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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G01N35/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020129923
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026449
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 武彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 高志
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-153603(JP,A)
【文献】特表2012-502791(JP,A)
【文献】特開2002-122443(JP,A)
【文献】特開昭55-033289(JP,A)
【文献】特開2010-066108(JP,A)
【文献】特開昭55-149056(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器が配置され、恒温水を貯蔵する反応槽と、
前記恒温水の温度を調整する調整部と、
前記反応槽と前記調整部との間で前記恒温水を循環させる循環ポンプと、
装置外の温度、装置内の温度、及び、前記恒温水の温度の少なくとも1つの温度に基づいて前記循環ポンプの流量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記少なくとも1つの温度と前記循環ポンプの流量とを対応付ける情報を用いて、前記循環ポンプの流量を増加させるときの温度と、前記循環ポンプの流量を低下させるときの温度とが異なるように、前記循環ポンプの流量を制御する、
自動分析装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの温度と前記循環ポンプの流量とを対応付ける前記情報は、前記少なくとも1つの温度が低いほど前記循環ポンプの流量を増加させ、前記少なくとも1つの温度が高いほど前記循環ポンプの流量を低下させる情報であり、
前記制御部は、前記情報を用いて、前記少なくとも1つの温度に対応する流量を選択し、前記選択した流量となるように、前記循環ポンプの流量を制御する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、装置外に設置されたセンサ、装置内に設置されたセンサ、前記恒温水の循環経路内に設置されたセンサから、前記少なくとも1つの温度を取得する、
請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
反応容器が配置され、恒温水を貯蔵する反応槽と、
前記恒温水の温度を調整する調整部と、
前記反応槽と前記調整部との間で前記恒温水を循環させる循環ポンプと、
前記循環ポンプの発熱量と前記循環ポンプの流量とを対応付ける情報を用いて、前記循環ポンプの流量を制御する制御部と、
を備える自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、反応容器内の液体を恒温に維持する恒温水を貯蔵する反応槽を備えている。また、自動分析装置は、恒温水の温度を調整する加熱器と、反応槽と加熱器との間で恒温水を循環させる循環ポンプとを備えている。しかし、循環ポンプは発熱するため、自動分析装置内の温度が上昇する要因となり、当該温度の上昇に応じて恒温水の温度が上昇する可能性がある。また、循環ポンプの発熱により、循環ポンプ単体でも恒温水の温度を上昇させてしまう可能性がある。この場合、恒温水の温度が上昇することにより、反応容器内の液体に影響を与えてしまい、自動分析装置が正しい測定結果を得ることができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-8458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、恒温水の温度上昇を抑えて、自動分析装置の信頼性を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る自動分析装置は、反応槽と、調整部と、循環ポンプと、制御部とを備える。前記反応槽は、反応容器が配置され、恒温水を貯蔵する。前記調整部は、前記恒温水の温度を調整する。前記循環ポンプは、前記反応槽と前記調整部との間で前記恒温水を循環させる。前記制御部は、装置外の温度、装置内の温度、及び、前記恒温水の温度の少なくとも1つの温度に基づいて前記循環ポンプの流量を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る自動分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1の自動分析システムの分析装置の構成の一例を示す斜視図である。
図3A図3Aは、反応容器、反応容器ユニット及び反応槽を示す上面図である。
図3B図3Bは、図3AのX-X’線断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る自動分析システムの恒温水温度制御ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、本実施形態におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。
