(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/237 20060101AFI20241008BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20241008BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/207
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2020081094
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】東 英孝
(72)【発明者】
【氏名】南 雄太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和弥
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108740(JP,A)
【文献】特開2017-100634(JP,A)
【文献】特開2012-081958(JP,A)
【文献】特開2020-172232(JP,A)
【文献】特開2014-076702(JP,A)
【文献】特開2018-199401(JP,A)
【文献】特開2014-069729(JP,A)
【文献】特開2016-083955(JP,A)
【文献】国際公開第2017/165492(WO,A1)
【文献】特開2019-001213(JP,A)
【文献】特開2021-160375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用座席のシートバックの側部に取り付けられ、前記車両用座席に着座した乗員の側方、かつ前記車両用座席の車両幅方向内側に設けられたコンソールボックスの上方で膨張展開するサイドエアバッグ装置であって、
前記シートバックの側部に取り付けられ、ガスを発生するインフレータと、
前記インフレータのガスにより膨張展開する袋状のエアバッグと、を備え、
前記エアバッグは、前記インフレータのガス噴出孔が配置され、前記乗員の胴体の側方で膨張展開する第1膨張部と、前記第1膨張部と連通し、前記第1膨張部から流入したガスにより前記乗員の頭部の側方で膨張展開する第2膨張部と、を有し、
前記エアバッグは、単一の気室であり、前記第1膨張部と前記第2膨張部とは、それぞれ、前記単一の気室の一部分であり、
前記エアバッグにガスが充填される前であって前記エアバッグを平らにした状態では、前記第1膨張部の一部がだぶついて前記第1膨張部の他の部分に対して折り重なっており、
前記エアバッグが膨張展開した状態では、前記第1膨張部の
前記一部は、前記コンソールボックスの上方で膨張展開し、かつ前記コンソールボックスの上面と接し、
前記エアバッグの折り畳み状態において
、前記第2膨張部が、
前記第1膨張部の前記一部よりも車両幅方向内側に配置されるように、
前記第1膨張部の前記一部に対して
直に重ねて折り畳まれていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグの折り畳み状態において、前記第1膨張部と前記第2膨張部とは、互いに重なった状態で、前記車両の前方から前記車両の後方に向かって更に折り畳まれていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記第2膨張部を前記車両の下方に向かって、前記第1膨張部の前記
一部と重なるように折り返す第1折り返しラインと、前記第1膨張部と前記第2膨張部とを、前記車両の前方から前記車両の後方に向かって折り返す第2折り返しラインとを有することを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のサイドエアバッグ装置であって、
