(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】頭髪用エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/69 20060101AFI20241008BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241008BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20241008BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241008BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K8/69
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/34
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2020127651
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫根 秀
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033121(JP,A)
【文献】特開2020-015703(JP,A)
【文献】特表2013-543050(JP,A)
【文献】特表2019-531452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0039732(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイリング用樹脂およびアルコールを含む原液と、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、沸点が5℃未満である液化ガスとを含み、均一相を形成する、頭髪用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、原液中、5~30質量%である、請求項1記載の頭髪用エアゾール組成物。
【請求項3】
前記沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、5~70質量%である、請求項1または2記載の頭髪用エアゾール組成物。
【請求項4】
前記沸点が5℃未満である液化ガスの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、10~60質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の頭髪用エアゾール組成物。
【請求項5】
前記沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の頭髪用エアゾール組成物。
【請求項6】
前記沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含み、
前記沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、5~60質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の頭髪用エアゾール組成物。
【請求項7】
前記沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含み、
前記スタイリング用樹脂と、前記沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンとの頭髪用エアゾール組成物中の含有量の比(質量比)は、1/15~4/5である、請求項1~6のいずれか1項に記載の頭髪用エアゾール組成物。
【請求項8】
前記スタイリング用樹脂と、前記沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとの頭髪用エアゾール組成物中の含有量の比(質量比)は、1/30~2/1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の頭髪用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪用エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、スタイリング用樹脂を高濃度に配合した場合でも均一な組成を維持することができ、噴霧粒子の拡がりが大きい頭髪用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタイリング用のエアゾール製品が開発されている。特許文献1には、スタイリング用樹脂と、アルコールと、沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィンとを含む頭髪用エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2013/0280178号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、火気に対する安全性のためにハイドロフルオロオレフィンを使用したヘアスプレーが記載されている。しかしながら、沸点5℃未満のハイドロフルオロオレフィンは、スタイリング用樹脂の溶解性が悪いため、配合できるスタイリング用樹脂の量が制限され、充分なセット力が得られない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、スタイリング用樹脂の溶解性が優れ、スタイリング用樹脂を高濃度に配合した場合であっても均一な組成を維持することができ、噴霧粒子の拡がりが大きい頭髪用エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)スタイリング用樹脂およびアルコールを含む原液と、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、沸点が5℃未満である液化ガスとを含み、均一相を形成する、頭髪用エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、所望するセット力となるような樹脂量のスタイリング用樹脂を含有しても、スタイリング用樹脂を安定に溶解して、均一な組成を維持することができ、噴霧粒子の拡がりが大きいヘアスプレーが得られる。
【0009】
(2)前記スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、原液中、5~30質量%である、(1)記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、所望する高いセット力が得られやすい。
【0011】
(3)前記沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、5~70質量%である、(1)または(2)記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、所望する樹脂量となるようスタイリング用樹脂を含有しても、スタイリング用樹脂を安定に溶解して均一な組成を維持することができ、噴霧粒子が拡がりやすくなり、噴霧粒子を頭髪に薄く均等に付着させることができる。
【0013】
(4)前記沸点が5℃未満である液化ガスの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、10~60質量%である、(1)~(3)のいずれかに記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、適度な勢いで噴霧して、頭髪に付着しやすい。
【0015】
(5)前記沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含む、(1)~(4)のいずれかに記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0016】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、頭髪上で硬い被膜を形成しやすく、強いセット力が得られやすい。