図6図6は、本実施形態におけるポンプ制御処理の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の変形例におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。
図8図8は、第2の変形例におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。
図9図9は、第2の変形例におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す自動分析装置100は、分析装置70と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0009】
分析装置70は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料(血液や尿などの生体試料)と、各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して、標準データや被検データを生成する。分析装置70は、試料の分注、試薬の分注等を行う複数のユニットを備え、駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0010】
処理装置90は、入力装置50と、出力装置40と、処理回路30と、記憶回路60とを有する。
【0011】
入力装置50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、被検試料の被検識別情報及び検査項目を設定するための入力等を行う。
【0012】
出力装置40は、プリンタと、ディスプレイとを備えている。プリンタは、処理回路30で生成されたデータの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなどのモニタであり、処理回路30で生成されたデータの表示を行う。
【0013】
記憶回路60は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。
【0014】
処理回路30は、システム全体を制御する。例えば、処理回路30は、図1に示すように、データ処理機能31及び制御機能32を実行する。制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。ここで、制御機能32は、制御部の一例である。データ処理機能31は、分析装置70で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する。
【0015】
例えば、分析装置70により生成される標準データは、物質の量や濃度を判定するためのデータ(検量線あるいは標準曲線)を表し、分析装置70により生成される被検データは、被検試料を測定した結果のデータを表す。また、処理回路30から出力される検量データは、被検データと標準データとから導かれる物質の量や濃度などの測定結果を表すデータを表し、処理回路30から出力される分析データは、陽性又は陰性の判定結果を表すデータを表す。すなわち、検量データは、陽性又は陰性の判定結果を表す分析データを導くためのデータである。
【0016】
ここで、例えば、処理回路30の構成要素が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路60に記録されている。処理回路30は、各プログラムを記憶回路60から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路30は、図1の処理回路30内に示された各機能を有することとなる。
【0017】
なお、図1においては、単一の処理回路30にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0018】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0019】
図2は、図1の自動分析装置100の分析装置70の構成の一例を示す斜視図である。
【0020】
分析装置70は、複数の試料容器11を保持するサンプルディスク5を備えている。試料容器11は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料を収容する。
【0021】
分析装置70は、更に、複数の試薬容器6と、複数の試薬容器6の各々を格納する試薬庫1と、複数の試薬容器7と、複数の試薬容器7の各々を格納する試薬庫2とを備えている。試薬容器6、7は、試料に含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する。試薬庫1は、各検査項目の試薬容器6を回転可能に保持するターンテーブルである試薬ラック1aを備えている。試薬庫2は、各検査項目の試薬容器7を回転可能に保持するターンテーブルである試薬ラック2aを備えている。
【0022】
分析装置70は、更に、円周上に配置された複数の反応容器3と、複数の反応容器3の各々を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。なお、図2に示す例では、3個の反応容器3を収納する反応容器ユニット3aが周方向に複数配列されている。ここで、反応容器ユニット3aに収納される反応容器3の数は、3個に限定されない。反応容器ユニット3aについては後に詳述する。