前記第1折り返しラインは、前記乗員の肩部より下方に設けられていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置に関する。より詳しくは、自動車等の車両の衝突時に乗員の側方で膨張展開するサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時に、乗員が車両幅方向内側に移動して、隣に着座した乗員と接触することを防止するサイドエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のエアバッグ装置は、エアバッグの膨張展開状態で、車両下側となる下側領域部が折り畳まれた部分である下側折り畳み部と、車両上側となる上側領域部が折り畳まれた部分である上側折り畳み部と、上記下側領域部と上記上側領域部との中間となる中間領域部が折り畳まれた部分である中間折り畳み部とを備え、上記中間折り畳み部を、エアバッグの膨張展開状態で座席の背もたれの車幅方向内側の側部とは反対側となる側に巻くロール折りであり、かつ上側折り畳み部を包むロール折り部とする。このような特徴により、特許文献1に記載のエアバッグ装置は、エアバッグが膨張展開過程で乗員の腕の脇を通過する際に、該ロール折りが乗員の腕部に沿ってほどけるため、エアバッグの進路が乗員から離れる方向に逸れ難くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイドエアバッグ装置は、エアバッグが折り畳まれた状態で収納されており、車両の衝突時に、ガスにより折り畳みが解かれながら膨張展開する。車両の衝突時に、コンソールボックス等の車両部材と乗員との間で膨張展開するサイドエアバッグ装置は、エアバッグが乗員から逸れないように膨張展開させることが望まれる。膨張展開時に、エアバッグが乗員の腕に押されてしまうと、エアバッグが乗員から離れる方向に膨張展開してしまい、拘束力が低下することがあった。
【0006】
上記特許文献1に記載のエアバッグ装置の場合、エアバッグが下側折り畳み部と上側折り畳み部と中間折り畳み部とを備え、中間折り畳み部は、例えば蛇腹折りされた上側折り畳み部を包むロール折り部となっており、折り畳み回数が多く複雑である。そのため、エアバッグ装置の製造工程において、エアバッグの折り畳み作業が煩雑化する。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、簡単な折り畳み構造であり、かつ膨張展開時に乗員から離れる方向に逸れ難いサイドエアバッグ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、車両用座席のシートバックの側部に取り付けられ、上記車両用座席に着座した乗員の側方、かつ上記車両用座席の車両幅方向内側に設けられたコンソールボックスの上方で膨張展開するサイドエアバッグ装置において、上記シートバックの側部に取り付けられ、ガスを発生するインフレータと、上記インフレータのガスにより膨張展開する袋状のエアバッグと、を備え、上記エアバッグは、上記インフレータのガス噴出孔が配置され、上記乗員の胴体の側方で膨張展開する第1膨張部と、上記第1膨張部と連通し、上記第1膨張部から流入したガスにより上記乗員の頭部の側方で膨張展開する第2膨張部と、を有し、上記第1膨張部の少なくとも一部は、上記コンソールボックスの上方で膨張展開し、かつ上記コンソールボックスの上面と接し、上記エアバッグの折り畳み状態において、上記第2膨張部が、上記第1膨張部よりも車両幅方向内側に配置されるように、上記第1膨張部に対して、重ねて折り畳まれているサイドエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な折り畳み構造であり、かつ膨張展開時に乗員から離れる方向に逸れ難いサイドエアバッグ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1のサイドエアバッグ装置について、車両前方から見たときのエアバッグによる乗員拘束時の状態を示す模式図である。
【
図2】実施形態1のサイドエアバッグ装置について、車両側方から見たときのエアバッグによる乗員拘束時の状態を示す模式図である。
【
図3】実施形態1のサイドエアバッグ装置の膨張展開時の立体形状を模式的に示した斜視図である。
【
図4】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第1の図である。
【
図5A】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第2の図である。
【
図6】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第3の図である。
【
図7】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第4の図である。
【
図8】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第5の図である。
【