【0017】
(6)前記沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含み、前記沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、5~60質量%である、(1)~(5)のいずれかに記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0018】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、適度な勢いで噴霧して、頭髪に付着しやすく、強いセット力が得られやすい。
【0019】
(7)前記沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含み、前記スタイリング用樹脂と、前記沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンとの頭髪用エアゾール組成物中の含有量の比(質量比)は、1/15~4/5である、(1)~(6)のいずれかに記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0020】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、高いセット保持力が得られやすい。
【0021】
(8)前記スタイリング用樹脂と、前記沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとの頭髪用エアゾール組成物中の含有量の比(質量比)は、1/30~2/1である、(1)~(7)のいずれかに記載の頭髪用エアゾール組成物。
【0022】
このような構成によれば、頭髪用エアゾール組成物は、低温時でもスタイリング用樹脂を安定に溶解して均一な組成を維持することができ、また、噴霧粒子の拡がりが大きいヘアスプレーが得られやすい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スタイリング用樹脂の溶解性が優れ、スタイリング用樹脂を高濃度に配合した場合であっても均一な組成を維持することができ、噴霧粒子の拡がりが大きい頭髪用エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<頭髪用エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の頭髪用エアゾール組成物は、スタイリング用樹脂およびアルコールを含む原液と、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、沸点が5℃未満である液化ガスとを含み、均一相を形成する。以下、それぞれについて説明する。なお、均一相を形成するとは、頭髪用エアゾール組成物の液相がスタイリング用樹脂によるにごりや析出物がなく、均一な状態をいう。
【0025】
(原液)
原液は、スタイリング用樹脂とアルコールとを含む。
【0026】
・スタイリング用樹脂
スタイリング用樹脂は、毛髪をセットするために配合される。
【0027】
スタイリング用樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、スタイリング用樹脂は、(アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1-18)/アルキル(C1-8)アクリルアミド)コポリマー、アクリル酸アルカノールアミンなどのアニオン型樹脂、(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸オクチルアミド-アクリル酸ヒドロキシプロピル-メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体などの両性型樹脂、ビニルピロリドン-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体硫酸塩、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどのカチオン型樹脂、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル-スチレン共重合体エマルジョンなどのエマルジョン型樹脂、(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル-アクリル酸ブチル-アクリル酸メトキシエチル共重合体などのノニオン型樹脂等である。スタイリング用樹脂は、併用されてもよい。
【0028】
また、スタイリング用樹脂は、水溶性を付与し、シャンプー等で洗い流しやすくするために、中和剤が好適に配合される。
【0029】
中和剤は、特に限定されない。一例を挙げると、中和剤は、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(AEPD)、トリエタノールアミン(TEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがあげられる。中和剤は、併用されてもよい。中和剤は、中和度が100%付近となる量を添加するのが好ましい。
【0030】
スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、特に限定されない。一例を挙げると、スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、原液中、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、スタイリング用樹脂の含有量(固形分)は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。スタイリング用樹脂の含有量(固形分)が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、所望するセット力を示しやすい。
【0031】
・アルコール
アルコールは、スタイリング用樹脂を原液中に溶解させて均一相を形成し、頭髪用エアゾール組成物を毛髪に付着しやすい大きさの粒子を形成し、均一に噴射するとともに、毛髪に付着して乾燥性を調整するために配合される。
【0032】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコールである。
【0033】
アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、93質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、噴射された頭髪用エアゾール組成物は、毛髪に付着しやすい粒子径になりやすく、消費者による吸入を防止することができ、乾燥性を調整できる。
【0034】
・任意成分
本実施形態の原液は、上記したスタリング用樹脂、アルコールに加え、任意成分として、適宜有効成分を含んでもよい。有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゼン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ヒアルロン酸などの保湿剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、アルミニウム粉末、シリカ、酸化鉄などの顔料、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、赤色2号、赤色3号、青色1号、青色2号などの染料、ポリソルベート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの界面活性剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤、炭化水素油、シリコーン油、エステル油などの各種オイル成分などである。