【0023】
分析装置70は、更に、試料分注プローブ16と、試料分注アーム10と、試料分注ポンプ16aと、試料検出器16bと、洗浄槽16cとを備えている。試料分注プローブ16は、試料の分注を行う。具体的には、試料分注プローブ16は、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料を検査項目毎に吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試料を反応容器3内へ吐出する。試料分注アーム10は、試料分注プローブ16を回転及び上下移動可能に支持する。試料分注ポンプ16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。試料検出器16bは、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料の液面に、当該液面の上方から下降した試料分注プローブ16の先端部が接触したときに、試料容器11内の試料を検出したと判定する。具体的には、試料検出器16bは、試料分注プローブ16と電気的に接続され、試料分注プローブ16の先端部が試料容器11内の試料と接触したときの静電容量の変化により、試料容器11内の試料の液面を検出する。試料容器11内の試料の液面が検出されると、試料分注ポンプ16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽16cは、試料分注プローブ16を試料の分注終了毎に洗浄する。
【0024】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ14と、試薬分注アーム8と、試薬分注ポンプ14aと、試薬検出器14bと、洗浄槽14cと、撹拌子17と、撹拌アーム18と、洗浄槽17aとを備えている。試薬分注プローブ14は、試薬容器6内の試薬の分注を行う。具体的には、試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aに保持された各検査項目の試薬容器6内の試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬を、試料が分注された反応容器3内に吐出する。試薬分注アーム8は、試薬分注プローブ14を回転及び上下移動可能に支持する。試薬分注ポンプ14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。洗浄槽14cは、試薬分注プローブ14を試薬の分注毎に洗浄する。撹拌子17は、反応容器3内に分注された試料と試薬との混合液を撹拌する。撹拌アーム18は、撹拌子17を回転及び上下移動可能に支持する。洗浄槽17aは、撹拌子17を混合液の撹拌毎に洗浄する。
【0025】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ15と、試薬分注アーム9と、試薬分注ポンプ15aと、試薬検出器15bと、洗浄槽15cと、撹拌子19と、撹拌アーム20と、洗浄槽19aとを備えている。試薬分注プローブ15は、試薬容器7内の試薬の分注を行う。ここで、試薬分注プローブ15、試薬分注アーム9、試薬分注ポンプ15a、試薬検出器15b、洗浄槽15c、撹拌子19、撹拌アーム20、洗浄槽19aの機能は、それぞれ、試薬分注プローブ14、試薬分注アーム8、試薬分注ポンプ14a、試薬検出器14b、洗浄槽14c、撹拌子17、撹拌アーム18、洗浄槽17aの機能と同じであるため、説明を省略する。
【0026】
分析装置70は、更に、測定部13と、反応容器洗浄ユニット12とを備えている。測定部13は、撹拌子17に撹拌された混合液を収容する反応容器3や、撹拌子19に撹拌された混合液を収容する反応容器3に、光を照射して混合液を測定する。具体的には、測定部13は、回転している測定位置の反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び試薬の混合液を透過した光を検出する。そして、測定部13は、検出した信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成して処理装置90の処理回路30に出力する。反応容器洗浄ユニット12は、測定部13による測定が終了した反応容器3内を洗浄する。
【0027】
駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。
【0028】
駆動装置80は、分析装置70のサンプルディスク5を駆動する機構を備え、各試料容器11を回転させる。また、駆動装置80は、試薬庫1の試薬ラック1aを駆動する機構を備え、各試薬容器6を回転させる。また、駆動装置80は、試薬庫2の試薬ラック2aを駆動する機構を備え、各試薬容器7を回転させる。また、駆動装置80は、反応ディスク4を駆動する機構を備え、各反応容器3を回転させる。
【0029】
また、駆動装置80は、試料分注アーム10を回転及び上下移動させる機構を備え、試料分注プローブ16を試料容器11と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試料分注ポンプ16aを駆動する機構を備え、試料分注プローブ16に試料を分注させる。すなわち、試料分注プローブ16に試料容器11の試料を吸引させ、当該試料を反応容器3に吐出させる。