図9】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第6の図である。
【
図10】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第7の図である。
【
図11】実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第8の図である。
【
図12A】
図5Aに示した第1膨張部の折り畳み方法の変形例1を示した模式図である。
【
図13A】
図5Aに示した第1膨張部の折り畳み方法の変形例2を示した模式図である。
【
図14A】
図5Aに示した第1膨張部の折り畳み方法の変形例3を示した模式図である。
【
図15A】
図5Aに示した第1膨張部の折り畳み方法の変形例4を示した模式図である。
【
図16】実施形態1のサイドエアバッグ装置を車両用座席に搭載した状態を、車両側方から見たときの模式図である。
【
図17A】実施形態1に係るサイドエアバッグ装置が膨張展開する過程を説明する第1の図である。
【
図17B】実施形態1に係るサイドエアバッグ装置が膨張展開する過程を説明する第2の図である。
【
図17C】実施形態1に係るサイドエアバッグ装置が膨張展開する過程を説明する第3の図である。
【
図17D】実施形態1に係るサイドエアバッグ装置が膨張展開する過程を説明する第4の図である。
【
図18】実施形態2のサイドエアバッグ装置について、車両前方から見たときのエアバッグによる乗員拘束時の状態を示す模式図である。
【
図19】実施形態2に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第1の図である。
【
図20A】実施形態2に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第2の図である。
【
図21】実施形態2に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中の方向に関する記載は、特に断りのない限り、車両を基準としたものであり、例えば、「前方」は車両前方向を示し、「後方」は車両後方向を示し、「上方」は車両上方向を示し、「下方」は車両下方向を示し、「側方」は車両幅方向における内側方向を示す。また、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印REは車両後方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印DOWNは車両下方向を示し、矢印INは車両幅方向における内側方向を示し、矢印OUTは車両幅方向における外側方向を示す。なお、車両用座席の内部に配置される部材は、車両用座席を透視した状態で図示されている。
【0012】
[実施形態1]
本発明の実施形態1のサイドエアバッグ装置について、図面を参照して以下に説明する。
図1は、実施形態1のサイドエアバッグ装置について、車両前方から見たときのエアバッグによる乗員拘束時の状態を示す模式図である。
図2は、実施形態1のサイドエアバッグ装置について、車両側方から見たときのエアバッグによる乗員拘束時の状態を示す模式図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、実施形態1のサイドエアバッグ装置1は、車両用座席(車両のシート)50に着座した乗員40の側方、かつ車両用座席50の車両幅方向内側に設けられたコンソールボックス60の上方で膨張展開する。実施形態1のサイドエアバッグ装置1は、インフレータ10とエアバッグ20とを備え、車両用座席50のシートバック(背もたれ部)51の側部(車両幅方向内側の側部)に取り付けられている。車両用座席50としては、例えば、車両の運転席、助手席等が想定される。
【0014】
車両が障害物(例えば、別の車両)と衝突し、インフレータ10が作動すると、インフレータ10からガスが発生する。上記衝突としては、車両の側面から障害物と衝突する側面衝突、車両の斜め前方向から障害物と衝突する斜め衝突等が挙げられる。上記側面衝突は、具体的には、
図1に示した車両側壁70と車両幅方向において対向する車両側壁(車両用座席50が運転席である場合、助手席の車両幅方向外側に位置する車体部分)に障害物が衝突する。
【0015】
インフレータ10から発生したガスがエアバッグ20の内部に導入され、エアバッグ20は、その折り畳みが解かれながら膨張する。膨張したエアバッグ20から加わる力によってシートバック51の表皮が破られると、
