5コイルピッチずれたスロット識別番号11のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号6及び11のスロットに配置される。
【0081】
コイルU1、U2及びU3からなる第1のコイル群と、コイルV1、V2及びV3からなる第2のコイル群と、コイルW1、W2及びW3からなる第3のコイル群と、コイルU4、U5及びU6からなる第4のコイル群と、コイルV4、V5及びV6からなる第5のコイル群と、コイルW4、W5及びW6からなる第6のコイル群は、同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する。
【0082】
第1のコイル群内のコイルU1、U2及びU3並びに第4のコイル群内のコイルU4、U5及びU6は、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内のコイルV1、V2及びV3並びに第5のコイル群内のコイルV4、V5及びV6は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。また、第3のコイル群内のコイルW1、W2及びW3並びに第6のコイル群内のコイルW4、W5及びW6は、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。U相巻線に係る第1のコイル群と第4のコイル群とは、周平面上における第1の対称軸100Uに対して線対称に配置される。V相巻線に係る第2のコイル群と第5のコイル群とは、周平面上における第2の対称軸100Vに対して線対称に配置される。W相巻線に係る第3のコイル群と第6のコイル群とは、周平面上における第3の対称軸100Wに対して線対称に配置される。第1の対称軸100Uと、第2の対称軸100Vと、第3の対称軸100Wとは、互いに60度ずれて配置される。22極36スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0083】
続いて、22極72スロットの三相交流電動機における固定子について説明する。
【0084】
図15は、本開示の実施形態による22極72スロットの三相交流電動機における固定子の展開断面図である。
【0085】
22極72スロットの三相交流電動機は、スロット数36を極数22で除算した値が約3.3であるので、「スロット数が極数の1.5倍より大きい」の要件を満たす。また、スロット数72を極数22で除算した値である36/11は既約分数であるので、分数スロット型であるといえる。
【0086】
例えばU相巻線であるコイルU1、U2、U3、U4、U5及びU6からなる第1のコイル群を、
図15に示すように配置する。さらに、第1のコイル群と同様の同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する第2~第6のコイル群を形成し、第1~第6のコイル群の各々を、周方向に60度(12スロットピッチ)ずつずらして配置する。
【0087】
より詳しくは、U相巻線である第1のコイル群について、コイルU1は、スロット識別番号1のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号4のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号1及び4のスロットに配置される。コイルU2は、スロット識別番号7のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号10のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号7及び10のスロットに配置される。コイルU3は、スロット識別番号14のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号17のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号14及び17のスロットに配置される。コイルU4は、スロット識別番号20のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号23のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号20及び23のスロットに配置される。コイルU5は、スロット識別番号27のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号30のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号27及び30のスロットに配置される。コイルU6は、スロット識別番号33のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号36のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号33及び36のスロットに配置される。
【0088】
第1のコイル群から周方向に60度(12スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV1、V2、V3、V4、V5及びV6からなる第2のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV1は、スロット識別番号13のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号16のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号13及び16のスロットに配置される。コイルV2は、スロット識別番号19のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号22のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号19及び22のスロットに配置される。コイルV3は、スロット識別番号26のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号29のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号26及び29のスロットに配置される。コイルV4は、スロット識別番号32のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号35のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号32及び35のスロットに配置される。コイルV5は、スロット識別番号39のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号42のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号39及び42のスロットに配置される。コイルV6は、スロット識別番号45のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号48のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号45及び48のスロットに配置される。
【0089】
第2のコイル群から周方向に60度(12スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW1、W2、W3、W4、W5及びW6からなる第3のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW1は、スロット識別番号25のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号28のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号25及び28のスロットに配置される。コイルW2は、スロット識別番号31のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号34のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号31及び34のスロットに配置される。コイルW3は、スロット識別番号38のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号41のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号38及び41のスロットに配置される。コイルW4は、スロット識別番号44のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号47のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号44及び47のスロットに配置される。コイルW5は、スロット識別番号51のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号54のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号51及び545のスロットに配置される。コイルW6は、スロット識別番号57のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号60のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号57及び60のスロットに配置される。
【0090】