【0030】
また、駆動装置80は、試薬分注アーム8、9を回転及び上下移動させる機構を備え、試薬分注プローブ14、15をそれぞれ試薬容器6、7と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試薬分注ポンプ14a、15aを駆動する機構を備え、試薬分注プローブ14、15に試薬を分注させる。すなわち、試薬分注プローブ14、15に試薬容器6、7の試薬を吸引させ、当該試薬を反応容器3に吐出させる。また、駆動装置80は、撹拌アーム18、20を駆動する機構を備え、撹拌子17、19を反応容器3内に移動させる。そして、駆動装置80は、撹拌子17、19を駆動する機構を備え、反応容器3内の試料及び試薬の撹拌を行わせる。
【0031】
処理装置90の制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0032】
図3Aは、反応容器3、反応容器ユニット3a及び反応槽120を示す上面図である。図3Bは、図3AのX-X’線断面図である。図3A図3Bに示すように、本実施形態に係る自動分析装置100は、更に、図2に図示されていない反応槽120を備えている。
【0033】
上述したように、複数の反応容器3は円周上に配置されている。具体的には、上述したように、3個の反応容器3を収納する反応容器ユニット3aが周方向に複数配列されることで、複数の反応容器3は円周上に配置される。例えば、図3Aに示すように、反応容器ユニット3aは、反応槽120を覆う板状部材を有し、板状部材には、反応容器3に相当する凹部が3個形成されている。図3Bに示すように、反応容器3に相当する凹部には、例えば、試料と試薬との混合液である液体が収容される。反応槽120は、反応容器3内の液体を恒温に維持する恒温水を貯蔵する。
【0034】
ここで、恒温水の温度制御について説明する。図4は、本実施形態に係る自動分析システムの恒温水温度制御ユニットの構成の一例を示すブロック図である。恒温水温度制御ユニットは、反応槽120内の恒温水を循環させると共に、恒温水の温度が設定温度(例えば37度)になるように温度制御を行う。恒温水温度制御ユニットは、加熱器210、冷却器220、循環ポンプ240、配管231~234、及び、水温センサ250を有する。なお、図4において、反応容器3及び反応容器ユニット3aの図示を省略している。また、加熱器210及び冷却器220は、恒温水の温度を調整する調整部の一例である。
【0035】
配管231~234は、恒温水の循環流路230を形成する。例えば、配管231は、反応槽120の循環口121と冷却器220との間に接続され、配管232は、冷却器220と循環ポンプ240との間に接続されている。また、配管233は、循環ポンプ240と加熱器210との間に接続され、配管234は、加熱器210と反応槽120の循環口122との間に接続されている。
【0036】
循環ポンプ240は、反応槽120と恒温水温度制御ユニットとの間で恒温水を循環させる。例えば、循環ポンプ240は、反応槽120から冷却器220及び加熱器210を通して反応槽120までの循環流路230に恒温水を循環させる。
【0037】
冷却器220は、例えば、反応槽120から流出した恒温水を冷却する。冷却器220としては、例えば、ラジエータやファンなどの空冷方式が挙げられ、例えば、冷却器220は、自動分析装置100内(以下、装置内と記載する)の空気を用いて、恒温水を冷却する。例えば、恒温水の温度が設定温度より高い場合、冷却器220は、恒温水を冷却する。
【0038】
加熱器210は、例えば、循環ポンプ240から流出した恒温水を加熱する。加熱器210としては、例えば、ヒータなどが挙げられる。例えば、恒温水の温度が設定温度より低い場合、加熱器210は、恒温水を加熱する。
【0039】
水温センサ250は、例えば、恒温水の循環流路230内に設置されたセンサであり、加熱器210から流出した恒温水の温度を計測する。処理回路30の制御機能32は、周囲温度が変化しても恒温水の温度を設定温度に保つために、水温センサ250により計測された恒温水の温度を監視し、恒温水の温度が設定温度になるように加熱器210及び冷却器220を制御する。
【0040】
上述のように、図4に示す恒温水温度制御ユニットは、冷却器220による冷却と加熱器210による加熱とのバランスを保つことで恒温水の温度制御を行う。すなわち、恒温水温度制御ユニットでは、周囲温度が変化しても恒温水の温度を設定温度に保つために、加熱器210の発熱量を制御したり、冷却器220を稼働させたりすることによって、恒温水の温度制御を行う。
【0041】
しかし、上述の恒温水温度制御ユニットには、循環ポンプ240が設けられている。循環ポンプ240は、反応容器3内の液体の温度が設定温度に維持されるように、加熱器210及び冷却器220により温度が調整された恒温水を循環させる。しかし、循環ポンプ240は内部のモータの回転により発熱する発熱部材である。このため、循環ポンプ240により恒温水を循環させる際、循環ポンプ240から発生する熱が恒温水に伝わる。例えば、周囲温度が高い場合、循環ポンプ240の発熱により、自動分析装置100内の温度(以下、装置内温度と記載する)が上昇し、装置内温度の上昇に応じて恒温水の温度が上昇する可能性がある。また、循環ポンプ240の発熱により、循環ポンプ240単体でも恒温水の温度を上昇させてしまう可能性がある。例えば、恒温水の温度上昇が冷却器220の冷却能力を上回ってしまうと、制御機能32が恒温水の温度を制御しきれなくなる可能性がある。この場合、恒温水の温度が上昇することにより、反応容器3内の液体に影響を与えてしまい、自動分析装置100が正しい測定結果を得ることができない可能性がある。