図1及び
図2に示すように、エアバッグ20は、車両用座席50に着座した乗員40の側方、かつコンソールボックス60の上方で膨張展開し、乗員40の側部を保護する。このように膨張展開するエアバッグ20は、ファーサイドエアバッグとも呼ばれる。
【0016】
本発明の実施形態の説明に用いる図面では、国際統一側面衝突ダミー(World-SID:World Side Impact Dummy)40が車両用座席50に着座している。国際統一側面衝突ダミー40の着座姿勢は、現在、日本及び欧州で採用されている側面衝突試験法(ECE R95)、又は、米国で採用されている側面衝突試験法(FMVSS214)で定められたものである。エアバッグ20の膨張展開時(以下、単に、膨張展開時とも言う)の位置及び大きさは、
図1に示すような国際統一側面衝突ダミー40の胴体41、腰部42、頭部43、腕部44、肩部45等の位置に応じて設定される。上記国際統一側面衝突ダミー40を「乗員40」と称する。
【0017】
エアバッグ20は、インフレータ10のガスにより膨張展開する袋状のエアバッグであり、
図1に示したように、乗員40の胴体41の側方で膨張展開する第1膨張部20aと、乗員40の頭部43の側方で膨張展開する第2膨張部20bとを有する。第2膨張部20bは、第1膨張部20aと連通する。エアバッグ20は、区切られていない単一の気室であってもよく、第1膨張部20aと第2膨張部20bは、それぞれ、上記単一の気室の一部分であってもよい。第1膨張部20aと第2膨張部20bとは、少なくとも一部が連通していればよく、例えば、単一の袋状のエアバッグの内部が異なる複数の気室に区切られ、第1膨張部20a及び第2膨張部20bは、それぞれ異なる気室を含んでもよい。
【0018】
以下では、エアバッグ20が区切られていない単一の気室を内部に有し、第1膨張部20a及び第2膨張部20bが、それぞれ、上記単一の気室の一部分である場合を例示する。
図3は、実施形態1のサイドエアバッグ装置の膨張展開時の立体形状を模式的に示した斜視図である。
【0019】
図1及び
図3に示したように、第1膨張部20aは、インフレータ10のガス噴出孔11が配置される。インフレータ10は、少なくともガス噴出孔11が第1膨張部20aに配置されていればよく、インフレータ10全体がエアバッグ20の内部に配置されてもよいし、第1膨張部20aにガス流入孔を設け、上記ガス流入孔とガス噴出孔11とが連通するように、インフレータ10をエアバッグ20の外部に配置してもよい。第1膨張部20aにインフレータ10のガス噴出孔11が配置されることで、エアバッグ20は、第1膨張部20aから膨張展開を始める。
【0020】
図1に示したように、第1膨張部20aの少なくとも一部21(以下、第1膨張部20aの一部21ともいう)は、コンソールボックス60の上方で膨張展開し、かつコンソールボックス60の上面と接する。第1膨張部20aの一部21は、コンソールボックス60の上面に沿って、コンソールボックス60の上面と接しながら乗員40側から車両幅方向の中央側に向かって膨張展開することが好ましい。第1膨張部20aの一部21は、車両前方から観察した場合、コンソールボックス60を超えて、車両幅方向中央側まで膨張展開することが好ましい。第1膨張部20aの一部21は、膨張展開時にコンソールボックス60の上面でエアバッグ20を支えられる程度に、コンソールボックス60の上面と重畳していればよいが、車両幅方向においてコンソールボックス60を覆うことが好ましい。第1膨張部20aの一部21は、乗員40の反対側で車両幅方向の中央に向かって膨張する突出部であってもよい。
【0021】
第2膨張部20bは、第1膨張部20aと少なくとも一部が連通し、第1膨張部20aから流入したガスにより乗員40の頭部43の側方で膨張展開する。第1膨張部20aと第2膨張部20bとは、少なくとも一部が連通しているため、第1膨張部20aから流入したガスにより、第1膨張部20aに次いで第2膨張部20bが膨張展開する。第2膨張部20bは、乗員40の頭部43を受け止める。第2膨張部20bの平面部で乗員40の頭部43を受け止めてもよいし、第2膨張部20bの上端が乗員40の頭部43を受け止めてもよい。
【0022】