【0035】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、得られる頭髪用エアゾール組成物は、有効成分を配合することによる所望の効果が得られやすい。
【0036】
原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、噴射された際の粒子が適切な大きさとなるよう調整され、所望する高いセット力を得られやすい。
【0037】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、上記スタイリング用樹脂、アルコールや有効成分などの任意成分を混合することにより調製され得る。
【0038】
(沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィン)
沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、頭髪用エアゾール組成物中のスタイリング用樹脂の溶解性を高め、噴霧粒子の拡がりを大きくするために配合される。また、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、毛髪に付着した頭髪用エアゾール組成物の乾燥性を高くする。
【0039】
沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)等である。
【0040】
沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、所望するセット力となるような樹脂量のスタイリング用樹脂を含有しても、スタイリング用樹脂が溶解した均一な状態が維持され、また、噴霧したときは、噴霧粒子の拡がりを大きくし、毛髪に付着した際に付着物の乾燥性を高くする効果が得られやすい。
【0041】
スタイリング用樹脂と、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとの含有量の比(質量比)は、1/30~2/1であることが好ましく、1/20~14/25であることがより好ましい。スタイリング用樹脂と、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンとの含有量の比が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、低温でもスタイリング用樹脂を安定に溶解して均一な組成が得られやすく、また、噴霧粒子の拡がりが大きいヘアスプレーが得られる。
【0042】
(沸点が5℃未満である液化ガス)
沸点が5℃未満である液化ガスは、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと混合されて頭髪用エアゾール組成物の圧力を調整して頭髪に適度な噴射力で噴霧し、頭髪に付着しやすく、所望する高いセット力を得られるために配合される。
【0043】
沸点が5℃未満である液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5℃未満である液化ガスは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze(E)、沸点-19℃)、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234yf、沸点-30℃)等のハイドロフルオロオレフィン、ノルマルブタン(沸点-0.5℃)、イソブタン(沸点-11.7℃)、プロパン(沸点-42℃)およびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル(沸点-25℃)等であり、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。また、沸点が5℃未満である液化ガスは、併用されてもよい。
【0044】
沸点が5℃未満である液化ガスの含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5℃未満である液化ガスの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5℃未満である液化ガスの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましい。沸点が5℃未満である液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、噴霧される粒子が頭髪に付着しやすく、所望する高いセット力が得られやすい。
【0045】
沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンが含まれる場合、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、頭髪用エアゾール組成物中、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましい。沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、頭髪上で硬い被膜を形成しやすく、強いセット力が得られやすい。
【0046】
スタイリング用樹脂と、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンとの含有量の比(質量比)は、1/15~4/5であることが好ましく、1/12~7/15であることがより好ましい。スタイリング用樹脂と、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンとの含有量の比が上記範囲内であることにより、頭髪用エアゾール組成物は、高いセット保持力が得られやすい。
【0047】
頭髪用エアゾール組成物は、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンや沸点が5℃未満である液化ガスの他に圧縮ガスを併用してもよい。
【0048】
圧縮ガスは特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスは、窒素、空気、酸素、水素、二酸化炭素、亜酸化窒素等である。
【0049】
圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.3MPaとなるように充填されることが好ましく、0.4MPa以上となるように充填されることがより好ましい。また、圧縮ガスは、25℃における容器内の圧力が0.7MPa以下となるように充填されることが好ましく、0.6MPa以下となるように充填されることがより好ましい。
【0050】
頭髪用エアゾール組成物の説明に戻り、本実施形態の頭髪用エアゾール組成物を製造する方法は特に限定されない。一例を挙げると、頭髪用エアゾール組成物は、耐圧容器内に原液を充填し、耐圧容器の開口部にバルブを取り付け、バルブから所定の比率に混合した沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと沸点が5℃未満である液化ガスを充填し、容器内で原液と混合することにより調製することができる。また、バルブのステムに噴射部材を取り付けることにより、噴射製品が製造され得る。沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと沸点が5℃未満である液化ガスの順に充填しても良い。この場合、充填時においても樹脂の析出を防止することができる。
【0051】
本実施形態の頭髪用エアゾール組成物を充填したエアゾール製品は、頭髪用エアゾール組成物が充填された容器と、容器に取り付けられたバルブとを主に備える。
【0052】
(容器)
容器は、頭髪用エアゾール組成物が充填される耐圧容器であり、有底筒状である。容器の開口部には、バルブが取り付けられる。
【0053】
容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、容器の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0054】
(バルブ)