【0042】
また、冷却器220の冷却能力を上げる方法として、ペルチェ素子を追加したり、外部から冷却水を供給するシステムを追加したりする方法が考えられる。しかし、ペルチェ素子のような冷却素子や、外部から冷却水を供給するシステムなどの高価な部材を用意する必要がある。
【0043】
そこで、本実施形態に係る自動分析装置100は、恒温水の温度上昇を抑えて、当該自動分析装置100の信頼性を向上させることができるように、以下の処理を行う。本実施形態に係る自動分析装置100は、反応槽120と、調整部と、循環ポンプ240と、制御機能32とを備える。反応槽120は、反応容器3が配置され、恒温水を貯蔵する。調整部である加熱器210及び冷却器220は、恒温水の温度を調整する。循環ポンプ240は、反応槽120と調整部との間で恒温水を循環させる。制御機能32は、周囲温度である装置外の温度、装置内の温度、及び、恒温水の温度の少なくとも1つの温度に基づいて循環ポンプ240の流量を制御する。具体的には、循環ポンプ240の流量は、循環ポンプ240内のモータの回転量に比例するため、制御機能32は、温度に基づいて循環ポンプ240内のモータの回転量を制御する。
【0044】
例えば、図4に示すように、本実施形態に係る自動分析装置100は、更に、温度センサ260、270を有する。例えば、温度センサ260は、自動分析装置100内に設置されたセンサであり、自動分析装置100内の温度(装置内温度)を計測する。温度センサ270は、自動分析装置100外に設置されたセンサであり、自動分析装置100外の温度(装置外温度)を計測する。以下、装置外温度を、周囲温度と記載する。
【0045】
そして、本実施形態において、制御機能32は、恒温水の上昇を抑制するために、以下に説明する循環ポンプ240の流量制御を行う。
【0046】
図5は、本実施形態におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。例えば、図1の記憶回路60はテーブルを有し、当該テーブルには、温度と循環ポンプの流量とを対応付ける情報が格納されている。図5は、テーブルに格納された情報として、温度と循環ポンプの流量との関係をグラフで表したものである。図5に示すグラフにおいて、横軸は温度[度]を示し、縦軸は循環ポンプ240の流量[%]を示す。なお、温度と循環ポンプの流量との関係は、予め経験的、実験的に取得される。
【0047】
例えば、図5において、横軸は装置内温度である。図5に示す一例では、温度T1~T20の間隔を1度としているが、0.5度でもよいし、2度でもよいし、それ以外でもよい。上述のように、循環ポンプ240は内部のモータの回転により発熱するため、周囲温度が高い場合、循環ポンプ240の発熱により、装置内温度が上昇し、装置内温度の上昇に応じて恒温水の温度が上昇する可能性がある。また、循環ポンプ240の発熱により、循環ポンプ240単体でも恒温水の温度を上昇させてしまう可能性がある。そこで、図5に示すグラフでは、例えば、装置内温度が温度T1以下においては循環ポンプ240の流量を100[%]とし、装置内温度が温度T1から上昇するにつれて循環ポンプ240の流量が一定の傾きで低下するように、循環ポンプ240の流量が設定されている。
【0048】
なお、温度と循環ポンプの流量との関係は、図5のように線形関数で表わされる場合であっても、非線形関数で表わされる場合であっても良い。また、温度と循環ポンプの流量との関係は、テーブル形式で表わされる場合であっても良い。
【0049】
例えば、制御機能32は、温度センサ260が計測した装置内温度を取得する。制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、取得した装置内温度に対応する流量を選択し、選択した流量で循環ポンプ240の流量を制御する。すなわち、制御機能32は、温度センサ260から取得した装置内温度に基づいて、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0050】
具体的には、例えば、温度センサ260から取得した装置内温度が温度T4である場合、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、温度T4に対応する流量を選択する。この場合、選択した流量は、約90[%]の流量であり、制御機能32は、選択した約90[%]の流量となるように、循環ポンプ240のモータを制御する。次に、温度センサ260から取得した装置内温度が温度T1である場合、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、温度T1に対応する流量を選択する。この場合、選択した流量は、100[%]の流量であり、制御機能32は、選択した100[%]の流量となるように、循環ポンプ240のモータを制御する。このとき、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、循環ポンプ240の流量を、温度T4に対応する流量から、温度T1に対応する流量に、リニアに増加させる。このように、制御機能32は、温度センサ260から取得した装置内温度が低い場合には循環ポンプ240の流量が増加するように、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0051】