エアバッグ20は、膨張展開時に乗員40側に配置される乗員側パネル23と、乗員側パネル23と対向して配置される中央側パネル24と、乗員側パネル23の外周縁と中央側パネル24の外周縁とを連結する連結パネル25とを有する。中央側パネル24は、膨張展開時に車両幅方向内側に配置される。膨張展開時には、乗員側パネル23、中央側パネル24及び連結パネル25に囲まれた気室が形成される。連結パネル25は、一つの帯状のパネルであってもよいし、複数のパネルが繋ぎ合わされたものであってもよい。
【0023】
第1膨張部20aを構成する連結パネル25の幅は、第2膨張部20bを構成する連結パネル25の幅よりも広いことが好ましい。膨張展開時において、コンソールボックス60の上面と接する第1膨張部20aの一部21の車両幅方向における幅を、第2膨張部20bの車両幅方向における幅よりも広くすることができる。
【0024】
乗員側パネル23の一部と中央側パネル24の一部とは、縫い合わせ部26により互いに縫い合わされてもよい。縫い合わせ部26を設けることで、車両幅方向における膨張展開時のエアバッグ20の厚みを調整することができる。乗員側パネル23には、インフレータ10が取り付けられるインフレータ取付孔22が設けられてもよいし、インフレータをエアバッグの内部に挿入するための切込み28が形成されてもよい。
【0025】
インフレータ10は、シートバック51の側部に取り付けられ、ガスを発生する。インフレータ10は、車両の衝突時に作動する。具体的には、まず、車両に搭載された衝突検知センサが車両の衝突を検知すると、衝突検知センサから送られた信号をECU(Electronic Control Unit)が演算し、衝突のレベルが判定される。判定された衝突のレベルがエアバッグ20を膨張させる場合に該当すると、インフレータ10が着火され、燃焼による化学反応でガスが発生する。その結果、インフレータ10から発生したガスは、ガス噴出孔11からエアバッグ20の第1膨張部20aに導入されることになる。
【0026】
インフレータ10の種類としては、特に限定されず、例えば、ガス発生剤を燃焼させて発生するガスを利用するパイロ式インフレータ、圧縮ガスを利用するストアード式インフレータ、ガス発生剤を燃焼させて発生するガスと圧縮ガスとの混合ガスを利用するハイブリッド式インフレータ等が挙げられる。
【0027】
コンソールボックス60は、車両用座席50の車両幅方向内側に設けられている。例えば、コンソールボックス60は、車内の車両幅方向中央部において、運転席と助手席との間に設けられている。コンソールボックス60は、乗員40の車両幅方向内側の腕部44を支持する肘掛け部(アームレスト部)として機能してもよい。
【0028】
車両側壁70としては、車両用座席50に着座した乗員40の車両幅方向外側(コンソールボックス60とは反対側)に位置する車体部分であれば特に限定されず、サイドドア、ピラー、サイドウインドウ等を総称している。
【0029】
以下に、
図4~
図11用いて、実施形態1のエアバッグ装置におけるエアバッグ20の折り畳み方法について説明する。
図4~
図11は、実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第1~第8の図である。
図4~
図11では、各図の正面が、サイドエアバッグ装置1をシートバック51の側部に取り付けた状態における車両幅方向内側となるように、エアバッグ20が配置されている。
【0030】
まず、乗員側パネル23と中央側パネル24との間に、連結パネル25を入れ込む。
図4は、実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第1の図である。
図4では、膨張展開時に車両幅方向内側に配置される中央側パネル24が表、膨張展開時に乗員40側に配置される乗員側パネル23が裏となるように、エアバッグ20が配置されている。第1膨張部20aは下方DOWNに位置し、第2膨張部20bは上方UPに位置する。連結パネル25のうち、膨張展開時にコンソールボックス60の上面と接する部分21を構成する部分は、乗員側パネル23と中央側パネル24との間に入れ込まず、次工程で折り畳む。
【0031】
次に、第1膨張部20aを折り畳む。
図5Bは、
図5Aに示した一点鎖線における断面図である。
図5A及び
図5Bに示したように、コンソールボックス60の上方で膨張展開する第1膨張部20aの一部21を、車両下方から上方に向かって折り畳んでもよい。なお、
図5Aに示したように、第1膨張部20aの下方を、上方に向かって折り上げることで、エアバッグ20の折り畳み状態における、エアバッグ装置1の車両上下方向の長さを調整してもよい。
【0032】
次に、