第3のコイル群から周方向に60度(12スロットピッチ)ずれた位置に、U相巻線であるコイルU7、U8、U9、U10、U11及びU12からなる第4のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルU7は、スロット識別番号37のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号40のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号37及び40のスロットに配置される。コイルU8は、スロット識別番号43のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号46のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号43及び46のスロットに配置される。コイルU9は、スロット識別番号50のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号53のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号50及び53のスロットに配置される。コイルU10は、スロット識別番号56のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号59のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号56及び59のスロットに配置される。コイルU11は、スロット識別番号63のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号66のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号63及び66のスロットに配置される。コイルU12は、スロット識別番号69のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号72のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号69及び72のスロットに配置される。
【0091】
第4のコイル群から周方向に60度(12スロットピッチ)ずれた位置に、V相巻線であるコイルV7、V8、V9、V10、V11及びV12からなる第5のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルV7は、スロット識別番号49のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号52のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号49及び52のスロットに配置される。コイルV8は、スロット識別番号55のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号58のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号55及び58のスロットに配置される。コイルV9は、スロット識別番号62のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号65のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号62及び65のスロットに配置される。コイルV10は、スロット識別番号68のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号71のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号68及び71のスロットに配置される。コイルV11は、スロット識別番号3のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号6のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号3及び6のスロットに配置される。コイルV12は、スロット識別番号9のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号12のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号9及び12のスロットに配置される。
【0092】
第5のコイル群から周方向に60度(12スロットピッチ)ずれた位置に、W相巻線であるコイルW7、W8、W9、W10、W11及びW12からなる第6のコイル群が配置される。より詳しくは、コイルW7は、スロット識別番号61のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号64のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号61及び64のスロットに配置される。コイルW8は、スロット識別番号67のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号70のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号67及び70のスロットに配置される。コイルW9は、スロット識別番号2のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号5のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号2及び5のスロットに配置される。コイルW10は、スロット識別番号8のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号11のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号8及び11のスロットに配置される。コイルW11は、スロット識別番号15のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号18のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号15及び18のスロットに配置される。コイルW12は、スロット識別番号21のスロットに配置される巻線と3コイルピッチずれたスロット識別番号24のスロットに配置される巻線とで流れる電流の向きが互いに逆向きとなるように成形されて、スロット識別番号21及び24のスロットに配置される。
【0093】
コイルU1、U2、U3、U4、U5及びU6からなる第1のコイル群と、コイルV1、V2、V3、V4、V5及びV6からなる第2のコイル群と、コイルW1、W2、W3、W4、W5及びW6からなる第3のコイル群と、コイルU7、U8、U9、U10、U11及びU12からなる第4のコイル群と、コイルV7、V8、V9、V10、V11及びV12からなる第5のコイル群と、コイルW7、W8、W9、W10、W11及びW12からなる第6のコイル群は、同一のコイルピッチ及び同一のコイル間のスロットピッチを持つコイルの組を有する。
【0094】
第1のコイル群内のコイルU1、U2、U3、U4、U5及びU6並びに第4のコイル群内のコイルU7、U8、U9、U10、U11及びU12は、渡り線によって連結され、固定子1におけるU相巻線として構成される。また、第2のコイル群内のコイルV1、V2、V3、V4、V5及びV6並びに第5のコイル群内のコイルV7、V8、V9、V10、V11及びV12は、渡り線によって連結され、固定子1におけるV相巻線として構成される。また、第3のコイル群内のW1、W2、W3、W4、W5及びW6並びに第6のコイル群内のコイルW7、W8、W9、W10、W11及びW12は、渡り線によって連結され、固定子1におけるW相巻線として構成される。U相巻線に係る第1のコイル群と第4のコイル群とは、周平面上における第1の対称軸100Uに対して線対称に配置される。V相巻線に係る第2のコイル群と第5のコイル群とは、周平面上における第2の対称軸100Vに対して線対称に配置される。W相巻線に係る第3のコイル群と第6のコイル群とは、周平面上における第3の対称軸100Wに対して線対称に配置される。第1の対称軸100Uと、第2の対称軸100Vと、第3の対称軸100Wとは、互いに60度ずれて配置される。22極72スロットの三相交流電動機は、上述の固定子1と固定子1に対して径方向に対向配置された回転子とを備える。
【0095】
以上、10極36スロット、8極30スロット、8極36スロット、14極24スロット、14極48スロット、22極36スロット及び22極72スロットの三相交流電動機を例にとって説明したが、これに限られず、スロット数を2N、極数を2Pとしたときのスロット数2Nを極数2Pで除した値が整数ではない他の極数、及びスロット数の三相交流電動機に対しても本発明を適用可能である。また、各図においてスロット識別番号の付与順はあくまでも一例である。
【0096】
このように、本開示の実施形態によれば、スロット数を極数で割った値が既約分数である分数スロット三相交流電動機となるので、コイルピッチ(=スロット数÷極数の商または商+1)が小さくなり、コイルエンドが短くなる。したがって、コイルエンドが重ならない部分が存在することから、従来のようなコイルの入れ替え作業が不要であるので、巻線作業の自動化が容易となり、また、相間紙も挿入しやすい。また分数スロット型の三相交流電動機であるので、コギングトルク及びトルクリップルが非常に小さい。
【0097】
本開示の実施形態による三相交流電動機の固定子は、インサータ方式による自動巻線機を用いた巻回が可能である。インサータ方式は、以下の手順で行われる。まず、ノズルで同心のいくつかの巻枠に同時に巻付けコイル(多重コイル)を作製し、インサータにコイルを挿入する。次に、インサータを固定子内に挿入し、コイルを固定子内に押し込む。また、実際にはインサータ内側にコイルを押し込むガイドの冶具が配置されてもよい。
【0098】
図16は、本開示の実施形態による固定子を備える三相交流電動機の外観を例示する図である。
【0099】
本開示の実施形態による三相交流電動機1000は、上述した固定子1と、固定子1に対して径方向に対向配置された回転子10とを備える。
図16において、参照符号3は固定子のコアを示し、参照符号4はコイルを示す。コイル4は、スロットに収容されるプラス巻線(+巻線)41P及びマイナス巻線(-巻線)41Nと、スロットに収容されないコイルエンド42からなる。参照符号5は、回転子10に設けられる磁石を示し、参照符号6は回転子10の回転軸を示す。
【符号の説明】
【0100】
1 固定子
2 スロット
3 固定子のコア
4 コイル(巻線)
10 回転子
21 磁極