また、例えば、温度センサ260から取得した装置内温度が温度T14である場合、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、温度T14に対応する流量を選択する。この場合、選択した流量は、60[%]の流量であり、制御機能32は、選択した60[%]の流量となるように、循環ポンプ240のモータを制御する。次に、温度センサ260から取得した装置内温度が温度T18である場合、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、温度T18に対応する流量を選択する。この場合、選択した流量は、約50[%]の流量であり、制御機能32は、選択した約50[%]の流量となるように、循環ポンプ240のモータを制御する。このとき、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、循環ポンプ240の流量を、温度T14に対応する流量から、温度T18に対応する流量に、リニアに低下させる。このように、制御機能32は、温度センサ260から取得した装置内温度が高い場合には循環ポンプ240の流量が低下するように、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0052】
ここで、図5において、横軸に示す温度を装置内温度としているが、これに限定されず、横軸に示す温度は、周囲温度でもよい。すなわち、制御機能32は、温度センサ270から取得した周囲温度に基づいて、循環ポンプ240の流量を制御してもよい。この場合、制御機能32は、例えば、予め経験的、実験的に取得された周囲温度と循環ポンプの流量との関係を表すグラフを用いる。制御機能32は、かかるグラフを用いて、温度センサ270から取得した周囲温度に対応する流量を選択し、選択した流量となるように、循環ポンプ240のモータを制御する。
【0053】
また、図5において、横軸に示す温度は、恒温水の温度でもよい。すなわち、制御機能32は、水温センサ250から取得した恒温水の温度に基づいて、循環ポンプ240の流量を制御してもよい。この場合、制御機能32は、例えば、予め経験的、実験的に取得された恒温水の温度と循環ポンプの流量との関係を表すグラフを用いる。制御機能32は、かかるグラフを用いて、水温センサ250から取得した恒温水の温度に対応する流量を選択し、選択した流量となるように、循環ポンプ240のモータを制御する。
【0054】
また、上記では、循環ポンプ240の流量を制御するために用いる温度を、周囲温度、装置内温度、及び、恒温水の温度のいずれかとしているが、これに限定されず、流量制御に用いる温度は、周囲温度、装置内温度、及び、恒温水の温度の組み合わせを考慮した値でもよい。流量制御に用いる温度は、周囲温度と装置内温度との統計値、周囲温度と恒温水の温度との統計値、装置内温度と恒温水の温度との統計値、周囲温度と装置内温度と統計値であっても良い。なお、統計値としては、平均値、加重平均値、中央値、最大値、最小値等が挙げられる。
【0055】
また、本実施形態は、周囲温度と流量との関係から導出された流量と、装置内温度と流量との関係から導出された流量と、恒温水の温度と流量との関係から導出された流量とのうち、少なくとも2つの流量の統計値により、循環ポンプ240の流量を制御しても良い。かかる場合の統計値としては、平均値、加重平均値、中央値、最大値、最小値等が挙げられる。例えば、制御機能32は、周囲温度と装置内温度とを取得し、取得した周囲温度に対応する流量と、取得した装置内温度に対応する流量との平均値を、循環ポンプ240の流量とする制御を行っても良い。
【0056】
このように、制御機能32は、周囲温度、装置内温度、及び、恒温水の温度の少なくとも1つの温度に基づいて、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0057】
図6は、本実施形態におけるポンプ制御処理の手順を示すフローチャートである。例えば、ポンプ制御処理は、循環ポンプ240が稼働中に実施される。
【0058】
ポンプ制御処理において、まず、制御機能32は、周囲温度、装置内温度、及び、恒温水の温度の少なくとも1つの温度を取得する(ステップS101)。
【0059】
次に、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、取得した温度に対応する流量を選択する(ステップS102)。
【0060】
次に、制御機能32は、選択した流量で循環ポンプ240の流量を制御する(ステップS103)。
【0061】
次に、制御機能32は、循環ポンプ240の電源等を監視することにより、循環ポンプ240が稼働中であるか否かを判定する(ステップS104)。ここで、循環ポンプ240が稼働中であると制御機能32が判定した場合(ステップS104;Yes)、制御機能32は、再度、ステップS101を実行し、ポンプ制御処理を継続する。
【0062】
一方、循環ポンプ240が稼働中ではないと制御機能32が判定した場合(ステップS104;No)、制御機能32は、ポンプ制御処理を終了する。
【0063】