図6に示したように、第2膨張部20bは、膨張展開時に車両幅方向内側に配置される中央側パネル24側において、車両の上方UPから下方DOWNに向かって折り畳まれる。第2膨張部20bが
図6の正面、すなわち、車両幅方向内側に配置されるように、第1膨張部20aに重ねて折り畳まれる。このように、折り畳むことで、エアバッグ20の折り畳み状態において、第2膨張部20bは、第1膨張部20aよりも車両幅方向内側に配置されるように、第1膨張部20aに対して、重ねて折り畳まれる。第2膨張部20bは、第1膨張部20aの全てと重ならなくてもよいが、少なくとも第1膨張部20aの一部21と重なっていることが好ましい。
【0033】
膨張展開時には、第2膨張部20bに先んじてインフレータ10のガス噴出孔11が配置されている第1膨張部20aが膨張し、第1膨張部20aの一部21は、コンソールボックス60の上面に沿って、コンソールボックス60の上面と接するように膨張展開する。そのため、第2膨張部20bを第1膨張部20aに重ねて折り畳むことで、第1膨張部20aが、重なっている第2膨張部20bを車両上方に向かって押し上げながら膨張展開する。それにより、第2膨張部20bも車両上方に向かって膨張展開することができる。また、第1膨張部20a及び第2膨張部20bが、乗員40に対して車両幅方向内側、言い換えると、乗員40の反対側で折り畳まれていることで、膨張展開時にエアバッグ20が、乗員40とコンソールボックス60との間に挟まらないようにすることができる。
【0034】
エアバッグ20は、第2膨張部20bを車両の下方DOWNに向かって、第1膨張部20aと重なるように折り返す第1折り返しライン30を有することが好ましい。第2膨張部20bは、第1折り返しライン30によって、第1膨張部20aに対して重ねて折り畳まれている。なお、第1膨張部20aと第2膨張部20bとの境界と、第1折り返しライン30とは一致していなくてもよい。
【0035】
その後、
図7に示したように、第1膨張部20aと第2膨張部20bとを車両の前方FRから車両の後方REに向かって折り畳む。サイドエアバッグ装置1は、エアバッグ20の折り畳み状態において、第1膨張部20aと第2膨張部20bとが、互いに重なった状態で、車両の前方FRから車両の後方REに向かって更に折り畳まれていることが好ましい。すなわち、エアバッグ20は、第1膨張部20aと第2膨張部20bとを、車両の前方FRから車両の後方REに向かって折り返す第2折り返しライン31aを有することが好ましい。これにより、車両の前方FRから車両の後方REへの折り畳み回数を減らすことができる。第1膨張部20aと第2膨張部20bとは、互いに少なくとも一部が重なっていればよい。
【0036】
エアバッグ20は、第2折り返しライン31aによって、少なくとも1回、車両の前方FRから車両の後方REに向かって折り畳まれていればよいが、第2折り返しライン31aで折り返した後、
図8~
図11に示したように、更に、複数回、第1膨張部20aと第2膨張部20bとを車両の前方から車両の後方に向かって折り返してもよい。
図8~
図11では、車両の前方から車両の後方に向かって、第2折り返しライン31b、第2折り返しライン31c、第2折り返しライン31d及び第2折り返しライン31eで折り返す場合を例示した。第2折り返しライン31aで折り返した後の折り畳み方は特に限定されず、折り畳み回数が異なってもよいし、車両の前方から車両の後方に向かってロール折り、又は、蛇腹折りで折り畳んでもよい。
【0037】
第1膨張部20aの折り畳み方法は、
図5A及び
図5Bに示したものに限定されない。
図12A、
図13A、
図14A及び
図15Aは、それぞれ、
図5Aに示した第1膨張部の折り畳み方法の変形例1~4を示した模式図である。
図12A、
図13A、
図14A及び
図15Aでは、膨張展開時に車両幅方向内側に配置される中央側パネル24が表、膨張展開時に乗員40側に配置される乗員側パネル23が裏となるように、エアバッグ20が配置されている。
図12B、
図13B、
図14B及び
図15Bは、それぞれ
図12A、
図13A、
図14A及び
図15Aに示した一点鎖線における断面図である。
図12A及び
図12Bに示した変形例1のように、コンソールボックス60の上方で膨張展開する第1膨張部20aの一部21を平たく折り畳んでもよい。
図13A及び
図13Bに示した変形例2のように、第1膨張部20aを上方に折り上げた後、上記折り上げた第1膨張部20aの一部を下方に折り返してもよい。