バルブは、容器の開口部を閉止して密封するための部材である。また、バルブは、ハウジングと、容器の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステムを上方に付勢するスプリングとステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステム、ステムラバー、スプリングを収容する。ステムは、略円筒状の部位であり、噴射時にハウジング内に取り込まれた頭髪用エアゾール組成物が通過するステム内通路が形成されている。ステム内通路の下端近傍には、ハウジング内の空間とステム内通路とを連通するステム孔が形成されている。ステムの上端には、頭髪用エアゾール組成物を噴射するための噴射部材が取り付けられる。ステムラバーは、ステム孔の周囲に取り付けられ、ハウジングの内部空間と外部とを適宜遮断するための部材である。ステムラバーは、円盤状の部材であり、非噴射時において、内周面をステムのステム孔が形成された外周面と密着させて、ステム孔を閉止する。
【0055】
(噴射部材)
噴射部材は、バルブの開閉を操作して頭髪用エアゾール組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。噴射孔からは、頭髪用エアゾール組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0056】
本実施形態のエアゾール製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、容器内と外部とが連通する。容器内と外部とが連通すると、容器内の圧力と外部との圧力差によって、頭髪用エアゾール組成物がハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。
【0057】
以上、本実施形態の頭髪用エアゾール組成物は、スタイリング用樹脂およびアルコールを含む原液と、沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンと、沸点が5℃未満である液化ガスとを含み、均一相を形成する。頭髪用エアゾール組成物は、所望するセット力となるような樹脂量のスタイリング用樹脂を含有しても、スタイリング用樹脂を安定に溶解して均一な組成が維持されやすく、噴霧粒子の拡がりが大きいヘアスプレーが得られる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0059】
(実施例1)
以下の表1に記載の処方(単位:質量%)に従って、原液1を調製し、アルミ製のエアゾール容器に60g充填した。次いで、エアゾールバルブをエアゾール容器の開口部に固着して密閉し、ステムから20.0gのハイドロフルオロオレフィン(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、沸点19℃)と、20.0gのハイドロフルオロオレフィン(トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、沸点-19℃)を充填し、原液とハイドロフルオロオレフィンを混合し、エアゾール製品を作製した。
【0060】
【0061】
(実施例2~15、比較例1~4)
原液の処方を表1に記載の処方に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、原液を調製し、表2に記載の処方に従って頭髪用エアゾール組成物を調製し、エアゾール容器に充填し、エアゾール製品を作製した。
【0062】
実施例1~15および比較例1~4において調製したエアゾール製品を用いて、以下の評価方法により、溶解性、噴霧粒子の拡がり、セット保持力およびセットの硬さを測定した。結果を表2に示す。
【0063】
<溶解性>
透明な耐圧ガラス製エアゾール容器に頭髪用エアゾール組成物を充填した。エアゾール製品を-20℃の冷凍庫に24時間保管し、低温溶解性を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:頭髪用エアゾール組成物の液相は、樹脂の析出物やにごりがなく、透明で均一であった。
×:頭髪用エアゾール組成物の液相は、樹脂の析出物やにごりがあった。
【0064】
<噴霧粒子の拡がり>
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に1時間浸漬して、頭髪用エアゾール組成物を25℃に調整し、噴射孔から15cmの距離にろ紙を配置して、ろ紙に対して垂直に1秒間噴射した時の噴霧粒子の拡がり(ろ紙に付着した噴霧粒子の縦方向および横方向の大きさ(cm))を測定した。
【0065】
<セット保持力>
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に1時間浸漬して、頭髪用エアゾール組成物を25℃に調整し、長さ50cmの毛束に頭髪用エアゾール組成物を噴射し、乾燥するまでカーラーに巻きつけた。乾燥した毛束を吊り下げ、吊り下げた初期の毛束の長さ(L)と、24時間後の毛束の長さ(l)とを測定し、24時間後に毛束のカールがどの程度保持されているか(セット保持力)を以下に定義される式に基づいて算出し、以下の評価基準に従って評価した。
セット保持力(%)=(50-l)/(50-L)×100
(評価基準)
◎:セット保持力は、吊り下げた初期の毛束の長さから55%以上であった。
○:セット保持力は、吊り下げた初期の毛束の長さから45%以上55%未満であった。
×:セット保持力は、吊り下げた初期の毛束の長さから45%未満であった。
【0066】
<セットの硬さ>
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に1時間浸漬して、頭髪用エアゾール組成物を25℃に調整し、長さ10cmの毛束に頭髪用エアゾール組成物を噴射し、乾燥させた。乾燥した毛束に垂直方向から荷重をかけ、毛束が10mm折れ曲がるときの荷重を測定し、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
◎:毛束を折り曲げるのに要した荷重は、15N以上であった。
○:毛束を折り曲げるのに要した荷重は、10N以上15N未満であった。
△:毛束を折り曲げるのに要した荷重は、10N未満であった。
【0067】
【0068】
表2に示されるように、実施例1~15のエアゾール製品における頭髪用エアゾール組成物は、低温でも安定にスタイリング用樹脂が溶解しており、均一な組成が得られた。また、スタイリング用樹脂と沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンとの質量比が1/20~14/25の実施例3~15のエアゾール製品における頭髪用エアゾール組成物は、噴霧粒子の拡がりが大きかった。また、沸点が5℃未満である液化ガスとして、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを使用し、かつ、樹脂と沸点が5℃未満のハイドロフルオロオレフィンとの質量比が1/12~7/15の実施例2、4~11のエアゾール製品における頭髪用エアゾール組成物は、セット保持力、セットの硬さが非常に優れていた。また、沸点が5℃未満であるハイドロフルオロオレフィンの一部、もしくはすべてをLPGまたはDMEにした実施例12~15のエアゾール製品における頭髪用エアゾール組成物は、セット保持力が非常に優れていた。一方、沸点が5~40℃のハイドロフルオロオレフィンを含まない比較例1~3のうち、沸点が5℃未満である液化ガスをハイドロフルオロオレフィンにした比較例1とLPGにした比較例2のエアゾール製品における頭髪用エアゾール組成物は、溶解性が悪く、析出物が生じた。沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンを含まず、沸点が5℃未満である液化ガスをDMEにした比較例3のエアゾール製品における頭髪用エアゾール組成物は、溶解性やセットの硬さは良かったが、噴霧粒子の拡がりが小さくセット保持力が悪かった。沸点が5~40℃であるハイドロフルオロオレフィンをイソペンタンにした比較例4は、溶解性が悪く、析出物が生じた。