以上、説明したとおり、本実施形態に係る自動分析装置100は、反応容器3内の液体を恒温に維持する恒温水を貯蔵する反応槽120と、恒温水の温度を調整する加熱器210と、反応槽120と加熱器210との間で恒温水を循環させる循環ポンプ240と、制御機能32とを備える。制御機能32は、周囲温度、装置内の温度、及び、恒温水の温度の少なくとも1つの温度を取得し、取得した温度に基づいて循環ポンプ240の流量を制御する。具体的には、制御機能32は、取得した温度が低い場合には循環ポンプ240の流量が増加し、取得した温度が高い場合には循環ポンプ240の流量が低下するように、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0064】
このように、本実施形態に係る自動分析装置100では、取得した温度に基づいて循環ポンプ240の流量を制御することにより、循環ポンプ240から発生する熱を抑制する。その結果、本実施形態では、循環ポンプ240が要因となって恒温水の温度が上昇することを抑えることができ、調整部(加熱器210及び冷却器220)による温度調整を正常に動作させることができる。これにより、自動分析装置100は、設定温度に維持された反応容器3内の液体を測定することになり、正しい測定結果を得ることができる。すなわち、本実施形態では、恒温水の温度上昇を抑えて、自動分析装置100の信頼性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る自動分析装置100では、取得した温度に基づいて循環ポンプ240の流量を制御することにより、冷却器220の冷却能力を上げる必要がなく、例えば、ペルチェ素子のような冷却素子や、外部から冷却水を供給するシステムなどの高価な部材を用意する必要がない。
【0066】
(その他の実施形態)
これまで実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0067】
(第1の変形例)
上述した実施形態では、制御機能32は、図5に示すグラフを用いて、取得した温度に基づいて循環ポンプ240の流量をリニアに変化させている場合について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、第1の変形例として、制御機能32は、図7に示すグラフを用いて、取得した温度に基づいて循環ポンプ240の流量を段階的に変化させてもよい。
【0068】
図7は、第1の変形例におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。例えば、制御機能32は、温度が温度T4から温度T1に下がった場合には、図7に示すグラフを用いて、循環ポンプ240の流量が温度T4に対応する流量から温度T1に対応する流量まで段階的に増加するように、循環ポンプ240の流量を制御する。また、例えば、制御機能32は、温度が温度T14から温度T18に上がった場合には、図7に示すグラフを用いて、循環ポンプ240の流量が温度T14に対応する流量から温度T18に対応する流量まで段階的に低下するように、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0069】
(第2の変形例)
上述した実施形態では、制御機能32は、図7に示すグラフを用いて、取得した温度に基づいて循環ポンプ240の流量を段階的に変化させている場合について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、第2の変形例として、制御機能32が循環ポンプ240の流量を制御する際に発生するチャタリングを防止するために、ヒステリシス制御を行ってもよい。例えば、制御機能32は、ヒステリシス制御として、循環ポンプ240の流量を増加させるときの温度と、循環ポンプ240の流量を低下させるときの温度とが異なるように、循環ポンプ240の流量を制御する。ヒステリシス制御について図8及び図9を用いて説明する。
【0070】
図8及び図9は、第2の変形例におけるポンプ制御処理の一例として、温度と循環ポンプの流量との関係を示すグラフである。例えば、図9における温度T100と温度T100よりも高い温度T200との間の温度変化は、図8における温度T1~T20の間隔を1度とした場合、温度T1~T20のうちの1度分の温度変化を表す。例えば、制御機能32は、循環ポンプ240の流量を、温度T100に対応する流量F200から、温度T200に対応する流量F100に減少させる場合、温度が温度T100から温度T200に上がったときに、循環ポンプ240の流量を流量F200から流量F100に減少させる。また、制御機能32は、循環ポンプ240の流量を、温度T200に対応する流量F100から、温度T100に対応する流量F200に増加させる場合、温度が温度T200から温度T100に下がったときに、循環ポンプ240の流量を流量F100から流量F200に増加させる。このように、制御機能32は、循環ポンプ240の流量を増加させるときの温度と、循環ポンプ240の流量を低下させるときの温度とが異なるように、循環ポンプ240の流量を制御する。
【0071】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、恒温水の温度上昇を抑えて、自動分析装置の信頼性を向上させることができる。
【0072】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
32 制御機能
100 自動分析装置
120 反応槽
210 加熱器
220 冷却器
240 循環ポンプ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9