図14Aに示した変形例3のように、第1膨張部20aを巻き込むように上方にロール折りしてもよい。
図15Aに示した変形例4のように、
図5Aのように、第1膨張部20aを平たく折り畳んだ後、下方側を上方に重なるように折り畳んでもよい。
【0038】
図16は、実施形態1のサイドエアバッグ装置を車両用座席に搭載した状態を、車両側方から見たときの模式図である。
図16に示したように、エアバッグ20は、膨張展開前においてシートバック51の側部(例えば、サイドフレーム52)に折り畳まれた状態で固定され、クッションパッドとともにシートバック51の表皮に覆われて収納されている。
【0039】
第1折り返しライン30は、乗員40の肩部45(乗員40の肩部45の中心(国際統一側面衝突ダミーの肩の回転中心))より下方に設けられていることが好ましい。第1折り返しライン30を、乗員40の肩部45の中心より下方に設けることで、第1膨張部20aは、乗員40の腕部44の下方に沿って膨張展開する。第2膨張部20bは、第1膨張部20aと反発して、上方へ押し上げられるように膨張展開するため、第2膨張部20bが乗員40側に押し付けられながら、乗員40の腕部44及び肩部45の側部に沿って、膨張展開する。
【0040】
第1折り返しライン30は、コンソールボックス60の上面よりも上方に設けられていることが好ましい。第1折り返しライン30をコンソールボックス60の上面よりも上方に設けることで、エアバッグ20が膨張展開する際に、乗員40とコンソールボックス60との間に挟まれ難くすることができる。
【0041】
インフレータ10は、例えば、シリンダー状(円柱状)のガス発生装置であり、シートバック51の延在方向(高さ方向)に沿って配置されている。インフレータ10の上部及び下部からは一対のボルト12が突出しており、一対のボルト12を、エアバッグ20に設けられたインフレータ取付孔22を通じて、シートバック51の側部(例えば、サイドフレーム52)に固定されている。
【0042】
以下に、
図17A~D及び
図1を用いて、サイドエアバッグ装置1が膨張展開する過程を説明する。
図17A~Dは、実施形態1に係るサイドエアバッグ装置が膨張展開する過程を説明する第1~第4の図である。車両が障害物と衝突し、インフレータ10が作動すると、インフレータ10から発生したガスが、ガス噴出孔11から第1膨張部20aに導入され、
図17Aに示したように、膨張したエアバッグ20から加わる力によって、シートバック51の表皮が破られる。具体的には、ガスがインフレータ10から発生すると、第1膨張部20aのうちガス噴出孔11が配置されている部分が膨張する。ガス噴出孔11からさらに導入されるガスにより、ロール折り部の折り畳みが解かれ、ロール折りが解かれた部分の第1膨張部20aにガスが流入し第1膨張部20aが膨張し始める。それにより、エアバッグ20は折り畳みが解けた部分から順に車両前方へと膨張展開し始める。
【0043】
図17Bに示したように、第1膨張部20aは、乗員40の胴体41の側方で膨張展開する。第1膨張部20aは、折り畳み状態において第1膨張部20aと重なっていた第2膨張部20bを押し上げながら、コンソールボックス60の上面と接するように膨張展開する。
【0044】
図17Cに示したように、第2膨張部20bは、第1膨張部20aから流入したガスにより、第1膨張部20aに次いで膨張展開する。第1膨張部20aの一部21がコンソールボックス60の上面と接することで、第2膨張部20bは、コンソールボックス60に支えられた第1膨張部20aと反発し、車両上方に向かって膨張展開する。
【0045】
図17Dに示したように、コンソールボックス60に支えられた第1膨張部20aと反発して、第2膨張部20bは、乗員40に押し付けられながら、乗員40の腕部44及び肩部45に沿って更に車両上方に膨張展開する。第2膨張部20bが、乗員40の腕部44及び肩部45をかわすように車両幅方向内側から膨張展開するため、乗員40の腕部44によってエアバッグ20が跳ね上げられることを抑制することができる。
【0046】
その後、
図1に示したように、エアバッグ20は、第1膨張部20aで乗員40の胴体41の側部を受け止め、第2膨張部20bで乗員40の頭部43を受け止める。第1膨張部20aの一部21がコンソールボックス60の上面と接することで、エアバッグ20は、車両下方向又は車両幅方向における内側方向に逸れ難い。かつ、第2膨張部20bが、乗員40の腕部44を拘束するため、充分に乗員40を拘束することができる。
【0047】
[実施形態2]
実施形態2のサイドエアバッグ装置は、エアバッグが複数の袋状のエアバッグを含む。
図18は、実施形態2のサイドエアバッグ装置について、車両前方から見たときのエアバッグによる乗員拘束時の状態を示す模式図である。
図18に示したように、実施形態2のエアバッグ装置において、エアバッグ20は、第1膨張部20a及び第2膨張部20bを含み、第1膨張部20a及び第2膨張部20bは、それぞれ異なる袋状のエアバッグである。
図18及び後述する
図20Bに示したように、第1膨張部20aと第2膨張部20bとは、ガス流通孔27により、連通している。膨張展開時には、インフレータ10のガス噴出孔11が配置されている第1膨張部20aが膨張展開し、ガス流通孔27を通じて第2膨張部20bにガスが流入することで、第2膨張部20bが膨張展開する。
【0048】
第1膨張部20aは、実施形態1と同様に、乗員側パネル23と、中央側パネル24と、連結パネル25とを有してもよい。第2膨張部20bは、膨張展開時に乗員40側に配置される乗員側パネル123と、乗員側パネル23と対向して配置される中央側パネル124とを有してもよい。
【0049】
以下に、
図19~
図21用いて、実施形態2のエアバッグ装置におけるエアバッグ20の折り畳み方法について説明する。
図19~
図21は、実施形態2に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第1~第3の図である。
図19、
図20A及び
図21では、各図の正面が、サイドエアバッグ装置1をシートバック51の側部に取り付けた状態における車両幅方向内側となるように、エアバッグ20が配置されている。
図20Bは、
図20Aに示した一点鎖線における断面図である。
【0050】
実施形態2では、第1膨張部20aを構成する袋状のエアバッグと、第2膨張部20bを構成する袋状のエアバッグとが重ねて縫い合わされている。
図19に示したように、第1膨張部20aを表側に配置した場合、裏側に位置する第2膨張部20bを、下方から上方に向かって折り上げる。
【0051】
次に、
図20A及び
図20Bに示したように、第1膨張部20aの一部21を平たく折り畳む。
図20A及び
図20Bに示した折り畳み方は、実施形態1の変形例1に対応する折り畳み方である。畳み状態におけるエアバッグ装置1の車両上下方向の長さを調整するために、第1膨張部20aの下方を上方に向かって折り上げてもよい。
【0052】
次に、
図21に示したように、第2膨張部20bは、
図21の正面、すなわち、車両幅方向内側に配置されるように、第1膨張部20aに重ねて、車両の上方UPから下方DOWNに向かって折り畳まれる。第2膨張部20bは、少なくとも第1膨張部20aの一部21と重なっていることが好ましい。エアバッグ20は、第2膨張部20bを車両の下方DOWNに向かって、第1膨張部20aと重なるように折り返す第1折り返しライン30を有することが好ましい。
【0053】
その後、上述の
図7に示した実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第4の図のように、第2折り返しライン31aによって、第1膨張部20aと第2膨張部20bとを車両の前方FRから車両の後方REに向かって折り畳む。第2折り返しライン31aで折り返した後の折り畳み方は特に限定されず、折り畳み回数が異なってもよいし、車両の前方から車両の後方に向かってロール折り、又は、蛇腹折りで折り畳んでもよいが、上述の
図8~11に示した実施形態1に係るエアバッグの折り畳み過程を説明する第5~8の図のように、複数回、第1膨張部20aと第2膨張部20bとを車両の前方から車両の後方に向かって折り返してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:サイドエアバッグ装置
10:インフレータ
11:ガス噴出孔
12:ボルト
20:エアバッグ
20a:第1膨張部
20b:第2膨張部
21:第1膨張部の一部
22:インフレータ取付孔
23、123:乗員側パネル
24、124:中央側パネル
25:連結パネル
26:縫い合わせ部
27:ガス流通孔
28:切込み
30:第1折り返しライン
31a、31b、31c、31d、31e:第2折り返しライン
40:乗員(国際統一側面衝突ダミー)
41:胴体
42:腰部
43:頭部
44:腕部
45:肩部
50:車両用座席
51:シートバック(背もたれ部)
52:サイドフレーム
60:コンソールボックス
70:車両側壁